説明

液圧制御装置およびその製造方法

【課題】簡単な構造でハウジングを精度良く仮固定することができる液圧制御装置、及び製造方法を提供する。
【解決手段】基体と、この基体の一面に固定されるハウジング30とを備える液圧制御装置であって、ハウジング30には、基体の一面に臨む開口部33aが形成されており、開口部33aの開口縁部35には、フランジ部36が外方に突出して形成されており、フランジ部36には、締結手段を介して基体に固定するためのネジ加工が施されたハウジング固定穴37が設けられるとともに、ハウジング30に部品を組み付ける際にハウジング30を仮固定するための基準穴38がフランジ部36を肉抜きしてハウジング固定穴37と並列して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧制御装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液圧制御装置として基体とハウジングとを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。この液圧制御装置では、ハウジングの基体に対向する面にハウジング固定穴が設けられるとともに、基体にハウジング取付用貫通孔が形成されている。そして、基体のハウジング装着面とは逆側の面(背面)側からハウジング取付用貫通孔にハウジング固定ネジを挿入して、その固定ネジの先端をハウジングのハウジング固定穴に螺合させて締め付けることで、ハウジングを基体に装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電磁弁に装着されるソレノイドコイル(電気部品組立体)やECU等の電気部品をハウジングに組み付けたり、ハウジングに蓋体を固着させる作業時には、ハウジングを一時的に仮固定する必要がある。このとき、ハウジング固定穴に一時固定用のピンを挿入してピンと雌ねじとの接触によってハウジングを仮固定することが考えられるが、このような固定穴にネジ加工が施された構造では、ハウジング固定穴を一時固定用の穴として使用するのは好ましくない。そこで、ピンを用いずにハウジングを把持するようにしてもよいが、この構成だと把持部品が大掛かりになって複雑化してしまう。
【0005】
このような観点から、本発明は、簡単な構造でハウジングを精度良く仮固定することができる液圧制御装置その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決する請求項1に係る発明は、基体と、この基体の一面に固定されるハウジングとを備える液圧制御装置であって、前記ハウジングには、前記基体の前記一面に臨む開口部が形成されており、前記開口部の開口縁部には、フランジ部が外方に突出して形成されており、前記フランジ部には、締結手段を介して前記基体に固定するためのネジ加工が施されたハウジング固定穴が設けられるとともに、前記ハウジングに部品を組み付ける際に前記ハウジングを仮固定するための基準穴が前記フランジ部を肉抜きして前記ハウジング固定穴と並列して設けられていることを特徴とする液圧制御装置である。
【0007】
このような構成によれば、基準穴をハウジング固定穴と別途に設けているので、固定治具のピンをハウジング固定穴の雌ねじに接触させることなく、比較的簡単な構成の固定治具を用いて精度良くハウジングを仮固定できる。また、基体に固定するための固定穴が設けられたフランジ部を肉抜きすることで基準穴を形成しているため、フランジ部の肉厚のバランスが良好になり樹脂形成時のヒケにおける収縮バランスをとる作用を兼ねた基準穴とすることができ、基準穴をハウジングに効果的に形成することができる。
【0008】
また、本発明においては、前記開口部が、略矩形形状を呈しており、前記開口部の互いに対向する二辺の外側に位置する一対のフランジ部のそれぞれに前記ハウジング固定穴および前記基準穴が設けられており、前記ハウジング固定穴は、前記フランジ部の辺の中心からその長手方向に沿ってオフセットした位置にそれぞれ形成され、前記基準穴は、前記一対のフランジ部で前記ハウジング固定穴よりも前記辺の中心側にそれぞれ形成されていることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、基準穴を、ハウジング固定穴がオフセットしたことで空いたスペースにそれぞれ形成することができるので、フランジ部の補強効果を損ねることなく固定穴と基準穴とを並列に設けることができる。
【0010】
