説明

液晶媒体

【課題】従来技術の欠点を有しないか、または有していても比較的低い程度にのみであり、同時に特に低い温度において、高い正の誘電異方性、低いしきい値電圧、短い応答時間、および極めて良好な急峻度を有する、特にTNおよびSTNディスプレイのための新規な化合物および液晶媒体を提供する。
【解決手段】本発明は、式I


で表される化合物を含む液晶媒体並びに、前記媒体を含む液晶ディスプレイ、特にねじれネマティック(TN)および超ねじれネマティック(STN)液晶ディスプレイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体並びに、極めて短い応答時間並びに良好な急峻度および角度依存性を有する、これを含む液晶ディスプレイ、特にねじれネマティック(TN)および超ねじれネマティック(STN)液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
TNディスプレイは、例えば、M. SchadtおよびW. Helfrich, Appl. Phys. Lett., 18, 127 (1971)から知られている。STNディスプレイは、例えば、EP 0 131 216 B1; DE 34 23 993 A1; EP 0 098 070 A2; M. SchadtおよびF. Leenhouts, 17th Freiburg Congress on Liquid Crystals (8.-10.04.87); K. Kawasakiら、SID 87 Digest 391 (20.6); M. SchadtおよびF. Leenhouts, SID 87 Digest 372 (20.1); K. Katohら、Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 26, No. 11, L 1784-L 1786 (1987); F. Leenhoutsら、Appl. Phys. Lett. 50 (21), 1468 (1987); H.A. van SprangおよびH.G. Koopman, J. Appl. Phys. 62 (5), 1734 (1987); T.J. SchefferおよびJ. Nehring, Appl. Phys. Lett. 45 (10), 1021 (1984), M. SchadtおよびF. Leenhouts, Appl. Phys. Lett. 50 (5), 236 (1987)並びにE.P. Raynes, Mol. Cryst. Liq. Cryst. Letters Vol. 4 (1), pp. 1-8 (1986)から知られている。
【0003】
STNの用語は、ここでは、160°〜360°の値を有するねじれ角を有するすべての比較的高度にねじれたディスプレイ素子、例えばWatersら(C.M. Watersら、Proc. Soc. Inf. Disp. (New York) (1985)(3rd Intern. Display Conference, 日本国神戸)によるディスプレイ素子、STN−LCD(DE-A 35 03 259)、SBE−LCD(T.J. SchefferおよびJ. Nehring, Appl. Phys. Lett. 45 (1984) 1021)、OMI−LCD(M. SchadtおよびF. Leenhouts, Appl. Phys. Lett. 50 (1987), 236、DST−LCD(EP-A 0 246 842)またはBW−STN−LCD(K. Kawasakiら、SID 87 Digest 391 (20.6))を包含する。
【0004】
STNディスプレイは、標準的なTNディスプレイと比較して、電気光学的特性曲線の顕著に一層良好な急峻度および、これに関連して一層良好なコントラスト値により、並びにコントラストの顕著に一層低い角度依存性により、優れている。
【0005】
特に興味深いのは、特にまた比較的低い温度において極めて短い応答時間を有するTNおよびSTNディスプレイである。短い応答時間を達成するために、液晶混合物の回転粘度は、現在まではほとんど比較的高い蒸気圧を有するモノトロピック単変性添加剤を用いて最適化されていた。しかし、達成された応答時間は、すべての用途について適切ではなかった。
【0006】
本発明のディスプレイにおいて急峻な電気光学的特性曲線を達成するために、液晶混合物は、弾性定数K33/K11間の比率についての比較的大きい値およびΔε/εについての比較的小さい値を有しなければならず、ここでΔεは誘電異方性であり、εは分子長軸に垂直な誘電定数である。
【0007】
コントラストおよび応答時間の最適化に加えて、他の重要な要求が、このタイプの混合物についてなされる:
1.広いd/pウインドウ
2.高い長期間の化学的安定性
3.高い電気抵抗
4.しきい値電圧の低い周波数および温度依存性。
【0008】
達成されたパラメーターの組み合わせは、特に高いマルチプレックスのSTNディスプレイ(約1/400の程度のマルチプレックス比を有する)、しかしまた中程度の、および低いマルチプレックスのSTNディスプレイ(それぞれ約1/64および1/16の程度のマルチプレックス比を有する)並びにTNディスプレイについては、尚適切とはほど遠い。これは、種々の要求が反対の方式で材料パラメーターにより影響されるという事実に、部分的に起因する。
【0009】
従って、極めて短い応答時間および同時に大きい動作温度範囲、高い特性曲線の急峻度、コントラストの良好な角度依存性および低いしきい値電圧を有し、前述の要求を満たすTNおよびSTNディスプレイ、特に中程度の、および低いマルチプレックスのSTNディスプレイについての多大な要求が継続している。
【0010】
さらに、現代の用途、例えば遠隔通信などには、所要の低いしきい値電圧を達成するために、高い正の値の誘電異方性Δεを有する液晶混合物が必要である。しかし、低下したしきい値電圧により、しばしば応答時間の増大がもたらされる。従って、Δεの高い正の値および同時に迅速な応答時間を有する液晶混合物を提供する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述の欠点を有しないか、または有していても比較的低い程度にのみであり、同時に特に低い温度において、高い正のΔε、低いしきい値電圧、短い応答時間、および極めて良好な急峻度を有する、特にTNおよびSTNディスプレイのための新規な化合物および液晶媒体を提供する目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで、この目的は、本発明の液晶媒体を用いる場合に達成することができることが、見出された。
本発明は、式I
【化1】

