説明

液冷式放熱装置

【課題】冷却液通路内の圧力上昇を防止しうる液冷式放熱装置を提供する。
【解決手段】 液冷式放熱装置1は冷却液通路5を有する放熱ベース2を備えている。放熱ベース2を形成する両金属板3,4を外方に膨出させて冷却液通路5の通路形成部11を形成する。通路形成部11に、部分的に途切れた途切れ部分15を設け、通路形成部11の途切れ部分15に臨む2つの端部を下金属板4を膨出させることにより形成する。上金属板3に通路形成部11の途切れ部分15に臨む2つの端部を外部に通じさせる2つの連通穴23を形成し、上金属板3の外面に2つの連通穴23を通じさせる連通部材35を固定する。連通部材35は、外方に膨出した本体36と、本体36の開口周縁部に一体に形成された外向きフランジ37とよりなる。外向きフランジ37と上金属板3との間が冷却液通路5内を外部に通じさせる連通部となる。連通部にシート状水素透過許容部材41を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばノート型パーソナルコンピュータ、二次元ディスプレイ装置、プロジェクタなどの電子機器の発熱電子部品などの発熱体から発せられる熱を放熱する液冷式放熱装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、この明細書および特許請求の範囲において、図2〜図6の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、電子機器の発熱電子部品から発せられる熱を放熱する方法として、片面が発熱電子部品に熱的に接触させられる受熱面となされたアルミニウム製放熱基板と、放熱基板の他面に一体に設けられた放熱フィンとよりなるものを使用し、放熱基板の受熱面に発熱電子部品を取り付け、冷却ファンにより放熱フィンに風を当てることによって、発熱電子部品から発せられる熱を放熱基板および放熱フィンを介して空気中に逃がす方法が広く採用されていた。
【0004】
しかしながら、近年の電子機器では、小型化、高性能化により発熱電子部品の発熱量が増加する傾向にあり、従来の方法では十分な放熱性能が得られなくなってきている。また、ノート型パーソナルコンピュータ、二次元ディスプレイ装置、プロジェクタなどにおいては、冷却ファンによる騒音も大きくなり、これらの機器に求められるようになってきている静粛性を満たすことができない。
【0005】
そこで、これらの問題を解決するために、本出願人は、先に、水を含んだ冷却液、たとえば不凍液を用いた液冷式放熱装置を提案した(特許文献1参照)。特許文献1記載の液冷式放熱装置は、互いに積層状にろう付された2枚のアルミニウム板からなりかつ冷却液通路を有する放熱ベースと、放熱ベース上に設けられた膨張タンクと、冷却液通路内で不凍液を循環させるポンプとを備えており、放熱ベースの片面に、冷却液通路内を流れる冷却液により冷却する発熱体を熱的に接触させる受熱部が設けられ、冷却液通路が、2枚のアルミニウム板のうち少なくともいずれか一方を外方に膨出させることにより形成され、膨張タンクが、上方に膨出しかつ下方に開口した膨出部を有するタンク本体と、タンク本体の下端に接合されかつ膨出部の下端開口を塞ぐとともに、放熱ベースの上面に接合された底板とを有しており、放熱ベースおよび底板に、冷却液通路とタンク本体内とを通じさせる連通穴が形成されたものである。
【0006】
ところで、不凍液はアルミニウムに対して非腐食性ではあるものの、水とアルミニウムとが反応して水素が発生することがある。水素発生量が微量のうちは、水素が膨張タンクのタンク本体内に溜められることにより、冷却液通路内の圧力上昇が防止される。しかしながら、膨張タンクによる冷却液通路内の圧力上昇防止効果には限界があり、水素発生量が増大すると冷却液通路内の圧力が許容圧力を超え、ポンプの故障を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−167224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、冷却液通路内の圧力上昇を防止しうる液冷式放熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)冷却液通路を有する放熱ベースを備えており、放熱ベースに、冷却液通路内を外部に通じさせる連通部が設けられ、連通部に水素透過許容部材が配置されている液冷式放熱装置であって、
