説明

液晶表示素子の製造方法

【課題】視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性に優れ、長期耐熱性に優れる液晶表示素子を製造するための方法を提供すること。
【解決手段】上記方法は、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、(A)ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物に代表される特定の脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸のイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ならびに(B)重合性不飽和結合を2個以上有する化合物を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経る方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法に関する。さらに詳しくは、視野角が広く、応答速度の速く、長期耐熱性の良好な液晶表示素子を製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子のうち、垂直配向モードとして従来知られているMVA(Multi−Domain Vertical Alignment)型パネルは、液晶パネル中に突起物を形成し、これにより液晶分子の倒れ込み方向を規制することにより、視野角の拡大を図っている。しかし、この方式によると、突起物に由来する透過率およびコントラストの不足が不可避であり、さらに液晶分子の応答速度が遅いという問題がある。
近年、上記のようなMVA型パネルの問題点を解決すべく、PSA(Polymer Sustained Alignment)モードが提案された。PSAモードは、パターン状導電膜付き基板およびパターンを有さない導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙、あるいは2枚のパターン状導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙に重合性の化合物を含有する液晶組成物を狭持し、導電膜間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して重合性化合物を重合し、これによりプレチルト角特性を発現して液晶の配向方向を制御しようとする技術である。この技術によると、導電膜を特定の構成とすることにより視野角の拡大および液晶分子応答の高速化を図ることができ、MVA型パネルにおいて不可避であった透過率およびコントラストの不足の問題も解消される。しかしながら、前記重合性化合物の重合のために、例えば100,000J/mといった多量の紫外線の照射が必要であり、そのため液晶分子が分解する不具合が生ずるほか、紫外線照射によっても重合しなかった未反応化合物が液晶層中に残存することとなり、これらが相俟って表示ムラが発生し、電圧保持特性に悪影響を及ぼし、あるいはパネルの長期信頼性に問題が生じることが明らかとなり、未だ実用には至っていない。
【0003】
これらに対し非特許文献1は、反応性メソゲンを含有するポリイミド系液晶配向剤から形成された液晶配向膜を用いる方法を提案している。非特許文献1によると、かかる方法により形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、液晶分子の応答が高速であるという。しかしながら非特許文献1には、いかなる反応性メソゲンをいかなる量で使用すべきかについての指針は全く記載されておらず、また必要な紫外線照射量も依然として多く、表示特性、特に電圧保持特性に関する懸念は払拭されていない。
特許文献1には、特定構造を有する反応性メソゲンを含有するポリイミド系液晶配向剤から形成された液晶配向膜を用いる液晶表示素子の製造方法が提案されている。同特許文献の技術は、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性に優れる液晶表示素子を与える極めて優れた技術である。しかしながら同特許文献は、実施例において高度の耐熱性についての検討を行っていないことから、同特許文献の技術は液晶テレビジョンなどの屋内使用を想定したものであると思われる。
近年、液晶表示素子の使用が拡大されているインフォメーションディスプレイなどの用途では、長時間にわたる直射日光の暴露などの過酷な温度状況下に置かれることとなり、液晶表示素子には従来では考えられなかったほどの長期耐熱性が要求されるようになってきつつある。
視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性に優れるとともに、長期耐熱性に優れる液晶表示素子は、従来知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−76065号公報
【特許文献2】特開平5−107544号公報
【特許文献3】特開2010−97188号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y.−J.Lee et.al.,SID 09 DIGEST,p.666(2009)
【非特許文献2】T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys.vol.48,p.1783(1977)
【非特許文献3】F.Nakano,et.al.,JPN.J.Appl.Phys.vol.19,p.2013(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性に優れるとともに、長期耐熱性に優れる液晶表示素子を製造するための新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記課題は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸のイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記テトラカルボン酸二無水物は下記式(A−I)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物および(A−II)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を含む、
ならびに
(B)重合性不飽和結合を2個以上有する化合物(以下、「(B)化合物」という。)
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする、液晶表示素子の製造方法によって達成される。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(A−I)中、a1およびa2は、それぞれ、1または2であり、a3は0または1であり、
式(A−I)および(A−II)中の「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によって製造された液晶表示素子は、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、十分な透過率およびコントラストを示し、表示特性に優れるうえ、長時間高温下におかれた場合であっても表示特性が損なわれることがない。
また、本発明の方法によると、照射に必要な光の量が少なくてすむため、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
従って、本発明の方法により製造された液晶表示素子は、性能面およびコスト面の双方において、従来知られている液晶表示素子を凌駕するものであり、種々の用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例および比較例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図2】実施例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図3】実施例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<重合体組成物>
