説明

液体現像剤および画像形成装置

【課題】環境に優しく、かつ、帯電特性、定着特性に優れた液体現像剤およびそれを用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中に、トナー粒子が分散した液体現像剤であって、疎水化処理を施したシリカ微粒子と、高分子分散剤とを含み、シリカ微粒子の平均粒子径が、5〜100nmで、かつ、その含有量が、トナー粒子100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であり、絶縁性液体が、不飽和脂肪酸トリグリセリドと、脂肪酸モノエステルとを含むことを特徴とする。シリカ微粒子は、正帯電性を有するものであるのが好ましい。高分子分散剤は、ポリアミン脂肪酸縮重合体であるのが好ましい。高分子分散剤の含有量は、トナー粒子100重量部に対して、0.5〜7.5重量部であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録媒体上に画像を形成する方法として、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を用いる方法が知られている。
この液体現像剤を用いる方法は、トナーを乾式状態で用いる乾式トナーに比べ、トナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いた画像形成装置では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れた画像を得ることができるという特徴を有している。
【0003】
液体現像剤に用いる絶縁性液体としては、一般に、化学的安定性が高いことから、石油系炭化水素やシリコーンオイル等が用いられている。
しかしながら、液体現像剤を用いた方法では、定着時等の使用時の絶縁性液体の揮発や液体現像剤の廃棄等による環境に対する影響が懸念されていた。また、定着の際にトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体が、記録媒体中に染み込み、定着強度を低下させるという問題があった。また、この染み込みにより、記録媒体に対してボールペン等で追記するのが困難となるという問題もあった。
【0004】
このような問題を解決するために、絶縁性液体として植物油等の天然由来の油脂を用い、定着時において油脂の酸化重合反応により定着強度を向上させる試みが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、上記のような油脂を用いた液体現像剤では、定着強度は向上するが、トナー粒子を十分に帯電させるのが困難であるため、十分な帯電特性を得るのが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−251252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、環境に優しく、かつ、帯電特性、定着特性に優れた液体現像剤およびそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中に、トナー粒子が分散した液体現像剤であって、
疎水化処理を施したシリカ微粒子と、高分子分散剤とを含み、
前記シリカ微粒子の平均粒子径が、5〜100nmで、かつ、前記シリカ微粒子の含有量が、トナー粒子100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であり、
前記絶縁性液体が、不飽和脂肪酸トリグリセリドと、脂肪酸モノエステルとを含むことを特徴とする。
これにより、環境に優しく、かつ、帯電特性、定着特性に優れた液体現像剤を提供することができる。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記シリカ微粒子は、正帯電性を有するものであることが好ましい。
これにより、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤とすることができる。このような正帯電性の液体現像剤を用いた場合、画像形成(現像)の際に、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくすることができ、画像形成装置内の周辺部品への負荷を低減させることができる。
【0009】
本発明の液体現像剤では、前記高分子分散剤は、ポリアミン脂肪酸縮重合体であることが好ましい。
これにより、液体現像剤の帯電特性を効果的に向上させることができる。また、トナー粒子同士の不本意な凝集をより効果的に防止することができ、その結果、液体現像剤中におけるトナー粒子の分散性をさらに向上させることができる。また、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いることにより、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤とすることができる。その結果、画像形成(現像)の際に、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくすることができ、画像形成装置内の周辺部品への負荷を低減させることができる。
本発明の液体現像剤では、前記高分子分散剤の含有量は、トナー粒子100重量部に対して、0.5〜7.5重量部であることが好ましい。
これにより、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。
【0010】
本発明の液体現像剤では、絶縁性液体中における前記不飽和脂肪酸トリグリセリドの含有量をX[wt%]、前記脂肪酸モノエステルの含有量をY[wt%]としたとき、1≦X/Y≦9の関係を満足することが好ましい。
これにより、優れた帯電特性を保持しつつ、トナー粒子の記録媒体への定着特性をさらに優れたものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、トナー粒子を構成する材料中に含まれる樹脂の酸価は、5〜20KOHmg/gであることが好ましい。
これにより、シリカ微粒子および高分子分散剤を、より効果的にトナー粒子表面近傍に保持することができ、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。
【0011】
本発明の画像形成装置は、本発明の液体現像剤を用いて、記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部より供給された前記液体現像剤を用いて像を形成する現像部と、
前記現像部で形成された像を前記記録媒体上に転写し、転写像を形成する転写部と、
前記現像部において残存した前記液体現像剤を回収する回収部と、
回収された前記液体現像剤を前記液体現像剤貯留部に搬送する搬送部と、
前記記録媒体上に形成された前記転写像を前記記録媒体上に定着させる定着部とを有することを特徴とする。
これにより、品質の高い鮮明な画像を形成することができる。
【0012】
本発明の画像形成装置では、前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させる圧縮手段を有することが好ましい。
これにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。
【0013】
本発明の画像形成装置では、前記圧縮手段は、前記層に対して、前記トナー粒子と同極性の電界を印加することにより、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させることが好ましい。
これにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、より品質の高い鮮明な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の液体現像剤および画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
《液体現像剤》
まず、本発明の液体現像剤について説明する。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中に、高分子分散剤、シリカ微粒子、および、トナー粒子が分散したものである。
【0015】
<絶縁性液体>
まず、絶縁性液体について説明する。
本発明の液体現像剤を構成する絶縁性液体は、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を有する、不飽和脂肪酸トリグリセリド、および脂肪酸モノエステルを含むものである。なお、本明細書中で、不飽和脂肪酸トリグリセリドとは、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を分子構造内に1つでも有する脂肪酸トリグリセリドを意味する。
【0016】
ところで、従来の液体現像剤では、使用時等における画像形成装置外への絶縁性液体の漏出(例えば、定着時における絶縁性液体の揮発等)や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境に対する影響が懸念されていた。また、従来の液体現像剤ではトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体の存在により、トナー粒子の記録媒体への定着性が阻害される(定着強度が低下する)という問題点があった。
【0017】
これに対して、本発明の絶縁性液体で用いられる不飽和脂肪酸トリグリセリド、および、脂肪酸モノエステルは、いずれも環境にやさしい成分である。したがって、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0018】
