説明

液体洗浄剤組成物

【課題】高濃度の界面活性剤系であっても、低温の貯蔵安定性に優れ、且つ優れた洗浄力を有する液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)炭素数10〜16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、(b)特定のエーテル型アミンオキシド型界面活性剤、(c)ハイドロトロープ剤及び(d)有機溶剤から選ばれる相安定化剤、並びに水を含有し、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10〜50質量%であり、(b)/(a)モル比が0.3〜1.2であり、20℃の粘度が250mPa・s以下である液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物、特に台所まわりの硬質表面、中でも食器や調理器具の洗浄に適した液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗い用洗浄剤は、洗浄力の観点から界面活性剤として陰イオン界面活性剤を主成分として用いるものが多い。また、食器洗い用洗浄剤に対する、洗浄時の泡立性及び泡持性の要求から、増泡剤としてアミンオキシド型界面活性剤が好ましく併用される。アミンオキシド型界面活性剤は、泡特性のみならず、陰イオン界面活性剤と併用することで洗浄力を向上させる。これは、アミンオキシドが、中性〜酸性領域において陽イオン性の性質を持つため、陰イオン界面活性剤の陰イオンとイオン性のコンプレックスを形成し、これにより油に対する乳化力が向上し、結果として洗浄力が向上するものと思われる。
【0003】
陰イオン界面活性剤とアミンオキシド型界面活性剤を用いる食器洗い用洗浄剤は既に知られている。特許文献1には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、モノ長鎖アルキルアミンオキシド、高級脂肪酸アルカノールアミド及び2級アルコールのエチレンオキシド付加型ノニオン界面活性剤を併用することで、優れた気泡力を有する洗浄剤が記載されている。その他にアミンオキシド型界面活性剤に特徴のある洗浄剤としては、特許文献2には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩とモノ長鎖アルキルアミンオキシド及び多価アルコールのポリアルキレンオキシド付加物を配合する濯ぎ性に優れる洗浄剤が記載されている。また特許文献3には、陰イオン界面活性剤と炭素数8〜16のアルキル基を2つ有し、アルキレンオキシドを1〜20モル付加したアミンオキシド型界面活性剤が優れた汚れへの浸透性とそれによる良好な洗浄力が得られることが記載されている。特許文献4には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩と2種類のアミンオキシドを併用することで洗浄力と、洗浄性能の持続性を発揮することができる硬質表面用の洗浄剤が記載されている。特許文献5には、炭素数10〜20のアルキル基と窒素原子の間にポリエチレンオキシド(重合度が0〜11)を有するアミンオキシド型界面活性剤、硫酸系陰イオン界面活性剤及び特定構造の非イオン界面活性剤を含有する台所用洗浄剤が記載されている。また特許文献6には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を主界面活性剤として含有し、全界面活性剤中の分岐鎖を有する界面活性剤の割合が20〜80質量%である高粘度の食器用液体洗浄剤が記載されており、該界面活性剤としてエーテル結合をアルキル基に有することが示唆された特定構造のアミンオキシド界面活性剤が記載されている。特許文献7には、分岐鎖アルキル基を1つ以上有する界面活性剤を所定の割合で含有する液体洗浄剤組成物が記載されており、該界面活性剤として分岐鎖アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を使用できることが記載されている。
【特許文献1】特開昭56−112999号公報
【特許文献2】特開昭62−107000号公報
【特許文献3】特開平2−279795号公報
【特許文献4】特開2002−226900号公報
【特許文献5】特開2004−168899号公報
【特許文献6】特開2002−194388号公報
【特許文献7】特開2002−226894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷の観点から、界面活性剤の濃度を高め、容器の樹脂量を低減させた濃縮タイプの液体洗浄剤が好まれて使用されている。しかしながら、界面活性剤濃度の増加は、洗浄剤の貯蔵安定性、特に低温での貯蔵安定性を低下させる原因となる。また、こうした貯蔵安定性を維持しつつ優れた洗浄力を得ることが望まれる。
【0005】
本発明は、高濃度の界面活性剤系であっても、低温の貯蔵安定性に優れ、且つ優れた洗浄力を有する液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、分岐鎖アルキル基を所定比率で含むポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩とアルキルエーテルアミンオキシドを用いることで前記課題を解決できることを見出した。
【0007】
従って本発明は、(a)炭素数10〜16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔以下、(a)成分という〕、(b)下記一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、水並びに、(c)ハイドロトロープ剤〔以下、(c)成分という〕及び(d)有機溶剤〔以下、(d)成分という〕から選ばれる1種以上の成分、を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10〜50質量%であり、(b)/(a)のモル比が0.3〜1.2であり、20℃の粘度が250mPa・s以下である液体洗浄剤組成物に関する。