本発明の方法において用いられる重合体組成物は、
(A)テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸のイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記テトラカルボン酸二無水物は上記式(A−I)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「テトラカルボン酸二無水物(A−I)」という。)および(A−II)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「テトラカルボン酸二無水物(A−II)」という。)よりなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を含む、
ならびに
(B)重合性不飽和結合を2個以上有する化合物
を含有する。
【0013】
[(A)重合体]
(A)重合体は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸のイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体である。
(A)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物(A−I)およびテトラカルボン酸二無水物(A−II)よりなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を含むものである。テトラカルボン酸二無水物がテトラカルボン酸二無水物(A−I)を含むものである場合、全テトラカルボン酸二無水物に対するテトラカルボン酸二無水物(A−I)の使用割合は、50モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。テトラカルボン酸二無水物がテトラカルボン酸二無水物(A−II)を含むものである場合、全テトラカルボン酸二無水物に対するテトラカルボン酸二無水物(A−II)の使用割合は、50〜80モル%であることが好ましく、60〜75モル%であることがより好ましい。さらに、テトラカルボン酸二無水物がテトラカルボン酸二無水物(A−I)とテトラカルボン酸二無水物(A−II)との双方を含むものである場合、全テトラカルボン酸二無水物に対するテトラカルボン酸二無水物(A−I)とテトラカルボン酸二無水物(A−II)との合計の使用割合は、50モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
【0014】
上記式(A−I)で表される構造としては、例えばビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトライル構造、ビシクロ[4.3.0]ノナン−2,4,7,9−テトライル構造、ビシクロ[4.4.0]デカン−2,4,7,9−テトライル構造、ビシクロ[4.4.0]デカン−2,4,8,10−テトライル構造、トリシクロ[6.3.0.02,6]ウンデカン−3,5,9,11−テトライル構造などを挙げることができる。
このような構造を含むテトラカルボン酸二無水物(A−I)としては、例えばビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4.3.0]ノナン−2,4,7,9−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4.4.0]デカン−2,4,7,9−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4.4.0]デカン−2,4,8,10−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6.3.0.02,6]ウンデカン−3,5,9,11−テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
上記式(A−I)で表される構造としてはビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトライル構造が好ましく、従ってテトラカルボン酸二無水物(A−I)としてはビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0015】
上記式(A−II)で表される構造を含むテトラカルボン酸二無水物(A−II)としては、例えば3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物を挙げることができる。
上記のとおり、(A)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物は、これがテトラカルボン酸二無水物(A−I)を含むものである場合には任意的に、
テトラカルボン酸二無水物(A−I)を含まず、テトラカルボン酸二無水物(A−II)を含むものである場合には必要的に
テトラカルボン酸二無水物(A−I)およびテトラカルボン酸二無水物(A−II)以外の、他のテトラカルボン酸二無水物を含有する。
【0016】
ここで使用することのできる他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物(ただし、テトラカルボン酸二無水物(A−I)およびテトラカルボン酸二無水物(A−II)を除く。以下同じ。)、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献3(特開2010−97188号公報)に記載されたテトラカルボン酸二無水物を使用してもよい。
【0017】
(A)重合体を合成するために用いられる他のテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物のみを用いるか、脂環式テトラカルボン酸二無水物と芳香族テトラカルボン酸二無水物との混合物を用いることが好ましい。後者の場合、全テトラカルボン酸二無水物中に占める脂環式テトラカルボン酸二無水物の割合は、20モル%以上とすることが好ましく、40モル%以上とすることがより好ましい。
(A)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物がテトラカルボン酸二無水物(A−I)を含むものである場合、前記テトラカルボン酸二無水物はテトラカルボン酸二無水物(A−I)のみからなるものであることが好ましく、
(A)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物がテトラカルボン酸二無水物(A−II)を含むものである場合、前記テトラカルボン酸二無水物はテトラカルボン酸二無水物(A−II)とし環式テトラカルボン酸二無水物との混合物からなることが好ましい。
【0018】
{ジアミン}
(A)重合体を合成するために用いられるジアミンとしては、下記式(D’)
【0019】
【化2】

【0020】
(式(D’)中、Rは炭素数4〜40のアルキル基もしくは炭素数4〜40のフルオロアルキル基であるか、またはステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基であり;
は単結合、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR側である。)であり、
IIはシクロへキシレン基またはフェニレン基であり、
n1は1または2であり、
ただしn1が2であるとき、2個のRIIは互いに同一であっても異なっていてもよく、n2は0または1であり;
II−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR側である。)であり、
n3は0〜2の整数であり、
n4は0または1である。)
