説明

液体消費装置および液体消費量管理方法

【課題】簡易な構成で複数の液体収容容器に収容された各液体の消費量を管理する。
【解決手段】液体消費装置としての印刷装置には、液体の残存状態を検出するセンサを備えた第1の液体収容容器と、このようなセンサを備えていない第2の液体収容容器とが装着される。印刷装置は、第1の液体の消費量と、前記第2の液体の消費量とを、それぞれ、個別に用意された所定の推定基準に基づいて推定する。印刷装置は、推定された第1の液体の消費量と、センサによって検知された第1の液体の残量との対比に基づいて、第2の液体の消費量を推定するために用いられる推定基準を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置が消費する液体の量を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を消費する液体消費装置として、プリンタやインクジェット捺染装置、マイクロディスペンサ等が知られている。液体消費装置には、液体収容容器が装着され、この液体収容容器に収容された液体が消費される。液体収容容器に収容された液体の消費量や残量を管理する技術として、例えば、下記特許文献1には、プリンタのインクヘッドから吐出されるインク滴の数を計数する技術と、インクカートリッジに収容されているインク量が所定のインク量以下であるかを検出する残量センサとを組み合わせる技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−34123号公報
【0004】
しかし、従来の技術では、複数の液体収容容器が装着される場合に、すべての容器内の液体残量を管理しようとすると、液体収容容器の全てに残量センサが取り付けられている必要があった。この結果、消耗品としての液体収容容器が高価になってしまうという問題があった。また、全ての残量センサを動作させるための手段が液体消費装置にも必要であり、液体消費装置も高価になるという問題があった。さらに、全ての残量センサを動作させるには時間がかかり、その間、消費動作を制限しなければならない場合には、液体消費装置の稼働率が低下し、作業の効率が低下するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で複数の液体収容容器に収容された各液体の消費量を管理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を踏まえ、本発明の一態様である液体消費装置を次のように構成した。
【0007】
本発明の一態様である液体消費装置は、
第1の液体を収容し、該収容された第1の液体が所定の残量に達したことを検出するセンサを備えた第1の液体収容容器と、第2の液体を収容し、前記センサを備えていない第2の液体収容容器とを装着可能な液体消費装置であって、
前記第1の液体収容容器から供給された第1の液体と、前記第2の液体収容容器から供給された第2の液体とをそれぞれ消費する液体消費部と、
前記第1の液体収容容器が備える前記センサを用いて、前記第1の液体の残量を検知する検知部と、
前記液体消費部による前記第1の液体の消費量を第1の推定基準に基づいて推定するとともに、前記液体消費部による前記第2の液体の消費量を第2の推定基準に基づいて推定する推定部と、
前記推定された第1の液体の消費量と、前記センサによって検知された前記第1の液体の残量との対比に基づいて、前記第2の推定基準を補正する補正部とを備える。
【0008】
上記態様の液体消費装置によれば、第1の液体の推定消費量と、第1の液体収容容器が備えるセンサによって検知された第1の液体の残量との対比に基づいて、第2の液体の消費量を推定するための推定基準を補正することができる。そのため、第2の液体収容容器にセンサが備えられていなくても、第2の液体の消費量(残量)を精度良く推定することができる。この結果、簡易な構成で複数の液体収容容器に収容された各液体の残量を管理することが可能になる。
【0009】
上記態様の液体消費装置において、前記第2の推定基準とは、前記第2の液体の単位消費回数あたりの消費量を示す単位消費量とすることができる。このような態様であれば、単位消費量を補正することで、第2の液体の消費量を正確に推定することが可能になる。
【0010】
上記態様の液体消費装置において、前記推定部は、前記第2の液体の消費量を、前記単位消費量と、前記第2の液体の消費回数との積に基づいて推定してもよい。このような態様であれば、比較的単純な計算で、第2の液体の消費量を推定することができる。なお、前述した推定基準を、単位消費量ではなく第2の液体の消費回数とし、この消費回数を、補正することとしてもよい。もちろん、両者を補正することも可能である。
【0011】
上記態様の液体消費装置において、前記第1の液体は、黒インクであり、前記第2の液体はカラーインクである態様としてもよい。このような態様であれば、センサを用いて検出した黒インクの残量に基づいて、カラーインクの消費量を精度良く推定することが可能になる。
【0012】
上記態様の液体消費装置において、前記第2の液体収容容器は、前記第2の液体として複数種類の液体を収容しており、前記推定部は、前記種類毎に前記第2の液体の消費量を推定してもよい。このような態様であれば、センサを持たない第2の液体収容容器に複数種類の液体が収容されていても、それぞれの消費量を正確に管理することができる。
【0013】
上記態様の液体消費装置は、更に、前記複数種類の液体のうち、所定の特定基準に基づいて特定された液体を、前記液体消費部に優先的に消費させる均一化処理部を備えてもよい。このような態様であれば、第2の液体収容容器に残存した液体の廃棄を抑制し、省資源化に寄与することができる。
【0014】
上記態様の液体消費装置において、前記特定基準とは、前記複数種類の液体のうち、最も使用頻度が少ないという基準としてもよい。このような態様であれば、最も使用頻度が少ない液体を有効に利用することができる。
【0015】
上記態様の液体消費装置において、前記特定基準は、前記複数種類の液体のうち、最も消費量が少ない、または、最も残量が多いという基準としてもよい。このような態様であれば、最も多く残存している液体を有効に利用することができる。
【0016】
上記態様の液体消費装置において、前記特定基準とは、前記複数種類の液体のうち、前記液体消費部が、単位時間当たりに最も多く消費可能な液体であるという基準としてもよい。このような態様であれば、頻繁に利用されると予測される液体を優先的に消費することができる。
【0017】
