説明

液晶組成物およびこれを含む液晶表示装置

【課題】誘電率の異方性が大きく回転粘度が低い液晶組成物、および応答時間が改善され低電圧駆動が可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】例えば式(1)で例示される2種類のビシクロヘキサン骨格を含む化合物及び、フッ素置換のターフェニル誘導体、フッ素置換のフェニル環とシクロヘキサン環からなる4環式の化合物を含み、さらにはフッ素置換のフェニル環からなる3環式や4環式化合物、等から構成される液晶組成物およびこれを含む液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物およびこれを含む液晶表示装置に関し、さらに詳細にはTNモードの液晶組成物およびこれを含む液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、電界を形成する第一基板と第二基板とが設けられ、液晶層は両基板の間に位置する。液晶層は、液晶組成物と選択的に追加される添加剤からなる。
【0003】
最近、テレビのような大型ディスプレイ装置に液晶表示装置が適用されている。これは、液晶表示装置の視野角度、色再現性、および輝度などの特性が非常に向上したことを表しているが、液晶表示装置の応答時間は、まだ改善が要求されている。
【0004】
また、液晶表示装置は、ノートパソコンのような携帯用電子機器に使用されているため、低電圧駆動の特性も要求されている。
【0005】
液晶表示装置の応答時間は、液晶組成物の回転粘度と密接な関連性がある。すなわち、液晶組成物の回転粘度が低いと応答時間が速くなる。一方、液晶表示装置に要求される駆動電圧は、液晶組成物の誘電率異方性に密接な関連性がある。すなわち、液晶組成物の誘電率異方性が大きいと、低電圧駆動が可能となる。
【0006】
したがって、液晶表示装置の応答時間の改善と低電圧駆動の実現のためには、回転粘度が低く誘電率の異方性が大きい液晶組成物を用いることが必要となってくる。
【0007】
しかし、液晶組成物を構成する液晶分子は、一般的に誘電率の異方性が大きいと回転粘度も大きいため、液晶表示装置の応答時間の改善と低電圧駆動とを同時に実現することは難しい。
【特許文献1】特開2007−126449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、誘電率の異方性が大きく、回転粘度が低い液晶組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、応答時間が改善され低電圧駆動が可能な液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜15質量%であり、下記化学式(2)ので表される化合物の含有量(B)が30〜50質量%でありと、下記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が5〜20質量%であり、下記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜12質量%であり、下記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜20質量%であり、下記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が4〜20質量%であることを特徴とする液晶組成物である。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
前記化学式(1)、および(3)〜(6)中、Xは、それぞれ独立して、炭素数3〜5の脂肪族基であり、前記化学式(3)中、Yは、炭素数1または2の脂肪族基である。
【0018】
また、前記液晶組成物は、前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物を、前記樹脂組成物100質量%に対して10〜20質量%さらに含むことが好ましい。
【0019】
【化7】

【0020】
前記化学式(7)中、Xは、炭素数3〜5の脂肪族基である。
【0021】
前記液晶組成物の相転移温度は70〜80℃であることが好ましく、前記液晶組成物の屈折率の異方性は0.11〜0.12であることが好ましく、前記液晶組成物の誘電率の異方性は7〜9であることが好ましく、回転粘度は55〜70mPa・sであることが好ましい。
【0022】
また、前記液晶組成物は、前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜5質量%であり、前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が35〜45質量%であり、前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が14〜18質量%であり、前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜8質量%であり、前記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜15質量%であり、前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が8〜10質量%であり、前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(G)が10〜18質量%であることが好ましい。
【0023】
前記液晶組成物の相転移温度は、74.0〜76.0℃であることが好ましく、前記液晶組成物の屈折率の異方性は0.11〜0.12であることが好ましく、前記液晶組成物の誘電率の異方性は8.0〜8.5であることが好ましく、前記液晶組成物の回転粘度は60〜65mPa・sであることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、薄膜トランジスタと前記薄膜トランジスタに電気的に接続された画素電極とを含む第一基板と、前記第一基板に対向し、共通電極を含む第二基板と、前記第一基板と前記第二基板との間に位置する液晶層とを含み、前記液晶層に含まれる液晶組成物は、下記化学式1で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜15質量%であり、下記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が30〜50質量%であり、下記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量が5〜20質量%であり、下記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜12質量%であり、下記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜20質量%であり、下記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が4〜20質量%であることを特徴とする液晶表示装置である。
【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

