説明

液化ガス充填装置への無菌液化ガス供給方法及びその装置

【課題】長期間に亘って液化ガス充填装置へ無菌液化ガスを供給する方法及びそのための装置を提供する。
【解決手段】搬送中の容器12内に所定量の無菌化された液化ガスを吐出する液化ガス吐出用ノズル16と、該吐出用ノズル16を下方部に備えた液化ガス貯留タンク22と、該貯留タンク22の上部に取り付けられた液化ガス供給管路及び気化ガス排出管路と、を備えた液化ガス充填装置に対して、元タンクから供給された液化ガスを、該液化ガス供給管路に配備した除菌フィルターを通して無菌化し、前記貯留タンク内へ供給する方法において、前記元タンク22から供給された前記液化ガスを、先ず、スクリーンタイプの合成樹脂製除菌フィルター24を通過させることによって濾過除菌した後、更に、焼結金属製除菌フィルター26を通過させることによって濾過除菌させることを特徴とする液化ガス充填装置への無菌液化ガス供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無菌液化ガス供給方法及びその装置、特にその除菌フィルター設置機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
液状食品を容器に充填し密封する前に液化ガスを注入し、該液化ガスが気化して体積を膨張させ容器内の空気を追い出すと共に、容器内圧を大気圧よりも高圧にして容器壁を内側から押圧して外圧による凹み等を防止する、いわゆる液化ガス充填装置が多くの食品会社で使用されている。この液化ガス充填装置は、液状食品を充填済みの薄肉(薄壁)容器に液体窒素のような低温液化ガスを充填するための装置として使用されている。
【0003】
一方、液状食品を容器に無菌充填する場合には、衛生面及び安全面の要請から、液状食品自体はもとより、容器の内外面、容器に液状食品を充填する装置、容器を密封する装置、充填・密封領域、これらの領域を洗浄する水等から、芽胞菌、病原菌、細菌、黴、酵母の微生物等を除去(即ち除菌)しなければならない。従って、液状食品等の薄肉容器詰を無菌充填方法によって製造するために、薄肉容器に低温液化ガスを充填する場合には、低温液化ガス充填装置及び低温液化ガスからも、芽胞菌、病原菌、細菌、黴、酵母の微生物等を除去(即ち除菌)しなければならない。
【0004】
このなかで、低温液化ガスと低温液化ガス充填装置以外のものは、数十年前から商業生産されている液状食品の無菌充填方法と同様な手段によって、芽胞菌や細菌等を滅菌又は除去すれば良いが、今まで商業利用が殆どなされていなかった低温液化ガス充填装置内の滅菌又は除菌と、低温液化ガス自体の除菌については、具体的にどのようにすれば良いのか未知な面が多い。
低温液化ガス充填方法と無菌充填方法とを併用して容器詰飲料等を製造するという考え方自体は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等で提案されている。しかしながら、これらの特許文献には、低温液化ガスの除菌方法について概念的には説明されているが、実際の容器詰飲料製造ラインを稼働させるのに必要な条件が詳しく説明してはいない。
【0005】
例えば、特許文献1には、液体窒素を無菌化フィルターを通して無菌化し、液体窒素充填装置に送り込むことが記載されているだけである。また、特許文献2には、0.2μmメッシュのセラミックス製の除菌フィルターによって低温液化ガス(液体窒素)を濾過・除菌してから液化ガス流下装置の装置本体に送給すること、除菌フィルター、液化ガス流下装置の装置本体、液化ガス流下用ノズル及び液体窒素供給管等に、125℃の水蒸気を所定時間(例えば30分間)通すことにより、液化ガス流下用ノズル、液化ガス流下装置本体、除菌フィルター及び液化ガス供給管等を加熱殺菌処理し、更に、それらの部分に窒素ガスを通して冷却乾燥させることが記載されている。
しかしながら、実際の容器詰飲料等の無菌充填ラインでは、数日又は一週間毎に、無菌充填装置を殺菌処理することが行われているが、その様な間隔で低温液化ガス流下装置の装置本体や除菌フィルター等が加熱殺菌されても、除菌フィルターの除菌性能が保証されるのか否かについての言及はなされていない。
【0006】
また、特許文献3には、低温液化ガスからの微生物の除菌処理を、濾過精度0.05〜0.5μm、望ましくは0.1〜0.2μmのフィルターを使用して行い、除菌した液化ガスを貯留タンクに送給すること、除菌フィルターとしては、極低温耐性、耐熱性の観点からフッ素樹脂製のものが好適であること、液化ガスの除菌処理工程を行う前に、液化ガス貯留タンク内に140℃〜220℃の高温ガスを10〜90分間流入して前記除菌フィルター及び装置内部を殺菌処理すること等が記載されている。
しかしながら、特許文献3にも、容器詰飲料の無菌充填方法の製造ラインで通常行われている数日間隔毎又は一週間毎の充填・密封装置等の殺菌装置と同様な間隔で液化ガス充填装置本体や除菌フィルター等を加熱殺菌処理した場合の除菌フィルターの除菌性能が保証できるのか否かについての記載は見当たらない。
【0007】
一方、特許文献4には、液体窒素等の低温液体中の粒子又は微生物等を除去するために該低温液体をフッ素樹脂製のフィルターを通して濾過する場合には、シール構造を工夫しないと、激しい温度変化の間に漏れが生じ、シーリング材に依存してフィルターの寿命が制限されることが判明したこと、そのために、弾性部材による補助シーリングによって寿命を長く維持できる低温液体用フィルターモジュールとそのフィルターモジュールの完全性試験方法を開発したこと、更に、フッ素樹脂製フィルターは使用温度範囲がー200℃〜200℃と広いので、液体窒素温度でも使用できるが、温度サイクルによりクリーピング現象が生じ易くなり寿命が短くなること、このフィルターモジュールではセラミックスフィルターを使用し、シール材としてフッ素樹脂を使用すること等が記載されている。
【特許文献1】特開昭57−204833号公報
【特許文献2】特開平11−43111号公報
【特許文献3】特開2000−185710号公報
【特許文献4】特開2005−185875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した様に、液状食品の容器詰を無菌充填方法で製造する際に、低温液化ガス充填方法を使用する場合には、比較的短い間隔(2日〜1週間)で製造する液状食品又は銘柄が変更されるため、液状食品充填装置及び密封装置の洗浄・殺菌処理に合わせて、比較的短い間隔(2日〜1週間)で低温液化ガス充填装置の内部や液化ガス供給管路内及び除菌フィルター等を加熱殺菌処理する必要が生じる。液化ガスの除菌用フィルターは、単に200℃程度の耐熱性や−196℃程度の耐低温性を備えているだけでは不十分であり、除菌フィルターに対して、低温液化ガスの沸点温度に冷却した直後に、除菌フィルターの殺菌温度まで加熱するという急激な温度変化を繰り返しても、長期間その除菌性能を維持し得るフィルターでなくては実際の製造ラインでは使用できない。
本発明が解決すべき課題は、多くの顧客に低温液化ガスを濾過除菌する除菌フィルターの性能を認めて貰うことができ、しかも液化ガスを濾過除菌して無菌化された液化ガスを低温液化ガス充填装置に長期間供給することができること、即ち、長期間に亘って液化ガス充填装置へ無菌液化ガスを供給する方法及びそのための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明にかかる無菌液化ガス供給方法は、
搬送中の容器内に所定量の無菌化された液化ガスを吐出する液化ガス吐出用ノズルと、
該吐出用ノズルを下方部分に連結した液化ガス貯留タンクと、
該貯留タンクの上部に取り付けられた液化ガス供給管路及び気化ガス排出管路と、
を備えた液化ガス充填装置に対して、元タンクから供給された液化ガスを、該液化ガス供給管路に配備した除菌フィルターを通して無菌化し、前記貯留タンク内へ供給する方法において、
前記元タンクから供給された前記液化ガスを、先ず、スクリーンタイプの合成樹脂製除菌フィルターを通過させることによって濾過除菌した後、更に、焼結金属製除菌フィルターを通過させることによって濾過除菌することを特徴とする。
【0010】
前記方法において、合成樹脂製除菌フィルターは、定期的に完全性試験装置に装着して性能試験を行い、破損の有無を検査済みの除菌フィルターであることが好適である。
また、前記方法において、焼結金属製除菌フィルターは、定期的に加熱殺菌処理を受けていることが好適である。
【0011】
また、前記方法において、前記液化ガス充填装置は、さらに、
