説明

液体検出装置及びそれを用いた液体収容容器

【課題】センサチップと回路基板とを接続する中継端子の配置スペースが狭い制約の中で、センサチップ及び回路基板に対する接触圧を共に十分に確保する。
【解決手段】液体検出装置は、開口部を介して流路が露出形成された本体ケースと、本体ケースの流路に臨んで配置されるセンサベースと、センサベースに搭載されたセンサチップと、センサベースが保持される開口部を封止するフィルムと、センサチップと対向して本体ケースに支持される回路基板と、センサチップと回路基板とを電気的に接続する中継端子260とを有する。中継端子260は本体ケースに固定される基端部262と、基端部より二股状に分離されて延びる第1および第2の自由端部270,280とを含む。第1の自由端部270に、回路基板に接続される第1の接点272が形成され、第2の自由端部280に、センサチップに接続される第2の接点282が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にインクジェット式記録装置等の液体消費装置における液体(インク)残量等の検出に適した液体検出装置及びそれを用いた液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体消費装置の代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレイ、面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【0003】
液体消費装置の代表例であるインクジェット式記録装置においては、圧力発生室を加圧する圧力発生手段と加圧されたインクをインク滴として射出するノズル開口とを有するインクジェット記録ヘッドが、キャリッジに搭載されている。インク収容容器内のインクが流路を介して記録ヘッドに供給され続けることにより、印刷を継続可能に構成されている。インク収容容器は、例えばインクが消費された時点でユーザーが簡単に交換できる、着脱可能なカートリッジとして構成されている。
【0004】
従来、インクカートリッジのインク消費の管理方法としては、記録ヘッドでのインク滴の射出数やメンテナンスにより吸引されたインク量をソフトウェアにより積算してインク消費を計算により管理する方法や、インクカートリッジに液面検出用の電極を取付けることにより実際にインクが所定量消費された時点を管理する方法などがある。
【0005】
しかしながら、ソフトウェアによりインク滴の吐出数やインク量を積算してインク消費を計算上管理する方法には、次のような問題がある。ヘッドの中には吐出インク滴に重量バラツキを有するものがある。このインク滴の重量バラツキは画質には影響を与えないが、バラツキによるインク消費量の誤差が累積した場合を考慮して、マージンを持たせた量のインクをインクカートリッジに充填してある。従って、個体によってはマージン分だけインクが余るという問題が生ずる。
【0006】
一方、電極によりインクが消費された時点を管理する方法は、インクの実量を検出できるので、インク残量を高い信頼性で管理できる。しかしながら、インクの液面の検出をインクの導電性に頼ることになるので、検出可能なインクの種類が限定され、電極のシール構造が複雑化してしまうという欠点がある。また、電極の材料としては、通常は導電性が良く耐腐食性も高い貴金属が使用されるので、インクカートリッジの製造コストがかさむ。さらに、2本の電極を装着する必要があるため、製造工程が多くなり、結果として製造コストがかさんでしまう。
【0007】
そこで、上記の課題を解決すべく開発された装置が、特許文献1に圧電装置(ここでは、センサユニットと言う)として開示されている。このセンサユニットは、圧電素子が積層された振動板に対向するセンサキャビティの内部に、インクが存在する場合とインクが存在しない場合とで、強制振動後の振動板の残留振動(自由振動)に起因する残留振動信号の共振周波数が変化することを利用して、インクカートリッジ内のインク残量を監視するというものである。
【0008】
また、特許文献2には、ユニットベースの凹所内に、圧電素子を含むセンサチップを搭載した金属製センサベースをフィルムによって封止して配置してアッセンブリー化した技術が開示されている。このユニットベースのセンサベースが、インク収容容器のインク送出流路に臨むように配置される。この際、ユニットベースがシーリングゴムを介してインク収容容器に対して液密に配置される。シーリングゴムでの液密性を担保するために、ユニットベースをインク収容容器側に押圧するスプリングを設けていた。
【0009】
センサチップはユニットベースに保持された回路基板と電気的に接続される。この際、センサチップと回路基板とを電気的に接続する中継端子は、ユニットベースに確実に固定され、かつ、限られた小スペースにて電気的接続を確保する形状とする必要がある。従来の端子構造として、特許文献3−5が知られている。
【特許文献1】特開2001−146030号公報
【特許文献2】特開2006−281550号公報
【特許文献3】特開2001−57204号公報
【特許文献4】特開平5−52866号公報
【特許文献5】特開2003−346931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2の技術は、特許文献1に開示された検出原理を実現することができるが、インク収容容器とは別にユニットベースを設ける必要があり、このユニットベースをインク収容容器に液密に固定するためにシーリングゴムとスプリングが不可欠であった。
【0011】
このように、特許文献2の技術では、部品点数が増大する上、シーリングゴムでの液密性を確保するための組立が煩雑であった。
【0012】
また、ユニットベースは、ポリプロピレンとエラストマとの二色成形であるため高価となる。
【0013】
特許文献3−5の端子構造に関する技術は、それぞれの発明が対象とする固有の接点同士を接続するものであって、本発明が対象とするセンサチップ及びそれと平行な回路基板の接続にはなじまない。特に、センサチップと回路基板とを接続する中継端子の配置スペースが狭くなると、中継端子を熱溶着等により固定する固定部は一箇所しか確保できない制約が生じ、その制約の中で、センサチップ及び回路基板に対する接触圧を共に十分に確保する要求を満たす必要がある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、センサチップと回路基板とを接続する中継端子の配置スペースが狭い制約の中で、センサチップ及び回路基板に対する接触圧を共に十分に確保することが可能な液体検出装置及びそれを用いた液体収容容器を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、中継端子を熱溶着等により固定する固定部は一箇所しか確保できない制約の中で、かつ、センサチップ及び回路基板に対する接触圧を共に十分に確保したときの作用・反作用に拘わらず、中継端子を確実に位置決めできる液体検出装置及びそれを用いた液体収容容器を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、上述した中継端子の構造を確保しつつ、液体検出時の振幅を大きくできる構造を備えた液体検出装置及びそれを用いた液体収容容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様に係る液体検出装置は、