で表される化合物を含む液晶媒体に関する。
【0013】
本発明のTNおよびSTNディスプレイのための混合物において式Iで表される化合物を用いることにより、以下のことがもたらされる。
・電気光学的特性曲線の一層高い急峻度、
・改善された周波数依存性による、動作電圧の一層低い温度依存性、
・特に低い温度における一層迅速な応答時間。
【0014】
式Iで表される化合物により、特にTNおよびSTN混合物の応答時間が顕著に短縮され、一方同時に誘電異方性および急峻度が増大し、しきい値電圧の温度依存性が低下する。
さらに、本発明の混合物は、以下の利点により優れている:
−これらは、低い粘度を有する、
−これらは、低いしきい値電圧および動作電圧を有する、並びに
−これらは、低い温度でディスプレイにおいて長い保存寿命をもたらす。
【0015】
本発明はさらに、
−フレームと共にセルを形成する2つの外側板、
−セル中に配置された、正の誘電異方性を有するネマティック液晶混合物、
−外側板の内側上の、配向層を有する電極層、
−0°〜30°の、外側板の表面における分子の長軸と外側板との間のティルト角、および
−22.5°〜600°の値を有する、配向層毎のセル中の液晶混合物のねじれ角、
【0016】
−a)+1.5より高い誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる液晶成分A15〜75重量%;
b)−1.5〜+1.5の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる液晶成分B25〜85重量%;
c)−1.5より低い誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる液晶成分D0〜20重量%および
d)所望により、層の厚さ(外側板の距離)とキラルなネマティック液晶混合物のナチュラルピッチとの間の比率が約0.2〜1.3であるような量の、光学的に活性な成分C
からなるネマティック液晶混合物
を有する液晶ディスプレイであって、
ネマティック液晶混合物が、本明細書中に記載したように定義されていることを特徴とする、前記ディスプレイに関する。
【0017】
本発明はまた、本発明の液晶混合物を含む、TNおよびSTNディスプレイ、特に中程度の、および低いマルチプレックスのSTNディスプレイに関する。
式Iで表される化合物を本発明の液晶混合物において用いる結果、特に低い回転粘度値並びに、特に低い温度において高い急峻度および迅速な応答時間を有するTNおよびSTNディスプレイが得られる。
【0018】
式Iで表される化合物に加えて、本発明の液晶混合物は、さらに、好ましくは式II
【化2】