前記合成樹脂製除菌フィルターと前記焼結金属製除菌フィルターとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体導入管路と、前記焼結金属製除菌フィルターと前記液ガス゛貯留タンクとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体排出用管路とを備えるか、或いは、前記合成樹脂製除菌フィルターと前記焼結金属製除菌フィルターとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体排出用管路と、前記焼結金属除菌フィルターと前記液化ガス貯留タンクとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体導入管路とを備え、液化ガス貯留タンクへ液化ガスを供給する時には、前記排気用管路及び加熱気体導入管路を閉止し、且つ合成樹脂製除菌フィルター−焼結金属製除菌フィルター−液化ガス貯留タンクを導通させ、
焼結金属製除菌フィルターの除菌時には、前記廃棄用管路及び加熱気体導入管路を開き加熱気体導入管路−焼結金属製除菌フィルター−排気管路を導通させ、且つ加熱気体導入管路−液化ガス貯留タンク及び排気管路−合成樹脂製除菌フィルターの導通路を閉止することが好適である。
【0012】
また、本発明にかかる無菌液化ガス供給装置は、
搬送中の容器内に所定量の無菌化された液化ガスを吐出する液化ガス吐出用ノズルと、
該吐出用ノズルを下方部分に連結した液化ガス貯留タンクと、
該貯留タンクの上部に取り付けられた液化ガス供給管路及び気化ガス排出管路とを備えた液化ガス充填装置と、
前記液化ガス供給管路に配備され、液化ガスの元タンクから送られてくる液化ガスから微生物や微粒子を濾過除菌できる液化ガス除菌フィルターと、
前記液化ガス除菌フィルターと、前記液化ガス供給管路内、前記貯留タンク内及び前記吐出用ノズル内へ高温ガスを供給をしてこれらを加熱殺菌するためのガス供給管路と
を備えた液化ガス充填装置へ無菌液化ガスを供給する装置において、
前記液化ガス供給管路に配備された液化ガス除菌フィルターが、焼結金属製除菌フィルターから構成されており、しかも該焼結金属製の除菌フィルターの前記元タンク側には、スクリーンタイプの合成樹脂製除菌フィルターが更に配備されていることを特徴とする。
【0013】
本発明者等は、低温液化ガスを除菌するのに適したフィルターを選定すべく、数多くの種類のフィルターを試験した。即ち、酵母、黴、芽胞菌、細菌等の微生物や埃等を含む微粒子を完全に濾過して除去する濾過性能を有し、更に、−196℃と200℃の間の急激な温度変化を繰り返して行っても酵母や芽胞菌等の微生物及び埃等の微粒子の濾過性能が低下しないフィルターを見出す試験を繰り返した結果、最も良いフィルターは、焼結金属製のフィルター(耐食性を考慮すると、ステンレススチール製のフィルターが最も好ましい)であることを見出した。
即ち、フィルターを、乾熱により(電気ヒーターによって加熱した空気を吹き付けることにより)150℃まで加熱した後、高温になったフィルターに液体窒素を接触させることによりフィルターを急冷する操作を繰り返す耐久性テストとして、焼結金属製フィルターと、セラミックス製フィルターと、フッ素樹脂製フィルターを使用した比較実験を行った。尚、実験に使用した焼結金属製のフィルターは、フィルターとカートリッジ及びハウジングが全てステンレススチール(SUS316L)製であり、また液体窒素を供給するステンレススチール製配管とは溶接接合した。また、セラミックス製フィルターは、ハウジングとしてはステンレススチール(SUS316L)を使用した。更に、フッ素樹脂製フィルターは、カートリッジ及びハウジングもフッ素樹脂を使用した。
【0014】
実験結果は、オールステンレス製の焼結金属製フィルターは、140回の繰り返し耐久性テストを実施した後に、内外面共に破損は確認されなかったが、セラミックス製フィルターでは、53回目に外面シール部(フッ素樹脂(PTFE)製のシール材)にひび割れによる破損が確認された。また、オールフッ素樹脂製のフィルターでは、数回の繰り返しでステンレス製配管とフッ素樹脂製の継ぎ手部の間から液体窒素の漏洩が発生した。
この実験結果から、セラミックス製フィルターは、熱伸縮に対応できず、ステンレススチール製ハウジングとセラミックス製フィルターとのシールが異種材質のため構造的に密封性を完璧にすることが困難であり、使用中での漏洩が懸念される。また、オール樹脂製(フッ素樹脂製)のフィルターは、配管との継ぎ手手段を改良する必要がある。オールステンレス製のフィルターは耐久性等に問題は全くない。
尚、焼結金属製フィルターとは、金属の粉末を熱及び圧力を加えて粉末同士を接着させると共に所定形状に成形した多孔体であり、その孔径は使用した粉末の粒子の大きさにより制御可能であって、孔径としては数mmの大きさから0.001μmの大きさまで製造可能とされている。また、セラミックス製フィルターやフッ素樹脂製もセラミックス又はフッ素樹脂の粉末に熱と圧力を加えて粉末同士を接着させると共に所定形状に成形する方法で製造した多孔体であり、やはり粉末の粒子の大きさを選択することにより、燒結金属製フィルターと同様に、孔径の大きな物から非常に小さな物まで製造することができる。
【0015】
このように焼結金属製フィルターは、液化ガス供給を行う際のフィルターとしては極めて優れた特性を有するが、その性能保証が困難であるという欠点を有する。
すなわち、フィルターの性能評価試験として、後述する差圧管理方法や完全性試験が知られているが、流体が液体窒素の様な低温液化ガスである場合には、圧力変動が大きく差圧管理は困難である。一方、一般的に良く使用されている、バブルポイントテストや拡散流量テストの様に、水を使用する完全性試験方法は、樹脂製スクリーンフィルターの性能評価には何ら問題がないが、焼結金属製フィルターの場合には、試験に使用する水がフィルター内に残留した場合に、短時間で残留水を完全に除去するのが困難であり、もしフィルター内に水が残留していた場合には、低温液化ガスを送り込んだ瞬間に氷結してしまう(フィルターが目詰まりしてしまう)という問題がある。
【0016】
また、焼結金属製フィルターは、基本構造として微粒子を内部で捕捉するタイプのディプスフィルターであり、微粒子を表面で捕捉するタイプのメンブレンフィルターとは濾過面の構造が異なることからも、通常行われている様な完全性試験は不可能である。
即ち、高温と極低温の繰り返しによってもダメージを受けないフィルターである、焼結金属製のフィルターは、最も一般的なフィルターの管理方法である、差圧管理方法や完全性試験方法が実施できないため、顧客にフィルターの性能を保証する(または完全性の保証をする)という観点から問題がある
【0017】
本発明者等は、焼結金属製フィルターの破損の有無を検査する方法として、幾つかの手段を試みた結果、低温液化ガス供給管路内に微粒子が混入された流体を流し、焼結金属製のフィルターによってその流体を濾過した後、濾過された流体を光散乱粒子測定方法(OPC測定方法)により測定して微粒子を検知しない場合に該フィルターの除菌性能が維持されていると判定する光散乱粒子測定方法による除菌性能試験方法を見出したが、この測定方法は、除菌フィルターの性能試験方法として未だ一般的ではないため、顧客になかなか認めて貰えないとい問題があった。
そこで、本発明においては、完全性試験を容易に行い得る合成樹脂製スクリーンフィルターを前段に設け、性能保証を容易にし、加熱殺菌が可能な焼結金属製フィルターを後段に設け、この焼結金属製フィルターのみを加熱殺菌処理することで耐久性を得たのである。
【発明の効果】
【0018】
本発明装置は、2種類の液化ガス除菌用フィルターを使用しているので、液化ガスの除菌性能が高く、また、液化ガス充填装置に近い側に多数回の加熱殺菌処理を繰り返しても除菌性能が劣化しない焼結金属製の除菌フィルターが配置されているので、この除菌フィルターは液化ガス貯留タンク等と同時に殺菌処理することが出来、装置の加熱殺菌処理が容易且つ簡単になる。また、焼結金属製の除菌フィルターよりも液化ガスの元タンク側には、完全性試験が実施できる合成樹脂製の除菌フィルターを使用しているので、無菌充填方法を実施して無菌充填製品を製造している顧客に対して、完全性試験の結果を示すことにより、使用した液化ガスの無菌性を保証することができる。
【0019】
前記合成樹脂製の除菌フィルターは、定期的に完全性試験装置に装着して性能試験を行い、破損の無いことを検査済みの除菌フィルターとすることができる。
即ち、完全性試験を定期的に実施することにより、顧客に対して何時でも使用した液化ガスの無菌性を保証することができる。
前記焼結金属製の除菌フィルターは、定期的に加熱殺菌処理を受けているものとすることができる。
即ち、焼結金属製の除菌フィルターを無菌充填製品を製造する所定の位置から取り外すことなく、定期的に加熱殺菌処理ができるので、短時間で無菌充填製品の製造に取り掛かることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明が適用された低温液化ガス充填装置の低温液化ガス流路の概要を示している。
