説明

液晶光学素子とその製造方法

【課題】液晶層とシールとの接触を防ぐ隔壁を精度良く形成し、シールによる液晶の汚染を抑えることを可能とする液晶光学素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】液晶光学素子10は、第1の透明基板50と第2の透明基板51が、内側面に形成された透明電極60、61が対向するようにシール70を介して貼り合わされた構成を有する。第1の透明基板50上には透明電極60と配向膜40が形成されており、第2の透明基板51上にはインプリント樹脂層30として隔壁35とフレネルレンズ100がインプリント工程にて一体に形成されており、インプリント樹脂層30の上に透明電極41と配向膜61が形成されている。隔壁35の内側には液晶20が充填されていて、隔壁35により液晶とシールの接触を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を用いて光学特性を可変とした液晶光学素子とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電極が形成された透明基板どうしをシールで接着し、液晶層を封入した構成による液晶光学素子が知られている。液晶光学素子は、印加する電圧を変更することで液晶の配向を変化させて屈折率を制御することにより、光学特性を可変としたものである。この液晶光学素子として、印加する電圧により焦点距離を制御することができる液晶レンズが知られている。液晶レンズには、輪帯状にパターニングされた透明電極を備える方式やフレネルレンズなどの光学形状の構造をセル内に備える方式などがある。
【0003】
液晶光学素子の液晶セルの作製に伴う液晶の封入方法としては、大きく分けて2種類存在する。一つは、シールの塗布後に透明基板同士での貼り合せを行いUV照射または焼成によってシールを硬化させた後に、液晶セルを個別サイズに分割し、注入口を真空状態で液晶に浸して毛細管現象により液晶を注入する真空注入方式である。
もう一つは、透明基板にシール塗布した後に液晶を滴下し、真空状態で透明基板同士を貼り合せ、その後にUV照射を行ってシールを硬化させるODF(One Drop Fill,One Drop Filling)方式である。
【0004】
製造プロセスの簡略化、製造時間の短縮化、原材料使用量の削減等の効果により、ODF方式が現在注目を集めている。しかしながら、ODF方式の場合、硬化前のシールと液晶とが触れてしまうため、シールと液晶の相溶性によっては、シールと液晶とが混ざり合う、シールから液晶への不純性イオンが流入するといったことにより、液晶材料の特性劣化し液晶の配向が乱れるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、このようなシールによる液晶への汚染を防ぐために、液晶層とシールとを隔てる隔壁を設ける構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、隔壁を形成する方法として、スピンコートにより樹脂材料を所定の厚さで塗布した後にフォトリソグラフィーによりパターン形成する方法と、スクリーン印刷により形成する方法とが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−26566号公報(第6−11頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来技術による隔壁の形成方法では以下のような問題がある。まず、スピンコートにより樹脂材料を塗布した後にフォトリソグラフィーにより隔壁をパターン形成する方法では、隔壁を均一な厚みで精度良く形成することが困難である。例えば20μm程度の厚みを均一に形成することは、特に困難である。
【0008】
透明基板どうしの間隔(セルギャップ)は隔壁の厚みにより規定される。このため、隔壁の厚みが不均一となることにより、セルギャップが場所により異なって液晶セルの面精度が悪くなってしまう。また、透明基板と隔壁との間に生じた隙間を通じて液晶とシールとが触れてしまい、液晶が汚染してしまう問題がある。
【0009】
また、スクリーン印刷により隔壁を形成する方法では、隔壁の形状(幅、高さ、断面形状)を精度よく形成することができない。ODF方式では、隔壁の内側の体積に応じた量の液晶を滴下する必要がある。このため、隔壁が精度良く形成されないことにより液晶の最適な滴下量が定まらない。最適な量の液晶が滴下されないことにより、液晶セルの面精度の悪化、気泡の発生、シールの決壊といった問題が発生する。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決し、液晶層とシールとの接触を防ぐ隔壁を精度良く形成し、シールによる液晶の汚染を抑えることを可能とする液晶光学素子およびその製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の液晶光学素子は下記記載の構成を採用するものである。
【0012】
本発明の液晶光学素子は、枠状のシールを介して第1および第2の透明基板が貼り合わされ、シールの内側の領域に液晶層が配された液晶光学素子において、シールと液晶層との間に、型の転写により形成された枠状の隔壁部を備えることを特徴とする。
