説明

液晶ディスプレイ用基板及びその製造方法

【課題】 本発明は、耐熱性、光学特性に優れた液晶ディスプレイ用基板を提供することを目的とするものであり、さらに詳しくは、耐熱性が必要とされる液晶層を支持する基材上に透明性と耐熱性に優れた特定のマレイミド系樹脂層を含み、耐熱性を有しかつ面外位相差量Rthを有する液晶ディスプレイ用基板を提供する。
【解決手段】 無機ガラスあるいはポリマーフィルム基材上に、一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位よりなるマレイミド系樹脂層を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が必要とされる液晶層を支持する特定の基材上に透明性と耐熱性に優れかつ位相差特性を発現する特定のマレイミド系樹脂層からなるインセル型位相差層を含み面外位相差量(以下Rthと称する)を発現する液晶ディスプレイ用基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、携帯電話からコンピューター用モニター、ノートパソコン、テレビまで幅広く使用されている。液晶ディスプレイには表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられている。
【0003】
特に光学補償フィルムは、正面や斜めから見た場合のコントラスト向上、色調の補償などに大きな役割を果たしている。従来の光学補償フィルムとしては、ポリカーボネートや環状ポリオレフィン、セルロース系樹脂の二軸延伸フィルムが用いられている。これらのフィルムには二軸延伸工程が必要となること、同延伸工程での位相差の均一性を求めることが困難となる、等の課題がある。また、特に大面積のフィルムにおいては、二軸延伸により発現する位相差の制御を行うことがよりいっそう困難となる。
【0004】
この延伸による課題を解決する方法として、塗工(コーティング)により未延伸での光学補償機能を発現させる光学補償膜の検討がなされている。
【0005】
アクロン大学のハリス及びチェンは、剛直棒状のポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(アミド−イミド)、ポリ(エステル−イミド)よりなる光学補償膜を提案しており(例えば特許文献1,2参照。)、これらの材料は、自発的な分子配向性を有していることから塗工により延伸工程を経ることなく位相差を発現するという特徴がある。
【0006】
更に、ポリイミドの塗工性(溶剤への溶解性)を向上したポリイミドからなる光学補償膜(例えば特許文献3参照。)、芳香族ポリイミドの屈折率の波長依存性が急峻であることを原料であるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの少なくともいずれか一方を脂環式化合物とすることで光吸収性や透明性を改良した光学補償膜(例えば特許文献4参照)、ディスコティック液晶化合物を偏光板の保護フィルムに塗工した偏光板(例えば特許文献5参照)等が提案されている。
【0007】
また、フェニルマレイミド−イソブテン共重合体からなる延伸フィルム(例えば特許文献6参照。)が提案されている。
【0008】
また、液晶ディスプレイにおける液晶層を光学的に補償するための位相差フィルムや偏光板などのフィルムは従来より液晶層を挟むガラスセルの外側に粘着剤などを用いて積層されてきた。しかし、実用環境におけるバックライトの熱や応力などによってこれらのフィルムが膨張や収縮などの変形歪を生じる際に複屈折が大きく変化するために液晶ディスプレイの画質が低下する問題が指摘されている。特に画面が大きい液晶ディスプレイにおいてこの問題が顕著であり、液晶ディスプレイ画面の周囲部分において額縁ムラと称する画質低下が顕著に生じることが知られている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5344916号公報
【特許文献2】特表平10−508048号公報
【特許文献3】特開2005−070745号公報
【特許文献4】特開2008−107766号公報
【特許文献5】特許第2565644号公報
【特許文献6】特開2004−269842号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】及川、豊岡、渡部、安田、竹内、酒井、Fujifilm Research & Development No.51−2006、p59−62(p61左側、第3段落に記述)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1〜4において提案された方法で用いられるポリマーは、芳香族ポリマーであることから位相差の波長依存性が大きく、液晶表示素子の光学補償膜として用いた場合に色ずれなど画質低下の課題を有するものであった。
【0012】
また、特許文献5に提案されているディスコティック液晶化合物を用いる方法は、液晶化合物を均一に配向させることが必要となり塗工プロセスが煩雑化する、配向ムラが大きい等の課題を有するばかりか、該液晶化合物も芳香族化合物が主体となることから位相差の波長依存性が大きいという品質上の課題も有するものであった。
【0013】
特許文献6で得られる延伸フィルムは、塗工するだけでは位相差は発現しない(nx=ny=nz)。
【0014】
