説明

液晶組成物および液晶表示素子

【課題】 ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供する。短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子を提供する。
【解決手段】 第一成分として特に負に大きな誘電率異方性を有する特定の化合物、第二成分として小さな粘度を有する特定の二環化合物、第三成分として高い上限温度を有する特定の化合物、および第四成分として負に大きな誘電率異方性を有し、そして低い下限温度を有する特定の化合物含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が負の液晶組成物に関し、この組成物を含有するIPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モードまたはPSA(Polymer sustained alignment)モードの素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、PSA(Polymer sustained alignment)モードなどである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMはスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。回転粘度も粘度と同様である。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
【0004】

【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn・d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。VAモードの素子では0.30μmから0.40μmの範囲、IPSモードの素子では0.20μmから0.30μmの範囲である。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
【0006】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。一方、VAモードを有するAM素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。PSAモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。負の誘電率異方性を有する液晶組成物の例は次の特許文献に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−2132号公報
【0008】
望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。


ここで、R、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり;Zは、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;mは1または2である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。本発明の液晶組成物または本発明の液晶表示素子をそれぞれ「組成物」または「素子」と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物または液晶相を有さないが組成物の成分として有用な化合物を意味する。この有用な化合物は例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を含有し、棒状(rod like)の分子構造を有する。光学活性な化合物または重合可能な化合物は組成物に添加されることがある。これらの化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは添加物として分類される。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。
【0013】
ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく高い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。光学異方性などの特性を説明するときは、実施例に記載した方法で測定した値を用いる。第一成分は、1つの化合物または2つ以上の化合物である。「第一成分の割合」は、液晶組成物の全重量に基づいた第一成分の重量百分率(重量%)を意味する。第二成分の割合などにおいても同様である。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)を意味する。
【0014】
成分化合物の化学式において、Rの記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、Rの意味は同一であってもよいし、または異なってもよい。例えば、化合物(1)のRがエチルであり、化合物(1−1)のRがエチルであるケースがある。化合物(1)のRがエチルであり、化合物(1−1)のRがプロピルであるケースもある。このルールは、R、Rなどにも適用される。化学式の「CL」は、塩素を示す。
【0015】
本発明は、下記の項などである。
1. 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。


ここで、R、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり;Zは、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;mは1または2である。
【0016】
2. 第一成分が式(1−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Zは、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり;mは1または2である。
【0017】
3. 第二成分が式(2−1)から式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1または2のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0018】
4. 第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項3に記載の液晶組成物。
【0019】
5. 第二成分が、式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項3に記載の液晶組成物。
【0020】
6. 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が25重量%から70重量%の範囲である項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0021】
7. 第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環C、環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;nは1または2である。
【0022】
8. 第三成分が式(3−1)から式(3−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項7に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0023】
9. 第三成分が、式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項8に記載の液晶組成物。
【0024】
10. 第三成分が、式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項8に記載の液晶組成物。
【0025】
11. 第三成分が、式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項8に記載の液晶組成物。
【0026】
12. 液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が5重量%から30重量%の範囲である項7から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0027】
13. 第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;pは1、2または3である。
【0028】
14. 第四成分が式(4−1)から式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項13に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0029】
15. 第四成分が式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項14に記載の液晶組成物。
【0030】
16. 第四成分が、式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(4−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項14に記載の液晶組成物。
【0031】
17. 第四成分が、式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項15に記載の液晶組成物。
【0032】
18. 第四成分が、式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(4−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項14に記載の液晶組成物。
【0033】
19. 液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から60重量%の範囲である項13から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0034】
20. ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が−2以下である項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
21. 項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0036】
22. 液晶表示素子の動作モードが、VAモード、IPSモードまたはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である項21に記載の液晶表示素子。
23. 式(1−1)で表される化合物。


