説明

液晶化合物

【課題】本発明は、高い光学異方性を備える液晶化合物を提供する。
【解決手段】式(I)


[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、炭素原子が1〜10個のアルキル基、又は炭素原子が2〜10個のアルケニル基を表し;アルキル基及びアルケニル基は、非置換型、又は−O−、−CO−、若しくは−COO−基による置換型であり;X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素又はフッ素を表し、X、X、X及びXの少なくとも1つはフッ素であり;mは1、2又は3であり;nは0、1又は2であり;2≦m+n≦3を満たす]で表される、光学異方性を備える液晶化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年4月18日に出願された、台湾特許出願第100113396号に基づく優先権による利益を主張するものである。上記特許出願の全内容は、参照をもって本出願に取り込み、本願明細書の一部とする。
【0002】
本出願は、液晶化合物に関し、特に、低いネマチック相下限温度を有し、高い光学異方性を備える液晶化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置の性能を高めるため、装置に用いられる液晶組成物は適した特性を備えなければならない。液晶組成物は、通常、複数種の液晶化合物を含み、それぞれの液晶化合物は、1つ又は複数の下記の特性;安定した化学的及び物理的特性;高い透明点(液晶相−等方相の転移温度);低い液晶相(ネマチック相、セマチック相等)下限温度、特に、低いネマチック相下限温度;低粘度;適した光学異方性;適した誘電率異方性;及び他の液晶化合物との優れた適合性;を備える。
【0004】
安定した化学的及び物理的特性を備える液晶化合物を含む組成物を表示装置に用いることによって、液晶組成物の電圧保持比が高まる。
【0005】
高い透明点、及び低い液晶相下限温度を備える液晶化合物を含む組成物を用いることによって、液晶組成物のネマチック相の温度範囲が広がるため、表示装置を広い温度範囲において用いることができる。
【0006】
更に、低粘度の化合物を含む組成物を表示装置に用いることによって、液晶組成物の応答速度が増大し、適した光学異方性を備える化合物を含む組成物を用いることによって、表示装置のコントラストが増大する。
【0007】
光学異方性を有する液晶材料を開発する際、分子長軸の共役構造を増やすことによって、複屈折性を増大させることができる。一般的に、Δnを0.2超とする可能性を得るためには、少なくとも3つのベンゼン環を備える構造が必要となる。しかしながら、少なくとも3つのベンゼン環を備える構造を含む液晶化合物は、ネマチック相下限温度を上昇させるため、液晶化合物を用いることができる温度範囲が狭くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液晶化合物の適用範囲を広げるため、本発明は、低いネマチック相下限温度を有し、高い光学異方性を備える液晶化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高い光学異方性を備える液晶化合物を提供する。
該液晶化合物は、式(I)
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、炭素原子が1〜10個のアルキル基、又は炭素原子が2〜10個のアルケニル基を表し;アルキル基及びアルケニル基は、非置換型、又は−O−、−CO−、若しくは−COO−基による置換型であり;X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素又はフッ素を表し、X、X、X及びXの少なくとも1つはフッ素であり;mは1、2又は3であり;nは0、1又は2であり;2≦m+n≦3を満たす]で表される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、式(I)において、Xはフッ素であり、X、X及びXはHである。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、式(I)において、Xはフッ素であり、X、X及びXはHである。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、式(I)において、X及びXはフッ素であり、X及びXはHである。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、式(I)において、R2はプロピル基、ブチル基又はアミル基である。
【発明の効果】
【0014】
上記に関して、本発明による液晶化合物は、低いネマチック相下限温度、及び高い光学異方性を有するため、液晶化合物の今後の適用及び開発に有益である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の化合物の具体的詳細について更に記載する。
【0016】
本発明による化合物は、式(I)で表される化合物である。
【化2】