で表される基を有するジアミンを含むジアミンを用いることが好ましい。上記式(D’)で表される基は、液晶分子を配向させる機能を有する基であるから、上記式(D’)で表される基を有するジアミンを、本明細書において以下「液晶配向性基を有するジアミン」という。
【0021】
上記式(D’)におけるRの炭素数4〜40のアルキル基としては、炭素数6〜40のアルキル基が好ましく、具体的には例えばヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基などを;
炭素数4〜40のフルオロアルキル基としては、炭素数4〜20のフルオロアルキル基が好ましく、具体的には例えばトリフルオロメチルプロピル基、トリフルオロメチルブチル基、トリフルオロメチルヘキシル基、トリフルオロメチルデシル基、ペンタフルオロエチルプロピル基、ペンタフルオロエチルブチル基、ペンタフルオロエチルオクチル基などを;
ステロイド骨格を有する17〜51の炭化水素基としては、例えばコレスタニル基、コレステニル基、ラノスタニル基などを、それぞれ挙げることができる。
【0022】
上記式(D’)におけるRIIのシクロへキシレン基およびフェニレン基は、それぞれ、1,4−シクロへキシレン基および1,4−フェニレン基であることが好ましい。上記式(D’)において−(RIIn1−で表される2価の基としては、n1が1である場合として、例えば1,4−フェニレン基、1,2−シクロへキシレン基などを;
n1が2である場合として、例えば4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロへキシレン基、下記式
【0023】
【化3】

【0024】
(上記式中、「*」を付した結合手がR側である。)
のそれぞれで表される基などを、それぞれ好ましいものとして挙げることができる。
上記式(D’)におけるn3は、2であることが好ましい。
【0025】
本発明における液晶配向性基を有するジアミンとしては、上記式(D’)表される基を有する芳香族ジアミンであることが好ましく、その具体例として例えばドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニルなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることが好ましい。本発明における液晶配向性基を有するジアミンとしては、特にヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼンおよびコレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
(A)重合体を合成するために用いられるジアミンとしては、上記のような液晶配向性基を有するジアミンのみを使用してもよく、液晶配向性基を有するジアミンとその他のジアミンとを併用してもよい。
【0026】
ここで使用することのできるその他のジアミンは、上記式(D’)表される基を有さないジアミンであり、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどであって上記特定ジアミンに該当しないものである。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジンなどを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献3(特開2010−97188号公報)に記載されたジアミンを使用してもよい。
(A)重合体を合成するために用いられるジアミンとしては、上記のような液晶配向性基を有するジアミンを、全ジアミンに対して、2モル%以上含むものであることが好ましく、2〜60モル%含むものであることがより好ましく、5〜40モル%含むものであることがさらに好ましく、特に10〜30モル%含むものであることが好ましい。
【0027】
{分子量調節剤}
(A)重合体またはその前駆体であるポリアミック酸を合成するに際して、上記のようなテトラカルボン酸二無水物およびジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく重合体組成物の塗布性(印刷性)を改善することができる。
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましい。
【0028】
{ポリアミック酸の合成}
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
ここで、有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール性溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。
この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してイミド化重合体とする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0029】
{イミド化重合体の合成}
(A)重合体であるイミド化重合体は、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
本発明におけるイミド化重合体は、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明における(A)重合体であるイミド化重合体は、そのイミド化率が40%以上であることが好ましい。このイミド化率は、イミド化重合体のアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、またはポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0030】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてイミド化重合体を含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、イミド化重合体を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したイミド化重合体を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0031】
[(B)化合物]
本発明において用いられる(B)化合物は、分子内に重合性不飽和結合を2個以上有する化合物である。
上記重合性不飽和結合としては、例えば下記式(B−I)
【0032】
【化4】

【0033】
(式(B−I)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子である。)
で表される基を挙げることができる。上記式(B−I)におけるYおよびYは、それぞれ、酸素原子であることが好ましい。(B)化合物は、このような上記式(B−I)で表される基を、分子内に2個以上有していることが好ましい。
【0034】
(B)化合物は、重合性不飽和結合を分子内に2個だけ有していることが好ましい。
(B)化合物はその分子内に、2個以上の重合性不飽和結合のほかに、下記式(B−II)
−X−Y−X− (B−II)
(式(B−II)中、XおよびXは、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基であり、Yは単結合、炭素数1〜4の2価の炭化水素基、酸素原子、硫黄原子または−COO−であり、ただし上記XおよびXは1個または複数個の炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、フッ素原子またはシアノ基で置換されていてもよい。)
で表される基を、さらに有することが好ましい。上記式(B−II)中のYが炭化水素基であるとき、その炭素数は1〜3であることが好ましい。
【0035】
上記式(B−II)における炭素数1〜4の2価の炭化水素基としては、例えばメチレン基、ジメチルメチレン基などを挙げることができる。上記式(B−II)で表される2価の基の具体例としては、例えば下記式(B−II−1)〜(B−II−6)
【0036】
【化5】

【0037】
