説明

液晶脱気装置、液晶脱気方法及び液晶装置の製造方法

【課題】高い処理能力で液晶を脱気することができると共に、装置の小型化による省スペ
ース化、装置コストの低減を図ることができる液晶脱気装置を提供する。
【解決手段】液晶を減圧雰囲気下で脱気する脱気槽10内に、吐出受面141を略水平に
配置して回転可能に設け、脱気槽10を減圧して吐出受面141を回転させながら吐出受
面141の中心付近に液晶を吐出し、吐出受面141の回転の遠心力で液晶を均一に薄く
拡げて表面積を拡大させ、液晶と減圧雰囲気との接触を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置に充填される液晶を脱気する液晶脱気装置、液晶脱気方法及び液晶
装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶中の溶存ガスは、液晶装置への充填後に液晶装置内で気泡化して表示不良の原因と
なるため、液晶には液晶装置に充填される前に脱気処理が施される。液晶の脱気処理は、
例えば脱気槽内に気体透過性の脱気チューブを設け、脱気槽内を減圧状態にして脱気チュ
ーブに液晶を圧送し、脱気チューブ内の圧力と脱気槽内の圧力との圧力差により、液晶中
の溶存ガスを脱気チューブの壁面を介して除去することにより行われる(特許文献1、2
参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−289036号公報
【特許文献2】特開2002−113334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記脱気チューブによる脱気処理は、脱気チューブに液晶を圧送するための
圧送ポンプや、圧送ポンプのための配管等が必要となるため、装置が大型化して省スペー
ス化を図ることが困難であると共に、装置コストが高価となるという問題がある。また、
脱気チューブの容量で脱気する液晶の量が制限されるため、必要とする量だけ液晶を脱気
することができず、特に少量の液晶の脱気に不向きである。更には、脱気チューブ内に余
剰の液晶が残存する、脱気チューブから不純物が混入して液晶が汚染される虞がある、脱
気チューブのメンテナンスに労力を要するという問題もある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、高い処理能力で液晶を脱気することが
できると共に、装置の小型化による省スペース化、装置コストの低減を図ることができる
液晶脱気装置、液晶脱気方法及び液晶装置の製造方法を提供することを目的とする。また
、本発明の他の目的は、脱気量に制限が無く、必要とする量だけ液晶を脱気することが可
能であり、少量の液晶も脱気することができる液晶脱気装置、液晶脱気方法及び液晶装置
の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、余剰の液晶の残存や、液
晶への不純物混入の虞が無く、メンテナンス性に優れる液晶脱気装置、液晶脱気方法及び
液晶装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶脱気装置は、液晶を減圧雰囲気下で脱気する脱気槽と、前記脱気槽内に吐
出された液晶が前記減圧雰囲気と接触しながら沿うように流れ、前記減圧雰囲気と液晶と
の接触を促進する接触促進部とを備えることを特徴とする。本発明によれば、液晶が接触
促進部に沿うように流れ、表面積の大きい状態で減圧雰囲気と接触する時間が延び、減圧
雰囲気と液晶の接触量が増加するので、高い処理能力で液晶を脱気することができる。更
に、液晶が沿うように流れる接触促進部で脱気を促進できることから、脱気チューブに液
晶を圧送するための圧送ポンプや、そのための配管等の器具が不要となり、装置の小型化
による省スペース化、装置コストの低減を図ることができる。また、脱気槽内に所要量だ