上記態様の液体消費装置において、前記均一化処理部は、ユーザによって所定の消費モードが指定された場合に、前記複数種類の液体のうち、所定の特定基準に基づいて特定された液体を、前記液体消費部に優先的に消費させることとしてもよい。この消費モードには、例えば、テキストモード、メモモード、ドラフトモード、試し印刷モードが含まれる。なお、上記態様の液体消費装置において、前記第2の液体には、少なくとも、マゼンタインクとシアンインクとイエロインクとが含まれていてもよい。
【0018】
本発明は、上述した液体消費装置としての構成のほか、液体消費量の管理方法や、上述した液体消費装置に装着される液体収容容器セット、液体消費量を管理するためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.印刷装置の構成:
B.インクカートリッジの構成:
C.印刷処理:
D.残量検出処理:
E.均一化モードにおける使用インク特定処理:
F.変形例:
【0020】
A.印刷装置の構成:
図1は、本発明の実施例としての印刷装置100の概略構成図である。本実施例の印刷装置100には、ブラックインクが収容されたブラックインクカートリッジC1と、複数種類のカラーインクが収容されたカラーインクカートリッジC2とが装着される。ブラックインクカートリッジC1には、残量センサ10が取り付けられているのに対して、カラーインクカートリッジC2には、残量センサ10は取り付けられていない。そこで、本実施例の印刷装置100は、ブラックインクカートリッジC1に備えられた残量センサ10を利用して、カラーインクカートリッジC2内のインクの残量を推定する機能を有している。また、印刷装置100は、カラーインクカートリッジC2に収容された各インクの残量を均一化するための機能を備えている。以下、これらの機能を実現するための印刷装置100の構成、および、処理について詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、印刷装置100は、印刷用紙Pに印刷を行う印刷機構として、インクカートリッジを搭載したキャリッジ210や、キャリッジ210を主走査方向に駆動するキャリッジモータ220、印刷用紙Pを副走査方向に搬送する紙送りモータ230を備えている。
【0022】
キャリッジ210には、液体収容容器としてインクカートリッジが装着される。本実施例では、黒インクが収容されたブラックインクカートリッジC1と、シアン、マゼンタ、イエロの3種類のカラーインクが収容されたカラーインクカートリッジC2とが装着される。ブラックインクカートリッジC1には、インクの残存状態を検出する残量センサ10が実装されている。なお、本実施例では、カラーインクカートリッジC2に3色のインクが収容されることとしたが、より少ない色、あるいは、より多い色のインクが収容されていてもよい。
【0023】
インクカートリッジC1,C2がキャリッジ210に装着されると、インクカートリッジC1,C2に収容された各インクは、インクヘッド211に供給される。インクヘッド211に供給されたインクは、図示しないピエゾ素子が制御ユニット150ユニットによって駆動されることで印刷用紙Pに吐出される。
【0024】
キャリッジ210は、プラテン270の軸方向と並行に設置された摺動軸280に移動自在に保持されている。キャリッジモータ220は、制御ユニット150からの指令に応じて駆動ベルト260を回転させることで、プラテン270の軸方向と平行に、すなわち、主走査方向にキャリッジ210を往復運動させる。紙送りモータ230は、プラテン270を回転させることで、プラテン270の軸方向と垂直に印刷用紙Pを搬送する。
【0025】
印刷装置100は、上述した印刷機構を制御するための制御ユニット150を備えている。制御ユニット150には、USBインタフェース130やメモリカードスロット120、液晶モニタ140、操作パネル110が接続されている。
【0026】
制御ユニット150は、USBインタフェース130を介して接続されたコンピュータや、メモリカードスロット120に挿入されたメモリカードMCから画像データを入力する。制御ユニット150は、入力した画像データを解析して、インクヘッド211、キャリッジモータ220、紙送りモータ230を制御し、画像の印刷を行う。液晶モニタ140には、印刷装置100の種々の設定画面や、インクの残量が表示される。
【0027】
制御ユニット150は、CPU160とRAM170とROM180とEEPROM190とによって構成されている。EEPROM190には、後述する各種処理で用いられる種々の値が不揮発的に記録される。ROM180には、印刷装置100の動作を制御するための制御プログラムが記憶されている。CPU160はROM180に記憶された制御プログラムをRAM170にロードして実行することで、図示する各機能部(残存状態検知部161、残量推定部162、補正部163、均一化処理部164)として動作する。
【0028】
残存状態検知部161は、ブラックインクカートリッジC1に備えられた残量センサ10を用いて、ブラックインクカートリッジC1内のインクが所定量以下になったことを検知する。所定量とは、残量が少なくなった状態を示す量であり、例えば、ブラックインクカートリッジC1の最大容量に対して、10%〜30%程の量である。
【0029】
残量推定部162は、ブラックインクカートリッジC1とカラーインクカートリッジC2とに残存するインクの量を推定する。具体的には、残量推定部162は、インクヘッド211から吐出した各色のインク滴の数(形成したドットの数)をそれぞれカウントし、そのカウント数と、インク一滴あたりに消費されるインク量(以下、「単位消費量」という)を積算することで、残存するインク量を各色毎に推定する。
【0030】
補正部163は、残存状態検知部161によって検知したブラックインクの残存状態と、残量推定部162によって推定した各インクの推定残量とに基づいて、推定された残量や、上述した単位消費量を補正する。
【0031】
均一化処理部164は、カラーインクカートリッジC2内の各カラーインクの残量(消費量)を均一化するための処理を行う。
【0032】
B.インクカートリッジの構成:
図2は、印刷装置100に装着されるブラックインクカートリッジC1の概略構成図である。ブラックインクカートリッジC1は、内部のインクが所定量以下になったことを検出する残量センサ10と、ブラックインクカートリッジC1の型番やシリアル番号、製造日、インクの最大収容量などの個体情報が記録されたEEPROM20と、インタフェース基板30とを備えている。残量センサ10は、ブラックインクカートリッジC1の側部に取り付けられており、EEPROM20は、インタフェース基板30に実装されている。
