説明

液体検出システム、液体容器

【課題】液体検出装置のキャビティ内の受圧部材と付勢部材とが当接する部分に気泡が溜まることを抑制可能とする。
【解決手段】液体収容部に収容された液体を外部に供給する供給口と液体収容部との間に変形可能な可変部を有するキャビティが設けられており、可変部は、受圧部材を介してキャビティの内側から付勢部材によって付勢されている。また、受圧部材の位置の変化は検出手段によって検出可能となっており、更に、受圧部材と付勢部材とが当接する面には当接面の内側から外側へ抜ける切欠きが設けられている。こうすれば、受圧部材と付勢部材との当接面に溜まった気泡を切欠きから逃がすことができるので、キャビティ内に気泡が溜まることを抑制し、液体収容部内の液体の有無を適切に検出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容した液体容器内の液体を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンターのように、噴射ノズルからインクなどの液体を噴射する液体噴射装置には、液体の供給源として、内部に液体を収容したインクカートリッジなどの液体容器が搭載される。液体容器は、液体噴射装置に対して交換可能に装填されるようになっており、液体容器内の液体が無くなったら、新しい液体容器に交換することが可能である。
【0003】
また、液体容器には、液体容器の交換時期を使用者に知らせる目的で、液体を収容する液体収容体と、収容した液体を液体容器の外部に供給する供給口との間に、容器内の液体が無くなったことを検出するための液体検出装置が設けられることがある。液体検出装置には、凹部と凹部を覆うフィルムとによって形成されて、内部に液体収容体からの液体が満たされるキャビティが設けられている。また、キャビティの内部には、受圧板およびバネが設けられており、バネは受圧板を介してフィルムを一方向に付勢する。このような液体検出装置においては、液体収容体内に液体が残っている場合には、キャビティに液体が供給されるので、凹部を覆ったフィルムには液体の圧力とバネからの圧力とが作用する。ところが液体収容体内の液体が無くなると、キャビティに液体が供給されなくなるので、フィルムに液体の圧力が加わらなくなり、フィルム(および受圧板)の位置が移動する。この時の受圧板の位置の変化を検出することで、液体収容体内の液体が無くなったことを検出する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−307894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の技術では、受圧板とバネとが当接する受圧板の裏側の部分に気泡が溜まることがあるという問題があった。その結果、キャビティ内に気泡が残存することにより、液体収容体内の液体が無くなったことを適切に検出することができなくなるという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、キャビティ内の受圧板とバネとが当接する部分に気泡が溜まることを抑制する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体検出システムは次の構成を採用した。すなわち、
液体を収容する液体収容部内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体収容部に収容された液体を外部に供給する供給口と該液体収容部との間に設けられて、該液体収容部からの液体で内部が満たされるとともに、少なくとも一部に変形可能な可変部を有するキャビティと、
前記キャビティの内部に設けられた受圧部材と、
前記受圧部材を介して前記キャビティの内側から前記可変部を付勢する付勢部材と、
前記付勢部材によって前記可変部に当接された前記受圧部材の位置の変化を検出する検出手段と
を備え、
前記受圧部材は、該受圧部材と前記付勢部材とが当接する面に、該当接する面の内側から該当接する面の外側へ抜ける切欠きが設けられていることを要旨とする。
【0008】
このような本発明の液体検出システムにおいては、液体収容体部に液体が残っている場合にはキャビティに液体が供給されるので、キャビティの可変部には液体の圧力と付勢部材からの圧力とが作用する。一方、液体収容部内の液体が無くなると、キャビティに液体が供給されなくなるので、キャビティ内の圧力が低下して、可変部(および受圧部材)の位置が移動する。そして、受圧部材の位置の変化は検出手段によって検出することが可能となっている。また、本発明の液体検出システムの受圧部材には、受圧部材と付勢部材とが当接する面の内側から外側へ抜ける切欠きが設けられている。
【0009】