開口部を介して流路が露出形成された本体ケースと、
前記本体ケースの前記開口部より前記流路に臨んで配置されるセンサベースと、
前記センサベースが前記流路に臨む面とは逆側の面に搭載された、圧電素子を含むセンサチップと、
前記センサベースを前記開口部に保持し、かつ、前記開口部を封止するフィルムと、
前記センサチップと対向して前記本体ケースに支持される回路基板と、
前記センサチップと前記回路基板とを電気的に接続する中継端子と、
を有し、
前記中継端子は、
前記本体ケースに固定される基端部と、
前記基端部より二股状に分離されて延びる第1および第2の自由端部と、
を含み、
前記第1の自由端部に、前記回路基板に接続される第1の接点が形成され、前記第2の自由端部に、前記センサチップに接続される第2の接点が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様によれば、中継端子は、本体ケース(液体検出装置の本体ケースまたは液体収容容器の本体ケース)に固定される基端部より二股状に分離されて延びる第1および第2の自由端部を有している。換言すれば、第1,第2の自由端部が基端部262から同一方向に沿って延在形成されながらも、両者の間にスリットが存在していることから、2つの接点間に基端部、つまり熱溶着などの固定部が介在することになる。よって、第1の自由端部に形成された第1の接点がばね性を持って回路基板に作用するコンタクト圧力を調整しても、その反作用力は基端部に吸収され、第2の自由端部に影響しない。逆に、第2の自由端部に形成された第2の接点がばね性を持ってセンサチッブに作用するコンタクト圧力を調整しても、その反作用力は基端部に吸収され、第1の自由端部に影響しない。こうして、センサチップと回路基板とを接続する中継端子の配置スペースが狭い制約の中で、センサチップ及び回路基板に対する接触圧を共に十分に確保することができる。特に、中継端子を熱溶着等により固定する固定部は、基端部に一箇所しか確保できない制約の中で、センサチップ及び回路基板に対する接触圧を共に十分に確保することができる。
【0019】
本発明の一態様では、前記第1の接点および前記第2の接点は、前記基端部が当接する前記本体ケースの二次元平面に対して、互いに逆方向の向きに屈曲して形成することができる。第1,第2の接点のばね性は、基端部より二股状に分離されて延びる第1,第2の自由端部にて、基端部を支点として確保できる。加えて、第1,第2の接点を互いに逆向きに屈曲することで、対向間距離のある回路基板およびセンサチッブに、それぞれ所定のコンタクト圧を確保しながら、第1および第2の接点を接触させることができる。
【0020】
本発明の一態様では、前記基端部から前記第1の自由端部には至る長さが、前記基端部より前記第2の自由端部に至る長さよりも長く形成され、前記本体ケースは、前記第1の自由端部の幅方向での両端と当接する位置決め部を有することができる。
【0021】
中継端子は、基端部の一箇所にて本体ケースに固定されるが、その他端側にて位置決め、特に基端部を回転中心とする回転方向への規制を行なうことが好ましい。本発明の一態様では、第2の自由端部よりも長く形成された第1の自由端部の途中にて、その幅方向の両端と当接する位置決め部を本体ケースに設け、それにより中継端子の位置決め、特に回転方向の位置決めを行うことができる。
【0022】
本発明の一態様では、前記中継端子は、前記基端部と前記第1の自由端部との間に中間部を有し、前記第1の自由端部は、前記中間位置と前記第1の自由端部との境界にて折り返えされた折り返し屈曲部を有し、前記折り返し屈曲部に前記第1の接点を形成することができる。第1の自由端部は必ずしも折り返す必要はないが、折り返すことで第1の接点を回路基板の電極位置に合せ易くなる。
【0023】
またこの場合、前記本体ケースは、前記中間部の幅方向での両端と当接する位置決め部を有し、前記位置決め部は前記二次元平面より突出した突起により形成することができる。つまり、中間部を被位置決め部として利用することができる。このとき、中間部は屈曲されずに基端部と同一平面である。よって、基端部を固定する本体ケースは、基端部の固定面と同一平面である二次元平面より突出した突起により形成することができる。
【0024】
さらに、前記中間部は、前記第2の自由端部と並行して延在する幅狭部と、前記幅狭部と前記第1の自由端部との間に配置され、前記第2の自由端部側に膨出した幅広部とを含むことができる。この場合、前記位置決め部は、前記幅広部の幅方向の両端と当接するように設ければ良い。また、被位置決め部を幅広に形成できるので、被位置決め部としての強度を担保することができる。
【0025】
本発明の一態様では、本体ケース内にて前記流路を上流側と下流側とに仕切る隔壁をさらに備え、前記センサチップは、検出対象の液体を受け入れるセンサキャビティを有し、前記センサベースは、前記流路の上流側より前記センサキャビティに前記液体を導く第1の孔と、前記センサキャビティより前記流路の下流側に前記液体を導く第2の孔と、を含み、前記センサベースは、前記開口部の奥行き方向では、前記センサベースの前記第1,第2の孔の間に位置して、前記隔壁のみを介して前記本体ケースと接触可能とすることができる。
【0026】
本発明の一態様では、圧電素子が振動すると、圧電素子を含むセンサチップが搭載されているセンサベースも振動する。このセンサベースと本体ケースとの接触面積が大きいと、センサベースの振動は本体ケースに吸収されてしまう。この場合、圧電素子にて検出される例えば残留振動波形の振幅は、圧電素子にて検出できる程度の充分な大きさが得られなくなる。本発明の一態様では、実施形態では、センサベースは、開口部の奥行き方向では隔壁のみを介して本体ケースと接触可能である。従って、本体ケースに吸収される振動は最小限となり、圧電素子にて検出可能な充分な振幅を確保できる。また、センサベースを開口部に取り付ける際に、隔壁によってセンサベースを支持でき、センサベースが開口部の奥方に落下することを防止できる。
【0027】
本発明の一態様では、前記本体ケースは、前記センサベースと対向する位置に流路壁を有し、前記隔壁は、前記本体ケースの前記流路壁に一体的に形成されて前記センサベースに向けて延在することができる。この場合、本体ケースの成形時に隔壁を一体的に形成できる。
【0028】
本発明の一態様では、前記本体ケースは、前記センサベースを前記開口部に取り付ける組立時に、前記隔壁以外の1または複数箇所にて前記センサベースを支持する補助支持部をさらに有することができる。これにより、センサベースを開口部に取り付ける際に、少なくとも2点支持されるので、組立時にセンサベースを安定して支持できる。
【0029】