同図において、無菌領域10内で容器12が搬送されている。そして、同じく無菌領域10に設置されたベースプレート14には、液化ガス吐出用ノズル16が設置されている。該吐出用ノズル16の周囲には、ノズルカバー18が設けられ、該ノズルカバー18の底壁部18aには吐出用ノズル16から吐出される液化ガスを通過させ得る大きさの開口部20が設けられている。
【0021】
そして、通常の液化ガス充填作業時には、ノズル16下部に順次搬送されてくる容器12に、ノズル16より開口部20を通して液化ガスが吐出され、容器12に充填される。
このノズル16より吐出される液化ガス、たとえば液体窒素は、ノズル16上方に配置された貯留タンク22に貯留されているが、貯留タンク22には図示を省略した元タンクより液化ガス供給管路76a,76b,76cを通過すると共に、樹脂製フィルター24、焼結金属製フィルター26等を介して液体窒素が供給されている。
これらのフィルター24,26により、元タンク中の液体窒素に混入されている虞のある異物、特に細菌,芽胞等の耐低温性の高い菌の除去を行っている。そして、これらのフィルター24,26にトラップされた細菌は定期的に除去、殺菌することが好ましい。
しかしながら、前述したように樹脂製フィルター24は、加熱殺菌/低温液化ガス導入という急激な温度変化により寿命が著しく低下する。
【0022】
そこで、本実施形態においては、元タンクから供給される液体窒素をまず樹脂製フィルター24により濾過し、さらに焼結金属製フィルター26により濾過した後に貯留タンク22に貯留している。
そして、殺菌する時には、焼結金属製フィルター26と貯留タンク22の間の液化ガス供給管路76cに設けた開閉弁28を閉じ、該開閉弁28の焼結金属製フィルター26側の液化ガス供給管路76cに接続された加熱気体導入管路30に設けた開閉弁32を開いて液化ガス供給管路76c内に加熱気体を導入する。
一方、樹脂製フィルター24と焼結金属製フィルター26との間の液化ガス供給管路76bに接続された加熱気体排出管路36に設けた開閉弁38を開いて加熱気体を排出する。
この結果、加熱気体導入管路30より導入された加熱気体は焼結金属製フィルター26を殺菌し、加熱気体排出管路36より排出され、樹脂製フィルター24には至らない。
【0023】
このように、貯留タンク22に導入される液体窒素に対し最終的な濾過を行うフィルターに焼結金属製フィルター26を採用し、加熱殺菌はこの焼結金属製フィルター26に対してのみ行い、その前段のフィルター24には、完全性試験の容易な樹脂製フィルターを採用することにより、除菌効率、長寿命化を両立させるとともに、性能保証をも可能とした。
尚、本発明に於いては、加熱気体導入管路30と加熱気体排出路36とを上記の説明の位置とは逆にしても良い(30を加熱気体排出路とし、36を加熱気体導入管路とする)。即ち、上記した加熱気体排出路(加熱気体導入管路)36の開閉弁38を開けて、加熱気体を液化ガス供給管路76bに導入し、加熱気体導入管路(加熱気体排出路)30の開閉弁32を開けることにより、焼結金属製フィルター26を通過させた後、加熱気体導入管路(加熱気体排出路)30を通過させて排出させるのである。
【0024】
図2に、本実施形態に用いられた低温液化ガス充填装置とその配管の連結状態を示す。なお、前記図1と対応する部分には同一符号を付している。
同図において、低温液化ガス充填装置50は、低温液化ガスを一旦貯留するためのステンレススチール製の貯留タンク22と、該貯留タンク22の底部側に設けた液化ガスを流下又は滴下若しくは噴霧するための液化ガス吐出用ノズル16と、該液化ガス吐出用ノズル16の外周と底部側を、それぞれ2〜3mmの間隔を隔てた状態で取り囲んでいるステンレススチール製のノズルカバー18を備える。ノズルカバー18は、底壁部18aと側壁部18bを備えており、底壁部18aの中央部には、液化ガス吐出用ノズル16から流下又は滴下する液化ガスが通過する部分よりも広い面積(好ましくは1〜4cm)の開口部20を有している。尚、貯留タンク22は断熱のために二重壁構造になっており、内壁と外壁との間隙部を真空状態にして断熱性を高めるために、末端が真空ポンプ(図示せず)に連結している管路54およびその開閉弁56を備えている。
【0025】
また、低温液化ガスの元タンク(図示せず)からは、液体窒素などの低温液化ガスが、断熱性を高めるための二重壁構造を有している(図示せず)ステンレススチール製の液化ガス供給管路58を介して送出されているが、液化ガス供給管路58内を通過する際にも多少気化するので、元タンクから液化ガス充填装置の本体部分である貯留タンク22との間に、気化ガスと液化ガスとを分離して気化ガスを外に排出するために液化ガスの分離器60を設けている。
【0026】
この分離器60は二重壁構造を有し、その壁間は真空になっていて、断熱効果の高い真空断熱層を構成し、また、分離器60内に貯留されている液化ガスの液面を一定の高さ範囲内に維持するために、分離器60のヘッドスペースの圧力と液化ガスの下部の圧力との差圧を検出する差圧・圧力指示調節計62と、その差圧・圧力計指示調節計62の指示により元タンクからの液化ガス送給量を調整する液面制御弁64と、分離器60のヘッドスペースの圧力を一定範囲内(例えば0.15〜0.25メガパスカル(MPa))に維持するための圧力制御弁66とが分離器60に設けられている。
尚、図示しない元タンクと液面制御弁64との間の液化ガス供給管路58には図示しない開閉弁が設けられており、また、分離器60と圧力制御弁66との間には、分離器60内の圧力が異常に高くなるのを防ぐために安全弁68が設けられている。
【0027】
分離器60と貯留タンク22は、液化ガス用プレフィルター70、合成樹脂製除菌フィルター24および焼結金属製除菌フィルター26を経由して液化ガス供給管路76により連結されている。すなわち、図示しない元タンクから送り出された液化ガスが、液化ガス分離器60に一旦貯留されて気化ガスと分離され、且つ気化ガスを液化ガス分離器60から外へ排出した後、液化ガス供給管路76内を経由し、更に液化ガス用プレフィルター70を通過することで、金属粉等を濾過し除去する。そして、プレフィルター70では取り除くことができなかった微細な微生物や微粒子を合成樹脂製除菌フィルター24及び焼結金属製除菌フィルター26により該液化ガスから濾過して取り除く。
【0028】
合成樹脂製除菌フィルター24は、プレフィルター70と除菌フィルター26との間の液化ガス供給管路76aに設けられている疎水性を有する合成樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)製の除菌フィルターであり、0.45μm以上の微粒子(微生物)、好ましくは0.1μm以上の微粒子(微生物)を除去できることが好ましい。
また、焼結金属製除菌フィルター26は、0.45μm以上の微粒子(微生物)、好ましくは0.1μm以上の微粒子(微生物)を除去できるフィルターであることが好ましい。
合成樹脂製除菌フィルター24と焼結金属製除菌フィルター26との間の液化ガス供給管路76bには開閉弁34が設けられている。また、液化ガス供給管路76a,76bはステンレススチール製であり、断熱性を考慮して二重壁構造として壁間は真空になっている。
【0029】
また、貯留タンク22と除菌フィルター26との間を連結しているステンレススチール製の液化ガス供給管路76cは、その外側から断熱材を巻き付けた断熱構造になっている。そして、この液化ガス供給管路76cの途中には、ステンレススチール製の殺菌用ガス供給第二管路(加熱気体導入管路)30が連結されており、この殺菌用ガス供給第二管路30は、一方向にのみ流体の移動を許容する一方向弁(逆止弁)82と、この管路30を開閉する開閉弁84を備えている。
【0030】
更に、この液化ガス供給管路76cは貯留タンク22内まで延びているが、貯留タンク22の手前側に、この管路76cを開閉する開閉弁28を備えており、貯留タンク22内に延びている開口端には、緩衝箱88を設けている。該緩衝箱88は、液化ガス供給時にこの管路76cから高圧の気化ガスが供給されて貯留タンク22内の圧力を急激に上昇させたり、供給された液化ガスが貯留タンク22内の液化ガスの液面に激しい落下衝撃を与えることにより、吐出用ノズル16からの液化ガスの吐出量に大きな変動を生じさせることを防止するために、貯留タンク22内の圧力上昇と貯留タンク22内の液化ガス液面への落下衝撃を緩和させる構成(供給された液化ガスを一旦貯留してから自然流下させる構成及び液化ガスと一緒に供給された気化ガスを貯留タンク22内のヘッドスペースには排出せずに、直接に貯留タンク22外の排気管路に排気させる構成)を備えている。
【0031】