放熱ベースが、互いに積層状に接合された2枚の金属板からなり、放熱ベースを構成する2枚の金属板間に冷却液通路が形成され、冷却液通路が、両金属板のうち少なくともいずれか一方の金属板を外方に膨出させることにより形成された通路形成部を備えており、通路形成部に、部分的に途切れた途切れ部分が設けられており、通路形成部における途切れ部分に臨む2つの端部が一方の金属板のみを膨出させることにより形成されるとともに、他方の金属板の外面が平坦面となされ、前記他方の金属板に、通路形成部における途切れ部分に臨む2つの端部をそれぞれ外部に通じさせる2つの連通穴が形成され、前記他方の金属板の外面に、2つの連通穴を通じさせる連通部材が締結具により固定され、連通部材が、外方に膨出しかつ前記一方の金属板側に開口した本体と、本体の開口周縁部に一体に形成された外向きフランジとよりなり、外向きフランジと前記他方の金属板の外面との間の部分が前記連通部となされ、連通部にシート状またはOリング状の水素透過許容部材が配置されている液冷式放熱装置。
【0011】
2)水素透過許容部材における水蒸気の透過係数をA、水素の透過係数をBとした場合、B≧50Aを満足する上記1)記載の液冷式放熱装置。
【0012】
3)水素透過許容部材が、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムおよびシリコンゴムからなる群から選ばれた1つの材料で形成されている上記1)記載の液冷式放熱装置。
【0013】
4)水素透過許容部材における水素透過方向の寸法、および水素透過許容部材における水素透過方向と直交する方向の断面積は、水素透過スピードが、冷却液通路の内表面積1mmあたり0.1cc/h以上となるように設定されている上記1)記載の液冷式放熱装置。
【0014】
5)金属板がアルミニウム板からなり、互いに積層状にろう付されている上記1)記載の液冷式放熱装置。
【0015】
6)2枚のアルミニウム板が、少なくともいずれか一方のアルミニウム板における他方のアルミニウム板側を向いた面に設けられていたろう材層を利用してろう付されている上記5)記載の液冷式放熱装置。
【0016】
7)連通部材の本体の頂壁に貫通穴が形成されるとともに、当該貫通穴も前記連通部となされ、貫通穴を塞ぐように、水素透過許容部材が貫通穴内に嵌め止められている上記1)記載の液冷式放熱装置。
【0017】
8)放熱ベースに、冷却液通路内で冷却液を循環させるポンプが取り付けられている上記1)記載の液冷式放熱装置。
【0018】
9)放熱ベースの片面に、発熱体を熱的に接触させる受熱部が設けられている上記1)記載の液冷式放熱装置。
【0019】
10)ハウジングと、ハウジング内に配置された発熱電子部品とを備えており、上記9)記載の液冷式放熱装置がハウジング内に配置され、発熱電子部品が、放熱ベースの受熱部に熱的に接触させられている電子機器。
【0020】
11)キーボードを有する本体部と、本体部に開閉自在に設けられたディスプレイ装置とよりなり、本体部のハウジング内に上記9)記載の液冷式放熱装置が配置され、本体部のハウジング内に配置されたCPUが放熱ベースの受熱部に熱的に接触させられているノート型パーソナルコンピュータ。
【発明の効果】
【0021】
上記1)の液冷式放熱装置によれば、放熱ベースを形成する金属板が、たとえばアルミニウムからなる場合、冷却液通路内に封入された冷却液に含まれる水分との反応により水素ガスが発生したとしても、この水素ガスは水素透過許容部材を透過して冷却液通路外へ逃がされるので、冷却液通路内の圧力上昇が防止され、その結果冷却液を循環させるポンプが故障することを防止することができる。また、膨張タンクが設けられている場合には、膨張タンクのサイズを、冷却液の熱膨張を吸収するために必要最小限のサイズとすることができる。
【0022】