け液晶を吐出して脱気することが可能であり、脱気量に制限が無く、少量の液晶も脱気す
ることができる。また、余剰の液晶の残存や、液晶への不純物混入の虞が無く、メンテナ
ンス性にも優れる。
【0007】
本発明の液晶脱気装置は、前記接触促進部として、前記吐出された液晶が略放射状に拡
がるように流れる吐出受面を有することを特徴とする。本発明によれば、液晶を略放射状
に拡げ、減圧雰囲気との接触を均一化しつつ減圧雰囲気との接触面積の拡大を図れるので
、液晶に対する脱気の均一性を高め、脱気率をより向上することができる。
【0008】
本発明の液晶脱気装置では、前記吐出受面を回転させ、前記吐出受面の中心近傍に液晶
を吐出することが好ましい。本発明によれば、前記吐出された液晶が回転の遠心力で均一
に拡がるので、液晶に対する脱気の均一性をより高めることができると共に、遠心力で液
晶が薄く引き延ばされ表面積が一層拡大されるので、脱気率をより一層高めることができ
る。更に、遠心力で液晶が薄く引き延ばされるので、高粘度の液晶も良好に脱気すること
ができる。更に、遠心力で液晶が素早く表面積を拡大するので、脱気処理の効率を高める
ことができる。
【0009】
本発明の液晶脱気装置では、前記吐出受面の回転速度を600〜1500rpmとする
ことが好ましい。本発明によれば、脱気の均一性、脱気率、脱気処理の効率を向上する効
果をより確実に得ることができる。
【0010】
本発明の液晶脱気装置では、前記吐出受面を撥水性の素材で形成することが好ましい。
本発明によれば、液晶の局所的な滞りの無い滑らかな流れを確実にすることができ、脱気
の均一性、脱気率、脱気処理の効率を向上する効果をより確実に得ることができる。
【0011】
本発明の液晶脱気装置は、前記接触促進部として、前記吐出された液晶が伝って落下す
る落下面を有することを特徴とする。本発明によれば、脱気槽内の所定箇所を有効利用し
て或いは簡単な部材を用いて、液晶の表面積の拡大による減圧雰囲気との接触量増加を図
ることができ、良好な脱気処理を行うことができる。
【0012】
本発明の液晶脱気装置は、前記吐出受面若しくは前記落下面若しくはその双方の少なく
とも一部に凹凸を形成することを特徴とする。本発明によれば、凹凸で液晶の流速を抑制
し、表面積の大きい状態での液晶と減圧雰囲気との接触時間を増加させ、液晶の脱気率を
高めることができる。
【0013】
本発明の液晶脱気装置は、前記接触促進部として、前記吐出された液晶が流れる溝経路
を有することを特徴とする。本発明によれば、溝状の経路に液晶が流れ、表面積の大きい
状態での液晶と減圧雰囲気との接触時間を増加させ、液晶の脱気率を高めることができる

【0014】
本発明の液晶脱気装置は、前記脱気槽内に吐出される液晶が常温より昇温されているも
のとすることが好ましい。本発明によれば、液晶の粘度を低下させ、脱気処理の速さを高
めることができる。
【0015】
また、本発明の液晶脱気方法は、減圧雰囲気下に液晶を吐出し、前記吐出した液晶を前
記減圧雰囲気と接触させながら接触促進部に沿うように流して、前記減圧雰囲気と液晶と
の接触を促進することを特徴とする。本発明によれば、高い処理能力での液晶を脱気、装
置の小型化による省スペース化、装置コストの低減、少量など所要量だけの液晶の脱気、
余剰の液晶の残存や液晶への不純物混入の防止、メンテナンス性向上の効果が得られる。
【0016】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、本発明の液晶脱気装置で脱気した液晶を液晶装
置に充填することを特徴とする。本発明によれば、本発明の液晶脱気装置の効果に基づき
、液晶の溶存ガスの気泡化や液晶への不純物混入による表示不良を防止して良好な液晶装
置を得ることができる。更に、液晶装置の歩留まり向上、液晶装置の製造コストの低減、
