説明

液体容器

【課題】使用中の液体容器を液体消費装置から外しても、再び装着したときに液体残量を誤検出することのない液体容器を提供する。
【解決手段】複数の液体室が連絡通路で接続され、下流側の液体室が内部に液体センサーを備えたセンサー室となっている液体容器において、センサー室とセンサー室の上流側の液体室とを接続する連絡通路のセンサー室側の開口部を、センサー室内の何れの内壁面が鉛直下向きになるように液体容器を置いた場合でも、センサー室の中で開口部よりも下側の容積が所定の量以上となる位置に設ける。こうすれば、センサー室内の何れの内壁面が下側になるように液体容器が置かれても、所定の量以上の液体がセンサー室内に残る。従って、液体容器を液体消費装置に再装着したときに、液体室に液体が残っているのに液体が無いと誤検出されることを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置に装着されて、内部に液体を収容する液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体収容部に収容された液体を液体消費装置に供給する液体容器が知られている。液体収容部には、液体消費装置に液体を供給するための供給口と大気開放口とが設けられており、供給口から液体を供給すると、その分だけの空気が大気開放口から取り込まれる。また、取り込んだ空気の膨張によって液体が逆流あるいは押し出されることを避けるため、液体収容部内を複数の液体室に分割し、各液体室を連絡通路で直列に接続した液体容器が提案されている(特許文献1)。この液体容器では、供給口は最も下流側の液体室に設けられ、大気開放口は最も上流側の液体室に設けられている。このため、液体消費装置に液体を供給するに従って、上流側の(大気開放口に近い)液体室から順番に空になっていく。
【0003】
また、複数の液体室を有する液体容器の下流側の液体室(通常は、供給口が設けられた液体室あるいは液体室の1つ上流側の液体室)に液体センサー(例えば、特許文献2)を設けておけば、液体容器内の液体が無くなったこと、あるいは液体が残り少なくなったことを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253328号公報
【特許文献2】特開2009−132157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、下流側の液体室に液体センサーを設けた液体容器では、使用中の液体容器を液体消費装置から一旦外して再び装着した時に、液体容器内の液体残量を誤検出することがあるという問題があった。
【0006】
この発明は、従来技術における上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、使用中の液体容器を液体消費装置から外しても、再び装着したときに液体残量を誤検出することのない液体容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体容器は次の構成を採用した。すなわち、
液体を収容可能な液体収容部と、該液体が流出する液体流出口と、該液体の流出に伴って外部から該液体収容部内に空気を取り入れる空気取入口とを備え、液体消費装置に着脱可能に装着されて該液体流出口から液体を供給する液体容器であって、
前記液体収容部は、複数の液体室を有し、前記空気取入口と連通している液体室から、前記液体流出口に連通している液体室までの複数の液体室が、連絡通路によって直列に接続されており、
前記複数の液体室の中で前記空気取入口と連通している第1の液体室を介して該空気取入口と連通している第2の液体室には、前記液体容器を前記液体消費装置に装着した状態での該第2の液体室内の液面の位置に基づいて、該第2の液体室内に所定の量の液体が残っているか否かの検出に用いられる検出部が設けられており、
前記第2の液体室と該第2の液体室の上流側の前記液体室とを接続する前記連絡通路の該第2の液体室側の開口部は、前記液体容器を、該第2の液体室内の何れの内壁面が鉛直下方向を向くように置いた場合にも、該第2の液体室の中で該開口部よりも下側の容積が前記所定の量以上となる位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明の液体容器においては、複数の液体室が連絡通路で直列に接続されており、液体流出口から液体が供給されると、その分の空気が空気取入口から取り入れられる。こうして第1の液体室から順に内部の液体が消費されていくと、やがて第2の液体室内の液体の量が所定の量よりも少なくなり、そのことが第2の液体室内の検出部によって検出される。また、本発明の液体容器では、第2の液体室内の何れの内壁面が鉛直下方向を向くように液体容器を置いた場合でも、連絡通路の第2の液体室側の開口部が、第2の液体室の中で開口部よりも下側の容積が所定の量以上となる位置に位置するようになっている。
【0009】