のそれぞれで表される基などを挙げることができる。上記式(B−II−1)〜(B−II−6)におけるベンゼン環およびシクロヘキサン環は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、フッ素原子またはシアノ基で置換されていてもよい。
【0038】
本発明において用いられる(B)化合物としては、
ビフェニル構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−II)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子であり、上記式(B−II)で表される2価の基が上記式(B−II−1)で表される基である。)、
フェニル−シクロヘキシル構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子であり、上記式(B−II)で表される2価の基が上記式(B−II−2)で表される基である。)、
2,2−ジフェニルプロパン構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子であり、上記式(B−II)で表される2価の基が上記式(B−II−3)で表される基である。)、
ジフェニルメタン構造を有するジ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)におけるYおよびYが、それぞれ、酸素原子である上記式(B−II)で表される2価の基が上記式(B−II−4)で表される基であり、。)、
ジフェニルチオエーテル構造を有するジ−チオ(メタ)アクリレート(上記式(B−I)におけるYが酸素原子であり、Yが硫黄原子であり、上記式(B−II)で表される2価の基が上記式(B−II−5)で表される基である。)および
その他の(B)化合物
を挙げることができる。
【0039】
これらの具体例としては、ビフェニル構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば4’−アクリロイロキシ−ビフェニル−4−イル−アクリレート、
4’−メタクリロイロキシ−ビフェニル−4−イル−メタアクリレート、
2−[4’−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−ビフェニル−4−イロキシ]−エチルアクリレート、
2−[4’−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−ビフェニル−4−イロキシ]−エチルメタクリレート、
ビスヒドロキシエトキシビフェニルジアクリレート、
ビスヒドロキシエトキシビフェニルジメタクリレート、
2−(2−{4’−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ビフェニル−4−イロキシ}−エトキシ)−エチルアクリレート、
2−(2−{4’−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ビフェニル−4−イロキシ}−エトキシ)−エチルメタクリレート、
ビフェニルのエチレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビフェニルのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート、
ビフェニルのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビフェニルのプロピレンオキシド付加物のジメタクリレート、
2−(4’−アクリロイロキシ−ビフェニル−4−イロキシ)−エチルアクリレート、
2−(4’−メタクリロイロキシ−ビフェニル−4−イロキシ)−エチルメタクリレートなどを;
【0040】
フェニル−シクロヘキシル構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば4−(4−アクリロイロキシ−フェニル)−シクロヘキシルアクリレート、
4−(4−メタクリロイロキシ−フェニル)−シクロヘキシルメタクリレート、
2−{4−[4−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−シクロヘキシロキシ}−エチルアクリレート、
2−{4−[4−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−シクロヘキシロキシ}−エチルメタクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−シクロヘキシロキシ)−エトキシ]−エチルアクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−シクロヘキシロキシ)−エトキシ]−エチルメタクリレートなどを;
2,2−ジフェニルプロパン構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば4−[1−(4−アクリロイロキシ−フェニル)−1−メチル−エチル]−フェニルアクリレート、
4−[1−(4−メタクリロイロキシ−フェニル)−1−メチル−エチル]−フェニルメタクリレート、
2−(4−{1−[4−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−エチルアクリレート、
2−(4−{1−[4−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−エチルメタクリレート、ビスヒドロキシエトキシ−ビスフェノールAジアクリレート、
ビスヒドロキシエトキシ−ビスフェノールAジメタクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−エトキシ}−エチルアクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−エトキシ}−エチルメタクリレート、
ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート、
ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジメタクリレート、
2−(4−{1−[4−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−1−メチル−エチルアクリレート、
2−(4−{1−[4−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−1−メチル−エチルメタクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−1−エチル)−フェノキシ]−1−メチル−エトキシ}−1−メチル−エチルアクリレート、
2−{2−[4−(1−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−フェニル}−1−メチル−1−エチル)−フェノキシ]−1−メチル−エトキシ}−1−メチル−エチルメタクリレート、
3−{4−[1−(3−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチルフェノキシ−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−{4−[1−(3−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチルフェノキシ−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−シクロヘキシル−フェニル]−1−メチル−エチル}−2−シクロヘキシル−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−シクロヘキシル−フェニル]−1−メチル−エチル}−2−シクロヘキシル−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−2−プロピルメタクリレート、