また、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、第1および第2の透明基板の少なくとも一方に、隔壁部と同じ型の転写により形成された光学形状を備えることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、隔壁部と光学形状は、第1および第2の透明基板とは異なる樹脂層に形成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、隔壁部と光学形状が形成された樹脂層は、シールの内側の領域にのみ設けられたことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、隔壁部と光学形状は、第1または第2の透明基板と一体の樹脂層に形成されたことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、光学形状としてフレネルレンズ形状、マイクロプリズム形状またはマイクロレンズアレイ形状が形成されたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、光学形状および隔壁部の表面に透明電極が形成され、隔壁部の上面に形成された透明電極と、対向する透明基板との間に、絶縁膜が形成された、ことを特徴とする。
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、絶縁膜は配向膜であることを特徴とする。
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、シールと隔壁部とが密着していることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、隔壁部は、上端から下方に向かうに従って幅が広くなるように側面にテーパ面が形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、隔壁部は、上端の角部が丸みを帯びた形状に形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明の液晶光学素子は、前述した構成に加えて、シールおよび隔壁部は、液晶の注入口を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の液晶光学素子の製造方法は、第1および第2の透明基板の少なくとも一方に、
型の転写により枠状の隔壁部を形成する工程と、第1および第2の透明基板の少なくとも一方の、隔壁部の外側の領域に、枠状のシールを形成する工程と、隔壁部が形成された透明基板の該隔壁部の内側の領域に、液晶を滴下する工程と、第1および第2の透明基板を貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の液晶光学素子の製造方法は、前述した構成に加えて、隔壁部を形成する工程において、第1および第2の透明基板の少なくとも一方に、隔壁部と同じ型の転写により光学形状を形成することを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の液晶光学素子の製造方法は、前述した構成に加えて、隔壁部とシールとを、第1および第2の透明基板のうち同じ透明基板に形成することを特徴とする。
さらに、本発明の液晶光学素子の製造方法は、前述した構成に加えて、隔壁部を形成した後にシールを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液晶とシールとを隔てる隔壁が型の転写により精度良く形成される。これにより、透明基板を貼り合わせた後の透明基板と隔壁との隙間の発生を抑えて、シールによる液晶の汚染を抑えることができる。また、セルギャップを規制する隔壁が精度良く形成されることにより、面精度を向上させることが可能となる。
【0022】
さらに本発明によれば、液晶とシールとを隔てる隔壁と光学形状とが、同じ型の転写により一度に形成されることにより、短い工程で、且つ精度の良い位置関係で光学形状と隔壁とを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例1の液晶光学素子のインプリント工程の説明図である。
【図3】本発明の実施例1の液晶光学素子のセル化工程の説明図である。
【図4】本発明の実施例2の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例2の液晶光学素子のインプリント工程の説明図である。
【図6】本発明の実施例3の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例3の液晶光学素子のインプリント工程の説明図である。
【図8】本発明の実施例4の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例5の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例6の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例7の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図12】本発明の実施例8の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図13】本発明の実施例9の液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図14】本発明の液晶光学素子の隔壁の形状の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、液晶光学素子として、液晶層に印加する電圧により焦点距離を可変とした液晶レンズを例にして、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
[実施例1]
<実施例1の構成:図1>
まず、本発明の実施例1の液晶光学素子の構成について説明する。図1は実施例1の液晶光学素子10の構成を示す説明図である。図1(a)は実施例1の液晶光学素子10の断面図であり、図1(b)は後述するフレネルレンズ、隔壁およびシールの形状を示す平面図である。図面表示上の問題から、図1では実際とは異なるアスペクト比で模式的に示
している。
【0026】