ただし、前記補助支持部は、前記センサベースが前記フィルムによって前記流路壁に対して実質的に平行に支持された状態では前記センサベースと非接触である。これにより、圧電素子での検出時には、センサベースは隔壁のみと接触可能となり、圧電素子にて検出可能な充分な振幅を確保できる。なお、液体検出装置を落下させた際のように、衝撃力が作用する異常時には、センサベースが補助支持部と接触して、センサベースの傾きを規制できる。これにより、センサベースによってフィルムが破断されることを防止できる。
【0030】
以上の効果を得るために、前記流路壁から前記補助支持部の先端までの高さを、前記流路壁から前記隔壁の先端までの高さよりも低くすることができる。
【0031】
本発明の一態様では、前記フィルムによって支持された前記センサベースと、隔壁とが常時接触していることまで要求されない。フィルムによって支持されたセンサベースと隔壁との間に僅かな間隙があってもよい。ただし、前記本体ケースに一体形成した前記隔壁との間の間隙の流路抵抗が、前記第1の孔の流路抵抗よりも大きいことが条件となる。これにより、間隙を介して上流側から下流側に液体または気泡が通過することを阻止でき、隔壁としての機能を担保できるからである。また、圧電素子での検出振幅を大きくするには、センサベースと隔壁とが非接触のほうがより好ましい。
【0032】
本発明の一態様では、前記隔壁の基端部よりも先端部が薄く形成され、薄い先端部を前記センサベースの前記第1,第2の孔間に位置させることができる。こうすると、隔壁の成形性が良好となり、しかも、隔壁によって第1,第2の孔の一部が塞がれることを防止できる。
【0033】
本発明の一態様では、上述した隔壁は、前記第1,第2の孔の間にて前記センサベースに一体的に形成されてもよい。また、上述した補助支持部をセンサベースと一体的に形成しても良い。この場合、前記センサベースから前記補助支持部の先端までの高さを、前記センサベースから前記隔壁の先端までの高さより低くすることができる。
【0034】
本発明の一態様では、前記本体ケースが、前記液体を収容する容器の一部とすることができ、本発明のさらに他の態様では、上述した液体検出装置を含む液体収容容器が定義されている。
【0035】
液体検出装置の本体ケースが液体収容容器と一体であると、センサベースの振動が液体収容容器に吸収されてしまうので、本発明を適用する意義が大きい。また、こうすると、液体検出装置と液体収容容器との間でシールの必要がなく、シーリングゴムやスプリングを排除して部品点数が減少し、組立性も良好となる。なお、本発明の液体検出装置は、本体ケースを液体収容容器の一部とするものに限定されるものではない。液体検出装置のケース本体の容量が大きいと振動吸収も大きいので、圧電素子での検出振幅を大きく確保する観点から、本発明の意義がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0037】
(インクカートリッジの概要)
本発明の実施形態の液体検出装置付きのインクカートリッジ(液体収容容器)について、図面を参照して説明する。
【0038】
図1は、本実施形態のインクカートリッジが使用されるインクジェット式記録装置(液体消費装置)の概略構成を示す。キャリッジ1は、キャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介して、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
【0039】
キャリッジ1の記録用紙6に対向する側にはインクジェット式記録ヘッド12が搭載されている。キャリッジ1の上部に設けられたホルダ(図示せず)には記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ100が着脱可能に装着されている。
【0040】
この記録装置の非印字領域であるホームポジション(図1中、右側)にはキャップ部材13が配置されている。キャップ部材13は、キャリッジ1に搭載された記録ヘッド12がホームポジションに移動した時に、記録ヘッド12のノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成する。キャップ部材13の下方には、キャップ部材13により形成された密閉空間に負圧を与えて、クリーニング等を実施するためのポンプユニット10が配置されている。
【0041】
キャップ部材13における印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えたワイピング手段11が、記録ヘッド12の移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されている。ワイピング手段11は、キャリッジ1がキャップ部材13側に往復移動するに際して、必要に応じて記録ヘッド12のノズル形成面を払拭する。
【0042】
図2は、インクカートリッジ100の概略構成を示す分解斜視図である。なお、図1はインクカートリッジ100がキャリッジ1に装着された状態での上下方向と一致した状態で図示されている。よって、以下の説明で用いる上下の用語とは、インクカートリッジ100をキャリッジ1に搭載した状態での上下方向を意味する。
【0043】
インクカートリッジ100は、本体ケース102の裏面を覆うフィルム104と、フィルム104及び本体ケース102の底面を覆う蓋体106と、本体ケース102の表面及び上面を覆うフィルム108と、を有する。
【0044】
本体ケース102は、リブや壁によって複雑に区画されている。本体ケース102には、インク収容領域及びインク送出流路からなるインク流路部と、インク収容領域を大気に連通させるインク側通路と、大気弁収容室及び大気側通路からなる大気連通部とを備えているが、その詳細な説明は省略する(例えば、特開2007−15408参照)。
【0045】
インク流路部のインク送出流路は、最終的にはインク供給部110に連通され、このインク供給部110からインクカートリッジ100内のインクが負圧によって吸い上げられて供給される。
【0046】
インク供給部110には、キャリッジ1に設けられたホルダのインク供給針(図示せず)が嵌入される。インク供給部110には、インク供給針に押圧されて摺動、開弁する供給弁112と、インク供給針の周囲に嵌合するエラストマ等の弾性材料からなるシール部材114と、供給弁112をシール部材114に向けて付勢するコイルバネからなる付勢部材116とを有する。これらは、付勢部材116を装填し、次いでシール部材114をインク供給部110に嵌合させ、最後に供給弁112を押し込むことにより組み立てられている。
【0047】
本体ケース102の一側面には、キャリッジ1に設けられたホルダ側に係合されるレバー120が設けられている。本体ケース102の一側面であって、例えばレバー120の下方位置には、インク供給部110の上流側であって、インク送出流路の終端位置が開口する開口部130が形成されている。開口部130の周縁には溶着用リブ132が形成されている。この開口部130に臨むインク送出流路134を上流バッファ室134a及び下流バッファ室134b(図2では符号を省略、後述の図6及び図7参照)に仕切る隔壁リブ136が形成されている。
