説明

液晶表示モジュール

【課題】輝度を低下させることなく広視野角化を促進でき、かつ構造の簡易性及び低コスト性を有する液晶表示モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、液晶表示素子の裏面側に重設される面光源のバックライトとを備え、裏面側偏光板の透過軸方向の角度が±(1/4)πである方形の液晶表示モジュールであって、液晶表示素子及びバックライト間に重設される視野角拡大シートを備え、視野角拡大シートが光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有し、基材フィルムの結晶軸方向の角度が下記(I)又は(II)で示される数値εを中心として±(1/8)πの範囲内であることを特徴とする。
(I)透過軸方向角度が−(1/4)πの場合、ε=(1/8)π∨−(3/8)π
(II)透過軸方向角度が+(1/4)πの場合、ε=−(1/8)π∨(3/8)π

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビジョン、コンピューター用液晶ディスプレイ等に用いられる液晶表示モジュールに関し、詳細には視野角特性、特に視野角に応じる輝度均一性を有する液晶表示モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示モジュール(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。
【0003】
従来の一般的な液晶表示モジュールは、図12に示すように、液晶表示素子51、各種光学シート52及びバックライト53が表面側から裏面側にこの順に重畳された構造を有している。液晶表示素子51は、一対の偏光板54,55間に液晶セル56が挟持された構造を有し、TN等の様々な表示モードが提案されている。バックライト53は、液晶表示素子51を裏面側から照らして発光させるものであり、エッジライト型、直下型など形態が普及している。各種光学シート52は、液晶表示素子51及びバックライト53間に重畳されており、バックライト53の表面から出射された光線を効率良くかつ均一に液晶表示素子51全面に入射させるべく、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有する光拡散シート、プリズムシート等を備えている。
【0004】
近年、液晶表示モジュールに要求される特性は、用途により様々であるが、明るい(高輝度化)、見やすい(広視野角化)、省エネルギー化、薄型軽量化等が挙げられ、特に高輝度化及び広視野角化についての要求が高くなっている。視野角とは実用上のコントラストが得られる範囲の画面法線に対する目線の角度をいい、液晶表示モジュールでは画面を見る角度の拡大に応じて透過率の変動及び逆転現象が生じ、原画像を良好に再現できなくなる不都合がある。
【0005】
上記従来の液晶表示モジュールにおいて、広視野角化を図る技術としては、(a)液晶表示素子51にIPS方式(横電界モード駆動方式)等の視野角特性に優れる表示モードを採用する技術(例えば特開平7−134301号公報等参照)、(b)偏光板54,55と液晶セル56との間に光学的位相差補償フィルムを積層する技術(例えば特開平2−91612号公報等参照)、(c)液晶表示素子51の表面側にマイクロレンズアレイ等の光学アレイ体を積層する技術(例えば特開平10−48628号公報等参照)などが開発されている。
【0006】
上記(a)のIPS方式等の表示モードの改善は、製造工程が複雑になる、消費電力が大きくなる等の不都合がある。上記(b)の光学的位相差補償フィルムでは、TN方式の液晶層で生じる変調を完全に補償することができず、十分な視角が得られていない。上記(c)の光学アレイ体を積層する技術は、画像を形成する出射光線を拡散させるため、画像の鮮明度、細密度等が低下するおそれがある。加えて、上記(a)〜(c)の技術は、製造コストの増大を招来し、低価格化の社会的要請に反する。
【特許文献1】特開平7−134301号公報
【特許文献2】特開平2−91612号公報
【特許文献3】特開平10−48628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、輝度の低下を抑制しつつ広視野角化を促進でき、かつ構造の簡易性及び低コスト性を有する液晶表示モジュールの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、液晶表示素子とバックライトとの間に重設される光学シート(光学フィルム)の結晶軸方向及びその結晶軸方向とヘイズ値とのバランスに着目し、かかる光学シートの結晶軸方向及びヘイズ値が視野角特性に及ぼす影響を鋭意検討した結果、液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が±(1/4)πである方形の液晶表示モジュールの場合に光学シートの結晶軸方向及びヘイズ値が特定の範囲で視野角特性が向上することを見出した。
【0009】
その結果、上記課題を解決するためになされた発明は、
一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、
上記液晶表示素子の裏面側に重設される面光源のバックライトとを備え、
上記液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が±(1/4)πである方形の液晶表示モジュールであって、
上記液晶表示素子及びバックライト間に重設される視野角拡大シートを備えており、
この視野角拡大シートが光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有し、
この基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度が下記(I)又は(II)で示される数値εを中心として±(1/8)πの範囲内であることを特徴とする。
(I)上記透過軸方向角度が−(1/4)πの場合、ε=(1/8)π∨−(3/8)π
(II)上記透過軸方向角度が+(1/4)πの場合、ε=−(1/8)π∨(3/8)π
当該液晶表示モジュールは、液晶表示素子及びバックライト間に視野角拡大シートを備え、この視野角拡大シートが光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有し、この基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度を上記数式(I)及び数式(II)で計算される数値εを中心とした±(1/8)πの範囲内とすることで、輝度の低下を抑制しつつ視野角を拡大することができる。そのため、当該液晶表示モジュールは、液晶表示素子及びバックライト間に視野角拡大シートを重設する簡易な構造で、今日社会的に要請されている広視野角化及び高輝度化を促進し、ひいては低コスト化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【0010】
当該液晶表示モジュールにおいて、上記基材フィルムの結晶軸方向のうち進相軸方向の短辺方向に対する角度が下記(III)又は(IV)で示される数値εを中心として±(1/8)πの範囲内であることが好ましい。
(III)上記透過軸方向角度が−(1/4)πの場合、ε=(1/8)π
(IV)上記透過軸方向角度が+(1/4)πの場合、ε=−(1/8)π
このように視野角拡大シートの進相軸方向を基準とし、その進相軸方向の短辺方向に対する角度を上記(III)又は(IV)で示される数値εを中心として決定すると、上述の広視野角化をより促進することができる。
【0011】
上記視野角拡大シートは、液晶表示素子の裏面直下に重設するとよい。このように当該視野角拡大シートを液晶表示素子の直下に積層することで、上述の広視野角化を効果的に促進することができる。
【0012】
上記視野角拡大シートは、基材フィルムの一方の面に積層される光学機能層を有するとよい。種々の光学機能層を有する光学シート(例えば光拡散シート、マイクロレンズシート、プリズムシート等)は通常液晶表示素子及びバックライト間に備えられていることから、当該手段のように一般的に備えられる光学シートの基材フィルムとして上述の視野角拡大機能を有する当該基材フィルムを使用することで、新たな光学シートを追加することなく広視野角化ひいては高輝度化、低コスト化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【0013】
上記光学機能層としては、(a)複数の光拡散剤とそのバインダーとを有するもの(光拡散シートの光拡散層)や、(b)屈折性を有する微小な凹凸形状を有するもの(例えばプリズムシートのプリズム部層、マイクロレンズシートのマイクロレンズアレイ層等)とすることができる。かかる光拡散シートやプリズムシートなどは通常液晶表示モジュールに使用されているため、光学シートの装備枚数の増大を招来することなく、上述の広視野角化が達成され、ひいては高輝度化、低コスト化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【0014】