図1に示すように、実施例1の液晶光学素子10は、第1の透明基板50と第2の透明基板51とが、それぞれの基板表面に形成された透明電極が対向するようにシール70を介して貼り合わされた構成を有する。
【0027】
第1の透明基板50には透明電極60と配向膜40とが形成されている。第2の透明基板51には、隔壁35と光学形状(フレネルレンズ100)とがインプリント(転写)工程で一体に形成されたインプリント樹脂層30を備える。この隔壁35とフレネルレンズ100とを形成するインプリント工程については、後段で詳細に説明する。インプリント樹脂層30の上には、透明電極61と配向膜41とが形成されている。
【0028】
第1の透明基板50と隔壁35の上面とは接しており、隔壁35の高さによりセルギャップが規制される。隔壁35の内側には液晶20が充填されており、隔壁35により液晶20とシール70とは隔てられている。
第1の透明基板50の透明電極60と隔壁35の上面に形成されている透明電極61とは、第1の透明基板50の配向膜40および第2の透明基板51の配向膜41により絶縁されており、上下導通を防いでいる。
【0029】
図1に示す本発明の実施例1の構成においては、隔壁35によりセルギャップが規制される。このため、シール70内にスペーサを混入させる必要が無い。これにより、スペーサによるインプリント樹脂層30への減り込み、クラックの発生といったダメージを無くすことができる。
【0030】
また、レンズ有効径領域に近い位置に隔壁35を形成することにより、セル内にスペーサを撒く必要が無い。これにより、セル内のスペーサによる散乱等による光学特性の劣化、フレネルレンズ100のような光学形状の上にスペーサを配置することによる面精度の劣化を無くすことができる。
【0031】
<実施例1の製造方法:図2、図3>
次に、実施例1の液晶光学素子の製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。図2及び図3では、図面表示上の問題から実際とは異なるアスペクト比で模式的に示している。図2は、実施例1の液晶光学素子10の隔壁35およびフレネルレンズ100のインプリント工程の説明図である。以下では、インプリント樹脂としてUV(紫外線)により硬化する光硬化樹脂を用いた例を説明する。
【0032】
まず、図2(a)に示すように、第2の透明基板51にディスペンサ74によって光硬化性の樹脂25を滴下する。図示していないが、第2の透明基板51と樹脂25の接着性が悪い場合には、第2の透明基板51にプライマー処理等を施すことにより接着層を設けて接着性を向上させる。
【0033】
その後、図2(b)及び図2(c)に示すように、第2の透明基板51に滴下した樹脂25に、金型モールド95を加圧しながら押し当てる。金型モールド95にはフレネルレンズ100と隔壁35の形状が凹凸反転で形成されている。ここで、金型モールド95の表面には、フッ素系の離型剤を塗布することにより離型処理が施されている。
【0034】
その後、樹脂25が金型モールド95の隙間に十分に入り込んだ状態で、図2(c)に示すようにUV80を照射して樹脂25を硬化させる。樹脂25が十分硬化したのち、図2(d)に示すように、金型モールド95を樹脂25から離型する。これにより、インプリント樹脂層30にフレネルレンズ100と隔壁35とが同時に転写されて形成される。
【0035】
実際に試作したフレネルレンズ100の寸法を、例として示す。有効径をφ4.4mmとし、ブレーズ(輪帯)の数を30、各ブレーズの高さ(サグ量)を15μmとした。最も外側に位置するブレーズの幅を38.5μmとし、最も外側に位置するブレーズのレンズ面の最大傾斜角度を21.3度とした。また、有効径の最外周から0.5mm離れた位置に、幅0.5mm、高さ20μmで隔壁部35を形成した。
【0036】
図3は、透明基板上への透明電極および配向膜の形成から、第1の透明基板50と第2の透明基板51の貼り合わせまでの工程の説明図である。
隔壁35及びフレネルレンズ100をインプリント樹脂層30に形成した後、図3(a)に示すように、インプリント樹脂層30の表面上にスパッタリング法等により透明電極61を形成する。インプリント樹脂層30の上に透明電極61を直接形成しても良く、また、インプリント樹脂層30にSiO2等のバリア層やハードコート層などの層を形成してから透明電極61を形成しても良い。
【0037】
インプリント樹脂層30の表面に透明電極61を形成した後、配向膜41を形成する。配向膜41は、例えば斜方蒸着により形成される。蒸着材料としては、例えばSiOx等の無機材料が用いられる。蒸着角度によって蒸着膜のカラム構造を変化させることができ、それにより液晶の配向状態を制御することができる。この斜方蒸着法では、フレネルレンズ100の形状にダメージを与えることなく、非接触で配向膜41を形成することができる。ここで、SiOxは絶縁体であるため、端子部として使用する予定の領域にはSiOx膜がつかないようにマスキングを行って斜方蒸着を行う。
【0038】
その他の配向膜の形成方法としては、インプリント樹脂層30の表面上にインクジェットやスピンコートにより配向膜を塗布した後に光配向法を用いることにより、フレネルレンズ100の形状にダメージを与えることなく、非接触で配向膜を形成することができる。
【0039】
オフセット印刷による配向膜の塗布、ラビング方式による配向処理を行う場合は、印刷版、ラビング布の押し当てでフレネルレンズにダメージを与えないように、ローラの回転速度、ラビング圧力等の各種の条件の最適化、インプリント樹脂材料の選定、表面のハードコート処理などが必要になる。
また図示しないが、第1の透明基板50にも同様に、透明電極60と配向膜40とを形成する。
【0040】
インプリント樹脂層30の表面に透明電極61および配向膜41を形成した後、図3(b)に示すように、隔壁35の外側の位置にディスペンサによりシール70を塗布する。このシール70は、例えばUV硬化樹脂であり、隔壁35より高く盛られる。シール70は、後述する工程で第1の透明基板50と第2の透明基板51とが貼り合わせされたときに潰されて、シール70と隔壁35とが密着するように、最適な量と位置で塗布する必要がある。