【0048】
(インク検出装置の概要)
次に、本体ケース102、インク送出流路134及び隔壁リブ136を用いて構成される本発明に係る液体検出装置に係るインク検出装置200の概要について、図2及び図3を参照して説明する。図3は、図2に示すインクカートリッジ100のうち、インク検出装置200を拡大して示している。ただし、図2及び図3では、比較例としての中継端子240を示している。
【0049】
図2及び図3において、インク検出装置200は、インク送出流路134が形成された樹脂製の本体ケース102と、本体ケース102の開口部130よりインク送出流路134に臨んで配置される金属製のセンサベース210と、センサベース210がインク送出流路134に臨む面とは逆側の面に搭載されたセンサチップ220と、センサベース210を開口部130に保持し、かつ、開口部130を封止するフィルム202と、本体ケース102内にてインク送出流路134を上流側と下流側とに仕切る隔壁136とを含んでいる。フィルム202は、センサベース210の上面に接着されると共に、開口部130の周囲の溶着用リブ132に溶着される。
【0050】
図2及び図3では、インク検出装置200はさらに、センサベース210、センサチップ220及びフィルム202の上側に配置される押さえカバー230と、押さえカバー230に収容され、フィルム202に形成された孔202aを介してセンサチップ220と電気的に接触する接点242を備えた比較例である中継端子240と、押さえカバー230に収容され、かつ、中継端子240の接点244と電気的に接続される回路基板250とを有することができる。なお、後述する通り、押さえカバー230は本体ケース102にて兼用することが可能である。
【0051】
(中継端子及び押さえカバー)
図2及び図3に示す中継端子240の機能自体に問題はないが、小型化などの要求から図3に示す長さLを短くする要求がある。図3に示す中継端子240は、2つの孔246,246を有し、この各孔246,246に押さえカバー230のボス(図示省略)が挿入された後に熱溶着され。こうして、中継端子240は押さえカバー230に固定される。2つの孔(熱溶着固定部)246,246にて押さえカバー230に固定される中継端子240は、2つの接点242,244での接触圧を適正に調整しても、その反作用は、接点242,244間に介在配置された熱溶着固定部246,246によって、互いの接点242,244に影響を及ぼさない。ここで、上述したように長さLを小さくしようとすると、2箇所に熱溶着部を設けることができなくなる。
【0052】
そこで、本実施形態では図3に示す押さえカバー230及び中継端子240を改良した。図4(A)および図4(B)は、改良された中継端子の平面図及び右側面図であり、図5および図6は中継端子260をそれぞれ異なる角度から見た斜視図である。また、図7(A)は改良された押さえカバー232の平面図、図7(B)は押さえカバー232の縦断面図、図7(C)は押さえカバー232の横断面図、図8及び図9は押さえカバー232はそれぞれ異なる角度から見た斜視図である。
【0053】
図4〜図6に示す中継端子260は、本体ケース102または図7〜図9に示す押さえカバー232に固定される基端部262と、基端部270より二股状に分離されて延びる第1および第2の自由端部280,290と含んでいる。つまり、基端部262より平行に延びる第1,第2の自由端部270,280の間にはスリット266が形成されている。第1の自由端部270の先端側には回路基板250に接続される第1の接点272が形成され、第2の自由端部280の先端側にはセンサチップ220に接続される第2の接点282が形成されている。そして、基端部262には、本体ケース102または押さえカバー230に形成されるボス233(図7−図8参照)が挿通されて熱溶着される孔264が形成されている。
【0054】
よって、図4〜図6に示す中継端子260は、第1,第2の自由端部270,280が基端部262から同一方向に沿って延在形成されながらも、両者の間にスリット266が存在していることから、2つの接点272,282間に熱溶着固定部264が介在することになる。従って、第1の自由端部270に形成された第1の接点272がばね性を持って回路基板260に作用するコンタクト圧力を調整しても、その反作用力は基端部262に吸収され、第2の自由端部280に影響しない。逆に、第2の自由端部280に形成された第2の接点282がばね性を持ってセンサチッブ220に作用するコンタクト圧力を調整しても、その反作用力は基端部262に吸収され、第1の自由端部270に影響しない。こうして、センサチップ220と回路基板250とを接続する中継端子260の配置スペースが狭い制約の中で、センサチップ220及び回路基板250に対する接触圧を共に十分に確保することができる。特に、中継端子260を熱溶着等により固定する固定部264は、基端部262に一箇所しか確保できない制約の中で、センサチップ220及び回路基板230に対する接触圧を共に十分に確保することができる。
【0055】
図4〜図6に示す中継端子260では、第1の接点272および第2の接点282は、基端部262が当接する本体ケース101または押さえカバー232の二次元平面234(図7−図8参照)に対して、互いに逆方向の向きに屈曲して形成している。こうして、第1,第2の接点272,282を互いに逆向きに屈曲することで、対向間距離のある回路基板250およびセンサチッブ220に、それぞれ所定のコンタクト圧を確保しながら、第1および第2の接点272,282を接触させることができる。
【0056】
図4〜図6に示す中継端子260では、基端部262から第1の自由端部270の第1の接点272に至る長さが、基端部262より第2の自由端部280の第2の接点282に至る長さよりも長く形成されている。
【0057】
このために、中継端子260は、基端部262と第1の自由端部270との間に中間部290を有する。第1の自由端部270は、中間部290と第1の自由端部270との境界にて、U字状またはV字状に折り返えされた折り返し屈曲部274を有する。この折り返し屈曲部274に、第1の接点272が形成されている。第1の自由端部270は必ずしも折り返す必要はないが、折り返すことで第1の接点272を回路基板250の電極位置に合せ易くなるという利点を有する。
【0058】
また、中間部290を形成する理由として、本体ケース102または押さえカバー232に位置決めされる被位置決め部を配置しやすくなるという利点がある。つまり、中継端子260は、基端部262の一箇所(孔264)にて本体ケース102または押さえカバー230のボス233(図7−図8参照)に固定されるが、その他端側にて位置決め、特に基端部262を回転中心とする回転方向への規制を行なうことが好ましい。図4〜図6に示す本実施形態に係る中継端子260では、第2の自由端部280よりも長く形成された第1の自由端部270の途中の中間部290にて、その幅方向の両端と当接する位置決め部235(図7−図8参照)を本体ケース102または押さえカバー232に設けることができる。