このように、受圧部材の位置の変化を検出することで、液体収容部内に液体が残っているか否かを検出することが可能である。また、受圧部材と付勢部材とが当接する面には、当接面の内側から外側に抜ける切欠きが設けられているので、受圧部材と付勢部材とが当接する位置に気泡が溜まった場合でも、当接面の外側に気泡を逃がすことができる。従って、キャビティ内に気泡が残存することを効果的に抑制することができるので、キャビティ内に気泡によってキャビティの可変部に液体の圧力が上手く伝わらなくなることを抑制することができる。その結果、液体収容体内の液体が無くなったことを適切に検出することが可能となる。
【0010】
また、上述した本発明の液体検出システムにおいては、受圧部材と付勢部材とが当接する面に沿ってキャビティ内の液体が流れる方向と略同方向に切欠きを設けることとしてもよい。
【0011】
こうすれば、キャビティ内の液体が受圧部材と付勢部材とが当接する面に沿って受圧部材の切欠きを通過し、受圧部材の外側に抜ける。こうした液体の流れによって受圧部材と付勢部材との当接面に溜まった気泡が当接面の外側に排出されるので、受圧部材と付勢部材との当接面に気泡が溜まることをより効果的に抑制することができる。その結果、液体収容体内の液体が無くなったことを適切に検出することが可能となる。
【0012】
また、本発明は上記の液体検出システムを実現するための液体容器の態様として把握することもできる。すなわち、
外部に液体を供給する液体容器であって、
前記液体を内部に収容する液体収容部と、
前記液体収容部に収容した液体を外部に供給する供給口と、
前記液体収容部と前記供給口との間に設けられて、該液体収容部からの液体で内部が満たされるとともに、少なくとも一部に変形可能な可変部を有するキャビティと、
前記キャビティの内部に設けられた受圧部材と、
前記受圧部材を介して前記キャビティの内側から前記可変部を付勢する付勢部材と、
を備え
前記受圧部材は、該受圧部材と前記付勢部材とが当接する面に、該当接する面の中心から該当接する面の外側へ抜ける切欠きが設けられていることを要旨とする。
【0013】
このような本発明の液体容器においては、液体収容部内の液体が無くなると、液体収容部からキャビティに液体が供給されなくなるので、キャビティ内の圧力が低下して、可変部および受圧部材の位置が移動する。従って、例えば液体容器の外部から受圧部材の位置の変化を検出することで、液体収容部内に液体が残っているか否かを検出することが可能である。また、受圧部材と付勢部材との当接面には、当接面の内側から外側に抜ける切欠きが設けられているので、当接部分に溜まった気泡を逃がすことができる。その結果、キャビティ内に気泡が残存することを効果的に抑制し、液体容器内の液体が無くなったことを適切に検出することが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の液体容器においては、キャビティの可変部に当接された受圧部材の位置の変化を検出する検出手段を液体容器の内部に設けることとしてもよい。こうすれば、液体容器の外部に受圧部材の位置の変化を検出するための構成を設けなくても、液体容器内の液体の有無を検出することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明の液体容器においては、受圧部材と付勢部材とが当接する面に沿ってキャビティ内の液体が流れる方向と略同方向に、受圧部材の切欠きを設けることとしてもよい。
【0016】
こうすれば、キャビティ内の液体が受圧部材と付勢部材とが当接する面に沿って受圧部材の切欠き部分を通過し、受圧部材の外側に抜ける。従って、受圧部材と付勢部材との当接面に溜まった気泡が液体の流れによって当接面の外側に排出されるので、キャビティ内に気泡が溜まることをより効果的に抑制することができる。その結果、液体容器内の液体が無くなったことを適切に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】インクジェットプリンターの構成を例示した説明図である。
【図2】カートリッジホルダーにインクカートリッジを装填する様子を示した説明図である。
【図3】インクカートリッジの構成を示した分解斜視図である。
【図4】本実施例のインク検出装置の詳細な構造を示した分解斜視図である。
【図5】インク検出装置によってインクパック内のインクが無くなったことを検出する方法を示した説明図である。
【図6】本実施例のインク検出装置においてバネ受部と付勢バネとが当接する面に気泡が溜まることが抑制される理由を示した説明図である。
【図7】変形例のインク検出装置の構造を示した説明図である。
【図8】変形例の受圧板を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
B.本実施例のインク検出装置の構造:
C.変形例:
【0019】