ここで、Rは、炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Zは、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり;mは1または2である。
【0037】
本発明は、次の項も含む。1)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、2)酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などの添加物をさらに含有する上記の組成物。3)上記の組成物を含有するAM素子、4)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、VA、またはPSAのモードを有する素子、5)上記の組成物を含有する透過型の素子、6)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用、7)上記の組成物に光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0038】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0039】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aはその他の液晶性化合物、添加物、不純物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。その他の液晶性化合物の中で、シアノ化合物は熱または紫外線に対する安定性の観点から少ない方が好ましい。シアノ化合物のさらに好ましい割合は0重量%である。添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。不純物は成分化合物の合成などの工程において混入した化合物などである。この化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは不純物として分類される。
【0040】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された化合物のみからなる。「実質的に」は、添加物、不純物を除いて、これらの化合物と異なる液晶性化合物を組成物が含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって物性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0041】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類である。
【0042】

【0043】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は上限温度を上げ、そして誘電率異方性の絶対値を上げる。化合物(2)は粘度を下げる。化合物(3)は上限温度を上げる。化合物(4)は誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げる。
【0044】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、第一成分+第二成分+第三成分、第一成分+第二成分+第四成分、および第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。
【0045】
第一成分の好ましい割合は、誘電率異方性の絶対値を上げるために5重量%以上であり、下限温度を下げるために40重量%以下である。さらに好ましい割合は5重量%から35重量%の範囲である。特に好ましい割合は5重量%から30重量%の範囲である。
【0046】
第二成分の好ましい割合は、粘度を下げるために25重量%以上であり、誘電率異方性の絶対値を上げるために70重量%以下である。さらに好ましい割合は30重量%から65重量%の範囲である。特に好ましい割合は35重量%から60重量%の範囲である。
【0047】
第三成分の好ましい割合は、上限温度を上げるために5重量%以上であり、誘電率異方性の絶対値を上げるために30重量%以下である。さらに好ましい割合は5重量%から25重量%の範囲である。特に好ましい割合は5重量%から20重量%の範囲である。
【0048】
第四成分の好ましい割合は、誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げるために5重量%以上であり、粘度を下げるために60重量%以下である。さらに好ましい割合は10重量%から55重量%の範囲である。特に好ましい割合は15%から50重量%の範囲である。
【0049】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。R、R、R、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRおよびRはそれぞれ、下限温度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRおよびRはそれぞれ、誘電率異方性の絶対値を上げるために、炭素数1から12のアルコキシである。好ましいRおよびRはそれぞれ、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、炭素数1から12のアルキル、または下限温度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルである。Rは、炭素数2から12のアルケニルである。
【0050】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0051】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
【0052】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
【0053】
任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0054】
環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、pが2または3である時の2つまたは3つの環Aは同じであっても、異なってもよい。好ましい環Aは、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンである。環C、環D、および環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、nが2である時の2つの環Cは同じであっても、異なってもよい。2−フルオロ−1,4−フェニレンの時は、両方の向きのどちらでもよい。好ましい環C、環D、および環Eはそれぞれ、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレン、または光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。
【0055】
は、メチレンオキシまたはカルボニルオキシである。好ましいZは、上限温度を上げるためにカルボニルオキシである。Zは独立して、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、nが2である時の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZは、粘度を下げるために単結合である。Zは独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、pが2または3である時の2つまたは3つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZは、粘度を下げるために単結合である。
【0056】
mは、1または2である。好ましいmは、上限温度を上げるために2である。
【0057】
nは、1または2である。好ましいnは、粘度を下げるために1である。
【0058】
pは、1、2または3である。好ましいpは、下限温度を下げるために1である。
【0059】
第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、Rは独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から12を有する直鎖のアルコキシである。RおよびR10は独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数2から12を有する直鎖のアルケニルである。R11は独立して、炭素数2から12を有する直鎖のアルケニルである。これらの化合物において1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
【0060】
好ましい化合物(1)は化合物(1−1−1)から化合物(1−1−4)である。さらに好ましい化合物(1)は化合物(1−1−1)および化合物(1−1−2)である。特に好ましい化合物(1)は化合物(1−1−1)である。好ましい化合物(2)は化合物(2−1−1)から化合物(2−3−1)である。さらに好ましい化合物(2)は化合物(2−1−1)および化合物(2−3−1)である。特に好ましい化合物(2)は化合物(2−1−1)である。好ましい化合物(3)は化合物(3−1−1)から化合物(3−7−1)、および化合物(3−8)である。さらに好ましい化合物(3)は化合物(3−1−1)、化合物(3−2−1)、化合物(3−3−1)、および化合物(3−7−1)である。特に好ましい化合物(3)は化合物(3−1−1)および化合物(3−3−1)である。好ましい化合物(4)は化合物(4−1−1)から化合物(4−6−1)、および化合物(4−7)から化合物(4−8)である。さらに好ましい化合物(4)は化合物(4−1−1)、化合物(4−3−1)、化合物(4−4−1)、化合物(4−5−1)、および化合物(4−6−1)である。特に好ましい化合物(4)は化合物(4−1−1)、化合物(4−4−1)、および化合物(4−6−1)である。
【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】
第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性な化合物が組成物に混合される。このような化合物の例は、化合物(5−1)から化合物(5−4)である。光学活性な化合物の好ましい割合は5重量%以下である。さらに好ましい割合は0.01重量%から2重量%の範囲である。
【0066】

