説明

液体洗剤組成物

【課題】優れた洗浄力を示し、更にシリコーン配合した場合であっても、繊維製品に優れた吸水性を付与できる液体洗剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる化合物、(b)隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ一つヒドロキシ基を有する部位が一つ以上存在する化合物、(c)一般式(c1)で示されるモノマー構成単位c1と一般式(c2)で示されるモノマー構成単位c2とを特定のモル比で含む、重量平均分子量が1000〜100000のポリエステル系高分子化合物、(d)界面活性剤、及び水を、それぞれ特定範囲で含有し、〔(b)成分〕/〔(a)成分中のホウ素原子〕のモル比が1.5〜2.7であり20℃におけるpHが4〜7.5である液体洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗剤組成物、特に衣料等の繊維製品用として好適な液体洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の衣料用洗剤は、粉末洗剤に比べ、汚れた部分に水に直接塗布できるといった使いやすさの点で優れている。液体洗剤は、液状の界面活性剤を多量に配合することができることから、油汚れに強い非イオン界面活性剤や、ESと呼ばれるエーテル硫酸エステルなどを主基材とした洗浄剤を設計することができる。また液体洗剤は、軽質洗剤といわれる、ウールやシルクなどのデリケートな素材からなる衣料や、オシャレ着用の洗剤として応用できることが、古くから知られている。軽質洗剤は、そのpHを中性付近に調整することで、繊維素材への影響を抑制する一方で、風合い保持ないし付与の観点から、シリコーンや油などを配合する技術が用いられる場合がある。
【0003】
液体洗剤では、沈殿や相分離などが生じることは問題となるため、液相安定性が要求されることから、配合成分が制限される。例えば、液体洗剤にゼオライトなどの水不溶性の化合物を配合することが難しい。このことは、硬度成分によって影響される陰イオン界面活性剤の界面活性化能を低下させるだけでなく、洗浄力の点で不利である。
【0004】
一方、アルキレンテレフタレートやアルキレンイソフタレートを構成単位とするポリエステル系高分子化合物は、ソイルリリース剤(汚れ剥離剤)として用いることは知られており、洗剤などに応用されている。また、工業的に繊維製品にソイルリリース効果を付与する目的から、特許文献1にはポリエステル系高分子化合物とポリエーテル変性シリコーンを併用する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ホウ素化合物及びポリオール化合物を含有することで、希釈時にpH値が増加し、優れた漂白効果を示す漂白剤組成物が記載されている。
【特許文献1】特開平9−291483号公報
【特許文献2】特開2006−143907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリエステル系高分子化合物を液体洗剤に配合した場合、十分な洗浄力及びソイルリリース効果を得ることができないという課題があった。またシリコーンを含有する液体洗剤は、累積洗濯により繊維製品の吸水性を損う傾向にあった。
【0007】
本発明は、優れた洗浄力を示し、更にシリコーンを配合した場合であっても、繊維製品に優れた吸水性を付与できる液体洗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる化合物をホウ素原子として0.05〜1質量%、(b)隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ一つヒドロキシ基を有する部位が一つ以上存在する化合物を3〜35質量%、(c)下記一般式(c1)で示されるモノマー構成単位c1と下記一般式(c2)で示されるモノマー構成単位c2とを、c1/c2=10/90〜90/10のモル比で含む、重量平均分子量が1000〜100000の高分子化合物を0.01〜10質量%、(d)界面活性剤を5〜50質量%、及び水を含有し、〔(b)成分〕/〔(a)成分中のホウ素原子〕のモル比が1.5〜2.7であり20℃におけるpHが4〜7.5である液体洗剤組成物に関する。
【0009】
【化4】