また、不飽和脂肪酸トリグリセリド、および脂肪酸モノエステルには、不飽和脂肪酸成分が含まれている。この不飽和脂肪酸成分は、トナー粒子の記録媒体への定着性向上に寄与することができる成分である。より詳しく説明すると、不飽和脂肪酸成分は、酸化されることにより(定着時に酸化されることにより)、重合反応が進行し、それ自体が硬化するため、記録媒体と、硬化した液体現像剤とのアンカー効果により、トナー粒子の定着性を向上させることができる。これにより、本発明によれば、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を優れたものとすることができる。また、不飽和脂肪酸成分が硬化することにより、定着したトナー画像に対して、水性ボールペンでの追記を容易かつ確実に行うことができる。
【0019】
また、絶縁性液体中に含まれる脂肪酸モノエステルは、定着過程において樹脂粒子(トナー粒子)に浸透し、可塑剤効果を発現する。この可塑剤効果により、例えば、記録媒体として紙を用いた場合には、トナー粒子が紙繊維の隙間に入り込み易くなるため、トナー粒子の定着強度をより高いものとすることができる。また、上記の可塑剤効果により、トナー粒子をより低温で定着させることができる。
【0020】
また、絶縁性液体中に、不飽和脂肪酸トリグリセリドと、脂肪酸モノエステルとを両方含むことにより、保存時においては、トナー粒子同士が凝集するのが防止され、保存性、長期安定性に優れたものとなるとともに、定着時には、トナー粒子の記録媒体への定着強度を優れたものとすることができる。これは、以下のように説明することができる。すなわち、絶縁性液体中に含まれる不飽和脂肪酸トリグリセリド、および、脂肪酸モノエステルは、後述するようなトナー粒子の主成分である樹脂材料との親和性に優れている。したがって、トナー粒子の絶縁性液体中での分散性は良好なものとなり、保存時においては、トナー粒子同士の凝集(ブロッキング)が効果的に防止され、液体現像剤の保存性、長期安定性は優れたものとなる。一方、定着時においては、液体現像剤に熱が加えられることにより、脂肪酸モノエステルがトナー粒子に浸透し、上述したような可塑剤効果を発現させる。これにより、トナー粒子を、記録媒体に強固に定着させることができる。
【0021】
また、本発明のように、不飽和脂肪酸トリグリセリドおよび脂肪酸モノエステルを含む絶縁性液体を用いることにより、記録媒体に対してトナー粒子を低温で定着できるとともに、特に優れた定着強度を示すものとなる。これは、以下のように説明することができる。一般に、不飽和脂肪酸トリグリセリドと、脂肪酸モノエステルとでは、脂肪酸モノエステルのほうが、粘度が低い性質を有する。さらに、絶縁性液体中に不飽和脂肪酸トリグリセリド、および脂肪酸モノエステルの双方を含むことにより、絶縁性液体、液体現像剤、ともに適度な粘度とすることができ、液体現像剤の記録媒体内への浸透を好適なものとすることができる。さらに、絶縁性液体中の不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応により、トナー粒子を含んだ状態で、絶縁性液体が硬化するため、硬化した液体現像剤と記録媒体とのアンカー効果により、トナー粒子を記録媒体へ強固に定着させることができる。
このような絶縁性液体中における不飽和脂肪酸トリグリセリドの含有量は、55〜90wt%であるのが好ましく、57〜75wt%であるのがより好ましい。上記条件を満たす絶縁性液体を含む液体現像剤は、保存性、長期安定性が特に優れたものとなる。
【0022】
また、このような絶縁性液体中における脂肪酸モノエステルの含有量は、10〜45wt%であるのが好ましく、25〜43wt%であるのがより好ましい。これにより、定着時における、脂肪酸モノエステルのトナー粒子への浸透はさらに好適なものとなり、確実に可塑剤効果を発現させる。これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を特に優れたものとすることができる。
【0023】
また、絶縁性液体における、不飽和脂肪酸トリグリセリドと脂肪酸モノエステルとの比率は、特に限定されないが、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、絶縁性液体中における不飽和脂肪酸トリグリセリドの含有率をX[wt%]、絶縁性液体中における脂肪酸モノエステルの含有率をY[wt%]としたとき、1≦X/Y≦9の関係を満足するのが好ましく、1.4≦X/Y≦4の関係を満足するのがより好ましい。これにより、保存時においては、脂肪酸モノエステルがトナー粒子に浸透するのが好適に抑制され、一方、定着時には、トナー粒子に脂肪酸モノエステルを十分に浸透させ、確実に可塑剤効果を発現することができる。これにより、優れた帯電特性を保持しつつ、トナー粒子の記録媒体への定着特性はさらに優れたものとなる。
【0024】
[不飽和脂肪酸トリグリセリド]
本発明において、絶縁性液体中の不飽和脂肪酸トリグリセリドは、脂肪酸とグリセリンとの間のトリエステル(トリグリセリド)であり、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むものである。
絶縁性液体中の不飽和脂肪酸トリグリセリドが、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むことにより、トナー粒子を記録媒体に強固に定着させることができる。このような不飽和脂肪酸成分としては、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸等の1価の不飽和脂肪酸や、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等、分子中に二重結合を複数有する多価の不飽和脂肪酸や、これらの共役不飽和脂肪酸等が挙げられる。特に、絶縁性液体が、共役不飽和脂肪酸を脂肪酸成分としてもつ不飽和脂肪酸トリグリセリドを含む場合には、酸化重合反応に寄与する成分でありながらも、保存時においては、化学的安定性や電気絶縁性を効果的に高くすることができる。これは、共役不飽和脂肪酸が、非共役不飽和脂肪酸に比べ、化学的に安定であるためである。そのため、定着時には、優れた定着特性を確保しつつ、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。
【0025】
また、上述した不飽和脂肪酸成分の中でも、1価の不飽和脂肪酸は、特に優れた化学的安定性を有している。したがって、絶縁性液体中の不飽和脂肪酸トリグリセリドが、脂肪酸成分として、1価の不飽和脂肪酸を含む場合には、液体現像剤の保存性、長期安定性を優れたものとすることができる。一方、多価の不飽和脂肪酸は、1価の不飽和脂肪酸に比べ、反応性(酸化反応性)が高い成分である。したがって、絶縁性液体中の不飽和脂肪酸トリグリセリドが、脂肪酸成分として、多価の不飽和脂肪酸を含む場合には、定着時における、絶縁性液体の酸化重合反応は好適に進行し、トナー粒子を記録媒体により強固に定着させることができる。
【0026】
また、不飽和脂肪酸トリグリセリドが、脂肪酸成分として、不飽和脂肪酸に加え、飽和脂肪酸を含む場合、液体現像剤の化学的安定性や電気絶縁性を高く保つことができるため、液体現像剤の化学的変化を防止し、電気抵抗を高く維持することができ、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。このような飽和脂肪酸としては、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0027】
上記のような不飽和脂肪酸トリグリセリドは、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、ヒマワリ油、亜麻仁油、オリーブ油、コーン油、椿油、綿実油、脱水ひまし油、パーム核油、ヤシ油等の植物由来の油脂や、ニシン油、イワシ油等の動物由来の油脂等、天然由来の油脂を精製することにより効率良く得ることができる。精製する方法としては、例えば、未精製の油脂を沸騰した水と混合し、混合液が完全に3層に分離した後、冷凍庫内で凍結する成分を取り除くという方法が挙げられる。また、この方法を繰り返し行うことにより、より純度の高い不飽和脂肪酸トリグリセリドを得ることができる。
【0028】
また、不飽和脂肪酸トリグリセリドは、全脂肪酸成分に対して、1価の不飽和脂肪酸を、15〜80mol%含んでいるのが好ましく、20〜75mol%含んでいるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性を特に優れたものとすることができる。
また、不飽和脂肪酸トリグリセリドは、全脂肪酸成分に対して、多価の不飽和脂肪酸を、10〜75mol%含んでいるのが好ましく、15〜65mol%含んでいるのがより好ましい。これにより、トナー粒子を記録媒体により強固に定着させることができる。
また、不飽和脂肪酸トリグリセリドは、全脂肪酸成分に対して、飽和脂肪酸成分を、5〜20mol%含んでいるのが好ましく、7〜17mol%含んでいるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性を特に優れたものとすることができる。
【0029】
[脂肪酸モノエステル]
本発明において、絶縁性液体中の脂肪酸モノエステルは、脂肪酸と1価のアルコールとの間のモノエステルであり、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むものである。
このような脂肪酸モノエステルは、脂肪酸成分として、炭素数が16〜22である不飽和脂肪酸を含んでいるものが好ましい。これにより、不飽和脂肪酸モノエステルの、定着時におけるトナー粒子への浸透がより好適なものとなり、可塑剤としての効果を十分に発現する。また、記録媒体への絶縁性液体の浸透が好適なものとなるとともに、酸化重合反応により、液体現像剤がより好適に硬化する。これらの効果により、記録媒体へのトナー粒子の定着特性はより優れたものとなる。このような不飽和脂肪酸成分としては、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸等の1価の不飽和脂肪酸や、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等、分子中に二重結合を複数有する多価不飽和脂肪酸や、これらの共役不飽和脂肪酸等が挙げられる。特に、絶縁性液体が、共役不飽和脂肪酸を脂肪酸成分としてもつ脂肪酸モノエステルを含む場合には、酸化重合反応に寄与する成分でありながらも、保存時においては、化学的安定性や電気絶縁性を高くすることができる。これは、共役不飽和脂肪酸が、非共役不飽和脂肪酸に比べ、化学的に安定であるためである。そのため、定着時には、優れた定着特性を確保しつつ、液体現像剤の帯電特性を効果的に向上させることができる。