【0059】
本実施形態では、中間部290は、第2の自由端部280と並行して延在する幅狭部292と、幅狭部292と第1の自由端部270との間に配置され、第2の自由端部280側に膨出した幅広部294とを含むことができる。この場合、位置決め部は、幅広部294の幅方向の両端294a,294bと当接するように設ければ良い。また、被位置決め部294を幅広に形成できるので、被位置決め部294としての強度を担保することができる。
【0060】
またこの場合、中間部290は屈曲されずに基端部262と同一平面である。よって、基端部262を固定する本体ケース102または押さえカバー232は、基端部262の固定面と同一平面である二次元平面234より突出した突起235を位置決め部として形成することができる。
【0061】
なお、第1の自由端部270は必ずしも折り返し部294を有するものに限らない。二股に分かれた一方の第1の自由端部270が斜め上方に屈曲し、他方の第2の自由端部280は図5と同様に斜め下方に屈曲するものであっても良い。この場合、第1,第2の接点272,282のばね性は、基端部262を支点として、基端部262より二股状に分離されて延びる第1,第2の自由端部270,280のばね性により確保できる。
【0062】
押さえカバー322を用いる場合、この押さえカバー232は図7(B)(C)及び図9に示すように、裏面側より突出する複数の脚部236を有し、この複数の脚部236が本体ケース102に係止保持される。なお、押さえカバー232は、図7〜図9に示すように、表裏面に貫通される切欠部237を有する。この切欠部237を介して、中継端子260の第2の自由端部280がセンサチッブ220側と接触する位置まで案内される。さらに、押さえカバー232は回路基板250の載置面238を含み(図7−図8参照)、この載置面238上に回路基板250が載置される。載置面250に載置された回路基板250は、載置面238より突出したボス239を熱溶着することで、載置面238上に手固定される。
【0063】
インク検出装置200の詳細について、図10〜図19を参照して説明する。図10は本体ケース102の正面図である。図10のA1−A1断面図である図11に示すように、インク送出流路134は、図1に示すインク供給部110に至る前の終端側の位置にて、開口部130によって露出されている。
【0064】
図10のB1−B1断面図である図12と、インクカートリッジ100の右側面図である図13に示すように、開口部130により露出されたインク送出流路134は、隔壁136により、上流バッファ室134aと下流バッファ室134bとに仕切られている。なお、図12に示すように、上流バッファ室134aに臨んで供給口135aが配置され、図10に示すように、下流バッファ室134bに臨んで排出口135bが配置されている。
【0065】
図14は、センサベース210を下方から見た斜視図である。図15に示すように、センサベース210には、厚さ方向で貫通する第1の孔(供給路)212と第2の孔(排出路)214とが設けられている。
【0066】
図15は、センサチップ220が搭載されたセンサベース210を上方から見た斜視図である。また、図16は、図2及び図3に示すインク検出装置200を組み立てた状態を模式的に示す断面図である。また、図23はセンサチップの断面図である。
【0067】
図16及び図23において、センサチップ220は検出対象のインク(液体)を受け入れるセンサキャビティ222を有しており、センサキャビティ222の下面をインクの受け入れを可能とするために開放している。センサキャビティ222の上面は、図15及び図23に示すように振動板224で塞がれている。さらに、振動板224の上面に圧電素子226が配置されている。
【0068】
具体的に述べると、図23に示すように、センサチップ220は、キャビティ板300に振動板224を積層して構成されて、互いに対向する第1面300aおよび第2面300bを有した振動キャビティ形成基部300を有する。センサチップ220はさらに、キャビティ形成基部300の第2面300b側に積層された圧電素子226を備える。
【0069】
振動キャビティ形成基部300には、検出対象の媒体(インク)を受け入れるための円筒形の空間形状を呈するキャビティ222が、第1面300a側に開口するようにして形成されており、キャビティ222の底面部222aが振動板224にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板224全体のうちの実際に振動する部分は、222によってその輪郭が規定されている。振動キャビティ形成基部300の第2面300b側の両端には、電極端子228,228が形成されている。
【0070】
振動キャビティ形成基部300の第2面300bには下部電極310が形成されており、この下部電極310は一方の電極端子228に接続されている。
【0071】
下部電極310の上には圧電層312が積層されており、この圧電層312には、上部電極314が積層されている。上部電極314は、下部電極310と絶縁された補助電極320に接続されている。この補助電極320に他方の電極端子228が接続されている。
【0072】
圧電素子226は、例えば、センサキャビティ222内のインクの有無による電気特性(例えば周波数)の違いでインクエンドを判断する機能を果たす。圧電層の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、等を用いることができる。
【0073】
センサチップ220は、チップ本体の下面をセンサベース210の上面中央部に載せることにより、接着層216によってセンサベース210に一体に固着されており、その接着層216によって同時に、センサベース210とセンサチップ220間がシールされている。
【0074】
(インク残量検出)
図16に示すように、インク送出流路134の供給口135aから導入されたインクは、隔壁136で仕切られた一方の部屋である上流バッファ室134aに停留する。
【0075】
この上流バッファ室134aは、センサベース210の第1の孔212を介して、センサチップ220のセンサキャビティ222と連通している。このため、上流バッファ室134a内のインクは、インク導出に伴って第1の孔212を介してセンサキャビティ222に導かれる。ここで、圧電素子226により振動される振動版224からの振動がインクに伝達され、その残留振動波形の周波数によって、インクの有無が検出される。センサキャビティ222に、インク以外に空気が混入するエンドポイトでは、残留振動波形の減衰が大きく、インクが充満状態のときと比べて高周波数となる。これを検出することで、インクエンド検出が可能となる。
【0076】
