説明

液晶材料、液晶表示素子および液晶光空間変調素子

【課題】スメクチックAPR 相を示す温度範囲を低温側に広げることが可能な液晶材料を提供する。
【解決手段】TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、液晶材料を含む液晶層30を備えている。この液晶材料は、自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有すると共にスメクチックAPR 相を示す屈曲型鎖状分子であり、少なくとも一方の末端にケイ素を構成元素として含む1価の末端基を有している。この末端基は、ケイ素と共に炭素および水素、または、ケイ素と共に炭素、水素および酸素を構成元素として含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有する屈曲型鎖状分子である液晶材料、ならびにそれを用いた液晶表示素子および液晶光空間変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などを用いたアクティブマトリクス駆動方式の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)が普及している。このLCDの用途は、モバイル機器などの小型用途から大画面テレビなどの大型用途まで広い範囲に渡る。LCDでは、インパルス駆動方式などを採用して液晶材料の応答速度が高速化されているが、その液晶材料自体の応答速度が根本的に遅いため、動画ボケなどが生じやすいという問題がある。このため、LCDの動画表示品位は、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)および電界放出型ディスプレイ(FED:field emission display)などに比べて、未だ十分であるとは言えない状況にある。
【0003】
LCDの高速応答化については、フレームレートを60Hzから120Hzまたは240Hzに変更する対策(ハイフレーム駆動)がなされている。ところが、LCDの動画表示品位は、確かにTFTを含む駆動系の要因に依存するところはあるが、本質的には液晶材料自体の応答特性に大きく依存する。よって、液晶材料自体の応答特性を改善しない限り、根本的な解決にはならないため、実質的にハイフレームレート駆動を実現できているとは言えない。そこで、優れた動画表示品位を実現するために、ハイフレーム駆動に対応できる高速応答可能な液晶材料の登場が要望されている。
【0004】
高速応答可能な液晶材料としては、ネマチック液晶(フレクソエレクトリック効果)、強誘電性液晶または反強誘電性液晶などが知られているが、最近では、屈曲型鎖状分子(またはバナナ型分子)も検討されている。この屈曲型鎖状分子は、一般的な棒状分子とは異なり、長軸方向において局所的に折れ曲がっている分子であり、その屈曲鎖状型分子を用いる技術については、既にいくつかの報告が成されている。
【0005】
具体的には、屈曲型鎖状分子をゲスト分子として含む液晶材料が2枚の基板の間に挟まれたLCDが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合には、基板の表面に対して垂直な方向に電場が印加されている。
【0006】
また、屈曲型鎖状分子を含むネマチック液晶相が一対の基板の間に設けられたLCDが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この場合には、少なくとも一方の基板に、その表面に対して概ね平行な成分を有する横電界を発生させるための電極が形成されている。また、双方の基板に、永久双極子モーメントの方向に沿って(一定の規則性をもって)屈曲型鎖状分子を配向させるための配向手段が施されている。
【0007】
さらに、スメクチック相を示す屈曲型鎖状分子を含む液晶材料を用いたLCDが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この場合には、屈曲型鎖状分子がその長軸を基板の表面に対して垂直な方向に向けるように配列されていると共に、基板の表面に対して平行な方向に電場が印加されている。このように屈曲型鎖状分子を配列させるためには、シランカップリング剤またはポリイミド膜などの垂直配向剤が用いられている。これにより、スメクチック相の層は基板の表面に対して平行になる。また、屈曲型鎖状分子は屈曲型構造の短軸方向に双極子を有し、その分極方位はランダムになる。このように分極方位がランダムであるスメクチック相は、スメクチックAPR (SmecticA Polar Random )相とよばれている。
【0008】
スメクチックAPR 相を示す屈曲型鎖状分子については、具体的な材料例が紹介されており、その電場に対する挙動変化も確認されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0009】
