説明

液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子

【課題】
熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、適切な光学異方性、および大きな弾性定数K33を有し、負に大きな誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供する。また、同様な特性を有する液晶組成物を提供する。さらに、応答時間が短く、消費電力が小さく、駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能である液晶表示素子を提供する。
【解決手段】


シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、またはベンゼン環と、ブテン結合基との組み合わせを有する2,3−ジフルオロベンゼン誘導体(1)である。この化合物を含有する液晶組成物であり、この組成物を含有する液晶表示素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくはブテン結合基を有する、2,3−ジフルオロベンゼンベンゼン誘導体、この化合物を含有したネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、液晶表示モジュール等に代表される液晶表示素子は、液晶性化合物が有する光学異方性、誘電率異方性などを利用したものである。この液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モード、PSA(polymer sustained alignment)などの様々なモードが知られている。
【0003】
これら動作モードの中でも、ECBモード、IPSモード、VAモードなどは、液晶分子の垂直配向性を利用した動作モードであり、特に、IPSモードおよびVAモードは、TNモード、STNモードなどの従来の表示モードの欠点である視野角の狭さを改善可能であることが知られている。
【0004】
これら動作モードの液晶表示素子に使用可能な、負の誘電率異方性を有する液晶組成物の成分として、ベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられた液晶性化合物が、従来から数多く検討されてきている。
【0005】
例えば、ベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられた化合物(A)が検討されている(特許文献1参照)。しかし、この化合物は光学異方性が小さい。ベンゼン環上の水素がフッ素で置き換えられ、アルケニルを有する化合物(B)が検討されている(特許文献2参照)。しかし、この化合物の光学異方性は十分に大きくない。
【0006】
エーテル結合基を有する3環の化合物(C)が示されている(特許文献3、非特許文献1参照)。この化合物は液晶相を示す温度範囲(メソフェーズ範囲)が狭く、さらにそれを液晶組成物にしたときのネマチック相の上限温度が低い。
【0007】
エチレン結合基を有する4環の化合物(D)が示されている(特許文献4参照)。しかし、この化合物は誘電率異方性が十分に負に大きくなく、それを液晶組成物にしたときの上限温度が低い。
【0008】
エーテル結合基およびはエチレン結合基を有する4環の化合物(E)が示されている(特許文献5参照)。しかし、この化合物は、それを液晶組成物にしたときの上限温度が低い。
【0009】
ブテン結合基とエステル結合基を有する3環の化合物(F)が示されている(特許文献6参照)。しかし、この化合物は、誘電率異方性が十分に負に大きくなく、粘度も高く、それを液晶組成物にしたときの上限温度は低い。
【0010】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表平02−503441公報
【特許文献2】特開2000−53602公報
【特許文献3】独国出願公開第3906058号明細書
【特許文献4】国際公開第89/08687号パンフレット
【特許文献5】国際公開第89/08689号パンフレット
【特許文献6】特開平04−330019公報
【0012】
【非特許文献1】Liquid Crystals (1994), 16 (4), 625-641
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
IPSモードおよびVAモードなどの動作モードの液晶表示素子であっても、CRT表示と比較すれば未だに解決すべき課題があり、例えば、応答時間の向上、コントラストの向上、駆動電圧の低下が望まれている。
【0014】
IPSモード、またはVAモードで動作する表示素子では、主として、負の誘電率異方性を有する液晶組成物が使われている。表示素子の特性をさらに向上させるためには、この組成物に含まれる液晶性化合物が、下記の(1)〜(8)で示す物性を有することが必要である。
(1)化学的に安定であること、および物理的に安定であること、
(2)高い透明点(液晶相−等方相の転移温度)を有すること、
(3)液晶相(ネマチック相、スメクチック相など)の下限温度、特にネマチック相の下限温度が低いこと、
(4)粘度が小さいこと、
(5)適切な光学異方性を有すること、
(6)負に大きな誘電率異方性を有すること、
(7)適切な弾性定数K33(K33:ベンド弾性定数)を有すること、
(8)他の液晶性化合物との相溶性に優れること。
【0015】
(1)のように化学的、物理的に安定な液晶性化合物を含む組成物を表示素子に用いると、電圧保持率を大きくすることができる。(2)および(3)のように、高い透明点または液晶相の低い下限温度を有する化合物を含む組成物では、ネマチック相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することが可能となる。
【0016】
(4)のように粘度の小さな化合物を含む組成物を表示素子に用いると応答時間を向上することができる。(5)のように適切な光学異方性を有する化合物を含む組成物を用いた表示素子の場合は、表示素子のコントラストの向上を図ることができる。素子の設計次第では、光学異方性は小さいものから大きなものまで必要である。最近ではセル厚を薄くすることにより応答時間を改善する方法が検討されており、それに伴い、大きな光学異方性を有する液晶組成物も必要となっている。
【0017】
液晶性化合物が負に大きな誘電率異方性を有する場合には、この化合物を含む液晶組成物のしきい値電圧を低くすることができる。したがって、(6)のように負に大きな誘電率異方性を有する化合物を含む組成物を用いた表示素子の場合には、表示素子の駆動電圧を低くし、消費電力を小さくすることができる。(7)ついては、小さな弾性定数K33を有する化合物を含む組成物を表示素子に用いることで表示素子の駆動電圧を小さくすることができ、消費電力も小さくすることができる。大きな弾性定数K33を有する化合物を含む組成物を表示素子に用いると応答時間を向上することができる。
【0018】
液晶性化合物は、単一の化合物では達成することが困難な物性を発現させるために、他の多くの液晶性化合物と混合して調製した組成物として用いることが一般的である。したがって、表示素子に用いる液晶性化合物は、(8)のように、他の液晶性化合物との相溶性が良好であることが好ましい。表示素子は、氷点下を含む幅広い温度範囲で使用するので、低い温度でも良好な相溶性を有す化合物であることが好ましい。
【0019】
本発明の第一の目的は、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および大きな弾性定数K33を有し、負に大きな誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。
【0020】
本発明の第二の目的は、この化合物を含有し、熱、光などに対する安定性が高く、粘度が低く、適切な光学異方性、および負に大きな誘電率異方性を有し、大きな弾性定数K33を有し、しきい値電圧が低く、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い液晶組成物を提供することである。
【0021】
本発明の第三の目的は、この組成物を含有し、応答時間が短く、消費電力が小さく、駆動電圧が小さく、大きなコントラストを有し、広い温度範囲で使用可能である液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らはこれらの課題に鑑み鋭意研究を行った結果、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環またはベンゼン環と、ブテン結合基とを有する2,3−ジフルオロベンゼン誘導体が、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、適切な光学異方性、および大きな弾性定数K33を有し、負に大きな誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有していることを見いだした。本発明者らは、この化合物を含有する液晶組成物が、熱、光などに対する高い安定性を有し、粘度が小さく、適切な光学異方性、大きな弾性定数K33、および適切な負の誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低いことを見いだした。さらに、本発明者らは、この組成物を含有する液晶表示素子が、応答時間が短く、消費電力が小さく、駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能であることを見いだした。本発明者らは、このようにして発明を完成するに到った。
【0023】
本発明は、下記の〔1〕〜〔13〕に記載された項などを包含する。
【0024】
〔1〕 式(1)で表される化合物。


式(1)において、
およびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
環Aが1,4−シクロへキシレンであるとき、環Aおよび環Aの少なくとも1つは1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
lは1または2であり、mおよびnは独立して、0、1、または2であり、mおよびnの和は1または2であり、l、m、およびnの和は、2または3であり;
lおよびmが1であり、nが0であり、環Aが1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるとき、環Aおよび環Aの少なくとも1つは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
lが2であり、mが1であり、nが0であり、2つの環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであり、環Aが1,4−フェニレンであるとき、2つの環Aの他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【0025】
〔2〕 式(1−1)または(1−2)で表される項〔1〕に記載の化合物。


式(1−1)および(1−2)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
式(1−1)において、環Aおよび環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
式(1−2)において、2つの環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【0026】
〔3〕 式(1−1−1)、(1−1−2)、および(1−2−2)のいずれか1つで表される項〔2〕に記載の化合物。


式(1−1−1)、(1−1−2)、および(1−2−2)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【0027】
〔4〕 式(1−3)または(1−4)で表される項〔1〕に記載の化合物。


式(1−3)および(1−4)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
式(1−3)において、環Aおよび環Aのいずれか一方が、1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
式(1−4)において、2つの環Aのいずれか一方が、1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【0028】
〔5〕 式(1−3−1)〜(1−3−3)、および式(1−4−1)〜(1−4−3)のいずれか1つで表される項〔4〕に記載の化合物。


式(1−3−1)〜(1−3−3)、および式(1−4−1)〜(1−4−3)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【0029】
〔6〕 式(1−5)で表される項〔1〕に記載の化合物。


式(1−5)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり;
環Aが1,4−シクロへキシレンであるとき、環Aは1,4−シクロヘキセニレンであり;
xは1または2である。
【0030】
〔7〕 項〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【0031】
〔8〕 式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、および(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項〔7〕に記載の液晶組成物。


式(2)〜(7)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH22−、または単結合であり;
およびLは独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、s、t、u、およびvは独立して、0または1であり、r、s、t、uの和は、1または2である。
【0032】
〔9〕 式(8)、(9)、および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項〔7〕に記載の液晶組成物。


式(8)〜(10)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【0033】
〔10〕 項〔9〕に記載の式(8)、(9)、および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項〔8〕に記載の液晶組成物。
【0034】
〔11〕 少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する、項〔7〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
〔12〕 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する項〔7〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0036】
〔13〕 項〔7〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0037】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。透明点は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。ネマチック相の上限温度は、液晶組成物におけるネマチック相−等方相の相転移温度であり、上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は、式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(10)において、六角形で囲んだD、Eなどの記号はそれぞれ環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。R、環A、Zなどの記号を同一の式または異なった式に記載した。これらの化合物において、任意の2つのRが表わす2つの基は同一であってもよいし、異なってもよい。このルールは、環A、Zなどの記号にも適用される。
【0038】
「任意の」は、元素(または官能基)の位置だけなく、その数においても制限なく選択できることを意味する。任意のAが、B、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。末端メチル基(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【発明の効果】
【0039】
本発明の液晶性化合物は、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、大きな光学異方性、および適切な弾性定数K33(K33:ベンド弾性定数)を有し、負に大きな誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有している。この液晶性化合物は、ネマチック相の上限温度が低下せず、粘度が大きくなることなく、光学異方性が大きくなる傾向にある、という点で特に優れている。
【0040】
本発明の液晶組成物は、粘度が小さく、大きな光学異方性、適切な弾性定数K33、および負に大きな誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い。この液晶組成物は大きな光学異方性を有するため、大きな光学異方性が必要な表示素子に有効である。
【0041】
本発明の液晶表示素子は、応答時間が短く、消費電力が小さく、駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能である。したがって、IPSモード、VAモード、またはPSAモードなどの表示モードの液晶表示素子に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の化合物、液晶組成物、液晶表示素子について、さらに具体的に説明する。
【0043】
〔化合物(1)〕
本発明の化合物は、式(1)で示される構造を有する。まず、化合物(1)の末端基、環構造、結合基について説明する。
【0044】