【0030】
【化13】

【0031】
前記化学式(1)、および(3)〜(6)中、Xは、それぞれ独立して、炭素数3〜5の脂肪族基であり、前記化学式(3)中、Yは、炭素数1または2の脂肪族基である。
【0032】
前記液晶組成物は、下記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物を、前記樹脂組成物100質量%に対して10〜20質量%さらに含むことが好ましい。
【0033】
【化14】

【0034】
前記化学式(7)中、Xは、炭素数3〜5の脂肪族基である。
【0035】
前記液晶表示装置に含まれる前記液晶組成物の相転移温度は70〜80℃であることが好ましく、前記液晶表示装置に含まれる前記液晶組成物の屈折率の異方性は0.11〜0.12であることが好ましく、前記液晶表示装置に含まれる前記液晶組成物の誘電率の異方性は7〜9であることが好ましく、前記液晶表示装置に含まれる前記液晶組成物の回転粘度は55〜70mPa・sであることが好ましい。
【0036】
前記液晶表示装置のセルギャップは2.5〜3.7μmであることが好ましい。
【0037】
前記液晶表示装置の駆動電圧は、8.0〜13.0Vであることが好ましい。
【0038】
前記液晶表示装置に含まれる前記液晶組成物は、前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜5質量%であり、前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が35〜45質量%と、前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が14〜18質量%であり、前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜8質量%であり、前記化学式(5)で表される化合物の含有量(E)が10〜15質量%であり、前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が8〜10質量%であり、前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(G)が10〜18質量%であることがより好ましい。
【0039】
前記液晶表示装置に含まれる液晶組成物の相転移温度は74.0〜76.0℃であることが好ましく、前記液晶表示装置に含まれる液晶組成物の屈折率の異方性は0.11〜0.12であることが好ましく、前記液晶表示装置に含まれる液晶組成物の誘電率の異方性は8.0〜8.5であることが好ましく、前記液晶表示装置に含まれる液晶組成物の回転粘度は60〜65mPa・sであることが好ましい。
【0040】
前記液晶表示装置のセルギャップは、3.5〜3.7μmであることが好ましい。
【0041】
前記液晶表示装置の駆動電圧は、8.3〜8.8Vであることが好ましい。
【0042】
前記液晶表示装置の最低階調電圧は、8.0〜8.5Vであることが好ましく、前記液晶表示装置の最高階調電圧は0.5〜0.7Vであることが好ましい。
【0043】
前記液晶表示装置に含まれる前記液晶層の応答時間は、8〜9msであることが好ましい。
【0044】
前記液晶表示装置に含まれる前記液晶層の遅延値は、390〜440nmであることが好ましい。
【0045】
前記液晶表示装置に含まれる前記液晶表示装置のコントラスト比は、1000:1〜1200:1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、誘電率の異方性が大きく回転粘度が低い液晶組成物が提供されうる。また、本発明によれば、応答時間が改善され低電圧駆動が可能である液晶表示装置が提供されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明の液晶組成物は、前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜15質量%であり、前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が30〜50質量%であり、前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が5〜20質量%であり、前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜12質量%であり、前記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜20質量%であり、前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が4〜20質量%であることを特徴とする。
【0048】
また、本発明の液晶組成物は、前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物を、前記樹脂組成物100質量%に対して10〜20質量%さらに含むことがより好ましい。
【0049】
前記化学式(1)、および(3)〜(7)中のXは炭素数3〜5の脂肪族基である。前記脂肪族基の具体的な例としては、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、または2−メチルブチル基などが挙げられる。
【0050】
前記化学式(1)で表される化合物の具体例としては、前記化学式(1)中のXがn−プロピル基である化合物などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用できる。
【0051】
前記化学式(3)で表される化合物の具体例としては、前記化学式(3)中のXがn−プロピル基であり、かつYがエチル基である化合物などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用できる。
【0052】
前記化学式(4)で表される化合物の具体例としては、前記化学式(4)中のXがn−ブチル基である化合物などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用できる。
【0053】
前記化学式(5)で表される化合物の具体例としては、前記化学式(5)中のXがn−ブチル基である化合物などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用できる。
【0054】