この様な構成は、例えば、実公昭62−33198号公報、実公昭63−563号公報、特公平1−59169号公報に記載されて周知であるので、詳細な説明は省略する。
また排気管路90は、液化ガス供給用管路76を通して貯留タンク22内に供給された気化ガスや貯留タンク22内で低温液化ガスの気化によって発生したガスを排出させるためのステンレススチール製管路であり、一端が前記緩衝箱88内と連通しており、他端が大気開放となっていて、途中に排気管路90を開閉するための開閉弁92が設けられており、また、この排気管路90と開閉弁92との間のバイパス管路94にも開閉弁96が設けられており、このバイパス管路94の先端部は排気管路90内に開放している。
尚、大気開放となっている排気管路90の開口端は、この部分から、液化ガス充填装置が配置されている領域を薬剤によって殺菌処理したり、洗浄処理したりする際に、薬剤や洗浄水等が排気管路90内に侵入するのを防ぐために、下方を向いている。
【0032】
また前述した一方向弁82は、加熱気体導入管路30の液化ガス供給管路76cとの連結部近傍に設けてあり、後述する液化ガス供給管路76b,76c内と除菌フィルター26を高温ガスにより加熱殺菌する時に、液化ガス供給管路76cに高温ガスを供給する。
更に排気管路98は、貯留タンク22内で液化ガスから発生した気化ガスを、排気管路90を通じて外へ排出するステンレススチール製の管路であり、貯留タンク22と排気管路90とを連結している。
【0033】
また突出部100は、貯留タンク22の天井部分から外方へ突出している液化ガス吐出用ノズルの開閉駆動部分(図示しないACサーボモーターにより上下動する)や、液面検知器(貯留タンク22内の液面を検知し、検知した液面が予め設定した設定値以下であれば、液化ガス供給管路に設けた開閉弁34を開放状態にして、元タンク側から貯留タンク22内に液化ガスを供給し、検知した液面が設定値以上であったなら、開閉弁34を閉じた状態にして液化ガスの供給を停止させて貯留タンク22内の液面を略一定範囲内に維持させる働きをする)等であって、周知技術であり、本発明の特徴部ではないので詳細な説明は省略する。
【0034】
また図示されていない気化ガス供給用の元タンク(液体窒素が充填されているタンク)は、液化ガスを気化させる気化器(図示せず)に連結されており、この気化器で液体窒素は気化されて乾燥した窒素ガスになり、その乾燥した窒素ガスは、図示しないガス管路を通って、何れも図示しない安全弁、減圧弁、圧力計が取り付けられている箇所を通り、その後、5μm以上の微粒子等を濾過する合成樹脂製のスクリーンタイプの濾過フィルター(図示せず)を通り、後記する不活性ガス供給用の管路に至る。
図2において、右端に位置する管路102からは、上記した不活性ガスが供給されており、左方向に向かって順に、開閉弁104,二つに枝分かれした管路102a,102bに、それぞれ圧力計106a,106b、減圧弁(レギュレータ)108a,108b、開閉弁110a,110bが設けられている。
【0035】
この二つの枝分かれした流路102a,102bは、貯留タンク22内、除菌フィルター26、液化ガス供給管路76b,76c内等を高温ガスで加熱殺菌する時及び液化ガス吐出ノズル16から液化ガスを吐出する時には、開閉弁110aを開放すると共に、開閉弁110bを閉じて、この枝分かれした二つのうちの管路102a内だけに高圧〔0.5メガパスカル(MPa)前後〕の不活性ガスを通過させ、一方、低温液化ガス充填装置の1日の稼働を停止した後、明日以降の稼働に備えて貯留タンク22内に外部からの気体等が侵入するのを防止するために、貯留タンク22内に除菌済みの気体(不活性ガス)を放出して微陽圧に維持する時には、開閉弁110bを開放すると共に、開閉弁110aを閉じて、管路102b内だけに低圧(0.1〜0.3MPa程度)の不活性ガスを通す。
【0036】
二つの管路102a,102bはそれぞれの開閉弁110a,110bを過ぎてから一つになり(ガス供給用管路102)、0.45μm以上(好ましくは0.1μm以上)の微粒子や微生物等を濾過して除菌できるフィルターユニット(合成樹脂製のプリーツ形状のスクリーンフィルターから形成されているLRV7レベルの除菌フィルター)112、開閉弁114をそれぞれ備えており、開閉弁114の左方向において不活性ガス供給用管路102は、4本に枝分かれして4個の気体流量計(気体流量計は管路内に流す気体の流量を調整する)116a,116b,116c,116dとにそれぞれ連通し、その内の気体流量計116aと連結されたガス供給用第一管路118aには、左方向に向かって、ガス供給用第一管路118a内を開閉する開閉弁120a、フィルターユニット112で除菌された乾燥状態(水分を含んでいない)の不活性ガス(窒素ガス)を140℃以上の温度にまで加熱するヒーター122、一方向弁(逆止弁)32が、それぞれこの順序で設けられており、このガス供給用第一管路118aは、その先端部が貯留タンク22内に開口する様にこの貯留タンク22に固着されている。
【0037】
このガス供給用第一管路118aは、貯留タンク22内部(液化ガス吐出用ノズルの内面側を含む)、排気管路90,98内面を加熱殺菌するために、フィルターにより除菌処理された気体(好ましくは不活性ガス)をヒーター122により140℃以上の温度に加熱すると共に、加熱されて高温になったガスを供給するための管路である。尚、図示しないが、排気管路90,98の外面側には、高温ガスによって排気管路90,98の内面側を加熱殺菌処理する際の補助加熱のために、細管ヒーターを巻き付ける(排気管路90,98の内面側を加熱殺菌させる際にヒーターのスイッチを入れて外面側を150℃に加熱する)ことが望ましい。
【0038】
また、不活性ガス供給用管路102が気体流量計116bと連通したガス供給用第二管路30は、図の左方向に向かって、途中に開閉弁84、不活性ガスを140℃以上の温度に加熱できるヒーター126をそれぞれ備え、更に図の左方向へ向かって、一方向弁82を介して液化ガス供給管路76cと連通している。このガス供給用第二管路30は、液化ガス用の除菌フィルター26と液化ガス供給用管路76c,76b及び貯留タンク22内(液化ガス吐出用ノズル16を含む)等を高温ガスで加熱殺菌するための管路である。即ち、ガス供給用第二管路30から送られてくる気体(好ましくは液体窒素を気化させた窒素ガスの様な水分を含まない乾燥した不活性ガス)は、ヒーター126により140℃以上の高温になってから一方向弁82を通って液化ガス供給用管路76c内に入り、開閉弁28が閉じている場合には、更に、除菌フィルター26を通り、液化ガス供給用管路76b内を通ってから、開閉弁38を通り、更に加熱気体排出管路36を通って外へ排出される。尚、この高温ガスは、開閉弁28が開放状態の場合には、液化ガス供給用管路76c内を進んで貯留タンク22内(緩衝箱88内)に入ることになる。
【0039】
また、ガス供給用管路102が気体流量計116cと連通したガス供給用第三管路118cは、図の左方向に向かって、途中に開閉弁120cを備え、更に排気管路90の開閉弁92よりも下流側(開閉弁92よりも排気管路90の出口側)で、しかも排気管路90内においてこの排気管路90の下流側(出口側)に向いた状態で開口するように該排気管路90に固着されている。即ち、ガス供給用第三管路118cは、貯留タンク22内からの気化ガスを排出する排気管路90の開閉弁92よりも出口側に連結されており、その連結状態は、ガス供給用第三管路118cを通って来た不活性ガスが、排気管路90の開放端側(図の下方向)を向いて排出される様に開口端が開放端側を向いて固着されているので、このガス供給用第三管路118cから除菌された不活性ガスを流し続けると、排気管路90内に常時開閉弁92側から開放端側へ向かう無菌の不活性ガスの流れを作ることができ、開閉弁92を開放した際に、排気管路90の開放端側から外気が排気管路90内に侵入し、遂には貯留タンク22内に侵入する様な事態が発生するのを防止することができるのである。
【0040】
また、ガス供給用管路102が気体流量計116dと連通したガス供給用第四管路118dは、左方向に向かって 、このガス供給用第四管路118d内を開閉する開閉弁120dと、このガス供給用第四管路118d内を通過する不活性ガス又は後述する空気供給用管路132内を通過する除菌された乾燥状態の(水分を除去した)空気を140℃以上の温度に加熱できるヒーター134とを備え、更に、不活性ガス又は空気中の微粒子や微生物の内、0.30μm以上の微細な物を濾過除菌できる焼結金属製の除菌フィルター136を備え、吐出用ノズル16を取り囲んでいるノズルカバー18の内面側に開口する様にノズルカバー18に取り付けられている。
【0041】