【0033】
残量センサ10とEEPROM20とは、インタフェース基板30に電気的に接続されている。ブラックインクカートリッジC1が印刷装置100のキャリッジ210に装着されると、インタフェース基板30に設けられた端子40を介して、残量センサ10とEEPROM20とが制御ユニット150に電気的に接続される。なお、インタフェース基板30に、無線通信回路を実装し、これにより、制御ユニット150と無線通信を行うこととてもよい。
【0034】
図3および図4は、残量センサ10が設けられた付近のブラックインクカートリッジC1の断面図である。残量センサ10は、図3に示すように、圧電効果を有する圧電素子PZT(例えば、ピエゾ素子)と、圧電素子PZTに電圧を印加して振動を生じさせる2つの電極720、721と、センサアタッチメント722とから構成される。電極720、721は、インタフェース基板30に設けられた端子40に接続されている。センサアタッチメント722は、圧電素子PZTからブラックインクカートリッジC1の筐体71に振動を伝える構造体である。
【0035】
図3に示すように、インクの液面が残量センサ10の位置より高い、すなわち、ブラックインクカートリッジC1内のインクが所定量以上存在する場合には、圧電素子PZTの周辺部分はインクで満たされている。一方、図4に示すように、インクの液面が残量センサ10の位置より低い状態、すなわち、内部のインクが所定量未満である場合には、圧電素子PZTの周辺部分にはインクが存在しない。この結果、圧電素子PZTは、カートリッジ内のインク量が所定量以上である場合と、所定量未満である場合とで異なる振動数で振動する。従って、制御ユニット150は、残量センサ10を用いて検出したブラックインクカートリッジC1の固有振動数の相違に基づいて、ブラックインクカートリッジC1内のインクが所定量以下になったかを判別することができる。
【0036】
なお、上述した構成以外にも、残量センサ10として、例えば、インクの液面が所定の高さに到達したことを光学的に検出するセンサを採用することが可能である。
【0037】
図5は、カラーインクカートリッジC2の概略構成図である。上述したように、カラーインクカートリッジC2は、3色のインクを収容することから、ブラックインクカートリッジC1に対して、概ね3倍の容積を有している。カラーインクカートリッジC2は、カラーインクカートリッジC2の型番やシリアル番号、製造日、各インクの最大収容量などの個体情報が記録されたEEPROM21を備えている。EEPROM21は、インタフェース基板31に電気的に接続されている。なお、前述のように、カラーインクカートリッジC2には、残量センサ10は備えられていない。
【0038】
カラーインクカートリッジC2が印刷装置100のキャリッジ210に装着されると、インタフェース基板31に設けられた端子41を介して、EEPROM21は制御ユニット150に電気的に接続される。なお、インタフェース基板31に、無線通信回路を実装し、これにより、カラーインクカートリッジC2が制御ユニット150と無線通信を行うこととしてもよい。
【0039】
C.印刷処理:
図6は、CPU160が実行する印刷処理のフローチャートである。この処理は、ユーザが、コンピュータや操作パネル110を用いて所定の印刷開始操作を行った場合に実行される。
【0040】
印刷処理が実行されると、まず、CPU160は、印刷モードの設定をユーザから受け付ける(ステップS100)。本実施例では、印刷モードとして、均一化モードと標準モードとが存在するものとする。均一化モードとは、カラーインクカートリッジC2に残存する各カラーインクの残量を均一化するために、使用するカラーインクの種類を制限して印刷を行うモードである。一方、標準モードとは、入力した画像データに従って各カラーインクをそのまま消費するモードである。
【0041】
印刷モードの設定を受け付けると、CPU160は、メモリカードMCあるいはコンピュータから画像データを入力する(ステップS110)。続いて、CPU160は、ステップS100で設定された印刷モードが、均一化モードであるかを判断する(ステップS120)。設定された印刷モードが、標準モードであれば(ステップS120:No)、CPU160は、ステップS110で入力した画像データに対して所定の画像処理を施す(ステップS130)。所定の画像処理とは、RGB形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する周知の色変換処理や、CMYK形式の画像データを、ドットの有無を表すデータに変換する周知の2値化処理である。
【0042】
ステップS130において画像データに画像処理を施すと、CPU160は、標準モードによって印刷を開始する(ステップS140)。なお、CPU160は、かかる処理において、インクの吐出回数を各色毎にカウントする。
【0043】
CPU160は、印刷を開始すると、インクカートリッジC1,C2に残存するインクの量を検出するための残量検出処理を実行する(ステップS150)。この残量検出処理の詳細については後述する。残量検出処理を実行すると、CPU160は、各インクの使用頻度を算出する(ステップS160)。具体的には、全てのインクの吐出回数の総和に対する各インクの吐出回数の割合を算出することで、各インクの使用頻度を算出する。なお、この使用頻度は、印刷装置100の使用が開始されてからのインクの吐出回数の累積に基づいて算出する。つまり、インクカートリッジC1,C2が交換された場合であっても、使用頻度の値はリセットされない。
【0044】
使用頻度を算出すると、CPU160は、印刷が完了したかを判断する(ステップS170)。完了してしなければ(ステップS170:No)、CPU160は、処理をステップS140に戻して、標準モードによる印刷を続行する。印刷が完了していれば(ステップS170:Yes)、CPU160は、後述するステップS240に処理を移行する。
【0045】
上記ステップS120において、ステップS100で設定された印刷モードが、均一化モードであると判断されれば(ステップS120:Yes)、CPU160は、均一化モードによる印刷において使用するインクを特定するための使用インク特定処理を実行する(ステップS180)。この使用インク特定処理の詳細については後述する。
【0046】