【0045】
式(1)において、R1およびR2は独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【0046】
またはRは、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、またはアルケニルが好ましく、アルキル、アルコキシ、またはアルケニルがさらに好ましい。RおよびRが、アルキル、アルコキシ、またはアルケニルである場合には、この化合物の液晶相の温度範囲を広げることができる。
【0047】
アルキルの具体例としては、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、および−C15を挙げることができる。アルコキシの具体例としては、−OCH、−OC、−OC、−OC−OC11、および−OC13を挙げることができる。アルコキシアルキルの具体例としては、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CHOCH、−(CHOC、−(CHOC、−(CHOCH、−(CHOCH、および−(CHOCHを挙げることができる。アルケニルの具体例としては、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、および−(CHCH=CHを挙げることができる。アルケニルオキシの具体例としては、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCを挙げることができる。
【0048】
およびRの具体例の中でも、−CH、−C、−C、−C、−C11、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−CHOCH、−(CHOCH、−(CHOCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHC、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCが好ましく、−CH、−C、−C、−OCH、−OC、−OC、−OC、−(CHCH=CH、−(CHCH=CHCH、および−(CHCH=CHCがより好ましい。
【0049】
これら基中の炭素−炭素結合の鎖は、直鎖であることが好ましい。炭素−炭素結合の鎖が直鎖であると、液晶相の温度範囲を広くすることができ、粘度を小さくすることができる。RおよびRのいずれかが光学活性基である場合には、キラルドーパントとして有用である。この化合物を液晶組成物に添加することにより、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。
【0050】
アルケニルには、アルケニル中の二重結合の位置に依存して、−CH=CH−の好ましい立体配置がある。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、または−CCH=CHCなどのように奇数位に二重結合を有するアルケニルでは、立体配置はトランス配置が好ましい。
【0051】
一方、−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、−CHCH=CHCなどのように偶数位に二重結合を有するアルケニルでは、立体配置はシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、液晶相の温度範囲が広く、大きな弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)を有し、粘度を小さい。この化合物を液晶組成物に添加すると、上限温度を高くすることができる。
【0052】
式(1)において、
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
環Aが1,4−シクロへキシレンであるとき、環Aおよび環Aの少なくとも1つは1,4−シクロヘキセニレンであり;
lおよびmが1であり、nが0であり、環Aが1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるとき、環Aおよび環Aの少なくとも1つは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
lが2であり、mが1であり、nが0であり、2つの環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであり、環Aが1,4−フェニレンであるとき、2つの環Aの他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【0053】
これら環の中でも、1,4−シクロへキシレンおよび1,4−フェニレンがより好ましく、環Aが1,4−フェニレンであり、環Aが1,4−シクロヘキシレンである組み合わせが最も好ましい。
【0054】
これら環のうち少なくとも1つの環が、1,4−シクロヘキシレンであるときには、粘度を小さくすることができる。この化合物を液晶組成物に添加すると、上限温度を高くすることができる。
【0055】
これら環のうち少なくとも1つの環が、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときには、誘電率異方性を負に大きくすることができる。この化合物を液晶組成物に添加すると、光学異方性を大きくすることができる。
【0056】
化合物の安定性を考慮すると、Zの−CH=CH−に結合した環には1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレンが好ましく、1,4−シクロヘキシレンがさらに好ましい。
【0057】
1,4−シクロへキシレンには、シス−1,4−シクロへキシレン、およびトランス−1,4−シクロへキシレンの2種類の立体配置がある。液晶組成物に添加したとき、上限温度を高くするという観点から、トランス−1,4−シクロへキシレンが好ましい。
【0058】
式(1)において、Zは、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−である。Zが、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であるので、化合物の粘度を小さくすることができ、透明点を高くすることができる。
【0059】
式(1)において、lは1または2であり、mおよびnは独立して、0、1、または2であり、mおよびnの和は1または2であり、l、m、およびnの和は、2または3でありる。
【0060】
化合物(1)は、2位および3位の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンを有する。このような構造の効果により、適切な光学異方性、適切な弾性定数K33、大きな負の誘電率異方性を有する。結合基が−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であるので、化合物(1)は、他の液晶性化合物との優れた相溶性、高い弾性定数、低い粘度を有する。化合物(1)は、ネマチック相の上限温度が低下せず、他の液晶性化合物との相溶性が高く、粘度が低い、という点で特に優れている。
【0061】
以上述べたように、化合物(1)では、R、R、環A、環A、環A、およびZを適宜選択することにより、誘電率異方性などの物性を目的とする値に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【0062】
化合物(1)の好ましい例として、化合物(1−1)および(1−2)、化合物(1−3)および(1−4)、および化合物(1−5)が挙げられる。化合物(1−1)〜(1−5)についてを順を追って説明する。これらの化合物において、R、R、環A、環Aおよび環Aの好ましい例は、化合物(1)の場合と同様である。化合物(1−1)および(1−2)は、次のとおりである。
【0063】

【0064】
式(1−1)および(1−2)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
環Aが1,4−シクロへキシレンであるとき、環Aは1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
式(1−1)において、環Aおよび環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
式(1−2)において、2つの環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【0065】
化合物(1−1)および(1−2)の好ましい例として、化合物(1−1−1)、(1−2−1)、および(1−2−2)が挙げられる。
【0066】

【0067】
式(1−1−1)、(1−2−1)、および(1−2−2)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【0068】
化合物(1−1)、(1−2)、(1−1−1)、(1−2−1)、および(1−2−2)は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−を有するので、非対称である。さらに、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、および1,4−フェニレンから選択された3つの環が非対称に配置されている。従って、これらの化合物は、熱や光に対する高い安定性を有し、液晶相の下限温度をより低く、透明点をより高く、および大きな弾性定数K33を有し、粘度を小さくできるという観点でより好ましい。
【0069】

【0070】
式(1−3)および(1−4)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
式(1−1)において、環Aおよび環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
式(1−2)において、2つの環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【0071】
化合物(1−3)および(1−4)の好ましい例として、化合物(1−3−1)〜(1−3−3)および化合物(1−4−1)〜(1−4−3)が挙げられる。
【0072】

【0073】
化合物(1−3−1)〜(1−3−3)および化合物(1−4−1)〜(1−4−3)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【0074】
化合物(1−3)および(1−4)、化合物(1−3−1)〜(1−3−3)、および化合物(1−4−1)〜(1−4−3)は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−を有するので、非対称である。さらに、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、および1,4−フェニレンから選択された4つの環が非対称に配置されている。従って、これらの化合物は、熱や光に対する高い安定性を有し、液晶相の下限温度をより低く、透明点をより高く、適切な光学異方性および大きな弾性定数K33を有し、粘度を小さくできるという観点でより好ましい。
【0075】

【0076】
式(1−5)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり;
環Aが1,4−シクロへキシレンであるとき、環Aは1,4−シクロヘキセニレンであり;
xは1または2である。
【0077】
化合物(1−5)は、−CH=CH−(CH22−を有するので非対称である。さらに、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、および1,4−フェニレンから選択された3つまたは4つの環が非対称に配置されている。従って、これらの化合物は、熱や光に対する高い安定性を有し、液晶相の下限温度をより低く、適切な光学異方性および大きな弾性定数K33を有し、粘度を小さくできるという観点でより好ましい。
【0078】
以上で述べたように、化合物(1)は、適切な負の誘電率異方性を有し、他の液晶性化合物との相溶性が極めてよい。さらに、熱、光などに対する高い安定性を有し、粘度が小さく、大きな光学異方性、および大きな弾性定数K33を有している。この化合物を含有する液晶組成物は、液晶表示素子が通常使用される条件下で安定であり、低い温度で保管してもこの化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。したがって、化合物(1)は、IPS、VA、またはPSAなどの動作モードの液晶表示素子に用いる液晶組成物に、好適に適用することができる。
【0079】
〔化合物(1)の合成〕
化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物に目的の末端基、環、および結合基を導入する方法は、例えば、「オーガニックシンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
【0080】
<結合基Zの生成>
結合基Zを生成する方法を下のスキームに示す。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは1価の有機基である。複数のMSG(またはMSG)が表わす1価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)は液晶性化合物(1)に相当する。
【0081】

【0082】

【0083】
<−(CH22−CH=CH−、および−CH=CH−(CH22−の生成>
有機ハロゲン化合物(a1)を、ブチルリチウム、またはマグネシウムで処理して得られる中間体を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させて、アルデヒド誘導体(a2)を得る。このアルデヒド(a2)と、ホスホニウム塩(a3)をカリウムt−ブトキシドなどの塩基で処理して得られるリンイリドを反応させ、化合物(1A)を合成する。この反応では、反応条件によってシス体が生成する場合もあるので、公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0084】
別の方法は、次のとおりである。有機ハロゲン化合物(a1)とマグネシウムとを反応させ、グリニャール試薬を調製する。このグリニャール試薬と、アルデヒド誘導体(a4)とを反応させることにより、アルコール誘導体を合成する。p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を用いて、アルコール誘導体の脱水反応を行うことにより、化合物(1A)を合成する。
【0085】
<環A、環Aまたは環Aの生成>
1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0086】
化合物(1)の合成例を示す。
【0087】