【0030】
また、上述した不飽和脂肪酸成分の中でも、1価の不飽和脂肪酸は、特に優れた化学的安定性を有している。したがって、絶縁性液体中の脂肪酸モノエステルが、脂肪酸成分として、1価の不飽和脂肪酸を含む場合には、液体現像剤の保存性、長期安定性を優れたものとすることができる。一方、多価の不飽和脂肪酸は、1価の不飽和脂肪酸に比べ、反応性(酸化反応性)が高い成分である。したがって、絶縁性液体中の脂肪酸トリグリセリドが、脂肪酸成分として、多価の不飽和脂肪酸を含む場合には、定着時における、絶縁性液体の酸化重合反応は好適に進行し、トナー粒子を記録媒体により強固に定着させることができる。
【0031】
また、脂肪酸モノエステルの脂肪酸成分は、主として不飽和脂肪酸であるが、一部に飽和脂肪酸を含んでいてもよい。これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性を優れたものとすることができる。このような飽和脂肪酸としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0032】
また、絶縁性液体を構成する脂肪酸モノエステルは、脂肪酸グリセリドと炭素数が1〜4である1価のアルコールとのエステル交換反応により生成されたものであるのが好ましい。これにより、脂肪酸モノエステルと脂肪酸グリセリドとの親和性が、さらに高くなるため、絶縁性液体の粘度は好適なものとなり、記録媒体中への液体現像剤の浸透を、より優れたものとする。これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を優れたものとし、高速での画像形成に適応した液体現像剤として、好適に適用することができる。
【0033】
また、全脂肪酸モノエステル中、脂肪酸成分として、1価の不飽和脂肪酸で構成された脂肪酸モノエステルを、10〜75wt%含んでいるのが好ましく、20〜65wt%含んでいるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性を特に優れたものとすることができる。
また、全脂肪酸モノエステル中、脂肪酸成分として、多価の不飽和脂肪酸で構成された脂肪酸モノエステルを、15〜80wt%含んでいるのが好ましく、20〜70wt%含んでいるのがより好ましい。これにより、トナー粒子を記録媒体により強固に定着させることができる。
また、全脂肪酸モノエステル中、脂肪酸成分として、飽和脂肪酸で構成された脂肪酸モノエステルを、5〜20wt%含んでいるのが好ましく、10〜18wt%含んでいるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。
【0034】
<シリカ微粒子>
次に、本発明の液体現像剤を構成するシリカ微粒子について説明する。
本発明の液体現像剤は、平均粒径5〜100nmの疎水化処理を施したシリカ微粒子をトナー粒子100重量部に対して、0.1〜5.0重量部含むものである。
ところで、上述したような天然由来の油脂を用いた液体現像剤では、定着強度は向上するが、トナー粒子を十分に帯電させるのが困難であるため、十分な帯電特性を得るのが困難であった。
これに対して、本発明では、液体現像剤中に、平均粒径5〜100nmの疎水化処理を施したシリカ微粒子を所定の量含ませることにより、トナー粒子を記録媒体に強固に定着させることができるとともに、液体現像剤の帯電特性を優れたものとすることができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0035】
疎水化処理を施したシリカ微粒子は、帯電性の高い粒子で、トナー粒子の表面に付着(偏在)することにより、液体現像剤に優れた帯電特性を付与することが可能な粒子である。しかしながら、このようなシリカ微粒子を単に含ませるだけでは、トナー粒子の表面に十分に偏在させることができず、液体現像剤は十分な帯電特性を発揮することはできない。そこで、本発明のように、シリカ微粒子として平均粒径5〜100nmのものを用い、かつ、このようなシリカ微粒子を所定量含ませることで、液体現像剤中において、適度な量のシリカ微粒子をトナー粒子表面に確実に偏在させることができる。その結果、トナー粒子を確実に帯電させることができ、液体現像剤の帯電特性を優れたものとすることができる。さらに、このようなシリカ微粒子をトナー粒子の表面に偏在させることにより、後述する高分子分散剤をトナー粒子表面に確実に付着させることができ、液体現像剤の帯電特性を特に優れたものとすることができる。
【0036】
前述したように本発明の液体現像剤を構成するシリカ微粒子は、その平均粒径が5〜100nmのものであるが、10〜80nmのものであるのが好ましく、20〜60nmのものであるのがより好ましい。これにより、シリカ微粒子をトナー粒子の表面により確実に付着させることができるとともに、後述する高分子分散剤をトナー粒子の表面付近に偏在させることができる。これに対して、シリカ微粒子の平均粒径が前記下限値未満であると、シリカ微粒子が絶縁性液体中に浮遊してしまい、トナー粒子表面にシリカ微粒子を付着させるのが困難となる。その結果、後述する高分子分散剤を表面付近に偏在させるのが困難となり、液体現像剤の帯電特性を十分に向上させるのが困難となる。また、繰り返し印字した際に、後述する画像形成装置の液体現像剤貯留部に多くのシリカ微粒子が蓄積されてしまい、液体現像剤貯留部内の液体現像剤の粘度が高くなる。その結果、液体現像剤の搬送性(転写性)にムラが生じ、最終的に得られる画像にムラが生じてしまう。一方、シリカ微粒子の平均粒径が前記上限値を超えると、トナー粒子表面からシリカ微粒子が離脱しやすくなり、上記と同様に、高分子分散剤を表面付近に偏在させるのが困難となり、液体現像剤の帯電特性を十分に向上させるのが困難となる。
【0037】
また、前述したように本発明の液体現像剤中に含まれるシリカ微粒子の含有量は、トナー粒子100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であるが、0.2〜3.0重量部であるのが好ましく、0.5〜2.0重量部であるのがより好ましい。これにより、より適度な量のシリカ微粒子をトナー粒子表面に付着させることができ、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。これに対して、シリカ微粒子の含有量が前記下限値未満であると、トナー粒子表面に付着するシリカ微粒子の量が少なくなり、十分な帯電特性を得られない。また、後述する高分子分散剤をトナー粒子表面付近に偏在させるのが困難となり、液体現像剤の帯電特性を十分に向上させるのが困難となる。一方、シリカ微粒子の含有量が前記上限値を超えると、トナー粒子表面から脱離するシリカ微粒子が多くなり、繰り返し印字した際に、後述する画像形成装置の液体現像剤貯留部に多くのシリカ微粒子が蓄積されてしまい、液体現像剤貯留部内の液体現像剤の粘度が高くなる。その結果、液体現像剤の搬送性(転写性)にムラが生じ、最終的に得られる画像にムラが生じてしまう。また、シリカ微粒子の含有量が多すぎると、トナー粒子の定着特性を低下させる場合がある。
【0038】
上述したような疎水化されたシリカ微粒子は、正帯電性を有するものを用いるのが好ましい。このように正帯電性のシリカ微粒子を用いることにより、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤とすることができる。このような正帯電性の液体現像剤を用いた場合、画像形成(現像)の際に、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくすることができ、画像形成装置内の周辺部品への負荷を低減させることができる。
正帯電性を備えたシリカ微粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、例えば、負帯電性シリカに、アミノ基等の官能基を有するシラン系カップリング剤で、表面処理を施すことにより得ることができる。
【0039】
<高分子分散剤>
また、本発明において、液体現像剤(絶縁性液体)中には、高分子分散剤が含まれている。
高分子分散剤は、トナー粒子の分散性を向上させる機能を有するとともに、液体現像剤の帯電特性を向上させる機能も有している。
特に、本発明では、前述したシリカ微粒子を含むことにより、上記のような機能を備えた高分子分散剤は、トナー粒子の表面付近に偏在したものとなる。その結果、トナー粒子の分散性を特に高いものとすることができるとともに、液体現像剤の帯電特性を特に優れたものとすることができる。
【0040】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアミン脂肪酸縮重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸およびその塩、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0041】