前記化学式(6)で表される化合物の具体例としては、前記化学式(6)中のXがn−ブチル基である化合物などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用できる。
【0055】
前記化学式(7)で表される化合物の具体例としては、前記化学式(1)中のXがn−ブチル基である化合物などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用できる。
【0056】
前記化学式(1)〜(7)で表される化合物は、合成により入手しても良いし、市販品を入手しても良い。
【0057】
本発明の液晶組成物は、下記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜15質量%であり、下記化学式(2)ので表される化合物の含有量(B)が30〜50質量%であり、下記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が5〜20質量%であり、下記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜12質量%であり、下記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜20質量%であり、下記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が4〜20質量%である。これらの数値範囲を外れると、所望の液晶の物性を得ることができない。
【0058】
また、前記液晶組成物は、前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物を、前記樹脂組成物100質量%に対して10〜20質量%さらに含むことが好ましい。
【0059】
ただし、前記化学式(6)で表される化合物の含有量(F)が、前記液晶組成物の総質量100質量%として15質量%を超えると低温安定性が低下する虞がある。したがって、前記化学式(6)で表される化合物の含有量(F)は、前記液晶組成物の総質量100質量%としてより好ましくは4〜15質量%である。
【0060】
前記化学式(1)〜(3)で表される化合物は非極性物質であり、前記化学式(4)〜(7)で表される化合物は極性物質である。
【0061】
ここで、前記化学式(2)で表される化合物は、回転粘度が非常に低い反面、誘電率の異方性は低い。一方、前記化学式(6)で表される化合物は、誘電率の異方性が約20〜40と非常に高い。したがって、前記化学式(6)で表される化合物を使用すれば、前記化学式(2)で表される化合物の量を増加させても、本発明の液晶組成物の誘電率の異方性を高く維持できる。また、前記化学式(2)で表される化合物の量が増加すると、本発明の液晶組成物は低い回転粘度を有しうる。
【0062】
前記化学式(2)で表される化合物と前記化学式(6)で表される化合物との作用で、本発明の液晶組成物は高い誘電率の異方性と低い回転粘度とを持ち、これにより低電圧駆動と速い応答時間とを同時に実現することができる。
【0063】
また、前記化学式(6)で表される化合物の相転移温度は、約70〜160℃ほどで非常に高く、本発明の液晶組成物も高い相転移温度を有しうる。
【0064】
さらに好ましくは、本発明の液晶組成物は、前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜5質量%であり、前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が35〜45質量%であり、前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が14〜18質量%であり、前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜8質量%であり、前記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜15質量%であり、前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が8〜10質量%であり、前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(G)が10〜18質量%である。
【0065】
本発明の液晶組成物は、例えば、上記の各化合物において示した割合で混合し、その後、例えば50℃で2時間攪拌し、ろ過をすることによって得ることができる。
【0066】
次に、添付した図面を参照して、本発明の液晶表示装置について詳しく説明する。下記において、膜(層)が他の膜(層)の「上部」に形成されて(位置して)いるとは、二つの膜(層)が接する場合だけではなく、二つの膜(層)の間に他の膜(層)が存在する場合も含む。
【0067】
図1および図2を参照して、本発明による液晶表示装置を説明する。
【0068】
図1は、本発明の一実施形態による液晶表示装置に含まれる第一基板の概略図である。図2は、図1のII−II線による断面概略図である。
【0069】
液晶表示装置1は、薄膜トランジスタTが形成されている第一基板100と、前記第一基板100と対向する第二基板200と、前記第一基板100と前記第二基板200とのの間に位置する液晶層300とを含む。
【0070】
まず、第一基板100について説明する。
【0071】
第一絶縁基板111の上には、ゲート配線(121および122の総称)が形成されている。ゲート配線(121および122の総称)は、金属の単一層または多重層である。ゲート配線(121および122の総称)は、表示領域の内に位置して横方向に延長されたゲート線121と、前記ゲート線121に接続されたゲート電極122とを含む。
【0072】
第一絶縁基板111の上には、シリコン窒化物などから形成されるゲート絶縁膜131がゲート配線(121および122の総称)を覆っている。
【0073】
ゲート絶縁膜131の上部には、非晶質シリコンなどの半導体から構成される半導体層132が形成され、半導体層132の上部には、シリサイドまたはn型不純物が高濃度にドーピングされているn+水素化非晶質シリコンなどの物質で構成される接触抵抗層133が形成されている。ソース電極142とドレイン電極143との間のチャンネル部では、抵抗接触層133が除去されている。
【0074】
接触抵抗層133とゲート絶縁膜131との上部には、データ配線(141、142および143の総称)が形成されている。データ配線(141、142および143の総称)も金属の単一層または多重層であり得る。
【0075】