使用インク特定処理によって使用するインクが特定されると、CPU160は、ステップS110で入力した画像データに対して画像処理を施す(ステップS190)。ここで行われる画像処理は、RGB形式の画像データを、ステップS180で特定されたインクの色に色変換し、その上で2値化を行う処理である。例えば、ステップS180で特定されたインクがマゼンタインクであれば、ステップS110で入力したRGB形式の画像データをYCbCr形式の画像データに変換し、このY成分(輝度成分)の階調データをそのままマゼンタに適用する。こうすることで、特定された色のみを用いて、印刷を行うことができる。
【0047】
ステップS190において画像処理がなされると、CPU160は、特定されたインクを使用して印刷を開始する(ステップS200)。このとき、CPU160は、使用されたインクの吐出回数をカウントする。なお、上記ステップS180〜S200の処理は、図1に示した均一化処理部164の働きによって実現される。
【0048】
こうして均一化モードによる印刷が開始されると、CPU160は、続いて、残量検出処理を実行し(ステップS210)、各インクの使用頻度の算出を行う(ステップS220)。これらの処理は、標準モードにおける印刷時と同様の処理である。
【0049】
使用頻度の算出を行うと、CPU160は、印刷が完了したかを判断する(ステップS230)。完了してしなければ(ステップS230:No)、CPU160は、処理をステップS200に戻して、均一化モードによる印刷を続行する。
【0050】
ステップS170もしくはステップS230において、印刷が完了したと判断されればCPU160は、ステップS150,S210において検出された各インクの残量や、ステップS140,S200でカウントした各インクの吐出回数、ステップS160,S220で算出した各インクの使用頻度、後述する残量検出処理において算出される各インクの単位消費量をEEPROM20,21に記録する(ステップS240)。なお、本実施例では、インクカートリッジC1,C2に実装されたEEPROM20,21に、これらの値を記録することとするが、その全部、もしくは一部を、印刷装置100に備えられたEEPROM190に記録することとしてもよい。
【0051】
以上、本実施例における印刷処理の概要を説明した。以下、この印刷処理のステップS150,S210で実行される残量検出処理、および、ステップS180で実行される使用インク特定処理の詳細を順に説明する。
【0052】
D.残量検出処理:
図7は、図6に示した印刷処理のステップS150,S210で実行される残量検出処理のフローチャートである。この残量検出処理が実行されると、まず、CPU160は、残量推定部162の働きによって、インクカートリッジC1,C2に残存するインクの残量を、所定の推定基準に基づいて推定する(ステップS300)。本実施例における推定基準とは、インクの「単位消費量」である。インクの残量は、下記式(1)に示すように、インクカートリッジC1,C2が備えるEEPROM20,21に記録された各インクの最大収容量Mから、上記印刷処理のステップS140もしくはステップS200でカウントされた各インクの吐出回数Cと、各インクの「単位消費量U」との積によって表される推定消費量を差し引くことで、インクの推定残量PQを各色毎に算出する。
【0053】
PQ=M−C*U ・・・(1)
【0054】
単位消費量とは、インクヘッド211からインクが1回(1滴)吐出される毎に消費されるインクの量のことをいう。単位消費量の初期値は、例えば、「2ピコリットル/回」とすることができる。この単位消費量は、ブラックインクとカラーインクとで個別の値が用意されている。以下、ブラックインクの単位消費量を「ブラック単位消費量KN」と、カラーインクの単位消費量を「カラー単位消費用CN」と記載する。なお、単位消費量は、「重量/回」として表すことも可能である。
【0055】
CPU160は、上記ステップS300において各インクの推定残量を算出すると、液晶モニタ140に、算出された推定残量を表示する(ステップS310)。こうすることで、ユーザは、各インクの使用状態を把握することができる。なお、本実施例では、液晶モニタ140に残量を表示することとするが、残量を表す信号をUSBインタフェースを介してコンピュータに送信することで、コンピュータに表示させることとしてもよい。
【0056】
続いて、CPU160は、上記ステップS300において推定されたブラックインクの推定残量が、消費限界量に達したかを判断する(ステップS320)。この消費限界量は、インクヘッド211によるインクの空打ちを防止するため、最大インク収容量の5%程度の量に規定されている。ブラックインクの推定消費量が、消費限界量に達した場合には(ステップS320:Yes)、CPU160は、ブラックインクカートリッジC1の交換をユーザに促して、カートリッジの交換処理を行う(ステップS330)。
【0057】
上記ステップS320において、ブラックインクの推定残量が、消費限界量に達していないと判断された場合には(ステップS320:No)、CPU160は、カラーインク(シアン、マゼンタ、イエロ)の推定残量のいずれかが、消費限界量に達したかを判断する(ステップS340)。これらのインクの推定残量のいずれかが消費限界量に達したと判断した場合には(ステップS340:Yes)、CPU160は、カラーインクカートリッジC2の交換をユーザに促し、カートリッジの交換処理を行う(ステップS350)。
【0058】
上記ステップS360において、カラーインクの推定残量が、いずれも消費限界量に達していないと判断された場合には(ステップS340:No)、CPU160は、残存状態検知部161の働きにより、ブラックインクカートリッジC1に取り付けられた残量センサ10を用いて、ブラックインクの残量が所定量以下に変化したかを判断する(ステップS360)。換言すれば、現在のブラックインクカートリッジC1が装着されて、はじめて、ブラックインクの残量が所定量以下になったかを判断する。この処理において、ブラックインクの残量が所定量以下に変化していないと判断した場合には(ステップS360:No)、CPU160は、当該残量検出処理を終了し、処理を図6に示した印刷処理に戻す。
【0059】
上記ステップS360において、ブラックインクの残量が所定量以下に変化したと判断した場合には(ステップS360:Yes)、CPU160は、現在のブラックインクの推定残量を、前述した「所定量」に置き換える(ステップS370)。そして、更に、ブラックインクの新たな単位消費量KNを算出する(ステップS380)。具体的には、新たな単位消費量KNは、ブラックインクカートリッジC1の最大インク収容量Mと、所定量Pと、インクの吐出回数Cとに基づき、下記式(2)によって算出される。
【0060】
KN=(M−P)/C ・・・(2)