上述した中でも特に、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いた場合、高分子分散剤をより強固にトナー粒子表面に付着させることができ、液体現像剤の帯電特性を効果的に向上させることができる。また、トナー粒子同士の不本意な凝集をより効果的に防止することができ、その結果、液体現像剤中におけるトナー粒子の分散性をさらに向上させることができる。また、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いることにより、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤とすることができる。その結果、画像形成(現像)の際に、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくすることができ、画像形成装置内の周辺部品への負荷を低減させることができる。特に、トナー粒子を構成する樹脂材料として、ポリエステル樹脂を用いた場合、その効果がより顕著に発揮される。より詳しく説明すると、ポリエステル樹脂は、透明性が高く、結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性が良く、また、高い定着特性が得られるという特徴を有している。しかしながら、ポリエステル樹脂は、通常、それ自体が負帯電性のものであるため、正帯電性のトナー粒子(液体現像剤)に適用するのが困難であった。これに対して、ポリアミン脂肪酸縮重合体を用いることにより、このようなポリエステル樹脂を用いた場合であっても、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤とすることができる。
液体現像剤中における高分子分散剤の含有量は、トナー粒子100重量部に対して、0.5〜7.5重量部であるのが好ましく、1〜5重量部であるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。
【0042】
<トナー粒子>
次に、トナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料(トナー材料)]
本発明の液体現像剤は、上記のような絶縁性液体中にトナー粒子が分散している。
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、樹脂材料を含むものである。
【0043】
1.樹脂材料
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、公知の樹脂を用いることができるが、ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。ポリエステル樹脂は、前述した脂肪酸モノエステル、および不飽和脂肪酸トリグリセリドと同じく、エステル成分を分子構造内に有していることから、前述したような絶縁性液体との親和性が高く、液体現像剤中でのトナー粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。また、定着時には、脂肪酸モノエステルが浸透し易く、上述したような可塑剤効果を確実に発現させることができ、定着特性をさらに優れたものとすることができる。また、ポリエステル樹脂を含む材料で構成されたトナー粒子は、その表面に種々の官能基を備えているため、前述したようなシリカ微粒子を表面に容易に付着させることができ、液体現像剤の帯電特性をより優れたものとすることができる。さらに、ポリエステル樹脂は、透明性が高く、結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性を高いものとすることができる。
【0044】
また、樹脂の酸価は、5〜20KOHmg/gであるのが好ましく、5〜10KOHmg/gであるのがより好ましい。これにより、前述したようなシリカ微粒子および高分子分散剤を、より効果的にトナー粒子表面近傍に保持することができ、液体現像剤の帯電特性をより効果的に向上させることができる。また、上記条件を満足する樹脂材料で構成されたトナー粒子は、前述したような絶縁性液体との親和性に特に優れたものとなる。これにより、保存時においては、液体現像剤中でのトナー粒子の分散性はより優れたものとなり、トナー粒子同士が凝集するのを、長期間に渡って、より効率よく防止することができる。また、定着時においては、トナー粒子への絶縁性液体(脂肪酸モノエステル)の浸透はより好適なものとなり、可塑剤効果がより強く発現され、トナー粒子を記録媒体により強固に定着させることができる。
【0045】
また、このような樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0046】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、特に限定されず、例えば、公知の顔料、染料等を使用することができる。
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、公知のワックス、磁性粉末等が挙げられる。
また、混練物の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0047】
[トナー粒子の形状等]
本発明の液体現像剤に適用されるトナー粒子としては、その表面に微小の凹凸を有するものを用いるのが好ましい。このように微小の凹凸を有することにより、前述した脂肪酸モノエステルをトナー粒子の表面付近により効果的に偏在(吸着)させることができる。
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜4μmであるのがより好ましく、0.5〜3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
【0048】
液体現像剤中におけるトナー粒子の含有率は、10〜60wt%であるのが好ましく、20〜50wt%であるのがより好ましい。
なお、上述したような各成分で構成された液体現像剤(本発明の液体現像剤)の粘度(25℃において、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される粘度)は、50〜1000mPa・sであるのが好ましく、100〜900mPa・sであるのがより好ましく、150〜800mPa・sであるのがさらに好ましい。これにより、記録媒体中への液体現像剤の浸透はより好適なものとなるため、記録媒体へのトナー粒子の定着特性はより優れたものとなる。また、記録媒体に得られる画像が、ムラのない鮮明なものとなり、かつ、高速での画像形成に適応した液体現像剤として、特に適したものとなる。しかしながら、脂肪酸モノエステルを含まない場合には、絶縁性液体の粘度が高くなりすぎてしまい、トナー粒子表面に多量の絶縁性液体が付着した状態で、記録媒体へと定着してしまう。このようにトナー粒子表面に多量に絶縁性液体が存在すると、粘度の高い絶縁性液体は、記録媒体中に浸透しにくいため、記録媒体へのトナー粒子の定着特性が悪化し、高速での画像形成も困難となる可能性がある。また、前述したような可塑剤効果が十分に発揮されず、優れた定着特性を得ることができない。また、不飽和脂肪酸トリグリセリドを含まない場合には、絶縁性液体の粘度が低くなりすぎてしまい、例えば、後述するような画像形成装置において、液体現像剤を、現像剤容器より塗布ローラで汲み出すことが困難となり、記録媒体に対して、トナー粒子を均一に定着することができず、得られる画像にムラが生じ、また、画像濃度が薄いものとなり、さらには、記録媒体へのトナー粒子の定着特性が不十分なものとなってしまう可能性がある。
また、上述したような各成分で構成された液体現像剤(本発明の液体現像剤)の電気抵抗は、1.5×1012Ωcm以上であるのが好ましく、2.0×1012Ωcm以上であるのがより好ましい。
【0049】
<液体現像剤の製造方法>
次に、上述したような本発明の液体現像剤の製造方法について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法は、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子を会合させ、会合粒子を得る会合粒子形成工程と、脂肪酸モノエステル、もしくは脂肪酸モノエステルと不飽和脂肪酸トリグリセリドの一部との混合液(以下、解砕用脂肪酸エステル液ともいう)中において会合粒子を解砕し、解砕用脂肪酸エステル液中にトナー粒子が分散したトナー粒子分散液を得る工程と、得られたトナー粒子分散液と、脂肪酸トリグリセリドとを混合する混合工程とを有する。
【0050】
[会合粒子の調製]
まず、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子が会合した会合粒子の調製方法の一例について説明する。
会合粒子は、いかなる方法で調製されるものであってもよいが、本実施形態では、水系液体で構成された水系分散媒中に、主として樹脂材料(トナー材料)で構成された分散質(微粒子)が分散した水系分散液を得、当該水系乳化液中の分散質を会合させることにより、会合粒子を得る。
【0051】
(水系分散液の調製)
以下、水系分散液の調製について説明する。
水系分散液は、いかなる方法で調製されるものであってもよいが、本実施形態では、まず、前述したようなトナー材料を溶媒に溶解させてトナー材料溶液を得、該トナー材料溶液と、水系液体で構成された水系分散媒とを混合することにより、トナー材料を含む分散質(液状の分散質)が分散した水系乳化液を得、その後、該水系乳化液に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去することにより、水系分散液を得る。
【0052】
水系乳化液は、例えば、以下のようにして調製することができる(水系乳化液調製工程)。
まず、水系分散媒を用意する。
水系分散媒は、水系液体で構成されたものである。
本発明において、「水系液体」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系液体は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。このようなものを用いることにより、例えば、水系分散媒中における分散質の分散性を高めることができ、水系乳化液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0053】