中でも、LCDの高速応答化を実現するためには、スメクチックAPR 相を示す屈曲型鎖状分子を用いると共に、基板の表面に対して平行な方向に電場を印加する表示モードを採用することが好ましい。この表示モードでは、複数(例えば数百)の屈曲型鎖状分子がバナナの房状に集合してグループを形成し、そのグループが電場に応じて協調的に応答するため、高速応答化だけでなく低電場駆動化も実現される。
【0010】
このような表示モードにおいて、複数の屈曲型鎖状分子では、無電界時には分極方位が巨視的にランダムであるが、電界印加時には分極方位が基板の表面に対して平行な面内において電場方向に揃えられる。これにより、屈曲型鎖状分子の短軸が面内において回転するため、異方性が生じる。このように異方性が面内においてのみ変化するため、大画面テレビの用途では視野角依存性が確保される。しかも、異方性は電場強度に依存するため、光透過率が連続的に変化する(階調性が得られる)と共に、光透過率は電場の印加に対して閾値を有するため、クロストークによる光漏れが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−161277号公報
【特許文献2】特許第3460527号明細書
【特許文献3】国際公開第2007−083784号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ジャパニーズ ジャーナル オブ アップライド フィジックス,45巻,L282頁〜L284頁,2006年,新保等(Japanese Journal of Applied Physics ,Vol.45,No.10 ,p.L282〜L284,2006,Y.Shimbo et al. )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
スメクチックAPR 相を示す屈曲型鎖状分子は、上記したようにLCDの高速応答化などを実現するために有用であるにもかかわらず、そのスメクチックAPR 相を示す温度範囲は、高温かつ狭い範囲である。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、スメクチックAPR 相を示す温度範囲を低温側に広げることが可能な液晶材料を得ると共に、それを用いて広い温度範囲で動作可能な液晶表示素子および液晶光空間変調素子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の液晶材料は、(1)自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有し、(2)スメクチックAPR 相を示し、(3)少なくとも一方の末端にケイ素を構成元素として含む1価の末端基を有する屈曲型鎖状分子である。また、本発明の液晶表示素子または液晶光空間変調素子は、一対の基板の間に液晶層を備え、その液晶層が上記した液晶材料を含むものである。
【0016】
液晶材料が屈曲型鎖状分子であるかどうかについては、分極反転電流測定により確認される。また、液晶材料がスメクチックAPR 相を示すかどうかについては、混和性試験により確認される。いずれの場合においても、スメクチックAPR 相を示すことが既に確認されている液晶材料を標準物質として用いる。なお、液晶材料の相変化を調べる場合には、示差走査熱量測定法により液晶材料の温度を測定すれば、相転移の有無を確認できる。この場合には、ホットステージなどで液晶材料を加熱しながら偏光顕微鏡で観察すれば、液晶相の種類を目視で同定できる。
【0017】
液晶表示素子とは、液晶層に電界が印加されると、それに応じて液晶材料(液晶分子)の長軸が傾斜するため、液晶層の透過率が変化する素子である。また、液晶光空間変調素子とは、液晶層に電界が印加されると、それに応じて液晶材料の長軸が傾斜するため、液晶層に入射した光が空間変調される素子である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液晶材料によれば、自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有すると共にスメクチックAPR 相を示す屈曲型鎖状分子は、少なくとも一方の末端にケイ素を構成元素として含む1価の末端基を有している。よって、スメクチックAPR 相を示す温度範囲を低温側に広げることができる。これにより、本発明の液晶材料を用いた液晶表示素子または液晶光空間変調素子によれば、動作温度範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の液晶材料を用いた液晶表示素子の主要部の構成を表す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の液晶材料を用いた液晶光空間変調素子の主要部の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.液晶材料
2.液晶材料の適用例(液晶表示素子)
3.液晶材料の他の適用例(液晶光空間変調素子)