製造工程の効率化の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の液晶脱気装置を示す断面説明図、図2は図1の液晶脱気装置のス
テージを示す斜視図である。第1実施形態の液晶脱気装置は、図1に示すように、液晶を
減圧雰囲気下で脱気して貯溜する脱気槽10であり、減圧状態を維持する密閉可能な構造
を有し、後述の如く、液晶が沿って流れ、減圧雰囲気との接触を促進する接触促進部とし
て、ステージ14の吐出受面141と、受部17の側周壁174の内周面の2種の接触促
進面を備える。
【0019】
脱気槽10には、バルブ11を介して真空ポンプ12が設けられていると共に、脱気槽
10内を大気に開放するためのバルブ13が設けられ、バルブ13の閉塞、真空ポンプ1
2の駆動、バルブ11の開放により脱気槽10内を減圧し、バルブ11の閉塞、バルブ1
3の開放により脱気槽10内の減圧状態を解除して大気圧にすることが可能である。脱気
槽20の減圧時の圧力は、液晶中の溶存ガスの気泡化による液晶装置の表示不良が発生し
ないレベルで、液晶中の溶存ガスを除去できる圧力であれば適宜であり、例えば6Pa程
度とする。
【0020】
脱気槽10内には、図1及び図2に示すように、円板状のステージ14が吐出受面14
1である平滑な上面を略水平にして中位の高さに配置されている。吐出受面141は撥水
性の素材で形成とすると、液晶が滑らかに流れて好適であり、例えばテフロン(登録商標
)若しくはピーク(登録商標)等でステージ14を形成する、或いはこれらをステージ1
4の基材にコート塗装して吐出受面141を形成するとよい。脱気槽10の下部に設置さ
れたモータ16からは回転軸15が上方へ立設され、回転軸15の上端がステージ14の
下面中心に固定されており、モータ16の駆動で回転軸15を回転させてステージ14を
回転可能である。
【0021】
ステージ14の側方及び下方の周囲には、略W字断面の回転体の形状である受部17が
設けられ、受部17の側周壁174はステージ14の外周縁から離間して配置されている
。受部17の底板175は、中心から外側に向かって斜め下方に傾斜して形成され、その
中心には軸穴171が設けられており、軸穴171に回転軸15が挿通されている。側周
壁174と底板175が突合する位置の底部173の所定箇所には液晶の流路172が形
成され、底部173は流路172の上端開口に向かって低くなるように漸次傾斜している
。流路172の下端開口は液晶72を貯溜する貯溜部18に連通している。
【0022】
脱気槽10内には脱気槽10へ液晶を移送する移送管40が導入され、導入された移送
管40の先端はステージ14の吐出受面141の中心に近い位置まで延ばされ、移送管4
0の先端から吐出受面141の中心付近に液晶を滴下可能としている。また、貯溜部18
の底部近傍、即ち、貯溜部18に貯溜される液晶72の底部近傍には、脱気槽10から液
晶を移送する移送管50の一端が配置され、移送管50は脱気槽10から導出されている
。前記底部近傍のように貯溜される液晶72の液面下に移送管50の一端を配置すること
により、移送管50で移送する液晶に、気泡が集まりやすい液晶72の液面から気泡が混
入することを防止できる。
【0023】
脱気槽10で脱気処理を行う際には、真空ポンプ12の駆動等で脱気槽10内を減圧状
態にし、図示しない回転制御部でモータ16を駆動し、回転軸15を介してステージ14
の吐出受面141を回転させる。吐出受面141の回転速度は、例えば1000rpmと
するが、所要レベルの脱気が可能であれば適宜であり、600〜1500rpmとするこ
とが好ましく、より好適には800〜1200rpmとするとよい。
【0024】
そして、移送管40で移送した脱気前の液晶を、移送管40の先端から吐出受面141
の中心付近に吐出する。液晶の吐出量は、所要レベルの脱気が行える範囲であれば適宜で
あるが、例えば200ml/時間程度の速度で吐出させると好ましい。前記吐出された液