液体容器は、内部の液体が無くなる前に別の液体容器に交換されることがあり、液体消費装置から脱着された液体容器は、再び装着されるまで別の場所で保管される。このとき、液体消費装置に装着するときの姿勢とは異なる姿勢に液体容器が置かれ、または、異なる姿勢に置かれた状態で温度変化が生じたり衝撃を受けたりして環境変化が生ずると、連絡通路の第2の液体室側の開口部よりも上方のインクが上流側の液体室に逆流する。しかし、本発明の液体容器では、第2の液体室内の何れの内壁面が鉛直下方向を向くように液体容器が置かれても、開口部よりも下側の容積に相当する量の液体(所定の量以上の液体)が第2の液体室内に残る。従って、逆流によって第2の液体室内の液体が所定の量よりも少なくなることが無いので、液体容器を液体消費装置に再装着したときに、液体室に液体が残っているのに液体が無いと誤検出されることを回避することができる。尚、第2の液体室内から逆流した液体は、液体容器を液体消費装置に再装着して漸くすると、または、再装着後にある程度の液体を消費すると、第2の液体室内に戻ってくる。従って、再装着して漸くの間だけ誤検出を回避することができれば、その後に液体が無いと誤検出されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】本実施例のインクカートリッジの構造を示した分解斜視図である。
【図3】本実施例のインクカートリッジの内部構造を示した平面図である。
【図4】プリズムを用いてインクカートリッジ内のインクの残量を検出する様子を示した説明図である。
【図5】インクジェットプリンターから取り外されたインクカートリッジが後日、装着された場合に、インクカートリッジ内のインクの分布が変化する様子を示した説明図である。
【図6】インクジェットプリンターにインクカートリッジを装着後、逆流したインクがセンサー室に戻る様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.インクジェットプリンターの構成:
B.インクカートリッジの構造
C.インク残量の検出方法:
【0012】
A.インクジェットプリンターの構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、インクジェットプリンター10は、主走査方向に往復動しながら印刷媒体2上にインクドットを形成するキャリッジ20と、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30などから構成されている。キャリッジ20には、インクを収容したインクカートリッジ100(液体容器)や、インクカートリッジ100が装着されるキャリッジケース22や、インクを噴射する噴射ヘッド24などが設けられている。噴射ヘッド24の底面側(印刷媒体2に向いた側)には複数の噴射ノズルが設けられており、インクカートリッジ100内のインクを噴射ヘッド24に導いて、噴射ノズルから印刷媒体2にインクを噴射することが可能である。
【0013】
尚、図示したインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、これに対応して噴射ヘッド24にはインクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。そして、それぞれの噴射ノズルには、対応するインクカートリッジ100から供給通路(図示せず)を介してインクが供給される。
【0014】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32や、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジケース22に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設されたガイドレールによってガイドしながら、キャリッジ20を主走査方向に往復動させることが可能となる。
【0015】
また、インクジェットプリンター10の印刷領域外の位置には、インクカートリッジ100内のインクの残量を光学的に検出するための検出部200が設けられている。詳しくは後述するが、検出部200の内部には、発光部および受光部が設けられており、キャリッジ20の移動に伴ってインクカートリッジ100が検出部200の上方を通過する際に発光部から光を発し、その光を受光部が受けるか否かによってインクカートリッジ100内のインクの残量を検出する。尚、本実施例の検出部200は印刷領域外の位置に設けることとしているが、検出部200は印刷領域内に設けることとしてもよい。こうすれば、印刷中にキャリッジ20が長い距離を移動しなくてもインク残量の検出を行うことができる。
【0016】
更に、インクジェットプリンター10の背面には、インクジェットプリンター10の全体の動作を制御する制御部60が搭載されている。噴射ヘッド24を往復動させる動作や、噴射ノズルからインクを噴射する動作や、インクカートリッジ100内のインクの残量を検出する動作などは、全て制御部60によって制御されている。
【0017】
B.インクカートリッジの構造 :
図2は、インクカートリッジ100の構造を示した分解斜視図である。図示されているように、インクカートリッジ100は、大まかには硬質の樹脂材料で形成された本体ケース102と、本体ケース102の一方の側を覆う第1フィルム103と、本体ケース102の他方の側を覆う第2フィルム104とから構成されている。また、本体ケース102の底面には、キャリッジ20の噴射ヘッド24に向けてインクを供給するインク供給口105(液体流出口)が設けられている。さらに、本体ケース102の上面には、インクカートリッジ100内のインクの消費に伴ってインクカートリッジ100の内部に空気を導入するための大気開放口106(空気取入口)が設けられている。