式中、
Aは、1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
aは、0または1であり、
は、2〜9個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
は、非置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されている、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基はまた、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−により置換されていてもよい、
で表される1種または2種以上のアルケニル化合物を含む。
【0019】
式IIで表される特に好ましい化合物は、以下の式:
【化3】

式中、R3aおよびR4aは、互いに独立して、H、CH、Cまたはn−Cであり、alkylは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である、
から選択されたものである。
【0020】
特に好ましいのは、式IIaで表され、特に式中R3aおよびR4aがHまたはCHである化合物、並びに式IIe、IIf、IIg、IIhおよびIIiで表され、特に式中R3aがHまたはCHである化合物である。
−1.5〜+1.5の誘電異方性を有する(「誘電的に中性の」)式IおよびIIで表される化合物は、上記で定義した成分Bの一部である。
【0021】
式IおよびIIで表される化合物に加えて、本発明の液晶混合物は、さらに、好ましくは、正の誘電異方性を有する式IIで表される1種または2種以上のアルケニル化合物を含む。
【化4】

式中、
は、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
Qは、CF、OCF、CFH、OCFHまたは単結合であり、
Yは、FまたはClであり、
およびLは、互いに独立してHまたはFである。
【0022】
特に好ましいのは、式IIで表され、式中Lおよび/またはLがFであり、Q−YがFまたはOCFである化合物である。
さらに好ましいのは、式IIで表され、式中Rが2〜7個、好ましくは2個、3個または4個の炭素原子を有する1E−アルケニルまたは3E−アルケニルである化合物である。
【0023】
極めて好ましいのは、式II
【化5】

式中、R3aは、H、CH、Cまたはn−C、特にHまたはCHである、
で表される化合物である。
【0024】
+1.5より大きい誘電異方性を有する式IIで表される極性化合物は、上記で定義した成分Aの一部である。
好ましい液晶混合物は、成分Aの1種または2種以上の化合物を、好ましくは15%〜75%、一層好ましくは20%〜65%の比率で含む。これらの化合物は、好ましくは、Δε≧+3、一層好ましくはΔε≧+8および最も特に好ましくはΔε≧+12の誘電異方性を有する。
【0025】
成分Aは、好ましくは、以下の式
【化6】

【0026】
【化7】

式中、
Rは、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシまたはアルケニル基であり、ここで、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基はまた、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−により置換されていてもよく、
、L、LおよびLは、互いに独立して、HまたはFである、
から選択された1種または2種以上のシアノ化合物を含む。
【0027】
これらの化合物中のRは、好ましくは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシまたは2〜7個の炭素原子を有するアルケニルである。
極めて好ましいのは、特に式中Lおよび/またはLがFである、式IIIb、IIIc、IIIdおよびIIIe、さらにIIIgから選択された1種または2種以上の化合物を含む混合物である。
【0028】
さらに好ましいのは、式IIIcおよび/またはIIIdで表され、式中Rが2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、好ましくは−アルケニルまたは3E−アルケニル、一層好ましくはビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、3E−ブテニルまたは3E−ペンテニル、最も好ましくは1E−ブテニルである、1種または2種以上の化合物を含む混合物である。
【0029】
さらに好ましいのは、式IIIdで表され、式中LおよびLがHである、1種または2種以上の化合物を含む混合物である。
好ましい液晶混合物は、好ましくは25〜85%の成分Bの1種または2種以上の化合物を含む。群Bからの化合物は、特に、回転粘度γについてのこれらの低い値により優れている。
【0030】
成分Bは、好ましくは、さらに以下の式
【化8】

で表される二環式化合物からなる群から選択された1種もしくは2種以上の化合物および/または以下の式
【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