A.装置構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その左隣には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷用紙が排出される細長い排紙口12が現れる。また、インクジェットプリンター10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられており、給紙トレイに印刷用紙をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから印刷用紙が給紙され、内部で表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙が排出されるようになっている。
【0020】
また、インクジェットプリンター10の上面側には上面カバー14が設けられている。上面カバー14は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー14を開くと、インクジェットプリンター10の内部の状態を確認したり、あるいはインクジェットプリンター10の修理などを行ったりすることが可能となっている。
【0021】
また、インクジェットプリンター10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙上にインクドットを形成する噴射ヘッド20や、噴射ヘッド20を往復動させる駆動機構30などが搭載されている。噴射ヘッド20の底面側(印刷用紙に向いた側)には、複数の噴射ノズルが設けられており、噴射ノズルから印刷用紙に向かってインクを噴射する。
【0022】
また、噴射ノズルから噴射するインクは、インクカートリッジ40と呼ばれる専用容器に収容されている。インクカートリッジ40は、噴射ヘッド20とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー42に装填され、インクカートリッジ40内のインクは、インクチューブ24を介して噴射ヘッド20に供給される。本実施例のインクジェットプリンター10では、前面カバー11の右隣に、下端側で軸支されたカートリッジ交換用カバー13が設けられており、カートリッジ交換用カバー13の上端側を手前に倒すことによって、インクカートリッジ40を着脱可能となっている。
【0023】
尚、図示したインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、このことと対応して、噴射ヘッド20には、インクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。そして、それぞれの噴射ノズルには、対応するインクカートリッジ40内のインクが、インクの種類毎に設けられたインクチューブ24を介して供給されるようになっている。
【0024】
噴射ヘッド20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部は噴射ヘッド20に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドしながら、噴射ヘッド20を主走査方向に往復動させることが可能となる。
【0025】
また、噴射ヘッド20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションにはメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、噴射ヘッド20の底面側(印刷用紙に向いた側)で噴射ノズルが形成されている面(ノズル面)に押し付けられて、噴射ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ50や、噴射ヘッド20のノズル面に押し付けるためにキャップ50を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ50が噴射ヘッド20のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。
【0026】
更に、インクジェットプリンター10の内部には、印刷用紙を紙送りするための図示しない紙送機構や、インクジェットプリンター10の全体の動作を制御する制御部60なども搭載されている。噴射ヘッド20を往復動させる動作や、印刷用紙を紙送りする動作や、噴射ノズルからインクを噴射する動作や、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、全て制御部60によって制御されている。
【0027】
図2は、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子を示した説明図である。図示されているように、カートリッジホルダー42には、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44が、インクカートリッジ40毎に設けられている。この挿入孔44の奥側の面には、インクカートリッジ40からインクを取り入れるためのインク取入針46が手前側に向けて設けられている。また、インクカートリッジ40の背面には、図示しないインク供給口が設けられている。カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインク供給口に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0028】