上記光学機能層が積層される視野角拡大シートのヘイズ値としては10%以上44%以下又は80%以上が好ましい。このように視野角拡大シートのヘイズ値を上記範囲とすることで、上述の広視野角化を効果的に促進し、さらに高輝度化を促進することができる。
【0015】
上記視野角拡大シートは、基材フィルムの他方の面に積層され、バインダー中にビーズが分散するスティッキング防止層を有するとよい。このように視野角拡大シートにおける光学機能層と反対側の面にスティッキング防止層を備えることで、当該視野角拡大シートと裏面側に配設されるプリズムシート等とのスティッキングが防止され、輝度均一性等の品質を向上することができる。
【0016】
上記バックライトとしてエッジライト型バックライトを用い、このエッジライト型バックライトのランプを長辺方向と平行に配設するとよい。このようにエッジライト型バックライトのランプ方向を長辺方向と平行(短辺方向と垂直)とすることで、当該視野角拡大シートによる上述の広視野角化を効果的に機能させることができる。これは、エッジライト型バックライトがライトと平行方向と垂直方向とで比較的大きな偏光特性を有しているためと推定される。
【0017】
当該液晶表示モジュールにおいて、上記液晶表示素子とバックライトとの間に他の光学シートを備える場合、この他の光学シートの基材フィルムとしては低リタデーションフィルムを使用するとよい。液晶表示モジュールには一般的に光拡散シート、プリズムシート等の複数枚の光学シートが装備される。このように複数枚の光学シートを備える場合、特定の一の光学シートの基材フィルムのみに上述の視野角拡大機能を付与し、他の光学シートは透過光線の偏光方向を変換しないようにすることで、上記視野角拡大機能の最適化及び制御性を促進することができる。
【0018】
上記他の光学シートをプリズムシートとし、このプリズムシートの稜線方向を短辺方向と直交させるとよい。このように稜線方向が短辺方向と直交するプリズムシートを液晶表示素子及びバックライト間に重設することで、上述の広視野角化、特に長辺方向の広視野角化を効果的に促進し、さらに高輝度化を促進することができる。
【0019】
なお、「視野角拡大シート」とは、基材フィルムのみからなる場合も含む概念である。「短辺方向を基準とした角度」は、表面側から見た平面上の角度であり、短辺方向を0として時計回りを+、反時計回りを−とした−(1/2)π〜+(1/2)πの角度を意味する。「角度を示す値の単位」は、特に指定しない限りラジアン(radian)単位である。「表面側」とは、液晶表示モジュールの又は液晶表示モジュールに組み込まれた際の表示の観察側を意味する。「裏面側」とは、「表面側」と反対側を意味する。「低リタデーションフィルム」とは、リタデーション値Reの絶対値が60nm以下のフィルムである。「リタデーション値Re」とは、当該基材フィルム表面の平面上の結晶軸方向のうち直交する進相軸方向及び遅相軸方向をx方向及びy方向、基材フィルムの厚さをd、x方向及びy方向の屈折率をnx及びny(nx≠ny)とし、Re=(ny−nx)dで計算される値である。「規定する各角度」、「平行」及び「直交」の概念は、厳密な角度の±5°以内程度許容される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の液晶表示モジュールは、液晶表示素子及びバックライト間に重設される視野角拡大シートの視野角拡大機能によって、今日社会的に要請されている広視野角化を促進でき、ひいては高輝度化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る液晶表示モジュールを示す模式的斜視図、図2(a)及び(b)は図1の液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板の透過軸方向(角度が−(1/4)πの場合)及び基材フィルムの結晶軸方向の関係を説明する模式的平面図、図3(a)及び(b)は図1の液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板の透過軸方向(角度が+(1/4)πの場合)及び基材フィルムの結晶軸方向の関係を説明する模式的平面図、図4は図1の液晶表示モジュールとは異なる形態に係る液晶表示モジュールを示す模式的斜視図、図5、図6及び図7は図1の液晶表示モジュールに備える視野角拡大シートとは異なる形態に係る視野角拡大シートを示す模式的断面図である。
【0022】
図1の液晶表示モジュール1は、液晶表示素子2、視野角拡大シート3及びバックライト4を備えている。かかる液晶表示素子2、視野角拡大シート3及びバックライト4(出光面)は、略同一かつ方形の平面形状を有し、表面側から裏面側にこの順に重畳されている。
【0023】
液晶表示素子2は、略平行にかつ所定間隔を開けて配設される表面側偏光板5及び裏面側偏光板6と、その間に挟持される液晶セル7とを有している。偏光板5,6は、特に限定されるものではなく、一般的にはヨウ素系偏光子、染料系偏光子、ポリエン系偏光子等の偏光子及びその両側に配置される二枚の透明保護膜から構成される。表面側偏光板5と裏面側偏光板6とは、互いの透過軸方向が直交するよう配設されている。
【0024】
液晶セル7は、透過する光量を制御する機能を有するものであり、公知の種々のものが採用される。液晶セル7は、一般的には基板、カラーフィルタ、対向電極、液晶層、画素電極、基板等からなる積層構造体である。この画素電極には、ITO等の透明導電膜が用いられている。液晶セル7の表示モードとしては、現在提案されている例えばTN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)等を用いることができる。
【0025】
バックライト4は、エッジライト型(サイドライト型ともいう)の面光源装置であり、液晶表示素子2を裏面側から照らして発光させるものである。バックライト4は、具体的には、長辺に該当する一端面(光入射面)側が厚くかつその対向端面側が薄い略楔形の断面形状を有する方形板状の導光板8、この導光板8の光入射面に沿って配設される線状のランプ9、導光板8の裏面側に配設される反射シート(図示していない)、ランプ9の側方(導光板8の光入射面側を除く)を囲繞するように配置されるリフレクタ(図示していない)、導光板8の光入射面の対向端面に被着された光反射膜、これらの構成要素を収納する上方開口ケーシング等を備えており、ランプ9から発せられた光線を導光板8表面全面から出光するよう構成されている。従って、バックライト4において、ランプ9の方向は長辺方向と平行(短辺方向と垂直)とされている。また、出光光線を法線方向側へ立ち上げるべく、導光板8として裏面に三角柱状のプリズム部が多条(ストライプ状)かつランプ9と垂直に形成されたプリズム導光板を用い、裏面側に三角柱状のプリズム部が多条かつランプ9と平行に形成された逆プリズムシートを導光板8の表面側に重畳した構成のバックライト4も提案されている。
【0026】
視野角拡大シート3は、良好な画像の形成可能な視野角を拡大する機能を有する光学シートであり、具体的には基材フィルム10を備えている。
【0027】
基材フィルム10は、方形に形成された樹脂製のフィルムである。当該基材フィルム10の形成材料としては、透明、特に無色透明の合成樹脂が用いられている。この合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等が挙げられる。中でも基材フィルム10としては、透明性、強度が高く、複屈折性の制御が容易なポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが好ましく、撓み性能が改善されたポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0028】
当該基材フィルム10の厚み(平均厚み)は、特には限定されないが、好ましくは10μm以上250μm以下、特に好ましくは20μm以上188μm以下とされている。当該基材フィルム10の厚みが上記範囲未満であると、加工の際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、当該基材フィルム10の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示モジュール1の輝度が低下してしまうことがあり、また液晶表示モジュール1の厚みが大きくなって薄型化の要求に反することにもなる。
【0029】
当該基材フィルム10は、光学的異方性を有しており、具体的には平面方向で屈折率が異なる複屈折性を有している。この複屈折性により当該基材フィルム10は、透過光線の偏光成分を意図する方向に変換し、視野角拡大機能を発揮していると思われる。
【0030】
当該基材フィルム10は、視野角拡大のために最適化された結晶軸方向を有している。かかる最適化された基材フィルム10の結晶軸方向(x,y)の角度は、裏面側偏光板6の透過軸方向mの角度に応じた図2及び図3に示す2パターンがある。
【0031】
図2に示すように裏面側偏光板6の透過軸方向mの短辺方向(図中「縦方向」)に対する角度βが−(1/4)πの場合、基材フィルム10の結晶軸方向(x,y)の短辺方向に対する角度αとしては、下記(I)で示す数値εを中心として±(1/8)πの範囲内とされており、±(1/16)πの範囲内が好ましい。具体的には、基材フィルム10の結晶軸方向(x,y)の角度αとしては、0以上(1/4)π以下又は−(1/2)π以上−(1/4)π以下とされており、(1/16)π以上(3/16)π以下又は−(7/16)π以上−(5/16)π以下が好ましい。