【0010】
〔式中、R1、R2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、これらは同一又は異なっていてもよい。nは数平均で1〜150の数である。〕
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保存後も洗浄力に優れ、シリコーン配合時であっても吸水性に優れる液体洗剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の液体洗剤組成物は、(a)成分としてホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる化合物と、(b)成分として隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシ基を有する部位が1つ以上存在する化合物とからなるpHジャンプ系を、特定の組成及び比率で使用する。
【0013】
<(a)成分>
(a)成分の中でも、ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、4ホウ酸ナトリウム、4ホウ酸カリウム、4ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0014】
<(b)成分>
(b)成分としては、グリセロール類、グリコール類、糖アルコール類、還元糖類及び多糖類を挙げることができ、具体的には下記(1)〜(4)の化合物が好適である。
(1)グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、炭素数1〜10のアルキルグリセリルエーテル、アルキルジクリセリルエーテル、アルキルトリグリセリルエーテル、エチレングリコール、1,2プロピレングリコール等から選ばれるグリセロール類又はグリコール類。
(2)ソルビット、マンニット、マルチトース、イノシトール、フィチン酸等から選ばれる糖アルコール類。
(3)グルコース、アピオース、アラビノース、ガラクトース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロース、フルクトース等から選ばれる還元糖類。
(4)デンプン、デキストラン、キサンタンガム、グアガム、カードラン、プルラン、アミロース、セルロース等から選ばれる多糖類。
【0015】
本発明では、糖アルコール類(又はポリヒドロキシアルカンとも言う)が好ましく、更には前記(2)に具体的に挙げた糖アルコール類が好適であり、特にソルビットが安定性及び洗浄効果の点から好適である。
【0016】
(a)成分(ホウ素化合物)と(b)成分(α,β−ジヒドロキシ化合物)との間には下記のような平衡反応が存在する。
【0017】
【化5】

【0018】
本発明においてはジ体がpHジャンプ系の主要成分であることが希釈溶液のpHを高める点から8.5以上10.5未満にするために好適であり、具体的には、液体洗剤組成物中においてホウ素化合物の70〜100モル%がジ体であることが好ましい、モノ体の含有量はホウ素化合物の0〜5モル%未満が好ましく、単独で存在するホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩の含有量をホウ素化合物の0〜25モル%未満になるようにすることが好適である。従って本発明では〔(b)成分〕/〔(a)成分中のホウ素原子〕のモル比(例えば、ホウ砂及び4ホウ酸ナトリウムの場合はホウ素原子を4個含むため、4当量と考える)が1.5〜2.7、好ましくは2.0〜2.7、より好ましくは2.2〜2.7の極限られたモル比で混合することが洗浄力及び汚れ剥離性において好ましい。
【0019】
なお、本発明では(a)成分及び(b)成分を液体洗剤組成物に配合する場合には、液体洗剤組成物中では上記モノ体、及びジ体の化合物に変換されているため、本発明でいう(a)成分、及び(b)成分の含有量とは、単独で存在する(a)成分及び(b)成分の含有量に、上記モノ体、ジ体の含有量から(a)成分及び(b)成分の量を換算した量を加えた量の合計を意味する。(a)成分の含有量は、組成物中においてホウ素原子として0.05〜1質量%、好ましくは0.15〜0.5質量%、より好ましくは0.2〜0.4質量%である。(b)成分の含有量は、組成物中において3〜35質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
【0020】
なお、変換されたモノ体、ジ体の含有量は、ホウ素(11B)のNMRを用いることで算出することができる。
【0021】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、下記一般式(c1)で示されるモノマー構成単位c1と下記一般式(c2)で示されるモノマー構成単位c2とを、c1/c2=10/90〜90/10のモル比で含む、重量平均分子量が1000〜100000の高分子化合物である。モノマー構成単位c1とモノマー構成単位c2の配列はランダムでもブロックでも何れでも良い。また、c1/c2モル比は、90/10〜40/60、更に80/20〜45/55が好ましい。
【0022】
【化6】