このガス供給用第四管路118dは、ノズルカバー18の内面側と吐出用ノズル16の外面側を加熱殺菌する時には、濾過除菌された乾燥状態の不活性ガス又は空気を、ヒーター134により140℃以上の温度に加熱し、除菌フィルター136により再度濾過除菌した後、吐出用ノズルカバー18内面側に放出して、吐出用ノズル16の外面側とノズルカバー18内面側とを加熱殺菌処理するための殺菌用ガス通路の役目をする。
尚、このガス供給用第四管路118dは、液化ガス充填装置全体を殺菌処理した後の、液化ガス吐出用ノズル16から液化ガスを吐出(流下又は滴下若しくは噴霧)している時には、吐出用ノズル16の周囲を取り囲むノズルカバー18の内面側に、20〜40℃(または30〜50℃)の範囲の温度の乾燥した不活性ガスを弱い圧力(液化ガスが自重で下方に流下するのを乱さない程度の僅かに大気圧よりも高い圧力)で吹き込んで、吐出用ノズル16の下方を通過する容器付近から上昇する水分を含む空気が吐出用ノズルに到達するのを防止する(もし、水分を含む空気が吐出用ノズルに到達すると、その水分が吐出用ノズルの表面で凍結し、それによってノズル内に霜が形成され、それが次第に成長して吐出孔を狭くするので、単位時間当たりの液化ガスの流下量又は1回の滴下量が減少するので、容器に所定量の液化ガスを吐出できなくってしまう。)役目をする。
【0042】
更に、このこのガス供給用第四管路118dは、同一無菌充填製品の連続生産の途中に、液化ガス充填装置が配設されている領域の無菌環境を維持するために、薬剤と洗浄液とによる無菌領域及びその領域内に配設されている各装置の外面側の殺菌・洗浄時において、ヒーター134のスイッチを切って(スイッチオフ)、乾燥状態で常温の加圧無菌空気(乾燥状態で常温の無菌化された加圧不活性ガスでも良い)をノズルカバー18内に噴出させることにより、ノズルカバー18の底壁部の開口部から、殺菌・洗浄用スプレーノズルから噴霧された薬液又は洗浄水の噴霧圧力(開口部付近に於ける薬液等の圧力)よりも高いに圧力で流下させ、薬液又は洗浄水(通常の殺菌・洗浄用のスプレーノズルからの噴霧圧力は0.3MPa前後である)がノズルカバー18の開口部を通過・侵入するのを防止する供給管路としての役目を有している。この時の加圧無菌空気の噴出量は気体流量計116eで調整する。
【0043】
更に、低温液化ガス充填装置の本体部はベースプレート14に取り付けてある。このベースプレート14は、上下方向に延びている架台支柱138の上端に固定されている架台プレート140に取り付けられている。
また、架台支柱ベース142は架台支柱138の下端部を固着している。この架台支柱ベース142は、低温液化ガス充填装置が設置されているベース(又は床面)144から立設された一対の支持部146a,146bに両端部を保持されている(ベース144と所定の間隔を維持している)スライドシャフト148上に取り付けられており、このスライドシャフト148上を、図2の左右方向に移動するようになっている。
【0044】
架台支柱ベース142の移動は、図示しない、スライドシャフト148,148間に設けられているエアシリンダーに無菌エアーを供給することによって動作させる。これによって架台支柱ベース142を、図2の左右方向に移動させることができ、この移動操作によって、低温液化ガスを貯留する貯留タンクが、左右に移動するので、低温液化ガス充填装置の吐出用ノズルの位置を、その吐出用ノズルから液化ガスを受け取るために、該吐出用ノズルの下方を搬送される容器の開口部の中心と一致させるための位置合わせを行うことができる。
【0045】
また、図2の右端に位置する空気供給用管路150は、図示しない圧縮空気供給源〔エアコンプレッサー、水分を除去するミストセパレーター(気液分離器)、減圧弁、圧力計、濾過フィルター等を備えている〕から送られて来た空気を供給し、図2の左方向に順に、開閉弁152、圧力計154、減圧弁(レギュレーター)156、空気中の微粒子や微生物の内、0.45μm以上(好ましくは0.1μm以上)の微細な物を濾過除菌できるフィルターユニット(合成樹脂製のプリーツ形状のスクリーンフィルターを使用して形成されている除菌フィルター)158、開閉弁160を備えている。 この空気供給用管路150は、気体流量計116e、管路132、開閉弁162を経てガス供給用第四管路118dに連結されている。
【0046】
従って、空気供給用管路150から送られてきた乾燥状態の除菌された加圧空気は、ガス供給用第四管路118dを通ってヒーター134により140℃以上の温度に加熱されてから除菌フィルター136を通って再度濾過除菌された後、ノズルカバー18内に噴出されてノズルカバー18内面と液化ガス吐出用ノズル16の外面側を加熱殺菌することになる。
【0047】
また、前述した様に、このガス供給用第四管路118dからノズルカバー18内面側に噴出される乾燥状態の除菌された加圧空気又は不活性ガスは、液化ガス充填装置が配置されている領域に薬液や無菌水等の洗浄水をスプレーノズルにより噴霧して殺菌・洗浄処理を行う際には、ノズルカバー18内に噴出させる除菌された乾燥空気又は不活性ガス(乾燥した不活性ガス)の噴出量を多くすることにより、ノズルカバー18の開口部から流下する際に動圧が高くなって、スプレーノズルにより噴霧される薬液や洗浄液(無菌水)がノズルカバー18内に侵入することを防止する〔即ち、下方に位置するスプレーノズルから上方へ向けて噴霧された薬液等の上方への噴霧圧力(ノズルカバー18の開口部付近での圧力)よりもノズルカバー18の開口部から下方に吹き出す気体の動圧の方を高くする(またはスプレーノズルから噴霧された薬液又は洗浄液が、ノズルカバー18の開口部付近における上方への流速よりも、ノズルカバー18の開口部から流下する乾燥状態の無菌化された空気又は不活性ガスの流速の方が十分に大きくなるようにする)〕ことにより、噴霧された薬液又は洗浄水がノズルカバー18内に侵入するのを防止できることができる。
【0048】
次に、この液化ガス充填装置を加熱殺菌処理する方法について簡単に説明する。
最初に、開閉弁34と開閉弁28と開閉弁92と開閉弁110bと開閉弁120dを閉じた状態にし、一方、開閉弁104と開閉弁110aと開閉弁114と開閉弁120aと開閉弁84と開閉弁120cと開閉弁152と開閉弁160と開閉弁162と開閉弁96と開閉弁38を開放状態にすると共に液化ガス吐出用ノズル16を開放状態にする。そして、ヒーター122,126,134のスイッチを入れる(スイッチオン)。尚、排気管路90,98の外面側に加熱補助用の細管ヒーターを巻き付けてある場合には、この細管ヒーターのスイッチも入れる。
【0049】
さて、ガス供給第一管路118aでは、液体窒素が充填されていた元タンクから供給され、気化により発生した乾燥窒素ガス(水分が全く含まれていない窒素ガス)が、不活性ガス管路102内を通り、圧力計106a、減圧弁108aを通り、フィルターユニット112を通って濾過除菌された後、気体流量計116aに入りガス供給第一管路118a内を通った後、ヒーター122によって140℃以上の高い温度に加熱され て、一方向弁32を通り、貯留タンク22内に入る。
【0050】
貯留タンク22内に入った高温の窒素ガスは、一部は排気管路90,98を通ってこれらの内部を加熱しながら排気管路90から細いバイパス管路94に入り、バイパス管路94の開放状態にある開閉弁96を通過し、バイパス管路94から再度排気管路90内に入ってその開放端から排出されるが、高温の窒素ガスの大部分は貯留タンク22内を暖めながら下方に進み、吐出用ノズル16から外方へ排出される。ガス供給第一管路118aからの高温窒素ガスの供給により、次第に貯留タンク22内側、排気管路90,98内面側、吐出用ノズル16内面側は高温に加熱される。
【0051】
また、ガス供給用第二管路30では、元タンクから送られた窒素ガスは、ガス供給用第一管路118aと同様にして不活性ガス管路102を通過する際にフィルターユニット112によって除菌され、気体流量計116bに入り、ガス供給用第二管路30を通過中に、ヒーター126で加熱されて140℃以上の温度に昇温された後、一方向弁82を経て液化ガス供給管路76c内に入るが、貯留タンク22の手前の開閉弁28が閉じており、一方、加熱気体排出管路36内の開閉弁38が開放状態になっているので、除菌フィルター26を通過し、それから液化ガス供給管路76b内を通過した後、加熱気体排出管路36内に進み開放端から外に出る。このガス供給用第二管路30内を通過する高温窒素ガスにより、液化ガス供給管路76b内面と除菌フィルター26と液化ガス供給管路76cの内面の一部が殺菌温度(例えば150℃)にまで昇温され、その温度を所定時間(例えば10分間)維持されることにより、それらの部分は完全に殺菌処理されることになる。
【0052】
これらの部分は、貯留タンク22内側、吐出用ノズル16内面側及び排気管路90,98の内面と比べると、比較的表面積が少なく、熱容量が小さいので、ガス供給第一管路118a内を通過する高温の窒素ガスの供給とガス供給用第二管路30内を通過する高温の窒素ガスの供給とを同時に実施すると、殺菌処理が早く終了することになる。