(I)ε=(1/8)π∨−(3/8)π [∨は「又は」を示す記号]
この場合、特に基材フィルム10の結晶軸方向(x,y)のうち進相軸方向xの短辺方向に対する角度αとしては、下記(III)で示す数値εを中心とした±(1/8)πの範囲内が好ましく、±(1/16)πの範囲内がより好ましい。このように視野角拡大シート3の結晶軸方向のうち進相軸方向xを基準とし、その進相軸方向xの短辺方向に対する角度αを下記(III)で示される数値εを中心として決定すると、上述の広視野角化をより促進することができる。
(III)ε=(1/8)π
一方、図3に示すように裏面側偏光板6の透過軸方向mの短辺方向に対する角度βが(1/4)πの場合、基材フィルム10の結晶軸方向(x,y)の短辺方向に対する角度αとしては、下記(II)で示す数値εを中心として±(1/8)πの範囲内とされており、±(1/16)πの範囲内が好ましい。具体的には、基材フィルム10の結晶軸方向(x,y)の角度αとしては、−(1/4)π以上0以下又は(1/4)π以上(1/2)π以下とされており、−(3/16)π以上−(1/16)π以下又は(5/16)π以上(7/16)π以下が好ましい。
(II)ε=−(1/8)π∨(3/8)π [∨は「又は」を示す記号]
この場合、特に基材フィルム10の結晶軸方向(x,y)のうち進相軸方向xの短辺方向に対する角度αとして、下記(IV)で示す数値εを中心とした±(1/8)πの範囲内が好ましく、±(1/16)πの範囲内がより好ましい。このように視野角拡大シート3の結晶軸方向のうち進相軸方向xを基準とし、その進相軸方向xの短辺方向に対する角度αを下記(IV)で示される数値εを中心として決定すると、上述の広視野角化をより促進することができる。
(IV)ε=−(1/8)π
当該基材フィルム10の製造方法としては、結晶軸角度αを上記数値範囲に制御できれば特に限定されるものではない。例えば、基材フィルム10の結晶軸角度αは、ポリエチレンテレフタレート等の一軸延伸加工における延伸力、温度等の調節や、二軸延伸フィルムの打ち抜き加工における抜き位置及び抜き角度の調節により、本発明の範囲に制御可能である。
【0032】
当該液晶表示モジュール1は、液晶表示素子2及びバックライト4間に視野角拡大シート3を備え、この視野角拡大シート3が光学的異方性がある樹脂製の基材フィルム10を有し、この基材フィルム10の結晶軸方向の短辺方向に対する角度αを上記所定範囲内とすることで、輝度の低下を抑制しつつ視野角を拡大することができる。そのため、当該液晶表示モジュール1は、液晶表示素子2及びバックライト4間に視野角拡大シート3を重設する簡易な構造で、今日社会的に要請されている広視野角化及び高輝度化を促進し、ひいては低コスト化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。また当該液晶表示モジュール1は、視野角拡大シート3を液晶表示素子2の直下に積層することで、上述の広視野角化を効果的に促進することができる。これは、エッジライト型バックライト4がランプ9と平行方向と垂直方向とで比較的大きな偏光特性を有し、基材フィルム10の特定の結晶軸方向によって透過光線の偏光成分を所定の方向に変換するためと推定される。
【0033】
図4の液晶表示モジュール11は、液晶表示素子2、視野角拡大シート3、プリズムシート12及びバックライト4を表面側からこの順に備えている。かかる液晶表示素子2、視野角拡大シート3及びバックライト4は、上記図1の液晶表示モジュール1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0034】
プリズムシート12は、基材層13と、この基材層13の表面に形成される多数の三角柱状のプリズム部14とを有している。この多数のプリズム部14は平行、等間隔かつ密に配設されており、プリズム部14の稜線方向は長辺方向と平行(短辺方向と垂直)でバックライト4のランプ9の方向と平行である。
【0035】
プリズムシート12の形成材料としては、上記基材フィルム10と同様の合成樹脂が用いられている。プリズムシート12の製造方法としては、特に限定されず、基材層13とプリズム部14とが一体成形されてもよく、別々に成形されてもよい。なお、基材層13としては、低リタデーションフィルムを使用するとよい。このようにプリズムシート12の基材層13として低リタデーションフィルムを用いことで、上述のような視野角拡大シート3による視野角拡大機能を阻害してしまうことを防止することができる。
【0036】
当該液晶表示モジュール11は、上記液晶表示モジュール1と同様に、液晶表示素子2及びバックライト4間に備える視野角拡大シート3の上記視野角拡大機能によって、輝度を維持しつつ視野角、特に長辺方向と平行の視野角を拡大することができる。また、当該液晶表示モジュール11は、液晶表示素子2及びバックライト4間に備えるプリズムシート12のプリズム部14の屈折作用によって、バックライト4から出射される光線を略法線方向にピークを示すように屈折し、正面輝度を向上することができる。従って、当該液晶表示モジュール11は、プリズムシート12による法線方向への屈折作用と視野角拡大シート3による視野角拡大機能とが相俟って、高輝度化及び広視野角化を共に促進することができる。
【0037】
当該液晶表示モジュール1、11において、液晶表示素子2とバックライト4との間に視野角拡大シート3(液晶表示モジュール11の場合は視野角拡大シート3及びプリズムシート12)に加えて、光拡散シート、マイクロレンズシート、プリズムシート等の他の光学シートを備えることができる。この他の光学シートの基材フィルムとしては、低リタデーションフィルムを使用するとよい。このように他の光学シートの基材フィルムとして低リタデーションフィルムを用い、他の光学シートが透過光線の偏光方向を変換しないようにすることで、上述の視野角拡大シート3による視野角拡大機能を阻害してしまうことを防止することができる。
【0038】
当該液晶表示モジュール1、11は、視野角拡大シート3に変えて図5の視野角拡大シート21を備えることができる。この視野角拡大シート21は、透過光線を拡散させる光拡散機能(詳細には、拡散させつつ法線方向側へ集光させる方向性拡散機能)を有する光拡散シートである。具体的には、視野角拡大シート21は、基材フィルム10と、この基材フィルム10の表面に積層される光学機能層(光拡散層)22とを備えている。
【0039】
光学機能層22は、基材フィルム10の表面に略均一に配設される複数の光拡散剤23と、その複数の光拡散剤23を固定するバインダー24とを備えている。かかる複数の光拡散剤23は、バインダー24で被覆されている。このように光学機能層22中に含有する複数の光拡散剤23によって光学機能層22を裏側から表側に透過する光線を均一に拡散させることができる。また、複数の光拡散剤23によって光学機能層22の表面に微細な凹凸が略均一に形成されている。このように視野角拡大シート21表面に形成される微細な凹凸のレンズ的屈折作用により、光線をより良く拡散させることができる。なお、光学機能層22の平均厚みは、特には限定されないが、例えば1μm以上30μm以下程度とされている。
【0040】
光拡散剤23は、光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、例えばシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。有機フィラーの材料としては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0041】
光拡散剤23の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、紡錘形状、針状、棒状、立方状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光拡散性に優れる球状のビーズが好ましい。
【0042】
光拡散剤23の平均粒子径の下限としては、1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましい。一方、光拡散剤23の平均粒子径の上限としては、50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。光拡散剤23の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散剤23によって形成される光学機能層22表面の凹凸が小さくなり、光拡散シートとして必要な光拡散性を満たさないおそれがある。逆に、光拡散剤23の平均粒子径が上記範囲を越えると、視野角拡大シート21の厚さが増大し、かつ、均一な拡散が困難になる。
【0043】