水系液体の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
また、水系分散媒には、必要に応じて乳化分散剤を添加してもよい。乳化分散剤を添加することにより、より容易に水系乳化液を調製することができる。
【0054】
乳化分散剤としては、特に限定されず、例えば、公知の乳化分散剤を用いることができる。
一方、前述したようなトナー材料を溶媒に溶解させ、トナー材料溶液を調製する。
溶媒としては、トナー材料の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、前述した水系液体よりも沸点が低いものを用いるのが好ましい。これにより、溶媒を容易に除去することができる。
【0055】
また、溶媒は、前述した水系分散媒(水系液体)との相溶性が低いもの(例えば、25℃における水系分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、水系乳化液中において、トナー材料を安定した状態で微分散させることができる。
また、溶媒の組成は、例えば、前述したような公知の樹脂、着色剤の組成や、水系分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
このような溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、MEK等のケトン系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0056】
また、トナー材料溶液の調製には、例えば、樹脂材料、着色剤等のトナー用材料を混練して得られた混練物を用いてもよい。このような混練物を用いることにより、トナーの構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、前述したような溶媒に対する分散性が比較的低い顔料(着色剤)を用いた場合、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、前述した水系乳化液の水系分散媒に対する分散性に劣る成分や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分が含まれる場合であっても、水系乳化液における分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。
【0057】
次に、上記トナー材料溶液を、撹拌した状態の水系分散媒中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水系分散媒中に、トナー材料を含む分散質が分散した水系乳化液が得られる。なお、トナー材料溶液の滴下を行う際、水系分散媒および/またはトナー材料溶液を加熱しておいてもよい。
その後、得られた水系乳化液を加熱したり、減圧雰囲気下に置くことにより、分散質中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去し、トナー材料で構成された分散質(微粒子)が分散した水系分散液を得る。
【0058】
水系分散液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系分散液中における分散質同士の不本意な凝集をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
水系分散液中の分散質の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜3μmであるのが好ましく、0.1〜2μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0059】
(会合粒子形成工程)
次に、上記のようにして得られた水系分散液に、電解質を添加し、分散質を会合させ、会合粒子を形成する(会合粒子形成工程)。
添加する電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸等の酸性物質、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウム等の1価のカチオンの硫酸塩は、均一な会合を進める上で好適に用いることができる。
なお、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤や、イオン性、非イオン性界面活性剤を分散安定剤として添加してもよい。分散安定剤(乳化剤)の存在下で電解質を添加することにより、不均一な会合を防止することができる。
【0060】
このような分散安定剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、各種プルロニック系等の非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。中でも、アニオン性、非イオン性の界面活性剤は、少量の添加量であっても分散安定性に効果があり、好適に用いることができる。非イオン性界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。
【0061】
添加する電解質の量は、水系分散液中の固形分100重量部に対し、0.5〜15重量部であることが好ましく、1〜12重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることがさらに好ましい。電解質の添加量が前記下限値未満であると、分散質の会合が十分に進行しない場合がある。また、電解質の添加量が前記上限値を超えると、分散質の会合が不均一となり、粗大粒子が発生する可能性があり、最終的に得られるトナー粒子の大きさにばらつきが生じる可能性がある。
そして、会合させた後、濾過・洗浄・乾燥等を行うことにより、会合粒子を得る。
得られる会合粒子の平均粒径は、0.1〜7μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。
【0062】
[解砕工程]
次に、上記のようにして得られた会合粒子を、解砕用脂肪酸エステル液中で解砕する(解砕工程)。これにより、解砕用脂肪酸エステル液中にトナー粒子が分散したトナー粒子分散液が得られる。
また、このように、解砕用脂肪酸エステル液中で会合粒子を解砕することにより、最終的に得られる液体現像剤中において、トナー粒子の表面付近に解砕用脂肪酸エステル液に含まれる脂肪酸モノエステルを偏在(吸着)させることができる。このようにトナー粒子の表面付近に脂肪酸モノエステルを偏在させることにより、前述したような可塑剤効果をより顕著なものとすることができる。その結果、トナー粒子が紙繊維(記録媒体)の隙間により入り込み易くなるため、トナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0063】
また、解砕用脂肪酸エステル液という液体中で解砕しているので、凝集等によって粗大化したトナー粒子が発生するのを防止することができる。
また、得られるトナー粒子は、その表面に、微粒子(分散質)に由来する凹凸を有するものとなるので、脂肪酸モノエステルをこの凹凸に確実に保持することができる。
また、本実施形態では、会合粒子を解砕することによりトナー粒子を得るので、従来の粉砕法や湿式粉砕法と比較して、微粉(目的の大きさの粒子よりも極端に小さい粒子)の発生を効果的に防止することができる。その結果、微粉による液体現像剤の帯電特性の低下を効果的に防止することができる。
また、解砕用脂肪酸エステル液は、比較的粘度が低いため、会合粒子を構成する微粒子(分散質)の間に侵入しやすく、好適に会合粒子を解砕することができる。
【0064】
なお、解砕用脂肪酸エステル液と会合粒子とを混合する際に、解砕用脂肪酸エステル液中に、前述したようなシリカ微粒子、高分子分散剤が含まれているのが好ましい。これにより、シリカ微粒子をトナー粒子表面により確実に付着(偏在)させることができるとともに、高分子分散剤をトナー粒子の表面付近に偏在させることができる。その結果、液体現像剤の帯電特性をより高いものとすることができる。また、このように解砕時に、シリカ微粒子、高分子分散剤を添加することにより、シリカ微粒子、高分子分散剤が粉砕助剤として働き、より効率良く会合粒子を解砕することができるとともに、得られるトナー粒子の分散性をより高いものとすることができる。
なお、シリカ微粒子、高分子分散剤は、後述する混合工程において添加するものであってもよい。
【0065】
[混合工程]
次に、上記のようにして得られたトナー粒子分散液と、不飽和脂肪酸トリグリセリドとを混合し、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させる(混合工程)。
以上のようにして、脂肪酸トリグリセリドと不飽和脂肪酸モノエステルとを含む絶縁性液体中に、トナー粒子、シリカ微粒子、および高分子分散剤が分散した、本発明の液体現像剤が得られる。
【0066】
《画像形成装置》
次に、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す図である。
画像形成装置P100は、図1に示すように、液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部P1と、液体現像剤貯留部P1内に貯留された液体現像剤を用いて像(トナー画像)を形成する現像部P2と、現像部P2で形成された像を記録媒体に転写する転写部P3と、現像部P2において不要となった液体現像剤を回収する回収部P4と、回収部P4で回収された液体現像剤を液体現像剤貯留部P1に搬送する回収液体現像剤搬送部(搬送部)P43と、後に詳述する定着装置(定着部)F40とを有している。
【0067】
液体現像剤貯留部P1は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を貯留する機能を有している。