そこで、本発明は、耐熱性、光学特性に優れた液晶ディスプレイ用基板を提供することを目的とするものであり、さらに詳しくは、耐熱性が必要とされる液晶層を支持する特定の基材上に透明性に優れた特定のマレイミド系樹脂層を含みRthを発現するインセル型位相差層を形成した液晶ディスプレイ用基板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、耐熱性が必要とされる液晶層を支持するための特定の基材上に透明耐熱性に優れた特定のマレイミド系樹脂層を含み面外位相差量(Rth)を発現するインセル型位相差層を形成した液晶ディスプレイ用基板およびその製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明は、無機ガラスあるいはポリマーフィルム基材上に、下記一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位よりなるマレイミド系樹脂層を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ用基板およびその製造方法に関するものである。
【0017】
【化1】

【0018】
(ここで、Rは、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基,炭素数1〜4の分岐状アルキル基、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、アミド基を示す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の液晶ディスプレイ用基板に用いる基材は無機ガラスあるいはポリマーフィルムである。
【0020】
無機ガラスとしては、例えばアルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられ、表面に赤、青、緑の各色素による2次元マトリクスカラーフィルター層が構成されている無機ガラスであってもよい。
【0021】
ポリマーフィルムとしてはガラス転移温度が180℃以上を有する透明性ポリマーフィルムが好ましく、例えばフマル酸エステル重合体フィルム、フマル酸エステル残基を主成分とする共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、セルロースフィルム等が挙げられる。ポリマーフィルムとしては、可塑剤、紫外線安定剤などの添加剤の他に複屈折を制御するための複屈折向上剤などの公知の添加剤を配合したものでも良い。
【0022】
本発明の液晶ディスプレイ用基板におけるマレイミド系樹脂層に用いるマレイミド系樹脂は上記一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位よりなるものである。
【0023】
一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位におけるRは、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基,炭素数1〜4の分岐状アルキル基、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、アミド基であり、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の分岐状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、ハロゲン基としては、例えば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等があげられる。
【0024】
一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位の具体的例示としては、例えば、N−メチルマレイミド残基単位、N−エチルマレイミド残基単位、N−クロロエチルマレイミド残基単位、N−メトキシエチルマレイミド残基単位、N−n−プロピルマレイミド残基単位、N−イソプロピルマレイミド残基単位、N−n−ブチルマレイミド残基単位、N−イソブチルマレイミド残基単位、N−s−ブチルマレイミド残基単位、N−t−ブチルマレイミド残基単位等の1種又は2種以上が挙げられ、特に位相差が発現しやすく、耐熱性、溶剤への溶解性、機械的強度に優れる液晶ディスプレイ用基板となることから、N−メチルマレイミド残基単位、N−エチルマレイミド残基単位、N−n−ブチルマレイミド残基単位、N−イソブチルマレイミド残基単位、N−s−ブチルマレイミド残基単位、N−t−ブチルマレイミド残基単位が好ましい。
【0025】
具体的なマレイミド系樹脂としては、例えばN−メチルマレイミド重合体樹脂、N−エチルマレイミド重合体樹脂、N−クロロエチルマレイミド重合体樹脂、N−メトキシエチルマレイミド重合体樹脂、N−n−プロピルマレイミド重合体樹脂、N−イソプロピルマレイミド重合体樹脂、N−n−ブチルマレイミド重合体樹脂、N−イソブチルマレイミド重合体樹脂、N−s−ブチルマレイミド重合体樹脂、N−t−ブチルマレイミド重合体樹脂、等を挙げることができる。
【0026】
また、マレイミド系樹脂は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいてN−置換マレイミド残基単位以外の残基単位を含有するものであってもよく、該残基単位としては、例えば無水マレイン酸残基単位;スチレン残基単位、α−メチルスチレン残基単位等のスチレン類残基単位;アクリル酸残基単位;アクリル酸メチル残基単位、アクリル酸エチル残基単位、アクリル酸ブチル残基単位等のアクリル酸エステル残基単位;メタクリル酸残基単位;メタクリル酸メチル残基単位、メタクリル酸エチル残基単位、メタクリル酸ブチル残基単位等のメタクリル酸エステル残基単位;酢酸ビニル残基単位、プロピオン酸ビニル残基単位、ピバリン酸ビニル残基単位、ラウリン酸ビニル残基単位、ステアリン酸ビニル残基単位等のビニルエステル類残基単位;アクリロニトリル残基単位;メタクリロニトリル残基単位等の1種又は2種以上を挙げることができ、特に好ましくは無水マレイン酸残基単位である。
【0027】
