説明

液体洗浄剤組成物

【課題】 脂肪酸と陽イオン性界面活性剤及び高濃度の非イオン性界面活性剤を用いた組成物において、低温安定性に優れた液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 下記一般式(1)に示される非イオン性界面活性剤(A)30〜65重量%と
【化1】


[式中Rは直鎖状のアルキル基であり、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を表す]
脂肪酸及びその塩(B)と陽イオン性界面活性剤(C)とハイドロトロープ剤(D)と(E)成分として、下記の一般式(2)
【化2】


[ただし、AOはオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物で、R
はアルケニル基、R はアルキル基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。]
で示されるアルケニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体で、この加水分解物及びこの塩を含有し、残りが水である液体洗浄剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤組成物には、その形態が粉末状のものや液体状のものが存在するが、水中での溶け残りの懸念がないことや、洗浄対象物に対して直接塗布することが可能である等の理由から、世界的に液体洗浄剤組成物の使用割合が高まっている。
さらに近年では、利便性向上の観点から、例えば衣料用液体洗浄剤組成物の場合、洗浄力と繊維の柔軟性付与効果を共に有する、2
i n 1 型の液体洗浄剤組成物も求められている。
このように、液体洗浄剤組成物には、洗浄力だけではなく、洗浄力以外の機能も必要とされるようになってきている。
一方、かかる液体洗浄剤組成物は、様々な場所や条件下で使用されることが想定されることから、経時安定性に優れていることも重要である。
【0003】
これまでに液体洗浄剤組成物としては、例えば、非イオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤/モノアルキルタイプのカチオン性界面活性剤の配合割合を種々特定した液体洗浄剤組成物等が提案されている(例えば、特許文献1参照)

また、特定のアミン化合物又はその酸塩を含有する組成物(特許文献2参照)や、非イオン性界面活性剤、特定のアミン化合物、ハイドロトロープ剤およびプロテアーゼを含有してなる液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献3参照)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7 − 1 6 6 1 9 0 号公報
【特許文献2】特開平10 − 7 2 7 7 2 号公報
【特許文献3】特開20 0 5 − 1 0 5 1 0 7 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1 に記載の液体洗浄剤組成物は、洗浄対象物に対して柔軟性付与効果を有し、かつ良好なすすぎ性が発揮されたものである。また、特許文献2 に記載の組成物は、洗濯の繰り返しによる衣料の色調劣化が抑制されたものである。
しかしながら、特許文献1 〜 2 に記載の組成物は、いずれも経時安定性については考慮されていない。

【0006】
また、特許文献3に記載の液体洗浄剤組成物は、50℃および5℃の保存条件下での経時安定性については良好であるものの、それより低い温度(例えば−5℃)
条件下では沈殿物が発生し、低温安定性は充分ではない。
本発明者の検討によると、特に脂肪酸塩と陽イオン性界面活性剤及び高濃度(例えば50%)の非イオン性界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物での経時安定性の評価において、低温(−5℃)
での保存時に沈殿が生じやすいことが分かった。さらに、かかる液体洗浄剤組成物は、寒冷地などの保存温度条件に相当すると考えられる0℃より低い温度(例えば−5℃)と0℃付近(例えば5℃)との繰り返しの条件下において沈殿が生じやすいことが分かった。

【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、脂肪酸と陽イオン性界面活性剤及び高濃度の非イオン性界面活性剤を用いた組成物において、低温安定性に優れた液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決する為鋭意検討した結果、特定の、高分子成分を用いることによって、上記目的を達成出来ることを見いだした。
【発明の効果】
【0009】
高濃度の非イオン性界面活性剤に脂肪酸及びその塩、陽イオン性界面活性剤を含有しながら、低温における経時安定性に優れた液体洗浄剤組成物を作ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について更に詳細に説明する。
本発明の液体洗浄剤組成物は下記一般式(1)に示される非イオン性界面活性剤(A)30〜65重量%と
【化1】

[式中Rは炭素数12〜14の直鎖状のアルキル基であり、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、8〜10である]
脂肪酸及びその塩(B)と陽イオン性界面活性剤(C)とハイドロトロープ剤(D)と(E)成分として、下記の一般式(2)
【化2】

[ただし、AOは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物で、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R
はアルケニル基、R はアルキル基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。]
で示されるアルケニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体で、この加水分解物及びこの塩を含有し、残りが水であることを特徴とする。

【0011】
(A)成分は下記一般式(1)で示され、
【化1】

[式中Rは炭素数12〜14の直鎖状のアルキル基であり、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、8〜10である]
Rの炭素数は12が好ましく、更に好ましくは12と14の混合でありさらに好ましくはこの混合比が12:14=75:25であると液体洗浄剤としての低温でのゲル化が抑制される。

【0012】
脂肪酸及びその塩(B)の脂肪酸は炭素数10〜18であり、好ましくは炭素数12〜16である。

【0013】
(B)成分は全液体洗浄剤組成物中1〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは2.5〜3.5重量%であると低温安定性が良くなる。

【0014】
(B)成分の塩としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ剤を使うことができる。特に、アルカノールアミンを用いると低温安定性が良いので好ましい。

【0015】
陽イオン性界面活性剤(C)としては、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤を用いると衣類への柔軟性付与やごわつき防止効果及び経時安定性における変色防止効果が向上するので好ましい。

【0016】
(C)成分の配合量は液体洗浄剤組成物中3重量%以下が低温安定性の面で好ましい。また、1.5重量%以上であると経時安定性における変色防止効果が出るので好ましい。

【0017】
ハイドロトロープ剤(D)は、下記一般式(3)で示され、
【化3】

[式中Rは炭素数2〜6のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであり、kはアルキレンオキサイドの付加モル数で0〜4である。]
低温安定性の向上だけでなく、非イオン界面活性剤を配合することにより低下した液体洗浄剤組成物の水への溶解性を向上させることができる。