【0008】
【化2】

【0009】
〔式中、R10は炭素数10〜18の炭化水素基、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体洗剤剤組成物によれば、洗浄力をより高い水準で満足し、かつ低温時の貯蔵安定性に優れた洗浄効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、炭素数10〜16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩であって(a)成分中の分岐鎖アルキル基を有する化合物の割合が10〜50質量%である。
【0012】
(a)成分のより好ましいアルキル基の炭素数は、炭素数10〜14である。オキシアルキレン基は炭素数2又は3のオキシアルキレン基が好ましく、より好ましくはオキシエチレン基である。炭素数2又は3のオキシアルキレン基の平均付加モル数は、1.0〜4.0が好ましく、オキシアルキレン基が全てオキシエチレン基のときは、好ましくは1.0〜3.0モル、より好ましくは1.5〜3.0である。またオキシプロピレン基を含む場合も、更にオキシエチレン基を含むことが好ましく、この場合は、オキシプロピレン基は好ましくは平均2.0モル以下であり、且つオキシエチレン基は好ましくは平均1.0〜3.0である。また塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられ、特に粘度の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0013】
本発明では(a)成分中に、分岐鎖アルキル基を有する化合物を含有することが非常に重要である。すなわち、本発明では(a)成分中の分岐鎖アルキル基を有する化合物の割合(以下、分岐率という場合がある)が重要である。本発明において、分岐率は10〜50質量%であり、更に好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。洗浄力の点から、上限値以下の分岐率が好ましく、貯蔵安定性の観点から下限値以上の分岐率が好ましい。
【0014】
(a)成分は、炭素数10〜16のアルキル基を有し炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均1.0〜4.0モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩であって、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を有する化合物の割合が、10〜50質量%のものを挙げることができる。
【0015】
(a)成分は、直鎖1−アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコールを原料にして製造された分岐鎖1級アルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を含むことが好適である。ここで、ヒドロホルミル化とは鉄、コバルトあるいはニッケル等のカルボニル錯体を触媒として用い直鎖1−アルケンに一酸化炭素を付加させてアルコールを得る方法であり、直鎖アルキル基とメチル分岐アルキル基を含有するアルコールが得られる。
【0016】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、このようなアルコールにさらにアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシド(以下、POという。)又はエチレンオキシド(以下、EOと表記する)、より好ましくはEOを付加させ、さらに三酸化イオウ又はクロルスルホン酸でスルホン化し、アルカリ剤で中和して得ることができる。中和に用いるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムがより好ましい。このようにして得られたポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、分岐鎖アルキル基を含むものである。
【0017】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩自体は、他の界面活性剤よりもぬるつき感の少ない性質を示すが、アミンオキシド型界面活性剤との併用によるぬるつき感の上昇とともに、高濃度化による増粘やゲル化によって被洗浄表面に残留しやすくなることに起因するぬるつき感が懸念される。しかし、この問題は、前記分岐鎖率の範囲内とすることで低減される。
【0018】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は下記一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤である。
【0019】
【化3】

【0020】
〔式中、R10は炭素数10〜18の炭化水素基、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【0021】
10は、好ましくは炭素数10〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。R10は、単独のアルキル基又はアルケニル基でもよく、異なるアルキル基又はアルケニル基を有する混合アルキル基又は混合アルケニル基でもよい。混合アルキル基又は混合アルケニル基の場合は、ヤシ油又はパーム核油に由来する植物油から誘導されるアルキル組成又はアルケニル組成を有するものが好ましい。中でも、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基が好ましい。また、R11及びR12はメチル基、エチル基が好ましい。