光拡散剤23の配合量(バインダー24の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては10部、特に20部、さらに50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、光拡散剤23の配合量が上記範囲未満であると、光拡散性が不十分となってしまい、一方、光拡散剤23の配合量が上記範囲を越えると光拡散剤23を固定する効果が低下することからである。なお、プリズムシートの表面側に配設される所謂上用光拡散シートの場合、高い光拡散性を必要とされないため、光拡散剤23の配合量としては10部以上40部以下、特に10部以上30部以下が好ましい。
【0044】
バインダー24は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。このバインダー24により基材フィルム10表面に光拡散剤23が略等密度に配置固定される。なお、バインダー24を形成するためのポリマー組成物は、基材ポリマーの他に例えば微小無機充填剤、硬化剤、帯電防止剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0045】
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光学機能層22を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダー24に用いられる基材ポリマー自体は、光線の透過性を高める観点から透明が好ましく、無色透明が特に好ましい。
【0046】
上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、又は水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー24は、耐候性が高く、光学機能層22の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0047】
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0048】
バインダー24を形成するポリマー組成物中に微小無機充填剤を含有するとよい。このようにバインダー24中に微小無機充填剤を含有することで、光学機能層22ひいては視野角拡大シート21の耐熱性が向上する。微小無機充填剤を構成する無機物としては、特に限定されるものではなく、無機酸化物が好ましい。無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。無機酸化物を構成する金属元素としては、例えば元素周期律表第2族〜第6族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表第3族〜第5族から選ばれる元素がさらに好ましい。特に、Si、Al、Ti及びZrから選択される元素が好ましく、金属元素がSiであるコロイダルシリカが、耐熱性向上効果及び均一分散性の面で微小無機充填剤として最も好ましい。また微小無機充填剤の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0049】
微小無機充填剤の平均粒子径の下限としては、5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。一方、微小無機充填剤の平均粒子径の上限としては50nmが好ましく、25nmが特に好ましい。これは、微小無機充填剤の平均粒子径が上記範囲未満では、微小無機充填剤の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなるためであり、逆に、平均粒子径が上記範囲を超えると、短波長の影響で白濁し、視野角拡大シート21の透明性を完全に維持することができなくなることからである。
【0050】
微小無機充填剤の基材ポリマー100部に対する配合量(無機物成分のみの配合量)の下限としては固形分換算で5部が好ましく、50部が特に好ましい。一方、微小無機充填剤の上記配合量の上限としては500部が好ましく、200部がより好ましく、100部が特に好ましい。これは、微小無機充填剤の配合量が上記範囲未満であると、視野角拡大シート21の耐熱性を十分に発現することができなくなってしまうおそれがあり、逆に、配合量が上記範囲を越えると、ポリマー組成物中への配合が困難になり、光学機能層22の光線透過率が低下するおそれがあることからである。
【0051】
上記微小無機充填剤としては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定微小無機充填剤を用いることで、バインダー24中での分散性やバインダー24との親和性の向上が図られる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
【0052】
なお、微小無機充填剤は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、微小無機充填剤のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
【0053】
上記有機ポリマーにはアルコキシ基を含有するものを用いるとよく、その含有量としては有機ポリマーを固定した微小無機充填剤1g当たり0.01mmol以上50mmol以下が好ましい。かかるアルコキシ基により、バインダー24を構成するマトリックス樹脂との親和性や、バインダー24中での分散性を向上させることができる。
【0054】
上記アルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。このRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。微小無機充填剤を構成する金属と同一の金属アルコキシ基を用いるのが好ましく、微小無機充填剤がコロイダルシリカである場合には、シリコンを金属とするアルコキシ基を用いるのが好ましい。
【0055】
有機ポリマーを固定した微小無機充填剤中の有機ポリマーの含有率については、特に制限されるものではないが、微小無機充填剤を基準にして0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0056】
微小無機充填剤に固定する上記有機ポリマーとして水酸基を有するものを用い、バインダー24を構成するポリマー組成物中に水酸基と反応するような官能基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種のものを含有するとよい。これにより、微小無機充填剤とバインダー24のマトリックス樹脂とが架橋構造で結合され、保存安定性、耐汚染性、可撓性、耐候性、保存安定性等が良好になり、さらに得られる被膜が光沢を有するものとなる。
【0057】
上記基材ポリマーとしてはシクロアルキル基を有するポリオールが好ましい。このように、バインダー24を構成する基材ポリマーとしてのポリオール中にシクロアルキル基を導入することで、バインダー24の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での当該視野角拡大シート21の耐撓み性、寸法安定性等が改善される。また、光学機能層22の耐候性、硬度、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、表面に有機ポリマーが固定された微小無機充填剤との親和性及び微小無機充填剤の均一分散性がさらに良好になる。
【0058】
上記シクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
【0059】
上記シクロアルキル基を有するポリオールは、シクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体を共重合することで得られる。このシクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。この重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
また、ポリマー組成物中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにポリマー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、より一層強固な架橋構造となり、光学機能層22の被膜物性がさらに向上する。このイソシアネートとしては上記多官能イソシアネート化合物と同様の物質が用いられる。中でも、被膜の黄変色を防止する脂肪族系イソシアネートが好ましい。
【0061】
特に、基材ポリマーとしてポリオールを用いる場合、ポリマー組成物中に配合する硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、イソフロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートのいずれか1種もしくは2種以上混合して用いるとよい。これらの硬化剤を用いると、ポリマー組成物の硬化反応速度が大きくなるため、帯電防止剤として微小無機充填剤の分散安定性に寄与するカチオン系のものを使用しても、カチオン系帯電防止剤による硬化反応速度の低下を十分補うことができる。また、かかるポリマー組成物の硬化反応速度の向上はバインダー中への微小無機充填剤の均一分散性に寄与する。その結果、当該視野角拡大シート21は熱、紫外線等による撓みや黄変を格段に抑制することができる。