具体的には、圧電素子226に電圧を印加すると、圧電素子226の変形に伴い振動板224が変形する。圧電素子226を強制的に変形させた後、電圧の印加を解除すると、しばらくは、たわみ振動が振動板224に残留する。この残留振動は、振動板224とセンサキャビティ222内の媒体との自由振動である。従って、圧電素子226に印加する電圧をパルス波形あるいは矩形波とすることで、電圧を印加した後の振動板224と媒体との共振状態を容易に得ることができる。
【0077】
この残留振動は、振動板224の振動であり、圧電素子226の変形を伴う。このため、残留振動に伴って圧電素子226は逆起電力を発生する。
【0078】
回路基板250は、図16に示すように、表裏面に貫通するスルーホール252に接続された電極254を有する。センサチップ220からの信号は、中継端子260を経由して回路基板250側に伝達される。
【0079】
ここで、図4〜図6に示した中継端子260を、図7〜図9に示した押さえカバー232を介して本体ケース102に取り付けた状態であって、図16とは異なる方向から見た状態を、図17及び図18に示す。図17は回路基板250を取り除いた平面図であり、図18は図16とは直交する方向の断面図である。
【0080】
図16〜図18において、センサチップ220からの信号は、中継端子260の第2の接点282、第2の自由端部280、基端部262、中間部290、第1の自由端部270、第2の接点272を経由して、かつ、スルーホール252及び電極254を介して、プリンタ本体に搭載される解析回路(図示せず)に入力される。この解析装置で処理され、その結果が回路基板250に搭載された半導体記憶装置(図示せず)に伝送される。つまり、圧電素子226の逆起電力は、中継端子260を介して解析回路に伝達され、その結果を半導体記憶装置に記憶される。
【0081】
このようにして検出された逆起電力によって共振周波数が特定できるので、この共振周波数に基づいてインクカートリッジ100内のインクの有無を検出することができる。なお、半導体記憶装置には、インクカートリッジ100の種類等の識別情報と、インクカートリッジ100が保持するインクの色の情報ならびにインクの現存量等の情報が格納される。この際、上述したように、中継端子260の第1,第2の接点272,282は適正なコンタクト圧力に調整できるので、信号伝送を確実に行なうことができる。
【0082】
センサキャビティ222内に停留したインクは、さらなるインクの導出に伴って、センサベース210の第2の孔214を介して下流バッファ室134bに導かれる。さらには、インク排出口135bを介してインク送出流路134に沿って導出され、最終的にはインク供給部110(図2参照)を介してインクカートリッジ100より排出される。
【0083】
(センサベースの支持方法及び支持構造)
開口部130にセンサベース210、センサチップ220及びフィルム202を装着するには、次の二工程が必要である。つまり、センサチップ220が搭載された金属製センサベース210を、流路134が形成された本体ケース102の開口部130より流路134に臨んで配置する第1工程と、開口部130の周囲のリブ132にフィルム202を溶着して、フィルム202を介してセンサベース210を本体ケース102に支持する第2工程とが必要である。なお、第1工程及び第2の工程によって、センサチップ220に形成されたセンサキャビティ222が、センサベース210に形成された第1の孔212を介して上流バッファ室134aと連通され、かつ、センサベース210に形成された第2の孔214を介して下流バッファ室134bと連通されて、液体の検出経路を形成することは上述の通りである。
【0084】
本実施形態では、フィルム202の溶着前の第1工程にあっては、隔壁136によってのみセンサベース210が支持されている(隔壁による支持機能)。フィルム202が開口部130の周囲の溶着用リブ132に溶着される前にあっては、センサベース210が開口部130の所定の位置に仮位置決めされなければならないからである。また、第2工程にてフィルム202によってセンサベース210が支持された後は、開口部130の奥行き方向では、センサベース210は隔壁136のみと接触可能である(隔壁による上流・下流の仕切り機能)。なお、センサベース210はフィルム202によって支持されるので、センサベース210が常時隔壁136と接触していることは要求されないが、隔壁136の上流・下流仕切り機能は常時求められる。
【0085】
ここで、図16に示すように、本実施形態では、インク送出経路134を区画するために、センサベース210と対向して配置された流路壁102aを有する。そして、隔壁136は、この流路壁102aと一体的に形成されている。この隔壁136は、インク送出流路134を上流バッファ室134aと下流バッファ室134bとに仕切るために不可欠な構造である。なぜなら、隔壁136が存在しないと、インク送出経路134内の媒体であるインクまたは気泡がセンサキャビティ222を経由することが保障されないからである。インク送出経路134内のインクまたは気泡がセンサキャビティ222を経由しないと、センサチップ220はインクエンドポイントを誤検出してしまう。
【0086】
インク送出流路134を上流バッファ室134aと下流バッファ室134bとに仕切るためには、隔壁136がセンサベース210と当接するか、あるいはセンサベース210と隔壁136との間の間隙を介して少なくとも気泡が通過しないように、わずかな間隙でなければならない。換言すれば、第1の孔212の流路抵抗よりも間隙の流路抵抗が大きく、少なくとも気泡の通過は許されない。これが、隔壁136の本来的な機能である。
【0087】
一方、隔壁136はセンサベース210の装着時(第1工程)にはセンサベース210に当接して支持され、開口部130の奥方にセンサベース210が落下してしまうことを防止できる。つまり、第1工程では、隔壁136がセンサベース210の仮支持機能を有する。
【0088】
フィルム202が開口部130の周囲の溶着用リブ132に溶着されて、センサベース210及びセンサチップ220が開口部130に取り付けられた後も、センサベース210はセンサチップ220及びフィルム202以外には隔壁136のみと接触する。つまり、開口部130の奥行き方向では、センサベース210は隔壁136とのみ接触可能である。
【0089】
このことが、圧電素子226による残留振動波形の検出を可能とする。なぜなら、本実施形態ではインク検出装置200の本体ケース102は、インクカートリッジ100の本体ケースの一部であり、容量が大きい。一般に、本体ケース102は樹脂製例えばポリプロピレン等の柔軟材で形成されるが、容量が大きいと振動吸収が大きくなる。
【0090】
ここで、圧電素子226が振動すると、振動版224の他、このセンサチップ220が搭載されているセンサベース210も振動する。このセンサベース210と本体ケース102の接触面積が大きいと、センサベース102の振動は本体ケース102に吸収されてしまう。この場合、残留振動波形の振幅は、圧電素子226にて検出できる程度の充分な大きさが得られない。
【0091】