【0041】
シール70の塗布量が少ない、または塗布位置が隔壁35から離れすぎていると、第1の透明基板50と第2の透明基板51とが貼り合わせされたときにシール70と隔壁35の間に隙間が生じてしまう。また、シール70の塗布量が多い、または塗布位置が隔壁35に近すぎると、第1の透明基板50と第2の透明基板51とが貼り合わせされたときにシール70が隔壁35を乗り越えてしまう。このためシール70の塗布量と塗布位置とを最適化することが重要となる。
【0042】
シール70を塗布した後、図3(c)に示すように、ディスペンサ76を用いて隔壁3
5の内側に液晶20を滴下する。フレネルレンズ100へのダメージを防ぐために、非接触で滴下可能なジェットディスペンサを用いることが好適である。液晶の滴下量は、隔壁35の内側の体積に応じて決まる。隔壁35の内側の体積に応じた量の液晶を滴下しないと、第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせた後の液晶セルの面精度の悪化、液晶セル内の気泡の発生などの原因となる。
【0043】
ここで重要な点として、ディスペンサ76による液晶の滴下量のバラつきを抑えることはもちろんのこと、隔壁35の内側の体積のバラつきも抑える必要がある。本実施例の液晶光学素子では、隔壁35がインプリントによって精度良く形成されることにより、隔壁35の内側の体積のバラつき量を抑えて、液晶セルの面精度の悪化、気泡の発生などを抑え、歩留まりを向上させることができる。
【0044】
また、隔壁35の内側に滴下された液晶は、表面張力・ぬれ性等の特性に応じて、隔壁35より高く盛られた状態となる。液晶が高く盛られた状態で、後述するように第1の透明基板50と第2の透明基板51を重ね合わせると、液晶が第2の透明基板51に接触した後、第2の透明基板51の表面上を隔壁35の外側の領域まで広がってしまう問題がある。
そこで、滴下された液晶の高さを抑えるため、隔壁35の内側の複数の箇所に液晶を滴下することが望ましい。さらに、透明基板どうしを重ね合わせたときに液晶が均一に広がるように、中心対称となる複数の箇所に液晶を滴下することが望ましい。
【0045】
隔壁35の内側に液晶20を滴下した後、図3(d)に示すように、第2の透明基板51の液晶滴下面を上向きに配置して、真空状態で第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせる。このとき、隔壁35により液晶20とシール70とが隔てられるため、未硬化状態時のシール70によって液晶20が汚染されることはない。
また、液晶20の内圧がシール70に直接加えられないので、液晶20によりシール70が侵食されて穴あきの状態になることもなく、シール70による透明基板どうしの接着強度も良好となる。
【0046】
第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせた後、UV(紫外線)を照射してシール70を硬化させる。UVに弱い液晶材料を用いる場合には、液晶20の領域をマスクしてUVを照射する。
【0047】
インプリント樹脂層30としてUVにより硬化する光硬化樹脂を用いた場合、インプリント樹脂層30によりUVが吸収されるので、第1の透明基板50側からUVを照射してシール70を硬化させるのが好ましい。インプリント樹脂層30の透過特性、厚みにより、インプリント樹脂層30をUVが十分透過する場合は、第2の透明基板51側からUVを照射してシール70を硬化させてもよい。UVを照射した後、必要に応じて、焼成を行いシール70を本硬化させる。以上の工程により、実施例1の液晶光学素子10が製造される。
【0048】
上述したとおり、図3(d)において、第1の透明基板50の透明電極60と隔壁35の上面に形成されている透明電極61とは、第1の透明基板50の配向膜40および第2の透明基板51の配向膜41により絶縁されており、上下導通を防いでいる。配向膜41の絶縁性が弱い場合には、透明電極60と透明電極61の隔壁35の領域にSiO2などの絶縁膜を形成すれば良い。
【0049】
図3では、第2の透明基板51にシール70を塗布した後、第1の透明基板50と第2の透明基板51とを貼り合わせる例を示した。しかしこれに限定されるものではなく、第1の透明基板50にシール70を塗布した後、第1の透明基板50と第2の透明基板51
とを貼り合わせてもよい。
【0050】
上述したように、本実施例の液晶光学素子では、液晶とシールとを隔てる隔壁が金型モールドの転写により精度良く形成される。これにより、透明基板を貼り合わせた後の透明基板と隔壁との隙間の発生を抑えて、シールと液晶とが接触することによる液晶の汚染を抑えることができる。また、セルギャップを規制する隔壁が精度良く形成されることにより、面精度を向上させることが可能となる。
【0051】
さらに、隔壁が精度良く形成されることにより、隔壁の内側の体積に応じたODF方式による液晶の最適な滴下量が定まり、液晶セルの面精度の悪化、気泡の発生などを抑えることが可能となる。
【0052】
また、本実施例の液晶光学素子では、フレネルレンズ形状と隔壁とが、同じ金型モールドの転写により一度に形成される。これにより、フォトリソグラフィーによるパターン形成またはスクリーン印刷といった従来技術による隔壁の形成と、フレネルレンズ形状の形成とを別々に行う方法と比較して、短い工程で、且つ精度の良い位置関係でフレネルレンズ形状と隔壁とを形成することが可能となる。
【0053】
次に、本発明の液晶光学素子および製造方法の他の実施例について説明をする。以下の説明においては、既に説明した同一の構成には同一の符号を付与しており、その詳細な説明は省略し、構成が異なる点についてのみ説明する。
[実施例2]
<実施例2の構成:図4>
【0054】