また、放熱ベースが金属板で形成されているので、放熱ベースからの放熱効率が優れたものになる。
【0023】
さらに、冷却液通路が、両金属板のうち少なくともいずれか一方の金属板を外方に膨出させることにより形成された通路形成部を備えており、通路形成部に、部分的に途切れた途切れ部分が設けられており、通路形成部における途切れ部分に臨む2つの端部が一方の金属板のみを膨出させることにより形成されるとともに、他方の金属板の外面が平坦面となされ、前記他方の金属板に、通路形成部における途切れ部分に臨む2つの端部をそれぞれ外部に通じさせる2つの連通穴が形成され、前記他方の金属板の外面に、2つの連通穴を通じさせる連通部材が締結具により固定され、連通部材が、外方に膨出しかつ前記一方の金属板側に開口した本体と、本体の開口周縁部に一体に形成された外向きフランジとよりなり、外向きフランジと前記他方の金属板の外面との間の部分が前記連通部となされ、連通部にシート状またはOリング状の水素透過許容部材が配置されているので、冷却液通路内を外部に通じさせる連通部を設けること、および連通部に水素透過許容部材を配置することを比較的簡単に行うことができる。また、連通部材の本体が膨張タンクの働きをする。
【0024】
上記2)および3)の液冷式放熱装置によれば、冷却液通路内で発生した水素を効率良く外部に逃がした上で、冷却液が加熱された際に発生する水蒸気の外部への漏れを防止することが可能になり、冷却液量の減少が防止される。
【0025】
上記4)の液冷式放熱装置によれば、冷却液通路内で発生した水素を効率良く外部に逃がすことができる。
【0026】
上記5)の液冷式放熱装置によれば、放熱ベースからの放熱効率が優れたものになる。
【0027】
上記6)の液冷式放熱装置によれば、放熱ベースを比較的簡単に製造することができる。
【0028】
上記7)の液冷式放熱装置によれば、連通部材の本体の頂壁に貫通穴が形成されるとともに、当該貫通穴も前記連通部となされ、貫通穴を塞ぐように、水素透過許容部材が貫通穴内に嵌め止められているので、液冷式放熱装置の通常の使用状態、すなわち連通部材が上方に突出した状態においては、貫通穴を塞ぐ水素透過許容部材が気層部に接することになり、当該水素透過許容部材を水素が透過しやすくなるとともに、水蒸気が透過しにくくなる。これとは逆に、液冷式放熱装置を回転させ、たとえば通常使用状態とは上下逆向きにした場合、外向きフランジと他方の金属板の外面との間の連通部に配置されたシート状またはOリング状の水素透過許容部材が気層部に接することになり、当該水素透過許容部材を水素が透過しやすくなるとともに、水蒸気が透過しにくくなる。
【0029】
上記8)の液冷式放熱装置のように、冷却液通路内で冷却液を循環させるポンプを備えていたとしても、上記1)〜7)のように構成されていると、冷却液通路内の圧力上昇が防止され、その結果ポンプが故障することを防止することができる。
【0030】
上記10)の電子機器によれば、発熱電子部品を効率良く冷却することができるとともに、静粛性が向上する。
【0031】
上記11)のノート型パーソナルコンピュータによれば、CPUを効率良く冷却することができるとともに、静粛性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明による液冷式放熱装置の第1の実施形態の全体構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の液冷式放熱装置の膨張タンクが設けられた部分の拡大垂直断面図である。
【図3】図1の液冷式放熱装置の連通部材が設けられた部分の拡大垂直断面図である。
【図4】第1の実施形態における膨張タンクのタンク本体の頂壁の貫通穴内に嵌め止められる水素透過許容部材の変形例を示す部分拡大垂直断面図である。
【図5】第1の実施形態における膨張タンクのタンク本体の頂壁の貫通穴内に嵌め止められる水素透過許容部材の他の変形例を示す部分拡大垂直断面図である。
【図6】第1の実施形態における連通部材の外向きフランジと放熱ベースとの間の連通部に配置される水素透過許容部材の変形例を示す部分拡大垂直断面図である。