で表される三環式化合物からなる群から選択された1種もしくは2種以上の化合物および/または以下の式
【0033】
【化11】

で表される四環式化合物からなる群から選択された1種もしくは2種以上の化合物を含み、
【0034】
ここで、
およびRは、各々独立して、非置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されている、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基はまた、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−により置換されていてもよく、
Lは、HまたはFであり、
またここで、式IV10〜IV19および式IV23〜IV33中の1,4−フェニレン基は、随意にFにより単置換または多置換されている。
【0035】
特に好ましいのは、式IV27〜IV33で表され、式中、各々1〜7個の炭素原子を有する、Rがアルキルであり、Rがアルキルまたはアルコキシ、特にアルコキシである化合物である。好ましいのは、さらに、式IV27およびIV33で表され、式中LがFである化合物である。
【0036】
特に好ましいのは、式IV12、IV27およびIV32で表される化合物である。
式IV1〜IV33で表される化合物中のRおよびRは、特に好ましくは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状アルキルまたはアルコキシである。
【0037】
特に好ましいのは、式IV24で表され、好ましくは式中Rが2〜7個の炭素原子を有するアルケニルである、極めて好ましくは式IV24aおよびIV24b
【化12】

式中、R3aは、上記で定義した通りである、
から選択された1種または2種以上の化合物を含む、本発明の混合物である。
【0038】
他の好ましい態様において、液晶混合物は、式Ta〜Ti
【化13】

式中、RおよびRは、上記の式IVにおいて定義した通りであり、
は、−CO−O−、−CHCH−または単結合であり、また
〜Lは、互いに独立してHまたはFである、
からなる群から選択された1種または2種以上のトラン化合物を含む。
【0039】
特に好ましいのは、式Ta、TbおよびTcで表される化合物である。
【0040】
他の好ましい態様において、本発明の液晶混合物の成分Aは、さらに、好ましくは、以下の式
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
【化17】

から選択された1種もしくは2種以上の3,4,5−トリフルオロフェニル化合物および/または以下の式
【0044】
【化18】

【0045】
【化19】

【0046】
【化20】

式中、Rは、式IIIにおいて定義した通りであり、LおよびLは、互いに独立してHまたはFである、
から選択された、極性の末端基を有する1種もしくは2種以上の化合物を含む。好ましくは、これらの化合物中のRは、1〜8個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシである。
【0047】
特に好ましいのは、式Va、Vb、Vc、Vd、Vm、VnおよびVImで表される化合物、特に式Va、Vm、VnおよびVImで表される化合物である。
【0048】
他の好ましい態様において、液晶混合物は、1種または2種以上、特に好ましくは1種、2種または3種の、式VIIaおよび/またはVIIb
【化21】

式中、RおよびRは、Rを式IIIにおいて定義したように定義されており、Yは、FまたはClである、
で表される複素環式化合物を含む。
【0049】
所望により、液晶混合物は、光学的に活性な成分Cを、層の厚さ(外側板の距離)とキラルなネマティック液晶混合物のナチュラルピッチとの間の比率が0.2より大きいような量で含む。数種が商業的に入手できる多数のキラルなドーパントは、当業者に、成分、例えばMerck KGaA, Darmstadtからのノナン酸コレステリル、S−811、S−1011、S−2011、S−3011、S−4011またはCB15について有用である。ドーパントの選択は、自体決定的ではない。
【0050】
成分Cの化合物の比率は、好ましくは0〜10%、一層好ましくは0〜5%および特に0〜3%である。
本発明の混合物はまた、所望により、−2より低い誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物(成分D)を20%まで含んでいてもよい。
【0051】
混合物が成分Dの化合物を含む場合には、これらは、好ましくは、構造単位2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンを含む1種または2種以上の化合物、例えばDE-A 38 07 801、38 07 861、38 07 863、38 07 864および38 07 908に記載されている化合物である。特に好ましいのは、国際特許出願WO 88/07514に記載されているこの構造単位を含むトラン類である。
【0052】
成分Dの他の既知の化合物は、例えば、DE-A 32 31 707およびDE-A 34 07 013に記載されている、構造単位
【化22】