本発明の実施例2の液晶光学素子の構成について説明する。図4は実施例2の液晶光学素子11の構成を示す説明図である。図4(a)は実施例2の液晶光学素子11の断面図であり、図4(b)はフレネルレンズ100、隔壁35およびシール71の形状を示す平面図である。
【0055】
図4に示すように実施例2の液晶光学素子11は、フレネルレンズ100と隔壁35とが形成されたインプリント樹脂層31が、シール71の内側にのみ形成された構成を備える。シール71は、第1の透明基板50に形成された配向膜40および第2の透明基板51に形成された配向膜41と接着する。
【0056】
透明電極61とインプリント樹脂層31との密着性よりも、透明電極61と透明基板51との密着性が高い場合、実施例2の液晶光学素子11は、実施例1と比較して、洗浄工程、高温高湿環境等における透明電極の剥離を抑え、歩留まり、信頼性を向上させることができる。また実施例2の液晶光学素子11は、隔壁35とシール71とが接する面積が広くなるため、シール71と隔壁35との密着力も合わせて向上させることができる。
【0057】
また実施例2の液晶光学素子11は、インプリント樹脂層31がシール71の内側に閉じ込められて外部に露出しない構成である。このため、インプリント樹脂層31が、空気や水蒸気、水、洗浄液や人の油脂、各種汚れ等に触れることを防ぎ、インプリント樹脂層31の膨潤等の劣化による透明電極61のクラック、剥離等の発生を防ぎ、信頼性を向上させることができる。
特に、透明基板51が、ガラス基板又はガスバリアコート処理がされたガス透過性の低い樹脂基板であれば、インプリント樹脂層31と空気との接触を更に防いで、インプリント樹脂層31の劣化を抑えて信頼性を向上させることができる。
【0058】
<実施例2の製造方法:図5>
次に、実施例2の液晶光学素子の製造方法について、図5を用いて説明する。実施例1と異なる工程についてのみ説明を行い、重複する工程については説明を省略する。図5(a)〜(d)は、実施例2の液晶光学素子11における第2の透明基板51へのインプリント工程についての説明図である。
【0059】
図5(a)に示すように、第2の透明基板51にディスペンサ74によって光硬化性の樹脂25を滴下し、図5(b)及び図5(c)に示すように、第2の透明基板51に滴下した樹脂25に、金型モールド95を加圧しながら押し当てる。
【0060】
その後、樹脂25が金型モールド95の隙間に十分に入り込んだ状態で、図2(c)に示すようにUV80を照射して樹脂25を硬化させる。この際、第2の透明基板51のUV80を照射する側に、隔壁35より外側の領域を隠す形状のマスク85を設置する。これにより、隔壁35およびその内側領域の樹脂25のみが硬化する。
【0061】
樹脂25が十分硬化したのち、図5(d)に示すように、金型モールド95を樹脂25から離型し、隔壁35より外側の領域の未硬化の樹脂を洗浄により洗い流す。
以上の工程により、第2の透明基板51上に、フレネルレンズ100と隔壁35とが転写され、隔壁35より外側の樹脂が取り除かれたインプリント樹脂層35が作製される。その後、図3に示す工程と同様に、透明電極および配向膜の形成、シールの塗布、液晶の滴下および透明基板の貼り合わせが行われ、実施例2の液晶光学素子11が製造される。
【0062】
[実施例3]
[実施例3の構成:図6]
本発明の実施例3の液晶光学素子の構成について説明する。図6は、実施例3の液晶光学素子12の構成を示す説明図である。図6(a)は、実施例3の液晶光学素子12の断面図であり、図6(b)はフレネルレンズ100、隔壁35およびシール70の形状を示す平面図である。
【0063】
実施例3の液晶光学素子12は、第2の透明基板55がインプリント加工可能な樹脂により構成され、フレネルレンズ100および隔壁35が、第2の透明基板55を構成する樹脂にインプリント工程で形成されている点が、実施例1・2の液晶光学素子と異なる。
第2の透明基板55にはガスバリア層65が形成されており、ガスの透過を抑えて第2の透明基板55の劣化を防ぎ、信頼性を向上させている。第1の透明基板50が樹脂基板である場合は、同様に、ガスバリア層を設けて樹脂基板の劣化を防ぐことが望ましい。
【0064】
<実施例3の製造方法:図7>
次に、実施例3の液晶光学素子12の製造方法について説明する。実施例1と異なる工程についてのみ説明を行い、重複する工程については省略する。図7(a)〜(c)は、実施例3の液晶光学素子12における第2の透明基板55へのインプリント工程についての説明図である。以下では、第2の透明基板55が熱可塑性樹脂で構成された例を説明する。
【0065】
第2の透明基板55がガラス転移点を越える温度以上となるように、第2の透明基板55、金型モールド95の両方または一方を加熱させた状態で、図7(a)及び図7(b)に示すように、第2の透明基板55に金型モールド95を加圧しながら押し当てる。第2の透明基板55の樹脂が金型モールド95の隙間に十分入り込んで充填された後に、ガラス転移温度以下に温度を下げ、第2の透明基板55の樹脂を硬化させる。
【0066】
第2の透明基板55の樹脂を硬化させた後、図7(c)に示すように、金型モールド95を第2の透明基板55から離型する。以上の工程により、第2の透明基板55にフレネ
ルレンズ100と隔壁35が転写されて形成される。その後、図3に示す工程と同様に、透明電極および配向膜の形成、シールの塗布、液晶の滴下および透明基板の貼り合わせが行われ、実施例3の液晶光学素子12が製造される。
【0067】
なお上記では、第2の透明基板55が熱可塑性樹脂で構成された例を示したが、これに限定されるわけではなく、第2の透明基板55が熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂で構成されてもよい。第2の透明基板55が光硬化性樹脂で構成された場合、本硬化前の状態の透明基板に金型モールドを押し当てた後にUV照射を行い、基板を硬化させた後、金型モールドを離型する。金型モールドを離型した後、未硬化成分を完全硬化させるために基板を加熱させることもある。