【0061】
ブラックインクの新たな単位消費量KNを算出すると、CPU160は、現在のブラックインクの単位消費量KNが、新たに算出されたブラックインクの単位消費量KNよりも大きい値であるかを判断する(ステップS390)。現在のブラックインクの単位消費量KNが、新たに算出されたブラックインクの単位消費量KNよりも大きいと判断された場合には(ステップS390:Yes)、CPU160は、補正部163の働きにより、現在のブラックインクの単位消費量KNを新たなブラックインクの単位消費量KNに置き換えることで、ブラック単位消費量KNの補正を行う(ステップS400)。一方、現在のブラックインクの単位消費量KNが、新たに算出されたブラックインクの単位消費量KNよりも少ない、もしくは、同じ場合には(ステップS390:No)、CPU160は、ステップS400の処理をスキップする。このように、現在のブラックインクの単位消費量KNよりも、算出されたブラックインクの単位消費量KNが少ない場合に単位消費量を補正することとすれば、ブラックインクの残量が実際よりも少なく推定されてしまうことを抑制することができる。
【0062】
次に、CPU160は、現在の「カラーインク」の単位消費量CNが、上記ステップS380で算出された「ブラックインク」の単位消費量KNよりも大きい値であるかを判断する(ステップS410)。現在の「カラーインク」の単位消費量CNが、上記ステップS380で算出された「ブラックインク」の単位消費量KNよりも大きい値の場合には(ステップS410:Yes)、CPU160は、補正部163の働きにより、現在の「カラーインク」の単位消費量CNを、算出された「ブラックインク」の単位消費量KNに置き換えることで、カラー単位補正量CNの補正を行う(ステップS420)。一方、現在の「カラーインク」の単位消費量CNが、上記ステップS380で算出された「ブラックインク」の単位消費量KNよりも少ない、もしくは、同じ場合には(ステップS410:No)、ステップS420の処理をスキップする。以上で説明した一連の処理により、当該残量検出処理は終了し、CPU160は、処理を図6に示した印刷処理に戻す。
【0063】
図8は、上述した残量検出処理による効果を示す説明図である。図8には、ブラックインクとカラーインクとについて、それぞれ、インクの吐出回数に応じた推定残量の変化を示している。図示するように、残量センサ10によってブラックインクの残量が所定量に到達したことが検出されるまでは、ブラックインクとカラーインクとは、それぞれ、個別の単位消費量に応じて残量が推定される。これに対して、ブラックインクの残量が所定量に到達したことを検出された場合には、ブラックインクの推定残量が強制的に所定量に置き換えられ、更に、ブラックインクの現実の残量(所定量)と、その時点におけるインクの吐出回数に基づいてブラックインクの単位消費量が補正される。従って、ブラックインクの残量が所定量以下になると、より正確に、残量の推定を行うことが可能になる。
【0064】
一方、カラーインクカートリッジC2には、残量センサ10が取り付けられていないので、カラーインクの残量を実測することができない。しかし、インクヘッド211から吐出されるブラックインクのインク滴のインク量とカラーインクのインク滴のインク量とには、それほど有意な差がないことが多い。そこで、本実施例では、ブラックインクの残量が所定量に到達した後には、ブラックインクの単位消費量を補正すると共に、カラーインクの単位消費量についても、新たに算出されたブラックインクの単位消費量を適用する。こうすることで、カラーインクカートリッジC2に残量センサ10が取り付けられていない場合であっても、比較的正確に、カラーインクの残量を推定することが可能になる。
【0065】
E.均一化モードにおける使用インク特定処理:
図9は、図6に示した印刷処理のステップS180で実行される使用インク特定処理のフローチャートである。この処理は、均一化モードによる印刷時に使用されるカラーインクの種類を特定するため実行される。本実施例では、使用するインクを特定する基準として、各カラーインクの残量と使用頻度とを考慮する。
【0066】
この均一化処理が実行されると、まず、CPU160は、3色のカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロ)のうち、残量の最も多いカラーインクMCを特定する(ステップS500)。図6のステップS240に示したように、各カラーインクの残量は、カラーインクカートリッジC2のEEPROM21に記録される。そのため、CPU160は、このEEPROM21を参照することで、残量の最も多いカラーインクを特定することができる。
【0067】
続いて、CPU160は、3色のカラーインクのうち、使用頻度が最も少ないカラーインクLCを特定する(ステップS510)。各カラーインクの使用頻度についても、カラーインクカートリッジC2のEEPROM21に記録されている。そのため、CPU160は、このEEPROM21を参照することで、使用頻度の最も少ないインクを特定することができる。使用頻度が最も少ないインクとは、カラーインクカートリッジC2の交換の有無に関わらず、印刷装置100の使用を開始してから最も使用頻度が少ないインクのことをいう。
【0068】
残量の最も多いカラーインクMCと、使用頻度が最も少ないカラーインクLCとを特定すると、CPU160は、特定されたこれらのインクが一致するかを判断する(ステップS520)。残量の最も多いカラーインクMCと、使用頻度が最も少ないカラーインクLCとが一致すれば(ステップS520:Yes)、CPU160は、均一化モードで使用するインクを、残量の最も多いカラーインクMCに特定する(ステップS530)。なお、この場合には、残量の最も多いカラーインクMCと、使用頻度が最も少ないカラーインクLCとは、一致しているので、ステップS530では、使用頻度が最も少ないカラーインクLCを均一化モードで使用するインクとして特定してもよい。
【0069】
残量が最も多いカラーインクMCと、使用頻度が最も少ないカラーインクLCとが一致しない場合には(ステップS520:No)、残量と使用頻度とで、どちらがよりバランスが悪くなっているかを判断する必要がある。そこで、CPU160は、以下の処理を実行する。すなわち、まず、CPU160は、最も残量の多いカラーインクMCと2番目に残量の多いカラーインクとの残量の差を最大インク収容量に対する割合によって求める(ステップS540)。そして、更に、最も使用頻度の少ないカラーインクLCと2番目に使用頻度の少ないカラーインクの使用頻度の差をカラーインク全体の使用頻度に対する割合によって求める(ステップS550)。例えば、最も残量の多いカラーインクMCが90%の残量であり、2番目に残量の多いカラーインクの残量が60%であれば、その差は30%である。また、例えば、最も使用頻度の少ないカラーインクLCが10%の使用頻度であり、2番目に使用頻度の少ないカラーインクの使用頻度が50%であれば、その差は40%である。