【0022】
(b)成分は、R10と窒素原子との間に−OCH2CH2−が介在する構造を有するアミンオキシドであるが、この−OCH2CH2−が介在しないR10と窒素原子が直接結合した構造のアミンオキシドと比較して、(a)成分と併用することで洗浄力及び低温の貯蔵安定性に対して優れた効果を発揮する。
【0023】
<(c)成分>
(c)成分のハイドロトロープ剤としては、最大炭素数が3以下のアルキル基を1〜3個有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、具体的にはトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸、並びにこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp−トルエンスルホン酸が良好である。
【0024】
<(d)成分>
(d)成分の有機溶剤としては、まず(i)炭素数1〜3のアルコール、(ii)炭素数2〜4のグリコールやグリセリン、(iii)アルキレングリコール単位の炭素数が2ないし4のジ又はトリアルキレングリコール、(iv)アルキレングリコール単位の炭素数が2ないし4のジないしテトラアルキレングリコールのモノアルキルエーテル、モノフェニルエーテル、及びモノベンジルエーテルをあげることができる。アルキレングリコールを複数付加する場合、製造工程によってはアルキレングリコール付加モル数の異なる化合物の混合物になってもよい。すなわちトリエチレングリオールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル及びフェノキシエタノール等の混合物として配合してもよい。
【0025】
具体的には(i)として、エタノール、イソプロピルアルコール、(ii)として、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、(iii)として、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、(iv)として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、フェノキシエタノール、フェノキシトリエチレングリコール、フェノキシイソプロパノールがあり、これらから選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。特にはエタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、フェノキシエタノール、フェノキシトリエチレングリコール、フェノキシイソプロパノールが好ましい。
【0026】
また、(d)成分の有機溶剤としてポリアルキレングリコールを用いることができる。ポリアルキレングリコールは、ゲル化防止剤[以下、(d−1)成分というときがある]として有用であり、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体、とりわけポリプロピレングリコールを配合することが粘度調節及び貯蔵安定性の点から好ましい。ポリプロピレングリコールは、重量平均分子量が600〜5000、更には1000〜4000のものが好ましく、重量平均分子量は光散乱法を用いて決定することができ、ダイナミック光散乱光度計(DLS−8000シリーズ、大塚電子株式会社製など)により測定することができる。
【0027】
また、洗浄剤組成物の気液界面に出来る、界面活性剤の重合膜の形成抑制を目的に、グリセリンのEO付加物(EO平均付加モル数は5〜120が好ましい。)を(d−1)成分として配合してもよい。
【0028】
<(e)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、更に、(e)成分として、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルを含有することができる。該グリセリルエーテルは2−エチルヘキサノールとエピハロヒドリンやグリシドール等のエポキシ化合物をBF3等の酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法が一般的であり、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含む混合物である。具体的には、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルとして、エポキシ化合物の1位に2−エチルヘキサノールが付加した化合物〔3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、以下(e−1)という〕やエポキシ化合物の2位に付加した化合物〔2−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,3−プロパンジオール、以下(e−2)という〕が挙げられる。また、副生成物として、(e−1)又は(e−2)にさらにエポキシ化合物が付加した多付加化合物〔以下(e−3)という〕が挙げられる。
【0029】
本発明では(e−3)成分の含有量が(e)成分中に30質量%以下、好ましくは10質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルを用いることが好適である。
【0030】
<その他の成分>
本発明の液体洗浄剤組成物においては、洗浄力を強化する目的から(a)成分、(b)成分、及び(e)成分以外の界面活性剤〔以下、(f)成分ということがある。〕を含有させることが好ましく、中でも、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤から選ばれる化合物が好ましい。
【0031】