3−(5−{1−[6−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−ビフェニル−3−イル]−1−メチル−エチル}−ビフェニル−2−イロキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−(5−{1−[6−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−ビフェニル−3−イル]−1−メチル−エチル}−ビフェニル−2−イロキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−{4−[1−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−メチル−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチル]−2−メチル−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−{4−[1−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3−メチル−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェニル)−1−メチル−エチル]−2−メチル−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ−]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ−]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
3−{4−[1−(4−{3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ−]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロポキシ−]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、
3−{4−[1−(4−{3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−フェニル]−1−メチル−エチル}−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ−]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロポキシ−]−フェニル}−1−メチル−エチル)−フェノキシ}−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート、
1−(2−{4−[1−(4−{2−[2−ヒドロキシ−3−(1−メチレン−アリロキシ)−プロポキシ]−プロポキシ}−フェニル)−1−メチル−エチル]−キシ}−1−メチル−エトキシ)−3−(1−メチレン−アリロキシ)−プロパン−2−オールなどを;
【0041】
ジフェニルメタン構造を有するジ(メタ)アクリレートとして、例えば4−(4−アクリロイロキシ−ベンジル)−フェニルアクリレート、
4−(4−メタクリロイロキシ−ベンジル)−フェニルメタクリレート、
2−{4−[4−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−ベンジル]−フェニル}−エチルアクリレート、
2−{4−[4−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−ベンジル]−フェニル}−エチルメタクリレート、
ビスフェノールFのエチレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールFのエチレンオキシド付加物のジメタクリレート、
ビスフェノールFのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート、
ビスフェノールFのプロピレンオキシド付加物のジメタクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−エトキシ]−エチルアクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−エトキシ)−エトキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−エトキシ]−エチルメタクリレート、
2−{4−[4−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−ベンジル−フェノキシ}−1−メチル−エチルアクリレート、
2−{4−[4−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−ベンジル−フェノキシ}−1−メチル−エチルメタクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−アクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−1−メチル−エトキシ]−1−メチル−エチルエチルアクリレート、
2−[2−(4−{4−[2−(2−メタクリロイロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−ベンジル}−フェノキシ)−1−メチル−エトキシ]−1−メチル−エチルエチルメタクリレートなどを;
ジフェニルチオエーテル構造を有するジ−チオ(メタ)アクリレートとして、例えば4−(4−チオアクリロイルサルファニル−フェニルサルファニル)−フェニルジチオアクリレート、
4−(4−チオメタクリロイルサルファニル−フェニルサルファニル)−フェニルジチオメタクリレート、
ビス(4−メタクロイルチオフェニル)スルフィドなどを;
その他の(B)化合物として、例えば2,5−ビス{4−(3−アクリロイロキシ−プロポキシ)−安息香酸}トルエンなどを、それぞれ挙げることができる。
【0042】
このような(B)化合物は、有機化学の定法を適宜に組み合わせることにより合成することができるほか、市販品として入手することができる。(B)化合物の市販品としては、例えばビスヒドロキシエトキシBPジアクリレート、ビスヒドロキシエトキシBis−Aジアクリレート(本州化学工業(株)製);
アロニックスM−208、M−210(東亞合成(株)製);
SR−349、SR−601,SR−602(サートマー社製);
KAYARAD R−712、R−551(日本化薬(株)製);
NKエステルBPE−100、NKエステルBPE−200、NKエステルBPE−500、NKエステルBPE−1300、NKエステルA−BPE−4(新中村化学工業(株)製)、Actilane420(日本シイベルヘグナー(株)製):
ライトエステルBP−2EM、ライトアクリレートBP−4EA、ライトアクリレートBP−4PA、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A(共栄社化学(株)製);
V#540、V#700(大阪有機化学工業(株)製);
FA−321M(日立化成工業(株)製);
MPSMA(住友精化(株)製);
リポキシVR−77(昭和高分子(株)製)などを挙げることができる。
【0043】
本発明において用いられる(B)化合物としては、上記に例示した化合物よりなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
本発明において用いられる重合体組成物中における(B)化合物の使用割合としては、(A)重合体の100重量部に対して、1〜100重量部とすることが好ましく、5〜50重量部とすることがより好ましい。
【0044】
[重合体組成物]
本発明において用いられる重合体組成物は、上記のような(A)重合体および(B)化合物を、適当な有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。
ここで使用することができる有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。