【図7】この発明による液冷式放熱装置の第2の実施形態の一部分を示す図3相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
図1はこの発明による液冷式放熱装置の第1の実施形態の全体構成を示し、図2および図3はその要部の構成をを示す。
【0035】
図1において、液冷式放熱装置(1)は、互いに積層状に接合された上下2枚の高熱伝導性板、ここではアルミニウム製金属板(3)(4)からなる長方形板状の放熱ベース(2)を備えており、放熱ベース(2)の両金属板(3)(4)間に冷却液通路(5)が形成されている。
【0036】
放熱ベース(2)の冷却液通路(5)内には、不凍液などのアルミニウムに対して非腐食性を有するが水を含む冷却液が封入されており、冷却液通路(5)内の冷却液は、放熱ベース(2)の下面に取り付けられた循環ポンプ(6)により冷却液通路(5)内を循環させられるようになっている。放熱ベース(2)の上面には、冷却液通路(5)内と通じるように、膨張タンク(7)が設けられている。また、放熱ベース(2)の下面には、冷却液通路(5)の一部を含むように、受熱部(8)および放熱部(9)が設けられている。
【0037】
放熱ベース(2)を構成する両金属板(3)(4)のうちの少なくともいずれか一方の金属板は、他方の金属板を向いた面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、両金属板(3)(4)は、アルミニウムブレージングシートのろう材層を利用してろう付されている。なお、一方の金属板のみがアルミニウムブレージングシートからなる場合、他方の金属板はアルミニウムベア材からなる。
【0038】
放熱ベース(2)の冷却液通路(5)は、上下金属板(3)(4)のうち少なくともいずれか一方を外方に膨出させることにより形成された通路形成部(11)を備えている。通路形成部(11)は、放熱ベース(2)の周縁部にほぼ全周にわたって形成された第1部分(12)と、第1部分(12)における放熱ベース(2)の一方の長辺部に沿う部分に連なってその内方に所定の広がりをもって形成された所定数、ここでは2つの第2部分(13)とよりなり、第1部分(12)における放熱ベース(2)の1つの角部、および放熱ベース(2)の他方の長辺部に沿う部分に、それぞれ部分的に途切れた途切れ部分(14)(15)が設けられている。放熱ベース(2)の1つの角部の途切れ部分を第1途切れ部分(14)といい、放熱ベース(2)の他方の長辺部に沿う部分の途切れ部分を第2途切れ部分(15)というものとする。第1部分(12)は、上金属板(3)を上方に膨出させることにより形成された上方膨出部(16)と、下金属板(4)を下方に膨出させることにより形成された下方膨出部(17)(18)とを備えており、上方膨出部(16)と下金属板(4)、および下方膨出部(17)(18)と上金属板(3)とによって、通路形成部(11)の第1部分(12)が形成されている。下方膨出部(17)(18)は、第1部分(12)における放熱ベース(2)の一方の短辺部に沿う部分と、第1部分(12)における第2途切れ部分(15)に臨む2つの端部に形成されている。放熱ベース(2)の短辺部に沿う部分に形成された下方膨出部を第1下方膨出部(17)といい、第2途切れ部分(15)に臨む2つの端部に形成された下方膨出部を第2下方膨出部(18)というものとする。そして、放熱ベース(2)の下面における第1途切れ部分(14)を含む所定の広さ部分、および放熱ベース(2)の上面における第2途切れ部分(15)を含む所定の広さ部分が、それぞれ平坦面となっている。両下方膨出部(17)(18)と上金属板(3)とにより形成された部分を除いて、第1部分(12)は上方膨出部(16)と下金属板(4)とにより形成されている。各第2部分(13)は、上金属板(3)を上方に膨出させることにより形成された上方膨出部(19)と下金属板(4)とにより形成されており、上方膨出部(19)の頂壁に、それぞれ内方に突出しかつ先端部が下金属板(4)にろう付された多数の突起(21)が形成されている。
【0039】