【0017】
式(I)中、R1及びR2はそれぞれ、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、又は2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を表し;該アルキル基及び該アルケニル基は、非置換型であるか、又は−O−、−CO−若しくは−COO−基で置換される。
【0018】
アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基とすることができる。
【0019】
アルケニル基は、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノナニル基、又はデセニル基などの、2〜10個の炭素原子を有する非置換型のアルケニル基とすることができる。
【0020】
式(I)中、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、H又はFであり、X、X、X及びXの少なくとも1つは、Fである。例えば、XはFであり、X、X及びXはHである;XはFであり、X、X及びXはHである;XはFであり、X、X及びXはHである;XはFであり、X、X及びXはHである。
【0021】
式(I)中、mは1、2又は3であり、nは0、1又は2であり、2≦m+n≦3を満たす。
【0022】
式(I)の化合物は、下記式(I−1)〜(I−5)に示す化合物とすることができる。
【化3】

【0023】
本発明に係る液晶化合物は、分子主軸に少なくとも2つのベンゼン環を備える構造を含むため、この化合物の光学異方性は高く、且つその粘度は低い。また、式(I)中のシクロペンチリデニル基には、下記式(II)に示す、伸長基R2が結合している。このように、この液晶化合物の構造は歪んでいるため、液晶化合物はより柔軟な構造を有し、これにより、液晶相−ネマチック相の転移温度が低下する。
【化4】

【0024】
以下、本発明の効果を、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3により示す。
【実施例】
【0025】
(実施例1)式(I−2)の化合物の調製
【化5】

【0026】
ステップ1:式(1−A)の化合物(以下、「化合物(1−A)」という)の合成
【化6】

【0027】
初めに、3.0g(15mmol)の、式(1)で表される4−ブロモ−1−プロピルベンゼン、及び4.2g(16.5mmol)のビス(ピナコレート)ジボロン、及び4.4g(45mmol)の酢酸カリウムを、30mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。上記混合物を均一な状態になるまで撹拌した後、0.05gの1,1’−ビス((ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウムを加え、得られた混合物を110℃まで加熱して、12時間撹拌した。反応後、50mLの水を混合物に加え、該混合物を酢酸エチルで抽出した。混合溶液の有機層を、無水硫酸マグネシウムにより脱水し、濾過した後に濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製して、3.3gの淡黄色の化合物(1−A)を得た。収率は90%であった。
【0028】
ステップ2:式(1−B)の化合物(以下、「化合物(1−B)」という)の合成
【化7】

【0029】
次に、1.4g(5.8mmol)の化合物(1−A)、及び1g(5.3mmol)の4−ブロモ−2−フルオロアニリンを20mLのトルエンに溶解させた。上記混合物を均一な状態になるまで撹拌した後、2.1g(15.8mmol)の炭酸カリウム、7mLの水、及び0.5mLのAliquate(商標)336を加え、そして、得られた混合物を、酸素を除去した容器中で1時間反応させた。その後、0.24gのPd(PPhを加え、そして、得られた混合物を85℃まで加熱して、12時間撹拌した。上記混合物を酢酸エチルで希釈して、水で抽出した。
【0030】
その後、上記混合溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水して、濾過した後に濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリコーン、酢酸エチル/ヘキサン=1/4)を行って生成物を精製して、0.9gの淡黄色の化合物(1−B)を得た。収率は75%であった。
【0031】
ステップ3:式(1−C)の化合物(以下、「化合物(1−C)」という)の合成
【化8】

【0032】
次に、1.2g(5.2mmol)の化合物(1−B)を、2.6mLの35%塩酸溶液及び20mLのテトラヒドロフラン(THF)に加えた。上記混合物を氷浴中で10分間撹拌した後、亜硝酸ナトリウム溶液を混合物中にゆっくりと滴下した。この亜硝酸ナトリウム溶液は、0.7g(10.4mmol)の亜硝酸ナトリウムを2mLの水に加えることにより調製した。上記混合物を氷浴中で10分間撹拌した後、ヨウ化カリウム溶液を混合物にゆっくりと滴下した。このヨウ化カリウム溶液は1.7g(10.4mmol)のヨウ化カリウムを5mLの水に加えることにより調製した。上記混合溶液を0℃から室温まで加熱して、その後1時間撹拌した。上記混合溶液の反応が完了した後、混合物が中性になるまで10%重炭酸ナトリウム溶液を混合溶液に加えた。抽出には酢酸エチルと水とを用い、混合溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、、濾過した後に濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製して、1.7gの透明液体の化合物(1−C)を得た。収率は96%であった。
【0033】
ステップ4:式(1−D)の化合物(以下、「化合物(1−D)」という)の合成
【化9】