晶は、図2の二点鎖線矢印の如く、吐出受面141に沿って前記中心付近から吐出受面1
41の外周縁に向かって放射状に拡がるように流れ、表面積を拡大して流れるが、吐出受
面141の回転の遠心力により、液晶が薄く且つ均一に引き延ばされて表面積の拡大が促
進される。前記表面積の拡大で液晶と減圧雰囲気との接触面積が増加し、液晶の脱気率を
高められ、又、液晶が均一に引き延ばされるので、液晶に対する脱気の均一性を高められ
る。更に、遠心力で素早く液晶の表面積が拡大されるので、脱気処理の効率を向上できる

【0025】
吐出受面141で表面積を拡大された液晶は、吐出受面141の外周縁から受部17の
底部173へ落下するが、その一部は吐出受面141の遠心力で斜め下方へ飛ばされ、受
部17の側周壁174の内周面に付着し、前記内周面を落下面として、前記内周面を伝っ
て表面積を拡大しながら底部173へ落下する。ここでも液晶と減圧雰囲気との接触面積
と接触時間が増加して脱気が促進される。底部173へ落下した液晶は、底部173の傾
斜面に沿って流路172の上端開口に集まり、流路172を通って貯溜部18に貯溜され
る。その後、貯溜部18に貯溜された液晶72は移送管50を介して移送される。
【0026】
[第1実施形態の液晶脱気装置を有する液晶移送ライン]
上記脱気槽10は、適宜の液晶移送ラインに於いて、液晶装置の半製品に液晶を供給する
供給槽より前の適宜箇所に配置することが可能であるが、例えば図3のような液晶移送ラ
インの供給槽30の前に設置すると好適である。図3は第1実施形態の脱気槽を有する液
晶移送ラインの例を示す模式構成図である。
【0027】
図3の液晶移送ラインは、脱気前の液晶を貯溜する貯溜槽20と、上記脱気槽10と、
脱気槽10から移送される液晶を液晶セル60に供給する供給槽30と、貯溜槽20から
脱気槽10へ液晶を移送する移送管40と、脱気槽10から供給槽30へ液晶を移送する
移送管50を備える。
【0028】
貯溜槽20は、大気圧下且つ常温で脱気前の液晶71を貯溜する。貯溜槽20の底部近
傍、即ち貯溜槽20の貯溜液晶71の底部近傍には移送管40の一端が配置されて、貯溜
槽20から移送管40が導出されている。前記移送管40は脱気槽10内に導入され、前
述の如く、移送管40の先端(他端)は吐出受面141の中心に近い位置まで延ばされる

【0029】
供給槽30は減圧状態を維持する密閉可能な構造を有し、バルブ31を介して真空ポン
プ32が設けられていると共に、供給槽30内を大気に開放するためのバルブ33が設け
られ、バルブ33の閉塞、真空ポンプ32の駆動、バルブ31の開放により供給槽30内
を例えば6Pa程度に減圧し、バルブ31の閉塞、バルブ33の開放により供給槽30の
減圧状態を解除して大気圧にすることが可能である。供給槽30の上部には、液晶を滴下
するディスペンサ34が設けられている。ディスペンサ34には脱気槽10から導出され
た移送管50の他端が導入され、脱気槽10から移送管50を介して移送される液晶がデ
ィスペンサ34内に供給される。供給槽30には、図示しない搬送機構で液晶セル60が
搬送されて所定位置に配置され、減圧状態で液晶充填口631近傍の基板61上にディス
ペンサ34から液晶73が滴下され、バルブ31の閉塞、バルブ33の開放により供給槽
30内を大気に開放し、後述する液晶セル60の空間66の減圧状態と供給槽30内の大
気圧との圧力差により、即ち真空注入法で液晶セル60の空間66に液晶を充填する。
【0030】
ここで、液晶セル60について説明する。図4(a)は供給槽で液晶が滴下される液晶
セルを示す平面構成図、(b)はそのA−A線矢視断面図である。液晶セル60は、図4
に示すように、一対の基板61、62がシール材63を介して対向配置され、シール材6
3は基板61、62の周縁内側に沿って略額縁状に設けられている。一方の基板61は他
方の基板62よりも僅かに大きく形成され、平面視で、一方の基板61の各側辺が他方の