上金属板(3)には、通路形成部(11)の第1部分(12)における第1下方膨出部(17)の長さ方向の中間部を放熱ベース(2)の上面に開口させる連通穴(22)と、通路形成部(11)の第1部分(12)における第2下方膨出部(18)の第2途切れ部分(15)側の端部を放熱ベース(2)の上面に開口させる2つの連通穴(23)とが形成されている。さらに、上金属板(3)には、通路形成部(11)を避けるように複数の貫通穴(24)が形成されている。下金属板(4)には、通路形成部(11)の第1部分(12)における上方膨出部(16)の第1途切れ部分(14)に臨む端部を放熱ベース(2)の下面に開口させる貫通穴(25)が形成されている。
【0040】
循環ポンプ(6)は、放熱ベース(2)における第1途切れ部分(14)が形成された角部の下面に、ねじ(20)により取り付けられており、循環ポンプ(6)の吐出口(6a)が下金属板(4)の一方の貫通穴(25)に接続され、吸込口(6b)が下金属板(4)の他方の貫通穴(25)に接続されている。なお、循環ポンプ(6)の上面と放熱ベース(2)の下面との間は、適当なシール手段により密封されている。
【0041】
膨張タンク(7)は、上方に膨出しかつ下方に開口した膨出部(27)を有するアルミニウム製タンク本体(26)と、タンク本体(26)の下端開口を閉鎖するアルミニウム製底板(28)とからなる。
【0042】
図2に示すように、タンク本体(26)は、下面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートよりなる円形板の周縁部を除いた部分を上方に膨出させることにより形成されたものであり、膨出部(27)は円錐台状でその周壁は上方に向かって径方向内方に傾斜している。また、膨出部(27)の頂壁の中央部に、冷却液通路(5)を外部に通じさせる連通部としての貫通穴(29)が形成されている。貫通穴(29)内にはピン状の水素透過許容部材(31)が嵌め止められている。水素透過許容部材(31)により貫通穴(29)が密封されている。水素透過許容部材(31)の外端部は頂壁の外方に、内端部は頂壁内方にそれぞれ突出している。ここで、水素透過許容部材(31)は、水蒸気の透過係数をA、水素の透過係数をBとした場合、B≧50Aを満足する材料で形成されていることが好ましく、B≧100Aを満足する材料で形成されていることが望ましい。具体的に言えば、水素透過許容部材(31)は、たとえばエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムおよびシリコンゴムからなる群から選ばれた1つの材料で形成されていることが好ましい。水素透過許容部材(31)の数は適宜変更可能である。タンク本体(26)における膨出部(27)の周囲の外向きフランジ(26a)は、水素透過許容部材(31)が連通穴(22)の真上に位置するように、上記ろう材層を利用して底板(28)にろう付されている。タンク本体(26)は円形板から形成されるものに限定されず、また膨出部(27)も円錐台状に限定されない。
【0043】
底板(28)は、下面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートよりなる前後方向に長い方形状であり、上記ろう材層を利用して放熱ベース(2)の上金属板(3)にろう付されている。底板(28)における上金属板(3)の連通穴(22)と対応する部分には、連通穴(22)よりも大きい円形連通穴(32)が、連通穴(22)と通じるようにこれと同心状に形成されている。連通穴(32)は円形に限定されるものではない。底板(28)における連通穴(32)の周縁部には、上方に向かって径方向内方に傾斜した邪魔板(33)が全周にわたって一体に形成されており、邪魔板(33)の先端に囲まれて開口(34)が形成されている。膨張タンク(7)は、冷却液中に気泡状態で含まれる空気を取り入れて保持しうるとともに、冷却液が加熱されて膨張した際に冷却液を流入させて内圧上昇による冷却液通路(5)の破損を防止しうる構造となっている。また、膨張タンク(7)部内に余剰の冷却液を入れておくことにより、冷却液が減少した際の冷却効率の低下を防止することが可能になる。