具体的な無水マレイン酸残基単位を有するマレイミド系樹脂であるN−置換マレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂としては、例えばN−メチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−エチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−クロロエチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−メトキシエチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−n−プロピルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−イソプロピルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−n−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−イソブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−s−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−t−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂等を挙げることができる。
【0028】
その中でも、特に製膜時の成膜性に優れ、光学補償機能、耐熱性を有する液晶ディスプレイ用基板となることからN−n−メチルマレイミド重合体樹脂、N−n−エチルマレイミド重合体樹脂、N−n−エチルマレイミド−N−n−ブチルマレイミド共重合体樹脂、N−n−メチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−エチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−n−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂、N−t−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂等が好ましい。
【0029】
また、本発明の液晶ディスプレイ用基板におけるマレイミド系樹脂層に用いるマレイミド系樹脂としては、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10以上のものであることが好ましく、特に耐熱性、機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れた液晶ディスプレイ用基板となることから2×10以上2×10以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の液晶ディスプレイ用基板におけるマレイミド系樹脂層に用いるマレイミド系樹脂の製造方法としては、該マレイミド系樹脂が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、例えばN−置換マレイミド類、場合によってはN−置換マレイミド類と共重合可能な単量体を併用しラジカル重合あるいはラジカル共重合を行うことにより製造することができる。この際のN−置換マレイミド類としては、例えばN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−クロロエチルマレイミド、N−メトキシエチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等の1種又は2種以上が挙げられ、共重合可能な単量体としては、例えば無水マレイン酸;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル等の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0031】
また、ラジカル重合法としては、公知の重合方法で行うことが可能であり、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法等のいずれもが採用可能である。
【0032】
ラジカル重合法を行う際の重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0033】
そして、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法において使用可能な溶媒として特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;シクロヘキサン;ジオキサン;テトラヒドロフラン(THF);アセトン;メチルエチルケトン;ジメチルホルムアミド;酢酸イソプロピル;水;N−メチルピロリドン等が挙げられ、これらの混合溶媒も挙げられる。
【0034】
また、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0035】
本発明の液晶ディスプレイ用基板は、無機ガラスあるいはポリマーフィルム基材上に、上記一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位よりなるマレイミド系樹脂層を含む基板であり、好ましい製造方法としては、例えば無機ガラスあるいはポリマーフィルム基材上に上記一般式(1)で示されるマレイミド系樹脂からなる溶液を塗工し、乾燥することで塗工膜(マレイミド系樹脂層)を形成する方法が挙げられる。
【0036】