【0067】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく高い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に混合される。

【0068】
酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(6)などである。化合物(6)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは1または7である。nが1である化合物(6)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。nが7である化合物(6)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく高い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように600ppm以下である。さらに好ましい割合は、100ppmから300ppmの範囲である。
【0069】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように10000ppm以下である。さらに好ましい割合は100ppmから10000ppmの範囲である。
【0070】
GH(Guest host)モードの素子に適合させるためにアゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に混合される。色素の好ましい割合は、0.01重量%から10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に混合される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために1ppm以上であり、表示の不良を防ぐために1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、1ppmから500ppmの範囲である。
【0071】
PSA(Polymer sustained alignment)モードの素子に適合させるために重合可能な化合物が組成物に混合される。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、またはエポキシなどの重合可能な基を有する化合物である。特に好ましい例は、アクリレート、またはメタクリレートの誘導体である。重合可能な化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、0.05重量%以上であり、表示不良を防ぐために10%以下である。さらに好ましい割合は、0.1重量%から2重量%の範囲である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合される。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、またはDarocure1173(登録商標)(Ciba Geigy AG)がラジカル重合に対して適切である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤を0.1重量%から5重量%の範囲で含む。特に好ましくは光重合開始剤を1重量%から3重量%の範囲で含む。
【0072】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(2−1−1)および化合物(3−1−1)は、特公平4−30382号公報に記載された方法で合成する。化合物(4−1−1)および化合物(4−4−1)は、特表平2−503441号公報に掲載された方法で合成する。酸化防止剤は市販されている。式(6)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(6)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0073】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0074】
最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、−10℃以下の下限温度、70℃以上の上限温度、そして0.07から0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、0.08から0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには0.10から0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0075】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。IPSまたはVAモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【実施例】
【0076】
〔液晶性化合物の実施例〕
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0077】
得られた化合物は、1H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0078】
1H−NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数32回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0079】
GC分析
測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を280℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0080】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0081】
なお、試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0082】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶性化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶性化合物成分(被検成分)と基準となる液晶性化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0083】
〔液晶性化合物等の物性値の測定試料〕
液晶性化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0084】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶性化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記式に示す式に示す外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0085】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉
)/〈液晶性化合物の重量%〉
液晶性化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶性化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定しこの式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶性化合物の物性値とする。
【0086】
本測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、例えば、母液晶iの組成は以下のとおりである。
母液晶i:
【0087】