【0018】
図3は、本実施例のインクカートリッジ100の内部構造を示した平面図である。図3(a)には、インクカートリッジ100を一方の側から見たときのインクカートリッジ100の内部構造が示されており、図3(a)の図面右側の位置には、図中のAA断面を矢印の方向からみた断面図が示されている。また、図3(b)には、インクカートリッジ100を他方の側から見たときの内部構造が示されている。尚、以下の説明では図3(a)に示した側を「表側」と呼び、図3(b)に示した側を「裏側」と呼ぶ。
【0019】
図3(a)に示されるように、インクカートリッジ100の表側は、縦横に設けられた複数の隔壁によって大きく4つの部屋に区分けされている。先ず、図面上で右側上半分の領域にはインク室120(第1の液体室)が設けられており、右側下半分の領域にはセンサー室130(第2の液体室)が設けられている。これらインク室120とセンサー室130とは、連絡通路134によって接続されている。尚、連絡通路134は、インク室120の底部から図面上でセンサー室130の略中央の位置にかけて設けられており、先端に開口134aが設けられている。開口134aは、図面奥のセンサー室130の内壁面と、図面手前の内壁面(すなわち第1フィルム103)との中間の位置に設けられている(図3(a)右側の断面図を参照)。このような位置に連絡通路134の開口134aを設ける理由については後述する。
【0020】
また、インク室120とセンサー室130との間の図面略中央の位置にはバッファー室140が設けられている。センサー室130とバッファー室140とはインクカートリッジ100の裏側で通路によって接続されており、さらにバッファー室140は、インクカートリッジ100の裏側に設けられた圧力調整室150に連通している。圧力調整室150には膜弁やバネなどが内蔵されており、噴射ヘッド24に供給されるインクの圧力を調整する機能を有している。
【0021】
このような構造のインクカートリッジ100では、噴射ヘッド24からインクを噴射する際には、インク室120から、センサー室130、バッファー室140と経由してインクが圧力調整室150に流入した後、インク供給口105から噴射ヘッド24にインクが供給される。
【0022】
尚、本実施例のインクカートリッジ100のセンサー室130には、光透過性のプラスチック材料で形成されたプリズム132(検出部)が設けられている。プリズム132はいわゆる直角プリズムであり、プリズム132の一面がインクカートリッジ100の底面の一部を構成している。インクカートリッジ100が装着されるキャリッジケース22の底面には、プリズム132に対応する位置に図示しない開口が設けられており、キャリッジ20の移動に伴ってインクカートリッジ100が検出部200の上方を通過する際には(図1参照)、検出部200の発光部からの光がキャリッジケース22の開口を通過してプリズム132に入射する。
【0023】
また、図3(a)に示されるように、インクカートリッジ100内の左側の領域には空気室110が設けられている。この空気室110は、インクカートリッジ100の裏側で通路によってインク室120に接続されている。また、空気室110は、空気室110の右上隅の連通口112、およびインクカートリッジ100の裏側の空気通路160(図3(b)を参照)を介して大気開放口106に接続されている。この空気室110は、周囲の温度変化によってインクカートリッジ100内の空気が膨張したり、インクカートリッジ100の姿勢が変化したりするなどして、インク室120から大気開放口106に向けてインクが逆流した場合に、内部にインクをトラップしてインクが漏れることを防いでいる。
【0024】
また、図3(b)に示されているように、空気室110と大気開放口106とを接続する空気通路160には、途中に小さな部屋(フィルム室162)が設けられており、フィルム室162の内部は、通気性のフィルムによって上流側と下流側とが隔てられている。さらに、フィルム室162よりも上流側の位置には、インクカートリッジ100内のインクの水分蒸発を抑制する目的で、空気通路160が蛇行する部分が設けられている。
【0025】
以上のように構成される本実施例のインクカートリッジ100では、内部に設けられたプリズム132を用いてインクの残量を次のように検出する。
【0026】
C.インク残量の検出方法 :
図4は、プリズム132を用いてインクカートリッジ100内のインクの残量を検出する様子を示した説明図である。先ず、前述したように、インクカートリッジ100は、主走査方向に往復動するキャリッジケース22に装着される。装着状態で、インクカートリッジ100内のプリズム132は、図4に示すように、プリズム132の互いに直交する2つの面(反射面132a,反射面132b)が主走査方向に配置される。また、キャリッジ20が主走査方向に移動する経路の途中には、下方の位置に検出部200が設けられており、検出部200の内部には、赤外発光ダイオードで構成された発光部202と、フォトトランジスタで構成された受光部204とが主走査方向に並べて設けられている。そして、キャリッジ20の移動に伴ってインクカートリッジ100が検出部200の上方を通過する際には、発光部202からの光がプリズム132の底面132cに垂直に入射する。