ここで、使用する溶媒としては、マレイミド系樹脂が溶解可能であれば特に制限はなく、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン等の炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等の塩素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;N−メチルピロリドン等が挙げられ、これらは2種類以上組み合わせて用いることが出来る。該マレイミド系樹脂と溶剤からなる溶液の塗工においては、より容易に高い透明性を有し、且つ厚み精度、表面平滑性に優れた液晶ディスプレイ用基板が得られることから、溶液粘度を0.1〜2000cpsとすることが好ましく、特に1〜1000cpsとすることが好ましい。
【0037】
該マレイミド系樹脂を塗工する方法としては、マレイミド系樹脂を予め溶剤に溶解させた溶液を基材上に塗工後、加熱等により溶媒を除去する方法がある。その際の塗工方法としては、例えばスピンコーター法、ドクターブレード法、バーコーター法、グラビアコーター法、スロットダイコーター法、リップコーター法、コンマコーター法等が用いられる。工業的には薄膜塗工はスピンコーター法、グラビアコーター法およびスリットダイコーター法、厚膜塗工はコンマコーター法が一般的である。
【0038】
該マレイミド系樹脂溶液からなる塗工層の厚みは、位相差性能の発現、厚さ均一性および加工性に優れた液晶ディスプレイ用基板となることから15μm以下が好ましく、特に2〜15μmが好ましい。
【0039】
該マレイミド系樹脂溶液からなる塗工膜を乾燥する方法としては、例えばバッチ式オーブン、防爆送風乾燥機、連続製膜における連続乾燥炉などが挙げられる。
【0040】
本発明の液晶ディスプレイ用基板は、優れた光学補償性能を有する基板となることから、マレイミド系樹脂層の面内で直交する任意の2軸をx軸、y軸とし、面外方向をz軸とし、x軸方向の屈折率をnx、y軸方向の屈折率をny、z軸方向の屈折率をnzとした際の3次元屈折率関係がnx=ny>nzであることが好ましい。
【0041】
一般に高分子よりなるフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、フィルムを延伸することで3次元屈折率の制御を行うが、我々は本発明の液晶ディスプレイ用基板に用いる特定の透明耐熱性を有するマレイミド系樹脂層が、延伸しなくても膜の厚み方向の屈折率が小さくなるという特異な挙動を有し、無機ガラスあるいはポリマーフィルムとして作成される液晶表示素子用基板、カラーフィルター基材或いはTFT基板などの耐熱性が要求される液晶層を支持するための基板上に特定の透明耐熱性を有するマレイミド系樹脂層からなる薄膜を形成することで大きな面外位相差量Rthを発現させることができることを見出した。
【0042】
本発明の液晶ディスプレイ用基板は、測定波長550nmの光で測定した際の下記式(2)で示される面外位相差量(Rth)が30nm以上が好ましく、30〜2000nmの範囲にあることが好ましく、さらに30〜1000nm、特に30〜500nmであることが好ましい。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d (2)
(ここで、dは基板におけるマレイミド系樹脂層の厚み(nm)を示す。)
面外位相差量(Rth)は、マレイミド系樹脂の塗工膜の膜厚さにより容易に制御することが可能である。
【0043】
本発明の液晶ディスプレイ用基板は、測定波長550nmの光で測定した際の下記式(3)で示される面内位相差量(Re)が0〜150nmの範囲にあることが好ましい。
Re=(nx−ny)×d (3)
(ここで、dは基板におけるマレイミド系樹脂層の厚み(nm)を示す)
本発明の液晶ディスプレイ用基板は、液晶表示素子に用いた際に画質の特性が良好なものとなることから、JIS K 7361−1(1997年版)を準拠し測定した液晶ディスプレイ用基板の光線透過率が85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。また、JIS K 7136(2000年版)を準拠し測定したヘーズ(曇り度)が2%以下であることが好ましく、特に1%以下であることが好ましい。
【0044】
本発明の液晶ディスプレイ用基板におけるマレイミド系樹脂層は熱安定性を高めるために酸化防止剤が配合されていても良い。該酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独又は併用しても良い。そして、相乗的に酸化防止作用が向上することからヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用して用いることが好ましく、その際には例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤100重量部に対してリン系酸化防止剤を100〜500重量部で混合して使用することが特に好ましい。また、酸化防止剤の添加量としては、本発明の液晶ディスプレイ用基板におけるマレイミド系樹脂層を構成するマレイミド系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、特に0.5〜1重量部の範囲であることが好ましい。
【0045】
さらに、紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を必要に応じて配合していてもよい。
【0046】
本発明の液晶ディスプレイ用基板を構成するマレイミド系樹脂層は、発明の主旨を越えない範囲で、その他ポリマー、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、滑剤等が配合されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明のインセル型位相差層を形成した液晶ディスプレイ用基板およびその製造方法は液晶表示素子、特にVAモードの液晶テレビのコントラストや視角特性の改良に有用なものである。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0049】