そこで、本実施形態では、液化ガス供給管路76bの内面と除菌フィルター26及び液化ガス供給管路76c内面の一部の殺菌が終了したならば、液化ガス供給管路76cの開閉弁28を開放状態にすると共に、加熱気体排出管路36の開閉弁38を閉鎖状態にすることにより、ガス供給用第二管路30内を通過する高温窒素ガスを貯留タンク22内(緩衝箱88内)に送り込んで、残りの液化ガス供給管路76c部分の内面側と、貯留タンク22内側と排気管路90の内面及び吐出用ノズル16内面側の加熱殺菌に利用して貯留タンク22内面等の殺菌時間の短縮化を図っている。即ち、ガス供給用第二管路30内を通過した高温窒素ガスは、貯留タンク22内の緩衝箱88内に送り込まれた後、一部は排気管路90内を通ってバイパス管路94内に進み、これらの部分を加熱しながら、バイパス管路94の先端部の開口端から、再度排気管路90内に入り、開放端から外へ排出される。そして残りの高温窒素ガスは、貯留タンク22内を下降しながら貯留タンク22内面側を加熱し、吐出用ノズル16内面側を加熱しながら通過してその開口端から外へ排出される。
【0053】
ガス供給用第一管路118aとガス供給用第二管路30からの高温窒素ガスにより、貯留タンク22内、排気管路90,98内、吐出用ノズル16内面側、液化ガス供給管路76cの一部の内面側が殺菌温度(例えば150℃)にまで加熱され、その温度を所定時間(例えば10分間)維持されると殺菌処理が完了する。
これらの加熱温度と殺菌時間は、除菌フィルター26付近の液化ガス供給管路76c内面と、貯留タンク22の上部内面側と、排気管路90の開閉弁92付近内面側(バイパス管路94との合流点付近)とに設置した各温度センサー166,168,170で測定した殺菌温度及び殺菌温度を維持していた時間の確認により、予め実験により確認済みの設定温度(加熱温度)と殺菌時間の組み合わせが殺菌条件を完全に満足した場合に殺菌終了と決定される(予めコンピュータに殺菌温度の殺菌時間を設定しておき、温度センサーからの測定値により殺菌終了を表示できる様にしておく)。
【0054】
また、ガス供給用第四管路118dでは、図示しない圧縮空気供給源(水分を除去するミストセパレーターや埃等を濾過する濾過フィルター等を備えている)から送られて来た乾燥した圧縮空気(又は加圧空気)用の管路の通路である空気供給用管路150から、開閉弁152、圧力計154、減圧弁156、空気中の微粒子や微生物を濾過除菌できるフィルターユニット158を経た後、無菌圧縮空気となり、気体流量計116e、管路132を通り、開閉弁162を経てから、ガス供給用第四管路118dに入り、ヒーター134で140℃以上の温度に加熱され、更に除菌フィルター136を通過して除菌された後、ノズルカバー18内に高温無菌空気を噴出して、液化ガスの吐出用ノズル16外面側とノズルカバー18内面を殺菌温度(例えば150℃)まで昇温させ、その温度を所定時間(例えば10分間)維持させることにより加熱殺菌する。この殺菌温度と殺菌時間は、除菌フィルター136とノズルカバー18との間のガス供給用第四管路118d内面と、ノズルカバー18内面側のヒーター付近に配置した各温度センサー172,174による測定した温度が予め設定しておいた殺菌温度以上に達し、しかもその殺菌温度の場合に予め実験によって確認しておいた必要な殺菌時間以上経過したことによって殺菌が終了したと決定する。
【0055】
以上のガス供給用第一管路118aとガス供給用第二管路30とガス供給用第四管路118dは、ほぼ同時に加熱を開始して液化ガス充填装置とその配管等を加熱殺菌する。
一方、ガス供給用第三管路118cでは、窒素ガスが、ガス管路102を通過中にフィルターユニット112を通って濾過除菌された後、流量計116cに入る。そして、ガス供給第三管路118cの開口端が排気管路90の内部で、しかも排気管路90の開口端側に向いて開口しているので、流量計116cを出た無菌窒素ガスは、ガス供給用第三管路118cの開口端から噴出されて排気管路90の開口端側に無菌窒素ガスの流れを形成する。
【0056】
ガス供給用第一管路118aとガス供給用第二管路30からの高温窒素ガスにより、貯留タンク22内部、排気管路90,98内面側、吐出用ノズル16内面側、液化ガス供給管路76cの一部の内面側の殺菌処理が完了した後、ヒーター122,126を切り(スイッチオフ)、開閉弁28を閉じ、一方、開閉弁38を開放状態にすることで、ガス供給用第一管路118aからは無菌窒素ガスによる冷風を貯留タンク22内に流して、貯留タンク22内面と緩衝箱88と、吐出用ノズル16内面と、排気管路90,98内面等を冷却し、また、ガス供給用第二管路30から無菌窒素ガスを液化ガス供給管路76bと除菌フィルター26と液化ガス供給管路76cの一部に流してこれら液化ガス供給管路76b,76cの内面と除菌フィルター26を冷却し、それぞれこれら各部分の温度が50℃以下になるまで冷却する。
【0057】
一方、ガス供給用第四管路118dでは、ノズルカバー18内面側と吐出用ノズル16の外面側の殺菌が終了した後、ヒーター134の加熱温度の設定を30〜50℃の範囲に落とし、更に、無菌圧縮空気の管路132の開閉弁162を閉じ、一方、無菌窒素ガスの流量計116dを経たガス供給用第四管路118dの開閉弁120dを開放状態にして、無菌窒素ガスをヒーター134により30〜50℃の範囲の設定温度にした後、ノズルカバー18内の開口部から加熱殺菌時よりも大幅に勢いを落として噴出させる(吐出用ノズルの下方を移動する飲料等が充填されている容器から上昇する水分を含んだ空気がノズルカバー18の開口部からカバー内に侵入するのを防止できるだけの大気圧よりも僅かに高い圧力とする)。各部分の冷却処理が終了した後、圧縮空気供給用の管路の開閉弁152,160、無菌窒素ガス供給用の管路の開閉弁120a,84、加熱気体排出管路36の開閉弁38、排気管路のバイパス管路94の開閉弁96を閉じると共に、液化ガス吐出用ノズル16を閉じ、一方、液化ガス供給管路の開閉弁34,28を開放状態にすることにより、元タンクから液化ガス供給管路76a,76b,76cを経由して貯留タンク22内に液化ガス液体窒素を貯留する。
【0058】
貯留タンク22内に液体窒素が貯留され始めたならば、排気管路の開閉弁92を開放状態にすると、液化ガス供給管路76a,76b,76c内で気化した窒素ガスや貯留タンク内で気化した窒素ガス等が排気管路90,98から盛んに排出される。その後、液化ガス供給管路76a,76b,76c内面及び貯留タンク22内面側の温度が液体窒素により冷却されるので、次第に液体窒素は貯留タンク22内に貯留されていく。
液体窒素は、元タンクからプレフィルター70を通過する際に、金属粉等の比較的大きな粒子を取り除かれ、合成樹脂製除菌フィルター24を通過する際に、微生物や微粒子が濾過されて除菌され、更に、焼結金属製の除菌フィルター26を通過する際にも再度濾過・除菌されてから、貯留タンク22内に入るので、異なる除菌用フィルターによって二度除菌されるので、貯留タンク22内に貯留されている液体窒素は限りなく無菌に近いと言い得ることになる。
【0059】
ところで、フィルターの濾過性能の保証又は濾過性能の管理方法として、フィルター1次側(除菌すべき流体をフィルター装置に流入させる)と2次側(除菌された流体がフィルター装置から排出される側)の差圧管理、または、完全性試験(バブルポイントテスト、拡散流量テスト、プレッシャーホールドテスト)による確認方法がある。
ここで、完全性試験について説明する。フィルターの性能試験手段として、最も広く使用されている非破壊の完全性試験は、バブルポイントテストである。このテストは、表面張力と毛細管現象によって液体がフィルターの孔の中に保持される理論に基づいた方法であり、孔から液体を押し出すのに必要な最小の圧力によって孔の直径を測定する。
【0060】
尚、フィルターに加える圧力は、フィルターの孔径が小さくなる程高くするが、市販されている各フィルターに加える圧力とその保持時間は、各フィルターメーカーによって決められているので、テストの際にそのフィルターに加える圧力はそのフィルターのメーカーの仕様書又はテストの手順説明書の記載に基づいて実施することになる。