【0068】
上述したように実施例3の液晶光学素子12は、フレネルレンズ100と隔壁35とが、第2の透明基板22を構成する樹脂にインプリントで形成される。このため、インプリント樹脂層と透明基板とが別材料の実施例1・2の液晶光学素子ように、樹脂と透明基板とが剥離するおそれがなく、信頼性を向上させることができる。
また、インプリントするための樹脂を透明基板上に滴下する工程を有する実施例1・2の液晶光学素子と比較して、実施例3の液晶光学素子12は製造工程を短縮することができる。
【0069】
[実施例4]
<実施例4の構成:図8>
本発明の実施例4の液晶光学素子の構成について説明する。図8は、実施例4の液晶光学素子13の構成を示す断面図である。
【0070】
実施例4の液晶光学素子13は、第1の透明基板50と第2の透明基板51のそれぞれに、フレネルレンズ100および隔壁35がインプリントされたインプリント樹脂層30が形成された構成である。図8に示す例では、第1の透明基板50および第2の透明基板51のそれぞれの同じ位置に隔壁35が形成され、隔壁35の上面どうしが密着している。また、シール70は隔壁35の外側に隔壁35と密着して形成されている。液晶20とシール70とは隔壁35により隔てられ、互いの接触による液晶20の汚染を防いでいる。
【0071】
図8では、第1の透明基板50および第2の透明基板51に、同じ形状の隔壁35が形成された例を示したが、これとは別に、例えば、隔壁35の上面どうしが噛み合う形状であってもよい。また、セルギャップ等の条件を満たせば、それぞれの透明基板の隔壁35が異なる高さであってもよい。さらに、第1の透明基板50と第2の透明基板51のインプリント樹脂層50が、異なる材料で構成されてもよい。
【0072】
なお図8では、それぞれの透明基板に実施例1と同様の構成のインプリント樹脂層30が形成された例を示した。これとは別に、実施例2に示すように、隔壁およびその内側領域のみに形成されたインプリント樹脂層が透明基板に形成された構成であってもよく、また、実施例3に示すように、透明基板を構成する樹脂にフレネルレンズおよび隔壁がインプリントされた構成であってもよい。
【0073】
[実施例5]
<実施例5の構成:図9>
本発明の実施例5の液晶光学素子の構成について説明する。図9は、実施例5の液晶光学素子14の構成を示す断面図である。
【0074】
図9に示すように、実施例5の液晶光学素子14は、第2の透明基板51のインプリン
ト樹脂層30にフレネルレンズ100と隔壁35とが形成され、第1の透明基板50のインプリント樹脂層33に隔壁35と嵌合する凹部39が形成されている。
【0075】
このような構成にすることで、実施例1と比較して隔壁35が高くなり、図3(c)、(d)に示す液晶滴下から透明基板貼り合わせの工程において、液晶とシールとの接触をより確実に防ぐことができる。
また、隔壁35と凹部39とを嵌合させることで、透明基板どうしを貼り合わせた後の隙間の発生を抑えて、シールと液晶とが接触することによる液晶の汚染を抑えることができる。更に、隔壁35と凹部39とを嵌合させることで、透明基板どうしを精度の良い位置関係で貼り合わせることができる。
【0076】
図9では、第1の透明基板50のインプリント樹脂層33の凹部39の内側が平坦である例を示したが、インプリント樹脂層33に凹部39とともにフレネルレンズ等の光学形状を形成してもよい。
【0077】
また図9では、第2の透明基板51に実施例1と同様の構成のインプリント樹脂層30が形成された例を示した。これとは別に、実施例2に示すように、隔壁およびその内側領域のみに形成されたインプリント樹脂層が透明基板に形成された構成であってもよく、また、実施例3に示すように、透明基板を構成する樹脂にフレネルレンズおよび隔壁がインプリントされた構成であってもよい。
【0078】
[実施例6]
<実施例6の構成:図10>
本発明の実施例6の液晶光学素子の構成について説明する。図10は、実施例6の液晶光学素子15の構成を示す断面図である。
【0079】
図10に示すように、実施例の液晶光学素子15は、第2の透明基板51のインプリント樹脂層30にフレネルレンズ100と隔壁35とが形成され、第1の透明基板50のインプリント樹脂層34に隔壁35と嵌合する隔壁36が形成されている。
【0080】
隔壁35と隔壁36とを嵌合させることで、透明基板どうしを貼り合わせた後の隙間の発生を抑えて、シールと液晶とが接触することによる液晶の汚染を抑えることができる。更に、隔壁35と隔壁36とを嵌合させることで、透明基板どうしを精度の良い位置関係で貼り合わせることができる。
【0081】
図10では、第1の透明基板50のインプリント樹脂層33の隔壁36の内側が平坦である例を示したが、インプリント樹脂層33に、隔壁36とともにフレネルレンズ等の光学形状を形成してもよい。
【0082】
また図10では、第2の透明基板51に実施例1と同様の構成のインプリント樹脂層30が形成された例を示した。これとは別に、実施例2に示すように、隔壁およびその内側領域のみに形成されたインプリント樹脂層が透明基板に形成された構成であってもよく、また、実施例3に示すように、透明基板を構成する樹脂にフレネルレンズおよび隔壁がインプリントされた構成であってもよい。
【0083】
[実施例7]
<実施例7の構成:図11>
本発明の実施例7の液晶光学素子の構成について説明する。図11は、本発明の実施例7の液晶光学素子16の構成を示す説明図である。図11(a)は、実施例7の液晶光学素子16の断面図であり、図11(b)は、液晶光学素子16のフレネルレンズ100、
隔壁35およびシール70の形状を示す平面図である。
【0084】