〜マレイミド系樹脂層を構成するマレイミド系樹脂の数平均分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC−802A)を用い、ジメチルホルムアミドを溶剤とし標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0050】
〜ガラス転移温度の測定〜
示差走査型熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名DSC2000)を用い、10℃/min.の昇温速度にて測定した。
【0051】
〜光線透過率の測定〜
透明性の一評価として、JIS K 7361−1(1997年版)に準拠して光線透過率の測定を行った。
【0052】
〜ヘーズの測定〜
透明性の一評価として、JIS K 7136(2000年版)に準拠してヘーズの測定を行った。
【0053】
〜屈折率の測定〜
JIS K 7142(1981年版)に準拠してアッベ屈折率計(アタゴ製)を用いて、屈折率を測定した。
【0054】
〜3次元屈折率の計算〜
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器(株)製、商品名KOBRA−WR)を用いて仰角を変えて測定波長550nmの光で面内位相差量(Re)ならびに3次元屈折率を測定した。さらに、3次元屈折率より面外位相差量(Rth)、面内位相差量(Re)を算出した。
【0055】
合成例1(N−n−ブチルマレイミド重合体樹脂の製造例)
ガラス封管中に、N−n−ブチルマレイミド32.4g、重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.054gを仕込み、窒素置換後、重合温度60℃、重合時間5時間の条件にてラジカル重合反応を行なった。反応後、クロロホルムを加えポリマー溶液とした後に、過剰のメタノールと混合することにより重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥し20gのN−n−ブチルマレイミド重合体樹脂を得た。得られたN−n−ブチルマレイミド重合体樹脂の数平均分子量は120,000であった。また、ガラス転移温度(以下、Tgと称する)は185℃であった。
【0056】
合成例2(N−エチルマレイミド重合体樹脂の製造例)
ガラス封管中に、N−エチルマレイミド40g、重合開始剤として、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.05gを仕込み、窒素置換後、重合温度60℃、重合時間5時間の条件にてラジカル重合反応を行なった。反応後、クロロホルムを加えポリマー溶液とした後に、過剰のメタノールと混合することにより重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥し32gのN−エチルマレイミド重合体樹脂を得た。得られたN−エチルマレイミド重合体樹脂の数平均分子量は110,000であった。また、Tgは258℃であった。
【0057】
合成例3(N−n−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂の製造例)
ガラス封管中に、N−n−ブチルマレイミド19g、無水マレイン酸2.4g、重合開始剤として、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.036gを仕込み、窒素置換後、重合温度60℃、重合時間5時間の条件にてラジカル重合反応を行なった。反応後、クロロホルムを加えポリマー溶液とした後に、過剰のメタノールと混合することにより重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥し19gのN−n−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂を得た。得られたN−n−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂は、無水マレイン酸残基を20重量%含有するものであり、数平均分子量は120000であった。また、Tgは200℃であった。
【0058】
合成例4(N−エチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂の製造例)
ガラス封管中に、N−エチルマレイミド16g、無水マレイン酸2.4g、重合開始剤として、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.036gを仕込み、窒素置換後、重合温度60℃、重合時間5時間の条件にてラジカル重合反応を行なった。反応後、クロロホルムを加えポリマー溶液とした後に、過剰のメタノールと混合することにより重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥し19gのN−エチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂を得た。得られたN−エチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂は、無水マレイン酸残基を20重量%含有するものであり、数平均分子量は120000であった。また、Tgは268℃であった。
【0059】
合成例5(N−n−ヘキシルマレイミド重合体樹脂の製造例)