【0044】
図3に示すように、放熱ベース(2)の上面には、通路形成部(11)における第1部分(12)の第2下方膨出部(18)の端部を放熱ベース(2)の上面に開口させる2つの連通穴(23)どうしを通じさせる連通部材(35)が取り付けられている。連通部材(35)は、上方に膨出しかつ下方に開口した本体(36)と、本体(36)の開口周縁部に一体に形成された外向きフランジ(37)とよりなり、外向きフランジ(37)がねじ(38)(締結具)により放熱ベース(2)に固定されている。外向きフランジ(37)と上金属板(3)の外面との間の部分が、冷却液通路(5)を外部に通じさせる連通部(39)となされ、この連通部(39)にシート状の水素透過許容部材(41)が配置されている。水素透過許容部材(41)により連通部(39)が密封されている。この水素透過許容部材(41)は、上述した水素透過許容部材(31)と同様な材料で形成される。
【0045】
これらの水素透過許容部材(31)(41)における水素透過方向(水素透過許容部材(31)については上下方向、水素透過許容部材(41)については幅方向)の寸法、および水素透過許容部材(31)(41)における水素透過方向と直交する方向(水素透過許容部材(31)については左右方向、水素透過許容部材(41)については上下方向)の断面積は、両水素透過許容部材(31)(41)を合わせた水素透過スピードが、冷却液通路(5)の内表面積1mmあたり0.1cc/h以上となるように設定されている。両水素透過許容部材(31)(41)を合わせた水素透過スピードを、冷却液通路(5)の内表面積1mmあたり0.1cc/h以上としたのは、実験の結果、この場合に冷却液通路(5)内で発生した水素を効率良く外部に逃がすことができることが判明したからである。なお、水素透過許容部材(41)だけで、水素透過スピードが、冷却液通路(5)の内表面積1mmあたり0.1cc/h以上となるのであれば、他方の水素透過許容部材(31)は必ずしも必要としない。水素透過許容部材(31)が不要の場合、当然のことながら膨張タンク(7)のタンク本体(26)の貫通穴(29)は不要になる。
【0046】
受熱部(8)は、下金属板(4)の下面における上金属板(3)の通路形成部(11)の一方の第2部分(13)の中央部と対応する位置に設けられている。また、下金属板(4)の下面には、上金属板(3)の通路形成部(11)における第1部分(12)の一部分を含むように、アルミニウム製のコルゲート状放熱フィン(42)がろう付されており、これにより放熱ベース(2)の下面に、冷却液通路(5)の一部を含むように放熱部(9)が設けられている。
【0047】
上述した液冷式放熱装置(1)は、たとえばキーボードを有するパソコン本体部と、パソコン本体部に開閉自在に設けられたディスプレイ装置とを備えたノート型パーソナルコンピュータにおいて、パソコン本体部のハウジング内に配置され、CPU(C)(発熱電子部品)が液冷式放熱装置(1)の冷却液通路(5)の受熱部(8)において放熱ベース(2)の下面に熱的に接触させられる。ノート型パーソナルコンピュータの起動時には、循環ポンプ(6)により冷却液が冷却液通路(5)内を循環させられる。CPU(C)から発せられた熱は、下金属板(4)を経て冷却液に伝わる。そして、冷却液が、冷却液通路(5)を循環して受熱部(8)に戻るまでの間に、冷却液の有する熱が上下金属板(3)(4)を経て外部に放熱され、特に放熱部(9)において下金属板(4)および放熱フィン(42)を経て放熱され、その結果冷却液が冷却される。このような動作を繰り返してCPU(C)から発せられる熱が放熱される。
【0048】
なお、上述した液冷式放熱装置(1)は、ハウジングおよびハウジング内に配置された発熱電子部品を備えているノート型パーソナルコンピュータ以外の電子機器において、ハウジング内に配置され、発熱電子部品が、放熱ベース(2)の受熱部(8)に熱的に接触させられることもある。
【0049】
図4および図5は、膨張タンク(7)のタンク本体(26)の頂壁の貫通穴(29)内に嵌め止められる水素透過許容部材の変形例を示す。
【0050】