基板62より僅かに側方へ突出するように配置されている。シール材63には、その一部
を開放して、基板61、62間のシール材63で囲まれる空間66に液晶を充填するため
の液晶充填口631が設けられており、液晶充填口631は液晶充填後に封止材で封止さ
れる。一方の基板61には、シール材63より内側の表示領域に複数の画素がマトリクス
状に形成され、画素毎に、画素電極と、画素電極に接続されるTFT(薄膜トランジスタ
)等のスイッチング素子と、スイッチング素子に接続される配線が設けられ、これらを覆
って配向膜64が形成されている。前記配線は、基板61のシール材63の外側領域等に
設けられる駆動回路と接続される。また、他方の基板62には、対向電極が設けられ、対
向電極を覆うように配向膜65が形成されている。尚、液晶セル60を構成する一対の基
板61、62の何れを素子基板とし、対向基板とするかは適宜である。
【0031】
貯溜槽20と脱気槽10との間の移送管40、脱気槽10と供給槽30との間の移送管
50には、それぞれ液晶の移送量を制御する制御部としてバルブ41、51が設けられて
いる。バルブ41、51は、図示しない開閉制御部で開放モードと閉塞モードとに制御さ
れ、開放モードでは所定のON/OFF時間(開閉時間)で開放と閉塞を繰り返し、移送
管40、50に断続的に液晶を流通させ、閉塞モードでは完全に閉塞し、移送管40、5
0の液晶の流通を遮断する。前記バルブ41、51の開放モードのON/OFF時間は、
液晶の移送量に合わせてそれぞれ適宜設定可能であり、例えば各々0.1秒/0.3秒と
する。
【0032】
上記液晶移送ラインで液晶を移送・脱気する際には、図5に示すように、バルブ13を
閉塞した状態で、真空ポンプ12を駆動してバルブ11を開放することにより、脱気槽1
0内を減圧し(S101)、モータ16を駆動してステージ14、即ち吐出受面141を
回転する(S102)。次いで、バルブ41を開放モードにし、貯溜槽20の大気圧と脱
気槽10の減圧状態の圧力との圧力差により、移送管40を介して貯溜槽20の貯溜液晶
71を脱気槽10内へ移送し(S103)、移送管40の先端から吐出受面141の中心
付近に液晶を吐出する(S104)。吐出された液晶は、吐出受面141の回転による遠
心力で均一に薄く引き延ばされて表面積を拡大され、更に、その一部は側周壁174の内
周面に沿って落下することで表面積を拡大され、表面積の大きな状態で減圧雰囲気と接触
し、脱気される(S105)。脱気された液晶は、底部173に落下し、底部173の傾
斜面、流路172を介して貯溜部18に貯溜される(S106)。所要量の液晶を脱気し
た時には、バルブ41を閉塞モードにして脱気槽10への液晶の移送・吐出を停止し、吐
出受面141の回転を停止して、脱気処理を完了する(S107)。
【0033】
そして、供給槽30のバルブ33を閉塞した状態で、真空ポンプ32を駆動してバルブ
31を開放することにより、供給槽30内を減圧して、供給槽30内と連通するディスペ
ンサ34内を供給槽30内と同一圧に減圧すると共に、脱気槽10のバルブ11を閉塞し
且つバルブ13を開放し、脱気槽10内を大気に開放して大気圧とする。そして、バルブ
51を所定時間開放モードにし、脱気槽10の大気圧と供給槽30、ディスペンサ34の
減圧状態の圧力との圧力差により、移送管50を介して脱気槽10の貯溜液晶72を供給
槽30のディスペンサ34内へ移送し(S108)、液晶セル60に液晶充填口631近
傍にディスペンサ34で液晶を滴下し、真空注入法で液晶充填口631から液晶セル60
に充填する(S109)。液晶充填後の液晶充填口631は封止材で封止される。
【0034】
[第2実施形態]
次に、図6及び図7を参照して本発明の第2実施形態について説明する。図6は第2実
施形態の液晶脱気装置を示す断面説明図、図7は図5の液晶脱気装置のステージを示す斜
視図である。第2実施形態の液晶脱気装置は、図6に示すように、第1実施形態と同様に