【0027】
図4には、キャリッジ20の移動に伴って、インクカートリッジ100内のプリズム132が、検出部200の真上に位置した状態が示されている。このとき、図4(a)に示すように、プリズム132が設けられたセンサー室130内のインクの液面(インク面)がプリズム132の頂点よりも上方にあれば、反射面132aおよび反射面132bはインクに接している。この状態では、発光部202からプリズム132に入射した光(入射光)は、反射面132aに当たっても反射することなく、図4(a)中に太い破線の矢印で示すように、センサー室130内のインク中を透過する。そのため、発光部202の光は受光部204では検出されない。このような場合、制御部60は、少なくともセンサー室130内にはインクが残っていると判断する。
【0028】
一方、センサー室130内のインクが消費されて、図4(b)に示すようにインク面がプリズム132の頂点よりも下がると、プリズム132のインクから露出した部分では、反射面132aおよび反射面132bに空気が接する。そして、センサー室130内のインクが所定の量(基準量)よりも少なくなってインク面が所定の高さ(基準位置)よりも低くなると、反射面132aの空気に接している部分に入射光が当たるようになり、図4(b)中に太い破線の矢印で示すように反射する。この反射面132aで反射した光は、もう一方の反射面132bの空気に接している部分に当たり、下方に向けて反射して受光部204で検出される。このような場合、制御部60は、センサー室130内のインクが残り少なくなっており、従ってインクカートリッジ100内のインクがもうすぐ無くなると判断する。
【0029】
ここで、インクジェットプリンター10に装着されて使用中のインクカートリッジ100は、内部のインクが無くなる前に、別のインクカートリッジ100に交換されることがある。この場合、インクジェットプリンター10から取り外されたインクカートリッジ100は、一旦別の場所で保管されて、後日再びインクジェットプリンター10に装着される。
【0030】
図5は、インクジェットプリンター10から取り外されたインクカートリッジ100が後日装着された場合に、インクカートリッジ100内のインクの分布が変化する様子を示した説明図である。今、インクカートリッジ100がインクジェットプリンター10から取り外される前の状態で、図5(a)に示されるように、インク室120内のインクが空となっており、センサー室130内にはセンサー室130の容積の半分以上のインクが残っていたとする。この状態でインクカートリッジ100を取り外し、上下逆さまに置いて保管すると、図5(b)に示されるように、センサー室130内のインクが、重力によって連絡通路134を経てインク室120に逆流する。インク室120へのインクの逆流は、センサー室130のインク面が連絡通路134の開口134aの位置まで低下したところで止まる。その結果、図5(c)に示されるように、センサー室130内には、開口134aよりも下方のセンサー室130の容積に相当する量(本実施例では、センサー室130の容積の約半分の量)のインクが残る。
【0031】
この状態で保管したインクカートリッジ100を後日、インクジェットプリンター10に装着する。このとき、図5(d)に示されるように、センサー室130の容積の約半分のインク(基準量よりも多いインク)がセンサー室130内に残っているので、インクカートリッジ100内にはインクが残っていると判断される。
【0032】
ここで、インクジェットプリンターから取り外して保管中にセンサー室のほとんどのインクがインク室に逆流してしまうと、インクカートリッジをインクジェットプリンターに再装着したときに、センサー室内に基準量よりも少ないインクしか残っておらず、従ってインク室にはインクが残っているのにインクが無いと誤検出してしまう。これに対して、本実施例のインクカートリッジ100では、上述したようにインクジェットプリンター10への再装着時のセンサー室130内に基準量よりも多いインクを残しておくことができるので、インクが無いと誤検出してしまうことを回避することができる。
【0033】
尚、以上のようにインクカートリッジ100を上下逆さまに置いて(すなわち、インクカートリッジ100の上面を下にして)保管する場合に限らず、上面以外の面を下にして保管する場合でも、重力によって開口134aよりも上方のインクがインク室120に逆流することは起こり得る。しかし、本実施例のインクカートリッジ100では、連絡通路134の開口134aがセンサー室130の略中央の位置に設けられている(図3を参照)。このため、インクカートリッジ100の何れの面を下にして保管した場合に重力によってインクが逆流しても、センサー室130内には容積の約半分のインクが残るようになっており、インクカートリッジ100の再装着時に、インクが無いと誤検出されることがない。
【0034】