【0070】
上記ステップS540およびステップS550によって、残量の差と使用頻度の差とを求めると、CPU160は、残量の差が、使用頻度の差よりも大きいかを判断する(ステップS560)。残量の差が、使用頻度の差よりも大きい場合には(ステップS560:Yes)、CPU160は、均一化モードで使用するカラーインクを、残量が最も多いカラーインクMCに特定する(ステップS530)。こうすることで、残量の最も多いカラーインクを積極的に消費することができる。一方、残量の差が、使用頻度の差よりも小さければ(ステップS560:No)、CPU160は、均一化モードで使用するカラーインクを、使用頻度が最も少ないカラーインクLCに特定する(ステップS570)。こうすることで、今後も、使用が見込まれないカラーインクLCを積極的に消費することができる。
【0071】
以上で説明した使用インク特定処理によれば、消費すべきインクの種類を、各カラーインクの残量と使用頻度の両者を考慮して特定することが可能になる。
【0072】
以上、本実施例の印刷装置100の構成および処理について詳細に説明した。本実施例の印刷装置100によれば、残量センサ10によって検出したインクの残量の実測値(所定量)に基づいて、インクの推定残量を修正することができる。また、インクの残量が所定量以下になった場合には、インクの単位消費量を補正することができる。そのため、正確にインク残量を推定することが可能になる。印刷装置100が1回に吐出するインクの量(単位消費量)は、インクヘッドの製造誤差等に起因して、印刷装置の個体毎に異なっている。そのため、単位消費量の初期値は、最も多量に吐出される状況を想定して、幾分、多めに設定されている。しかし、本実施例によれば、インクの現実の残量(所定量)と、インクが所定量に到達した時点でのインクの吐出回数とに基づいて、単位消費量を補正することができる。そのため、印刷装置毎に、最適な単位消費量を適用してインクの残量を推定することが可能になる。
【0073】
更に、本実施例では、ブラックインクの残量が所定量以下になった際に算出されたブラックインクの単位消費量を、カラーインクの単位消費量としても適用する。そのため、残量センサ10を持たないカラーインクカートリッジC2内のインクの残量についても、比較的正確に推定を行うことが可能になる。この結果、カラーインクカートリッジC2の部材点数を低減することが可能になり、製造コストを削減することができる。また、カラーインクカートリッジの残量センサを駆動するための回路を省略することができるので印刷装置100の製造コストも削減することができる。さらに、カラーインクカートリッジの残量センサの駆動や、残量の検出・判断を行う手順が不要になるため、印刷装置100の稼働率を向上させ、作業効率を高める事ができる。
【0074】
また、本実施例では、カラーインクカートリッジC2に収容された複数のインクの残量にバラツキが生じている場合に、特定の色のカラーインクを優先的に消費することで、インク残量の均一化を図ることができる。そのため、残存するカラーインクを有効に活用することができるので、インクの廃棄を抑制し、省資源化に寄与することが可能になる。
【0075】
F.変形例:
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以下のような変形が可能である。
【0076】
(変形例1):
図10は、均一化モードによる印刷時に実行される使用インク特定処理の変形例を示すフローチャートである。上述した実施例における使用インク特定処理では、各カラーインクの残量と使用頻度とを考慮して均一化モードで使用するインクを特定した。これに対して、本変形例では、残量のみを考慮して使用するインクの特定を行う。
【0077】
この使用インク特定処理が実行されると、まず、CPU160は、現在、残量が最も多いカラーインクが、シアンインクであるかを判断する(ステップS600)。各カラーインクの残量は、上記インク残量検出処理において、カラーインクカートリッジC2のEEPROM21に記録されている。従って、CPU160は、このEEPROM21を参照することで、残量が最も多いカラーインクを特定することができる。
【0078】
上記ステップS600において、残量が最も多いカラーインクが、シアンインクであると判断されれば(ステップS600:Yes)、CPU160は、均一化モードで使用するインクをシアンインクに特定する(ステップS610)。
【0079】
残量が最も多いカラーインクが、シアンインクでなければ(ステップS600:No)、CPU160は、残量が最も多いカラーインクが、マゼンタであるかを判断する(ステップS620)。残量が最も多いカラーインクが、マゼンタであれば(ステップS620:Yes)、CPU160は、均一化モードで使用するインクをマゼンタインクに特定する(ステップS630)。
【0080】
残量が最も多いカラーインクが、シアンインクでもマゼンタインクでもなければ(ステップS620:No)、残量が最も多いカラーインクは、イエロとなる。しかし、イエロは、視認し難い色であるため、CPU160は、以下の処理を行う。すなわち、まず、シアンとマゼンタの残量を比較し(ステップS640)、シアンの方が多ければ(ステップS640:Yes)、均一化モードで使用するインクをイエロとシアンに特定する(ステップS650)。一方、マゼンタの方が多ければ、均一化モードで使用するインクをイエロとマゼンタに特定する(ステップS660)。
【0081】
以上で説明した均一化処理によれば、比較的単純な処理によって、均一化モードで使用するインクを特定することができる。また、最も多く残存しているカラーインクがイエロの場合には、次に残量の多いカラーインクをも加えて印刷を行うことができるため、イエロのみを用いて印刷を行うのに比べて、印刷結果の視認性を向上させることができる。
【0082】
なお、上述した実施例において特定されたインクがイエロの場合にも、本変形例のように、イエロとシアン、もしくは、イエロとマゼンタの2色を用いて印刷を行うこととしてもよい。また、本変形例では、残量のみを考慮して使用するインクを特定することとしたが、使用頻度のみを考慮して使用するインクを特定することとしてもよい。
【0083】