、液晶を減圧雰囲気下で脱気して貯溜する脱気槽80であり、減圧状態を維持する密閉可
能な構造を有し、後述の如く、液晶が沿って流れ、減圧雰囲気との接触を促進する接触促
進部として、ステージ84の吐出受面841と、移送管50の外周面の2種の接触促進面
を備える。バルブ81、83、真空ポンプ82は、第1実施形態のバルブ11、13、真
空ポンプ12にそれぞれ対応する。
【0035】
脱気槽80内には、円板状のステージ84が吐出受面841である平滑な上面を略水平
にして中位の高さに静止配置されている。吐出受面841は第1実施形態と同様に撥水性
の素材で形成すると好適である。脱気槽80内には、図6及び図7に示すように、ステー
ジ84の中心を貫通するように上下方向に支柱85が立設され、支柱85はステージ84
を固定して支持している。ステージ84の吐出受面841には、移送管50の外径よりも
僅かに大きい径を有する貫通孔842が形成されている。脱気槽80内には移送管40が
導入されており、移送管40の先端(他端)は吐出受面841の中心に近い位置まで延ば
され、移送管40で移送される液晶を前記先端から吐出受面841の中心近傍に滴下可能
である。また、脱気槽80内の下部には脱気された液晶72が貯溜され、気泡が集まりや
すい液面を避けるようにして、脱気槽80の底部近傍、即ち脱気槽80内に貯溜される液
晶72の底部近傍に移送管50の一端が配置されている。移送管50は貫通孔842に挿
通されて上方へ延ばされ、脱気槽80から導出されている。
【0036】
脱気槽80で脱気処理を行う際には、真空ポンプ82の駆動等で脱気槽80内を減圧状
態にし、移送管40で移送した脱気前の液晶を移送管40の先端から吐出受面841の中
心近傍に吐出する。液晶の吐出量は、所要レベルの脱気が行える範囲であれば適宜である
が、例えば200ml/時間程度の速度で吐出させると好ましい。前記吐出された液晶は
、図7の二点鎖線矢印の如く、吐出受面841に沿って前記中心近傍から吐出受面841
の外周縁に向かって放射状に拡がるように流れ、表面積を拡大して流れるので脱気が促進
される。そして、ステージ84の外周縁や貫通孔842から下方へ落下し、脱気槽80内
の下部に貯溜される。この際、前記貫通孔842に挿通されている移送管50の外周面に
液晶が付着し、液晶は、前記外周面を落下面として、前記外周面を伝って表面積を拡大し
ながら落下するので、ここでも液晶と減圧雰囲気との接触面積と接触時間が増加して脱気
が促進される。その後、脱気槽80に貯溜された液晶72は移送管50から移送される。
尚、脱気槽80も、例えば図3の液晶移送ラインの供給槽30より前に脱気槽10と同様
に設置する等、適宜の液晶移送ラインに於いて、液晶装置の半製品に液晶を供給する供給
槽より前の適宜箇所に配置することが可能である。
【0037】
[実施形態の変形例等]
本明細書に開示の発明は、上記課題解決手段の各発明の構成を一部変更したもの、或い
は各発明の構成を一部削除して上位概念化したものを包含するものであり、例えば以下の
ような上記実施形態等に種々の変更を加えたものも包含する。
【0038】
上記ステージ14、84の吐出受面141、841、又は、受部17の側周壁174の
内周面若しくは移送管50の外周面等の液晶が伝って沿うように落下する落下面など、減
圧雰囲気と接触しながら液晶が沿うように流れる接触促進面の形状は平滑面としたが、こ
れに限定されず、例えば接触促進面の部分領域若しくは全体領域に凹凸を形成すると、表
面積の大きい状態での液晶と減圧雰囲気との接触時間を増加できて良好である。前記凹凸
は、例えば液晶の流れが乗り越えられるように、凸条若しくは突起など微細な凸部、凹溝
若しくは窪みなど微細な凹部を形成する構成、又は、起伏となる凸部若しくは凹部を形成
する構成とすることが好ましく、更に、凸部若しくは凹部とその他の領域とが曲面状に連