【0018】
(D)成分は液体洗浄剤組成物の10重量%以上が好ましく、さらに好ましくは15重量%以上あるとよい。

【0019】
(E)成分はアルケニルエーテルとマレイン酸の共重合体の加水分解物である。
本発明においては、(E)成分を使うことにより本発明の効果である液体洗浄剤組成物の低温安定性を向上させることができる。

【0020】
(E)成分の配合量は液体洗浄剤組成物中0.5重量%以上が好ましく、さらに好ましくは1〜1.5重量%が低温安定性の面で良い。

【0021】
本発明の液体洗浄剤は、その他成分として、一般の洗浄剤添加物を含有することができる。例えば、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース等のポリマー、ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ等の酵素、ブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、防腐剤、香料成分、染料、蛍光染料、顔料等を必要に応じて含んでも良い。

【0022】
本発明の液体洗浄剤組成物は、その調整方法が特に制限されるものではなく、例えば通常の液体洗浄剤組成物の常法に準じて調整することができる。すなわち液体洗浄剤組成物の各必須成分と、必要に応じて前記任意成分、更に適宜水を配合、混合することによって調整することができる。
かかる液体洗浄剤組成物の液性は、特に制限されるものではないが、例えば液体洗浄剤組成物のpHは、洗浄力の点から、pH4〜11であることが好ましく、pH5〜10であることがより好ましく、pH6〜9であることがさらに好ましい。

【0023】
本発明の液体洗浄剤組成物は、例えばプラスチック製容器に収納することが出来る。プラスチック製容器としては、例えばボトル本体容器、詰め替え用のスタンディングパウチ等が挙げられる。

【実施例1】
【0024】
以下に実施例(実験例) を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例(実験例) に限定されるものではない。

【0025】
表1 に示す組成に従って、常法に準じて液体洗浄剤組成物を調製し、各例の液体洗浄剤組成物を得た。
得られた各例の液体洗浄剤組成物について、下記の評価方法に従って洗浄力、
低温安定性をそれぞれ評価した。その結果を表1に併記した。

≪洗浄力評価≫
( 1 ) 洗浄処理方法
JIS硬度水1000mlに液体洗浄剤組成物0.33gを溶かし、ターゴトメーターで30℃100rpmの条件で洗濯科学協会製 湿式汚染布10枚を10分間撹拌した(洗浄)。そして、汚染布を流水すすぎした後脱水、乾燥させた。
( 2 ) 洗浄力の評価方法
前記洗浄処理を終えた湿式汚染布の反射率を、反射率計TC-6D(日本電色(株)製)により測定し、洗浄率を以下の式で算出した。
洗浄率(%)=(汚染布の反射率−洗浄布の反射率)/(汚染布の反射率−未汚染布の反射率)
式中、未汚染布の反射率は70%とした。
< 評価基準>
1 点: 洗浄率が32 % 未満である。
2 点: 洗浄率が32 % 以上〜 35 % 未満である。
3 点: 洗浄率が35 % 以上〜 38 % 未満である。
4 点: 洗浄率が38 % 以上〜 41 % 未満である。
5 点: 洗浄率が41% 以上である。
【0026】
≪ 低温安定性評価 ≫
本発明の効果を証明するための実験例1〜2及び比較組成について、各例の液体洗浄剤組成物25mLを、直径35mm、高さ78mmの円筒ガラス瓶に取り、蓋を閉めて密封した。この状態で、−5℃から5℃への昇温(所要時間:8時間)
と、5℃ から−5℃への降温(所要時間:16時間)を1サイクルとした操作を3ヶ月間行い、3ヶ月後の液体洗浄剤組成物の外観を目視観察し、下記基準により評価した。
< 評価基準>
1 点: 著しい沈殿または濁りが認められた。
2 点: 沈殿または濁りが認められた。
3 点: 若干の沈殿または濁りが認められた。
4 点: 外観の変化はほとんど認められなかった。
5 点: 外観の変化は全く認められなかった。
【0027】
液体洗浄剤組成物及びその物性を表1に示す。
【表1】

【0028】
*非イオン性界面活性剤:AEO-9(丸善化学工業(株)製)
*イミダゾリン型カチオン性界面活性剤:カチオンSF-75PA(三洋化成工業(株)製)
*共重合体:マリアリムHKM-50A(日油(株)製)
*プロテアーゼ:サビナーゼウルトラXL16(ノボザイムズジャパン(株)製)
*防腐剤:アクチサイドMV(ソージャパン(株)製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に示される非イオン性界面活性剤(A)30〜65重量%と
【化1】

[式中Rは炭素数12〜14の直鎖状のアルキル基であり、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、8〜10である]
脂肪酸及びその塩(B)と陽イオン性界面活性剤(C)とハイドロトロープ剤(D)と(E)成分として、下記の一般式(2)
【化2】

[ただし、AOは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物で、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R
のアルケニル基、R はアルキル基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。]
で示されるアルケニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体で、この加水分解物及びこの塩を含有し、残りが水であることを特徴とする液体洗浄剤組成物である。

【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤(A)を40〜55重量%含有する液体洗浄剤組成物。

【請求項3】
前記陽イオン性界面活性剤(C)として、イミダゾリン型陽イオン性界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物。

【請求項4】
前記ハイドロトロープ剤(D)として、下記一般式(3)で示される液体洗浄剤組成物。
【化3】

[式中R4は炭素数2〜6のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであり、kはアルキレンオキサイドの付加モル数で0〜4である。]

【請求項5】
前記ハイドロトロープ剤を2種類以上含有する液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−252051(P2011−252051A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125509(P2010−125509)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(500346419)NSファーファ・ジャパン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】