【0023】
〔式中、R1、R2は炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくは炭素数2のエチレン基であり、これらは同一又は異なっていてもよい。nは数平均で1〜150、好ましくは10〜100の数である。〕
【0024】
本発明の(c)成分である高分子化合物の製法については、特に限定はしないが、例えば、不活性ガス中触媒存在下、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを160〜270℃に加熱してエステル化反応あるいはエステル交換反応させて、グリコールエステルを調整し、その後、適宜の時期にポリアルキレングリコールを添加混合して常圧あるいは減圧下にて重合させる。触媒としては、酸化バリウムあるいは酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、コハク酸亜鉛、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等の金属酸化物、有機金属化合物を用いることができる。
【0025】
(c)成分の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、アセトニトリルと水の混合溶液(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ポリエチレングリコールを標準物質として測定することができる。(c)成分の重量平均分子量は、1000〜100000であり、6000〜85000が好ましい。また、c1/c2モル比は、90/10〜40/60、更に80/20〜45/55が好ましい。
【0026】
本発明の液体洗剤組成物は、(c)成分を0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%含有する。
【0027】
<(d)成分>
本発明の(d)成分は界面活性剤である。(d)成分としては、陰イオン界面活性剤が挙げられ、具体的には、炭素数10〜18のアルキル鎖を持つ直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、炭素数10〜18のアルキル鎖を持つアルキル硫酸エステル、炭素数10〜18のアルキル鎖を持つポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、アルファスルホ脂肪酸アルキル(例えばメチル)エステル、炭素数8〜20の脂肪酸、及びこれらの塩、特にアルカリ金属塩が挙げられる。これら陰イオン界面活性剤のうち、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。陰イオン界面活性剤の対イオンとしてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属以外に、マグネシウム等のアルカリ土類金属を使用することができるが、アルカノールアミンの配合量は洗浄力を低下させるため制限される。詳しくは後述する。また脂肪酸またはその塩も配合が制限され、すべて脂肪酸とみなした場合の配合濃度が、1質量%以下、更に0.5質量%以下、特に0.01質量%未満であることが好ましい。
【0028】
他の(d)成分としては、非イオン界面活性剤が挙げられ、具体的には下記(I)〜(IV)の非イオン界面活性剤が挙げられる。
(I)平均炭素数が8〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキサイド(以下、EOと表記する)を平均で1〜20モルを付加したポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル。
(II)平均炭素数が8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、EOを平均で1〜15モル及びプロピレンオキサイド(以下、POと表記する)を平均で1〜5モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル。この場合、EO及びPOはランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよい。特にエリ・そで口汚れに対する高洗浄力を得ることができる点で、下記一般式(d1)で表される化合物が好ましい。
d1−O(EO)p(PO)q(EO)rH (d1)
〔式中、Rd1は炭素数8〜20の直鎖のアルキル基又はアルケニル基である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。p、q及びrは平均付加モル数を表しp>0、q=1〜4、r>0、p+q+r=6〜14、p+r=5〜12である。好ましくはp+q+r=7〜14、p+r=6〜12、q=1〜2である。〕
(III)次の一般式(d2)で表されるアルキル多糖界面活性剤。
d2−(ORd3ij (d2)
〔式中、Rd21は直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基もしくはアルケニル基、又はアルキル(炭素数4〜12)フェニル基、Rd3は炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、iは平均値0〜6の数、jは平均値1〜10の数を示す。〕
(IV)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
【0029】
特に、油性汚れ洗浄力の点で、(I)及び/又は(II)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有することが好ましく、(I)を含有することがより好ましい。
【0030】
他の(d)成分としては、モノ長鎖アルキルまたはアルケニル(炭素数8〜20)ジメチルモノベンジルアンモニウム塩、トリヒドロキシエチルアミンの飽和または不飽和脂肪酸(炭素数8〜20)エステル塩の混合物及びそれのジメチル硫酸の四級化物、及びジ長鎖アルキルまたはアルケニル(炭素数8〜20)ジメチルアンモニウム塩、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、モノ長鎖アルキル(炭素数8〜20)ジメチルアミン、及びN-アルカノイル(炭素数8〜20)アミノプロピル-N,N−ジメチルアミンなどの陽イオン界面活性剤、並びにアルキルカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドアミン型ベタイン及びアルキルイミダゾリン型ベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0031】
洗浄性能の点で、(d)成分は、組成物中の5〜50質量%となるように配合され、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%、最も好ましくは25〜40質量%となるように配合される。
【0032】
<(e)成分>
本発明の液体洗剤組成物は、(e)成分として、下記一般式(e)で表されるシリコーン誘導体を含有することで、洗浄後の繊維製品の風合いが向上する。また累積洗浄による吸水性の低下が少ない。
【0033】
【化7】