続する形状とすると、乱流化を抑制し液晶の流れをスムーズにできて好適である。また、
凹凸の形成パターンは適宜であるが、所定ピッチの連続パターンとすることが好ましく、
例えば凸条を格子状に形成する構成、或いは吐出箇所から略同心円状に所定ピッチで凸条
を形成する構成とするとよい。図8はステージ14の吐出受面141に所定ピッチで格子
状の凸条142を形成した例である。また、凸条・突起など凸部の高さ、又は、凹溝・窪
みなど凹部の深さは、吐出受面141、841など接触促進面に沿って流れる液晶の厚さ
より小さくするか略同一とすると好適であり、例えば1mm前後の厚さで液晶が流れる場
合には0mm超1mm以下とすることが好ましい。
【0039】
また、本発明の接触促進部は、略面状の接触促進面に限定されず、例えば吐出受面84
1等に形成した液晶が沿うように流れる溝状の接触促進経路としてもよい。接触促進経路
の形状は、渦巻状の経路や、蛇行経路など適宜である。図9は吐出受面841に接触促進
経路として渦巻状の溝経路843を形成した例であり、吐出受面841の中心近傍に位置
する溝経路843の一端付近に液晶を滴下し、溝経路843に沿って液晶を流し、吐出受
面841の外周縁と接する溝経路843の他端から液晶を落下する構成である。前記溝経
路843は、その一端から他端へ漸次低くなるように底面を傾斜させると、粘性を有する
液晶が流れやすくなり好適である。
【0040】
また、本発明の液晶脱気装置で脱気する液晶の種類は限定されず、ネマティック液晶、
スメクティック液晶、コレステリック液晶など適宜である。また、本発明の液晶脱気装置
は、常温の液晶を脱気する構成に限定されず、昇温した液晶を脱気する構成としてもよく
、昇温した液晶を脱気することにより、液晶の粘度を低下させ、脱気処理の速さを高める
ことができる。液晶を昇温する場合には、例えば図3の貯溜槽20にヒーターを設け、貯
溜槽20の液晶71を昇温して、移送管40を介して脱気槽10内に吐出する構成とする
。液晶を昇温する際の上限温度は、液晶の成分が変化する温度未満の所定温度とし、例え
ば60℃程度とする。また、本発明の液晶脱気装置、例えば貯溜部18や、脱気槽80内
の下部には、貯溜する液晶72の液面の上限と下限を認知するレベルセンサを設け、レベ
ルセンサの認知情報をディスプレイ装置やスピーカ装置など各種装置に送って報知する構
成とすることが好ましい。前記前記レベルセンサを設ける場合には、移送管50の一端は
前記レベルセンサの下限液面より下側に設けることが好ましい。
【0041】
また、脱気した液晶が供給される液晶装置の半製品は適宜であり、例えば図4の液晶セ
ル60の基板62又は61を貼り合わせる前の状態、即ち、略額縁状にシール材63が形
成された基板61又は62としてもよい。この場合、基板61又は62のシール材63で
囲まれた領域内にディスペンサ34から所定ピッチで液晶を滴下し、その後に基板62又
は61を貼り合わせる滴下注入法で液晶を充填する。液晶装置の半製品に液晶を供給する
手段はディスペンサ34以外にも適宜であり、例えば図3で供給槽30にディスペンサ3
4に代えて浸漬槽を設けてもよい。前記浸漬槽で液晶を充填する場合には、供給槽30を
減圧状態としながら前記浸漬槽に移送管50で液晶を供給し、液晶セル60の液晶充填口
631を前記浸漬槽内の液晶溜まりに浸漬し、その後にバルブ33を開放して大気に開放
し、供給槽30の大気圧と液晶セル60の空間66の減圧状態の圧力との圧力差により、
液晶充填口631から空間66内に液晶を注入する真空注入法で液晶を充填する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態の液晶脱気装置を示す断面説明図である。
【図2】図1の液晶脱気装置のステージを示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の液晶脱気装置を有する液晶移送ラインの例を示す模式構成図である。