両性界面活性剤としては、下記一般式(2)で表される化合物〔以下、(f−1)成分ということがある。〕を好ましく用いることができる。
【0032】
【化4】

【0033】
〔式中、R20は炭素数9〜23のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくは炭素数9〜15、特に9〜13のアルキル基である。R21及びR22は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、メチル基、又はヒドロキシエチル基が好ましい。R23はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。R24は炭素数1〜6のアルカンジイル基であり、好ましくは炭素数2又は3である。Bは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−から選ばれる基であり、−CONH−が好ましい。Dは−SO3-、−OSO3-、−COO-から選ばれる基であり、−SO3-又は−COO-が好ましい。pは0又は1の数である。また、Dが−SO3-の場合にはR23は−CH2CH(OH)CH2−が好ましく、Dが−COO-の場合にはR23はメチレン基が好ましい。〕
【0034】
非イオン界面活性剤としては、下記一般式(3)で表される化合物〔以下、(f−2)成分ということがある。〕を好ましく用いることができる。
【0035】
30−E−[(R31−O)a−H]b (3)
〔式中、R30は、炭素数7〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R31は炭素数2又は3のアルカンジイル基である。aは2〜100の数を示す。Eは−O−、−CON−又は−N−であり、Eが−O−の場合はbは1であり、Eが−CON−又は−N−の場合はbは2である。〕
【0036】
一般式(3)の化合物の具体例としては、下記一般式(3−1)〜(3−4)で表される化合物を挙げることができる。
【0037】
【化5】

【0038】
〔式中、R30は前記と同様である。fは2〜100の数である。g及びhはそれぞれ独立に2〜70の数であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドは、ランダム又はブロック付加体であってもよい。また、i及びjの合計は3〜150の数である。〕
【0039】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤以外にも、一般に洗浄剤に配合される成分を配合することができる。例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸誘導体、ニトリロトリ酢酸三ナトリウム等のキレート剤、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、プロキセルやケーソンなどの商品名で知られている防菌・防黴剤、亜鉛塩、銀塩、ポリリジン、フェノキシエタノールなどの殺菌剤、硫酸マグネシウムなどの水溶性無機塩、亜硫酸塩などの還元剤、BHT、アスコルビン酸、などの酸化防止剤、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナンなどの増粘性高分子、ポリアクリル酸系ポリマーなどの高分子分散剤、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなどの酵素、増泡剤、着色剤、香料、などの液体洗浄剤に配合することが知られている化合物を配合することができる。
【0040】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を5〜50質量%、更に10〜45質量%、より更に10〜40質量%含有することが洗浄効果の点から好ましい。
【0041】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、(b)成分である一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤を1〜15質量%、更に1〜10質量%、より更に2〜10質量%含有することが好ましい。
【0042】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分と(b)成分のモル比が重要であり、(b)成分/(a)成分のモル比は0.3〜1.2、好ましくは0.4〜1.2、より好ましくは0.5〜1.0である。この範囲は洗浄力の点から好適である。
【0043】
(c)成分及び(d)成分の含有量は、組成物中、好ましくは合計で1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0044】
特には本発明の(c)成分であるハイドロトロープ剤の組成物中の含有量は、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1.5〜7.5質量%である。
【0045】
また、本発明の(d)成分である有機溶剤の組成物中の含有量は、後述する(d−1)成分を除いた量として、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1.5〜15質量%である。エタノールの組成物中の含有量は0.1〜10質量%が好ましく、その他溶剤としてはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上を組成物中0.5〜25質量%含有することが好ましい。
【0046】
また、(d)成分の中でも(d−1)成分であるポリアルキレングリコールの組成物中の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.1〜3質量%である。ポリプロピレングリコールの場合、組成物中に0.1〜2質量%配合することが好ましい。また、グリセリンのEO付加物の場合、組成物中に0.1〜1質量%含有することが好ましい。(d)成分は、粘度を下げる上で適宜配合することができる。