【0034】
〔式中、l=100〜600であり、m,nはl:m=100:1〜10:1、且つm:n=1:10〜10:1となる数である。Rは炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基であり、R1eは炭素数1〜4のアルキル基であり、それぞれ異なってもよい。Aは下記(イ)で表される基又は(イ)及び(ロ)で表される基であり、後者の場合、A中の(ロ)の割合は50モル%以下である。
【0035】
【化8】

【0036】
(ここで、a=2〜6、b=2〜6、R2eは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、p=1〜6、q=1〜20、r=0〜20、R3eは炭素数1〜18のアルキル基)、Bは-(CH2)a-O-(C24O)s-(C36O)t-R2'e又はR2e(ここで、R2'eは炭素数1〜10のアルキル基、s=1〜20、t=0〜20)を示す。尚、式(e)中に-C24O-及び-C36O-が存在する場合は、ブロック付加でもランダム付加でも良い。〕
【0037】
本発明の液体洗剤組成物の残部は、水である。硬度の影響がないイオン交換水が好ましい。また20℃における本発明の液体洗剤組成物の20℃におけるpHは、4〜7.5、好ましくは5〜7、より好ましくは6〜7である。このようなpHに調整するためのpH調整剤としては塩酸、硫酸及び硝酸等の無機酸、又は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の無機塩基を用いることが好ましい。すなわち本発明の液体洗剤組成物は、塩酸、硫酸及び硝酸から選ばれる無機酸、又は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる無機塩基によってpH調整されたものであることが好ましい。なおpHの測定は、JIS K 8802の7.2により行う。
【0038】
また、本発明の液体洗剤組成物の20℃における粘度は50〜500mPa・s、更に75〜300mPa・s、特に100〜250mPa・sが好ましい。粘度は、次のようにして測定する。まずTOKIMEC.INC製B型粘度計モデルBMに、ローター番号No.2のローターを備え付けたものを準備する。試料をトールビーカーに充填し20℃の恒温槽内にて20℃に調整する。恒温に調整された試料を粘度計にセットする。ローターの回転数を60r/mに設定し、回転を始めてから60秒後の粘度を本発明の粘度とする。
【0039】
<その他成分>
本発明の液体洗剤組成物において、有機キレート剤とアルカノールアミンの配合は、希釈時のpH変動を抑制し洗浄力を阻害する傾向があるため、その配合量は制限されることが好ましい。以下詳細に説明する。
【0040】
本発明では、有機キレート剤、特には分子量40〜400、好ましくは90〜360、より好ましくは100〜300の水溶性の有機キレート剤は配合量が制限される。
【0041】
配合量の制限対象となる有機キレート剤としては、具体的には前記分子量を有する有機酸系キレート剤であり、ギ酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれるカルボン酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、メチルグリシン2酢酸、グルタミン酸2酢酸、セリン2酢酸及びアスパラギン酸2酢酸から選ばれるアミノカルボン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びアミノトリメチレンホスホン酸から選ばれるホスホン酸、並びにそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0042】
本発明の液体洗剤組成物中の有機キレート剤の含有量は、酸型として換算した場合、十分な洗浄力を得るために組成物中に1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましく0.3質量%以下、最も好ましくは、実質的に配合しないことであり、他の成分からの持ち込みを考慮して0.01質量%未満であることが好ましい。有機キレート剤の過度の配合は洗浄力を低下させる。また重金属イオンによる影響をなくすために、有機キレート剤を配合せざるを得ない場合は、クエン酸、エチレンジアミン4酢酸及びそれらのアルカリ金属塩が使用しやすく、特に洗浄力の点でエチレンジアミン4酢酸またはそのアルカリ金属塩が奨励される。
【0043】
本発明では、アルカノールアミンの配合量は制限される。それは陰イオン界面活性剤の塩として用いる場合も同様である。アルカノールアミンとしてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールから選ばれるアルカノールアミンが挙げられる。
【0044】