【0062】
また、上記ポリマー組成物中に紫外線吸収剤を含有するとよい。このように紫外線吸収剤を含有するポリマー組成物からバインダー24を形成することで、当該視野角拡大シート21に紫外線カット機能が付与され、バックライトユニットのランプから発せられる微量の紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止することができる。
【0063】
かかる紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収し、効率よく熱エネルギーに変換できるもので、かつ、光に対して安定な化合物であれば特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。中でも、紫外線吸収機能が高く、上記基材ポリマーとの相溶性が良好で、基材ポリマー中に安定して存在するサリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。また、紫外線吸収剤としては、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマー(例えば、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズなど)も好適に使用される。この分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを用いることで、バインダー24の主ポリマーとの相溶性が高く、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。なお、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーをバインダー24の基材ポリマーとすることも可能である。また、この紫外線吸収基が結合されたポリマーをバインダー24の基材ポリマーとし、さらにこの基材ポリマー中に紫外線吸収剤を含有することも可能であり、紫外線吸収機能をより向上させることができる。
【0064】
バインダー24の基材ポリマーに対する上記紫外線吸収剤の含有量の下限としては0.1質量%、特に1質量%、さらに3質量%が好ましく、紫外線吸収剤の上記含有量の上限としては10質量%、特に8質量%、さらに5質量%が好ましい。これは、基材ポリマーに対して紫外線吸収剤の質量比が上記下限より小さいと、視野角拡大シート21の紫外線吸収機能を効果的に奏することができないためであり、逆に、紫外線吸収剤の質量比が上記上限を超えると、基材ポリマーに悪影響を及ぼし、バインダー24の強度、耐久性等の低下をもたらすことからである。
【0065】
上記紫外線吸収剤に代え又は紫外線吸収剤と共に、紫外線安定剤(分子鎖に紫外線安定基が結合した基材ポリマーを含む)を使用することも可能である。この紫外線安定剤により、紫外線で発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。この紫外線安定剤としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤が好適に用いられる。なお、紫外線吸収剤と紫外線安定剤を併用することで、紫外線による劣化防止及び耐候性が格段に向上する。
【0066】
さらに、ポリマー組成物中に帯電防止剤を混練するとよい。このように帯電防止剤が混練されたポリマー組成物からバインダー24を形成することで、当該視野角拡大シート21に帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、プリズムシート等との重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。また帯電防止剤を表面にコーティングすると表面のベタツキや汚濁が生じてしまうが、このようにポリマー組成物中に混練することでかかる弊害は低減される。かかる帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、帯電防止効果が比較的大きいカチオン系帯電防止剤が好ましく、少量の添加で帯電防止効果が奏される。
【0067】
次に、当該視野角拡大シート21の製造方法を説明する。当該視野角拡大シート21の製造方法は、(a)バインダー24を構成するポリマー組成物に光拡散剤23を混合することで光学機能層用組成物を製造する工程と、(b)光学機能層用組成物を基材フィルム10の表面に積層し、硬化させることで光学機能層22を形成する工程とを有する。上記光学機能層用組成物を基材フィルム10に積層する手段としては、特に限定されるものではなく、例えばバーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷等を用いたコーティング等が採用される。
【0068】
当該視野角拡大シート21は、光学機能層22中に含有する光拡散剤23の界面での反射や屈折及び光学機能層22表面に形成される微細凹凸での屈折により、高い光拡散機能(方向性拡散機能)を有している。また、当該視野角拡大シート21は、上記視野角拡大シート3と同様に、所定の結晶軸方向を有する基材フィルム10によって上記視野角拡大機能を有している。従って、当該視野角拡大シート21を備える液晶表示モジュールは、光学機能層22による光拡散機能と基材フィルム10による視野角拡大機能とが相俟って高輝度化及び広視野角化を共に促進することができる。なお、光拡散シートは通常液晶表示モジュールに使用されているため、当該視野角拡大シート21を用いる液晶表示モジュールは、光学シートの装備枚数の増大を招来することなく、上述の視野角拡大機能が付与され、ひいては高輝度化、低コスト化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。
【0069】
当該視野角拡大シート21のヘイズ値としては、広視野角化の観点からは10%以上44%以下又は80%以上が好ましく、この広視野角化に加えて高輝度化を考慮すると10%以上44%以下が好ましく、25%以上35%以下が特に好ましい。当該視野角拡大シート21のヘイズ値を上記範囲とすることで、視野角拡大機能が格段に増大し、加えて正面輝度も高められる。なお、本明細書中の「ヘイズ値」は、JIS−K−7105に準拠して測定された値である。
【0070】
当該液晶表示モジュール1、11は、視野角拡大シート3に変えて図6の視野角拡大シート31を備えることができる。この視野角拡大シート31は、透過光線を拡散させる光拡散機能(詳細には、拡散させつつ法線方向側へ集光させる方向性拡散機能)を有する光拡散シートである。具体的には、視野角拡大シート31は、基材フィルム10と、この基材フィルム10の表面に積層される光学機能層(光拡散層)22と、基材フィルム10の裏面に積層されるスティッキング防止層32とを備えている。この基材フィルム10は上記視野角拡大シート3と同様であり、光学機能層22は上記視野角拡大シート21と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0071】
スティッキング防止層32は、基材フィルム10の裏面に散点的に配設される複数のビーズ33と、この複数のビーズ33を固定するバインダー34とを備えている。このバインダー34も、上記光学機能層22のバインダー24と同様のポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。また、ビーズ33の材料としては光学機能層22の光拡散剤23と同様のものが用いられる。なお、このスティッキング防止層32の厚み(ビーズ33が存在しない部分でのバインダー34部分の厚み)は特には限定されないが、例えば1μm以上10μm以下程度とされている。
【0072】
このビーズ33の配合量は比較的少量とされ、ビーズ33は互いに離間してバインダー34中に分散している。また、ビーズ33部分で当該視野角拡大シート31の下面に凸部が形成されている。そのため、視野角拡大シート31を導光板等に積層すると、突出したビーズ33部分が導光板等の表面に当接し、視野角拡大シート31の裏面全面が導光板等と当接することがない。これにより、視野角拡大シート31と導光板等とのスティッキングが防止され、液晶表示モジュールの画面の輝度ムラが抑えられる。
【0073】
次に、当該視野角拡大シート31の製造方法を説明する。当該視野角拡大シート31の製造方法は、上記視野角拡大シート21と同様の方法で光学機能層22が形成され、加えて(c)バインダー34を構成するポリマー組成物にビーズ33を混合することでスティッキング防止層用組成物を製造する工程と、(d)スティッキング防止層用組成物を基材フィルム10の裏面に積層し、硬化させることでスティッキング防止層32を積層する工程とを有する。上記スティッキング防止層用組成物を基材フィルム10に積層する手段としては、上記光学機能層22と同様の積層手段が採用される。
【0074】