ガラス封管中に、N−n−ヘキシルマレイミド40g、重合開始剤として、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.05gを仕込み、窒素置換後、重合温度60℃、重合時間5時間の条件にてラジカル重合反応を行なった。反応後、クロロホルムを加えポリマー溶液とした後に、過剰のメタノールと混合することにより重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥し32gのN−n−ヘキシルマレイミド重合体樹脂を得た。得られたN−n−ヘキシルマレイミド重合体樹脂の数平均分子量は160,000であった。また、Tgは148℃であった。
【0060】
合成例6(N−n−オクチルマレイミド重合体樹脂の製造例)
ガラス封管中に、N−n−オクチルマレイミド28g、重合開始剤として、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.032gを仕込み、窒素置換後、重合温度60℃、重合時間5時間の条件にてラジカル重合反応を行なった。反応後、クロロホルムを加えポリマー溶液とした後に、過剰のメタノールと混合することにより重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥し15gのN−n−オクチルマレイミド重合体樹脂を得た。得られたN−n−オクチルマレイミド重合体樹脂の数平均分子量は270,000であった。また、Tgは138℃であった。
【0061】
合成例7(N−n−オクチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂の製造例)
ガラス封管中に、N−n−オクチルマレイミド26g、無水マレイン酸2.4g、重合開始剤として、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.036gを仕込み、窒素置換後、重合温度60℃、重合時間5時間の条件にてラジカル重合反応を行なった。反応後、クロロホルムを加えポリマー溶液とした後に、過剰のメタノールと混合することにより重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥し19gのN−n−オクチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂を得た。得られたN−n−オクチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂は、無水マレイン酸残基を20重量%含有するものであり、数平均分子量は120000であった。また、Tgは150℃であった。
【0062】
実施例1
合成例1で得られたN−n−ブチルマレイミド重合体樹脂を50重量部のトルエンと50重量部のメチルエチルケトンからなる混合溶剤に溶解し、10重量%の樹脂固形分溶液を調整し、スピンコーターを用いて250mm×250mm、厚み500μmの無アルカリガラス基材上に塗工し、50℃にて12時間、130℃にて12時間乾燥することで厚さ13μmの塗工膜(マレイミド系樹脂層)を1層形成した。得られた光学薄膜(基板+マレイミド樹脂層)の外観は良好であり、光学特性として、光線透過率91%、ヘーズ0.7%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51649、ny=1.51649、nz=1.50872であった。面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+101nmであり、加熱処理条件として180℃X10min.において加熱しても位相差量は変化せず良好であり、液晶ディスプレイ基板に適したものである。
【0063】
実施例2
実施例1において厚さ3μmの塗工膜を形成した。得られた光学薄膜の外観は良好であり、光学特性として、光線透過率91%、ヘーズ0.3%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51746、ny=1.51746、nz=1.50679であった。面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+32nmであり、加熱処理条件として180℃X10min.において加熱しても位相差量は変化せず良好であり、液晶ディスプレイ基板に適したものである。
【0064】
実施例3
合成例2で得られたN−n−エチルマレイミド重合体樹脂を用い、溶剤としてクロロホルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ7μmの塗工膜1層を形成した。得られた光学薄膜の外観は良好であり、光線透過率91%、ヘーズ0.5%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51723、ny=1.51723、nz=1.50723であった。光学特性として、面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+70nmであり、また更に加熱処理条件として180℃X10min.において加熱しても位相差量は変化せず良好であり、液晶ディスプレイ基板に適したものである。
【0065】
実施例4
実施例3において加熱処理条件を240℃x10min.とした以外は同様にして、厚さ7μmの塗工膜1層を形成した。得られた塗工膜の外観は良好であり、光学特性として、光線透過率91%、ヘーズ0.5%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51723、ny=1.51723、nz=1.50723であった。面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+70nmであり、また更に加熱処理条件として180℃X10min.において加熱しても位相差量は変化せず良好であり、液晶ディスプレイ基板に適したものである。