【0088】
なお、液晶組成物の物性値を測定する試料としては、液晶組成物そのものを用いた。
〔液晶性化合物等の物性値の測定方法〕
物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子またはVA素子には、TFTを取り付けなかった。
【0089】
測定値のうち、液晶性化合物単体そのものを試料として得られた値と、液晶組成物そのものを試料として得られた値は、そのままの値を実験データとして記載した。化合物を母液晶に混合し試料として得られた場合には、外挿法で得られた値を外挿値とした。
【0090】
相構造および転移温度(℃)
以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、転移温度を決定した。
【0091】
以下、結晶はCrと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれC1またはC2と表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIsoと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSB、またはSAと表した。転移温度の表記として、例えば、「Cr 50.0 N 100.0 Iso」とは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0092】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0093】
ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0094】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0095】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0096】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0097】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。
【0098】
電圧保持率(VHR−1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0099】
電圧保持率(VHR−2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0100】
電圧保持率(VHR−3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR−3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH−500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR−3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。VHR−3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
【0101】
電圧保持率(VHR−4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。大きなVHR−4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。VHR−4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。
【0102】
応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)である。
【0103】
比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0104】
実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は好ましい化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含有している。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0105】

【0106】
[実施例1]
4’−エトキシ−2,3,2',3'−テトラフルオロ−4−(4’−ビニルビシクロヘキシル−4−イルメトキシ)−ビフェニル(a7)の合成
【0107】

【0108】
第1工程
反応器へマグネシウム(Mg) 6.15gおよびテトラヒドロフラン(THF)50mlを加え、窒素雰囲気下、44℃で攪拌した。そこへTHF 130mlへ溶解した1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(a1) 60.0gを38〜49℃の温度範囲で1時間かけて滴下した。得られた溶液を、THF 200mlとホウ酸トリメチル 39.5gの溶液中へ、−50〜−30℃の温度範囲で滴下した。得られた反応液を0℃に冷却した1N 塩酸 500mlおよび酢酸エチル 600mlの混合液へ注ぎ込み、その後静置して有機層と水層とに分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮して残渣を得た。得られた残渣をヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、黄色の4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルボロン酸(a2)41.6gを得た。
【0109】
第2工程
反応器へ化合物(a2) 20.0g、4−ブロモ−2,3−ジフルオロフェノール(a3) 17.2g、炭酸ナトリウム 30.6g、炭素担持パラジウム(Pd/C) 0.54gおよび2−プロパノール(IPA)120mlを加え、環留下、10時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、0℃に冷却した1N 塩酸 500mlおよびトルエン 300mlの混合液へ注ぎ込み、その後静置して有機層と水層とに分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮して残渣を得た。得られた残渣をヘプタンからの再結晶により精製し、乾燥させ、白色の4'−エトキシ−2,3,2',3'−テトラフルオロビフェニル−4−オール(a4)13.2gを得た。
【0110】
第3工程
反応器へ(4'−ビニルビシクロヘキシル−4−イル)−メタノール(a5) 20.0g、およびピリジン 100mlを加え、5℃で攪拌した。この溶液に、p−トルエンスルホニルクロリド(p−TsCl) 34.3gをトルエン 50mlに溶解した溶液を、滴下し、さらに室温で20時間攪拌した。得られた反応混合物を、0℃に冷却した水 200mlおよびトルエン 200mlの混合液へ注ぎ込み、その後静置して有機層と水層とに分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮して残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルを充填剤、トルエンを展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、減圧下濃縮すること白色の4’−ビニルビシクロヘキシル−4−イルメチル トルエン−4−スルホン酸 (a6) 32.1gを得た。
なお、化合物(a5)は国際公開第2006/064853号パンフレットに記載されている方法などにより合成することができる。
【0111】
第4工程
反応器に化合物(a4) 4.0g、化合物(a6) 5.3g、水酸化カリウム(KOH) 1.2gおよびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 30mlを加え、60℃で14時間、攪拌した。反応混合物を30℃まで冷却し、水 100mlとトルエン 100mlとを加え混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をトルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにソルミックスA−11とトルエンの混合溶媒(体積比 ソルミックスA−11:トルエン=1:2)からの再結晶により精製し、乾燥させ、4’−エトキシ−2,3,2',3'−テトラフルオロ−4−(4’−ビニルビシクロヘキシル−4−イルメトキシ)−ビフェニル(a7)2.5gを得た。
【0112】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4’−エトキシ−2,3,2',3'−テトラフルオロ−4−(4’−ビニルビシクロヘキシル−4−イルメトキシ)−ビフェニルであることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0113】
化学シフトδ(ppm);7.03−6.98(m,2H),6.81−6.76(m,2H),5.81−5.74(m,1H)、4.98−4.94(d,1H)、4.89−4.87(d,1H),4.16(q,2H)、3.86(d,2H)、1.96−1.77(m,10H),1.48(t,3H)、1.09−1.02(m,10H).
【0114】
得られた化合物(a7)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :Cr 131.5 N 230.1 Iso。
【0115】
[実施例2]
4'−エトキシ−2,3,2',3'−テトラフルオロ−4−(トランス−4−ビニルシクロヘキシルメトキシ)−ビフェニル(a10)の合成