【0021】
<1.液晶材料>
まず、本発明の一実施形態の液晶材料について説明する。ここで説明する液晶材料は、多様な光学用途に用いられるものであり、その光学用途の一例としては、後述するLCDなどの液晶表示素子または光偏光スイッチなどの液晶光空間変調素子が挙げられる。
【0022】
液晶材料は、屈曲型構造を有し、自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有する屈曲型鎖状分子である。この液晶材料は、特に、スメクチックAPR 相を示すと共に、長軸方向における少なくとも一方の末端にケイ素を構成元素として含む1価の末端基(以下、「ケイ素含有末端基」という。)を有している。この液晶材料がケイ素含有末端基を有しているのは、以下の理由による。
【0023】
屈曲型鎖状分子が末端に巨大な基(ケイ素含有末端基)を有するため、複数の屈曲型鎖状分子が短軸方向において密に配列されると、巨大な基同士は隣接できるが、その基以外の部分(コア部)同士は隣接できない。これにより、隣り合う屈曲型鎖状分子の間にスペース(コア部が動くことができる空間)が確保されるため、そのコア部が電場に応じて動きやすくなる。
【0024】
また、ケイ素含有基(ケイ素を構成元素として含む基)の位置が屈曲型鎖状分子の末端であるため、複数の屈曲型鎖状分子が長軸方向において階層状に積層されると、上下に位置する屈曲型鎖状分子間(ケイ素含有末端基同士)に相互作用が生じる。これにより、上下に位置する屈曲型鎖状分子の位置関係が安定に維持される(化学的に安定化する)ため、スメクチックAPR 相の層状態が安定化する。
【0025】
ケイ素含有末端基の種類は、ケイ素を構成元素として含んでいれば、特に限定されない。中でも、1または2以上のケイ素と共に炭素および水素を構成元素として含み、少なくとも1つのケイ素原子が炭素原子に結合されている基が好ましく、全てのケイ素原子が炭素原子に結合されている基がより好ましい。あるいは、1または2以上のケイ素と共に炭素、水素および酸素を構成元素として含み、少なくとも1つのケイ素原子が炭素原子または酸素原子に結合されている基が好ましく、全てのケイ素原子が炭素原子または酸素原子に結合されている基がより好ましい。前者の基としては、例えば、シラン構造(−SiR2 −:Rは1価の炭化水素基である。)を有する基などが挙げられる。また、後者の基としては、例えば、シロキサン構造(−SiR2 −O−SiR2 −:Rは1価の炭化水素基である。)を有する基などが挙げられる。
【0026】
ケイ素原子が炭素原子または酸素原子に結合されていることが好ましい理由は、ケイ素原子が水素原子(H)に結合されていると、屈曲型鎖状分子が化学的に不安定になるからである。詳細には、ケイ素原子が水素原子に結合された部分(≡Si−H)を有すると、その部分において反応しやすくなるため、屈曲型鎖状分子の構造(化学的構造=化学式)が当初の構造から変化しやすくなる。この場合には、屈曲型鎖状分子において物性が変化すると共に位置関係が乱れる可能性があり、場合によっては液晶分子として機能できなくなる可能性もある。なお、屈曲型鎖状分子の位置関係とは、例えば、上記した短軸方向における配列構造および長軸方向における積層構造などである。
【0027】
ケイ素含有末端基以外の部分(コア部)の構造は、自発分極して短軸方向に双極子を有することができるような屈曲型構造を有していれば、特に限定されない。このコア部の構造としては、公知の屈曲型鎖状分子における該当部分の構造を適用できる。中でも、屈曲型鎖状分子の中心(屈曲点)に位置する基は、例えば、パラ位(1,3−位)またはそれに相当する位置に2つの結合手を有する芳香族環などが好ましい。屈曲型構造を安定に維持できるからである。このような芳香族環の種類としては、例えば、ベンゼンまたはナフタレンなどが挙げられる。なお、パラ位に相当する位置とは、2つの結合手間の角度がパラ位に位置する2つの結合手間の角度(=約120°)とほぼ同程度になるような位置である。
【0028】
特に、液晶材料は、式(1)で表される構造を有していることが好ましい。W1は、屈曲型鎖状分子の中心(屈曲点)に位置すると共に屈曲角度を決定する基である。また、Z1およびZ2のうちの少なくとも一方は、ケイ素含有末端基である。
【0029】
Z1−Y1−W2−X1−W1−X2−W3−Y2−Z2 …(1)
(W1は式(A−1)〜式(A−14)で表される2価の基、W2およびW3は式(B−1)〜式(B−16)で表される2価の基、X1およびX2は式(C−1)〜式(C−6)で表される2価の基、Y1およびY2は炭素数=1〜30である2価の炭化水素基、またはエーテル結合(−O−)と炭素数=1〜30である炭化水素基とが連結された2価の基、Z1およびZ2は水素基または式(D−1)〜式(D−10)で表される1価の基である。ただし、X1およびX2はそれぞれあってもなくてもよいと共に、Z1およびZ2のうちの少なくとも一方は式(D−1)〜式(D−10)に示した基である。)
【0030】
【化1】