有機溶媒の使用割合としては、重合体組成物の固形分濃度(重合体組成物中の有機溶媒以外の成分の合計重量が重合体組成物の全重量に占める割合)が1〜15重量%となる割合とすることが好ましく、1.5〜8重量%となる割合とすることがより好ましい。
【0045】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子の製造方法は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、上記のような重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする。
ここで、基板としては例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックなどからなる透明基板などを用いることができる。
上記導電膜としては、透明導電膜を用いることが好ましく、例えばSnOからなるNESA膜、In−SnOからなるITO膜などを用いることができる。この導電膜は、それぞれ、複数の領域に区画されたパターン状導電膜であることが好ましい。このような導電膜構成とすれば、導電膜間に電圧を印加する際(後述)にこの各領域ごとに異なる電圧を印加することによって各領域ごとに液晶分子のプレチルト角の方向を変えることができ、これにより視野角特性をより広くすることが可能となる。
【0046】
かかる基板の該導電膜上に、重合体組成物を塗布するには、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法によることができる。塗布後、該塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
このようにして形成された塗膜はこれをそのまま次工程の液晶セルの製造に供してもよく、あるいは液晶セルの製造に先んじて必要に応じて塗膜面に対するラビング処理を行ってもよい。このラビング処理は、塗膜面に対して、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。ここで、特許文献2(特開平5−107544号公報)に記載されているように、一旦ラビング処理を行った後に塗膜面の一部にレジスト膜を形成し、さらに先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、領域ごとに異なるラビング方向とすることによって、得られる液晶表示素子の視界特性をさらに改善することが可能である。
【0047】
次いで、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成する。
ここで使用される液晶分子としては、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶などを用いることができる。液晶分子の層の厚さは、1〜5μmとすることが好ましい。
【0048】
かかる液晶を用いて液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法を挙げることができる。 第一の方法としては、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。あるいは第二の方法として、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
その後、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する。
ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流または交流とすることができる。
【0049】
照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。
光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上100,000J/m未満であり、より好ましくは1,000〜50,000J/mである。従来知られているPSAモードの液晶表示素子の製造においては、100,000J/m程度の光を照射することが必要であったが、本発明の方法においては、光照射量を50,000J/m以下、さらに10,000J/m以下とした場合であっても所望の液晶表示素子を得ることができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資するほか、強い光の照射に起因する電気特性の低下、長期信頼性の低下を回避することができる。
そして、上記のような処理を施した後の液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。ここで使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【実施例】
【0050】
合成例1
テトラカルボン酸二無水物としてビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物125g(0.5モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン52g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン883gに溶解し、80℃で6時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は45mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,100gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換(本操作により脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約50%のポリイミド(PI−1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は41mPa・sであった。
【0051】
合成例2
テトラカルボン酸二無水物としてビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物63g(0.25モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン52g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン553gに溶解し、80℃で3時間反応を行った。この反応液に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物49g(0.25モル)およびN−メチル−2−ピロリドン276gを追加し、40℃で6時間さらに反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は49mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,036gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換(本操作にて脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。)することにより、イミド化率約50%のポリイミド(PI−2)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は48mPa・sであった。
【0052】
合成例3
テトラカルボン酸二無水物としてビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物94g(0.375モル)ならびにジアミンとしてp−ジアミノ安息香酸38g(0.25モル)および1,3-ジアミノ−4−〔4 (4−へプチルシクロへキシル)フェノキシ〕ベンゼン95g(0.25モル)をN−メチル−2−ピロリドン804gに溶解し、80℃で3時間反応を行った。この反応液に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物25g(0.125モル)およびN−メチル−2−ピロリドン201gを追加し、40℃で6時間さらに反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は39mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,258gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のポリイミド(PI−3)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は35mPa・sであった。