当該視野角拡大シート31は、上記視野角拡大シート21と同様に、光学シートの装備枚数の増大を招来することなく、光学機能層22による光拡散機能と基材フィルム10による視野角拡大機能とが相俟って液晶表示モジュールの高輝度化及び広視野角化を共に促進することができ、加えて低コスト化、省エネルギー化及び薄型軽量化を促進することができる。また、当該視野角拡大シート31は、スティッキング防止層32によって導光板等とのスティッキングが防止される結果、液晶表示モジュールの画面の輝度ムラが抑えられ、ひいては液晶表示モジュールの広視野角化に寄与する。
【0075】
当該液晶表示モジュール1、11は、視野角拡大シート3に変えて図7の視野角拡大シート41を備えることができる。この視野角拡大シート41は、高い集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有する所謂マイクロレンズシートである。視野角拡大シート41は、基材フィルム10と、この基材フィルム10の表面に積層される光学機能層42とを備えている。この視野角拡大シート41の基材フィルム10は、上記視野角拡大シート3と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0076】
光学機能層42は、基材フィルム10表面に積層されるシート状部43と、このシート状部43の表面に形成されるマイクロレンズアレイ44とを備えている。なお、光学機能層42は、シート状部43が存在せず、マイクロレンズアレイ44のみから構成することも可能である。つまり、基材フィルム10の表面に直接マイクロレンズアレイ44を形成することも可能である。
【0077】
光学機能層42は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。光学機能層42に用いられる合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル、活性エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。中でも、マイクロレンズアレイ44の成形性に優れる紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂や透明性及び強度に優れるポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。なお、光学機能層42には、上記の合成樹脂の他、例えばフィラー、可塑剤、安定化剤、劣化防止剤、分散剤等が配合されてもよい。
【0078】
マイクロレンズアレイ44は、多数のマイクロレンズ45から構成されている。マイクロレンズ45は、半球状(半球に近似した形状を含む)とされ、基材フィルム10の表面側に突設されている。なお、マイクロレンズ45は、上記半球状凸レンズに限定されず、半球状凹レンズのマイクロレンズも可能である。かかる半球状凹レンズのマイクロレンズも、上記マイクロレンズ45と同様の優れた光学的機能を有する。
【0079】
マイクロレンズ45は、基材フィルム10の表面に比較的密にかつ幾何学的に配設されている。具体的にはマイクロレンズ45は、基材フィルム10の表面において正三角形格子パターンで配設されている。従って、マイクロレンズ45のピッチ(P)及びレンズ間距離(S)は全て一定である。この配設パターンは、マイクロレンズ45を最も密に配設することができる。なお、マイクロレンズ45の配設パターンとしては、稠密充填可能な上記正三角形格子パターンに限定されず、例えば正方形格子パターンやランダムパターンも可能である。このランダムパターンによれば、当該視野角拡大シート41を他の光学部材と重ね合わせた際にモアレの発生が低減される。
【0080】
マイクロレンズ45の直径(D)の下限としては、10μm、特に100μm、さらに特に200μmが好ましい。一方、マイクロレンズ45の直径(D)の上限としては、1000μm、特に700μmが好ましい。マイクロレンズ45の直径(D)が10μmより小さいと、回析の影響が大きくなり、光学的性能の低下や色分解が起こり易く、品質の低下を招来する。一方、マイクロレンズ45の直径(D)が1000μmを超えると、厚さの増大や輝度ムラが生じやすく、品質の低下を招来する。また、マイクロレンズ45の直径(D)を100μm以上とすることで、単位面積当たりのマイクロレンズ45が少なくなる結果、マイクロレンズシートである当該視野角拡大シート41の大面積化が容易になり、製造時の技術的かつコスト的な負担が軽減される。
【0081】
マイクロレンズ45の表面粗さ(Ra)の下限としては、0.01μmが好ましく、0.03μmが特に好ましい。一方、マイクロレンズ45の表面粗さ(Ra)の上限としては、0.1μmが好ましく、0.07μmが特に好ましい。このようにマイクロレンズ45の表面粗さ(Ra)を上記下限以上とすることで、当該視野角拡大シート41のマイクロレンズアレイ44の成形性が容易になり、製造面での技術的及びコスト的負担が軽減される。一方、マイクロレンズ45の表面粗さ(Ra)を上記上限未満とすることで、マイクロレンズ45表面での光の散乱が低減される結果、マイクロレンズ45による集光機能や法線方向側への屈折機能が高められ、かかる良好な光学的機能に起因して正面方向の高輝度化が図られる。
【0082】
マイクロレンズ45の高さ(H)の曲率半径(R)に対する高さ比(H/R)の下限としては、5/8が好ましく、3/4が特に好ましい。一方、この高さ比(H/R)の上限としては1が好ましい。このようにマイクロレンズ45の高さ比(H/R)を上記範囲とすることで、マイクロレンズ45におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該視野角拡大シート41の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0083】
マイクロレンズ45のレンズ間距離(S;P−D)の直径(D)に対する間隔比(S/D)の上限としては1/2が好ましく、1/5が特に好ましい。このようにマイクロレンズ45のレンズ間距離(S)を上記上限以下とすることで、光学的機能に寄与しない平坦部が低減され、当該視野角拡大シート41の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0084】
マイクロレンズ45の充填率の下限としては、40%が好ましく、60%が特に好ましい。このようにマイクロレンズ45の充填率を上記下限以上とすることで、当該視野角拡大シート41表面におけるマイクロレンズ45の占有面積を高め、当該視野角拡大シート41の集光等の光学的機能が格段に向上される。
【0085】
なお、上述した高さ比(H/R)、間隔比(S/D)及び充填率の数値範囲は、モンテカルロ法を用いたノンシーケンシャル光線追跡による輝度解析シミュレーションに基づいて導かれたものである。
【0086】
光学機能層42を構成する素材の屈折率の下限としては1.3が好ましく、1.45が特に好ましい。一方、この素材の屈折率の上限としては1.8が好ましく、1.6が特に好ましい。この範囲の中でも、光学機能層42を構成する素材の屈折率としては1.5が最も好ましい。このように光学機能層42を構成する素材の屈折率を上記範囲とすることで、マイクロレンズ45におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該視野角拡大シート41の集光等の光学的機能がさらに高められる。
【0087】
当該視野角拡大シート41の製造方法としては、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。当該視野角拡大シート41の製造方法としては、具体的には、
(a)マイクロレンズアレイ44表面の反転形状を有するシート型に合成樹脂及び基材フィルム10をこの順に積層し、シート型を剥がすこと当該視野角拡大シート41を形成する方法、
(b)シート化した樹脂を再加熱して基材フィルム10と共にマイクロレンズアレイ44表面の反転形状を有する金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(c)マイクロレンズアレイ44表面の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂及び基材フィルム10を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法、
(d)基材フィルム10に紫外線硬化型樹脂を塗布し、上記と同様の反転形状を有するシート型、金型又はロール型に押さえ付けて未硬化の紫外線硬化型樹脂に形状を転写し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(e)上記と同様の反転形状を有する金型又はロール型に未硬化の紫外線硬化性樹脂を充填塗布し、基材フィルム10で押さえ付けて均し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(f)未硬化(液状)の紫外線硬化型樹脂等を微細なノズルから基材フィルム10上にマイクロレンズ45を形成するよう射出又は吐出し、硬化させる方法、
(g)紫外線硬化型樹脂の代わりに電子線硬化型樹脂を使用する方法
などがある。
【0088】
なお、上記マイクロレンズアレイ44の反転形状を有する型(モールド)の製造方法としては、例えば基材上にフォトレジスト材料により斑点状の立体パターンを形成し、この立体パターンを加熱流動化により曲面化することでマイクロレンズアレイ模型を作製し、このマイクロレンズアレイ模型の表面に電鋳法により金属層を積層し、この金属層を剥離することで製造することができる。また、上記マイクロレンズアレイ模型の作製方法としては、上記(f)に記載の方法を採用することも可能である。