【0088】
アルデヒド(b1)とジエチルホスホノ酢酸エチルとをナトリウムエトキシドの存在下、反応させ、Pd/Cなどの触媒存在下、水素添加反応を行うことにより、化合物(b2)を得る。化合物(b2)を水素化リチウムアルミニウムなどで還元して化合物(b3)を得る。四臭化炭素、トリフェニルホスフィンを用いて、化合物(b3)を臭素化することにより化合物(b4)を得る。これをトリフェニルホスフィンと反応させることにより化合物(b5)を得る。
【0089】
別途、ジフルオロベンゼン誘導体(b6)とsec−BuLiとを反応させリチウム塩を調製する。このリチウム塩とカルボニル誘導体(b7)とを反応させ、得られたアルコール誘導体の脱水反応をp−トルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下で行う。この生成物をPd/Cなどの触媒存在下、水素添加反応を行うことにより、化合物(b8)を得る。化合物(b8)をギ酸などで反応させて、カルボニル誘導体(b9)を得る。カルボニル誘導体(b9)を、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリドと、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)などの塩基とから調製されるリンイリドと、Wittig反応させ、さらにギ酸などで反応させて、アルデヒド誘導体(b10)を得る。
【0090】
アルデヒド誘導体(b10)とカリウムt−ブトキシド(t−BuOK)などの塩基とから調製されるリンイリドと、先に得られた化合物(b5)とをWittig反応させ、ベンゼンスルホン酸ナトリウムと塩酸の存在下で異性化反応させることにより、本発明の化合物(1)の一例である化合物(b11)を合成する。
【0091】
〔組成物(1)〕
本発明の液晶組成物(1)について説明をする。この組成物(1)は、少なくとも1つの化合物(1)を成分として含む。組成物(1)は、2つ以上の化合物(1)を含んでいてもよく、液晶性化合物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物(1)は、化合物(1)の少なくとも1つを1〜99重量%の範囲で含有することが、優良な特性を発現させるために好ましい。より好ましい割合は、5〜60重量%の範囲である。組成物(1)は、化合物(1)と、本明細書中に記載しなかった種々の液晶性化合物とを含んでもよい。好ましい組成物は、以下に示す成分Dおよび成分Eから選ばれた化合物を含む。組成物(1)を調製するときには、例えば、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することもできる。成分を適切に選択した組成物は、粘度が低く、負に大きな誘電率異方性を有し、適切な弾性定数K33を有し、しきい値電圧が低く、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い。
【0092】
成分Dは、化合物(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、および(7)である。成分Dは、垂直配向モ−ド(VAモ−ド)、高分子支持配向モード(PSAモ−ド)などの用途に用いられる、誘電率異方性が負の組成物を調製する場合に好ましい。成分Eは、化合物(8)、(9)および(10)である。成分Eを添加することにより、組成物のしきい値電圧、液晶相の温度範囲、光学異方性、誘電率異方性および粘度などを調整することができる。
【0093】
化合物(2)〜(7)(成分D)の好適例として、化合物(2−1)〜(2−6)、化合物(3−1)〜(3−15)、化合物(4−1)、(5−1)〜(5−3)、化合物(6−1)〜(6−11)、および化合物(7−1)〜(7−10)を挙げることができる。
【0094】

【0095】

【0096】
式中、RおよびRは前記と同じ定義である。
【0097】
成分Dは、誘電率異方性の値が負であるVAモ−ド、PSAモード用の液晶組成物に添加される。成分Dの含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が低くなるが、粘度が大きくなるので、しきい値電圧の要求値を満足している限り含有量を少なくすることが好ましい。したがって、誘電率異方性の絶対値が5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0098】
成分Dのうち化合物(2)は2環化合物であるので、主としてしきい値電圧の調整、粘度の調整または光学異方性の調整の効果がある。化合物(3)および(4)は3環化合物であるので、上限温度を高くする、しきい値電圧を低くする、光学異方性を大きくするなどの効果が得られる。化合物(5)、(6)および(7)はしきい値電圧を低くするなどの効果が得られる。
【0099】
成分Dの含有量は、VAモ−ド用、PSAモード用の組成物を調製する場合には、組成物の全重量に基づいて、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50〜95重量%の範囲である。成分Dを添加することにより、弾性定数をコントロ−ルし、電圧透過率曲線を制御することが可能となる。成分Dを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Dの含有量が組成物の全重量に基づいて30重量%以下が好ましい。
【0100】
化合物(8)、(9)および(10)(成分E)の好適例として、化合物(8−1)〜(8−11)、化合物(9−1)〜(9−19)、および化合物(10−1)〜(10−6)を挙げることができる。
【0101】

【0102】

【0103】
式中、RおよびRは前記と同じ定義である。
【0104】
化合物(8)〜(10)(成分E)は、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。化合物(8)は主として粘度の調整または光学異方性の調整の効果がある。化合物(9)および(10)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性の調整の効果がある。
【0105】
成分Eの含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が高くなるが、粘度が低くなるので、しきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物の全重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
【0106】
組成物(1)の調製は、必要な成分を高い温度で溶解させるなどの既知の方法により行われる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、光学活性化合物、重合可能な化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0107】
組成物(1)は、少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加することができる。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。キラルド−プ剤の例として下記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0108】

【0109】
組成物(1)は、通常このような光学活性化合物を添加して、らせんピッチを調整する。らせんピッチは、TFTモード用およびTNモード用の組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STNモード用の組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。双安定TN(Bistable TN)モ−ド用の組成物の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0110】
組成物(1)は、重合可能な化合物を添加することによってPSAモード用の組成物として使用することもできる。重合可能な化合物の例はアクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、ビニルケトン、オキセタンなどである。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。
【0111】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−アルキルフェノールなどである。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。
【0112】
組成物(1)は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GHモード用の液晶組成物として使用することもできる。
【0113】
〔組成物(1)の特性〕
組成物(1)では、成分化合物の種類と割合とを適切に調整することによってネマチック相の上限温度を70℃以上とすること、ネマチック相の下限温度は−20℃以下とすることができるので、ネマチック相の温度範囲が広い。したがって、この組成物を含む液晶表示素子は広い温度範囲で使用することが可能である。
【0114】
組成物(1)では、成分化合物の種類と割合とを適切に調整することによって、光学異方性を0.10〜0.13の範囲、または0.05〜0.18の範囲とすることができる。同様にして、誘電率異方性を−5.0〜−2.0の範囲に調整することができる。好ましい誘電率異方性は、−4.5〜−2.5の範囲である。この範囲の誘電率異方性を有する組成物(1)は、IPSモード、VAモード、またはPSAモードで動作する液晶表示素子に好適に使用することができる。
【0115】
〔液晶表示素子〕
組成物(1)は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、PSAモードなどの動作モードを有し、アクティブマトリックス(AM方式)で駆動する液晶表示素子だけでなく、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモードなどの動作モードを有しパッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらのAM方式およびPM方式の液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0116】
組成物(1)は、導電剤を添加させることによってDS(dynamic scattering)モード素子に使用できる。組成物(1)は、組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、液晶組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【0117】
組成物(1)は、負の誘電率異方性を有するので、VAモード、IPSモード、またはPSAモードなどの動作モードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に好適に用いることができる。この組成物は、VAモードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に、特に好適に用いることができる。
【0118】
TNモード、VAモードなどで動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモードなどで動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。VAモードで動作する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997)に報告されている。IPSモードで動作する液晶表示素子の構造は、国際公開91/10936号パンフレット(ファミリー:米国特許第5576867明細書)に報告されている。
【実施例】
【0119】
〔化合物(1)の実施例〕
実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されない。特に断りのない限り、「%」は「重量%」である。
【0120】
合成した化合物は、H−NMR分析などの方法により同定した。
【0121】
H−NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。試料を、CDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数32回の条件で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。テトラメチルシランを内部標準として用いた。
【0122】
〔測定試料〕
相構造および転移温度を測定するときには、液晶性化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、低温相溶性、粘度、光学異方性などの物性を測定するときには、化合物を母液晶に混合して調製した組成物を試料として用いた。
【0123】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、下記の方法で測定を行った。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、下記の式に示す外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0124】
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、15重量%:85重量%である。
【0125】
母液晶としては、下記の母液晶(i)を用いた。母液晶(i)の成分の割合を重量%で示す。
【0126】

【0127】
〔測定方法〕
化合物の物性は下記の方法で測定した。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子またはVA素子には、TFTを取り付けなかった。
【0128】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料(化合物)を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0129】
(2)転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料(化合物)の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。
【0130】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれCまたはCと表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれS、またはSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記され、これは結晶からネマチック相への転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(透明点)が100.0℃であったことを示す。
【0131】
(3)低温相溶性
化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0132】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0133】
(5)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0134】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0135】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)、に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。なお、この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性の項で測定した値を用いた。
【0136】
(8)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0137】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
負の誘電率異方性は、次の方法によって測定した。よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。このVA素子に試料を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0138】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。この配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。このTN素子に試料を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
【0139】
(10)電圧保持率(VHR;25℃と100℃で測定;%)
ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が6μmであるセルに試料を入れてTN素子を作製した。25℃において、このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。TN素子に印加した電圧の波形を陰極線オシロスコープで観測し、単位周期(16.7ミリ秒)における電圧曲線と横軸との間の面積を求めた。TN素子を取り除いたあと印加した電圧の波形から同様にして面積を求めた。電圧保持率(%)の値は、(電圧保持率)=(TN素子がある場合の面積値)/(TN素子がない場合の面積値)×100、の式から算出した。このようにして得られた電圧保持率を「VHR−1」として示した。
【0140】
つぎに、このTN素子を100℃、250時間加熱した。このTN素子を25℃に戻したあと、上述した方法と同様の方法により電圧保持率を測定した。この加熱試験をした後に得た電圧保持率を「VHR−2」として示した。なお、この加熱テストは促進試験であり、TN素子の長時間耐久試験に対応する試験として用いた。
【0141】
(11)弾性定数(K11、K33;25℃で測定)
測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0142】
〔原料〕
ソルミックスA−11は、エタノール(85.5%),メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。
【実施例1】
【0143】
(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(トランス−4−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)シクロヘキシル)ベンゼン(No.2)の合成
【0144】