テストに当たって、先ず、フィルターカートリッジをバブルポイント試験装置のフィルターハウジング内に装着する。その後、試験されるフィルターの二次側(濾過された流体が出る側)に液体(水又はアルコール分99.5パーセントのエチルアルコール)を満たし、一次側(濾過される流体を導入する側)に気体(空気又は窒素ガス)を満たす。この圧力を漸次上昇させ、二次側に気泡が発生する圧力でフィルターあるいはフィルターカートリッジに存在する最大の孔乃至は空隙の大きさを判断し、フィルター乃至フィルターカートリッジとして捕捉性の完全さを判断する方法である。一次側の圧力が小さい時は二次側の液体中(水又はアルコール分99.5パーセントのエチルアルコール)には気泡が見られないが、圧力が一定の値を超えるとフィルター(濾過膜)に存在する最大の孔あるいは濾過膜、濾過膜とフィルターカートリッジ部品との接着部分に存在する空隙、フィルターカートリッジ部分等に存在する空隙等の内の最大の孔乃至は空隙を通じて気泡が発生するのが観察される。バブルポイントは、気体の通過する孔乃至は空隙の大きさに比例している。従って、この圧力から気体が通過してきた空隙の大きさを判断することが出来る。
【0061】
以下にバブルポイトテストの手順を記載する。
−バブルポイントテスト手順−
1.先ず、メンブレンフィルターを装着したフィルターカートリッジ(カートリッジ式メンブレンフィルター)200を図3に示すバブルポイントテスト装置のフィルターハウジング201内に挿入し、フィルターカートリッジの上下の管路をこのハウジング内の管路202,203に固着する(フィルターハウジング内のフィルターカートリッジとの連結部分の詳細については図示を省略した)。
2.次に、フィルターカートリッジ(カートリッジ式メンブレンフィルター)200の二次側に適切な液体、即ち、使用しているフィルターが、親水性のメンブレンフィルターならば水、疎水性のメンブレンフィルターならばエチルアルコールと水との混合液を導入してフィルターを湿潤させる。
3.フィルターカートリッジ200の一次側に圧力(圧縮空気又は圧縮窒素ガス)を送り込み、テストするフィルータの製造元が作成した仕様書又は説明書に記載されているバブルポイント圧力の約80%まで圧力を掛けて行く(圧力範囲:34.5KPa〜620.5KPa)。
4.加圧は、二次側の流出口側の管路203の末端部(コの字形に曲げられており、しかもコの字形部分を水が入れられている広口容器の水中に埋没されている末端部)204から連続した気泡が認められるまで、ゆっくりと加圧する。
連続した気泡が認められる様になった際の加圧力(圧力)がバブルポイント値であり、この値が、テストしたフィルータの製造メーカーの規格値よりも低い場合には、次の様なこと〔a.試験に用いた液体が適切でなかった(その表面張力がメンブレンフィルターの試験に不適切)、b.メンブレンフィルターの孔径が仕様書と異なっている、c.テスト時の温度が高すぎた、d.メンブレンフィルターの湿潤が不十分、e.メンブレンフィルターの破壊又はカートリッジのシール不良〕が考えられるので、これらのことを再検討した後、テスト条件に不適切なことが無ければ、フィルターの性能が不適切(不良品又は破損品)と判断する。
【0062】
本実施態様では、テストしたフィルータの製造メーカーの規格値以上のものを合格品、規格値よりも低かったものを不合格品とした。
次に、本発明者等が実験により確認した焼結金属製フィルターの性能確認試験のためのOPC測定器(Optical Particle Counter:光散乱式粒子測定器)を使用したフィルター性能確認試験方法について説明する。
通常のフィルターの性能管理は、メンブレンフィルターの場合にはフィルター一次側と二次側の差圧管理又は完全性試験で行うのが一般的であるが、濾過する流体が低温液化ガスの場合には、圧力変動が大きくて差圧管理が困難であり、また、完全性試験で使用する水が残留した場合、残留水を除去するのが困難であり、氷結の危険がある。焼結金属製フィルターの場合にはメンブレンフィルターとはその基本構造が異なるため、完全性試験が不可能であった。
【0063】
そこで、本発明者等は完全性試験に代わるフィルターの性能管理が可能な試験法を探し、以下に記載する様に、OPCを測定する(例えば、光散乱式粒子測定器に被測定ガスである気体を層粒状に流し、その層粒状の気体流に光源からの光を収束して照射させ、気体中の粒子によって散乱された光を入射方向光軸交角70度で光電子増倍管上に集光し、光電子増倍管からのパルス状の出力電気信号の数から粒子数を、また波高値から粒子径を標準粒子と比較することで求める。)ことで燒結金属製フィルター〔ステンレススチール(SUS316L)製の焼結金属フィルター(濾過性能:0.1μm、耐圧力性能:900kPa、耐熱性能:400℃、捕集率:99.9999999%(粒子))の性能を確認できることを実証した。
【0064】
先ず、開閉弁34により、液化ガス供給管路76b,76c内から液化ガスを排除した状態にし、更に、液化ガス供給管路76b,76c内及び焼結金属製フィルター26を加熱殺菌処理する(冷却処理も実施)。その後、管路から焼結金属製の除菌フィルター26を取り外してから、液化ガス供給管路76b内に予め菌製剤〔三共(株)製の「パンクラミン錠」(Bacillus coagulans 10cfu・・・粒子径0.3〜10μm)〕をセットする。液化ガス供給管路76b,76cに除菌フィルター26を装着しない状態で、開閉弁28を閉じ、開閉弁38を開放状態にして、管路30から、除菌された常温の窒素ガス(ヒーター40をスイッチオフにしておく)を、液化ガス供給管路76cから内に流し(圧力が0.1MPa)、この窒素ガスを加熱気体排出管路36の末端側に取り付けた光散乱式粒子測定器内に吸引してOPC測定を行い、管路内にセットした菌製剤(粒子)が検出されることを確認する(0.3〜10μmの粒子が検出できたことを確認する)。
【0065】
次に、先に使用した菌製剤の影響を防止するために、管路内に焼結金属製フィルター26を装着しこの液化ガス供給管路76b,76c内及び除菌フィルター26を加熱殺菌処理した後冷却する。その後、焼結金属製フィルター26の一次側の液化ガス供給管路76b内に予め上記と同じ菌製剤〔三共(株)製の「パンクラミン錠」(Bacillus coagulans 106cfu)〕をセットし、開閉弁28を閉じた状態にし、開閉弁38を開放状態にして、液化ガス供給管路76c内に、殺菌用ガス供給第2管路30から常温の除菌済み窒素ガスを流し、焼結金属製フィルター26を通過した後(フィルター二次側)の窒素ガスを加熱気体排出管路36の末端側に取り付けた光散乱式粒子測定器内に吸引してOPC測定を行い、液化ガス供給管路76b内にセットした菌製剤(微粒子)の検出がなされなかったことを確認する。
【0066】
更に、念のために、焼結金属製フィルター使用により微粒子が検出されなかったことを別の測定方法で確認するために、上記の焼結金属製フィルターを通過した窒素ガス(OPC測定をした窒素ガスと同一のもの)を、無菌状態の瓶3本に採取した後、それぞれの瓶の口部を無菌布で覆い、クリーンベンチ内でそれぞれの瓶に無菌水を入れ、無菌状態で蓋をしてからシャッフルし、メンブレンフィルターで濾過した後、そのメンブレンフィルターを培地上に乗せ、培地で培養して(30℃で5日間)から目視により細菌の有無を確認する。
【0067】
上記確認試験を各3回ずつ実施したが、フィルター二次側からの菌検出は認められなかった。即ち、焼結金属製のフィルターが所定の除菌性能を有していることが確認できた。
本試験方法は、液化ガス充填装置の殺菌前後、飲料や液状食品の容器詰製造終了後や飲料や液状食品の容器詰製造開始前等に実施することができるので、定期的に除菌フィルターの性能を確認しながら、飲料や液状食品の容器詰等の製造に使用することができる。
本発明は、上記実施形態の殺菌ガス供給用管路と加熱殺菌方法を実施する液化ガス充填装置に限られない。例えば、本実施形態では焼結金属製の液化ガス除菌用フィルターと液化ガス供給管路内面及び貯留タンク内部を2つの高温ガス供給管路を使用して加熱殺菌処理しているが、高温ガスを一つの殺菌用ガス又は水蒸気供給管路から、焼結金属製の液化ガス除菌用フィルターと貯留タンク内部とに供給して加熱殺菌処理する様にしたタイプの液化ガス充填装置にも適用でき、また、高温ガスの代わりに水蒸気を用いて液化ガス充填装置内部や除菌フィルター及び管路を殺菌処理する様にした液化ガス充填装置にも本発明は適用できる。
【0068】
又、上記実施形態では、燒結金属製フィルターとして、ステンレススチール製の物を使用したが、これはステンレススチールが耐食性、耐高温性及び耐極低温性に優れ、また液化ガス供給管路を構成する素材と同一物質(ステンレススチール)で有るためであり、本発明では、焼結金属製の除菌フィルターはステンレススチールに限らず、ステンレススチールに近い性能を有する金属ならば使用可能である。また、合成樹脂製のスクリーンフィルターについてもフッ素樹脂に限らず、−196℃に耐える耐極低温性と170℃程度の耐熱性に優れていれば使用可能である。
【0069】
なお、完全性試験としてバブルポイントテストに次いで実施されている試験法として、拡散流量テストがある。このテストは、バブルポイント以下の差圧で、気体分子はFickの拡散の法則に従って、湿潤されたメンブレンフィルターの水で満たされた孔に拡散する。メンブレンフィルターに対する気体の拡散流量は、差圧とフィルターの表面積に比例する。バブルポイント値のおよそ80パーセントの圧力で、メンブレンフィルターの孔に拡散する気体を測定しフィルターの完全性を判断する。濾過面積の小さなフィルターでは気体の拡散流量は非常に少ないが濾過面積が大きいフィルターではかなり多くなる。