【0066】
実施例5
合成例3で得られたN−n−ブチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂を用い、溶剤としてクロロホルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ13μmの塗工膜1層を形成した。得られた光学薄膜の外観は良好であり、光線透過率91%、ヘーズ0.6%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51700、ny=1.51700、nz=1.50769であった。光学特性として、面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+121nmであり、また更に加熱処理条件として180℃X10min.において加熱しても位相差量は変化せず良好であり、液晶ディスプレイ基板に適したものである。
【0067】
実施例6
合成例4で得られたN−エチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂を用い、溶剤として溶剤としてクロロホルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ7μmの塗工膜1層を形成した。得られた光学薄膜の外観は良好であり、光学特性として、光線透過率91%、ヘーズ0.4%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.52028、ny=1.52028、nz=1.50114であった。面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+134nmであり、また更に加熱処理条件として240℃X10min.において加熱しても位相差量は変化せず良好であり、液晶ディスプレイ基板に適したものである。
【0068】
実施例7
実施例1において塗工膜1層を形成した後、加熱処理条件として60℃一定条件に維持した場合と25℃に維持した場合、10℃に維持した場合それぞれの温度環境における位相差量は25℃を基準として60℃一定温度に保持した場合にはRe変化量(ΔRe)=0、Rth変化量(ΔRth)=+2nm、10℃一定温度に保持した場合にはΔRe=0nm、ΔRth=0nmであり、光線透過率91%、ヘーズ0.7%であり、液晶ディスプレイの実使用環境温度における光学特性の安定した光学補償機能を有する透明ガラス基板を得た。
【0069】
実施例8
実施例1において厚み500μmの無アルカリガラス基材の代わりにカラーフィルター層を有する無アルカリガラス基材を用いた。なお、カラーフィルター層を有する無機ガラス基材は以下のように作成した。
【0070】
カラーフィルター基材としては、無水ピロメリット酸(0.495モル当量)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(0.50モル当量)、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル(0.7モル当量)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(0.2モル当量)、ビス−(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(0.048モル当量)とをγ−ブチロラクトン中にて反応し、更に無水マレイン酸(0.02モルを加えて反応させることで25重量%ポリアミック酸溶液を調整し、更にγ−ブチロラクトンとエチレングリコールブチルエーテルを加えて、γ−ブチロラクトンとエチレングリコールブチルエーテル重量比率が5:1となるようにして画素用の10重量%ポリアミック酸溶液を調整した。
【0071】
赤色画素としてアントラキノンレッド1.3g、γ−ブチロラクトン12.8gおよびエチレングリコールブチルエーテル2gとをプライミクス社製フィルミクス56−50にて2500rpmにて10分間分散処理して赤色顔料分散溶液を調整した。
【0072】
緑色画素としてフタロシアニングリーンを1.12g、ベンジジンイエローを0.13g、γ−ブチロラクトン10gおよびエチレンギリコールブチルエーテル3.2gとをプライミクス社製フィルミクス56−50にて2500rpmにて10分間分散処理して緑色顔料分散溶液を調整した。
【0073】
青色画素としてフタロシアニンブルーを0.9g、N−メチルピロリドン10gおよびエチレンギリコールブチルエーテル3.2gとをプライミクス社製フィルミクス56−50にて2500rpmにて10分間分散処理して青色顔料分散溶液を調整した。
【0074】
赤、緑そして青色の各色カラーペーストとして上述の10重量%ポリアミック酸溶液と各顔料分散溶液をそれぞれプライミクス社製フィルミクス56−50にて2500rpmにて10分間分散処理して顔料ペーストを作成した。
【0075】
50mm×50mm角の無アルカリガラス基材上にそれぞれの顔料ペーストを塗工し、280℃加熱により硬化反応させて3色各1枚のカラーフィルター層を有するガラス基材を作成した。
【0076】
実施例1のガラス基材の代わりに3色各1枚のカラーフィルター層を有するガラス基材の上に厚さ13μmの塗工膜を1層形成した。得られた光学薄膜の外観は良好であり、光線透過率58%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51652、ny=1.51652、nz=1.50867であった。光学特性として、3枚ともに面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+102nmであり、加熱処理条件として180℃X10min.において加熱しても位相差量は変化せず良好であり、液晶ディスプレイ基板に適したものである。