本発明の液体洗剤組成物中のアルカノールアミンの含有量は、十分な洗浄力を得るために、単独で配合した分と他の成分からの持ち込まれる分との合計で、組成物中に2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.01質量%未満、最も好ましくは、実質的に配合しないことである。
【0045】
なお珪酸ナトリウムなどのケイ酸塩や炭酸ナトリウムなどの炭酸塩に代表される無機塩型のアルカリ剤もまた配合が制限される。好ましくは無水物に換算して1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.01質量%未満である。
【0046】
本発明の液体洗剤には、次の任意の成分を、それぞれ下記の範囲で配合することができる。
(i)エタノール等のアルコール類、エチレングリコール及びプロピレングリコール等のグリコール類、パラトルエンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)、並びに尿素等の減粘剤及び可溶化剤0.01〜30質量%
(ii)ポリオキシアルキレンベンジルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル等の相調整剤及び洗浄力向上剤0.01〜10質量%
(iii)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマー等の再汚染防止剤及び分散剤0.01〜10質量%
(iv)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤0.01〜10質量%
(v)アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ及びセルラーゼ等の酵素0.001〜2質量%
(vi)塩化カルシウム、硫酸カルシウム、ギ酸等の酵素安定化剤0.001〜2質量%
(vii)チノパールCBS(チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(住友化学社製)等の蛍光染料0.001〜1質量%
(viii)シリカ、(c)成分以外のシリコーン等の消泡剤0.01〜2質量%
(ix)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤0.01〜2質量%
(x)着色剤
(xii)香料
(xiii)防菌・防かび剤などの防腐剤
【実施例】
【0047】
表1に記載された液体洗剤組成物を用いて、調製直後、及び温度50℃、湿度40%の条件で20日保存した後の布帛の洗浄力及び吸水性を、下記方法で評価した。結果を表1に示す
【0048】
(I)洗浄力評価
(試験布前処理)
ターゴトメーターにて試験布(ポリエステル)を前処理する。試験布は10枚/浴とし、前処理用洗剤は表1の各組成物を使用する。前処理の条件は、20℃水道水にて機械力85rpm、洗浄10分、その後濯ぎを3分した後、脱水を行う。前記に記した工程について5回累積洗濯を行った後、1日室内で自然乾燥を行った。乾燥したポリエステル布に、モデル皮脂汚れを均一量塗布し、更に1日放置した後、洗浄評価に用いた。
【0049】
(洗浄条件及び評価方法)
JIS K 3362:1998記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法により、表1に示された各液体洗剤組成物と判定用指標洗剤の洗浄結果を比較した。液体洗剤組成物の使用濃度を0.83g/Lとした。洗浄力の判定は、各配合例が指標洗剤より勝る場合を「◎」、指標洗剤と同等の場合を「○」、指標洗剤より劣る場合を「×」とした。
【0050】
(II)吸水性の評価
1m×1mの金巾2003布(木綿100%)の約1.5kg分を市販の表1に記載の液体洗剤組成物を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で洗濯した〔洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)30L使用、洗濯10分−脱水3分−すすぎ8分(流水すすぎ、水量15L/min.)〕。洗濯後、3分間脱水し、金巾2003布を取り出し、室温で自然乾燥させた。これら一連の洗濯操作を20回繰り返し処理した後、室温で4時間自然乾燥させた後、標準試験室(25℃−65%RH)で24時間静置して調湿処理した。
【0051】
調湿処理した金巾2003布について、2.5cm×25cmの長さに切り取り、その短辺の一方を20℃のイオン交換水に1cmの深さまで浸漬した。浸漬から10分後に毛細管現象により吸水した水の水面からの吸水高さを測定した(JIS L1907(繊維製品の吸水性試験法))。吸水高さが8cm以上のものを◎、6cm以上8cm未満を○、4cm以上6cm未満を△、4cm未満を×として判定し表1に示した。最初に採取した金巾2003布(20回の洗濯操作を行わないもの)の吸水高さは10cmであった。
【0052】
【表1】