図4に示す水素透過許容部材(50)はピン状であって、その内端部がタンク本体(26)の膨出部(27)内に突出している。そして、水素透過許容部材(50)の外端部に膨出部(27)の頂壁外面における貫通穴(29)の周縁部に係合する係合部(51)が一体に形成されている。水素透過許容部材(50)により貫通穴(29)が密封されている。
【0051】
図5に示す水素透過許容部材(55)はピン状であって、その内端部がタンク本体(26)の膨出部(27)内に突出している。そして、水素透過許容部材(55)の外端部に膨出部(27)の頂壁外面における貫通穴(29)の周縁部に係合する係合部(51)が一体に形成されるとともに、水素透過許容部材(55)の膨出部(27)内への突出部に、膨出部(27)の頂壁内面における貫通穴(29)の周縁部に係合する係合部(56)が一体に形成されている。水素透過許容部材(50)により貫通穴(29)が密封されている。
【0052】
図6は、連通部材(35)の外向きフランジ(37)と放熱ベース(2)との間の連通部(39)に配置される水素透過許容部材の変形例を示す。
【0053】
図6に示す水素透過許容部材(60)はOリング状であって、連通部材(35)の外向きフランジ(37)の下面に全周にわたって形成された環状溝(61)内に嵌め入れられている。水素透過許容部材(60)により連通部(39)が密封されている。
【0054】
図4〜図6に示す水素透過許容部材(50)(55)(60)も上述した水素透過許容部材(31)と同様な材料で形成される。これらの水素透過許容部材(50)(55)(60)における水素透過方向(水素透過許容部材(50)(55)については上下方向、水素透過許容部材(60)については径方向)の寸法、および水素透過許容部材(50)(55)(60)における水素透過方向と直交する方向(水素透過許容部材(50)(55)については左右方向、水素透過許容部材(60)については周方向)の断面積は、上述した水素透過許容部材(31)(41)の場合と同様に設定される。
【0055】
図7はこの発明による液冷式放熱装置の第2の実施形態を示す。
【0056】
図7において、連通部材(35)の本体(36)の頂壁に、冷却液通路(5)を外部に通じさせる連通部としての貫通穴(80)が形成されている。貫通穴(80)内には、膨張タンク(7)のタンク本体(26)の貫通穴(29)に嵌め止められているのと同一のピン状水素透過許容部材(31A)が嵌め止められている。水素透過許容部材(31A)の数は適宜変更可能である。なお、水素透過許容部材(31A)に代えて、図4および図5に示す水素透過許容部材(50)(55)が、貫通穴(80)内に嵌め止められていてもよい。
【0057】
第1の実施形態の液冷式放熱装置における水素透過許容部材(31)(41)とともに、連通部材(35)の本体(36)の貫通穴(80)に水素透過許容部材(31A)が設けられる場合、当該水素透過許容部材(31A)における水素透過方向の寸法(上下方向の長さ)、および水素透過許容部材(31A)における水素透過方向と直交する方向(左右方向)の断面積は、3つの水素透過許容部材(31)(41)(31A)を合わせた水素透過スピードが、冷却液通路(5)の内表面積1mmあたり0.1cc/h以上となるように設定されている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明の液冷式放熱装置は、たとえばノート型パーソナルコンピュータ、二次元ディスプレイ装置、プロジェクタなどの電子機器の発熱電子部品などの発熱体から発せられる熱を放熱するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
(1):液冷式放熱装置
(2):放熱ベース
(3):上金属板
(4):下金属板
(5):冷却液通路
(8):受熱部
(11):通路形成部
(15):第2途切れ部分
(16):上方膨出部
(18):第2下方膨出部
(23):連通穴
(31A):水素透過許容部材
(35):連通部材
(36):本体
(37):外向きフランジ
(38):ねじ(締結具)
(39):連通部
(41):水素透過許容部材
(60):水素透過許容部材