【0034】
次に、1g(2.9mmol)の化合物(1−C)、及び0.63g(2.9mmol)の4−アミノフェニルボロン酸ピナコールエステルを15mLのトルエンに溶解させた。上記混合物を均一な状態になるまで撹拌した後、1.2g(8.7mmol)の炭酸カリウム、4mLの水、及び0.1mLのAliquate(商標)336を加えた。得られた混合物を、酸素を除去した容器で1時間反応させ、0.16gのPd(PPhを加え、得られた混合溶液を85℃まで加熱して、12時間撹拌した。上記混合溶液を酢酸エチルで希釈して、水で抽出した。上記混合溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水して、濾過した後に濃縮した。その後、メタノール及び水を用いて、上記混合溶液から再沈殿させて、0.62gの淡黄色固体の化合物(1−D)を得た。収率は70%であった。
【0035】
ステップ5:式(1−E)の化合物(以下、「化合物(1−E)」という)の合成
【化10】

【0036】
次に、0.4g(1.3mmol)の化合物(1−D)を0.4mLの35%塩酸溶液及び10mLのTHFに加えた。上記混合物を氷浴中で10分間撹拌した後、亜硝酸ナトリウム溶液を混合物中にゆっくりと滴下した。この亜硝酸ナトリウム溶液は0.18g(2.6mmol)の亜硝酸ナトリウムを0.7mLの水に加えることにより調製した。上記混合溶液を氷浴中で10分間撹拌した後、ヨウ化カリウム溶液を混合物にゆっくりと滴下した。このヨウ化カリウム溶液は0.43g(2.6mmol)のヨウ化カリウムを2mLの水に加えることにより調製した。上記混合溶液を0℃から室温まで加熱して、その後1時間撹拌した。上記混合溶液の反応が完了した後、混合物が中性になるまで10%重炭酸ナトリウム溶液を混合溶液に加え、そして、混合物を酢酸エチルと水とで抽出した。その後、混合溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、濾過した後に濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製し、0.51gの白色固体の化合物(1−E)を得た。収率は94%であった。
【0037】
ステップ6:式(1−F)の化合物(以下、「化合物(1−F)」という)の合成
【化11】

【0038】
次に、0.32g(0.77mmol)の化合物(1−E)を5mLのTHFに溶解させ、0.34mL(0.85mmol)の2.5M n−BuLi溶液を、−78℃で加えた。その後、上記混合溶液を−78℃で30分間撹拌した後、0.12g(0.77mmol)の3−ペンチルシクロペンタノンを加えた。上記混合溶液を撹拌し、室温まで加熱して、そして、酢酸エチルで抽出し、水で抽出した。その後、反応溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、濾過した後に濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製した。得られた初期の生成物に、触媒としてKHSOを加え、これを溶媒を用いずに120℃まで加熱し、2時間反応させた。冷却した後、ヘキサンを加えて上記反応物を希釈し、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製した。0.17gの白色固体の化合物(1−F)が得られた。収率は53%であった。
【0039】
ステップ7:式(I−2)の化合物(以下、「化合物(I−2)」という)の合成
【化12】

【0040】
0.17g(0.4mmol)の化合物(1−F)を1mLのトルエン及び10mLのメタノールに加えた。4mgの10%Pd−Cを加えた後、上記混合溶液を水素雰囲気下で8時間撹拌した。濾過後の濾液を吸引した後、0.16gのグリース状の化合物(I−2)が得られた。収率は94%であった。
【0041】
(1H NMR, CDCl3, ppm) δ = 0.80-0.89 (m, 6H), 1.05-1.48 (m, 7H), 1.48-1.55 (m, 2H), 1.73-2.23 (m, 4H), 2.59-2.64 (t, 2H), 3.03-3.07 (m, 1H), 7.26-7.29 (m, 2H), 7.32-7.38 (m, 2H), 7.41-7.44 (m, 2H), 7.45-7.48 (m, 1H), 7.48-7.50 (m, 2H), 7.50-7.58 (m, 4H).
【0042】
(実施例2)式(I−4)の化合物の調製
【化13】