本実施形態では、センサベース210はフィルム202と隔壁136のみによって支持されているので、本体ケース102に吸収される振動波は最小限となり、圧電素子226にて検出可能な充分な振幅を確保している。
【0092】
図19は、隔壁136の途中で切断した状態を下方から見た図である。隔壁136は、センサベース210の第1,第2の孔212,214の間に位置する。しかも、隔壁136の先端部の最大厚さは、隔壁136が第1,第2の孔212,214と接する場合であり、第1,第2の孔212,214を塞ぐものであってはならない。所定に設計された第1,第2の孔の流路抵抗を増大させるからである。
【0093】
(変形例)
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【0094】
隔壁136は、図20(A)(B)に示すように、流路壁102a側の基端136aよりも、自由端136bの厚さを薄くしたテーパ形状としてもよい。つまり、基端136aが第1,第2の孔212,214のエッジ間距離よりも広くても、自由端136bの厚さが図16と同様にエッジ間距離以下であればよい。第1,第2の孔212,214での流路抵抗を増大させることがないからである。基端136aを厚くすることで、射出成形時の成形性を改善できる。なお、自由端136bを薄くする手法としては、図20(B)のように傾斜テーパ面とすることの他、自由端部を湾曲させてもよい。
【0095】
センサベース210の取り付け時の安定性を高めるためには、図21(A)(B)のように構成しても良い。つまり、隔壁136以外の補助支持リブ138を設けても良い。図21(A)(B)では、センサベース210の長手方向の両端側にて当接可能な2つの補助支持リブ138を配置した。ただし、流路壁102aから、2つの補助支持リブ138の先端に至る高さH1は、隔壁136の先端までの高さH2よりも低い。
【0096】
図16に示す実施形態では、センサベース210の取り付け時には隔壁136によってのみ支持されるので、センサベース210はシーソーのように中心支持となり、安定性はよくない。図21(A)(B)の実施形態では、センサベース210が傾いても、その下降した端部が補助支持リブ138に当接するので、隔壁136との2点支持となって安定する。
【0097】
ただし、補助支持リブ138は、センサベース210の組立後にあっては、図21(B)に示すように、センサベース210が流路壁102aとほぼ平行に配置されるので、センサベース210は補助支持リブ138と非接触となる。これにより、図16の実施形態と同様に残留振動波形の振幅を大きく確保できる。
【0098】
また、補助支持リブ138は、センサベース210の組立後にあっても、落下衝撃力が作用するように異常時でも、センサベース210が過度に傾くことを防止できる。このため、フィルム202に支持されたセンサベース210が過度に傾いて、フィルム202を突き破ってしまうことを防止できる。
【0099】
また、隔壁136は、流路壁102aに設けるものに限らない。例えば、図22に示すように、センサベース210の第1,第2の孔212,214の間より垂下する隔壁216を設けても良い。この隔壁216は、流路壁102aと接触するか、第1の孔212の流路抵抗よりも大きい流路抵抗をもつ僅かな間隙を介して対向する。図22ではさらに、センサベース210の例えば長手方向の両端位置にて垂下する補助支持リブ218を設けている。センサベース210の下面から、2つの補助支持リブ218の先端に至る高さH1は、隔壁216の先端までの高さH2よりも低い。こうしても、図21(A)(B)の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、流路壁102aとセンサベース210の一方に隔壁を設け、他方に補助支持リブを設けても良い。このように、センサベース210に隔壁216及び/または補助支持リブ218を設ける場合には、センサベース210は例えば切削加工となる。
【0100】
また、本発明の液体収容容器の用途は、インクジェット記録装置のインクカートリッジに限らない。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。
【0101】
液体消費装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレイ、面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等が挙げられる。
【0102】
また、本発明の液体検出装置は、オンキャリッジタイプのインクカートリッジに組み込まれるものに限らず、キャリッジに搭載されないサブタンクや、オフキャリッジタイプのインクカートリッジ等に組み込まれても良い。
【0103】
また、本発明の液体検出装置または液体収容容器は、図24に示すように、液体検出装置のケース本体を液体収容容器のケース本体の一部として用い、押さえカバー232を排除することも可能である。つまり、回路基板250は、本体ケース102に直接指示しても良い。
【0104】
さらには、上述した実施形態では、液体検出装置のケース本体を液体収容容器のケース本体の一部として、特許文献2のようなシーリングゴムやスプリングを排除したが、これに限定されない。液体収容容器のケース本体とは別個のユニットとして液体検出装置を構成しても良い。この場合、シーリングゴムやスプリングを排除できないかもしれないが、ユニットケースが大型化したとしても、そのユニットケースでの振動吸収を最小限に抑えて検出波形の振幅を大きく確保することに寄与できる。
【0105】
上記実施形態において、液体噴射装置を、記録用紙(図示略)の搬送方向(前後方向)と交差する方向において記録ヘッド19が記録用紙(図示略)の幅方向(左右方向)の長さに対応した全体形状をなす、いわゆるフルラインタイプ(ラインヘッド方式)のプリンタに具体化してもよい。
【0106】
上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散または混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸またはアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「液体」とは、気体のみからなる液体を含まない概念であり、液体には、例えば無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等のほかに、液状体、流状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】液体消費装置であるインクジェット式プリンタの概略斜視図である。
【図2】プリンタのキャリッジに着脱されるインクカートリッジの分解斜視図であり、比較例である中継端子を示している。
【図3】図3の一部を拡大したインク検出装置の分解斜視図である。
【図4】図4(A)および図4(B)は、改良された中継端子の平面図及び右側面図である。
【図5】中継端子の斜視図である。
【図6】中継端子を図5とは異なる角度から見た斜視図である。