(変形例2):
上記実施例や変形例の使用インク特定処理では、各カラーインクの残量や使用頻度を考慮して、均一化モードで使用するカラーインクを特定することとした。これに対して、使用するカラーインクは、同時に吐出できるインク滴の数が最も多いインクを優先的に使用することとしてもよい。同時に吐出できるインク滴の数が多いとは、その色のインクを吐出するノズルの数が、他のインクを吐出するノズルよりも多いような場合である。具体的には、マゼンタやシアンよりもイエロを吐出するノズルが多い場合には、イエロを優先的に消費することができる。
【0084】
(変形例3):
上記実施例や変形例の使用インク特定処理では、各カラーインクの残量や使用頻度を考慮して、均一化モードで使用するカラーインクを特定することとした。これに対して、使用するカラーインクは、ユーザが操作パネル110を用いて特定してもよい。こうすることで、ユーザは、所望のインクを用いてインク残量の均一化を図ることができる。
【0085】
(変形例4):
上記実施例では、印刷モードが、「均一化モード」に設定された場合に、均一化モードによる印刷を行うこととした。これに対して、例えば、色再現性の重要度が比較的低い印刷モードに設定された場合に、均一化モードによる印刷を行うこととしてもよい。再現性の重要度が比較的低い印刷モードとしては、例えば、テキストを印刷する目的で使用される「テキストモード」や、吐出するインクを間引いて高速にテキストを印刷する「メモモード」、吐出するインクを間引いて高速に画像を印刷する「ドラフトモード」、主として印刷のレイアウトを確認するための「試し印刷モード」などがある。
【0086】
(変形例5):
上記実施例では、使用するカラーインクを制限することで、均一化モードによる印刷を行うこととした。これに対して、均一化モードによる印刷時には、使用インク特定処理において特定されたカラーインクを優先的に使用することとしてもよい。つまり、標準モードによる印刷時に比較し、使用インク特定処理において特定されたインクを多めに使用する、もしくは、使用インク特定処理において特定されたインク以外のインクの使用を通常よりも低減することとしてもよい。このような制御によっても、カラーインクの残量の均一化を図ることができる。
【0087】
(変形例6):
上記実施例では、カラーインクカートリッジC2に収容された複数のカラーインクについて、均一化を行うこととした。これに対して、ブラックインクカートリッジC1内のブラックインクをも含めて均一化を行うこととしてもよい。また、黒色は、シアン、マゼンタ、イエロの全ての色を混色することで表現できるので、ブラックインクよりも、カラーインクの残量が多い場合には、ブラックインクによって形成されるべきドットを、これらの3色のカラーインクによって形成することとしてもよい。また、逆に、カラーインクよりも、ブラックインクの残量が多い場合には、3色のカラーインクによって形成されるべき黒色のドットを、ブラックインクによって形成することとしてもよい。
【0088】
(変形例7):
上記実施例の残量検出処理では、新たに算出されたブラックインクの単位消費量が、現在の単位消費量よりも少ない場合に限って、ブラックインクおよびカラーインクの単位消費量の補正を行うこととした。これに対して、図7に示したステップS390およびステップS410の処理を省略し、上記のような制限を行うことなく、新たに算出されたブラックインクの単位消費量を、そのまま、ブラックインクおよびカラーインクの単位消費量に置き換えることとしてもよい。
【0089】
(変形例8):
上記実施例では、ブラックインクやカラーインクの単位消費量は、インクカートリッジC1,C2が交換されてもリセットされないこととしている。つまり、印刷装置100の使用を開始してから、補正を繰り返して単位消費量を利用し続けていくこととしている。これに対して、単位消費量は、インクカートリッジC1,C2の交換時に所定の初期値に値をリセットすることとしてもよい。
【0090】
(変形例9):
上記実施例では、吐出されるインクのサイズが一定であることを前提に、インクの残量の推定方法を説明した。これに対して、吐出するインクのサイズが可変可能な場合には、吐出したインクのサイズに応じた所定の係数を、1消費回数当たりの単位消費量に乗算することとしてもよい。こうすることにより、吐出するインクのサイズが可変可能な場合にも、正確にインクの残量を推定することが可能になる。
【0091】
(変形例10):
上記実施例では、ブラックインクの残量が所定量以下になった場合に、ブラックインクやカラーインクの単位消費量を補正することとした。これに対して、ブラックインクやカラーインクの消費回数を補正することとしてもよい。また、単位消費量と消費回数の両者を補正することとしてもよい。また、単位消費量や消費回数に所定の係数を乗算することとし、この係数を補正することとしてもよい。
【0092】
(変形例11):
上記実施例では、カラーインクカートリッジC2には、複数のインクが収容されていることとしたが、各カラーインクは、個別のカートリッジに収容されていることとしてもよい。また、上記実施例では、ブラックインクカートリッジC1に残量センサ10が取り付けられていることとしたが、カラーインクカートリッジC2に取り付けられていてもよい。また、カラーインクが、色毎に個別のカートリッジが装着される態様では、1つのカラーインクカートリッジに残量センサ10が取り付けられ、これにより、ブラックインク、あるいは、他のカラーインクの残量を推定することとしてもよい。
【0093】
(変形例12):
上記実施例では、液体を消費する装置の例として、印刷装置を挙げたが、液体消費装置の適用例はこの限りではない。例えば、インク以外の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする装置に具体化することができる。このような装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する装置などがある。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する装置や、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する装置、ジェルを噴射する装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】印刷装置100の概略構成図である。
【図2】ブラックインクカートリッジC1の概略構成図である。
【図3】残量センサ10が設けられた付近のブラックインクカートリッジC1の断面図である。