さらに、本発明においては、互いに対向する二つの前記ハウジング固定穴間の距離と、互いに対向する二つの前記基準穴間の距離とは異なる長さになるように形成されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、ハウジングに部品を組み付けるべくハウジングを仮固定するときに、固定治具の一対のピンが間違ってハウジング固定穴に挿入されることがなく、確実に各基準穴に挿入されるので、ハウジングの仮固定の位置決めを容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明においては、前記基準穴は、前記ハウジング固定穴よりも大径に形成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、ハウジングに部品を組み付けるべくハウジングを仮固定するときに、固定治具のピンが間違ってハウジング固定穴に挿入されることがなく、確実に各基準穴に挿入されるので、ハウジングの仮固定の位置決めを容易に行うことができる。
【0014】
さらに、本発明は、前記基体の前記一面に対する背面に固定されたモータを備え、前記モータは、当該モータ側から装着されるモータ固定ネジによって前記基体に固定されており、前記ハウジングを前記基体に固定するためのハウジング固定ネジは、前記基体の前記背面側から前記一面側に向かって貫通して挿入されて、前記ハウジング固定穴に螺合されることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、モータ固定ネジとハウジング固定ネジを同じ方向から締め付けることができるので、作業を行いやすい。
【0016】
また、本発明は、基体と、基体の一面に固定されるハウジングとを備えた液圧制御装置の製造方法であって、前記ハウジングに、前記基体に固定するためのネジ加工が施されたハウジング固定穴と、前記ハウジングに部品を組み付ける際に前記ハウジングを仮固定するための基準穴とを、互いに並列して設ける工程と、固定治具の部品用のピンに前記部品を装着して仮固定する工程と、固定治具のハウジング用のピンを前記基準穴に挿入して前記ハウジングを仮固定する工程と、前記ハウジングと前記部品を前記固定治具に仮固定した状態で、前記ハウジングの接続端子と前記部品の接続端子とを接続して固定する工程と、を備えたことを特徴とする液圧制御装置の製造方法である。
【0017】
このような方法によれば、基準穴をハウジング固定穴と別途に設けているので、固定治具のピンをハウジング固定穴の雌ねじに接触させることなく、比較的簡単な構成の固定治具を用いてハウジングを仮固定できる。
【0018】
さらに、本発明においては、前記固定治具は、部品用の前記ピンとハウジング用の前記ピンとが前記固定治具の基部に一体的に形成されていることが好ましい。
【0019】
このような方法によれば、ハウジングおよび部品の固定治具への仮固定の容易性と、部品のハウジングへの組付け精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構造でハウジングを精度良く仮固定することができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る液圧制御装置のハウジングおよびその内部の部品を示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る液圧制御装置を示した斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る液圧制御装置を示した断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る液圧制御装置のハウジングおよびその内部の部品を示した正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る液圧制御装置において、ハウジングに部品を組み付ける際のハウジングの仮固定状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本実施形態に係る液圧制御装置の全体構成を説明する。なお、本実施形態おける上下左右の方向は、図1,2,4に示すように、ハウジングを基体側から見たときの方向を基準としている。この上下左右方向は、実際に液圧制御装置を車体に装着した場合の方向と異なる場合がある。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る液圧制御装置1は、基体10と、この基体10の一面11(図3参照)に配設された電磁弁(図示せず)と、基体10の一面11に装着されたハウジング30と、基体10の一面11に対する背面(一面の裏側の面)12に配設されたポンプ駆動用のモータ60と、を備えて構成されている。
【0024】