また、連絡通路134がインク室120に向かって上にあがるようにインクカートリッジ100が置かれた場合(例えば、図3(a)の図面左側の面を下にして置かれた場合)、重力によるインクの逆流は起こらないものの、センサー室130内の空気が膨張することにより、開口134aよりも上方のインクが逆流することが起こり得る。このような場合にも、連絡通路134の開口134aがセンサー室130の略中央の位置に設けられていることにより、センサー室130内に容積の約半分のインクが残るので、インクカートリッジ100の再装着時にインクが無いと誤検出されることがない。
【0035】
もちろん、インクカートリッジ100をインクジェットプリンター10に再装着した時にインクが無いと誤検出されることを免れたとしても、逆流によってセンサー室130内のインク量が減少しているので、少しインクを消費した時点でインクが無いと誤検出されることが懸念される。しかし、インク室120に逆流したインクは、インクカートリッジ100を再装着して漸くするとセンサー室130に戻ってくるので、そのような心配はない。以下ではこの点について説明する。
【0036】
図6は、インクジェットプリンター10にインクカートリッジ100を再装着後、インク室120に逆流したインクがセンサー室130に戻る様子を示した説明図である。インクカートリッジ100をインクジェットプリンター10に再装着した段階では、図6(a)に示されるように、インク室120とセンサー室130とにインクが分かれて存在している。この状態で漸く放置していると、図6(b)に示されるように、インク室120内のインクが重力によってセンサー室130内に流入する。
【0037】
尚、本実施例のインクカートリッジ100では、インクカートリッジ100をインクジェットプリンター10に装着した状態で、連絡通路134がセンサー室130の内部に向かって下にさがるように設けられているが、連絡通路134の設置態様によっては、装着状態において、連絡通路134の一部が重力に逆らう方向に向かって設けられることもある。このような場合、重力によってはインク室120内のインクがセンサー室130内に流入することが困難となるが、印刷を開始するとインクが消費されてセンサー室130内が負圧となるので、負圧によってインクが引き込まれてセンサー室130内に流入する。
【0038】
このようにセンサー室130内にインクが流入する結果、図6(c)に示されるように、インク室120に逆流したインクが全てセンサー室130に戻ってくる。このため、印刷を開始後、少しインクを消費したところでインクが無いと誤検出されてしまうことがなく、インク室120に逆流したインクも残さず使用することが可能である。
【0039】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、本実施例のインクカートリッジでは、センサー室のインクの液面の位置をプリズムで検出するものと説明したが、インクの液面の位置は、プリズム以外の検出部材(電極など)を用いて検出することとしてもよい。
【0040】
また、本発明は、噴射ヘッドと一体に構成されているキャリッジケースにインクカートリッジを装着するオンキャリッジタイプのインクジェットプリンターに限らず、インクカートリッジを収容するホルダーと噴射ヘッドとが別々に設けられているオフキャリッジタイプのインクジェットプリンターに適用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
10…インクジェットプリンター、 100…インクカートリッジ、
105…インク供給口、 106…大気開放口、 120…インク室、
130…センサー室、 132…プリズム、 134…連絡通路、
134a…開口、 200…検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な液体収容部と、該液体が流出する液体流出口と、該液体の流出に伴って外部から該液体収容部内に空気を取り入れる空気取入口とを備え、液体消費装置に着脱可能に装着されて該液体流出口から液体を供給する液体容器であって、
前記液体収容部は、複数の液体室を有し、前記空気取入口と連通している液体室から、前記液体流出口に連通している液体室までの複数の液体室が、連絡通路によって直列に接続されており、
前記複数の液体室の中で前記空気取入口と連通している第1の液体室を介して該空気取入口と連通している第2の液体室には、前記液体容器を前記液体消費装置に装着した状態での該第2の液体室内の液面の位置に基づいて、該第2の液体室内に所定の量の液体が残っているか否かの検出に用いられる検出部が設けられており、
前記第2の液体室と該第2の液体室の上流側の前記液体室とを接続する前記連絡通路の該第2の液体室側の開口部は、前記液体容器を、該第2の液体室内の何れの内壁面が鉛直下方向を向くように置いた場合にも、該第2の液体室の中で該開口部よりも下側の容積が前記所定の量以上となる位置に設けられていることを特徴とする液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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