【0145】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−プロピルベンズアルデヒド(s1)10.0g、ジエチルホスホノ酢酸エチル18.2g、トルエン200mlを入れ、0℃まで冷却した。20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液27.6gをこの温度で加え、2時間攪拌させた。反応混合物を25℃に戻し、さらに2時間攪拌した。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=2:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、2−プロパノール150mlに溶解させ、さらにPd/Cを0.91g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(4−プロピルフェニル)プロピオン酸エチル(s2)14.2gを得た。化合物(s1)からの収率は95.5%であった。
【0146】
第2工程
水素化リチウムアルミニウム 2.9gをTHF 200mlに懸濁した。この懸濁液に3−(4−プロピルフェニル)プロピオン酸エチル(s2)14.2gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、3−(4−プロピルフェニル)プロパノール(s3)11.0gを得た。化合物(s2)からの収率は95.7%であった。
【0147】
第3工程
3−(4−プロピルフェニル)プロパノール(s3)11.0gおよびトリフェニルホスフィン 24.3gを塩化メチレン200mlに溶解した。この溶液に、四臭化炭素 24.5gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液を、室温下ゆっくりと滴下し、さらに室温下3時間攪拌した。反応混合物を飽和重曹水で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、順次、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣は淡黄色の固体であり、この残渣をn−ヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(4−プロピルフェニル)ブロモプロパン(s4)14.5gを得た。化合物(s3)からの収率は97.4%であった。
【0148】
第4工程
窒素雰囲気下、反応器へ3−(4−プロピルフェニル)ブロモプロパン(s4)14.0g、トルエン100mlおよびトリフェニルホスフィン31.5gを入れ、5時間加熱還流させた。反応混合物を25℃まで冷却後、析出物をろ過し、トルエンで3回未反応の原料を洗い流した。得られた無色の固体を乾燥させ、3−(4−プロピルフェニル)プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(s5)30.0gを得た。化合物(s−4)からの収率は99.1%であった。
【0149】
第5工程
窒素雰囲気下の反応器へ、1−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(s6)102.8gとTHF1000mlとを入れ、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液780mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オン(s7)を101.5g含んだTHF500ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液で処理し、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した。残渣に、p−トルエンスルホン酸3.0g、およびトルエン500mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、トルエン250ml、ソルミックスA−11 250mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを5.0g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンからの再結晶により精製し、8−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(s8)136.1gを得た。化合物(s6)からの収率は70.2%であった。
【0150】
第6工程
化合物(s8)136.1g、87%蟻酸105.0ml、およびトルエン300mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンからの再結晶により精製し、1−(2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニル)−シクロヘキサン−4−オン(s9)102.7gを得た。化合物(s8)からの収率は88.5%であった。
【0151】
第7工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 166.1gとTHF 500mlを混合し、−30℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)54.4gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF 100mlに溶解した化合物(s9)102.7gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を−10℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=1:1(体積比))を展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−メトキシメチレンシクロヘキサンを得た。この化合物に、87%蟻酸 55.8g、およびトルエン 300mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、トルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=2:1(体積比))からの再結晶により精製し、トランス−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s10) 54.6gを得た。化合物(s9)からの収率は50.4%であった。
【0152】
第8工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた3−(4−プロピルフェニル)プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(s5)11.3gとTHF 100mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 2.5gを−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s10) 5.0gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物6.1g、ソルミックスA−11 100mlを混合した。6N−HCl溶液20mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。さらに、酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(トランス−4−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)シクロヘキシル)ベンゼン(No.2)5.0gを得た。化合物(s10)からの収率は65.0%であった。
【0153】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.09(s,4H),6.83(t,1H),6.66(t,1H),5.50−5.37(m,2H),4.09(q,2H),3.22(m,1H),2.74(tt,1H),2.63(t,2H),2.56(t,2H),2.29(m,2H),1.95(m,1H),1.84(m,4H),1.62(quin,2H),1.52−1.41(m,4H),1.28−1.18(m,2H),0.94(t,3H).
【0154】
化合物(No.2)の物性は、次の通りであった。
転移温度:C 88.5 N 96.5 I.
NI=93.3℃,Δε=−4.83,Δn=0.141,η=41.0mPa・s.
【実施例2】
【0155】
(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(4−(トランス−4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)ベンゼン(No.42)の合成
【0156】

【0157】
第1工程
化合物(s11)50.0g、87%蟻酸 54.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド15.0g、およびトルエン 500mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=2:1(体積比))からの再結晶により精製し、2−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)アセトアルデヒド(s12)46.0gを得た。化合物(s11)からの収率は98.4%であった。
【0158】
第2工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド69.4gとTHF300mlを混合し、−30℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)22.7gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF100mlに溶解した化合物(s12) 31.2gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を−10℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=1:1(体積比))を展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(3−メトキシアリル)ベンゼンを得た。この化合物に、6N−HCl溶液78ml、およびTHF100mlを混合し、この混合物を、室温で8時間攪拌させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、トルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=2:1(体積比))からの再結晶により精製し、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)プロパナール(s13)15.8gを得た。化合物(s12)からの収率は43.7%であった。
【0159】
第3工程
窒素雰囲気下の反応器へ、良く乾燥させたマグネシウム14.5gとTHF100mlとを入れ、40℃まで加熱した。そこへ、THF 300mlに溶解した1−ブロモ−4−プロピルベンゼン(s14)100.0gを、40℃から60℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。THF 150mlに溶解した1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オン(s7)78.4gを、−5℃から0℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。反応混合物を室温に戻した後、3% 塩化アンモニウム水溶液で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した。残渣に、p−トルエンスルホン酸3.9g、およびトルエン300mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、トルエン250ml、ソルミックスA−11 250mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを5.0g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンからの再結晶により精製し、8−(4−プロピルフェニル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(s15)68.0gを得た。化合物(s14)からの収率は52.0%であった。
【0160】
第4工程
化合物(s15)68.0g、87%蟻酸60.0ml、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンからの再結晶により精製し、1−(4−プロピルフェニル)−シクロヘキサン−4−オン(s16)54.0gを得た。化合物(s15)からの収率は95.6%であった。
【0161】
第5工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド47.5gとTHF200mlを混合し、−30℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)15.6gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF 100mlに溶解した化合物(s16) 25.0gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を−10℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=1:1(体積比))を展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−(4−プロピルフェニル)−4−メトキシメチレンシクロヘキサンを得た。この化合物に、87%蟻酸25.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド37.3g、およびトルエン300mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、トルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=2:1(体積比))からの再結晶により精製し、トランス−4−(4−プロピルフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s17)24.4gを得た。化合物(s16)からの収率は91.7%であった。
【0162】
第6工程
水素化リチウムアルミニウム 2.4gをTHF 200mlに懸濁した。この懸濁液にトランス−4−(4−プロピルフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s17)24.4gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、トランス−4−(4−プロピルフェニル)−ヒドロキシメチルシクロヘキサン(s18)22.9gを得た。化合物(s17)からの収率は93.0%であった。
【0163】
第7工程
窒素雰囲気下、トルエン200mlへ化合物(s18)22.9g、およびトリフェニルホスフィン(PPh)31.0gを加え、5℃で攪拌した。そこへヨウ素 30.0gを5分割して、5〜10℃の温度範囲で加え、さらに3時間攪拌し、GC分析により反応が終了していることを確認した。反応混合物を濾過により析出物を取り除き、濾液から減圧下で溶媒を留去した。残渣を、ヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、トランス−4−(4−プロピルフェニル)−ヨードメチルシクロヘキサン(s19)19.7gを得た。化合物(s18)からの収率は58.5%であった。
【0164】
第8工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s19)13.2g、トルエン50mlおよびトリフェニルホスフィン12.1gを入れ、5時間加熱還流させた。反応混合物を25℃まで冷却後、析出物をろ過し、トルエンで3回未反応の原料を洗い流した。得られた無色の固体を乾燥させ、トランス−4−(4−プロピルフェニル)メチルトリフェニルホスホニウムヨージド(s20)19.2gを得た。化合物(s19)からの収率は82.3%であった。
【0165】
第9工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたトランス−4−(4−プロピルフェニル)メチルトリフェニルホスホニウムヨージド(s20)19.2gとTHF 200mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)3.5gを−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s13)5.7gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。0℃で30分攪拌した後、反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物6.1g、ソルミックスA−11 100mlを混合した。6N−HCl溶液20mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。さらに、酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(4−(トランス−4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)ベンゼン(No.42)4.6gを得た。化合物(s13)からの収率は41.9%であった。
【0166】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.10(m,4H),6.80(td,1H),6.65(td,1H),5.46−5.34(m,2H),4.09(q,2H),2.65(t,2H),2.54(t,2H),2.42(tt,1H),2.27(q,2H),2.00−1.86(m,3H),1.83−1.77(m,2H),1.63(quin,2H),1.52−1.41(m,4H),1.24−1.13(m,2H),0.94(t,3H).
【0167】
化合物(No.42)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 64.8 N 82.1 I.
NI=79.9℃,Δε=−4.06,Δn=0.136,η=34.8mPa・s.
【実施例3】
【0168】
(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(4−(トランス−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)ベンゼン(No.82)の合成
【0169】

【0170】
第1工程
水素化リチウムアルミニウム 1.7gをTHF 100mlに懸濁した。この懸濁液に3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)プロパナール(s13) 9.6gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)プロパノール(s21) 9.4gを得た。化合物(s13)からの収率は97.0%であった。
【0171】
第2工程
3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)プロパノール(s21)9.4gおよびトリフェニルホスフィン 17.1gを塩化メチレン100mlに溶解した。この溶液に、四臭化炭素17.3gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液を、室温下ゆっくりと滴下し、さらに室温下3時間攪拌した。反応混合物を飽和重曹水で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、順次、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣は淡黄色の固体であり、この残渣をn−ヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブロモプロパン(s22)11.5gを得た。化合物(s21)からの収率は94.8%であった。
【0172】
第3工程
窒素雰囲気下、反応器へ3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)ブロモプロパン(s22)11.5g、トルエン100mlおよびトリフェニルホスフィン21.6gを入れ、5時間加熱還流させた。反応混合物を25℃まで冷却後、析出物をろ過し、トルエンで3回未反応の原料を洗い流した。得られた無色の固体を乾燥させ、3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(s23)17.6gを得た。化合物(s22)からの収率は78.9%であった。
【0173】
第4工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 43.6gとTHF 300mlを混合し、−30℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)14.3gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF 100mlに溶解した化合物(s24)30.0gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を−10℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=1:1(体積比))を展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−メトキシメチレンシクロヘキサンを得た。この化合物に、87%蟻酸 30.0ml、テトラブチルアンモニウムブロミド10.3g、およびトルエン 300mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、トルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=2:1(体積比))からの再結晶により精製し、トランス−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s25)26.9gを得た。化合物(s24)からの収率は85.4%であった。
【0174】
第5工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた3−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(s23)6.6gとTHF 100mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)1.4gを−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s25)3.0gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。0℃で30分攪拌した後、反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物6.1g、ソルミックスA−11 100mlを混合した。6N−HCl溶液20mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(4−(トランス−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)ベンゼン(No.82) 4.6gを得た。化合物(s13)からの収率は41.9%であった。
【0175】
化学シフトδ(ppm;CDCl):6.82(m,2H),6.66(m,2H),5.46−5.33(m,2H),4.09(q,2H),4.02(t,2H),2.72(tt,1H),2.65(t,2H),2.27(q,2H),1.94(m,1H),1.88−1.75(m,6H),1.54−1.41(m,7H),1.26−1.16(m,2H),0.97(t,3H).
【0176】
化合物(No.82)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 63.8 N 90.8 I.
NI=87.9℃,Δε=−7.79,Δn=0.141,η=69.6mPa・s.
【実施例4】
【0177】
(E)−2’,3’−ジフルオロ−4’−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−4−ビニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,1’−ビフェニル(No.102)の合成
【0178】