データ配線(141、142および143の総称)は厚み方向に形成される。前記データ配線は、前記ゲート線121と交差して画素を形成するデータ線141と、前記データ線141の分岐状の接触抵抗層133の上部まで延長されているソース電極142と、ソース電極142から分離され、ソース電極142の反対側の接触抵抗層133の上部に形成されているドレイン電極143と、を含む。
【0076】
前記データ配線(141、142および143の総称)と、露出されている半導体層132との上部には、保護膜151が形成されている。保護膜151には、ドレイン電極143を露出する接触孔152が形成されている。
【0077】
保護膜151の上部には、画素電極161が形成されている。画素電極161は、一般的に、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)などの透明の導電性物質から形成される。
【0078】
本発明において、第一基板100の形態は上記の形態に制限されない。たとえば、第一基板100は、半導体層132としてポリシリコンを使用する、またはトップゲート形式の薄膜トランジスタを使用するなど、様々な変形が可能である。
【0079】
続いて、第二基板200について図2を参照して説明する。
【0080】
第二絶縁基板211の上部(図2では第二絶縁基板211の下部に)には、ブラックマトリックス221が形成されている。ブラックマトリックス221は、一般的に赤色、緑色、および青色フィルターの間を区画し、第一基板100に位置する薄膜トランジスタへの直接的な光照射を遮断する役割を果たす。ブラックマトリックス221は、通常的に黒色の顔料が添加された感光性の有機物質から形成される。前記黒色の顔料の例としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタンなどが挙げられる。
【0081】
カラーフィルター231は、ブラックマトリックス221を境界にして、赤色、緑色、および青色フィルターが繰り返し形成される。カラーフィルター231は、バックライトユニット(図示せず)から照射され液晶層300を通過した光に色を与える役割を果たす。カラーフィルター231は、一般的に、感光性の有機物質から形成される。
【0082】
カラーフィルター231の上部と、カラーフィルター231が覆っていないブラックマトリックス221の上部とには、オーバーコート層241が形成されている。オーバーコート層241は、カラーフィルター231を平坦化しながらカラーフィルター231を保護する役割を果たす。オーバーコート層241は、例えば、感光性のアクリル系樹脂から形成される。
【0083】
オーバーコート層241の上部には、共通電極251が形成されている。共通電極251は、ITO、IZOなどの透明の導電物質から形成される。共通電極251は、薄膜トランジスタ基板の画素電極161とともに液晶層300に電圧を直接印可する。
【0084】
第一基板100と第二基板200との間には、液晶層300が配置される。液晶層300は、TNモードであり、液晶分子は、第一基板100と第二基板200とに形成された配向膜(図示せず)により90度ねじられている。第一基板100と第二基板200との間に垂直電界が形成されると、液晶分子は長軸が垂直方向になるように整列される。
【0085】
本実施形態において液晶表示装置1は、電圧が与えられていない状態では光を通過させてホワイトを表示し、第一基板100と第二基板200との間に垂直電界が形成されると光を遮断してブラックを表示するノーマリーホワイトモードである。
【0086】
本発明の液晶表示装置に含まれる液晶層300は、液晶組成物を含み、必要に応じて従来公知の添加剤が含まれうる。添加剤の例としては、例えば、染料、UV安定剤、または抗酸化剤などが挙げられる。
【0087】
前記液晶組成物は、前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜15質量%であり、前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が30〜50質量%であり、前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が5〜20質量%であり、前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜12質量%であり、前記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜20質量%であり、前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が4〜20質量%である。
【0088】
上述したように、本発明の液晶組成物の相転移温度は70〜80℃であることが好ましく、本発明の液晶組成物の屈折率の異方性は0.11〜0.12であることが好ましく、本発明の液晶組成物の誘電率の異方性は7〜9であることが好ましく、本発明の液晶組成物の回転粘度は55〜70mPa・sであることが好ましい。本発明の液晶表示装置1のセルギャップ(図2のd)は2.5〜3.7μmであることが好ましい。
【0089】
本発明の液晶組成物の誘電率の異方性が大きいため、本発明の液晶表示装置1の駆動電圧は低い。前記駆動電圧は好ましくは8.0〜13.0V、より好ましくは8.0〜10.0Vである。
【0090】
以上のような本発明の液晶組成物の組成、本発明の液晶表示装置のセルギャップ、および本発明の液晶表示装置の駆動電圧において、本発明の液晶組成物は好ましくは7.0〜10.0msという比較的速い応答速度を有するようになる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記の実施例は、本発明をより詳細に説明する目的でのみ示すものであり、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0092】
様々な組成の液晶組成物に対して物性と応答時間とを測定した。
【0093】
使用した液晶組成物は、下記実施例1〜3の3つである。実施例1〜3の組成は、下記表1の通りである。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例1〜3に示す液晶組成物は、各成分を上記表1の割合で混合した後、50℃で2時間攪拌し、その後ろ過することによって得た。
【0096】
各実施例の液晶組成物の物性は、下記表2の通りであった。なお、相転移温度は、示差走査熱量計(型番:DSC2010)を用いて測定した。また、応答時間は、RD−80Sを用いて測定した。
【0097】
【表2】