【0047】
更に、(e)成分である2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルは、すすぎ性向上の点から、組成物中に好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜7質量%、最も好ましくは0.5〜5質量%含有することが好ましい。
【0048】
特には、〔(a)成分+(b)成分〕/(e)成分の質量比が好ましくは200〜1、より好ましくは100〜1.5、最も好ましくは20〜1である。(e)成分と(a)成分及び(b)成分の比率が、下限値以上であることで食器洗浄時のヌルつきをより十分に抑制することができ、上限値以下にあることで、泡立ち性が向上する。
【0049】
また、(f)成分であるその他の界面活性剤は、洗浄力の点から、組成物中に好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%含有することが好ましい。
【0050】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分、(b)成分、(e)成分、(f)成分を含めた全界面活性剤の含有量が、洗浄力及び貯蔵安定性の点から、組成物中10〜70質量%、更に15〜65質量%、より更に20〜65質量%であることが好ましい。
【0051】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記の成分を溶解した水溶液の形態が使い勝手、及び貯蔵安定性の点から好ましく、水の含有量は、粘度の点から30〜90質量%が好ましく、35〜85質量%がより好ましく、35〜80質量%がさらに好ましい。
【0052】
本発明の液体洗浄剤組成物の粘度は、ぬるつきなく、且つ優れた洗浄力を得るために、重要な要素であり、洗浄剤組成物の温度が20℃の時に250mPa・s以下、好ましくは20〜200mPa・s、より好ましくは50〜150mPa・sである。粘度の測定方法は、20℃にてブルックフィールド型粘度計により測定する。ローターはNo.2のものを用い、回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物の粘度とする。
【0053】
なお本発明の液体洗浄剤組成物のpHは、25℃で好ましくは4.5〜9、より好ましくは5.5〜8である。(b)成分のアミンオキシドはpHによりカチオン化度が変化すること、(a)成分は酸性で不安定であること等を考慮して、且つ低温安定性の点で下限値が決められ、洗浄性の点で上限値が決められる。pH調整は、酸性に調整する場合は、塩酸、硫酸などの無機酸の他に、クエン酸などのキレート剤やハイドロトロープ剤を用いてもよく、アルカリ剤としてはアルカノールアミンの他に、アルカリ金属水酸化物を用いてもよい。pHは、例えばpHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F−23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続したものを用いて測定できる。その場合、pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用して測定する。
【0054】
本発明の液体洗浄剤組成物は、硬質表面用として好適であり、なかでも台所や食器、各種調理器具等の台所周りで使用される物品の洗浄等の洗浄に好適に用いることができ、特に食器の洗浄に好適に用いることができる。
【実施例】
【0055】
各実施例及び比較例で調製した液体洗浄剤組成物を、以下の方法に従って評価した。ここで、サラダ油に0.1質量%の色素(スダンレッド)を均一に混ぜ込んだモデル油汚れ1gを陶器皿に均一に塗り広げたものをモデル汚染食器とした。
【0056】
1.洗浄率の評価
リーナッツ試験法(JIS−K−3362)により洗浄率(%)を評価した。
【0057】
2.低温時の貯蔵安定性の評価
<条件1:−5℃/20日間>
各実施例及び比較例で調製した液体洗浄剤組成物を、−5℃の恒温環境で20日間保存し、保存終了後、外観を目視で確認し、変化のないものを○、析出等変化のあるものを×とした。
<条件2:−7.5℃/10日間>
各実施例及び比較例で調製した液体洗浄剤組成物を、−7.5℃の恒温環境で10日間保存し、保存終了後、外観を目視で確認し、変化のないものを○、析出等変化のあるものを×とした。
【0058】
実施例1
表1に示す液体洗浄剤組成物を調整し、洗浄力を調べた。pHの調整は、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。なお20℃の粘度は、全て20〜250mPa・sの範囲にあった。
【0059】
【表1】

【0060】
本発明品のように、分岐鎖を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を特定比率で含む(a)成分と(b)成分の特定のアミンオキシドとを特定比率で配合する場合、優れた洗浄性が得られることが確認できた。
【0061】
実施例2
表1のうち、特に洗浄力に優れた本発明品1−2を用いて低温安定性を調べた。表2に示すように、本発明品1−2は優れた低温安定性が得られた。
【0062】
【表2】

【0063】
(注)AO−II、ES−II又はES−IIIを用いたものは、それらの量に基づき(b)/(a)モル比を算出した(以下同様)。また、表1、2中の記号は以下のものを表す。
【0064】
・ES−I:下記製法(1)によって得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(アルキル基が炭素数12及び13のアルキル基の混合であって、分岐率20質量%、オキシエチレン平均付加モル数が2の化合物)
