説明

液晶表示装置およびその製造方法

【課題】 高品質の液晶表示装置およびその製造法を提供する。
【解決手段】 信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から当該画素電極の方向に傾いているようになした状態で、液晶組成物中の重合性化合物を重合させる。重合後に当該液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下であることが好ましい。液晶層を囲むシール部には、非表示部のうち液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、たとえば、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を2枚の基板間に有し、液晶に電圧を印加または電圧を印加しない状態で重合性化合物を重合させ、液晶分子の配向方向を規定する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックスタイプの液晶ディスプレイはTNモードが主流であったが視野角特性が狭いという弱点があった。そこで現在では、広視野角液晶パネルにはMVA(Multidomain−Vertical Alignment)モードとIPS(In−Plane−Switching)モードと呼ばれる技術が採用されている。
【0003】
IPSモードは櫛形電極によって液晶分子を水平面内でスイッチングするが、櫛形電極は開口率を著しく低下させるので強力なバックライトが必要である。
【0004】
MVAモードでは、液晶分子を基板に垂直に配向させ、突起または透明電極(たとえばITO:インジウム−錫酸化物)に設けられたスリット(抜き)によって液晶分子の配向を規定する。一般的に言えば、広幅のスリットの場合は液晶分子がスリットに直交する方向に沿って配向するが、狭幅のスリット(微細スリット)の場合は液晶分子がスリットと平行な方向に沿って配向する。
【0005】
現在のMVAは広視野角化のため、電圧印加時に液晶分子が信号電極および走査電極よりなるバスラインに対し45゜、135゜、225゜、315゜の4方向に倒れるよう、突起やITOスリットを複雑な形状に配置している。この技術では、電圧を印加すると液晶分子が微細スリットと平行な4方向へ倒れて安定し、配向分割を実現することができた。
【0006】
また、突起を廃し、電圧印加時に、ITOスリットにより、液晶分子が4方向に倒れる、図2のような構造を採用し、この際、液晶分子が倒れる方向がITO端の電界によって決定されることに起因する、画素中央部に向かって液晶分子が倒れる方向が伝播する際の応答時間を、重合性化合物を含む液晶組成物を基板間に注入し、電圧を印加した状態で重合性化合物を重合して液晶分子の倒れる方向を記憶させることにより短縮させ、表示のスイッチング性を向上させる技術も開発されている(特許文献1参照。)。
【0007】
しかし、このような複雑な配置を採用しても、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、画素電極と信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方との間に存在する隙間の近傍においては、液晶分子の配向に乱れが生じる。すなわち、画素電極が信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と面する辺は、これらの電極と平行になっており、液晶分子が電極に向かって傾斜しようとする性質を有するため、これらの辺(画素電極端部)付近の液晶分子の倒れる方向が信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方に対して垂直な方向となり、このため、この画素電極端部近傍の液晶分子の配向状態が安定せず、ディスクリネーションが発生し、表示状態が変動してしまうのである。
【0008】
この対策として、補助的な突起を配置して配向を制御するとともに、配向変動部分を遮光層(ブラックマトリックス)によって遮蔽する方法があるが、開口率が低下するという問題が新たに生じる。
【0009】
このように、MVAの突起やスリットによる実質開口率の低下はIPSの櫛形電極ほどではないが、TNモードに比べると液晶パネル(表示パネル)の光透過率が低い欠点がある。このため、低消費電力が要求されるノート型パーソナルコンピュータには採用することができていないのが現状である。
【0010】
さらに、重合性化合物を含む液晶組成物を基板間に注入し、電圧を印加した状態で重合性化合物を重合させる技術に関しては、図1−Aに示すようなパターンで長時間駆動すると、図1−Bのように、「焼き付き」と呼ばれる表示不良が発生するという問題点がある。焼き付きとは、図1−Aのような白黒の格子パターンを液晶パネルの表示領域に長時間表示した後、全面を所定の中間調表示にした時に、図1−Bのようにタイルパターンが表示上に残ってしまう現象を指す。
【0011】
ここで、焼き付き率を次のように定義している。
【0012】
焼付き率α=((β−γ)/γ)×100(%)
β:長時間表示後の白表示領域の輝度
γ:長時間表示後の黒表示領域の輝度
これは、液晶表示装置を長時間使用している間に、電圧印加部(ノーマリブラックの時は、白表示時)ではプレチルト角が変化し、容易には元に戻らない現象で、このプレチルト角の変化は、長時間駆動時のバックライト光により、重合後に液晶層中に残存していた重合性化合物がさらに重合した結果、液晶配向を規定する度合いが変化したためと考えられている。
【0013】
一般的な使用状況であれば、2日後の焼きつきが2%以下であれば十分許容されるレベルであり、特に、長時間同一画面を表示させるような特殊用途・特殊使用状況までを考慮すると、液晶パネルの焼付き率が1ヶ月間の間0%であれば実用上問題と考えられる。従って、一般的には1ヶ月間の焼付き率0%が好ましい。
【0014】
さらに、液晶層への液晶や液晶組成物の注入に関しては、特に灰色表示において液晶注入口の反対側にハの字状の異常部分が表われることがあるという問題がある。液晶パネルの模式的平面図である図12にこの様子を示す。符号122は液晶層の周りにあるシール壁であり、符号123はこの液晶層に液晶組成物等を封入するための液晶注入口である。ハの字状の異常部分121は、液晶注入口の反対側に表われている。
【0015】
これは、注入された液晶または液晶組成物がシール壁起因の汚染物質を収集することが一つの原因であると考えられている。すなわち、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物は、注入口と反対側にあるシール壁に到達したのち跳ね返るが、この跳ね返った部分に汚染物質が集中する結果、異常表示部分を形成しているものと考えられる。図13は、液晶パネルの模式的平面図において、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物の跳ね返りの様子を矢印で模式的に表した図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−149647(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記問題に鑑み、本発明は、液晶分子の配向の乱れを防止し、液晶パネルの表示性能を改良する技術を提供することを目的としている。また、「焼き付き」表示不良を改善することを目的としている。また更に、液晶または液晶組成物の注入に起因すると思われる表示異常を改善することを目的としている。