【0098】
表2中の応答時間は、駆動電圧が8V、セルギャップが3.6μmの条件で測定した。
【0099】
液晶組成物の応答時間は、立ち上がり時間(rising time:Ton)と立ち下がり時間(falling time:Toff)とを合わせて定める。液晶組成物の応答時間が長いと、動画像のぼやけが発生してディスプレイの品質が低下する。
【0100】
一方、最近、要求が高まっている応答時間9ms以下および駆動電圧9V以下いう特性を満足させるための具体的な液晶組成物、セルギャップ、および駆動条件の探索を行った。
【0101】
まず、本発明による液晶組成物が様々な回転粘度を有するようにして、セルギャップおよび駆動電圧に関する実験を実施した。
【0102】
(セルギャップの違いに対する応答時間の違いの測定)
図3は駆動電圧が8.5Vである場合の、セルギャップの違いに対する応答時間の違いを測定した結果を表すグラフである。
【0103】
セルギャップが3.5μmの時に一番短い応答時間を示し、セルギャップが3.75μmの時に9ms以下の応答時間を達成することが難しいことが確認できた。セルギャップが3.5μmより小さくなると生産収率が低下できるので、セルギャップは3.5μm以上であることが好ましい。
【0104】
(駆動電圧の違いに対する応答時間の違いの測定)
図4はセルギャップが3.5μmである場合の、駆動電圧の違いに対する応答時間の違いを測定した結果である。
【0105】
駆動電圧が7.8Vで低い場合9ms以下の応答時間が達成することが難しいことが確認できた。
【0106】
次に、実施例2の液晶組成物に対して、Vw(最高階調電圧)およびVb(最低階調電圧)の違いに対する応答時間の違いを測定する実験を実施した。
【0107】
(最高階調電圧の違いに対する応答時間の違いの測定)
図5はセルギャップが3.5μmである場合の、最高階調電圧の違いに対する応答時間の違いを測定した結果である。最高階調電圧が0.6Vである場合、速い応答時間が得られることが確認できる。
【0108】
(最低階調電圧の違いに対する応答時間の違いの測定)
セルギャップが3.5μmである場合の、最低階調電圧の違いに対する応答時間の違いを測定した。最低階調電圧が7.8Vであれば応答時間は8.72msで比較的長く、最低階調電圧が8.0Vであれば応答時間は8.44msであることが確認できた。
【0109】
以上の実験結果から、応答時間9ms以下と駆動電圧9V以下とを同時に安定的に満足させる液晶組成物の組成、セルギャップなどの特に好ましい条件は、下記表3に記載の条件であることがわかった。
【0110】
【表3】