【0077】
比較例1
実施例1においてN−n−ブチルマレイミド重合体樹脂の代わりに合成例5のN−n−ヘキシルマレイミド重合体樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ13μmの塗工膜1層を形成した。得られた光学薄膜の外観は良好であり、光学特性として、光線透過率91%、ヘーズ0.6%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51528、ny=1.51528、nz=1.51113であった。面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+54nmであったが、更に加熱処理条件として180℃X10min.において加熱したところ面外位相差量Rth=+5nmまで著しく低下した。よって、一般式(1)のRとして炭素数6のマレイミド系樹脂を用いたことから、耐熱性がなく面外位相差量が大きく低下し光学特性が不十分であった。
【0078】
比較例2
実施例1おいてN−n−ブチルマレイミド重合体樹脂の代わりに合成例6のN−n−オクチルマレイミド重合体樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ13μmの塗工膜1層を形成した。得られた光学薄膜の外観は良好であり、光学特性として、光線透過率90%、ヘーズ0.5%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51508、ny=1.51508、nz=1.51154であった。面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+46nmであった。しかしこれを加熱処理条件として180℃X10min.において加熱したところ面外位相差量Rth=+6nmまで著しく低下した。よって、一般式(1)のRとして炭素数6のマレイミド系樹脂を用いたことから、耐熱性がなく面外位相差量が大きく低下し光学特性が不十分であった。
【0079】
比較例3
実施例1おいてN−n−ブチルマレイミド重合体樹脂の代わりに合成例7のN−n−オクチルマレイミド−無水マレイン酸共重合体樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ13μmの塗工膜1層を形成した。得られた光学薄膜の光学特性として、光線透過率91%、ヘーズ0.5%であり、光学薄膜の3次元屈折率の関係はnx=ny>nzであり、それぞれnx=1.51523、ny=1.51523、nz=1.51123であった。面内位相差量Re=0nm、面外位相差量Rth=+52nmであった。しかしこれを加熱処理条件として180℃X10min.において加熱したところ面外位相差量Rth=+7nmまで著しく低下低下した。よって、一般式(1)のRとして炭素数8のマレイミド系樹脂を用いたことから、耐熱性がなく面外位相差量が大きく低下し光学特性が不十分であった。
【0080】
以上の評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機ガラスあるいはポリマーフィルム基材上に、下記一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位よりなるマレイミド系樹脂層を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ用基板。
【化1】

(ここで、Rは、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基,炭素数1〜4分岐状アルキル基、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、アミド基を示す。)
【請求項2】
基材が無機ガラスであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ用基板。
【請求項3】
測定波長550nmの光で測定した際の下記式(2)で示される面外位相差量(Rth)が30〜2000nmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶ディスプレイ用基板。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d (2)
(ここで、dは基板におけるマレイミド層の厚み(nm)を示す。)
【請求項4】
表面に赤、青、緑の各色素による2次元マトリクスカラーフィルター層が構成されている基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ディスプレイ用基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ディスプレイ用基板を用いた液晶表示装置。
【請求項6】
無機ガラスあるいはポリマーフィルム基材上に上記一般式(1)で示されるN−置換マレイミド残基単位よりなるマレイミド系樹脂からなる溶液を塗工し、乾燥することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ディスプレイ用基板の製造方法。

【公開番号】特開2011−128480(P2011−128480A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288731(P2009−288731)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】