【0179】
第1工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(s27)108.8gとTHF500mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)28.4gを−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した2,3−ジフルオロベンズアルデヒド(s26)30.0gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、トルエン250ml、ソルミックスA−11 250mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを1.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンからの再結晶により精製し、2−(2,3−ジフルオロフェネチル)−1,3−ジオキソラン(s28)37.9gを得た。化合物(s26)からの収率は83.8%であった。
【0180】
第2工程
化合物(s28)68.0g、87%蟻酸60.0ml、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンからの再結晶により精製し、1−(4−プロピルフェニル)−シクロヘキサン−4−オン(s29)54.0gを得た。化合物(s28)からの収率は95.6%であった。
【0181】
第3工程
水素化リチウムアルミニウム33.4gをTHF500mlに懸濁した。この懸濁液にトランス−4−プロピルシクロヘキシルカルボン酸(s30)50.0gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、トランス−4−プロピルシクロヘキシルメタノール(s31)45.0gを得た。化合物(s30)からの収率は98.1%であった。
【0182】
第4工程
窒素雰囲気下、化合物(s31)45.0g、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール(PTSH)56.5g、およびトリフェニルホスフィン(PPh) 83.1gをTHF300ml中に混合し、0℃まで冷却した。アゾジカルボンサンジエチル(DEAD)の40%トルエン溶液144.0gを0℃〜5℃の温度範囲で、滴下した。LC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−フェニル−5−(トランス−4−プロピルシクロヘキシルメチルチオ)−1H−テトラゾール(s32)87.6gを得た。化合物(s31)からの収率は96.1%であった。
【0183】
第5工程
窒素雰囲気下、化合物(s32)87.6gをソルミックスA−11 300ml中に混合した。30%過酸化水素水 251mlに溶解した、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物17.1gを35℃〜40℃の温度範囲で、滴下した。さらにこの温度範囲で8時間攪拌した。LC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を亜硫酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−フェニル−5−(トランス−4−プロピルシクロヘキシルメチルスルホニル)−1H−テトラゾール(s33)73.0gを得た。化合物(s32)からの収率は75.7%であった。
【0184】
第6工程
窒素雰囲気下、化合物(s29)24.6gと化合物(s33)10.0gをジメトキシエタン(DME)100mlを混合し、−60℃まで冷却した。カリウムヘキサメチルジシラザン(KHMDS)の0.91M−THF溶液97.0mlを−60℃〜−55℃の温度範囲で、滴下した。−60℃で2時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。LC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、(E)−1,2−ジフルオロ−3−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)ベンゼン(s34)6.3gを得た。化合物(s29)からの収率は36.7%であった。
【0185】
第7工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(s34)3.3gとTHF100mlとを入れ、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム、n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液13mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いてトランス−4−ビニルシクロヘキサノン(s34)を1.7g含んだTHF20ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した。残渣に、(メトキシカルボニルスルファモイル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド分子内塩(Burgess試薬)2.8g、およびトルエン100mlを混合し、この混合物を、50℃で2時間攪拌した。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘプタンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、(E)−2’,3’−ジフルオロ−4’−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−4−ビニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,1’−ビフェニル(No.102)1.4gを得た。化合物(s33)からの収率は31.1%であった。
【0186】
化学シフトδ(ppm;CDCl):6.85(m,2H),5.94(m,1H),5.88(m,1H),5.36(m,2H),5.06(d,1H),4.98(d,1H),2.67(t,2H),2.53−2.42(m,1H),2.42−2.29(m,3H),2.26(q,2H),2.05(m,1H),1.96−1.87(m,1H),1.86−1.76(m,1H),1.72(d,2H),1.66(d,2H),1.53(m,1H),1.29(m,2H),1.14(m,3H),1.00(m,2H),0.87(m,5H).
【0187】
化合物(No.102)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 20.2 N 77.4 I
NI=71.9℃,Δε=−2.06,Δn=0.128,η=23.6mPa・s.
【実施例5】
【0188】
(E)−4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,1’−ビフェニル(No.38)の合成

【0189】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−ヒドロキシシクロヘキシルカルボン酸エチル(s36)26.0g、2,6−ルチジン23.3g、塩化メチレン200mlを入れ、0℃まで冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸トリイソプロピルシリル50gを0℃〜5℃の温度範囲で、滴下した。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。反応混合物にメタノールを加えて反応を停止した。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルカルボン酸エチル(37)43.4gを得た。化合物(s36)からの収率は87.5%であった。
【0190】
第2工程
水素化リチウムアルミニウム 6.0gをTHF 200mlに懸濁した。この懸濁液に4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルカルボン酸エチル(37)43.4gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮をして、4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルメタノール(s38)37.1gを得た。化合物(s37)からの収率は97.9%であった。
【0191】
第3工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルメタノール(s38)37.1g、塩化メチレン200mlを入れ、0℃まで冷却した。デスマーチンペルヨージナン(DMP)60.4gを0℃〜5℃の温度範囲で、加えた。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。反応混合物にセライトを加えて不要物を除去した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルカルボアルデヒド(s39)36.3gを得た。化合物(s38)からの収率は98.7%であった。
【0192】
第4工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルカルボアルデヒド(s39)36.3g、ジエチルホスホノ酢酸エチル34.3g、トルエン 200mlを入れ、0℃まで冷却した。20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液52.1gをこの温度範囲で加え、2時間攪拌させた。反応混合物を25℃に戻し、さらに2時間攪拌させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=2:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、ソルミックスA−11 150mlに溶解させ、さらにPd/Cを1.8g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルプロピオン酸エチル(s40)21.3gを得た。化合物(s39)からの収率は42.2%であった。
【0193】
第5工程
水素化リチウムアルミニウム 2.7gをTHF200mlに懸濁した。この懸濁液に4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルプロピオン酸エチル(s40)21.3gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮をして、4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルプロパノール(s41)18.3gを得た。化合物(s40)からの収率は97.4%であった。
【0194】
第6工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルプロパノール(s41)18.3g、塩化メチレン200mlを入れ、0℃まで冷却した。デスマーチンペルヨージナン(DMP)32.0gを0℃〜5℃の温度範囲で、加えた。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。反応混合物にセライトを加えて不要物を除去した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキシルエチルカルボアルデヒド(s42)13.6gを得た。化合物(s41)からの収率は74.8%であった。
【0195】
第7工程
窒素雰囲気下、化合物(s33)19.7gと化合物(s42)13.6gをジメトキシエタン(DME) 100mlを混合し、−60℃まで冷却した。カリウムヘキサメチルジシラザン(KHMDS)の0.91M−THF溶液77.0mlを−60℃〜−55℃の温度範囲で、滴下した。−60℃で2時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。GC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し残渣を、ヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、(E)−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキサン(s43)8.3gを得た。化合物(s42)からの収率は43.9%であった。
【0196】
第8工程
窒素雰囲気下、反応器へ(E)−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−4−トリイソプロピルシリルオキシシクロヘキサン(s43)8.3g、THF50mlを入れ、0℃まで冷却した。テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の1.0M−THF溶液38.0mlを0℃〜5℃の温度範囲で、加えた。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。GC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、(E)−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)シクロヘキサノール(s44)4.7gを得た。化合物(s43)からの収率は88.4%であった。
【0197】
第9工程
窒素雰囲気下、反応器へ(E)−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)シクロヘキサノール(s44)4.7g、塩化メチレン100mlを入れ、0℃まで冷却した。デスマーチンペルヨージナン(DMP)9.3gを0℃〜5℃の温度範囲で、加えた。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。反応混合物にセライトを加えて不要物を除去した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、(E)−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)シクロヘキサノン(s45)4.6gを得た。化合物(s44)からの収率は98.6%であった。
【0198】
第10工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(s33)2.6gとTHF 50mlとを入れ、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム、n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液18.0mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて(E)−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)シクロヘキサノン(s45)を4.6g含んだTHF 20ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した。残渣に、p−トルエンスルホン酸(p−TsOH)0.14g、およびトルエン50mlを混合し、2時間加熱還流した。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=1:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。さらにソルミックス A−11からの再結晶により精製し、(E)−4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,1’−ビフェニル(No.38) 2.2gを得た。化合物(s33)からの収率は31.8%であった。
【0199】
化学シフトδ(ppm;CDCl):6.86(td,1H),6.65(td,1H),5.89(m,1H),5.37(m,2H),4.10(q,2H),2.45−2.25(m,3H),2.04(m,2H),1.90−1.77(m,3H),1.72(m,4H),1.61(m,1H),1.44(t,3H),1.41−1.24(m,5H),1.19−1.11(m,3H),1.10−1.00(m,2H),0.90(td,2H),0.87(t,3H).
【0200】
化合物(No.38)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 75.8 N 119.6 I.
NI=115.3℃,Δε=−4.99,Δn=0.136,η=41.6mPa・s.
【実施例6】
【0201】
(E)−4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブト−3−エン−1−イル)−1,1’−ビフェニル(No.152)の合成
【0202】