【0053】
合成例4
テトラカルボン酸二無水物としてビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物125g(0.5モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン52g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン883gに溶解し、80℃で6時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(PA−4)を含有する溶液を得た。このポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は45mPa・sであった。
【0054】
合成例5
テトラカルボン酸二無水物として3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物88g(0.35モル)および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物29g(0.15モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン52g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン883gに溶解し、80℃で6時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は35mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,103gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のポリイミド(PI−5)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は32mPa・sであった。
【0055】
比較合成例1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン43g(0.40モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン52g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン830gに溶解し、60℃で6時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,900gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率約50%のポリイミド(pi−1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は47mPa・sであった。
【0056】
実施例1
<重合体組成物の調製>
重合体として上記合成例1で得たポリイミド(PI−1)を含有する溶液に、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらに(B)化合物として下記式(B−1)
【0057】
【化6】

【0058】
で表される化合物を、上記重合体溶液中に含まれるポリイミド(PI−1)の100重量部に対して30重量部加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度8.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、重合体組成物を調製した。
【0059】
<液晶セルの製造>
上記で調製した重合体組成物を用いて、透明電極のパターン(2種類)および紫外線照射量(3水準)を変更して、計6個の液晶表示素子を製造し、下記のように評価した。
[パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造]
上記で調製した重合体組成物を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極を有するガラス基板の透明電極面上に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターンなし透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述のプレチルト角の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、それぞれ下記の方法により導電膜間に電圧を印加した状態で光照射した後にプレチルト角および電圧保持率の評価に供した。
上記で得た液晶セルのうちの2個について、それぞれ電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外腺照射装置を用いて、紫外線を10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて照射した。なおこの照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
【0060】
[プレチルト角の評価]
上記で製造した各液晶セルについて、それぞれ非特許文献2(T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys.vol.48,p.1783(1977))および非特許文献3(F.Nakano,et.al.,JPN.J.Appl.Phys.vol.19,p.2013(1980))に記載の方法に準拠してHe−Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した液晶分子の基板面からの傾き角の値をプレチルト角とした。光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれのプレチルト角を表2に示した。
【0061】
[耐熱性の評価(電圧保持率の耐熱安定性)]
上記で製造した各液晶セルに対し、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(初期電圧保持率)を測定した。
上記初期電圧保持率測定後の各液晶セルを、それぞれ温度120℃に設定したオーブン中で1,000時間静置した後に、上記と同様にして電圧保持率(1,000時間後電圧保持率)を測定した。1,000時間後電圧保持率の各液晶セルを、上記と同温度のオーブン中でさらに4,000時間静置し(オーブン中の合計静置時間5,000時間)、上記と同様にして電圧保持率(5,000時間後電圧保持率)を測定した。
これらの各電圧保持率を、表2に示した。
なお上記において、測定装置としては(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
【0062】
[パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造]