基体10は、略直方体に形成される金属部材であって、内部にブレーキ液の流路やモータの回転軸収容穴(図示せず)やポンプ収容孔14等が形成されている。回転軸収容穴は、基体10の背面12に開口する断面円形の有底の穴で、モータ60の回転軸(図示せず)が収容される。ポンプ収容孔14は、回転軸収容穴の内周面から基体10の両側面13にそれぞれ貫通する孔で、回転軸収容穴の左右両側に一対設けられている(図2では、一方のみ図示)。ポンプ収容孔14は、側面13に対して直角方向(法線方向)に延在している。各ポンプ収容孔14は、互いに同一軸線上に形成されている。
【0025】
図3に示すように、基体10には、ハウジング取付用貫通孔15とモータ固定穴16が形成されている。ハウジング取付用貫通孔15は、ハウジング30を基体10に固定するためのハウジング固定ネジ80が貫通される孔である。ハウジング取付用貫通孔15は、基体10の一面11と背面12の両面に開口するように基体10を貫通して形成されており、一面11に対して直角方向(一面11の法線方向)に延在している。
【0026】
モータ固定穴16は、背面12に開口して形成されており、モータ60を固定するモータ固定ネジ81が挿入される有底の穴である。モータ固定穴16には、雌ねじが形成されており、モータ固定ネジ81(図2および図3参照)が螺合する。モータ固定ネジ81は、モータ60のフランジ部61に形成されたモータ取付用貫通孔62を貫通してモータ固定穴16に螺合される。
【0027】
図2に示すように、ハウジング取付用貫通孔15は、基体10を背面側から見て、回転軸収容穴の中心を対称点として二箇所に点対称配置されている。また、モータ固定穴16は、基体10を背面側から見て、回転軸収容穴の中心を対称点として、ハウジング取付用貫通孔15とは別位置で二箇所に点対称配置されている。さらに、背面側から見て、二つのハウジング取付用貫通孔15,15の位置と二つのモータ固定穴16,16の位置とが矩形(本実施形態では長方形)の頂点を構成するように、ハウジング取付用貫通孔15,15とモータ固定穴16,16とが配置されている。つまり、二つのハウジング取付用貫通孔15,15の位置と二つのモータ固定穴16,16の位置とが、長方形の頂角をそれぞれ構成している。
【0028】
また、ハウジング取付用貫通孔15とモータ固定穴16は、ポンプ収容孔14と干渉しない近接位置で、ポンプ収容孔14を挟むように配置されている。そして、上側に位置するハウジング取付用貫通孔15とモータ固定穴16同士が同じ高さに位置し、下側に位置するハウジング取付用貫通孔15とモータ固定穴16同士が同じ高さに位置している。つまり、二つのハウジング取付用貫通孔15,15の位置と二つのモータ固定穴16,16の位置とが頂点を構成する長方形は、長辺が水平方向に延在し、短辺が鉛直方向に延在している。
【0029】
図1および図4に示すように、ハウジング30は、基体10に取り付けられる電磁弁に装着されるコイル等を備えた電気部品組立体51や電磁弁の作動を制御する制御ユニット52(図3参照)などの電気部品50を収容する。本実施形態では、電気部品50が請求項における「部品」に相当するが、「部品」を電気部品に限定する趣旨ではない。
【0030】
電気部品組立体51は、電磁弁の弁ハウジングを囲繞するボビン53に電線を巻きつけて形成したソレノイドコイル54と、このソレノイドコイル54と電気的に接続された接続端子(図示せず)と、ボビン53の軸方向両端を挟むようにしてボビン53に装着される磁路枠55とを備えて構成されている。電気部品組立体51は、接続端子をハウジング30に設けられた接続端子(図示せず)にプロジェクション溶接(電気接続)することで、ハウジング30の内部に固定されている。
【0031】
制御ユニット52は、電気部品組立体51やモータ60などに供給する電流(通電)を適宜制御することで、各電磁弁やモータ60の動作を制御するための制御基板であり、ハウジング30の内部に固定されている。制御ユニット52は、ハウジング30に埋設された金属板を介して、電気部品組立体51やモータ60に電気的に接続されている。
【0032】
ハウジング30は、樹脂にて形成され断面が略矩形形状(本実施形態では正方形)の角筒状部分31(図4参照)を有している。なお、図3の断面図は図4のA−A線で切断した面を示している。第一収容部30aは、基体側に位置し、第二収容部30bは、反基体側(基体10の反対側)に位置する。電気部品組立体51(図1および図4参照)は第一収容部30aに収容され、制御ユニット52は第二収容部30bに収容される。ハウジング30の角筒状部分31の第二収容部30b側の開口部33bには、第二収容部30bを塞ぐための蓋体34が設けられている。
【0033】