を含む2,3−ジシアノヒドロキノン類の誘導体またはシクロヘキサン誘導体である。
本発明の液晶ディスプレイは、好ましくは、成分Dの化合物を含まない。
【0053】
RおよびR〜Rの定義における用語「アルケニル」は、直鎖状および分枝状アルケニル基、特に直鎖状基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特にC〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。
【0054】
好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3E−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までの炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0055】
特に好ましい態様において、液晶混合物は、以下のものを含む。
−式IIa〜IIiおよび/またはIIから選択された1種または2種以上の化合物、
−式IIIa〜IIIiから選択された1種または2種以上の化合物、
−式IV24で表される1種または2種以上の化合物、
−式Ta〜Tcから選択された1種または2種以上の化合物、
−式IV12および/またはIV27および/またはIV32から選択された1種または2種以上の化合物。
【0056】
他の特に好ましい態様において、液晶混合物は、
−2〜30%、好ましくは4〜20%の式Iで表される化合物、
−0〜30%、好ましくは3〜20%の式IV24で表される化合物、
−8〜70%、好ましくは14〜60%の式IIa〜IIiおよび/またはIIで表される化合物、
−4〜50%、好ましくは5〜40%の式Ta〜Tcで表される化合物、
−5〜40%、好ましくは10〜30%の式IIIa〜IIIiで表される化合物、
−0〜20%、好ましくは2〜10%の式IV12および/またはIV27および/またはIV32で表される化合物
を含む。
【0057】
前述の式およびこれらの従属式で表される個別の化合物並びに本発明の混合物またはTNおよびSTNディスプレイにおいて用いることができる他の化合物は、知られているかまたは既知の化合物と同様にして調製することができる。
本発明の混合物は、特に大きい層の厚さを有するTNおよびSTNディスプレイにおいて用いるにあたり、極めて低い合計応答時間(tsum=ton+toff)により優れている。
【0058】
本発明のTNおよびSTNセルにおいて用いる液晶混合物は、好ましくは誘電的に正であり、Δε≧1である。好ましいのは、Δε≧5である液晶混合物である。
本発明の液晶混合物の透明点は、好ましくは80℃またはこれより高く、一層好ましくは90℃またはこれより高い。
【0059】
本発明の液晶混合物は、しきい値電圧V10/0/20および回転粘度γについての好ましい値を有する。光学的経路差異d・Δnについての値が予め特定されている場合には、層の厚さdについての値は、光学異方性Δnにより決定される。特に、d・Δnについての比較的高い値において、光学異方性についての比較的高い値を有する本発明の液晶混合物を用いることは、一般的に好ましい。その理由は、dについての値を次に、比較的小さく選択することができ、この結果応答時間についての一層好ましい値が得られるからである。しかし、Δnについての比較的小さい値を有する本発明の液晶混合物を含む本発明の液晶ディスプレイはまた、応答時間についての有利な値により特徴づけられる。
【0060】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、>0.12、極めて好ましくは≧0.14である複屈折Δnを有する。さらに好ましくは、本発明の液晶混合物は、<0.25である、極めて好ましくは≦0.22である複屈折Δnを有する。
【0061】
本発明の液晶混合物は、さらに、電気光学的特性曲線の急峻度についての有利な値により特徴づけられ、特に20℃より高い温度において高いマルチプレックス比で動作することができる。さらに、本発明の液晶混合物は、高い安定性並びに電気抵抗およびしきい値電圧の周波数依存性についての好ましい値を有する。本発明の液晶ディスプレイは、大きい動作温度範囲およびコントラストの良好な角度依存性を有する。
【0062】
偏光板、電極ベースプレートおよび、各々の場合においてこれに隣接する液晶分子の優先的な配向(ダイレクター)が通常、一方の電極から他方の電極まで160°〜720°の値でねじれているようにした表面処理を有する電極からの本発明の液晶ディスプレイ素子の構造は、このタイプのディスプレイ素子についての通常の構造に相当する。用語「通常の構造」は、ここでは、広く引用され、またTNおよびSTNセルのすべての派生物および修正物、特にまたマトリックスディスプレイ素子および追加の磁石を含むディスプレイ素子を包含する。
【0063】