【0043】
ステップ1:式(2−A)の化合物(以下、「化合物(2−A)」という)の合成
【化14】

【0044】
初めに、10gの、式(2)で表される4−ブロモ−1−プロピルベンゼンを、二口フラスコに入れた。二口フラスコを加熱し、脱水THFを二口フラスコに注入した。二口フラスコを−78℃まで冷却した後、18mLのn−BuLi溶液を二口フラスコ中にゆっくりと滴下した。1時間反応温度を−78℃に維持した後、10mLの2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを二口フラスコ中にゆっくりと滴下した。反応を1時間続けた後、フラスコを室温まで加熱した。10mLの蒸留水を上記二口フラスコに加え、低圧でのエバポレーション−濃縮を行ってTHFを除去した。酢酸エチルと蒸留水とを用いて、得られた混合溶液を抽出した。その後、集めた有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、重力濾過により固体の無水硫酸マグネシウムを除去した。その後、得られた混合溶液に低圧でのエバポレーション−濃縮を行って溶媒を除去した。9.47gの白色固体の化合物(2−A)が得られた。収率は80%であった。
【0045】
ステップ2:式(2−B)の化合物(以下、「化合物(2−B)」という)の合成
【化15】

【0046】
次に、9.47gの化合物(2−A)、5.58gの4−ブロモ−2−フルオロベンゼンアミン、12.2gの炭酸カリウム、30mLの蒸留水、150mLのトルエン、及び界面活性剤として用いられる0.5mLのAliquate(商標)336を、250mLの二口フラスコに入れた。還流が生じるまで二口フラスコを加熱した後、触媒として用いられる0.5mLのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を二口フラスコに加えた。フラスコを還流させながら更に18時間加熱した。反応が完了した後、フラスコを室温まで冷却し、混合溶液を酢酸エチルと水とで抽出した。集めた全ての有機溶液を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、重力濾過により固体の無水硫酸マグネシウムを除去し、低圧でのエバポレーション−濃縮を行って溶媒を除去した。得られた生成物を15mLのジクロロメタンに溶解させ、150mLのヘキサンを用いて再沈殿させた。吸引濾過を行って固体を回収し、7gの黄色固体の化合物(2−B)を得た。収率は78%であった。
【0047】
ステップ3:式(2−C)の化合物(以下、「化合物(2−C)」という)の合成
【化16】

【0048】
次に、3gの化合物(2−B)を一口フラスコに入れ、30mLのTHFに溶解させ、該溶液を氷塩浴により5℃〜−5℃にまで冷却した。続いて、0.5mLの硫酸を一口フラスコ中にゆっくりと滴下した。10分間低温を保った後、5mLの2.9M ヨウ化カリウム溶液をフラスコ中にゆっくりと滴下し、そして、更に1時間低温を保った後、低圧でのエバポレーション−濃縮を行って溶媒を除去した。溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを行って生成物を精製し、1.5gの白色固体の化合物(2−C)を得た。収率は50%であった。
【0049】
ステップ4:式(2−D)の化合物(以下、「化合物(2−D)」という)の合成
【化17】

【0050】
1.5gの化合物(2−C)を二口フラスコに入れた。二口フラスコを加熱し、無水THFを二口フラスコに注入した。フラスコの温度を−78℃に冷却した後、2.6mLのn−BuLi溶液を二口フラスコ中にゆっくりと滴下した。1時間反応温度を−78℃に維持した後、0.45mLの3−プロピルシクロペンタノンをフラスコ中にゆっくりと滴下した。反応を1時間続けた。その後、二口フラスコを室温まで加熱し、そして、10mLの蒸留水をフラスコに加えた。低圧でのエバポレーション−濃縮を行ってTHFを除去し、そして、混合溶液を酢酸エチルと水とで抽出した。集めた全ての有機溶液を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、重力濾過を行って固体の無水硫酸マグネシウムを除去し、低圧でのエバポレーション−濃縮を行って溶媒を除去した。溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを行って生成物を精製し、0.6gの黄色液体の化合物(2−D)を得た。収率は40%であった。
【0051】
ステップ5:式(2−E)の化合物(以下、「化合物(2−E)」という)の合成
【化18】