上記で調製した重合体組成物を、図1に示したようなスリット状にパターニングされ、複数の領域に区画されたITO電極をそれぞれ有するガラス基板AおよびBの各電極面上に液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜につき、超純水中で1分間超音波洗浄を行なった後、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次いで、上記一対の基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターニングされた透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述の応答速度の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、上記パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造におけるのと同様の方法により、導電膜間に電圧を印加した状態で10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて光照射した後に応答速度の評価に供した。
なお、ここで用いた電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
【0063】
[応答速度の評価]
上記で製造した各液晶セルにつき、先ず電圧を印加せずに可視光ランプを照射して液晶セルを透過した光の輝度をフォトマルチメーターにて測定し、この値を相対透過率0%とした。次に液晶セルの電極間に交流60Vを5秒間印加したときの透過率を上記と同様にして測定し、この値を相対透過率100%とした。このとき各液晶セルに対して交流60Vを印加したときに、相対透過率が10%から90%に移行するまでの時間を測定し、この時間を応答速度と定義して評価した。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれの応答速度を表2に示した。
【0064】
実施例2〜10および比較例1〜3
上記実施例1において、重合体および(B)化合物の種類および使用量をそれぞれ表1に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にして重合体組成物を調製した。ただし、実施例6および7においては、(B)化合物の添加後に、表1に示した種類および量のその他の成分をさらに加えた。
こられを用いて各種液晶セルを製造して評価した。評価結果は表2に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
表1における化合物名の略称はそれぞれ以下の意味である。
<(B)化合物>
B−1:上記式(B−1)で表される化合物
B−2:下記式(B−2)において、nが2〜4である化合物の混合物
<その他の成分>
c−1:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
c−2:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
【0068】
【化7】

【0069】
表2の結果から、本発明の方法においては、紫外線照射量を100,000J/m(PSAモードにおいて従来採用されてきた値である。)とすると得られるプレチルト角の程度が過剰となり、10,000J/mまたはそれ以下の照射量において適正なプレチルト角となることが分かる。また、照射量が少ない場合であっても十分に速い応答速度が得られており、さらに初期電圧保持率に優れるとともに、高温で長期間保存した後であっても電圧保持率は高いまま維持されており、優れた耐熱性を示すことが理解される。
従って、本発明の方法によれば、PSAモードのメリットを少ない光照射量で実現することができるから、高い光照射量に起因する表示ムラの発生、電圧保持特性の低下および長期信頼性の不足の懸念なしに、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、透過率が高く、コントラストが高く、そして長期耐熱性に優れる液晶表示素子を製造することができる。
さらに、上記実施例1〜10において使用した各重合体組成物を用い、ガラス基板の有するITO電極のパターンを変更したほかは実施例1と同様にして各種液晶セルを製造して評価した。いずれの重合体組成物を用いた場合も、図2に示したパターンおよび図3に示したパターンの双方において、実施例1〜5とそれぞれ同様の効果が得られた。
【符号の説明】
【0070】
1:ITO電極
2:スリット部
3:遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを反応させて得られるポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸のイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記テトラカルボン酸二無水物は下記式(A−I)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物および(A−II)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を含む、
ならびに
(B)重合性不飽和結合を2個以上有する化合物
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする、液晶表示素子の製造方法。
【化1】

(式(A−I)中、a1およびa2は、それぞれ、1または2であり、a3は0または1であり、
式(A−I)および(A−II)中の「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
【請求項2】
上記(A)テトラカルボン酸二無水物が、上記式(A−I)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含むものである、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項3】
上記式(A−I)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物がビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物である、請求項2に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
上記(A)テトラカルボン酸二無水物が、上記式(A−II)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を50〜80モル%含むものである、請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
上記式(A−II)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物が3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物である、請求項4に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法によって製造されたことを特徴とする、液晶表示素子。
【請求項7】
請求項1に記載の液晶表示素子を製造するために用いられる重合体組成物であって、
(A)テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸のイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記テトラカルボン酸二無水物は上記式(A−I)および(A−II)のそれぞれで表される構造から選択される少なくとも一種の構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含む、
ならびに
(B)分子中に上記式(B−I)で表される2価の基の少なくとも1個と上記式(B−II)で表される1価の基の少なくとも2個とを有する化合物
を含有することを特徴とする、前記重合体組成物。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−80140(P2013−80140A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220717(P2011−220717)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】