【0203】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−ホルミルフェニルボロン酸(s47)75.9g、4−ブロモ−2,3−ジフルオロエトキシベンゼン(s48)100.0g、リン酸カリウム269.0g、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)(Pd(PhP)Cl)8.9gおよび、1,4−ジオキサン500mlを入れ、2時間加熱還流させた。反応混合物を25℃まで冷却後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=1:1(体積比))からの再結晶により精製し、4−エトキシ−4’−ホルミル−2,3−ジフルオロ−1,1’−ビフェニル(s49)102.8gを得た。化合物(s48)からの収率は92.9%であった。
【0204】
第2工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−エトキシ−4’−ホルミル−2,3−ジフルオロ−1,1’−ビフェニル(s49)30.0g、ジエチルホスホノ酢酸エチル30.8g、トルエン200mlを入れ、0℃まで冷却した。20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液46.7gをこの温度で加え、2時間攪拌させた。反応混合物を25℃に戻し、さらに2時間攪拌後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=2:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、2−プロパノール150mlに溶解させ、さらにPd/Cを1.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)プロピオン酸エチル(s50)28.9gを得た。化合物(s49)からの収率は75.6%であった。
【0205】
第3工程
水素化リチウムアルミニウム 3.3gをTHF 200mlに懸濁した。この懸濁液に化合物(s50)28.9gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、3−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)プロパノール(s51)25.0gを得た。化合物(s50)からの収率は98.9%であった。
【0206】
第4工程
化合物(s51)25.0gおよびトリフェニルホスフィン33.6gを塩化メチレン200mlに溶解した。この溶液に、四臭化炭素34.0gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液を、室温下ゆっくりと滴下し、さらに室温下3時間攪拌した。反応混合物を飽和重曹水で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、順次、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮して残渣を得た。残渣は淡黄色の固体であり、この残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=1:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)ブロモプロパン(s52)28.3gを得た。化合物(s51)からの収率は93.5%であった。
【0207】
第5工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s52)28.3g、トルエン100mlおよびトリフェニルホスフィン41.8gを入れ、5時間加熱還流させた。反応混合物を25℃まで冷却後、析出物をろ過し、トルエンで3回未反応の原料を洗い流した。得られた無色の固体を乾燥させ、3−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(s53)48.3gを得た。化合物(s52)からの収率は98.0%であった。
【0208】
第6工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた化合物(s53)16.4gとTHF 100mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)2.9gを−10℃〜−5℃の温度範囲で投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s39)6.7gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、トリイソプロピルシリルオキシ−4−(4−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)ブト−1−エン−1−イル)シクロヘキサン(s54)10.5gを得た。化合物(s39)からの収率は82.1%であった。
【0209】
第7工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s54)10.5g、THF100mlを入れ、0℃まで冷却した。テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の1.0M−THF溶液39.0mlを0℃〜5℃の温度範囲で、加えた。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。GC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチルとトルエンの混合溶媒(酢酸エチル:トルエン=10:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−(4−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)ブト−1−エン−1−イル)シクロヘキサノール(s55)7.4gを得た。化合物(s54)からの収率は99.0%であった。
【0210】
第8工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s55)7.4g、塩化メチレン100mlを入れ、0℃まで冷却した。デスマーチンペルヨージナン(DMP)9.7gを0℃〜5℃の温度範囲で、加えた。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。反応混合物にセライトを加えて不要物を除去した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−(4−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)ブト−1−エン−1−イル)シクロヘキサノン(s56)7.2gを得た。化合物(s55)からの収率は97.8%であった。
【0211】
第9工程
窒素雰囲気下の反応器へ、2.0M−n−プロピルマグネシウムクロリド ジエチルエーテル溶液14mlとTHF50mlとを入れ、0℃まで冷却した。そこへ、化合物(s56)を7.2g含んだTHF20ml溶液0℃から5℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した。残渣に、p−トルエンスルホン酸(p−TsOH)0.22g、およびトルエン100mlを混合し、2時間加熱還流した。反応混合物を30℃まで冷却した後、を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣にベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物11.2g、ソルミックスA−1150mlを混合した。6N−HCl溶液28mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=2:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、さらにソルミックス A−11からの再結晶により精製し、(E)−4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブト−3−エン−1−イル)−1,1’−ビフェニル(No.152)2.2gを得た。化合物(s56)からの収率は29.0%であった。
【0212】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.41(d,2H),7.24(d,2H),7.08(t,1H),6.78(t,1H),5.46(m,2H),5.36(m,1H),4.15(q,2H),2.70(t,2H),2.33(m,2H),2.14(m,1H),2.10−1.88(m,5H),1.84−1.70(m,2H),1.48(t,3H),1.44−1.30(m,3H),0.86(t,3H).
【0213】
化合物(No.152)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 56.0 N 96.2 I.
NI=90.6℃,Δε=−5.00,Δn=0.176,η=56.6mPa・s.
【実施例7】
【0214】
(E)−4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−(トランス−4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−1,1’−ビフェニル(No.182)の合成
【0215】

【0216】
第1工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた化合物(s53)25.4gとTHF 200mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 4.6gを−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF30mlに溶解した化合物(s17)7.9gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物27.4g、ソルミックスA−11 100mlを混合した。6N−HCl溶液23mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(4−(トランス−4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−1,1’−ビフェニル(No.182) 12.5gを得た。化合物(s17)からの収率は74.6%であった。
【0217】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.42(d,2H),7.25(d,2H),7.14−7.06(m,5H),6.78(t,1H),5.52−5.40(m,2H),4.15(q,2H),2.71(t,2H),2.55(t,2H),2.43(tt,1H),2.34(m,2H),1.97(m,1H),1.90(m,2H),1.83(m,2H),1.62(quin,2H),1.52−1.42(m,5H),1.27−1.16(m,2H),0.94(t,3H).
【0218】
化合物(No.182)の物性は、次のとおりであった。この化合物では、物性を測定する試料として、化合物(No.182)10重量%と母液晶(i)90重量%との混合物を用いた。
転移温度:C 135.1 N 209.8 I.
NI=199.6℃,Δε=−4.01,Δn=0.217,η=51.6mPa・s.
【実施例8】
【0219】
(E)−4−(4−(トランス−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−4’−プロピル−1,1’−ビフェニル(No.162)の合成
【0220】

【0221】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ4’−プロピル−4−ホルミル−1,1’−ビフェニル(s56)30.0g、ジエチルホスホノ酢酸エチル36.0g、トルエン300mlを入れ、0℃まで冷却した。20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液 54.6gをこの温度で加え、2時間攪拌させた。反応混合物を25℃に戻し、さらに2時間攪拌した。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=2:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、2−プロパノール300mlに溶解させ、さらにPd/Cを1.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=2:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(4’−プロピル−1,1’−ビフェニル−4−イル)プロピオン酸 エチル(s57)29.8gを得た。化合物(s56)からの収率は75.2%であった。
【0222】
第2工程
水素化リチウムアルミニウム4.6gをTHF200mlに懸濁した。この懸濁液に化合物(s57)29.8gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、減圧下で濃縮をして、3−(4’−プロピル−1,1’−ビフェニル−4−イル)プロパノール(s58)23.4gを得た。化合物(s57)からの収率は91.5%であった。
【0223】
第3工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s58)10.0g、塩化メチレン100mlを入れ、0℃まで冷却した。デスマーチンペルヨージナン(DMP)18.7gを0℃〜5℃の温度範囲で、加えた。0℃で1時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。反応混合物にセライトを加えて不要物を除去した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(4’−プロピル−1,1’−ビフェニル−4−イル)プロピルカルボアルデヒド(s59)7.1gを得た。化合物(s58)からの収率は71.6%であった。
【0224】
第4工程
水素化リチウムアルミニウム 1.7gをTHF 200mlに懸濁した。この懸濁液に化合物(s10)20.0gを、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、さらにこの温度範囲で2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認した後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えていき、析出物をセライト濾過により除去した。濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらにヘプタンからの再結晶により精製し、トランス−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキシルメタノール(s60)19.8gを得た。化合物(s10)からの収率は98.3%であった。
【0225】
第5工程
窒素雰囲気下、化合物(s60)19.8g、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール(PTSH)14.3g、およびトリフェニルホスフィン(PPh) 21.1gをTHF200ml中に混合し、0℃まで冷却した。アゾジカルボンサンジエチル(DEAD)の40%トルエン溶液 36.6mlを0℃〜5℃の温度範囲で、滴下した。LC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−フェニル−5−(トランス−4−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシルメチルチオ)−1H−テトラゾール(s61)29.7gを得た。化合物(s60)からの収率は94.2%であった。
【0226】
第6工程
窒素雰囲気下、化合物(s61)29.7gをソルミックスA−11 200ml中に混合した。30%過酸化水素水 63.0mlに溶解した、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物4.3gを35℃〜40℃の温度範囲で、滴下した。さらにこの温度範囲で8時間攪拌した。LC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、亜硫酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−フェニル−5−(4−ブトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシルメチルスルホニル)−1H−テトラゾール(s62)29.0gを得た。化合物(s61)からの収率は90.9%であった。
【0227】
第7工程
窒素雰囲気下、化合物(s59)24.6gと化合物(s62)7.1gをジメトキシエタン(DME) 100mlを混合し、−60℃まで冷却した。カリウムヘキサメチルジシラザン(KHMDS)の0.91MTHF溶液19.6mlを−60℃〜−55℃の温度範囲で、滴下した。−60℃で2時間攪拌した後、室温に戻し、さらに8時間攪拌した。LC分析により反応が終了していることを確認した後、反応混合物を水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=1:1(体積比))を展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、(E)−4−(4−(トランス−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−4’−プロピル−1,1’−ビフェニル(No.162)1.2gを得た。化合物(s59)からの収率は20.7%であった。
【0228】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.50(d,4H),7.24(d,4H),6.83(t,1H),6.65(t,1H),5.52−5.39(m,2H),4.08(q,2H),2.78−2.68(m,3H),2.62(t,2H),2.34(q,2H),1.96(m,1H),1.85(m,4H),1.67(sext,2H),1.52−1,41(m,5H),1.30−1,19(m,2H),0.97(t,3H).
【0229】
化合物(No.162)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 73.4 S 92.8 N 214.3 I.
NI=205.9℃,Δε=−4.40,Δn=0.220,η=55.7mPa・s.
【実施例9】
【0230】
(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(トランス−4−(4−(トランス−4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)シクロヘキシル)ベンゼン(No.202)の合成
【0231】

【0232】
第1工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた化合物(s20)9.8gとTHF 200mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)1.8gを−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s63)7.4gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物5.4g、ソルミックスA−11 100mlを混合した。6N−HCl溶液16mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−1−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4−(トランス−4−(4−(トランス−4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)シクロヘキシル)ベンゼン(No.202) 2.1gを得た。化合物(s63)からの収率は31.5%であった。
【0233】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.11(q,4H),6.84(t,1H),6.66(t,1H),5.41(m,2H),4.08(q,2H),2.74(m,1H),2.54(m,2H),2.43(m,1H),2.07−2.01(m,2H),2.00−1.81(m,9H),1.63(sext,2H),1.53−1.38(m,7H),1.34−1,18(m,5H),1.07(m,2H),0.94(t,3H).
【0234】
化合物(No.202)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 83.8 S 139.0 N 222.5 I.
NI=189.3℃,Δε=−4.09,Δn=0.154,η=63.3mPa・s.
【実施例10】
【0235】
(E)−2’,3’−ジフルオロ−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,1’−ビフェニル(No.284)の合成
【0236】