図1および図4に示すように、ハウジング30の角筒状部分31の第一収容部30a側の開口部33aは、基体10の一面11に臨む。開口部33aは、略矩形形状(本実施形態では正方形形状)を呈している。なお、本発明における「矩形」または「正方形」は、出隅部が曲線形状に面取りされたものや、斜めに面取りされた形状のものも含む。
【0034】
開口部33aの開口縁部35には、フランジ部36が外方に突出して形成されている。フランジ部36は、四辺のうち互いに左右方向で対向する一対の辺に形成されている。フランジ部36には、ハウジング固定穴37と基準穴38とが設けられている。
【0035】
ハウジング固定穴37は、ハウジング固定ネジ80の先端を螺合させる雌ねじが形成された穴である。ハウジング固定穴37は、ハウジング30にインサートモールドにて埋設されたブッシュ39にて形成されている。ブッシュ39は、ネジ加工が施された筒状の金属部材である。ブッシュ39の内周部には、雌ねじが形成されており、その内周部にてハウジング固定穴37が構成されている。ハウジング固定穴37は、開口縁部35の上下方向に延在する辺(左右方向で対向する一対の辺)の長手方向中心からその長手方向(本実施形態では上下方向)に沿ってオフセットした位置にそれぞれ形成されており、ハウジング30を基体10に装着した状態で、ハウジング取付用貫通孔15に対応する位置に配置されている。ブッシュ39の基体側一端は、ハウジング30の基体10に対向する面に開口しており、他端はハウジング30の樹脂に覆われて塞がれている。
【0036】
基準穴38は、電気部品50のハウジング30への組付け装着時に、ハウジング30を仮固定するための固定治具100(図5参照)のハウジング固定用ピン101(図5参照)が挿入される部分である。基準穴38は、一対のフランジ部36でハウジング固定穴37がオフセットしたことで空いたスペースにそれぞれ形成されている。具体的には、基準穴38は、開口縁部35の上下方向に延在する辺(左右方向で対向する一対の辺)の長手方向中心の高さで、フランジ部36に形成されている。基準穴38は、ハウジング固定穴37と軸方向が互いに平行になるように並列して形成されている。
【0037】
基準穴38は、左右両側のフランジ部36にそれぞれ形成されており、開口部33aの重心(対角線の交差部分)を中心として対称位置に配置されている。二つの基準穴38,38間の距離L1(軸芯間距離)は、二つのハウジング固定穴37,37間の距離L2(軸芯間距離)とは異なる長さになるように形成されている。具体的には、二つの基準穴38,38間の距離L1の方が、二つのハウジング固定穴37,37間の距離L2よりも長くなっている。また、基準穴38の内径は、ハウジング固定用ピン101が嵌合されて、がたつきのない状態でハウジング30を固定治具100に固定できる寸法に形成されている。基準穴38は、ハウジング固定穴37よりも大径に形成されている。具体的には、ハウジング固定穴37のねじ山の頂部の内径(雌ねじの内側の内周径)が、基準穴38の内周径よりも大きくなっている。
【0038】
フランジ部36の外形は、ハウジング固定穴37の周囲部から開口縁部35の上下の出隅部(ハウジング固定穴37に近い側の上下の出隅部)に直線状に延在する形状を呈している。フランジ部36のハウジング固定穴37と出隅部との間、および基準穴38と出隅部との間は、軽量化のためにそれぞれ肉抜きされている。
【0039】
次に、液圧制御装置の製造方法を説明する。この製造方法では、まず、ハウジング30に、ハウジング固定穴37と基準穴38とを互いに並列して設ける。(穴形成工程)。その後に、ハウジング30に電気部品50を組み付けて装着する組付工程となる。この組付工程は、電気部品組立体51を固定治具100に仮固定する仮固定工程と、ハウジング30を固定治具100に仮固定する仮固定工程と、電気部品組立体51とハウジング30を固定する固定工程とを備えている。ハウジング30に電気部品50を装着するに際しては、図5に示すように、固定治具100を用いる。なお、図5の断面図は図4のB−B線で切断した面を示している。固定治具100は、基部102と、基部102から延出するハウジング固定用ピン101および電気部品組立体固定用ピン103とを備えて構成されている。ハウジング固定用ピン101と電気部品組立体固定用ピン103は、それぞれ基部102に一体的に形成されている。まず、固定治具100を平らな作業台上に載置した後、電気部品組立体固定用ピン103に電気部品組立体51を装着して(電気部品組立体の仮固定工程)、その後、ハウジング固定用ピン101にハウジング30を装着して(ハウジングの仮固定工程)、電気部品組立体51とハウジング30を一体的に仮固定する。
【0040】