(R1〜R12は水素基(−H)、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO2 )、水酸基(−OH)またはアセチル基(−C(=O)CH3 )、nは1〜5の整数である。)
【0031】
【化2】

(R1〜R12は水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基または水酸基である。)
【0032】
【化3】

(R1〜R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基または水酸基である。)
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

(nは1〜30の整数である。ただし、Meはメチル基(−CH3 )である。)
【0035】
W1に関するR1〜R12は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。R1〜R12の種類は、個別に選択可能である。ハロゲン基の種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)またはヨウ素基(−I)が好ましい。屈曲型鎖状分子が化学的に安定になりやすいからである。アルキル基等の炭素数は特に限定されないが、中でも、できるだけ少ないことが好ましく、1または2、さらには1であることがより好ましい。炭素数が多すぎると、屈曲型鎖状分子が屈曲型構造を維持しにくくなると共にコア部が電場に応じて動きにくくなる可能性があるからである。ハロゲン化アルキル基等におけるハロゲンの種類は、ハロゲン基について説明した場合と同様である。
【0036】
なお、W1には、幾何異性体も含まれる。また、W1は2価の基であるため、2つの結合手を有しているが、隣の基(X1またはX2)には、どちらの結合手が結合されていてもよい。これらのことは、他の2価の基(W2,W3,X1,X2,Y1,Y2)についても同様である。
【0037】
W2およびW3は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。W2およびW3に関するR1〜R16の種類は、W1に関するR1〜R12について説明した場合と同様である。
【0038】
X1およびX2は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。ただし、X1およびX2の双方があってもよいし、いずれか一方だけがあってもよい。X1がない場合には、W1がX1を介さずにW2に結合されると共に、X2がない場合には、W1がX2を介さずにW3に結合される。
【0039】
Y1およびY2は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。2価の炭化水素基の種類は、特に限定されないが、例えば、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アルケニレン基、ハロゲン化アルケニレン基、アルキニレン基またはハロゲン化アルキニレン基などである。ハロゲン化アルキレン等におけるハロゲンの種類は、例えば、W1について説明した場合と同様である。エーテル結合と炭化水素基とが結合された2価の基は、例えば、−O−R−(Rは上記した2価の炭化水素基)で表される基であり、中でも、酸素原子においてW2およびW3に結合されることが好ましい。炭化水素基の炭素数が1〜30であるのは、液晶材料がスメクチックAPR 相を示すことができるからである。
【0040】
Z1およびZ2は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。ただし、Z1およびZ2の双方が水素基であることはない。すなわち、Z1およびZ2の双方が式(D−1)〜式(D−10)に示した基であり、あるいはいずれか一方が式(D−1)〜式(D−10)に示した基である。いずれか一方が式(D−1)〜式(D−10)に示した基である場合、他方は水素基になる。なお、Z1およびZ2は、式(D−1)〜式(D−10)に示した基のうちの一部分に該当する基でもよい。また、Z1およびZ2は、ケイ素を構成元素として含む1価の基であれば、式(D−1)〜式(D−10)に示した基以外の基でもよい。
【0041】
中でも、液晶材料は、式(2)で表される構造を有していることが好ましい。屈曲型構造が安定に維持されるため、安定に自発分極できるからである。
【0042】
【化6】

(R21〜R23は水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはアセチル基、Z3およびZ4は水素基または式(D−1)〜式(D−10)に示した1価の基、nは1〜30の整数である。ただし、Z3およびZ4のうちの少なくとも一方は式(D−1)〜式(D−10)に示した基である。)
【0043】
式(2)に示した液晶材料は、例えば、式(2−1)〜式(2−13)で表される構造を有する。安定に自発分極すると共にスメクチックAPR 相を示すことができるからである。この他、液晶材料は、例えば、式(2−14)または式(2−15)で表される構造を有していてもよい。このような構造を有していても、自発分極すると共にスメクチックAPR 相を示すことができるからである。
【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
なお、式(2−1)〜式(2−15)では、式(1)中における一方の末端基(Z2)だけがケイ素含有末端基である場合を示しているが、これに限られない。例えば、式(2−1)に示した液晶材料を例に挙げると、式(2−16)で表されるように、他方の末端基(Z1)だけがケイ素含有末端基でもよいし、式(2−17)で表されるように、双方の末端基(Z1,Z2)がケイ素含有末端基でもよい。このことは、式(2−2)〜式(2−15)に示した液相材料についても同様である。
【0048】
【化10】

【0049】
この液晶材料によれば、自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有すると共にスメクチックAPR 相を示す屈曲型鎖状分子は、少なくとも一方の末端にケイ素含有末端基を有している。このため、ケイ素含有末端基を有していない場合と比較して、上記したように、コア部が電場に応じて動きやすくなると共に、スメクチックAPR 相の層状態が安定化する。このケイ素含有末端基を有していない場合とは、例えば、屈曲型鎖状分子が式(3)で表される構造を有する場合などである。よって、スメクチックAPR 相を示す温度範囲を低温側に広げることができる。
【0050】
【化11】