【0237】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(s34)2.7gとTHF100mlとを入れ、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液11mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いてトランス−4’−ペンチル−(1,1’−ビシクロヘキサン)−4−オン(s64)を2.8g含んだTHF20ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した。残渣に、p−トルエンスルホン酸(p−TsOH)0.08g、およびトルエン100mlを混合し、この混合物を、50℃で2時間攪拌した。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、ヘプタンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、(E)−2’,3’−ジフルオロ−4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,1’−ビフェニル(No.284)0.9gを得た。化合物(s34)からの収率は18.6%であった。
【0238】
化学シフトδ(ppm;CDCl):6.87(t,1H),6.81(t,1H),5.94(m,1H),5.42−5.30(m,2H),2.66(t,2H),2.48−2.30(m,2H),2.29−2.18(m,3H),1.99−1.86(m,2H),1.86−1.63(m,9H),1.46−1.19(m,10H),1.19−1.07(m,7H),1.07−0.93(m,4H),0.93−0.82(m,10H).
【0239】
化合物(No.284)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 25.9 S 131.4 S 163.5 N 215.0 I.
NI=203.3℃,Δε=−2.33,Δn=0.106,η=33.1mPa・s.
【実施例11】
【0240】
(E)−トランス−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−トランス−4’−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)−1,1’−ビシクロヘキサン(No.222)の合成
【0241】

【0242】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、3−エトキシ−1,2−ジフルオロベンゼン(s65)10.0gとTHF200mlとを入れ、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液64.0mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて4−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)−シクロヘキサノン(s66)を12.8g含んだTHF50ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を3%塩化アンモニウム水溶液で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、4−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)−1−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキサノールを得た。この化合物に、p−トルエンスルホン酸0.68g、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、Pd/Cを0.3g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣をTHFとヘプタンの混合溶媒(THF:ヘプタン=1:9(体積比))からの再結晶により精製し、8−[4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−シクロヘキセニル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(s67)7.7gを得た。化合物(s65)からの収率は35.2%であった。
【0243】
第2工程
化合物(s67)7.7g、87%蟻酸 8.7g、およびトルエン 100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をヘプタン溶媒からの再結晶により精製し、トランス−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ビシクロヘキシル−4−オン(s68) 6.8gを得た。化合物(s67)からの収率は99.0%であった。
【0244】
第3工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 7.9gとTHF100mlを混合し、−30℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 2.6gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、4回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF35mlに溶解した化合物(s68)6.8gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を−10℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、トランス−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4’−メトキシメチレン−ビシクロヘキシルを得た。この化合物に、87%蟻酸 8.4g、およびトルエン 100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をヘプタンとTHFの混合溶媒(ヘプタン:THF=9:1(体積比))からの再結晶により精製し、トランス−4’−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−ビシクロヘキシル−トランス−4−カルボアルデヒド(s69)6.0gを得た。化合物(s68)からの収率は82.5%であった。
【0245】
第4工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた化合物(s5)6.9gとTHF100mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)1.5gを−10℃〜−5℃の温度範囲で投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s68)4.0gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物22.8g、ソルミックスA−11100mlを混合した。6N−HCl溶液19mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−トランス−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−トランス−4’−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)−1,1’−ビシクロヘキサン(No.222)1.5gを得た。化合物(s68)からの収率は26.6%であった。
【0246】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.09(s,4H),6.83(t,1H),6.66(t,1H),5.60(m,2H),4.08(q,2H),2.72(tt,1H),2.62(t,2H),2.56(t,2H),2.27(m,2H),1.90−1.79(m,5H),1.78−1.71(m,4H),1.61(sext,2H),1.46−1.36(m,5H),1.22−1.11(m,3H),1.04(m,5H),0.94(t,3H).
【0247】
化合物(No.222)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 74.2 S 155.2 N 228.8 I.
NI=205.3℃,Δε=−4.55,Δn=0.153,η=55.7mPa・s.
【実施例12】
【0248】
(E)−4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(トランス−4−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)シクロヘキシル)−1,1’−ビフェニル(No.242)の合成
【0249】

【0250】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ8−(4−ブロモフェニル)−1,4−ジオキサスピロ(4.5)デカ−7−エン(s71)30.0g、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルボロン酸(s70)24.6g、リン酸カリウム(KPO) 64.7g、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)(Pd(PhP)Cl)2.1g、1,4−ジオキサン300mlを入れ、2時間加熱還流させた。反応混合物を25℃まで冷却後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、Pd/Cを1.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。さらに、トルエンとヘプタンの混合溶媒(トルエン:ヘプタン=1:1(体積比))からの再結晶により精製し、8−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)−1,4−ジオキサスピロ(4.5)デカン(s72)28.8gを得た。化合物(s71)からの収率は75.7%であった。
【0251】
第2工程
化合物(s72)28.8g、87%蟻酸17.7g、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をヘプタン溶媒からの再結晶により精製し、4−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)シクロヘキサノン(s73)22.2gを得た。化合物(s72)からの収率は87.4%であった。
【0252】
第3工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 18.7gとTHF 200mlを混合し、−30℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)6.1gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF20mlに溶解した化合物(s73)15.0gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を−10℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)メトキシメチレンシクロヘキサンを得た。この化合物に、87%蟻酸7.2g、およびトルエン 100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をヘプタンとTHFの混合溶媒(ヘプタン:THF=9:1(体積比))からの再結晶により精製し、4−(4’−エトキシ−2’,3’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4−イル)シクロヘキサンカルボアルデヒド(s74)9.8gを得た。化合物(s73)からの収率は62.7%であった。
【0253】
第4工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた化合物(s5)7.0gとTHF100mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)1.6gを−10℃〜−5℃の温度範囲で投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s74)4.0gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物23.2g、ソルミックスA−11 100mlを混合した。6N−HCl溶液19mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−4−エトキシ−2,3−ジフルオロ−4’−(トランス−4−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)シクロヘキシル)−1,1’−ビフェニル(No.242)2.9gを得た。化合物(s74)からの収率は51.1%であった。
【0254】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.44(d,2H),7.27(d,2H),7.10(s,4H),7.09(td,1H),6.78(t,1H),5.46(m,2H),4.15(q,2H),2.65(t,2H),2.55(t,2H),2.50(tt,1H),2.30(q,2H),2.03−1.90(m,3H),1.85(m,2H),1.64(sext,2H),1.51(dd,2H),1.47(t,3H),1.23(qd,2H),0.94(t,3H).
【0255】
化合物(No.242)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 97.9 S 100.7 N 230.4 I.
NI=207.9℃,Δε=−4.32,Δn=0.219,η=56.3mPa・s.
【実施例13】
【0256】
(E)−4−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−(トランス−4−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)シクロへキシル)−1,1’−ビフェニル(No.262)の合成
【0257】

【0258】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル(s75)50.0gとTHF500mlとを入れ、−74℃まで冷却した。そこへ、1.00M−sec−ブチルリチウム,n−ヘキサン、シクロヘキサン溶液222mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オン(s7)を28.8g含んだTHF200ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を3%塩化アンモニウム水溶液で処理した後、水層を酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、8−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−オールを得た。この化合物に、p−トルエンスルホン酸1.5g、およびトルエン300mlを混合し、この混合物を、留出する水を抜きながら2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物を、トルエン100ml、ソルミックスA−11 100mlとの混合溶媒に溶解させ、さらにPd/Cを2.5g加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、8−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン(s76)31.9gを得た。化合物(s75)からの収率は42.0%であった。
【0259】
第2工程
化合物(s76)31.9g、87%蟻酸10.7g、およびトルエン200mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタンとトルエンの混合溶媒(ヘプタン:トルエン=2:1(体積比))からの再結晶により精製し、1−(4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル)−シクロヘキサン−4−オン(s77)21.8gを得た。化合物(s76)からの収率は76.6%であった。
【0260】
第3工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 20.4gとTHF 200mlを混合し、−30℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK) 6.7gを−30℃〜−20℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−20℃で30分攪拌した後、THF35mlに溶解した化合物(s77)16.8gを−30〜−20℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を−10℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル−メトキシメチレンシクロヘキサンを得た。この化合物に、87%蟻酸 4.2g、およびトルエン 100mlを混合し、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を30℃まで冷却した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をヘプタンとTHFの混合溶媒(体積比 ヘプタン:THF=9:1)からの再結晶により精製し、4’−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル−シクロヘキサンカルボアルデヒド(s78)11.7gを得た。化合物(s77)からの収率は67.1%であった。
【0261】
第4工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた化合物(s5)6.4gとTHF 100mlを混合し、−10℃まで冷却した。カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)1.4gを−10℃〜−5℃の温度範囲で投入した。−10℃で60分攪拌した後、THF 30mlに溶解した化合物(s78)4.0gを−10〜−5℃の温度範囲で滴下した。反応混合物を0℃で30分攪拌した後、水で処理し、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製物に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物 20.2g、ソルミックスA−11 100mlを混合した。6N−HCl溶液16.8mlを加えた後、この混合物を、2時間加熱還流させた。反応混合物を水で処理した後、水層をトルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣を、トルエンを展開溶媒とし、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに酢酸エチルとソルミックスA−11の混合溶媒(酢酸エチル:ソルミックス=1:4(体積比))からの再結晶により精製し、(E)−4−エトキシ−2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−(トランス−4−(4−(4−プロピルフェニル)ブト−1−エン−1−イル)シクロへキシル)−1,1’−ビフェニル(No.262)3.6gを得た。化合物(s78)からの収率は65.3%であった。
【0262】
化学シフトδ(ppm;CDCl):7.10(s,4H),7.03(m,3H),6.80(t,1H),5.52−5.38(m,2H),4.16(q,2H),2.87(tt,1H),2.65(t,2H),2.56(t,2H),2.30(m,2H),1.99(m,1H),1.92(m,2H),1.86(m,2H),1.63(quin,2H),1.59−1.45(m,5H),1.32−1.22(m,2H),0.94(t,3H).
【0263】
化合物(No.262)の物性は、次のとおりであった。
転移温度:C 113.5 N 198.2 I.
NI=175.9℃,Δε=−5.41,Δn=0.194,η=86.8mPa・s.
【実施例14】
【0264】
実施例1〜13に記載された合成方法と同様の方法により、以下に示す化合物(No.1)〜(No.300)を合成することができる。付記したデータは前記した方法に従って求めた。転移温度は化合物自体の測定値で示した。上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、光学異方性(Δn)、および粘度(η)は、化合物を母液晶(i)に混合した試料の測定値を、上記外挿法に従って算出した外挿値である。化合物(No.182)では母液晶90重量%と、化合物10重量%とから試料を調製した。残りの化合物では母液晶85重量%と、化合物15重量%とから試料を調製した。
【0265】