また、カートリッジホルダー42には、図示しないインク通路やダイアフラムポンプが内蔵されており、インク取入針46から取り入れられたインクは、インク通路によって、カートリッジホルダー42の背面側に接続されたインクチューブ24(図1参照)に導かれる。さらに、インク通路上に設けられたダイアフラムポンプは、インクカートリッジ40内のインクを吸入して、噴射ヘッド20に向けてインクを圧送するようになっている。尚、前述したように本実施例のインクジェットプリンター10は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4色分のインクカートリッジ40を搭載しており、インクカートリッジ40内のインクは、それぞれ独立して噴射ヘッド20に供給される。このため、カートリッジホルダー42の内部には、インク通路やダイアフラムポンプがインクカートリッジ40毎に設けられている。
【0029】
図3は、本実施例のインクカートリッジ40の構成を示した分解斜視図である。図示されているように、インクカートリッジ40は、インクを収容するインクパック70と、インクパック70を収納するカートリッジケース72と、インクパック70の紙面手前側の縁部に設けられたインク供給ユニット74などから構成されている。インク供給ユニット74には、インクカートリッジ40の製造段階でインクパック70内にインクを充填する際に用いるインク注入口80や、噴射ヘッド20に向けてインクパック70内のインクを供給するためのインク供給口82や、インクパック70内のインクの有無を検出するためのインク検出装置84などが設けられている。インク検出装置84の詳細な構造については後述する。
【0030】
インクパック70を収納するカートリッジケース72は、本体ケース76および蓋部78から構成されている。箱形に形成された本体ケース76は、内部にインクパック70を収納可能となっている。一方、蓋部78は、本体ケース76の開口部を封じる(蓋をする)部材である。このような本体ケース76と蓋部78とは、本体ケース76の開口部に蓋部78を嵌め込むことによって接合される。また、蓋部78には、インクパック70のインク供給口82を蓋部78の外側に出すための供給口穴86が設けられており、蓋部78で本体ケース76の開口部を封じると、インク供給口82が供給口穴86の位置に固定されるようになっている。
【0031】
B.本実施例のインク検出装置の構造 :
図4は、本実施例のインクカートリッジ40に搭載されているインク検出装置84の詳細な構造を示した分解斜視図である。尚、図4には、インク供給口82を鉛直上方に向けた状態で、インクパック70の上方からインク検出装置84を見たときの様子が示されている。
【0032】
図示されるように、本実施例のインク検出装置84は、大まかには、インクパック70からのインクで内部が満たされる略円筒形のキャビティ90と、キャビティ90内に収容される各種の部品と、これらの部品をキャビティ90内に収容した状態でキャビティ90の開口部を封止するフィルム106と、フィルム106で開口部を封止したキャビティ90に取り付けられるレバー108などから構成される。尚、本実施例のキャビティ90は、本願発明の「キャビティ」に対応し、キャビティ90の開口部を封止するフィルム106は、本願発明のキャビティの「可変部」に対応する。
【0033】
詳細には後述するが、本実施例のインクカートリッジ40では、インクパック70内のインクが図示しない内部通路を通ってインク供給口82から外部に流出する途中で、キャビティ90を経由するようになっている。これに伴って、キャビティ90には、インクパック70内からのインクが流入する流入口92と、キャビティ90内のインクをインク供給口82へ流出させる流出口94とが設けられている。
【0034】
また、キャビティ90の内部には、キャビティ90からインクパック70にインクが逆流することを防止するための逆止弁102や、キャビティ90の内部からフィルム106を付勢するための付勢バネ100(付勢部材)が設けられており、これら逆止弁102および付勢バネ100とフィルム106との間には受圧板105(受圧部材)が設けられている。
【0035】
受圧板105には、流入口92からキャビティ90にインクが流入することを許容しつつ、逆止弁102が流入口92の上流側に移動することを規制する移動規制部104や、キャビティ90の底面から紙面上方に立設された凸部96との間に付勢バネ100を挟み込むバネ受部103などが設けられている。尚、本実施例の移動規制部104とバネ受部103とは、連結して1つの部材に形成されているが、移動規制部104とバネ受部103とは分離した別の部材であっても構わない。また、本実施例の受圧板105のバネ受部103は、付勢バネ100と当接する面が凹形状に形成された略円盤状の部材となっており、円盤の中央付近から外周に向かって部材の一部が切り欠かれている。こうした切欠きをバネ受部103に設けておく理由については後述する。