現像部P2は、像を形成する感光体P21と、液体現像剤貯留部P1内の液体現像剤にその一部が浸漬された液供給ローラP22と、感光体P21に液体現像剤を供給する現像ローラP23とを有している。
【0068】
感光体P21は、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器(帯電ローラ)P211によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等で構成された露光ランプP212によって記録すべき情報に応じた露光が行なわれることにより、静電潜像が形成されるものである。
また、感光体P21は、アモルファスシリコーン感光体、または、表面コート層を備えた有機感光体である。これにより、液体現像剤中に含まれるシリカ微粒子によってその表面が研磨されることがないため、感光体P21の劣化を防止することができる。その結果、画像形成装置の寿命を著しく延ばすことができる。
【0069】
なお、感光体P21から後述する中間転写ローラP31へのトナー画像の転写の後には、感光体P21は、除電光P213によって除電される。
また、感光体P21上に残留した転写残り液体現像剤は、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP214によって除去される。転写残り液体現像剤は、前述したように、シリカ微粒子と、高分子分散剤とを含むものであるので、感光体P21の表面に損傷を与えることなく、容易に除去することができる。
【0070】
液供給ローラP22は、現像ローラP23に液体現像剤を供給する機能を有している。
液供給ローラP22は、例えば、ステンレス等の金属製のグラビアローラであり、後述する現像ローラP23と対向して回転する。
また、液供給ローラP22の表面には、液体現像剤供給層P221が形成され、メータリングブレードP222によってその厚さが一定に保持される。そして、液供給ローラP22から現像ローラP23に対して液体現像剤が転写される。
【0071】
現像ローラP23は、ステンレス等の金属製のローラ芯体P231上に低硬度シリコーンゴム層を有し、その最外層には導電性のPFA(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)等で構成されたフッ素樹脂層が形成されている。
現像ローラP23は、その表面に、前述した液供給ローラP22から液体現像剤を供給することにより、液体現像剤層P232を形成するものである。
また、現像ローラP23は、感光体P21と等速で回転して液体現像剤を潜像部に転写する。
また、現像部P2は、図1に示すように、現像ローラP23上の液体現像剤層P232に対して、トナー粒子と同じ電荷を放電するコロナ放電器(圧縮手段)P24を備えている。
【0072】
このコロナ放電器P24は、前述した液体現像剤層P232に対してトナー粒子と同極性の電界を印加することにより、図2に示すように、液体現像剤層P232中において、現像ローラP23の表面近傍にトナー粒子1を偏在させる機能を有している。このようにトナー粒子を偏在させることにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。特に、前述したようなトナー粒子が均一に分散した液体現像剤を用いるため、現像ローラP23の表面付近に均一に偏在させることができるとともに、効率良く感光体P21にトナー粒子を転写することができる。その結果、より質の高い鮮明な画像を形成することができる。
【0073】
転写部P3は、中間転写ローラP31と、二次転写ローラP32とを有している。
感光体P21上に形成されたトナー像は、中間転写ローラP31に対して転写された後に、二次転写ローラP32に転写電流を通電して、両者の間を通過する紙等の記録媒体F5に画像が転写される。
その後、紙等の記録媒体F5上に転写されたトナー画像(転写像)は、後述する定着装置(定着部)F40に搬送され、定着が行われる。
【0074】
回収部P4は、現像ローラクリーニングブレードP41と、回収液体現像剤貯留部P42と、回収液体現像剤搬送部P43とを有している。
現像ローラクリーニングブレードP41は、現像ローラP21上から、感光体P21へ転写後に現像ローラP23に残存する液体現像剤を除去する機能を有している。
回収液体現像剤貯留部P42は、現像ローラクリーニングブレードP41によって除去された液体現像剤を回収・貯留する機能を有している。
【0075】
ところで、コロナ放電器P24によって、現像ローラP23の表面近傍に偏在させたトナー粒子は、密集した状態で回収される。しかしながら、液体現像剤として、前述したようなシリカ微粒子と、高分子分散剤と、トナー粒子とが分散したものを用いることにより、トナー粒子が密集した状態であっても、容易に均一分散させることができる。これは、トナー粒子同士の間に、シリカ微粒子と高分子分散剤とが存在することにより、容易に再分散させることができるためであると考えられる。
【0076】
回収液体現像剤貯留部P42は、回収した液体現像剤を撹拌する撹拌手段P421を備えている。このような撹拌手段P421を備えることにより、回収された液体現像剤中においてトナー粒子をより均一に分散させることができ、回収された液体現像剤をより好適に再利用することができる。
回収液体現像剤搬送部P43は、回収液体現像剤貯留部P42に貯留された液体現像剤を液体現像剤貯留部P1に搬送する機能を有している。
【0077】
また、回収液体現像剤搬送部P43は、図1に示すように、ポンプP430を有しており、このポンプP430により、回収液体現像剤貯留部P42に回収された液体現像剤を液体現像剤貯留部P1に搬送する。
なお、上記説明では、圧縮手段として、コロナ放電器を用いるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、帯電ローラ、グロー放電器等であってもよい。
【0078】
次に、本発明の画像形成装置に適用される定着装置について説明する。
図3は、本発明の画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
定着装置(定着部)F40は、前述した現像部P2、転写部P3等において形成された未定着のトナー画像F5aを、記録媒体F5上に定着させるものである。
定着装置F40は、図3に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、紫外線照射手段F8と、スプリングF9とを有している。
【0079】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0080】
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0081】
また、熱定着ローラF1の内部に、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0082】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像が形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。圧力を加えることにより、前述したような絶縁性液体を記録媒体F5中により効率良く浸透させることができる。その結果、熱や後述する紫外線照射等によって絶縁性液体に含まれる不飽和脂肪酸成分を記録媒体F5内部でより確実に硬化させることができ、アンカー効果により、記録媒体F5上にトナー画像F5aをより強固に定着させることができる。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
前述した熱定着ローラF1の弾性体F1cと加圧ローラF2の弾性体F2cとは、略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップを形成する。また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0083】
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0084】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0085】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
【0086】
定着装置F40において、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが熱定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0087】
紫外線照射手段F8は、上記のようにして排出された記録媒体F5のトナー画像F5aが形成されている面に対して、紫外線を照射する機能を有している。このような構成とすることにより、絶縁性液体中に含まれる不飽和脂肪酸成分を熱と紫外線照射とにより、より強固に固化させることができ、その結果、トナー粒子を記録媒体上により強固に定着させることができる。また、紫外線の照射により、熱定着ローラF1によって特に高い温度に加熱しなくても、トナー粒子を記録媒体上に強固に定着させることができるため、本発明の液体現像剤を用いることによる効果との相乗効果により、トナー粒子を記録媒体により低温で、かつ、より高速で定着させることができるとともに、記録媒体にトナー粒子をより強固に定着させることができる。さらに、定着に大きな熱量を必要としないため、前述した定着ニップ部を通過する時間を比較的短いものとしても、紫外線照射によって十分にトナー粒子を記録媒体上に定着させることができる。すなわち、定着に時間がかからないため、印刷速度のさらなる高速化を図ることができる。また、定着に大きい熱量を必要としないため、省エネルギー化も図ることができる。その結果、環境に優しい定着装置を提供することができる。
【0088】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