【0051】
特に、ケイ素含有末端基において1または2以上のケイ素原子が水素原子に結合されておらずに炭素原子または酸素原子に結合されていれば、屈曲型鎖状分子が化学的に安定化するため、より高い効果を得ることができる。
【0052】
次に、本発明の液晶材料に関するいくつかの適用例について説明する。
【0053】
<2.液晶材料の適用例(液晶表示素子)>
本発明の液晶材料は、例えば、液晶表示素子に適用される。図1は、液晶表示素子の主要部の断面構成を表している。
【0054】
ここで説明する液晶表示素子は、例えば、液晶材料を用いて光の透過率を制御することにより画像が形成され、その画像が観察者により直接見られることになる直視型の表示素子である。このような液晶表示素子の具体例としては、直視型LCDまたは高温ポリシリコンTFT−LCDなどが挙げられる。
【0055】
この液晶表示素子は、例えば、TFTを用いたアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶表示素子であり、一対の基板であるTFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層30を備えている。
【0056】
TFTアレイ基板10は、支持基板11に画素電極12がマトリクス状に形成されたものである。支持基板11は、例えば、ガラスなどの透過性材料により形成されており、画素電極12は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)などの透過性導電性材料により形成されている。なお、画素電極12には、スイッチング用のTFTを含む画素選択用の駆動回路(図示せず)が接続されている。
【0057】
対向基板20では、支持基板21に対向電極22が全面形成されたものである。支持基板21は、例えば、ガラスなどの透過性材料により形成されており、対向電極22は、例えば、ITOなどの導電性材料により形成されている。
【0058】
TFTアレイ基板10および対向基板20は、液晶層30を挟んで画素電極12と対向電極22とが対向するように配置されていると共に、球状または柱状のスペーサ(図示せず)を介して離間されるようにシール材により貼り合わされている。なお、両基板の液晶層30に接する側には、配向膜(図示せず)が設けられている。
【0059】
液晶層30は、本発明の液晶材料を含んでおり、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に封入されている。
【0060】
この他、液晶表示素子は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)を備えていてもよい。なお、バックライトユニットは、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの光源を含んでいる。
【0061】
この液晶表示素子では、画素電極12と対向電極22との間に電界が印加されると、その電界強度に液晶材料(屈曲型鎖状分子)の挙動が変化する。これにより、バックライトユニットから発生した光の透過量(透過率)が制御されるため、階調画像が表示される。
【0062】
この際、例えば、1H(Hは水平走査期間)反転駆動方式あるいは1F(Fはフィールド)反転駆動方式などが用いられる。これらの交流駆動方式では、駆動電圧の高さ(振幅の大きさ)に応じて色レベル(階調)が変化する。この場合には、駆動電圧を大きくすれば、画像のコントラストが向上する。
【0063】
この液晶表示素子によれば、液晶層30が本発明の液晶材料を含んでいるので、その液晶材料がスメクチックAPR 相を示す温度範囲は低温側に広がる。よって、動作温度範囲を広げることができる。
【0064】
<3.液晶材料の他の適用例(液晶光空間変調素子)>
また、本発明の液晶材料は、例えば、液晶光空間変調素子に適用される。図2は、液晶光空間変調素子の主要部の断面構成を表している。
【0065】
ここで説明する液晶光空間変調素子は、光源から発生した光を平面的に分割し、その個々の光束の強度および位相などを変化させる素子である。このような液晶光空間変調素子の具体例としては、プロジェクションディスプレイに用いられるマイクロ液晶デバイス(LCoS:Liquid Crystal on Silicon )またはライトバルブ、あるいは光偏光スイッチなどが挙げられる。なお、ライトバルブは、例えば、上記した液晶表示素子とほぼ同様の構成を有している。この場合には、光源から発生した光が赤色、緑色および青色の光に分離され、各色の光が液晶表示素子と同様の構成を有する3つのライトバルブにより変調されたのちに合成されるため、投射面に像が拡大投影される。
【0066】
この液晶光空間変調素子は、例えば、光偏光スイッチであり、一対の基板である透明基板40,50の間に、本発明の液晶材料を含む液晶層70を備えている。透明基板40,50は、液晶層70を挟むように対向配置された電極61,62により離間されており、交流電源などの駆動装置(図示せず)から電極61,62の間に交流電界が印加されるようになっている。
【0067】
透明基板40,50は、例えば、ガラスなどの透過性材料により形成されていると共に、それぞれの主面同士が平行になるように対向配置されている。透明基板40,50の対向面(互いに対向する側の面)には、例えば、垂直配向剤が塗布されており、電極61,62の間に電界が印加されていない状態では、液晶分子の長軸が主面に対して垂直に配向するようになっている。
【0068】
この液晶光空間変調素子では、透明基板40に対して光Lが垂直に入射すると、その光Lは、電極61,62の間に印加された電界Eにより、その電界方向と直交する方向に偏光されると共に透明基板50から出射される。この場合には、E=0であると、光Lは偏光されない。これに対して、E>0であると、光Lは電界方向と直交する方向(+方向)に偏光されると共に、E<0であると、光LはE>0の場合とは逆方向(−方向)に偏光される。このときの偏光量(シフト量)は、電界強度に応じて変化する。
【0069】
この液晶光空間変調素子によれば、液晶層70が本発明の液晶材料を含んでいるので、液晶表示素子と同様の理由により、動作温度範囲を広げることができる。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0071】
(実験例1)
以下の手順により、式(2−1)に示した液晶材料を合成した。最初に、アルゴン(Ar)置換したフラスコ中に、4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアルデヒドとトリフェニルホスフィンと1−テトラデカノールとの混合溶液(溶媒はトルエン)を入れた。続いて、アゾジカルボン酸ジエチル溶液(溶媒はトルエン)を滴下して、室温で終夜攪拌した。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィにより式(4−1)で表される中間生成物1を得た。