特定のメンブレンフィルターやフィルターカートリッジに対して、最大拡散流量の値が決められており、バクテリア捕捉を予測するために用いられる。尚、市販されているフィルターは、製造メーカーによって加える圧力及び保持時間が決められており、フィルターの仕様書又は説明書に記載されている。
【0070】
以下に拡散流量テストの手順を記載する。
−拡散流量テスト−
1.先ず、メンブレンフィルターを装着したフィルターカートリッジをバブルポイントテスト装置のフィルターハウジング内に挿入し、フィルターカートリッジの上下の管路をこのハウジング内の管路に固着する。
2.次に、メンブレンフィルターを、適切な液体、即ち、親水性メンブレンフィルターの場合には水、疎水性メンブレンフィルターの場合にはアルコール(例えばエチルアルコール)と水との混合液を、フィルターカートリッジの一次側又は二次側に導入し、メンブレンフィルターの各孔が液体によって浸潤された後、液体を排出させる。
3.テストするメンブレンフィルターの製造元が推奨している試験圧力、通常は最小バブルポイント値の少なくとも80%まで、フィルターの一次側の圧力(圧縮空気により)をゆっくりと上げていく。
4.システムが安定化するのを待つ(加圧状態を維持する)。
5.逆さに拡散流量が読み取れるメスシリンダーを用いて1分間、流出口側で気体の拡散量を測定する。
もし、仕様よりも拡散流量が多く読み取れた場合には、次の点〔イ.フィルターの孔径要所の通りかどうか、ロ.テスト時の温度は適切であったかどうか、ハ.メンブレンフィルターの湿潤は十分であったか否か、ニ.湿潤に使用した液体とフィルターとの組み合わせは適切だったか否か、ホ.安定化の時間が適切であったか否か、ヘ.・メンブレンフィルター又はシールが不良である否か(メンブレンフィルター又はカートリッジが破損している)を再確認した後、メンブレンフィルターの性能の良否を判断する。
【0071】
次に、完全性試験としてはプレッシャーホールドテストも知られている。
プレッシャーホールドテストは、圧力降下テストとも呼ばれているが、拡散流量法と同様に濾過膜に試験液を充満し、一次側と二次側に気体を存在せしめ、一次側の気体体積と圧力を一定にし、試験液を充満した濾過膜を通じて時間の経過とともに流れる流体の量に従って減少する一次側の気体の圧力を測定し、フィルターカートリッジに存在する最大の孔や空隙の大きさが目的の微生物や微粒子の捕捉性を有していることを確認する。このテストは、正確な圧力計を用いて、フィルターを通る気体の拡散によって起こる一次側の圧力変化を調べる方法であり、フィルターの二次側の気体量を測定する必要がないため、二次側の滅菌状態に悪影響を及ぼす危険が避けられる。
上記の様な差圧管理方法や完全性試験が知られているが、流体が液体窒素の様な低温液化ガスである場合には、圧力変動が大きく差圧管理は困難であり、一方、一般的に良く使用されている、バブルポイントテストや拡散流量テストの様に、水を使用する完全性試験方法では、使用する水が焼結金属製フィルターに残留した場合に、短時間で残留水を完全に除去するのが困難であり、もしフィルター内に水が残留していた場合には、低温液化ガスを送り込んだ瞬間に氷結してしまう(フィルターが目詰まりしてしまう)という問題がある。
【0072】
また、焼結金属製フィルターは、基本構造として微粒子を内部で捕捉するタイプのディプスフィルターであり、微粒子を表面で捕捉するタイプのメンブレンフィルターとは濾過面の構造が異なることからも通常行われている様な完全性試験は不可能である。
即ち、高温と極低温の繰り返しによってもダメージを受けないフィルターである、焼結金属製のフィルターは、最も一般的なフィルターの管理方法である、差圧管理方法や完全性試験方法が実施できないため、顧客にフィルターの性能を保証する(または完全性の保証をする)という観点から問題があることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明が適用された低温液化ガス充填装置の低温液化ガス流路の概要図である。
【図2】本発明の一実施形態の液化ガス充填装置及び装置本体へ液化ガスや不活性ガス(加圧ガス)及び加圧空気の配管状態の概略を示す説明図である。
【図3】本発明で実施したバブルポイントテスト(完全性試験)を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0074】
10 無菌領域
12 容器
16 液化ガス吐出用ノズル
22 貯留タンク
24 合成樹脂製フィルター
26 焼結金属製フィルター
30 殺菌用ガス供給第二管路(加熱気体導入管路)
36 加熱気体排出管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の容器内に所定量の無菌化された液化ガスを吐出する液化ガス吐出用ノズルと、
該吐出用ノズルを下方部分に連結した液化ガス貯留タンクと、
該貯留タンクの上部に取り付けられた液化ガス供給管路及び気化ガス排出管路と、
を備えた液化ガス充填装置に対して、元タンクから供給された液化ガスを、該液化ガス供給管路に配備した除菌フィルターを通して無菌化し、前記貯留タンク内へ供給する方法において、
前記元タンクから供給された前記液化ガスを、先ず、スクリーンタイプの合成樹脂製除菌フィルターを通過させることによって濾過除菌した後、更に、焼結金属製除菌フィルターを通過させることによって濾過除菌することを特徴とする液化ガス充填装置への無菌液化ガス供給方法。
【請求項2】
前記合成樹脂製除菌フィルターは、定期的に完全性試験装置に装着して性能試験を行い、破損の有無を検査済みの除菌フィルターであることを特徴とする請求項1記載の液化ガス充填装置への無菌液化ガス供給方法。
【請求項3】
前記焼結金属製除菌フィルターは、定期的に加熱殺菌処理を受けていることを特徴とする請求項1又は2記載の液化ガス充填装置への無菌液化ガス供給方法。
【請求項4】
前記液化ガス充填装置は、さらに、
前記合成樹脂製除菌フィルターと前期焼結金属製除菌フィルターとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体導入管路と、
前記焼結金属製除菌フィルターと前記液化ガス貯留タンクとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体排出用管路とを備えるか、或いは、前記合成樹脂製除菌フィルターと前記焼結金属製除菌フィルターとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体排出用管路と、前記焼結金属製除菌フィルターと前記液化ガス貯留タンクとの間に設けられた液化ガス供給管路に接続された加熱気体導入管路とを備え、液化ガス貯留タンクへ液化ガスを供給する時には、前記加熱気体排出用管路及び加熱気体導入管路を閉止し、且つ合成樹脂製除菌フィルター−焼結金属製除菌フィルター−液化ガス貯留タンクを導通させ、
焼結金属製除菌フィルターの除菌時には、前記加熱気体排出用管路及び加熱気体導入管路を開き加熱気体導入管路−焼結金属製除菌フィルター−加熱気体排出管路を導通させ、且つ加熱気体導入管路−液化ガス貯留タンク及び排気管路−合成樹脂製除菌フィルターの導通路を閉止することを特徴とする請求項1ないし3記載の液化ガス充填装置への無菌液化ガス供給方法。
【請求項5】
搬送中の容器内に所定量の無菌化された液化ガスを吐出する液化ガス吐出用ノズルと、
該吐出用ノズルを下方部分に連結した液化ガス貯留タンクと、
該貯留タンクの上部に取り付けられた液化ガス供給管路及び気化ガス排出管路とを備えた液化ガス充填装置と、
前記液化ガス供給管路に配備され、液化ガスの元タンクから送られてくる液化ガスから微生物や微粒子を濾過除菌できる液化ガス除菌フィルターと、
前記液化ガス除菌フィルターと、前記液化ガス供給管路内、前記貯留タンク内及び前記吐出用ノズル内へ高温ガスを供給をしてこれらを加熱殺菌するためのガス供給管路と
を備えた液化ガス充填装置へ無菌液化ガスを供給する装置において、
前記液化ガス供給管路に配備された液化ガス除菌フィルターが、焼結金属製除菌フィルターから構成されており、しかも該焼結金属製の除菌フィルターの前記元タンク側には、スクリーンタイプの合成樹脂製除菌フィルターが更に配備されていることを特徴とする液化ガス充填装置への無菌液化ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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