【0089】
上記製造方法によれば、任意形状のマイクロレンズアレイ44が容易かつ確実に形成される。従って、マイクロレンズアレイ44を構成するマイクロレンズ45の直径(D)、高さ比(H/R)、間隔比(S/D)、充填率等が容易かつ確実に調整され、その結果当該視野角拡大シート41の光学的機能が容易かつ確実に制御される。
【0090】
当該視野角拡大シート41は、マイクロレンズアレイ44によって高い集光、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有し、その光学的機能を容易かつ確実に制御することができる。また、当該視野角拡大シート21は、上記視野角拡大シート3と同様に、所定の結晶軸方向を有する基材フィルム10によって上記視野角拡大機能を有している。従って、当該視野角拡大シート41を備える液晶表示モジュールは、光学機能層42による拡散等の光拡散機能と基材フィルム10による視野角拡大機能とが相俟って高輝度化及び広視野角化を共に促進することができる。なお、当該視野角拡大シート41のヘイズ値としては、上記視野角拡大シート21と同様に、10%以上44%以下、特に25%以上35%以下が好ましく、広視野角化及び高輝度化をさらに促進することができる。
【0091】
ここで、上記「マイクロレンズ」とは、界面が部分球面状の微小レンズを意味し、例えば半球状凸レンズ、半球状凹レンズ等が該当する。「直径(D)」とは、マイクロレンズの基底又は開口の直径を意味する。「高さ(H)」とは、マイクロレンズが凸レンズの場合にはマイクロレンズの基底面から最頂部までの垂直距離、マイクロレンズが凹レンズの場合にはマイクロレンズの開口面から最底部までの垂直距離を意味する。「レンズ間距離」とは、隣り合う一対のマイクロレンズ間の最短距離を意味する。「充填率」とは、表面投影形状における単位面積当たりのマイクロレンズの面積比を意味する。「正三角形格子パターン」とは、表面を同一形状の正三角形に区分し、その正三角形の各頂点にマイクロレンズを配設するパターンを意味する。
【0092】
なお、本発明の液晶表示モジュールは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、当該視野角拡大シートの光学機能層としては、図5の光拡散層や図7のマイクロレンズアレイに限定されず、例えばストライプ状に配設される複数の三角柱状プリズム部、シリンドリカルレンズ部等の屈折性を有する微小な凹凸形状から構成することができる。つまり、例えばプリズムシート、レンズシート等の基材フィルムとして当該基材フィルム10を使用し、かかるプリズムシート等によって視野角拡大作用を奏するよう構成することも可能である。また、当該液晶表示モジュールに備える視野角拡大シートは、紫外線吸収剤層、トップコート層等の他の層が積層されてもよい。
【0093】
当該液晶表示モジュールは、上記エッジライト型バックライトに限定されるものではなく、直下型バックライトを採用することも可能であり、視野角拡大シートによる視野角拡大機能が奏される。
【0094】
上記マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズは、長軸を法線方向に向けた楕円面の部分的形状に形成するとよい。このように長軸を法線方向に向けた楕円面の部分的形状を有するマイクロレンズによれば、球面収差ひいては光線のロスが低減され、透過光線に対する正面側への集光機能、拡散機能、法線方向側への変角機能等の光学的機能が高められる。この楕円面の長軸半径(R)の短軸半径(R)に対する扁平比(R/R)としては、マイクロレンズの球面収差を効果的に低減する趣旨から、1.05以上1.7以下が好ましい。
【0095】
上記マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズは、長軸が所定の平面方向と略平行に位置する楕円面の部分的形状に形成してもよい。このように長軸が所定の平面方向と略平行に位置する楕円面の部分的形状を有するマイクロレンズによれば、光学的機能に異方性を有し、具体的にはマイクロレンズの長軸と平行方向の光学的機能より長軸と垂直方向の光学的機能が大きくなる。
【0096】
上記紫外線吸収剤及び帯電防止剤に関しては、上述の光学機能層22のバインダー24に含有する手段に替え又は当該手段と共に、紫外線吸収剤層又は帯電防止剤層を積層することも可能であり、スティッキング防止層32のバインダー34又は基材フィルム10中に紫外線吸収剤又は帯電防止剤を含有することも可能である。これらの手段によっても、当該視野角拡大シートに紫外線吸収機能又は帯電防止機能が発現される。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0098】
〈裏面側偏光板の透過軸方向の角度が−(1/4)πの場合の結晶軸角度による視野角特性評価実験〉
ポリエチレンテレフタレートを二軸延伸した原反から位置を変えて抜き取り、短辺方向に対する結晶軸方向(進相軸方向)の角度を−(1/2)πから+(1/2)πまで(1/16)πづつ変更した方形の基材フィルムを作成し、これらの基材フィルムの表面に透明樹脂ビーズを含有するポリマー組成物を塗工し、硬化させることで、ヘイズ値が30%の視野角拡大シートを作成した。
【0099】
一対の偏光板間にTN方式の液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、この液晶表示素子の裏面に重設されるプリズムシートと、このプリズムシートの裏面に重設される光拡散シートと、この光拡散シートの裏面に重設される図1と同様のエッジライト型バックライトとを備え、上記液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が−(1/4)πである方形の液晶表示モジュールを用い、上記液晶表示素子とプリズムシートとの間に当該各視野角拡大シートを積層し、所定視野角の輝度均一性比率を測定した。その結果を下記表1及び図8に示す。
【0100】
上記所定視野角の輝度均一性比率とは、TCO’03FPDのB.2.3.4「Luminance uniformity−angular dependence」の規定に準拠したものである。具体的には、今回の所定視野角の輝度均一性比率とは、画面の中心点を通る法線上に輝度計を配設し、画面の中心点を通る短辺方向軸(鉛直軸)を中心として輝度計を±30°回転し、この位置から画面のP点(画面の中心点を通る長辺方向(水平)の点で画面の左端から長辺距離の1/10中心側の点)及びP点(画面の中心点を通る長辺方向の点で画面の右端から長辺距離の1/10中心側の点)の輝度を測定し、最高輝度Lmaxの最低輝度Lminに対する比率(Lmax/Lmin)である。
【0101】
【表1】

【0102】
上記表1及び図8に示すように、裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が−(1/4)πの液晶表示モジュールにおいて、視野角拡大シートの基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度が0以上(1/4)π以下又は−(1/2)π以上−(1/4)π以下の場合に、所定視野角の輝度均一性比率が1.5以下となり、広視野角化が達成されている。特に、視野角拡大シートの基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度が(1/16)π以上(3/16)π以下又は−(7/16)π以上−(5/16)π以下の場合、所定視野角の輝度均一性比率が1.4以下となり、広視野角化がさらに促進されている。また、基材フィルムの結晶軸方向のうち進相軸方向の短辺方向に対する角度が0以上(1/4)π以下の場合の方が、−(1/2)π以上−(1/4)π以下の場合より広視野角化が若干高められている。従って、上述のように本発明で特定する視野角拡大シートの基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度の範囲の妥当性が実証されている。
【0103】
〈裏面側偏光板の透過軸方向の角度が+(1/4)πの場合の結晶軸角度による視野角特性評価実験〉
上記液晶表示モジュールと同様の構成で、液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が+(1/4)πである方形の液晶表示モジュールを用い、上記液晶表示素子とプリズムシートとの間に当該各視野角拡大シートを積層し、所定視野角の輝度均一性比率を測定した。その結果を下記表2及び図9に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