【0072】
続いて、中間生成物1と(4−メトキシカルボニルベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミドとの混合溶液(溶媒はジクロロメタンおよびテトラヒドロフラン)に、触媒として18−クラウン−6および炭酸カリウムを加えた。続いて、アルゴン雰囲気中で混合溶液を50℃×24時間攪拌した。続いて、水で洗浄すると共に溶媒を揮発させたのち、エタノールを用いた再結晶により式(4−2)で表される中間生成物2を得た。
【0073】
続いて、中間生成物2と水酸化ナトリウムとの混合溶液(溶媒はエタノール)を70℃×3時間攪拌したのち、塩酸で酸性にして、式(4−3)で表される中間生成物3を得た。
【0074】
続いて、1−(3−(ジメチルアミノ)−プロピル)−3−エチルカルボジイミドメチオジンに、中間生成物3と2−メチルレソルシノールと4−ジメチルアミノピリジンとの混合溶液(溶媒はジクロロメタン)を加えたのち、室温で終夜攪拌した。続いて、攪拌後の溶液を水で洗浄したのち、分液すると共に硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィにより式(4−4)で表される中間生成物4を得た。
【0075】
一方、フラスコ中に、4−ヒドロキシ−3−クロロベンズアルデヒドとメトキシメチルクロライドとの混合溶液(溶媒はジメチルホルムアミド)と、触媒として炭酸カリウムおよびヨウ化カリウムとを入れたのち、室温で終夜攪拌した。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィにより式(4−5)で表される中間生成物5を得た。
【0076】
続いて、中間生成物5と(4−メトキシカルボニルベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミドとの混合溶液(溶媒はテトラヒドロフラン)に、触媒として18−クラウン−6および炭酸カリウムを加えた。続いて、アルゴン雰囲気中で混合溶液を50℃×24時間攪拌した。続いて、水で洗浄すると共に溶媒を揮発させたのち、エタノールを用いた再結晶により式(4−6)で表される中間生成物6を得た。
【0077】
続いて、中間生成物6と水酸化ナトリウムとの混合溶液(溶媒はエタノール)を70℃×3時間攪拌したのち、塩酸で酸性にして、式(4−7)で表される中間生成物7を得た。
【0078】
続いて、1−(3−(ジメチルアミノ)−プロピル)−3−エチルカルボジイミドメチオジンに中間生成物4,7と4−ジメチルアミノピリジンとの混合溶液(溶媒はジクロロメタン)を加えたのち、室温で終夜攪拌した。続いて、攪拌後の溶液を水で洗浄したのち、分液すると共に硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィにより式(4−8)で表される中間生成物8を得た。
【0079】
続いて、ギ酸に中間生成物8を溶解させると共に還流した。続いて、室温に戻したのち、析出物を水で洗浄して、式(4−9)で表される中間生成物9を得た。
【0080】
続いて、アルゴン置換したフラスコ中に、中間生成物9とテトラデカメチレングリコールとトリフェニルホスフィンとの混合溶液(溶媒はトルエン)を入れた。続いて、アゾジカルボン酸ジエチル溶液(溶媒はトルエン)を滴下して、室温で終夜攪拌した。続いて、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィにより式(4−10)で表される中間生成物10を得た。
【0081】
続いて、中間生成物10とトリス(トリメチルシロキシ)クロロシランとの混合溶液(溶媒はジクロロメタン)に、触媒としてトリエチルアミンおよび4−ジメチルアミノピリジンを加えたのち、室温で24時間攪拌した。続いて、水で洗浄したのち、分液すると共に硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。最後に、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィにより式(2−1)に示した液晶材料を得た。
【0082】
(実験例2〜4)
1−テトラデカノールの代わりに1−オクタノール、テトラデカメチレングリコールの代わりにドデカメチレングリコールを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順により式(2−2)に示した液晶材料を得た。また、1−テトラデカノールの代わりに1−オクタノール、テトラメチレングリコールの代わりにHO(CH2 4 Si(CH2 2 OSi(CH2 2 (CH2 4 OHを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順により式(2−3)に示した液晶材料を得た。さらに、1−テトラデカノールの代わりに1−オクタノール、テトラメチレングリコールの代わりにHO(CH2 4 Si(CH2 2 OSi(CH2 2 (CH2 4 OH、トリス(トリメチルシロキシ)クロロシランの代わりにトリメチルクロロシランを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順により式(2−4)に示した液晶材料を得た。
【0083】
(実験例5)
4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアルデヒドの代わりに4−ヒドロキシ−3−クロロベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−クロロベンズアルデヒドの代わりに4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアルデヒド、1−テトラデカノールの代わりに1−ドデカノール、テトラメチレングリコールの代わりに10−ウンデカン−1−オールを用いて、式(4−11)で表される中間生成物11を得た。さらに、中間生成物11と1,1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンとの混合溶液(溶媒はテトラヒドロフラン)に、触媒としてジクロロ(ジシクロペンタジエル)白金(II)を加えた。続いて、アルゴン雰囲気中で混合溶液を60℃×24時間攪拌した。最後に、溶媒を揮発させたのち、カラムクロマトグラフィにより式(2−5)に示した液晶材料を得た。
【0084】
【化12】