2つの外側板における表面ティルト角は、同一であっても異なっていてもよい。同一のティルト角が好ましい。好ましいTNディスプレイは、外側板の表面における分子の長軸と外側板との間の、0°〜7°、好ましくは0.01°〜5°および特に0.1〜2°のプレティルト角を有する。STNディスプレイにおいて、プレティルト角は、1°〜30°、好ましくは1°〜12°および特に3°〜10°である。
【0064】
セル中のTN混合物のねじれ角は、22.5°〜170°、好ましくは45°〜130°および特に80°〜115°の値を有する。配向層間のセルにおけるSTN混合物のねじれ角は、100°〜600°、好ましくは170°〜300°および特に180°〜270°の値を有する。
【0065】
本発明の液晶混合物はまた、コレステリック液晶ディスプレイ、特にSSCT(「表面安定化コレステリック組織」)およびPSCT(「ポリマー安定化コレステリック組織」)ディスプレイにおいて用いるための液晶媒体として好適であり、これは、例えばWO 92/19695、US 5,384,067、US 5,453,863、US 6,172,720およびUS 5,661,533に記載されている通りである。コレステリック液晶ディスプレイは、典型的には、ネマティック成分および光学的に活性な成分からなるコレステリック液晶媒体を含み、TNおよびSTNディスプレイと比較して、顕著に一層高いらせんねじれを示し、円偏光した光の選択的な反射を示す。反射波長は、コレステリックらせんのピッチとコレステリック液晶媒体の平均の屈折率との積により、与えられる。
【0066】
この目的のために、1種または2種以上のキラルなドーパントを、本発明の液晶混合物に加え、ここで、ドーパントのねじれ力および濃度を、得られた液晶媒体が室温でコレステリック相を有し、好ましくは電磁スペクトルの可視、UVまたはIR範囲内、特に400〜800nmの範囲内にある反射波長を有するように、選択する。
【0067】
好適なキラルなドーパントは、専門家に知られており、商業的に入手でき、これは、例えば、ノナン酸コレステリル(CN)、CB−15、R/S−811、R/S−1011、R/S−2011、R/S−3011、R/S−4011およびR/S−5011(Merck KGaA, Darmstadt)である。特に好適なのは、キラルな糖基を含む高いねじれ力を有するドーパント、特にソルビトール、マンニトールまたはイジトールの誘導体、極めて好ましくはソルビトール誘導体であり、これはWO 98/00428に開示されている通りである。さらに好ましいのは、GB 2,328,207に記載されているヒドロベンゾイン基を含むドーパント、WO 02/94805に記載されているキラルなビナフチル誘導体、WO 02/34739に記載されているキラルなビナフトールアセタール誘導体、WO 02/06265に記載されているキラルなTADDOL誘導体並びにWO 02/06196およびWO 02/06195に記載されている、少なくとも1つのフッ素化結合基および末端の、または中心のキラルな基を有するキラルなドーパントである。
【0068】
2種または3種以上のドーパントを用いる場合には、これらは、同一の、または反対のねじれ方向およびねじれの一次温度係数の同一の、または反対の符号を示し得る。
【0069】
ネマティック成分として本発明の液晶混合物および、光学的に活性な成分として1種または2種以上のキラルなドーパントを含む、コレステリック液晶媒体は、本発明の他の目的である。本発明の尚他の目的は、上記のコレステリック液晶媒体を含むコレステリック液晶ディスプレイ、特にSSCTおよびPSCTディスプレイである。
【0070】
本発明において用いることができる液晶混合物は、自体慣用の方式で、例えば式Iで表される化合物を前述の式から選択された1種または2種以上の化合物と、および随意に他の化合物または添加剤と混合することにより、調製される。一般的に、少ない方の量で用いられる成分の所望の量を、主成分を構成する成分に、有利には加温して溶解する。また、成分を有機溶媒、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノールに溶解した溶液を混合し、十分に混合した後に、溶媒を再び、例えば蒸留により除去することも、可能である。混合物を調製する方法は、本発明の他の観点である。
【0071】
誘電体はまた、当業者に知られており、文献中に記載されている他の添加剤を含んでいてもよい。例えば、0〜15%の多色性色素、ナノ粒子、安定剤またはキラルなドーパントを、加えることができる。好適なドーパントおよび安定剤を、以下の表CおよびDに示す。
【0072】
本出願において、および以下の例において、液晶化合物の構造を、頭文字により示し、化学式への変換を、表AおよびBに従って行う。すべての基C2n+1およびC2m+1は、それぞれn個およびm個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。アルケニル基は、トランス構造を有する。表Bのコード付けは自明である。表Aにおいて、基本構造についての頭文字のみを示す。個別の場合において、基本構造についての頭文字の後に、ダッシュにより分離されて、置換基R、R、L、LおよびLについての以下の表に示すコードが続く。
【0073】
【表1】