【0036】
以上のような受圧板105の移動規制部104をキャビティ90の流入口92に嵌め込むと、流入口92の下流側に逆止弁102が隔離されて上流側への移動が規制されるとともに、バネ受部103の裏面の凹部に付勢バネ100の一端(凸部96に固定されていない側の端部)が固定されて、キャビティ90の所定の位置に付勢バネ100が位置決めされる。
【0037】
また、フィルム106で密閉したキャビティ90の紙面上方にはレバー108が設けられており、レバー108の一端に設けられた取付け穴をキャビティ90の外側面に設けられた突起に嵌め込むことで、取付け穴の位置を中心としてレバー108が回転可能に支持される。以上のように構成される本実施例のインク検出装置84では、次のようにしてインクパック70内のインクが無くなったことを検出する。
【0038】
図5は、本実施例のインク検出装置84がインクパック70内のインクが無くなったことを検出するメカニズムを示した説明図である。図5には、図4に示した状態でキャビティ90の中心を通るAA’線を図4の矢印方向からみた断面をとり、この断面をインクパック70の手前側から見た様子が示されている。尚、図5(a)にはインク供給口82からインクを吸い出していない状態でのインク検出装置84の様子が示されており、図5(b)にはインク供給口82からインクを吸い出している状態でのインク検出装置84の様子が示されている。
【0039】
図5(a)に示されるように、インク供給口82からインクを吸い出していない状態では、キャビティ90内の付勢バネ100によってバネ受部103がフィルム106の方向に付勢され、これによりバネ受部103と当接する部分のフィルム106が変形して、レバー108を紙面上方に押し出そうとする力が作用する。
【0040】
また、レバー108の表面側(キャビティ90と向かい合う面とは反対側)からは、図示しない付勢機構によってレバー108を押し戻そうとする力がレバー108に作用している。図中には、付勢機構によってレバー108に作用する力の方向が矢印によって示されている。そして、レバー108に作用するこれらの逆方向の力が釣り合ったところで、図5(a)に示されるように、レバー108が少しだけ押し出された状態が維持されるようになっている。
【0041】
また、本実施例のインクカートリッジ40では、キャビティ90とインクパック70とを接続する内部通路110の径よりも、キャビティ90とインク供給口82とを接続する内部通路112の径の方が大きくなっている。このため、噴射ヘッド20にインクを供給すべくインク供給口82からインクを吸い出すと、キャビティ90内は負圧となる。このとき、図5(b)に示されるように、負圧によってフィルム106がキャビティ90の内側に向かって変形し、その結果、付勢機構(図示せず)によってレバー108が押し下げられる。
【0042】
ここで、インクパック70内にインクが残っている状態であれば、遅れてキャビティ90内にインクが供給されることにより、キャビティ90内の圧力が元に戻る。このため、インク供給口82からインクを吸引してから一定の期間が経過すれば、フィルム106が元の状態(図5(a)の状態)に戻ることで、バネ受部103によって再びレバー108が押し出される。従って、インクを吸引してから一定期間の経過後に、レバー108の先端部分に設けられたフォトセンサー120によってレバー108を検出した場合には、インクパック70内にインクがまだ残っているものと判断する。
【0043】
尚、本実施例では、レバー108を検出するフォトセンサー120はインクカートリッジ40の内部に設けるものとして説明するが、フォトセンサー120はインクカートリッジ40の外部(例えばカートリッジホルダー42内)に設けることとして構わない。この場合、例えばレバー108の動きをインクカートリッジ40の外側に伝達するための機構(伝達機構)を設けておき、この伝達機構介して、レバー108の位置の変化をカートリッジホルダー42側のフォトセンサー120で検出することとしてもよい。
【0044】
一方、インクパック70内のインクが無くなった場合、キャビティ90から流出した分のインクがキャビティ90に供給されないので、付勢機構(図示せず)によってレバー108が押し下げられたままとなる。従って、インク供給口82からインクを吸い出した後に一定期間が経過してもフォトセンサー120によってレバー108が検出されなくなるので、この場合にはインクパック70内にインクが無くなったものと判断する。以上のように、本実施例のインク検出装置84では、キャビティ90内の圧力変化をバネ受部103の位置の変化(および、これに伴うレバー108の位置の変化)として検出することにより、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することが可能となっている。
【0045】