【0116】
第1工程
窒素雰囲気下、トルエン 200mlへ化合物(a8) 12.0g、イミダゾール 7.6gおよびトリフェニルホスフィン(PhP) 29.2gを加え、5℃で攪拌した。そこへヨウ素 27.2gを10分割して、5〜10℃の温度範囲で加え、さらに3時間攪拌し、GC分析により反応が終了していることを確認した。得られた反応混合物を濾過により析出物を取り除き、得られた濾液から減圧下、溶媒を留去した。得られた残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、乾燥させ、1−ヨードメチル−トランス−4−ビニルシクロヘキサン(a9)15.2gを得た。
なお、化合物(a8)は国際公開第2006/064853号パンフレットに記載されている方法などにより合成することができる。
【0117】
第2工程
窒素雰囲気下、DMF 20mlに化合物(a4) 4.4g、および炭酸ナトリウム 3.2gを加え、80℃で攪拌した。そこへ化合物(a9) 3.8gを加え、80℃で、1時間攪拌した。得られた反応混合物を30℃まで冷却し、トルエン 30ml、および水 30mlを加え混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、得られた残渣をヘプタンとトルエンの混合溶媒(体積比 ヘプタン:トルエン=4:1)を展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにソルミックスA−11とヘプタンの混合溶媒(体積比 ソルミックスA−11:ヘプタン=1:2)からの再結晶により精製し、乾燥させ、4'−エトキシ−2,3,2',3'−テトラフルオロ−4−(トランス−4−ビニルシクロヘキシルメトキシ)−ビフェニル(a10)1.8gを得た。
【0118】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4'−エトキシ−2,3,2',3'−テトラフルオロ−4−(トランス−4−ビニルシクロヘキシルメトキシ)−ビフェニルであることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0119】
化学シフトδ(ppm);7.03−6.99(m,2H),6.81−6.77(m,2H)、5.83−5.76(m,1H)、5.02−4.97(d,1H)、4.93−4.91(d,1H)、4,16(q,2H)、3.88(d,2H),1.98−1.96(m,3H),1.86−1.82(m,3H),1.49(t,3H),1.22−1.10(m,4H).
【0120】
得られた化合物(a10)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :Cr (66.4 N) 104.8 Iso
【0121】
[比較例1]
特開2007−2132号公報に開示された組成物の中から実施例12を選んだ。根拠は、この組成物が化合物(1)および化合物(3)を含有しているからである。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。25℃における応答時間についての記載がなかったため、本組成物を調製し、上述した方法により測定した。
3−HB(F)−3 (−) 2%
3−HHB(2F)−1 (3) 3%
3−HHB(2F)−2 (3) 4%
3−HHB(F)−O2 (3) 3%
3−HBB(F)−O2 (3) 3%
3−HH1OB(2F)−O2 (3) 3%
3−HxB(2F,3F)−1 (−) 8%
3−H2XB(2F,3F)−O1 (−) 12%
3−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (1) 2%
3−HO1(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (−) 2%
3−HXB(2CF3)B(2F,3F)−O1 (−) 1%
3−HXB(2F)B(2F,3F)−O1 (−) 3%
3−HxB(F)B(2F,3F)−O1 (−) 6%
3−H2xB(2F,3F)B(2F,3F)−1 (−) 4%
3−HB2B(2CF2H,3F)B−O2 (−) 1%
3−HB1OB(2CF2H,3F)B−O2 (−) 2%
5−HBO1B(2CF2H,3F)B−1 (−) 1%
3−HXB(2F,3F)B−O2 (−) 1%
3−HxB(2F,3F)B−O1 (−) 1%
3−HHxB(2F,3F)−O1 (−) 4%
3−HH2XB(2F,3F)−1 (−) 6%
3−HB(2F,3F)XB(2F,3F)−1 (−) 4%
3−HB2XB(2F,3F)−O1 (−) 10%
3−HB2xB(2F,3F)−O2 (−) 10%
3−HB(2F,3F)2xB(2F,3F)−O1 (−) 4%
NI=100.0℃;Tc≦−20℃;Δn=0.109;η=50.0mPa・s;Δε=−4.3;τ=25.3ms
【0122】
[実施例3]
実施例3の組成物は、比較例1のそれと比較して、小さな粘度および小さな応答時間を有する。
3−HH1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 4%
5−HH1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
3−HHEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
5−HHEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (1) 3%
3−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (1) 6%
5−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (1) 4%
V−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1−1−3) 3%
V−HH−3 (2−1−1) 42%
1V−HH−3 (2−1−1) 6%
7−HB−1 (2−2−1) 4%
V2−BB−1 (2−3−1) 6%
3−HB(2F,3F)−O2 (4−1−1) 8%
5−HB(2F,3F)−O2 (4−1−1) 8%
NI=74.4℃;Tc≦−20℃;Δn=0.086;η=17.6mPa・s;Δε=−3.3;Vth=2.16V;τ=7.2ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.2%;VHR−3=98.2%.
【0123】
[実施例4]
実施例4の組成物は、比較例1のそれと比較して、小さな粘度および小さな応答時間を有する。
3−HH1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