【0052】
次に、0.6gの化合物(2−D)と1gの硫化水素カリウムを100mLの一口フラスコに入れ、120℃に加熱し、4時間反応させた。生成物を一口フラスコから取り出し、溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを行って生成物を精製し、0.55gの白色固体の化合物(2−E)を得た。収率は92%であった。
【0053】
ステップ6:式(I−4)の化合物(以下、「化合物(I−4)」という)の合成
【化19】

【0054】
最後に、0.55gの化合物(2−E)、10mgのPd−C、10mLのエタノール、及び8mLのトルエンを100mLの一口フラスコに入れた。室温で一口フラスコに水素を封入し、18時間反応させた。混合溶液について重力濾過を行ってPd−Cを除去し、低圧でのエバポレーション−濃縮を行って溶媒を除去した。溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーを行って生成物を精製し、0.5gの白色固体の化合物(I−4)を得た。収率は99%であった。
【0055】
(1H NMR, CDCl3, ppm) δ = 0.87-0.98 (m, 6H), 1.21-1.39 (m, 7H), 1.39-1.70 (m, 2H), 1.70-2.19 (m, 4H), 2.59-2.64 (t, 2H), 3.02-3.08 (m, 1H), 7.00-7.08 (m, 2H), 7.23-7.25 (d, 2H), 7.34-7.39 (t, 1H), 7.52-7.64 (m, 6H).
【0056】
(実施例3)式(I−1)の化合物の調製
【化20】

【0057】
ステップ1:化合物(1−E)の合成は、実施例1に示す通りである。 式(3−F)の化合物(以下、「化合物(3−F)」という)を合成した。
【化21】

【0058】
0.32g(0.77mmol)の化合物(1−E)を5mLのTHFに溶解させ、0.34mL(0.85mmol)の2.5M n−BuLiを−78℃で加えた。その後、上記混合溶液を−78℃で30分間撹拌した後、0.097g(0.77mmol)の3−ペンチルシクロペンタノンを加えた。上記混合溶液を撹拌し、室温まで加熱して、そして、酢酸エチルで抽出し、水で抽出した。その後、反応溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製した。得られた初期の生成物に、触媒としてKHSOを加え、これを溶媒を用いずに120℃まで加熱し、2時間反応させた。反応物を冷却した後、ヘキサンを加えて上記反応物を希釈して、そして、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製した。0.18gの白色固体の化合物(3−F)が得られた。収率は60%であった。
【0059】
ステップ2:式(I−1)の化合物(以下、「化合物(I−1)」という)の合成
【化22】

【0060】
最後に、0.17g(0.4mmol)の化合物(3−F)を1mLのトルエン及び10mLのメタノールに加えた。4mgの10%Pd−Cを加えた後、上記混合溶液を水素雰囲気下で8時間撹拌した。濾過後に濾液を吸引した後に、0.16gのグリース状の化合物(I−1)が得られた。収率は94%であった。
【0061】
(実施例4)式(I−3)の化合物の調製
【化23】

【0062】
ステップ1:式(3−A)の化合物(以下、「化合物(3−A)」という)の合成
【化24】

【0063】
3.2g(15mmol)の式(3)で表される4−ブロモ−1−ブチルベンゼン、4.2g(16.5mmol)のビス(ピナコレート)ジボロン、及び4.4g(45mmol)の酢酸カリウムを30mLのDMFに溶解させた。上記混合物を均一の状態になるまで撹拌した後、0.05gの1,1’−ビス((ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウムを加え、そして、得られた混合物を110℃まで加熱して、12時間撹拌した。反応後、50mLの水を混合物に加え、該混合物を酢酸エチルで抽出した。混合溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、濾過した後に濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、ヘキサン)を行って生成物を精製して、3.5gの淡黄色の化合物(3−A)を得た。収率は90%であった。
【0064】
ステップ2−7:式(I−3)の化合物(以下、「化合物(I−3)」という)の合成
【化25】