【図7】図7(A)は改良された押さえカバーの平面図、図7(B)は押さえカバーの縦断面図、図7(C)は押さえカバーの横断面図である。
【図8】押さえカバーの斜視図である。
【図9】押さえカバーを図8とは異なる角度から見た斜視図である。
【図10】インクカートリッジの正面図である。
【図11】図10のA1−A1断面図である。
【図12】図10のB1−B1断面図である。
【図13】インクカートリッジの右側面図である。
【図14】センサベースを裏から見た斜視図である。
【図15】センサチップが搭載されたセンサベースを表から見た斜視図である。
【図16】インク検出装置の組立後の断面図である。
【図17】図16に示すインク検出装置から回路基板を取り除いた状態の平面図である。
【図18】図16とは直交する方向でのインク検出装置の断面を示す断面図である。
【図19】センサベースの第1,第2の孔と隔壁との位置関係を示す概略説明図である。
【図20】図20(A)(B)は、隔壁の変形例を示す図である。
【図21】図21(A)(B)は、補助支持部を設けた変形例を示す図である。
【図22】隔壁及び補助支持部をセンサベース側に設けた変形例を示す図である。
【図23】センサチップの断面図である。
【図24】押圧カバーを排除して回路基板を本体ケースに直接支持した変形例の断面図である。
【符号の説明】
【0108】
100 液体収容容器(インクカートリッジ)、102 本体ケース、102a 流路壁、110 液体供給部、130 開口部、132 溶着用リブ、134 流路(送出流路)、134a 上流バッファ室、134b 下流バッファ室、135a 供給口、135b 排出口、136 隔壁、136a 基端部、136b 自由端部、138、補助支持部、200 液体検出装置、202 フィルム、210 センサベース、212 第1の孔(供給路)、214 第2の孔(排出路)、216 隔壁、218 補助支持部、220 センサチップ、222 センサキャビティ、224 振動版、226 圧電素子、228 電極、230,232 押さえカバー、233 ボス(熱溶着部)、234 二次元平面、235 位置決め部、236 脚部、237 回路基板載置面、239 ボス8熱溶着部)、240 中継端子、250 回路基板、260 中継端子、262 基端部、264 孔(熱溶着固定部)、266 スリット、270 第1の自由端部、272 第1の接点、274 折り返し屈曲部、280 第2の自由端部、282 第2の接点、290 中間部、292 幅狭部、294 幅広部、294a,294b 被位置決め部、300 キャビティ形成基部、300a 第1面、300b 第2面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を介して流路が露出形成された本体ケースと、
前記本体ケースの前記開口部より前記流路に臨んで配置されるセンサベースと、
前記センサベースが前記流路に臨む面とは逆側の面に搭載された、圧電素子を含むセンサチップと、
前記センサベースを前記開口部に保持し、かつ、前記開口部を封止するフィルムと、
前記センサチップと対向して前記本体ケースに支持される回路基板と、
前記センサチップと前記回路基板とを電気的に接続する中継端子と、
を有し、
前記中継端子は、
前記本体ケースに固定される基端部と、
前記基端部より二股状に分離されて延びる第1および第2の自由端部と、
を含み、
前記第1の自由端部に、前記回路基板に接続される第1の接点が形成され、前記第2の自由端部に、前記センサチップに接続される第2の接点が形成されていることを特徴とする液体検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の接点および前記第2の接点は、前記基端部が当接する前記本体ケースの二次元平面に対して、互いに逆方向の向きに屈曲して形成されていることを特徴とする液体検出装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記基端部から前記第1の自由端部には至る長さが、前記基端部より前記第2の自由端部に至る長さよりも長く形成され、前記本体ケースは、前記第1の自由端部の幅方向での両端と当接する位置決め部を有する事を特徴とする液体検出装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記中継端子は、前記基端部と前記第1の自由端部との間に中間部を有し、
前記第1の自由端部は、前記中間位置と前記第1の自由端部との境界にて折り返えされた折り返し屈曲部を有し、前記折り返し屈曲部に前記第1の接点が形成されていることを特徴とする液体検出装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記本体ケースは、前記中間部の幅方向での両端と当接する位置決め部を有し、前記位置決め部は前記二次元平面より突出した突起により形成されていることを特徴とする液体検出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記中間部は、前記第2の自由端部と並行して延在する幅狭部と、前記幅狭部と前記第1の自由端部との間に配置され、前記第2の自由端部側に膨出した幅広部とを含み、
前記位置決め部は、前記幅広部の幅方向の両端と当接することを特徴とする液体検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
本体ケース内にて前記流路を上流側と下流側とに仕切る隔壁をさらに備え、
前記センサチップは、検出対象の液体を受け入れるセンサキャビティを有し、
前記センサベースは、前記流路の上流側より前記センサキャビティに前記液体を導く第1の孔と、前記センサキャビティより前記流路の下流側に前記液体を導く第2の孔と、を含み、
前記センサベースは、前記開口部の奥行き方向では、前記センサベースの前記第1,第2の孔の間に位置して、前記隔壁のみを介して前記本体ケースと接触可能であることを特徴とする液体検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記本体ケースは、前記液体を収容する容器の一部であることを特徴とする液体検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の液体検出装置を備えたことを特徴とする液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図17】
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【図18】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−96055(P2009−96055A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269354(P2007−269354)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】