【0089】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0090】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
【0091】
トナー粒子が定着ニップ部位を通過するのに要する時間(ニップ時間)は、0.02〜0.2秒であるのが好ましく、0.03〜0.1秒であるのがより好ましい。トナー粒子が定着ニップ部を通過するのに要する時間がこのように短い時間であっても、前述したような本発明の液体現像剤を用いることにより、十分に定着させることができ、印刷速度のさらなる高速化を図ることができる。
熱定着ローラF1により加える熱(定着温度)は、具体的には、80〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましい。このような定着温度が前記範囲内の値であると、絶縁性液体中に含まれる不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)をより効果的に進行させることができる。
【0092】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤の製造方法は、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。
また、本発明の液体現像剤は、上述したような方法により得られたものに限定されない。
【0093】
また、本発明の画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、本発明の画像形成装置は、図示の構成のものに限定されない。
また、本発明の画像形成装置に適用される定着装置は、前述した実施形態に限定されず、定着装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、定着ローラ側から加熱するものとして説明したが、加圧ローラ側から加熱するものであってもよい。
【実施例】
【0094】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
<絶縁性液体の調製>
絶縁性液体として用いる、不飽和脂肪酸トリグリセリドを含む液体と脂肪酸モノエステルを含む液体とを以下のようにして調製した。
【0095】
(不飽和脂肪酸トリグリセリドを含む液体の調製)
まず、粗大豆油を以下のようにして精製し、精製した大豆油を得た。
はじめに、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法により粗大豆油を粗精製した。
次に、粗精製した粗大豆油(第1の粗精製油):300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
【0096】
次に、フラスコを振り、上記の粗大豆油(第1の粗精製油)と沸騰した水とを混合した。
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷凍庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結していない成分を別のフラスコに移した。
この凍結していない成分に対して、再度、上記と同様の操作を繰り返し、得られた凍結していない成分を取り出し、粗製油脂(第2の粗精製油)を得た。
【0097】
次に、フラスコ内に、前述のようにして得られた粗製油脂(第2の粗精製油):100体積部と、主として含水ケイ酸アルミニウムで構成された活性白土:35体積部とを混合・撹拌した。
次に得られた混合物を加圧下(0.18MPa)で、48時間保存し、活性白土を完全に沈殿させた。
その後、沈殿物を除去し、精製した大豆油(以下、単に大豆油という。)を得た。なお、大豆油には主にリノール酸を主成分とする不飽和脂肪酸トリグリセリドが含まれており、大豆油中の不飽和脂肪酸トリグリセリドは98wt%であった。また、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうち53mol%であった。
【0098】
(脂肪酸モノエステルを含む液体の調製)
次に、この大豆油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上の大豆油脂肪酸メチルエステルを得た。このようにして得られた脂肪酸モノエステルは、主にオレイン酸メチル、リノール酸メチル、α−リノレン酸メチル等の不飽和脂肪酸モノエステルと、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル等の飽和脂肪酸モノエステルとを主として構成されたものであった。
【0099】
<トナー粒子の調製>
(着色剤マスター溶液の調製)
まず、ポリエステル樹脂(軟化温度:99℃、酸価:7.7KOHmg/g)と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0100】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物の粉末に固形分含有量が30wt%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。
【0101】
(樹脂液の調製)
上記着色剤マスター溶液:33重量部にメチルエチルケトン:200重量部および前記ポリエステル樹脂:73重量部を加えて、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で混合し、樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0102】
(水系乳化液の調製)
マックスブレンド攪拌翼を有する円筒型の2Lセパラブルフラスコに上述の樹脂液を500重量部、メチルエチルケトンを45.5重量部入れ、樹脂液の固形分含有量を55%とした。
次いでフラスコ内の樹脂液に1規定アンモニア水:41.7重量部(前記ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の総量に対するモル当量比は1.1)を加えて、スリーワンモーター(新東科学社製)により、攪拌羽の回転数を210rpm(攪拌翼の周速:0.71m/s)として十分に攪拌し、その後攪拌を維持しながら、脱イオン水:133重量部を加えた。フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して133重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こし、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液を得た。
【0103】
(会合による会合粒子の製造)
次に、フラスコ内の攪拌を継続しつつ、水系乳化液に1規定アンモニア水と水との総量が593重量部となるように脱イオン水:285重量部を加えた。次いで、水系乳化液に対して、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製):2.6重量部を脱イオン水:30重量部に希釈して添加した。
【0104】
その後、水系乳化液の温度を25℃に保ちつつ、攪拌の回転数を150rpm(攪拌翼の周速:0.54m/s)として、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液:300重量部を滴下し、分散質の会合体の粒径を3.5μmとした。滴下後、分散質の会合体の粒径が5.0μmに成長するまで攪拌を続け会合操作を終了した。
得られた会合体分散液に対して、減圧下で有機溶剤を留去することにより乾燥し、会合粒子を得た。
【0105】
<液体現像剤の調製>
上記の方法で得られた会合粒子:100重量部、大豆油脂肪酸メチルエステル:200重量部、ポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース13940」):2.5重量部、ジメチルアミノシランで疎水化処理を施した正帯電性のシリカ微粒子(平均粒径:40nm):1重量部をセラミック製ポット(内容積600ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:1mm)を体積充填率25%になるようにセラミック製ポットに入れた。卓上ポットミルにて回転速度210rpm(1/min)で120時間解砕を行い、ポット内の分散液をジルコニアボールと分離して取り出し、トナー粒子分散液を得た。
その後、得られたトナー粒子分散液に、精製した大豆油:300重量部を加えてさらに24時間解砕を行い、液体現像剤を得た。
【0106】
得られた液体現像剤中における、トナー粒子の平均粒径(体積基準平均粒径)は1.9μm、各トナー粒子間での粒径の標準偏差は0.54μmであった。また、25℃において振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される液体現像剤の粘度は、190mPa・sであった。また、絶縁性液体の電気抵抗は、8×1012Ωcm、液体現像剤の電気抵抗は、2.1×1012Ωcmであった。なお、トナー粒子の平均粒径および粒度分布は、Mastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。
【0107】
(実施例2〜5)
シリカ微粒子の平均粒径および含有量を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。
(実施例6〜8)
脂肪酸モノエステル、不飽和脂肪酸トリグリセリドの使用量、および、その製造に用いる原料のいずれか少なくとも一つを表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。
【0108】
(実施例9、10)
高分子分散剤の含有量を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。
(実施例11、12)