【0074】
TNおよびSTNディスプレイは、好ましくは表AおよびBからの1種または2種以上の化合物から構成される液晶混合物を含む。
表A:(L、L、L=HまたはF)
【0075】
【化23】

【0076】
【化24】

【0077】
【化25】

【0078】
表C
表Cは、本発明の混合物において好ましく用いられるドーパントを示す:
【化26】

【0079】
【化27】

【0080】
表D
例えば本発明の混合物に加えることができる安定剤を、以下に示す:
【化28】

【0081】
【化29】

【0082】
【化30】

【0083】
【化31】

【化32】

【0084】
本発明の前述の態様に対する変系も、尚本発明の範囲内で成し得ることが認められるであろう。本明細書中に開示した各々の特徴は、他に述べない限り、同一の、同等の、または同様の目的を奏する代替の特徴により置き換えることができる。従って、他に述べない限り、開示した各々の特徴は、一般的な一連の同等の、または同様の特徴の1つのみの例である。
【0085】
本明細書中に開示した特徴のすべてを、このような特徴および/または段階の少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除くすべての組み合わせにおいて、組み合わせてもよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての観点に適用可能であり、すべての組み合わせにおいて用いることができる。同様に、必須ではない組み合わせにおいて記載した特徴を、別個に(組み合わせてではなく)用いてもよい。
【0086】
上記の特徴の多くは、特に好ましい態様は、独立して新規であり、同時に本発明の態様の単なる一部としてではないことが、認められるであろう。本出願中でクレームしたすべての発明に加えて、またはこれに代えて、これらの特徴について独立した保護を求めることができる。
【0087】
以下の略語を用いる:
Clp. 透明点(ネマティック−アイソトロピック相転移温度)、
S−N スメクティック−ネマティック相転移温度、
Δn 光学異方性(589nm、20℃)、
Δε 誘電異方性(1kHz、20℃)、
ν 流動粘度(T/℃においてmm・s−1)、
γ 回転粘度(20℃においてmPa・s)、
弾性定数(「広がり」、20℃においてpN)、
弾性定数(「ねじれ」、20℃においてpN)、
弾性定数(「曲がり」、20℃においてpN)、
S 特性曲線の急峻度=(1−V90/V10100、
d セルギャップ(μm)、
P コレステリックピッチ(μm、20℃において)、
HTP S−811のらせんねじれ力(μm−1、20℃において)、
【0088】
10 しきい値電圧=10%の相対的コントラストにおける特性電圧、
50 ミッドグレー(mid-grey)電圧=50%の相対的コントラストにおける特性電圧、
90 飽和電圧=90%の相対的コントラストにおける特性電圧、
τ V(τon=τoff)における応答時間τon+τoff
τon 0%から90%までの相対的コントラストの増大時間
τoff 100%から10%までの相対的コントラストの減少時間
M マルチプレックス比および
B バイアス比。
【0089】
本明細書中で、すべての温度を、℃で示す。百分率は、重量パーセントである。すべての値は、他に述べない限り20℃に関する。ディスプレイは、他に述べない限り、240°のねじれを有し、1/64のマルチプレックス比および1/7のバイアスでアドレスされる。他に述べない限り、光学的遅延は0.85μmであり、d/P比は0.52である。
【実施例】
【0090】
ここで、本発明を、以下の例を参照することにより一層詳細に記載し、これは例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
以下の例に示す液晶混合物を、これ自体調製し、調査する。次に、各々これらの液晶混合物の1種を含むSTNディスプレイを、製造し、調査する。それぞれの組成物および対応する結果を、以下に示す。
【0091】
例1
【表2】