このとき、ハウジング固定用ピン101は、基準穴38に嵌合されつつ挿入されることで、ハウジング30ががたつくことなく、ハウジング30を精度良く仮固定することができる。また、基準穴38がハウジング固定穴37よりも大径に形成されているので、ハウジング30を固定治具100に仮固定する際に、ハウジング固定用ピン101が間違ってハウジング固定穴37に挿入されることがなく、確実に各基準穴38に挿入される。これによって、ハウジング30の仮固定の位置決めを容易に行うことができるとともに、ハウジング固定穴37の雌ねじを変形させることはない。さらに、二つのハウジング固定穴37,37間の距離L2と、二つの基準穴38,38間の距離L1とは異なる長さになっていることによっても、一対のハウジング固定用ピン101が間違ってハウジング固定穴37,37に挿入されることがなく、確実に各基準穴に挿入されるので、ハウジング30の仮固定の位置決めを容易に行うことができる。また、ハウジング固定用ピン101と電気部品組立体固定用ピン103が、それぞれ基部102に一体的に形成されているので、位置精度が高く、ハウジング30と電気部品組立体51を容易に且つ正確に仮固定できる。したがって、組付工程における仮固定の容易性と組付け精度を高めることができる。
【0041】
その後、電気部品組立体固定用ピン103に装着された電気部品組立体51の接続端子(図示せず)とハウジング30の接続端子(図示せず)とを、溶接して固定する(固定工程)。このとき、電気部品組立体51は、固定治具100に精度良く一体的に仮固定されているので、ハウジング30への組付け精度を向上することができる。その後、制御ユニット52等を取り付け、蓋体34を取り付けて部品の取り付けが完了する。
【0042】
次に、ハウジング30およびモータ60を基体10に固定する工程を説明する。図2に示すように、ハウジング30を基体10に固定するに際しては、基体10の一面11に、電磁弁(図示せず)やリザーバ(図示せず)を装着した後に、これらを覆うように、ハウジング30を基体10の一面11に当接させる。そして、基体10の厚さよりも長いハウジング固定ネジ80を、基体10の背面12側からハウジング取付用貫通孔15に貫通させて、その先端をハウジング30のハウジング固定穴37に挿入して螺合させて締め付ける。これによって、ハウジング30が基体10に引き付けられて固定される。
【0043】
その後、モータ60を基体の背面12に当接させて、モータ固定ネジ81を、背面12側からモータ取付用貫通孔62に貫通させてモータ固定穴16に螺合させて締め付ける。これによって、モータ60が基体10に引き付けられて固定される。
【0044】
以上のように、モータ固定ネジ81とハウジング固定ネジ80を同じ方向から締め付けることで、効率的な作業を行うことができる。また、背面12側からハウジング固定ネジ80を挿入しているので、ハウジング30の基体10に対向する面内にハウジング固定穴37を形成できる。したがって、一面11側からネジを挿入する場合(ネジの締付スペースを確保するために、ネジをハウジング30の外周部より外側に設けなければならない)と比べると、ハウジングおよび液圧制御装置の小型化を達成できる。さらに、ハウジング固定ネジ80をモータ側から基体10を貫通してハウジング30に固定する構造では、ハウジング固定穴37にネジ加工が施されているため基準穴として用いることはできないものの、前記構成によれば基準穴38を効果的に設けることができる。
【0045】
以上のような構成のおよび製造方法によれば、基準穴38をハウジング固定穴37と別途に設けているので、固定治具100のハウジング固定用ピン101をハウジング固定穴37の雌ねじに接触させることなく、比較的簡単な構成の固定治具100を用いて精度良くハウジング30を仮固定できる。また、フランジ部36に基準穴38を形成して肉抜きすることで、肉厚のバランスが良好になりハウジング30の樹脂形成時のヒケにおける収縮バランスをとることができる。
【0046】
また、本実施形態では、基準穴38が、ハウジング固定穴37がオフセットしたことで空いたスペースにそれぞれ形成されているので、基準穴38のためにわざわざフランジ部36を大型化しなくて済む。したがって、ハウジング30の大型化を防止できる。
【0047】
さらに、本実施形態では、二つのハウジング取付用貫通孔15,15と二つのモータ固定穴16,16とが、長方形の対角をそれぞれ構成するように配置されているので、左右方向および上下方向においても重量的にバランスが良好に保持される。これによって、耐振動性の向上が図れるとともに、ハウジング30の小型化が図れる。
【0048】