【0053】
なお表1記載の成分は、以下のものである。
・高分子化合物:Texcare SRN−170(Clariant社:重量平均分子量2700、平均EO付加モル数33.7)、モノマー構成単位c1とモノマー構成単位c2とをc1/c2=10/90〜90/10の範囲のモル比で含む高分子化合物に該当する。
・非イオン界面活性剤:炭素数12のアルキル基を有する直鎖第1級アルコールにEOを平均12モル付加させたもの。
・LAS−S剤:炭素数10〜14の直鎖アルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸
・シリコーン化合物:一般式(e)中のR、R1eはメチル基、A;(イ)−(CH23−NH−CO−CH2−O−(C24O)5−C1225および、(ロ)−(CH23−NH2の混合、(イ)/(ロ)=7/3(モル比)、B;−(CH23−O−(C24O)10−CH3、l=300、m=7、n=4
・酵素:デュラザイム16.0L(プロテアーゼ、ノボザイム社)
・pH調整剤:硫酸、水酸化ナトリウムを、表1中のpHとなるように適宜用いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる化合物をホウ素原子として0.05〜1質量%、(b)隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ一つヒドロキシ基を有する部位が一つ以上存在する化合物を3〜35質量%、(c)下記一般式(c1)で示されるモノマー構成単位c1と下記一般式(c2)で示されるモノマー構成単位c2とを、c1/c2=10/90〜90/10のモル比で含む、重量平均分子量が1000〜100000の高分子化合物を0.01〜10質量%、(d)界面活性剤を5〜50質量%、及び水を含有し、〔(b)成分〕/〔(a)成分中のホウ素原子〕のモル比が1.5〜2.7であり20℃におけるpHが4〜7.5である液体洗剤組成物。
【化1】


〔式中、R1、R2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、これらは同一又は異なっていてもよい。nは数平均で1〜150の数である。〕
【請求項2】
有機キレート剤の含有量が1質量%以下及びアルカノールアミンの含有量が2質量%以下である請求項1記載の液体洗剤組成物。
【請求項3】
更に、(e)下記一般式(e)で表されるシリコーン誘導体を0.1〜10質量%含有する請求項1又は2記載の液体洗剤組成物。
【化2】


〔式中、l=100〜600であり、m,nはl:m=100:1〜10:1、且つm:n=1:10〜10:1となる数である。Rは炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基であり、R1eは炭素数1〜4のアルキル基であり、それぞれ異なってもよい。Aは下記(イ)で表される基又は(イ)及び(ロ)で表される基であり、後者の場合、A中の(ロ)の割合は50モル%以下である。
【化3】


(ここで、a=2〜6、b=2〜6、R2eは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、p=1〜6、q=1〜20、r=0〜20、R3eは炭素数1〜18のアルキル基)、Bは-(CH2)a-O-(C24O)s-(C36O)t-R2'e又はR2e(ここで、R2'eは炭素数1〜10のアルキル基、s=1〜20、t=0〜20)を示す。尚、式(e)中に-C24O-及び-C36O-が存在する場合は、ブロック付加でもランダム付加でも良い。〕

【公開番号】特開2008−189755(P2008−189755A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24221(P2007−24221)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】