【0085】
【化13】

【0086】
(実験例6)
テトラメチレングリコールの代わりに1−ドデカノールを用いたことを除き、実験例1と同様の合成手順により式(3)に示した液晶材料を得た。この式(3)に示した液晶材料は、「背景技術」で説明した非特許文献1に開示されている屈曲型鎖状分子であり、スメクチックAPR 相を示すことが既に確認されている。
【0087】
まず、実験例1〜6の液晶材料について、混和性試験および分極反転電流測定により分子構造および相の種類を調べた。
【0088】
混和性試験では、最初に、株式会社イーエッチシー製のセル(セルギャップ=5μm)を準備した。このセルは、一対の基板が紫外線硬化樹脂により貼り合わされたものであり、双方の基板の一面(互いに対向する面)には、電極(ITO)および配向剤(ポリイミド)が設けられている。続いて、一対の基板間に設けられた空間に、互いに異なる方向から式(3)に示した液晶材料(以下、「標準物質」ともいう。)および式(2−1)〜式(2−5)に示した液晶材料(以下、単に「液晶材料」ともいう。)を注入した。最後に、ホットステージで標準物質および液晶材料を加熱したのち、偏光顕微鏡で標準物質と液晶材料との混和状況を観察した。
【0089】
分極反転電流測定では、最初に、混和性試験と同様に、セルに標準物質および液晶材料を注入したのち、ホットステージで加熱した。続いて、電極が設けられた側における基板の表面に、電流測定用の補助電極を設置した。最後に、波形発生装置で交流電場を印加して、セルに流れる電流を測定した。この場合には、交流電場として、50Vおよび15Hzの三角波電圧を用いた。
【0090】
混和性試験の結果、液晶材料は標準物質と混和(相溶)した。このため、式(2−1)〜式(2−5)に示した液晶材料はスメクチックAPR 相を示すことが確認された。また、分極反転電流測定の結果、液晶材料では、標準物質と同様に、半周期に1つのピークが観測された。このため、式(2−1)〜式(2−5)に示した液晶材料は分極することが確認された。
【0091】
次に、実験例1〜6の液晶材料について、スメクチックAPR 相を示す温度範囲(℃)およびその温度幅(℃)を調べたところ、表1に示した結果が得られた。この場合には、ホットステージで液晶材料を加熱しながら、その相状態(液晶相の種類)を偏光顕微鏡で観察した。また、示差走査熱量測定法により液晶材料の温度を測定して相転移の有無を確認することにより、スメクチックAPR 相を同定した。
【0092】
【表1】