(80):貫通穴(連通部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液通路を有する放熱ベースを備えており、放熱ベースに、冷却液通路内を外部に通じさせる連通部が設けられ、連通部に水素透過許容部材が配置されている液冷式放熱装置であって、
放熱ベースが、互いに積層状に接合された2枚の金属板からなり、放熱ベースを構成する2枚の金属板間に冷却液通路が形成され、冷却液通路が、両金属板のうち少なくともいずれか一方の金属板を外方に膨出させることにより形成された通路形成部を備えており、通路形成部に、部分的に途切れた途切れ部分が設けられており、通路形成部における途切れ部分に臨む2つの端部が一方の金属板のみを膨出させることにより形成されるとともに、他方の金属板の外面が平坦面となされ、前記他方の金属板に、通路形成部における途切れ部分に臨む2つの端部をそれぞれ外部に通じさせる2つの連通穴が形成され、前記他方の金属板の外面に、2つの連通穴を通じさせる連通部材が締結具により固定され、連通部材が、外方に膨出しかつ前記一方の金属板側に開口した本体と、本体の開口周縁部に一体に形成された外向きフランジとよりなり、外向きフランジと前記他方の金属板の外面との間の部分が前記連通部となされ、連通部にシート状またはOリング状の水素透過許容部材が配置されている液冷式放熱装置。
【請求項2】
水素透過許容部材における水蒸気の透過係数をA、水素の透過係数をBとした場合、B≧50Aを満足する請求項1記載の液冷式放熱装置。
【請求項3】
水素透過許容部材が、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムおよびシリコンゴムからなる群から選ばれた1つの材料で形成されている請求項1記載の液冷式放熱装置。
【請求項4】
水素透過許容部材における水素透過方向の寸法、および水素透過許容部材における水素透過方向と直交する方向の断面積は、水素透過スピードが、冷却液通路の内表面積1mmあたり0.1cc/h以上となるように設定されている請求項1記載の液冷式放熱装置。
【請求項5】
金属板がアルミニウム板からなり、互いに積層状にろう付されている請求項1記載の液冷式放熱装置。
【請求項6】
2枚のアルミニウム板が、少なくともいずれか一方のアルミニウム板における他方のアルミニウム板側を向いた面に設けられていたろう材層を利用してろう付されている請求項5記載の液冷式放熱装置。
【請求項7】
連通部材の本体の頂壁に貫通穴が形成されるとともに、当該貫通穴も前記連通部となされ、貫通穴を塞ぐように、水素透過許容部材が貫通穴内に嵌め止められている請求項1記載の液冷式放熱装置。
【請求項8】
放熱ベースに、冷却液通路内で冷却液を循環させるポンプが取り付けられている請求項1記載の液冷式放熱装置。
【請求項9】
放熱ベースの片面に、発熱体を熱的に接触させる受熱部が設けられている請求項1記載の液冷式放熱装置。
【請求項10】
ハウジングと、ハウジング内に配置された発熱電子部品とを備えており、請求項9記載の液冷式放熱装置がハウジング内に配置され、発熱電子部品が、放熱ベースの受熱部に熱的に接触させられている電子機器。
【請求項11】
キーボードを有する本体部と、本体部に開閉自在に設けられたディスプレイ装置とよりなり、本体部のハウジング内に請求項9記載の液冷式放熱装置が配置され、本体部のハウジング内に配置されたCPUが放熱ベースの受熱部に熱的に接触させられているノート型パーソナルコンピュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−15547(P2012−15547A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219991(P2011−219991)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願2007−555930(P2007−555930)の分割
【原出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】