絶縁性液体の製造に用いた原料を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。
(実施例13〜15)
トナー粒子を構成する樹脂材料として、表1に示すものを用いた以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。
【0109】
(比較例1、2)
シリカ微粒子として表1に示すものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例3、4)
シリカ微粒子の含有量を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0110】
(比較例5)
大豆油脂肪酸メチルエステルを、大豆油に置換した以外は、前記実施例1と同様に液体現像剤を製造した。
(比較例6)
シリカ微粒子を添加しなかった以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例7)
高分子分散剤を添加しなかった以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0111】
以上の各実施例および各比較例について、使用した樹脂の種類、不飽和脂肪酸トリグリセリドの原料、絶縁性液体中における含有率、および含まれる脂肪酸成分の種類と含有率、脂肪酸モノエステルの原料、絶縁性液体中における含有率、含まれる脂肪酸成分の種類と含有率、エステル交換に使用したアルコール成分の種類、シリカ微粒子の帯電性、平均粒径および含有量、高分子分散剤の含有量等を表1に示した。なお、表1中、ポリエステル樹脂をPEs、エポキシ樹脂をEP、ハイオレイック菜種油をHO菜種油と示した。
【0112】
【表1】

【0113】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、以下の評価を行った。
[2.1]帯電特性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤について、マイクロチック・ニチオン社製の「顕微鏡式レーザーゼータ電位計」ZC−2000を用いて電位差を測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0114】
測定は、液体現像剤を希釈溶媒で希釈して、10mm角の透明セルに入れ、電極間9mmで300Vの電圧をかけると同時に顕微鏡でセル内の粒子の移動速度を観察することで、移動速度を算出して、その値からゼータ電位を求めることにより行った。
◎◎:電位差が+100mV以上
◎ :電位差が+85mV以上、+100mV未満
○ :電位差が+70mV以上、+85mV未満
△ :電位差が+50mV以上、+70mV未満
× :電位差が+50mV未満
【0115】
[2.2]定着強度
図1に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。なお、感光体としては、アモルファスシリコーン感光体を用いた。その後、図3に示すような定着装置を用いて、熱定着ローラの設定温度を100℃として、熱定着を行った。
【0116】
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.5kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:画像濃度残存率が95%以上。
◎ :画像濃度残存率が90%以上95%未満。
○ :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△ :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
× :画像濃度残存率が70%未満。
【0117】
[2.3]画像濃度
図1に示すような本発明の画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。その後、図3に示すような定着装置を用いて、熱定着ローラの設定温度を100℃として、熱定着を行った。
記録紙上に形成されたトナー画像の画像濃度を、X−Rite社製の色彩色差計により測定した。
【0118】
[2.4]保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:15〜25℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
◎ :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
○ :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められるが、液体現像剤として
問題の無い範囲である。
△ :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がはっきりと認められる。
× :トナー粒子の浮遊および凝集沈降が顕著に認められる。
【0119】
これらの結果を表2に示した。
【0120】
【表2】

【0121】
表2から明らかなように、各実施例では、いずれも、帯電特性、定着強度、画像濃度、保存性ともに優れたものであった。これに対し、各比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
また、感光体を表面コート正帯電性有機感光体に変更し、上記と同様に、画像濃度、定着強度の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】液体現像層中のトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1…トナー粒子 P100…画像形成装置 P1…液体現像剤貯留部 P2…現像部 P21…感光体 P211…帯電器 P212…露光ランプ P213…除電光 P214…クリーニングブレード P22…液供給ローラ P221…液体現像剤供給層 P222…メータリングブレード P23…現像ローラ P231…ローラ芯体 P232…液体現像剤層 P24…コロナ放電器(圧縮手段) P3…転写部 P31…中間転写ローラ P32…二次転写ローラ P4…回収部 P41…現像ローラクリーニングブレード P42…回収液体現像剤貯留部 P421…撹拌手段 P43…回収液体現像剤搬送部 P430…ポンプ F40…定着装置 F1…熱定着ローラ(加熱ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ロール基材 F1c…弾性体 F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ロール基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F8…紫外線照射手段 F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体中に、トナー粒子が分散した液体現像剤であって、
疎水化処理を施したシリカ微粒子と、高分子分散剤とを含み、
前記シリカ微粒子の平均粒子径が、5〜100nmで、かつ、前記シリカ微粒子の含有量が、トナー粒子100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であり、
前記絶縁性液体が、不飽和脂肪酸トリグリセリドと、脂肪酸モノエステルとを含むことを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記シリカ微粒子は、正帯電性を有するものである請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記高分子分散剤は、ポリアミン脂肪酸縮重合体である請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記高分子分散剤の含有量は、トナー粒子100重量部に対して、0.5〜7.5重量部である請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
絶縁性液体中における前記不飽和脂肪酸トリグリセリドの含有量をX[wt%]、前記脂肪酸モノエステルの含有量をY[wt%]としたとき、1≦X/Y≦9の関係を満足する請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
トナー粒子を構成する材料中に含まれる樹脂の酸価は、5〜20KOHmg/gである請求項1ないし5のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体現像剤を用いて、記録媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部より供給された前記液体現像剤を用いて像を形成する現像部と、
前記現像部で形成された像を前記記録媒体上に転写し、転写像を形成する転写部と、
前記現像部において残存した前記液体現像剤を回収する回収部と、
回収された前記液体現像剤を前記液体現像剤貯留部に搬送する搬送部と、
前記記録媒体上に形成された前記転写像を前記記録媒体上に定着させる定着部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させる圧縮手段を有する請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記圧縮手段は、前記層に対して、前記トナー粒子と同極性の電界を印加することにより、前記層中において前記現像ローラの表面近傍に前記トナー粒子を偏在させる請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−139602(P2008−139602A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326344(P2006−326344)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】