また、ハウジング固定穴37と基準穴38を別個に設けているので、例えば、これらを同じ穴に直列形成した場合(穴の奥側にハウジング固定穴として雌ねじを形成し、手前側に雌ねじのない基準穴を形成した場合)と比較して、穴の軸長を短くできる。これによって、ハウジング30の厚さ(穴の軸長方向長さ)を小さくできるので、ハウジング30の小型化が図れる。
【0049】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、開口部33aが正方形に形成されているが、これに限定されるものではなく、中心から周縁部までの距離寸法のバラツキが少なければ長方形またはその他の形状であってもよい。たとえば、筒状部分が、円形枠状または楕円形枠状であってもよい。
【0050】
さらに、前記実施形態では、基準穴38の位置は、開口縁部35の上下方向に延在する辺の長手方向中心の高さとなっているが、これに限定されるものではない。ハウジング固定穴37と干渉せずに、フランジ部36の面内に収まる位置であれば、長手方向中心よりも上方でも下方であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 液圧制御装置
10 基体
11 一面
12 背面
30 ハウジング
33a 開口部
35 開口縁部
36 フランジ部
37 ハウジング固定穴
38 基準穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、この基体の一面に固定されるハウジングとを備える液圧制御装置であって、
前記ハウジングには、前記基体の前記一面に臨む開口部が形成されており、
前記開口部の開口縁部には、フランジ部が外方に突出して形成されており、
前記フランジ部には、締結手段を介して前記基体に固定するためのネジ加工が施されたハウジング固定穴が設けられるとともに、前記ハウジングに部品を組み付ける際に前記ハウジングを仮固定するための基準穴が前記フランジ部を肉抜きして前記ハウジング固定穴と並列して設けられている
ことを特徴とする液圧制御装置。
【請求項2】
前記開口部は、略矩形形状を呈しており、
前記開口部の互いに対向する二辺の外側に位置する一対のフランジ部のそれぞれに前記ハウジング固定穴および前記基準穴が設けられており、
前記ハウジング固定穴は、前記フランジ部の辺の中心からその長手方向に沿ってオフセットした位置にそれぞれ形成され、
前記基準穴は、前記一対のフランジ部で前記ハウジング固定穴よりも前記辺の中心側にそれぞれ形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の液圧制御装置。
【請求項3】
互いに対向する二つの前記ハウジング固定穴間の距離と、互いに対向する二つの前記基準穴間の距離とは異なる長さになるように形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液圧制御装置。
【請求項4】
前記基準穴は、前記ハウジング固定穴よりも大径に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液圧制御装置。
【請求項5】
前記基体の前記一面に対する背面に固定されたモータを備え、
前記モータは、当該モータ側から装着されるモータ固定ネジによって前記基体に固定されており、
前記ハウジングを前記基体に固定するためのハウジング固定ネジは、前記基体の前記背面側から前記一面側に向かって貫通して挿入されて、前記ハウジング固定穴に螺合される
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液圧制御装置。
【請求項6】
基体と、基体の一面に固定されるハウジングとを備えた液圧制御装置の製造方法であって、
前記ハウジングに、前記基体に固定するためのネジ加工が施されたハウジング固定穴と、前記ハウジングに部品を組み付ける際に前記ハウジングを仮固定するための基準穴とを、互いに並列して設ける工程と、
固定治具の部品用のピンに前記部品を装着して仮固定する工程と、
固定治具のハウジング用のピンを前記基準穴に挿入して前記ハウジングを仮固定する工程と、
前記ハウジングと前記部品を前記固定治具に仮固定した状態で、前記ハウジングの接続端子と前記部品の接続端子とを接続して固定する工程と、を備えた
ことを特徴とする液圧制御装置の製造方法。
【請求項7】
前記固定治具は、部品用の前記ピンとハウジング用の前記ピンとが前記固定治具の基部に一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の液圧制御装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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