【図4】残量センサ10が設けられた付近のブラックインクカートリッジC1の断面図である。
【図5】カラーインクカートリッジC2の概略構成図である。
【図6】印刷処理のフローチャートである。
【図7】残量検出処理のフローチャートである。
【図8】残量検出処理による効果を示す説明図である。
【図9】使用インク特定処理のフローチャートである。
【図10】使用インク特定処理の変形例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
10…残量センサ
20,21…EEPROM
30,31…インタフェース基板
40,41…端子
71…筐体
100…印刷装置
110…操作パネル
120…メモリカードスロット
130…USBインタフェース
140…液晶モニタ
150…制御ユニット
160…CPU
161…残存状態検知部
162…残量推定部
163…補正部
164…均一化処理部
170…RAM
180…ROM
190…EEPROM
210…キャリッジ
211…インクヘッド
220…キャリッジモータ
230…紙送りモータ
260…駆動ベルト
270…プラテン
280…摺動軸
720…電極
722…センサアタッチメント
C1…ブラックインクカートリッジ
C2…カラーインクカートリッジ
MC…メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体を収容し、該収容された第1の液体が所定の残量に達したことを検出するセンサを備えた第1の液体収容容器と、第2の液体を収容し、前記センサを備えていない第2の液体収容容器とを装着可能な液体消費装置であって、
前記第1の液体収容容器から供給された第1の液体と、前記第2の液体収容容器から供給された第2の液体とをそれぞれ消費する液体消費部と、
前記第1の液体収容容器が備える前記センサを用いて、前記第1の液体の残量を検知する検知部と、
前記液体消費部による前記第1の液体の消費量を第1の推定基準に基づいて推定するとともに、前記液体消費部による前記第2の液体の消費量を第2の推定基準に基づいて推定する推定部と、
前記推定された第1の液体の消費量と、前記センサによって検知された前記第1の液体の残量との対比に基づいて、前記第2の推定基準を補正する補正部と
を備える液体消費装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体消費装置であって、
前記第2の推定基準とは、前記第2の液体の単位消費回数あたりの消費量を示す単位消費量である
液体消費装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体消費装置であって、
前記推定部は、前記第2の液体の消費量を、前記単位消費量と、前記第2の液体の消費回数との積に基づいて推定する
液体消費装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液体消費装置であって、
前記第1の液体は、黒インクであり、前記第2の液体はカラーインクである
液体消費装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の液体消費装置であって、
前記第2の液体収容容器は、前記第2の液体として複数種類の液体を収容しており、
前記推定部は、前記種類毎に前記第2の液体の消費量を推定する
液体消費装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体消費装置であって、
更に、前記複数種類の液体のうち、所定の特定基準に基づいて特定された液体を、前記液体消費部に優先的に消費させる均一化処理部
を備える液体消費装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体消費装置であって、
前記特定基準とは、前記複数種類の液体のうち、最も使用頻度が少ないという基準である
液体消費装置。
【請求項8】
請求項6に記載の液体消費装置であって、
前記特定基準とは、前記複数種類の液体のうち、最も消費量が少ない、または、最も残量が多いという基準である
液体消費装置。
【請求項9】
請求項6に記載の液体消費装置であって、
前記特定基準とは、前記複数種類の液体のうち、前記液体消費部が、単位時間当たりに最も多く消費可能な液体であるという基準である
液体消費装置。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の液体消費装置であって、
前記均一化処理部は、ユーザによって所定の消費モードが指定された場合に、前記複数種類の液体のうち、所定の特定基準に基づいて特定された液体を、前記液体消費部に優先的に消費させる
液体消費装置。
【請求項11】
請求項10に記載の液体消費装置であって、
当該液体消費装置は、印刷装置であり、
前記消費モードは、テキストモード、メモモード、ドラフトモード、試し印刷モードのうち、少なくとも一つを含む
液体消費装置。
【請求項12】
請求項5ないし請求項11のいずれかに記載の液体消費装置であって、
前記第2の液体には、少なくとも、マゼンタインクとシアンインクとイエロインクとが含まれる
液体消費装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の液体消費装置に装着される前記第1の液体収容容器と前記第2の液体収容容器とを含む液体収容容器セット。
【請求項14】
第1の液体を収容し、該収容された第1の液体が所定の残量に達したことを検出するセンサを備えた第1の液体収容容器と、第2の液体を収容し、前記センサを備えていない第2の液体収容容器とを装着可能な液体消費装置において、消費される液体の量を管理する液体消費量管理方法であって、
前記第1の液体収容容器が備える前記センサを用いて、前記第1の液体の残量を検知し、
前記第1の液体の消費量を第1の推定基準に基づいて推定するとともに、前記第2の液体の消費量を第2の推定基準に基づいて推定し、
前記推定された第1の液体の消費量と、前記センサによって検知された前記第1の液体の残量との対比に基づいて、前記第2の推定基準を補正する
液体消費量管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−107145(P2009−107145A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279158(P2007−279158)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】