【0065】
これらの合成条件は、実施例1によるステップ2−7におけるものと同様である。
【0066】
(実施例5)式(I−5)の化合物の調製
【化26】

【0067】
ステップ1:式(4−B)の化合物(以下、「化合物(4−B)」という)の合成
【化27】

【0068】
1.4g(5.8mmol)の化合物(1−A)、及び1.1g(5.3mmol)の4−ブロモ−2−フルオロアニリンを20mLのトルエンに溶解させた。上記混合物を均一な状態になるまで撹拌した後、2.1g(15.8mmol)の炭酸カリウム、7mLの水、及び0.5mLのAliquate(登録商標)336を加え、そして、得られた混合物を、酸素を除去した容器で1時間反応させた。その後、0.24gのPd(PPhを加え、そして、混合溶液を85℃まで加熱して、12時間撹拌した。上記混合物を酢酸エチルで希釈して、水で抽出した。その後、上記混合溶液の有機層を無水硫酸マグネシウムにより脱水し、濾過した後に濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリコーン、酢酸エチル/ヘキサン=1/4)を行って生成物を精製して、0.91gの淡黄色固体の化合物(4−B)を得た。収率は70%であった。
【0069】
ステップ2−6:式(I−5)の化合物(以下、「化合物(I−5)」という)の合成
【化28】

【0070】
化合物(4−B)から化合物(I−5)を合成するステップは、実施例1によるステップ3−7におけるものと同様である。
【0071】
(比較例1−比較例3)
下記式(III)−(V)はそれぞれ、比較例1−比較例3による液晶化合物の化学構造を示す。比較例1及び比較例2による合成方法は、米国特許第4696549号明細書に開示された合成方法であり、比較例3による合成方法は、国際公開第2009/100204号に開示された合成方法である。
【化29】

【0072】
(液晶化合物の物理的特性の測定方法)
上記実施例1−5及び比較例1−3による化合物の相転移温度を測定した。結果を下記の表1に示す。
【0073】
表1において、結晶相をCで表し、スメクチック相をSで表し、ネマチック相をNで表し、液相(等方相)をIで表す。スメチック相では、スメチックB層とスメチックA層とを区別するために、それぞれS及びSで表す。S及びSを完全に区別できないときは、Xを用いて、S又はSであること、を表す。相転移温度の記号として、例えば、「C 40 N 130 I」は、結晶相−ネマチック相の転移温度が40℃(ネマチック相下限温度が40℃)であり、ネマチック相−液相の転移温度が130℃であることを意味する。他の記号も同様に付される。
【0074】
上記実施例1−5及び比較例1−3による化合物のネマチック相の温度間隔(ΔT)を計算した。結果を下記の表1に示す。
【0075】
上記実施例1−5及び比較例1−3による化合物の光学異方性を測定した(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)。結果を下記の表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1によれば、本発明による液晶化合物は、45℃未満となり得るネマチック相下限温度、及び優れた光学異方性を備える。更に実施例2〜5による化合物も、高いΔT値を有する。そのため、本発明による液晶化合物はより広い温度範囲において用いることができ、これによりその実用的価値が高まったことがわかる。
【0078】
上記に関して、本発明による液晶化合物は、低いネマチック相下限温度、及び高い光学異方性を有するため、液晶化合物の今後の応用及び開発に有益である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、低いネマチック相下限温度、及び高い光学異方性を有する液晶化合物に関し、この液晶化合物を用いた表示装置は、広い温度範囲において用いることができ、且つ高いコントラストを備えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、炭素原子が1〜10個のアルキル基、又は炭素原子が2〜10個のアルケニル基を表し;アルキル基及びアルケニル基は、非置換型、又は−O−、−CO−、若しくは−COO−基による置換型であり;X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素又はフッ素を表し、X、X、X及びXの少なくとも1つはフッ素であり;mは1、2又は3であり;nは0、1又は2であり;2≦m+n≦3を満たす]で表される、光学異方性を備える液晶化合物。
【請求項2】
式(I)において、R2はプロピル基、ブチル基又はアミル基である、請求項1に記載の光学異方性を備える液晶化合物。
【請求項3】
式(I)において、Xはフッ素であり、X、X及びXはHである、請求項1又は2に記載の光学異方性を備える液晶化合物。
【請求項4】
式(I)において、Xはフッ素であり、X、X及びXはHである、請求項1又は2に記載の光学異方性を備える液晶化合物。
【請求項5】
式(I)において、X及びXはフッ素であり、X及びXはHである、請求項1又は2に記載の光学異方性を備える液晶化合物。

【公開番号】特開2012−224853(P2012−224853A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−92767(P2012−92767)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(508054404)達興材料股▲ふん▼有限公司 (8)
【Fターム(参考)】