【0111】
以上の条件で測定した結果、応答時間は8.39msとなり、コントラスト比は約1100:1となった。また、高温信頼性テスト、低温信頼性テスト、および残像テストでも要求基準を満たすことが確認された。
【0112】
以上、説明した最適条件は、応答時間8〜9msを満足するかぎり、実際の適用で多少の変形が可能である。具体的な変形範囲は次の通りである。
【0113】
本発明による液晶組成物は、前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜5%であり、前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)35〜45質量%であり、前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が14〜18質量%であり、前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜8質量%でありと、前記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜15質量%であり、前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が8〜10質量%であり、前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(G)が10〜18質量%であることが好ましい。この際、応答時間9ms以下と駆動電圧9V以下とを同時に安定的に満足させるセルギャップなどの特に好ましい条件は、下記表4に記載の条件であることがわかった。
【0114】
【表4】

【0115】
また、上述のようなより好ましい組成を有する本発明の液晶組成物の相転移温度は74.0〜76.0℃であることが好ましく、上述のようなより好ましい組成を有する本発明の液晶組成物の屈折率の異方性は0.11〜0.12であることが好ましく、上述のようなより好ましい組成を有する本発明の液晶組成物の誘電率異方性は8〜8.5であることが好ましく、上述のようなより好ましい組成を有する本発明の液晶組成物の回転粘度は60〜65mPa・sであることが好ましい。
【0116】
以上、本発明の好ましい実施形態を、図を用いて詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の思想から逸脱せずに、本実施形態の変形が可能であることは明らかである。本発明の範囲は、特許請求の範囲とその均等物とによって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の一実施形態による液晶表示装置に含まれる第一基板の概略図である。
【図2】図1のII−II線による断面概略図である。
【図3】本発明による液晶組成物において、セルギャップの違いに対する応答時間の違いを測定した結果を示すグラフである。
【図4】本発明による液晶組成物において、駆動電圧の違いに対する応答時間の違いを測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明による液晶組成物において、最高階調電圧の違いに対する応答時間の違いを測定した結果を表すグラフである。
【符号の説明】
【0118】
1 液晶表示装置、
100 第一基板、
111 第一絶縁基板、
121 ゲート線、
122 ゲート電極、
131 ゲート絶縁膜、
132 半導体層、
133 接触抵抗層、
141 データ線、
142 ソース電極、
143 ドレイン電極、
151 保護膜、
152 接触孔、
161 画素電極、
200 第二基板、
211 第二絶縁基板、
221 ブラックマトリックス、
231 カラーフィルター、
241 オーバーコート層、
251 共通電極、
300 液晶層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜15質量%であり、
下記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が30〜50質量%であり、
下記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が5〜20質量%であり、
下記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜12質量%であり、
下記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜20質量%であり、
下記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が4〜20質量%であることを特徴とする液晶組成物;
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