上記表2及び図9に示すように、裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が+(1/4)πの液晶表示モジュールにおいて、視野角拡大シートの基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度が−(1/4)π以上0以下又は(1/4)π以上(1/2)π以下の場合に、所定視野角の輝度均一性比率が1.5以下となり、広視野角化が達成されている。特に、視野角拡大シートの基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度が−(3/16)π以上−(1/16)π以下又は(5/16)π以上(7/16)π以下の場合、所定視野角の輝度均一性比率が1.4以下となり、広視野角化がさらに促進されている。また、基材フィルムの結晶軸方向のうち進相軸方向の短辺方向に対する角度が−(1/4)π以上0以下の場合の方が、(1/4)π以上(1/2)π以下の場合より広視野角化が若干高められている。従って、上述のように本発明で特定する視野角拡大シートの基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度の範囲の妥当性が実証されている。
【0106】
〈視野角拡大シートのヘイズ値及び所定視野角輝度均一性比率の関係評価実験〉
ポリエチレンテレフタレートを二軸延伸した原反から短辺方向に対する結晶軸方向(進相軸方向)の角度が(1/8)πの方形の基材フィルムを複数作成し、これらの基材フィルムの表面に透明樹脂ビーズを含有するポリマー組成物をビーズ含有率を変えて塗工し、硬化させることで、ヘイズ値が10%〜95%の視野角拡大シートを作成した。
【0107】
上記液晶表示モジュール(液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が−(1/4)π)を用い、上記液晶表示素子とプリズムシートとの間にヘイズ値が異なる当該各視野角拡大シートを積層し、所定視野角の輝度均一性比率及び正面輝度を測定した。その結果を下記表3に示し、ヘイズ値と所定視野角の輝度均一性比率との関係を図10に、ヘイズ値と正面輝度との関係を図11に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
上記表3、図10及び図11に示すように、視野角拡大シートのヘイズ値が10%以上44%以下の場合、所定視野角の輝度均一性比率が1.5以下及び正面輝度が460[cd/m]以上となり、広視野角化及び高輝度化が促進されている。特に、視野角拡大シートのヘイズ値が25%以上35%以下の場合、所定視野角の輝度均一性比率が1.4以下及び正面輝度が470[cd/m]以上となり、広視野角化及び高輝度化がさらに促進されている。また、視野角拡大シートのヘイズ値が80%以上の場合も、所定視野角の輝度均一性比率が1.5以下となり、広視野角化を図ることができるが、ヘイズ値が10%以上44%以下の場合と比較して正面輝度が低下する。従って、上述のように本発明で特定する視野角拡大シートのヘイズ値の範囲の妥当性が実証されている。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本発明の液晶表示モジュールは、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして有用であり、特に比較的大きな画面の情報用表示デバイスに用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示モジュールを示す模式的斜視図
【図2】(a)及び(b)は図1の液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板の透過軸方向(角度が−(1/4)πの場合)及び基材フィルムの結晶軸方向の関係を説明する模式的平面図
【図3】(a)及び(b)は図1の液晶表示モジュールにおける裏面側偏光板の透過軸方向(角度が+(1/4)πの場合)及び基材フィルムの結晶軸方向の関係を説明する模式的平面図
【図4】図1の液晶表示モジュールとは異なる形態に係る液晶表示モジュールを示す模式的斜視図
【図5】図1の液晶表示モジュールに備える視野角拡大シートとは異なる形態に係る視野角拡大シート(光拡散シート)を示す模式的断面図
【図6】図1の液晶表示モジュールに備える視野角拡大シートとは異なる形態に係る視野角拡大シート(光拡散シート)を示す模式的断面図
【図7】図1の液晶表示モジュールに備える視野角拡大シートとは異なる形態に係る視野角拡大シート(マイクロレンズシート)を示す模式的断面図
【図8】裏面側偏光板の透過軸方向の角度が−(1/4)πの場合の基材フィルムの結晶軸角度と所定視野角の輝度均一性比率との関係を示すグラフ
【図9】裏面側偏光板の透過軸方向の角度が+(1/4)πの場合の基材フィルムの結晶軸角度と所定視野角の輝度均一性比率との関係を示すグラフ
【図10】視野角拡大シートのヘイズ値と所定視野角の輝度均一性比率との関係を示すグラフ
【図11】視野角拡大シートのヘイズ値と正面輝度との関係を示すグラフ
【図12】一般的な液晶表示モジュールを示す模式的断面図
【符号の説明】
【0112】
1 液晶表示モジュール
2 液晶表示素子
3 視野角拡大シート
4 バックライト
5 表面側偏光板
6 裏面側偏光板
7 液晶セル
8 導光板
9 ランプ
10 基材フィルム
11 液晶表示モジュール
12 プリズムシート
13 基材層
14 プリズム部
21 視野角拡大シート
22 光学機能層
23 光拡散剤
24 バインダー
31 視野角拡大シート
32 スティッキング防止層
33 ビーズ
34 バインダー
41 視野角拡大シート
42 光学機能層
43 シート状部
44 マイクロレンズアレイ
45 マイクロレンズ
m 裏面側偏光板の透過軸方向
α 基材フィルムの結晶軸方向の角度
β 裏面側偏光板の透過軸方向の角度
x 基材フィルムの進相軸方向
y 基材フィルムの遅相軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の偏光板間に液晶セルを挟持してなる液晶表示素子と、
上記液晶表示素子の裏面側に重設される面光源のバックライトとを備え、
上記液晶表示素子の裏面側偏光板の透過軸方向の短辺方向に対する角度が±(1/4)πである方形の液晶表示モジュールであって、
上記液晶表示素子及びバックライト間に重設される視野角拡大シートを備えており、
この視野角拡大シートが光学的異方性がある樹脂製の基材フィルムを有し、
この基材フィルムの結晶軸方向の短辺方向に対する角度が下記(I)又は(II)で示される数値εを中心として±(1/8)πの範囲内であることを特徴とする液晶表示モジュール。
(I)上記透過軸方向角度が−(1/4)πの場合、ε=(1/8)π∨−(3/8)π
(II)上記透過軸方向角度が+(1/4)πの場合、ε=−(1/8)π∨(3/8)π
【請求項2】
上記基材フィルムの結晶軸方向のうち進相軸方向の短辺方向に対する角度が下記(III)又は(IV)で示される数値εを中心として±(1/8)πの範囲内である請求項1に記載の液晶表示モジュール。
(III)上記透過軸方向角度が−(1/4)πの場合、ε=(1/8)π
(IV)上記透過軸方向角度が+(1/4)πの場合、ε=−(1/8)π
【請求項3】
上記視野角拡大シートが液晶表示素子の裏面直下に重設されている請求項1又は請求項2に記載の液晶表示モジュール。
【請求項4】
上記視野角拡大シートが、基材フィルムの一方の面に積層される光学機能層を有している請求項1、請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。
【請求項5】
上記光学機能層が、複数の光拡散剤とそのバインダーとを有する請求項4に記載の液晶表示モジュール。
【請求項6】
上記光学機能層が、屈折性を有する微小な凹凸形状を有している請求項4に記載の液晶表示モジュール。
【請求項7】
上記視野角拡大シートのヘイズ値が10%以上44%以下又は80%以上である請求項4、請求項5又は請求項6に記載の液晶表示モジュール。
【請求項8】
上記視野角拡大シートが、基材フィルムの他方の面に積層され、バインダー中にビーズが分散するスティッキング防止層を有している請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。
【請求項9】
上記バックライトとしてエッジライト型バックライトが用いられ、
このエッジライト型バックライトのランプが長辺方向と平行に配設されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。
【請求項10】
上記液晶表示素子とバックライトとの間に他の光学シートを備えており、
この他の光学シートの基材フィルムとして低リタデーションフィルムが使用されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の液晶表示モジュール。
【請求項11】
上記他の光学シートがプリズムシートであり、
このプリズムシートの稜線方向が短辺方向と直交している請求項10に記載の液晶表示モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−63614(P2009−63614A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228778(P2007−228778)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】