尚、本実施例のフォトセンサー120は、レバー108を介してフィルム106(可変部)に当接する受圧板105のバネ受部103(受圧部材)の位置の変化を検出することから、本願発明の「検出手段」に対応する。
【0046】
ここで、上述したように、本実施例のインク検出装置84のキャビティ90の内部はたいへん狭い空間となっている。このため、キャビティ90内にインクを初めて充填する時(初期充填時)にはキャビティ90内に気泡が混入することがある。特に、付勢バネ100とバネ受部103とが当接する位置ではバネ受部103が凹形状に形成されているため(図4を参照)、凹の内部に気泡が混入すると気泡が抜け出すことが困難となり、キャビティ90内に気泡が残存することとなる。そして、上述したように、本実施例のインク検出装置84では、キャビティ90内の圧力変化を検出することでインクパック70内のインクの有無を検出しているので(図5を参照)、キャビティ90内に気泡が残った状態では、インクパック70内のインクの有無を適切に検出することができなくなる。
【0047】
そこで、本実施例のインク検出装置84では、前述したように、キャビティ90内の受圧板105のバネ受部103の部材の一部を切り欠いておくことにより(図4を参照)、付勢バネ100とバネ受部103とが当接する位置に気泡が残存することを抑制している。以下ではこの点について説明する。
【0048】
図6は、本実施例のインク検出装置においてバネ受部103と付勢バネ100とが当接する位置に気泡が溜まることが抑制される理由を示した説明図である。尚、図6には、図5に示したキャビティ90の縦断面を拡大した様子が示されている。
【0049】
前述したように、本実施例のバネ受部103は、付勢バネ100との当接面が凹形状に形成された円盤状の部材であり、円盤の内側から外周に向かって部材の一部が切欠かれている(図4を参照)。このため、図6(a)に示されるように、バネ受部103と付勢バネ100とが当接する面の内側から当接面の外側に向かって、バネ受部103の肉厚に相当する深さの通路が形成される。
【0050】
また、バネ受部103が切欠かれる方向は、キャビティ90の流入口92から流出口94にインクが流れる方向と略同方向となっている。また、この方向はキャビティ90に取り付けられたレバー108の基部から先端に向かう方向(受圧板105の移動規制部104からバネ受部103に向かう方向)ともなっている。このため、図6(b)に示されるように、流入口92から流出口94へと移動するインクの流れの一部は、バネ受部103と付勢バネ100とが当接する面に沿ってバネ受部103の切欠き部分を通過し、バネ受部103の外側に抜けて流出口94へと移動する。その結果、バネ受部103と付勢バネ100とが当接する面に溜まった気泡がバネ受部103の外側に排出され、さらに流出口94からキャビティ90の上流側に気泡が排出される。
【0051】
以上のように形成されたバネ受部103を備える本実施例のインク検出装置84によれば、バネ受部103と付勢バネ100との当接部分に溜まった気泡をバネ受部103の外側に逃がすことができる。従って、キャビティ90内に気泡が溜まることを抑制することができるので、気泡によってキャビティ90内の圧力変化に影響が生ずることを防ぐことができる。その結果、キャビティ90の圧力変化を適切に反映した態様によってバネ受部103が移動することにより、インクパック70内のインクが無くなったことを適切に検出することが可能となる。
【0052】
また、前述したように、バネ受部103はキャビティ90内のインクの流れの方向と略同方向に切り欠かれている(図6を参照)。従って、バネ受部103の位置でキャビティ90内のインクの流れが滞ることを抑制することができる。その結果、インクカートリッジ40からインクを容易に吸い出すことができるので、インク供給口82からカートリッジホルダー42側にインクを吸い出すポンプ(本実施例ではダイアフラムポンプ)の負担を軽減することが可能となる。
【0053】
更に、バネ受部103に切欠きを設けておけば、インクカートリッジ40の製造段階においてインク検出装置84を組み立てる際に、キャビティ90に受圧板105を取り付けた状態でバネ受部103に付勢バネ100が取り付けられているか否かを確認することができる。従って、付勢バネ100を取り付け忘れた場合には、そのことを製造者が容易に発見することができるので、インクカートリッジ40の不良品が生ずることを抑制することが可能となる。
【0054】
C.変形例 :
上述した本実施例のインクカートリッジ40のインク検出装置84では、バネ受部103の切欠く際には、バネ受部103の上面(フィルム106と当接する側の面)の部材まで切欠くものと説明した。しかし、バネ受部103の切り欠きは気泡が通過できる隙間を形成するものであればよいので、必ずしもバネ受部103の上面の部材まで切欠く必要はない。例えば、図8に示すように、バネ受部103の上面から立設する側面(側壁)のみに切欠きを設けることとしてもよい。
【0055】