製法(1):1−ドデセン及び1−トリデセン40/60(質量比)を原料にヒドロホルミル化して得られたアルコールにEOを平均2モル付加させた後、三酸化硫黄により硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した。全ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム中の全ポリオキシエチレン分岐鎖アルキルエーテル硫酸ナトリウムの割合は20質量%であった。
【0065】
・ES−II:下記製法(2)によって得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(アルキル基が炭素数12及び14のアルキル基の混合であって、分岐率0質量%、オキシエチレン平均付加モル数が2の化合物)
製法(2):アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコール(直鎖1級アルコール)に、EOを平均2モル付加させた後、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した。
【0066】
・ES−III:前記製法(2)において、同アルコールにEOを平均1モル付加させて得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(アルキル基が炭素数12及び14のアルキル基の混合であって、分岐率0質量%、オキシエチレン平均付加モル数が1の化合物)
【0067】
・AO−I:N−ラウリルオキシエチレン−N,N−ジメチルアミンオキシド
・AO−II:N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド
・パラトルエンスルホン酸:パラトルエンスルホン酸ナトリウム
・ノニオン−I:アルキル基の組成が炭素数12/炭素数14=60/40(モル比)混合アルキルで、グルコシド平均縮合度1.5のアルキルグルコシド
・ノニオン−II:炭素数12、13混合アルキル2級アルコールに、EOを平均7モル付加させたもの(ソフタノール70H、日本触媒株式会社)
・スルホベタイン:N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−1−スルホプロピル)アンモニウムベタイン
・防腐剤:プロキセルBDN(アビシア株式会社)
【0068】
実施例3
更に詳しい検討を行うべく、溶剤やグリセリルエーテルなどのその他成分を配合することで乳化力を高めた食器用の液体洗浄剤組成物(本発明品3−1)を調製した。組成を表3に示した。本発明品の構成成分のうちAO−Iの代わりにAO−IIを等モルで配合したものを比較品(比較品3−1)とした場合、本発明品3−1は−5℃で20日間又は−7.5℃で20日間保存した場合にいずれも○であったのに対し、比較品3−1はいずれも×であった。また洗浄力に関しても、明らかに本発明に優位性が見られた。
【0069】
【表3】

【0070】
(注)表中の記号は実施例1と同じ意味であり、その他のものは以下のものを表す。
・溶剤:プロピレングリコール/フェノキシエタノール/ポリオキシエチレン(平均付加モル数3)モノフェニルエーテル/ポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000)=1/1/1/1(質量比)の混合溶剤
・GE−2EH:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル
・アルケニルコハク酸カリウム:アルケニル基の炭素数9
・アルカリ剤:48質量%水酸化ナトリウム水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数10〜16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔以下、(a)成分という〕、(b)下記一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、水並びに、(c)ハイドロトロープ剤〔以下、(c)成分という〕及び(d)有機溶剤〔以下、(d)成分という〕から選ばれる1種以上の成分、を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10〜50質量%であり、(b)/(a)のモル比が0.3〜1.2であり、20℃の粘度が250mPa・s以下である液体洗浄剤組成物。
【化1】


〔式中、R10は炭素数10〜18の炭化水素基、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【請求項2】
(a)成分を5〜50質量%、(b)成分を2〜15質量%、そして(c)成分及び(d)成分を合計で1〜30質量%含有する、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分が、炭素数10〜16のアルキル基を有し炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均1.0〜4.0モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩であって、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を有する化合物の割合が、10〜50質量%である、請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に(e)2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−13579(P2010−13579A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175979(P2008−175979)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】