前記化学式(1)、および(3)〜(6)中、Xは、それぞれ独立して、炭素数3〜5の脂肪族基であり、
前記化学式(3)中、Yは、炭素数1または2の脂肪族基である。
【請求項2】
下記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物を、前記樹脂組成物100質量%に対して10〜20質量%さらに含む、請求項1に記載の液晶組成物;
【化7】

前記化学式(7)中、Xは、炭素数3〜5の脂肪族基である。
【請求項3】
前記液晶組成物の相転移温度は70〜80℃であり、
前記液晶組成物の屈折率の異方性は0.11〜0.12であり、
前記液晶組成物の誘電率の異方性は7〜9であり、
前記液晶組成物の回転粘度は55〜70mPa・sであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜5質量%であり、
前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が35〜45質量%であり、
前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が14〜18質量%であり、
前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜8質量%であり、
前記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜15質量%であり、
前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が8〜10質量%であり、
前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(G)10〜18質量%であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記液晶組成物の相転移温度は、74.0〜76.0℃であり、
前記液晶組成物の屈折率異方性は、0.11〜0.12であり、
前記液晶組成物の誘電率異方性は、8.0〜8.5であり、
前記液晶組成物の回転粘度は、60〜65mPa・sであることを特徴とする、請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項6】
薄膜トランジスタおよび前記薄膜トランジスタに電気的に接続された画素電極を含む第一基板と、
前記第一基板と対向し、共通電極を含む第二基板と、
前記第一基板と前記第二基板との間に位置する液晶層と、
を含み、前記液晶層に含まれる液晶組成物は、
下記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜15質量%であり、
下記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が30〜50質量%であり、
下記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が5〜20質量%であり、
下記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜12質量%であり、
下記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜20質量%であり、
下記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が4〜20質量%であることを特徴とする液晶表示装置;
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

前記化学式(1)、および(3)〜(6)中、Xは、それぞれ独立して、炭素数3〜5の脂肪族基であり、
前記化学式(3)中、Yは炭素数1または2の脂肪族基である。
【請求項7】
下記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物を、前記樹脂組成物100質量%に対して10〜20質量%さらに含む、請求項6に記載の液晶表示装置;
【化14】

前記化学式(7)中、Xは、炭素数3〜5の脂肪族基である。
【請求項8】
前記液晶組成物の相転移温度は、70〜80℃であり、
前記液晶組成物の屈折率の異方性は、0.11〜0.12であり、
前記液晶組成物の誘電率の異方性は、7〜9であり、
前記液晶組成物の回転粘度は、55〜70mPa・sであることを特徴とする、請求項6または7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶表示装置のセルギャップは、2.5〜3.7μmであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記液晶表示装置の駆動電圧は、8.0〜13.0Vであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶組成物は、
前記化学式(1)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(A)が1〜5質量%であり、
前記化学式(2)で表される化合物の含有量(B)が35〜45質量%であり、
前記化学式(3)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(C)が14〜18質量%であり、
前記化学式(4)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(D)が4〜8質量%であり、
前記化学式(5)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(E)が10〜15質量%であり、
前記化学式(6)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(F)が8〜10質量%であり、
前記化学式(7)で表される少なくとも1種の化合物の含有量(G)が10〜18質量%であることを特徴とする、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶組成物の相転移温度は、74.0〜76.0℃であり、
前記液晶組成物の屈折率の異方性は、0.11〜0.12であり、
前記液晶組成物の誘電率の異方性は、8.0〜8.5であり、
前記液晶組成物の回転粘度は、60〜65mPa・sであることを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶表示装置のセルギャップは、3.5〜3.7μmであることを特徴とする、請求項11または12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記液晶表示装置の駆動電圧は、8.3〜8.8Vであることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記液晶表示装置の最低階調電圧は8.0〜8.5Vであり、前記液晶表示装置の最高階調電圧は0.5〜0.7Vであることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記液晶層の応答時間は、8〜9msであることを特徴とする、請求項15に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記液晶層の遅延値は、390〜440nmであることを特徴とする、請求項15または16に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
前記液晶表示装置のコントラスト比は、1000:1〜1200:1であることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−149853(P2009−149853A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286823(P2008−286823)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】