5−HH1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
3−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 4%
5−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
V−HH1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1−1−1) 3%
V−HH−3 (2−1−1) 31%
3−HB−O2 (2−2−1) 4%
V−HHB−1 (3−1−1) 9%
3−BB(F)B−2V (3−3−1) 3%
V−HB(2F,3F)−O2 (4−1−1) 8%
V−HB(2F,3F)−O4 (4−1−1) 10%
3−H2B(2F,3F)−O2 (4−2−1) 5%
V−HHB(2F,3F)−O2 (4−4−1) 7%
V−HHB(2F,3F)−O4 (4−4−1) 7%
NI=76.6℃;Tc≦−20℃;Δn=0.093;η=24.5mPa・s;Δε=−3.0;Vth=2.29V;τ=8.9ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.3%;VHR−3=98.2%.
【0124】
[実施例5]
実施例5の組成物は、比較例1のそれと比較して、小さな粘度および小さな応答時間を有する。
3−HHEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 4%
5−HHEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (1) 3%
3−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 5%
5−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (1) 4%
V−HH−3 (2−1−1) 28%
V−HH−5 (2−1−1) 7%
3−HHB−1 (3−1−1) 6%
2−BB(F)B−3 (3−3−1) 4%
3−HHEH−3 (3−8) 3%
3−HHEH−5 (3−8) 3%
V−HHB(2F,3F)−O2 (4−4−1) 10%
V−HHB(2F,3F)−O4 (4−4−1) 10%
2−HBB(2F,3F)−O2 (4−6−1) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (4−6−1) 8%
NI=87.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.098;η=25.6mPa・s;Δε=−2.9;Vth=2.38V;τ=9.2ms;VHR−1=99.2%;VHR−2=98.0%;VHR−3=98.3%.
【0125】
[実施例6]
3−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 4%
V−HHEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1−1−2) 5%
V−HEB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1−1−4) 5%
2−HH−3 (2−1−1) 7%
3−HH−O1 (2−1−1) 5%
V−HH−3 (2−1−1) 30%
1V−HBB−2 (3−2−1) 3%
3−HHEBH−5 (3−4−1) 3%
3−HB(F)BH−5 (3−6−1) 3%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (4−3−1) 7%
3−H1OB(2F,3F)−O4 (4−3−1) 7%
5−H1OB(2F,3F)−O2 (4−3−1) 6%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (4−5−1) 8%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (4−5−1) 7%
NI=72.1℃;Tc≦−20℃;Δn=0.98;η=24.1mPa・s;Δε=−3.2;Vth=2.19V;τ=8.9ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.1%;VHR−3=98.0%.
【0126】
[実施例7]
3−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
5−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
5−HH1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
V−HH−3 (2−1−1) 25%
1V−HH−3 (2−1−1) 7%
5−BB−1 (2−3−1) 3%
V2−BB(F)B−3 (3−3−1) 3%
3−HBBH−5 (3−5−1) 3%
5−HBB(F)B−3 (3−7−1) 6%
V−HB(2F,3F)−O2 (4−1−1) 10%
V−HB(2F,3F)−O4 (4−1−1) 10%
5−BB(2F,3F)−O2 (4−7) 5%
3−HBB(2F,3F)−O2 (4−6−1) 10%
5−HBB(2F,3F)−O2 (4−6−1) 9%
NI=82.2℃;Tc≦−20℃;Δn=0.113;η=25.7mPa・s;Δε=−2.9;Vth=2.31V;τ=9.1ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.2%;VHR−3=98.1%.
【0127】
[実施例8]
3−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
5−H1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O4 (1) 3%
2−HH−3 (2−1−1) 28%
3−HH−O1 (2−1−1) 13%
3−HB−O2 (2−2−1) 8%
V−HHB(2F,3F)−O2 (4−4−1) 10%
3−HBB(2F,3F)−O2 (4−6−1) 11%
5−HBB(2F,3F)−O2 (4−6−1) 11%
3−HH2B(2F,3F)−O2 (4−8) 9%
1O1−HBBH−5 (−) 4%
NI=90.0℃;Tc≦−20℃;Δn=0.093;η=21.8mPa・s;Δε=−2.8;Vth=2.44V;τ=8.2ms;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.2%;VHR−3=98.1%.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。