【0092】
例2
【表3】

【0093】
例3
【表4】

【0094】
例4
【表5】

【0095】
例5
【表6】

【0096】
例6
【表7】

【0097】
例7
【表8】

【0098】
例8
【表9】

【0099】
例9
【表10】

【0100】
例10
【表11】

【0101】
例11
【表12】

【0102】
例12
【表13】

【0103】
例13
【表14】

【0104】
例14
【表15】

【0105】
例15
【表16】

【0106】
例16
【表17】

【0107】
例17
【表18】

【0108】
例18
【表19】

【0109】
例19
【表20】

【0110】
例20
【表21】

【0111】
例21
【表22】

【0112】
例22
【表23】

【0113】
例23
【表24】

【0114】
例24
【表25】

【0115】
例25
【表26】

【0116】
例26
【表27】

【0117】
例27
【表28】

【0118】
例28
【表29】

【0119】
例29
【表30】

【0120】
例30
【表31】

【0121】
例31
【表32】

【0122】
例32
【表33】

【0123】
例33
【表34】

【0124】
例34
【表35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶媒体であって、これが、式I
【化1】

で表される化合物を含むことを特徴とする、前記液晶媒体。
【請求項2】
さらに、以下の式
【化2】

式中、R3aは、H、CH、Cまたはn−Cであり、「alkyl」は、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である、
から選択された1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶媒体。
【請求項3】
さらに、式II
【化3】

式中、
Aは、1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
aは、0または1であり、
は、2〜9個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
は、非置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されている、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基はまた、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−により置換されていてもよい、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶媒体。
【請求項4】
さらに、以下の式
【化4】

【化5】

式中、
Rは、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシまたはアルケニル基であり、ここで、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基はまた、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−により置換されていてもよく、
、L、LおよびLは、互いに独立して、HまたはFである、
から選択された1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項5】
さらに、以下の式
【化6】

式中、
およびRは、各々独立して、非置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されている、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基はまた、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−により置換されていてもよい、
から選択された1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項6】
さらに、以下の式
【化7】

式中、RおよびRは、請求項5において定義した通りであり、Lは、HまたはFである、
から選択された1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項7】
−2〜30%の式Iで表される化合物、
−0〜30%の式IV24aおよび/またはIV24bで表される化合物、
−8〜70%の式IIa〜IIiおよび/またはIIで表される化合物、
−4〜50%の式Ta〜Tcで表される化合物、
−5〜40%の式IIIa〜IIIiで表される化合物、
−0〜20%の式IV12および/またはIV27および/またはIV32で表される化合物
を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体または化合物の、電気光学的目的のための使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体を含む、電気光学的液晶ディスプレイ。
【請求項10】
−フレームと共にセルを形成する2つの外側板、
−セル中に配置された、正の誘電異方性を有するネマティック液晶混合物、
−外側板の内側上の、配向層を有する電極層、
−0°〜30°の、外側板の表面における分子の長軸と外側板との間のティルト角、および
−22.5°〜600°の値を有する、配向層毎のセル中の液晶混合物のねじれ角、
−a)+1.5より高い誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる液晶成分A15〜75重量%;
b)−1.5〜+1.5の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる液晶成分B25〜85重量%;
c)−1.5より低い誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる液晶成分D0〜20重量%および
d)所望により、層の厚さ(外側板の距離)とキラルなネマティック液晶混合物のナチュラルピッチとの間の比率が約0.2〜1.3であるような量の、光学的に活性な成分C
からなるネマティック液晶混合物
を有するTNまたはSTN液晶ディスプレイであって、
ネマティック液晶混合物が、請求項1〜8のいずれかに記載の媒体であることを特徴とする、前記ディスプレイ。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体の調製方法であって、請求項1に記載の化合物を、請求項2〜7のいずれかに記載の1種もしくは2種以上の化合物または1種もしくは2種以上の他の化合物および/または添加剤と混合することによる、前記方法。

【公開番号】特開2008−50608(P2008−50608A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217817(P2007−217817)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】