【図4】(a)は図4の液晶移送工程の供給槽で液晶が滴下される液晶セルを示す平面構成図、(b)はそのA−A線矢視断面図である。
【図5】図3の液晶移送ラインの液晶移送・脱気処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の液晶脱気装置を示す断面説明図である。
【図7】図5の液晶脱気装置のステージを示す斜視図である。
【図8】(a)は吐出受面の変形例を示す平面図、(b)は同図(a)の吐出受面を有するステージの部分縦断面である。
【図9】吐出受面の他の変形例を示す平面図。
【符号の説明】
【0043】
10、80…脱気槽 11、13、81、83…バルブ 12、82…真空ポンプ 14
、84…ステージ 141、841…吐出受面 142…凸条 843…溝経路 15…
回転軸 16…モータ 17…受部 171…軸穴 172…流路 173…底部 17
4…側周壁 175…底板 18…貯溜部 842…貫通孔 85…支柱 20…貯溜槽
30…供給槽 31、33…バルブ 32…真空ポンプ 34…ディスペンサ 40、
50…移送管 41、51…バルブ 60…液晶セル 61、62…基板 63…シール
材 631…液晶充填口 64、65…配向膜 66…空間 71、72、73…液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶を減圧雰囲気下で脱気する脱気槽と、
前記脱気槽内に吐出された液晶が前記減圧雰囲気と接触しながら沿うように流れ、前記
減圧雰囲気と液晶との接触を促進する接触促進部とを備えることを特徴とする液晶脱気装
置。
【請求項2】
前記接触促進部として、前記吐出された液晶が略放射状に拡がるように流れる吐出受面を
有することを特徴とする請求項1記載の液晶脱気装置。
【請求項3】
前記吐出受面を回転させ、前記吐出受面の中心近傍に液晶を吐出することを特徴とする
請求項2記載の液晶脱気装置。
【請求項4】
前記吐出受面の回転速度を600〜1500rpmとすることを特徴とする請求項3記
載の液晶脱気装置。
【請求項5】
前記吐出受面を撥水性の素材で形成することを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載
の液晶脱気装置。
【請求項6】
前記接触促進部として、前記吐出された液晶が伝って落下する落下面を有することを特
徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液晶脱気装置。
【請求項7】
前記吐出受面若しくは前記落下面若しくはその双方の少なくとも一部に凹凸を形成する
ことを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の液晶脱気装置。
【請求項8】
前記接触促進部として、前記吐出された液晶が流れる溝経路を有することを特徴とする
請求項1〜7の何れかに記載の液晶脱気装置。
【請求項9】
前記脱気槽内に吐出される液晶が常温より昇温されていることを特徴とする請求項1〜
8の何れかに記載の液晶脱気装置。
【請求項10】
減圧雰囲気下に液晶を吐出し、前記吐出した液晶を前記減圧雰囲気と接触させながら接
触促進部に沿うように流して、前記減圧雰囲気と液晶との接触を促進することを特徴とす
る液晶脱気方法。
【請求項11】
請求項1〜9の何れかに記載の液晶脱気装置で脱気した液晶を液晶装置に充填すること
を特徴とする液晶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−139384(P2008−139384A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323102(P2006−323102)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】