実施例7の液晶光学素子16は、実施例1の液晶光学素子でシール70にスペーサ82を混入させた構成である。その他は、実施例1と同一の構成である。隔壁35が形成された箇所と、シール70が塗布される箇所とのインプリント樹脂層30の厚みの差から、シール70内に混入させるスペーサ82の粒径を決定する。透明電極41と配向膜61の厚みは、例えばスペーサ径20μmに対して、透明電極膜厚50nm、配向膜厚50nmと厚みのオーダーが3桁異なるので無視してよい。
【0085】
シール70にスペーサ82を混入することで、隔壁35とシール70内のスペーサ82とでセルギャップが規制される。これにより、隔壁35だけでセルギャップが規制される実施例1の液晶光学素子と比較して、セルギャップを規制する働きをする部材の面積が広くなり、セルギャップをより安定して規制し、面精度を向上させることができる。
【0086】
ただし、スペーサ82による透明電極61やインプリント樹脂層30への減り込み、クラック発生を防ぐためには、インプリント樹脂層30とスペーサ82の硬度を近づけることが望ましい。インプリント樹脂層30が柔らかい部材であり、これに合わせてスペーサ82を樹脂性のビーズ等の潰れ易い部材とするときは、透明基板が貼り合わされたときの潰れ量を考慮した粒径のスペーサ82を用いる。
【0087】
[実施例8]
<実施例8の構成:図12>
本発明の実施例8の液晶光学素子の構成について説明する。図12は、本発明の実施例8の液晶光学素子17の構成を示す説明図である。図12(a)は、実施例8の液晶光学素子17の断面図であり、図12(b)は、液晶光学素子17のフレネルレンズ100、隔壁35およびシール72の形状を示す平面図である。
【0088】
実施例8の液晶光学素子17は、実施例1〜6の液晶光学素子と異なり、ODF方式用ではなく真空注入方式で液晶を注入するセルである。隔壁37には、液晶20を注入するための注入口37aが設けられており、シール72には、隔壁35の注入口37aと対応する位置に注入口72aが設けられている。
【0089】
実施例8の液晶光学素子17は、次のように製造する。図2(a)〜図3(b)に示す方法でシール72の塗布まで行った後、透明基板50と透明基板51を重ね合わせ、シール72を硬化させる。シール72の硬化後に液晶20を注入し、封口剤67で注入口37a、72aの封を行い硬化させる。この際、封口剤67を隔壁37の位置まで封入させることで、液晶20とシール72とが触れないようにすることが望ましい。
【0090】
[実施例9]
<実施例9の構成:図13>
次に、本発明の実施例9の液晶光学素子の構成について説明する。図13は、本発明の実施例9の液晶光学素子18の構成を示す説明図である。図13(a)は、実施例9の液晶光学素子18の断面図であり、図13(b)は、液晶光学素子18のフレネルレンズ100、隔壁38およびシール73の形状を示す平面図である。
【0091】
実施例9の液晶光学素子18は、シール73の注入口73aの内側まで隔壁38が形成されている点が、実施例8の液晶光学素子と異なり、その他の構成については同一である。
シール73の注入口73aの内側まで隔壁38が形成されることで、液晶20の注入時においても液晶20とシール73とが触れることがないので、液晶20への汚染を防ぐこと
が可能となり信頼性向上に寄与する。
【0092】
(隔壁の変形例)
次に、本発明の液晶光学素子の隔壁35の変形例について説明する。図14(a)〜(d)は、隔壁35の形状の変形例の断面図である。
図14(a)に示す隔壁35aは、上面が平坦に形成されるとともに、上端から下方に向かうに従って幅が広くなるように側面にテーパ面が形成されている。このようにテーパ面を形成することにより、図2(c)に示すように金型モールドを樹脂に押し当てたときに、金型モールドの凹部に樹脂が充填されやすくなり、所望の形状を精度良く形成することできる。
【0093】
図14(b)に示す隔壁35bは、斜方蒸着法で配向膜を形成するときに影となる領域を減らすようにテーパ面が形成されている。隔壁35bの液晶が充填される側のテーパ面T1は、反対側のテーパ面T2と比較して、より下方まで形成されている。また、液晶が充填される側のテーパ面T1は、反対側のテーパ面T2と比較して、上面においてより隔壁の内側に位置するように形成されている。
【0094】
図14(c)に示す隔壁35cは、上面が平坦に形成されるとともに、角部が丸みを帯びた形状に形成されている。このように角部が丸みを帯びた形状とすることにより、図14(a)と同様に、金型モールドを樹脂に押し当てたときに、金型モールドの凹部に樹脂が充填されやすくなり、所望の形状を精度良く形成することできる。
【0095】
図14(d)に示す隔壁35dは、上面が平坦に形成されるとともに、側面が上面に対して略垂直の面で形成されている。対向する透明基板と接触する面を広くすることで、セルギャップをより安定して規制し、面精度を向上させることができる。
【0096】
本発明の液晶光学素子の隔壁35は、液晶とシールとを隔てる目的で形成するものであり、インプリント工程で形成可能であれば、上述した形状に限らず、テーパ面を有する形状、角が丸みを帯びた形状、平坦な面、曲面等の組み合わせであってもよい。
【0097】
(その他の変形例)
上述した実施形態の説明においては、光学形状として、フレネルレンズ形状が隔壁とともにインプリント(転写)工程で一体に形成される例を示した。しかし、本発明は光学形状が限定されるものではなく、例えば、マイクロプリズム形状、マイクロレンズアレイ形状、シリンドリカルレンズ形状等の光学形状が隔壁とともにインプリント工程で一体に形成された構成およびその製造方法に適用可能である。
【0098】
また、上述した実施形態の説明においては、隔壁が、平面視においてフレネルレンズ形状に合わせて円形状である例を示した。しかし、液晶とシールとを隔てる形状であれば、障壁は平面視において四角形状、多角形形状、楕円形状等であってもよい。
【0099】
本発明の液晶光学素子は、液晶の配向方式、輪帯パターン電極の構成・本数・設計方法、液晶材料の種類、層数等によらないので、液晶光学素子に幅広く適用することができ、特に、ODF方式のプロセスにおいて有効である。