【0266】

【0267】

【0268】

【0269】

【0270】

【0271】

【0272】

【0273】

【0274】

【0275】

【0276】

【0277】

【0278】

【0279】

【0280】

【実施例15】
【0281】
化合物(No.38)の物性




母液晶(i)85重量%と、実施例3で得られた化合物(No.38)の15重量%とから組成物(iii)を調製した。組成物(iii)の物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No.38)の物性を算出した。その外挿値は、次のとおりであった。
上限温度(TNI)=115.3℃;粘度(η)=41.6 mPa・s.
組成物(iii)の弾性定数K33は、16.83pNであった。
【0282】
〔比較例1〕
比較例として、2,3−ジフルオロ−4−((トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ)−4’−プロピル−1,1’−ビフェニル(C’)を合成した。これは、この比較化合物(C’)が、独国出願公開第3906058号明細書に記載の2,3−ジフルオロ−4−((トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ)−4’−ペンチル−1,1’−ビフェニル(C)に類似しているからである。両者の違いは、右末端基だけである。
【0283】
独国出願公開第3906058号明細書に記載の化合物(C):


【0284】
比較化合物(C’):


【0285】
比較化合物(C’)の化学シフトδ(ppm;CDCl):7.43(td,1H),7.40(d,2H),7.35(d,2H),7.08(td,1H),4.15(q,2H),2.71(t,2H),1.93(m,1H),1.70−1.41(m,19H),0.92−0.88(m,6H).
【0286】
比較化合物(C’)の転移温度は、次のとおりであった。
転移温度:C 50.4 N 116.8 I.
【0287】
母液晶(i)85重量%と、比較化合物(C’)の15重量%とから組成物(ii)を調製した。組成物(ii)の物性を測定し、測定値を外挿することで比較化合物(C’)の物性を算出した。その外挿値は、次のとおりであった。
上限温度(TNI)=115.3℃;粘度(η)=61.2mPa・s.
組成物(ii)の弾性定数K33は、16.67pNであった。
【0288】
表.比較実験−1

【0289】
上の表から分かるように、化合物(No.38)は、上限温度(TNI)が大きく、粘度(η)が低く、弾性定数K33が大きな化合物であることがわかった。化合物(No.38)は、比較化合物(C’)と比較して、上限温度(TNI)と弾性定数K33は同等であるものの、粘度(η)が非常に小さな化合物であることがわかった。
【実施例16】
【0290】
化合物(No.152)の物性




母液晶(i)85重量%と、実施例6で得られた化合物(No.152)の15重量%とから組成物(v)を調製した。組成物(v)の物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(No.152)の物性を算出した。その外挿値は、次のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−5.00;粘度(η)=56.6mPa・s.
組成物(v)の弾性定数K33は、16.75pNであった。
【0291】
〔比較例2〕
比較例として、4−ドデシルオキシ−2,3−ジフルオロベンゼンカルボン酸 (E)−4−(4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)フェニル(F’)を合成した。これは、この比較化合物(F’)が、特開平04−330019公報に記載の4−ドデシルオキシ−2,3−ジフルオロベンゼンカルボン酸 (E)−4−(4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)ブト−3−エン−1−イル)フェニル(F)に類似しているからである。両者の違いは、左末端基だけである。
【0292】
特開平04−330019公報に記載の化合物(F):

【0293】
比較化合物(F’)

【0294】
比較化合物(F’)の化学シフトδ(ppm;CDCl):7.83(td,1H),7.21(d,2H),7.10(d,2H),6.81(t,1H),5.38(m,2H),4.12(q,2H),2.61(t,2H),1.88(quin,2H),1.71(m,4H),1.59(quin,2H),1.48(quin,2H),1.40−1.23(m,16H),1.23−1.11(m,6H),0.91−0.82(m,10H).
【0295】
比較化合物(F’)の転移温度は、次のとおりであった。
転移温度:C 57.7 S 95.2 N 114.9 I.
【0296】
母液晶(i)85重量%と、比較化合物(F’)の15重量%とから組成物(iv)を調製した。得られた組成物(iv)の物性を測定し、測定値を外挿することで比較化合物(F’)の物性を算出した。その外挿値は、次のとおりであった。
誘電率異方性(Δε)=−3.04;粘度(η)=100.5mPa・s.
組成物(iv)の弾性定数K33は、16.00pNであった。
【0297】
表.比較実験−2

【0298】
上の表から分かるように、化合物(No.152)は、誘電率異方性(Δε)が負に大きく、粘度(η)が低く、弾性定数K33が大きな化合物であることがわかった。比較化合物(F’)と比較して、誘電率異方性(Δε)が負に高く、粘度(η)が低く、弾性定数K33が大きな化合物であることがわかった。
【0299】
〔組成物(1)の実施例〕
実施例により本発明の液晶組成物を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。実施例における化合物は、下記の表の定義に基づいて記号により表す。
表において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめる。
【0300】

【0301】
ネマチック相の上限温度、光学異方性などの液晶組成物の特性は、先に記載した方法にしたがって測定した。ここでは、測定値をそのまま記載した。
【実施例17】
【0302】
3−B2VHB(2F,3F)−O2 (No.2) 4%
3−BHV2B(2F,3F)−O2 (No.42) 3%
3−HH−O1 (8−1) 7%
5−HH−O1 (8−1) 3%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 16%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 21%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 7%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 14%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 20%
NI=63.2℃;Δn=0.082;η=24.0mPa・s;Δε=−4.3.
【実施例18】
【0303】
3−B(2F,3F)HV2B(2F,3F)−O2 (No.82) 3%
3−ChV2BB(2F,3F)−O2 (No.152) 7%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 6%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 9%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
3−HHB−1 (9−1) 6%
NI=83.5℃;Δn=0.097;η=37.7mPa・s;Δε=−3.6.
【実施例19】
【0304】
3−HV2chB(2F,3F)−O2 (No.38) 4%
3−HV2B(2F,3F)Ch−V (No.102) 3%
3−HH−4 (8−1) 4%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 22%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 22%
2−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 3%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
3−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
V−HHB−1 (9−1) 6%
3−HHB−3 (9−1) 6%
3−HHEBH−3 (10−6) 3%
3−HHEBH−4 (10−6) 3%
3−HHEBH−5 (10−6) 2%
NI=92.3℃;Δn=0.104;η=29.9mPa・s;Δε=−4.2.
【実施例20】
【0305】
3−BHV2BB(2F,3F)−O2 (No.182) 3%
3−BHV2HB(2F,3F)−O2 (No.202) 3%
3−BB2VHB(2F,3F)−O2 (No.162) 3%
3−HB−O1 (8−5) 12%
3−HH−4 (8−1) 4%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 10%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 10%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
6−HEB(2F,3F)−O2 (2−6) 6%
NI=92.0℃;Δn=0.097;η=37.5mPa・s;Δε=−3.8.
本組成物100重量部に光学活性化合物(Op−5)を0.25重量部添加したときのらせんピッチは60.1μmであった。
【実施例21】
【0306】
3−B2VHHB(2F,3F)−O2 (No.222) 4%
3−B2VHBB(2F,3F)−O2 (No.242) 4%
2−HH−5 (8−1) 3%
3−HH−4 (8−1) 15%
3−HH−5 (8−1) 4%
3−HB−O2 (8−5) 12%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 15%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 3%
2−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 7%
5−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
3−HHB−1 (9−1) 3%
3−HHB−O1 (9−1) 3%
NI=80.3℃;Δn=0.098;η=20.5mPa・s;Δε=−4.2.
【実施例22】
【0307】
3−B2VHB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (No.262) 5%
3−HV2B(2F,3F)ChH−5 (No.284) 3%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 6%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 11%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
3−HHB−1 (9−1) 6%
NI=90.8℃;Δn=0.095;η=38.1mPa・s;Δε=−3.5.
【産業上の利用可能性】
【0308】
本発明の化合物は、熱、光などに対する高い安定性を有し、広い温度範囲でネマチック相となり、粘度が小さく、適切な光学異方性、および大きな弾性定数K33を有し、負に大きな誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有している。この化合物を含有する液晶組成物は、熱、光などに対する高い安定性を有し、粘度が小さく、適切な光学異方性、大きな弾性定数K33、および適切な負の誘電率異方性を有し、しきい値電圧が低く、ネマチック相の上限温度が高く、ネマチック相の下限温度が低い。この組成物を含有する液晶表示素子は、応答時間が短く、消費電力が小さく、駆動電圧が小さく、コントラスト比が大きく、広い温度範囲で使用可能である。従って、本発明の化合物は、IPSモードまたはVAモードで動作する表示素子に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


式(1)において、
およびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
環Aが1,4−シクロへキシレンであるとき、環Aおよび環Aの少なくとも1つは1,4−シクロヘキセニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
lは1または2であり、mおよびnは独立して、0、1、または2であり、mおよびnの和は1または2であり、l、m、およびnの和は、2または3であり;
lおよびmが1であり、nが0であり、環Aが1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるとき、環Aおよび環Aの少なくとも1つは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
lが2であり、mが1であり、nが0であり、2つの環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであり、環Aが1,4−フェニレンであるとき、2つの環Aの他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【請求項2】
式(1−1)または(1−2)で表される請求項1に記載の化合物。


式(1−1)および(1−2)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
式(1−1)において、環Aおよび環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
式(1−2)において、2つの環Aのいずれか一方が1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【請求項3】
式(1−1−1)、(1−1−2)、および(1−2−2)のいずれか1つで表される請求項2に記載の化合物。


式(1−1−1)、(1−1−2)、および(1−2−2)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【請求項4】
式(1−3)または(1−4)で表される請求項1に記載の化合物。


式(1−3)および(1−4)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり;
は、−(CH22−CH=CH−、または−CH=CH−(CH22−であり;
式(1−3)において、環Aおよび環Aのいずれか一方が、1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり;
式(1−4)において、2つの環Aのいずれか一方が、1,4−フェニレンであるとき、他方は1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンである。
【請求項5】
式(1−3−1)〜(1−3−3)、および式(1−4−1)〜(1−4−3)のいずれか1つで表される請求項4に記載の化合物。


式(1−3−1)〜(1−3−3)、および式(1−4−1)〜(1−4−3)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。
【請求項6】
式(1−5)で表される請求項1に記載の化合物。


式(1−5)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり;
環Aが1,4−シクロへキシレンであるとき、環Aは1,4−シクロヘキセニレンであり;
xは1または2である。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【請求項8】
式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、および(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項7に記載の液晶組成物。


式(2)〜(7)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH22−、または単結合であり;
およびLは独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、s、t、u、およびvは独立して、0または1であり、r、s、t、uの和は、1または2である。
【請求項9】
式(8)、(9)、および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項7に記載の液晶組成物。


式(8)〜(10)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項10】
請求項9に記載の式(8)、(9)、および(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する請求項7〜11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−176933(P2012−176933A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267465(P2011−267465)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)JNC石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】