図7は、変形例のインク検出装置84の内部の様子を示した説明図である。尚、以下に説明する変形例において、上述した本実施例と同様の構成部分については、本実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。図示されるように、変形例のインク検出装置84では、バネ受部103の肉厚が、図6に示したバネ受部103の肉厚よりも厚めに形成されている。そして、図6に示したバネ受部103の切欠きと同じ位置に、同じ深さの切欠きを設けている。
【0056】
前述したように、バネ受部103の上面には、レバー108の接点108aを介して付勢機構からの押圧力がかかっている(図5を参照)。したがって、上述した方法によりバネ受部103に切欠きを設けることとすれば、バネ受部103と付勢バネ100との当接面に溜まった気泡の排出性を確保しつつ、レバー108の接点108aからの押圧力に対するバネ受部103の耐久性を高めることが可能である。
【0057】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…インクジェットプリンター、 20…噴射ヘッド、 40…インクカートリッジ、 42…カートリッジホルダー、 60…制御部、 70…インクパック、 74…インク供給ユニット、 82…インク供給口、 84…インク検出装置、 90…キャビティ、 92…流入口、 94…流出口、 96…凸部、 100…付勢バネ、 103…バネ受部、 104…移動規制部、 105…受圧板、 106…フィルム、 108…レバー、 110…内部通路、 112…内部通路、 120…フォトセンサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容部内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体収容部に収容された液体を外部に供給する供給口と該液体収容部との間に設けられて、該液体収容部からの液体で内部が満たされるとともに、少なくとも一部に変形可能な可変部を有するキャビティと、
前記キャビティの内部に設けられた受圧部材と、
前記受圧部材を介して前記キャビティの内側から前記可変部を付勢する付勢部材と、
前記付勢部材によって前記可変部に当接された前記受圧部材の位置の変化を検出する検出手段と
を備え、
前記受圧部材は、該受圧部材と前記付勢部材とが当接する面に、該当接する面の内側から該当接する面の外側へ抜ける切欠きが設けられている液体検出システム。
【請求項2】
前記受圧部材は、該受圧部材の切欠きが、該受圧部材と前記付勢部材とが当接する面に沿って前記キャビティ内の液体が流れる方向と略同方向に設けられている請求項1に記載の液体検出システム。
【請求項3】
外部に液体を供給する液体容器であって、
前記液体を内部に収容する液体収容部と、
前記液体収容部に収容した液体を外部に供給する供給口と、
前記液体収容部と前記供給口との間に設けられて、該液体収容部からの液体で内部が満たされるとともに、少なくとも一部に変形可能な可変部を有するキャビティと、
前記キャビティの内部に設けられた受圧部材と、
前記受圧部材を介して前記キャビティの内側から前記可変部を付勢する付勢部材と
を備え
前記受圧部材は、該受圧部材と前記付勢部材とが当接する面に、該当接する面の中心から該当接する面の外側へ抜ける切欠きが設けられている液体容器。
【請求項4】
前記付勢部材によって前記可変部に当接された前記受圧部材の位置の変化を検出する検出手段を備える請求項3に記載の液体容器。
【請求項5】
前記受圧部材は、該受圧部材の切欠きが、該受圧部材と前記付勢部材とが当接する面に沿って前記キャビティ内の液体が流れる方向と略同方向に設けられている請求項3または請求項4に記載の液体容器。
【請求項6】
液体を収容する液体収容部内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体収容部に収容された液体を外部に供給する供給口と該液体収容部との間に設けられて、該液体収容部からの液体で内部が満たされるとともに、少なくとも一部に変形可能な可変部を有するキャビティと、
前記キャビティの内部に設けられた受圧部材と、
前記受圧部材を介して前記キャビティの内側から前記可変部を付勢する付勢部材と、
前記付勢部材によって前記可変部に当接された前記受圧部材の位置の変化を検出する検出手段と
を備え、
前記受圧部材は、該受圧部材と前記付勢部材とが当接する面から立設された側面に切欠きが設けられている液体検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−136012(P2012−136012A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245216(P2011−245216)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】