【0100】
本発明の液晶光学素子は、デジタルカメラ、ムービーカメラ、カメラ付き携帯電話のカメラ部、車等に搭載されて後方確認用モニターなどに用いられるカメラなどの撮像光学系、プロジェクタ、レーザーポインタなどの投影光学系、CD、DVD、BD(Blu-ray Disc(登録商標)等のピックアップ向けの収差補正素子、眼鏡やヘッドマウントディスプレイなどのアイウェアと、幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
11〜18 液晶光学素子
20 液晶
25 樹脂
30〜34 インプリント樹脂層
35a〜35d 隔壁
36〜38 隔壁
37a、38a 注入口
39 凹部
40、41 配向膜
50 第1の透明基板
51 第2の透明基板
60、61 透明電極
65 ガスバリア層
67 封口剤
70〜73 シール
72a、73a 注入口
74、75、76 ディスペンサ
80 UV
82 スペーサ
85 マスク
95 金型モールド
100 フレネルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状のシールを介して第1および第2の透明基板が貼り合わされ、前記シールの内側の領域に液晶層が配された液晶光学素子において、
前記シールと前記液晶層との間に、型の転写により形成された枠状の隔壁部を備える
ことを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
前記第1および第2の透明基板の少なくとも一方に、前記隔壁部と同じ型の転写により形成された光学形状を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記隔壁部と前記光学形状は、前記第1および第2の透明基板とは異なる樹脂層に形成された
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記隔壁部と前記光学形状が形成された樹脂層は、前記シールの内側の領域にのみ設けられた
ことを特徴とする請求項3に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記隔壁部と前記光学形状は、前記第1または第2の透明基板と一体の樹脂層に形成された
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
前記光学形状としてフレネルレンズ形状が形成された
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
前記光学形状としてマイクロプリズム形状が形成された
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
前記光学形状としてマイクロレンズアレイ形状が形成された
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
前記光学形状および前記隔壁部の表面に透明電極が形成され、
前記隔壁部の上面に形成された前記透明電極と、対向する前記透明基板との間に、絶縁膜が形成された、
ことを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
前記絶縁膜は配向膜である
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
前記シールと前記隔壁部とが密着している
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項12】
前記隔壁部は、上端から下方に向かうに従って幅が広くなるように側面にテーパ面が形成されている
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項13】
前記隔壁部は、上端の角部が丸みを帯びた形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項14】
前記シールおよび前記隔壁部は、液晶の注入口を備える
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項15】
第1および第2の透明基板の少なくとも一方に、型の転写により枠状の隔壁部を形成する工程と、
前記第1および第2の透明基板の少なくとも一方の、前記隔壁部の外側の領域に、枠状のシールを形成する工程と、
前記隔壁部が形成された透明基板の該隔壁部の内側の領域に、液晶を滴下する工程と、
前記第1および第2の透明基板を貼り合わせる工程と、を有する
ことを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
【請求項16】
前記隔壁部を形成する工程において、前記第1および第2の透明基板の少なくとも一方に、前記隔壁部と同じ型の転写により光学形状を形成する
ことを特徴とする請求項15に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項17】
前記隔壁部と前記シールとを、前記第1および第2の透明基板のうち同じ透明基板に形成する
ことを特徴とする請求項15または16に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項18】
前記隔壁部を形成した後に前記シールを形成する
ことを特徴とする請求項17に記載の液晶光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−217411(P2010−217411A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63071(P2009−63071)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】