【0093】
実験例1〜5では、実験例6と比較して、温度範囲の上限温度がほぼ同等に維持されたままで下限温度が低温側にシフトしたため、それに応じて温度幅が広くなった。この結果は、末端基の種類(ケイ素含有末端基または水素基)だけが異なる液晶材料を用いている実験例1,6の比較から明らかなように、屈曲型鎖状分子がケイ素含有末端基を有していると、スメクチックAPR 相を示す温度範囲が低温側に広がることを証明している。
【0094】
なお、ここでは一方の末端基だけがケイ素含有末端基である場合について説明しており、双方の末端基がケイ素含有末端基である場合については具体的に実験結果を開示していない。しかしながら、一方の末端基がケイ素含有末端基であると温度範囲が低温側に広がることは表1の結果から明らかであり、双方の末端基がケイ素含有末端基であると温度範囲が低温側に広がらなくなる特別な理由も見当たらない。また、双方の末端基がケイ素含有末端基であることは、上記したコア部の動きやすさおよびスメクチックAPR 相の層状態の安定化に対してよりよい影響を及ぼすことになるため、やはり問題はないはずである。よって、双方の末端基がケイ素含有末端基である場合においても温度範囲が低温側に広くなるはずである。
【0095】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はそれらで説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の液晶材料は、液晶表示素子および液晶光空間変調素子に限らず、他の光学用途に適用されてもよい。このような他の光学用途としては、例えば、シャッタ眼鏡などの液晶シャッタが挙げられる。もちろん、本発明の液晶材料は、光学用途以外の用途に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10…TFTアレイ基板、11,21…支持基板、12…画素電極、20…対向基板、22…対向電極、30,70…液晶層、40,50…透明基板、61,62…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有し、(2)スメクチックAPR (SmecticA Polar Random )相を示し、(3)少なくとも一方の末端にケイ素(Si)を構成元素として含む1価の末端基を有する、屈曲型鎖状分子である、液晶材料。
【請求項2】
前記末端基は1または2以上のケイ素と共に炭素(C)および水素(H)を構成元素として含み、全てのケイ素原子は炭素原子に結合されている、請求項1記載の液晶材料。
【請求項3】
前記末端基は1または2以上のケイ素と共に炭素、水素および酸素(O)を構成元素として含み、全てのケイ素原子は炭素原子または酸素原子に結合されている、請求項1記載の液晶材料。
【請求項4】
前記末端基はシラン構造(−SiR2 −:Rは1価の炭化水素基である。)またはシロキサン構造(−SiR2 −O−SiR2 −:Rは1価の炭化水素基である。)を有する、請求項1記載の液晶材料。
【請求項5】
式(1)で表される構造を有する、請求項1記載の液晶材料。
Z1−Y1−W2−X1−W1−X2−W3−Y2−Z2 …(1)
(W1は式(A−1)〜式(A−14)で表される2価の基、W2およびW3は式(B−1)〜式(B−16)で表される2価の基、X1およびX2は式(C−1)〜式(C−6)で表される2価の基、Y1およびY2は炭素数=1〜30である2価の炭化水素基、またはエーテル結合(−O−)と炭素数=1〜30である炭化水素基とが連結された2価の基、Z1およびZ2は水素基または式(D−1)〜式(D−10)で表される1価の基である。ただし、X1およびX2はそれぞれあってもなくてもよいと共に、Z1およびZ2のうちの少なくとも一方は式(D−1)〜式(D−10)に示した基である。)
【化1】

(R1〜R12は水素基(−H)、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO2 )、水酸基(−OH)またはアセチル基(−C(=O)CH3 )、nは1〜5の整数である。)
【化2】

(R1〜R12は水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基または水酸基である。)
【化3】

(R1〜R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基または水酸基である。)
【化4】

【化5】

(nは1〜30の整数である。ただし、Meはメチル基(−CH3 )である。)
【請求項6】
式(2)で表される構造を有する、請求項5記載の液晶材料。
【化6】

(R21〜R23は水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはアセチル基、Z3およびZ4は水素基または式(D−1)〜式(D−10)に示した1価の基、nは1〜30の整数である。ただし、Z3およびZ4のうちの少なくとも一方は式(D−1)〜式(D−10)に示した基である。)
【請求項7】
式(2−1)〜式(2−13)で表される構造を有する、請求項6記載の液晶材料。
【化7】

【化8】

【化9】

【請求項8】
一対の基板の間に液晶層を備え、前記液晶層は屈曲型鎖状分子である液晶材料を含み、前記液晶材料は(1)自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有し、(2)スメクチックAPR 相を示し、(3)少なくとも一方の末端にケイ素を構成元素として含む1価の末端基を有する、液晶表示素子。
【請求項9】
一対の基板の間に液晶層を備え、前記液晶層は屈曲型鎖状分子である液晶材料を含み、前記液晶材料は(1)自発分極して屈曲型構造の短軸方向に双極子を有し、(2)スメクチックAPR 相を示し、(3)少なくとも一方の末端にケイ素を構成元素として含む1価の末端基を有する、液晶光空間変調素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−122077(P2011−122077A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281532(P2009−281532)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代大型低消費電力液晶ディスプレイ基盤技術開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】