ここで、R、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり;Zは、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;mは1または2である。
【請求項2】
第一成分が式(1−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Zは、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり;mは1または2である。
【請求項3】
第二成分が式(2−1)から式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1または2のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項4】
第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項3に記載の液晶組成物。
【請求項5】
第二成分が、式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(2−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項3に記載の液晶組成物。
【請求項6】
液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が25重量%から70重量%の範囲である請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環C、環Dおよび環Eは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;nは1または2である。
【請求項8】
第三成分が式(3−1)から式(3−7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項7に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項9】
第三成分が、式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
第三成分が、式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項11】
第三成分が、式(3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項12】
液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が5重量%から30重量%の範囲である請求項7から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;pは1、2または3である。
【請求項14】
第四成分が式(4−1)から式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項13に記載の液晶組成物。


ここで、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項15】
第四成分が式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項16】
第四成分が、式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(4−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項17】
第四成分が、式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項18】
第四成分が、式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、式(4−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(4−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項19】
液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から60重量%の範囲である請求項13から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項20】
ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が−2以下である請求項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【請求項22】
液晶表示素子の動作モードが、VAモード、IPSモードまたはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項21に記載の液晶表示素子。
【請求項23】
式(1−1)で表される化合物。


ここで、Rは、炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Zは、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり;mは1または2である。

【公開番号】特開2009−270026(P2009−270026A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122422(P2008−122422)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】