【0018】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様によれば、第一の基板に、液晶層に電圧を印加するための走査電極と信号電極と画素電極と薄膜トランジスタとを備え、第二の基板に対向電極を備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、その、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態で、電極間に電圧を印加しつつまたは印加せず、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させてなる液晶表示装置が提供される。本発明態様により、液晶分子の配向の乱れを防止し、液晶パネルの表示性能を改良した液晶表示装置が提供される。
【0020】
本発明の他の一態様によれば、液晶層に電圧を印加する電極と液晶分子を垂直に配向させるための垂直配向制御膜とを備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させて、液晶分子にプレチルト角を持たせた液晶表示装置において、重合後に液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下である液晶表示装置が提供される。本発明態様により、「焼き付き」表示不良が改善された液晶表示装置を提供できる。
【0021】
本発明の更に他の一態様によれば、一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、この第一のシール壁により囲まれた液晶層と、液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、非表示部における液晶層の厚さが画像表示部における液晶層の厚さより大きく、非表示部のうち液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けた液晶表示装置が提供される。本発明態様により、液晶または液晶組成物の注入に起因すると思われる表示異常を改善した液晶表示装置を提供することができる。なお、上記液晶表示装置に関する態様を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
本発明の更に他の一態様によれば、第一の基板に、液晶層に電圧を印加するための走査電極と信号電極と画素電極と薄膜トランジスタとを設け、第二の基板に対向電極を設け、これら一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態で、電極間に電圧を印加しつつまたは印加せず、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させる、液晶表示装置の製造方法が提供される。本発明態様により、液晶分子の配向の乱れを防止し、液晶パネルの表示性能を改良した液晶表示装置を製造することができる。
【0023】
本発明の更に他の一態様によれば、液晶層に電圧を印加する電極と液晶分子を垂直に配向させるための垂直配向制御膜とを備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させて、液晶分子にプレチルト角を持たせる液晶表示装置の製造方法において、重合後に液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下になるまで重合を行う、液晶表示装置の製造方法が提供される。本発明態様により、液晶表示装置の「焼き付き」表示不良を改善できる。
【0024】
本発明の更に他の一態様によれば、一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、この第一のシール壁により囲まれた液晶層と、液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、非表示部における液晶層の厚さが画像表示部における液晶層の厚さより大きく、非表示部のうち液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けた液晶表示装置の製造方法が提供される。本発明態様により、液晶または液晶組成物の注入に起因すると思われる表示異常を改善することができる。なお、上記各製造方法の態様を組み合わせて使用することもできる。
【0025】
なお、上記の液晶表示装置およびその製造方法の諸態様において、液晶分子の傾きを規制する場合には、画素電極と対向電極の間の電位差が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と対向電極との間の電位差より大きくなるように各電極に電圧を印加しながら重合性化合物を重合させること、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さを調節することにより、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態を実現すること、より具体的には、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間に設けられた絶縁層を複数の層から形成すること、この複数の層として無機材料の層と有機系材料の層とを使用すること、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さを1〜5μmの範囲にすること、信号電極と画素電極の間に設けられた絶縁層の厚さを走査電極と信号電極の間に設けられた絶縁層の膜厚より厚くすること、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間にある液晶層接触面のうち、第一の基板側にある面部分が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極に向けて下る斜面を形成すること、より具体的には、画素電極について、隣り合った画素電極の間に、頂点が信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方の上に存在する突起を設けること、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極とが重なり合った部分を有するようにすること、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、走査電極に対向する部分の近傍にのみ遮光部分を設けること、第二の基板にカラーフィルターを設けること、第一の基板および第二の基板上に垂直配向制御膜を塗布すること、が好ましい。
【0026】
また、上記の液晶表示装置およびその製造方法の諸態様において、重合後に液晶相中に残存している重合性化合物量の規制に関しては、重合後に液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.02重量部以下であること、重合性化合物がアクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有すること、特に、重合性化合物が、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有すること、液晶が、誘電率異方性が負の液晶であること、液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜き(スリット)により方向を規制されながら傾斜する性質を有すること、が好ましい。
【0027】
また、上記の液晶表示装置およびその製造方法の諸態様において、シール壁に関しては、第二のシール壁の材質および厚さが、それぞれ、第一のシール壁の材質および厚さと同一であること、第二のシール壁の両端を表示部に近接または接触させること、第一のシール壁と第二のシール壁との距離を、表示部と第二のシール壁との距離よりも大きくすること、液晶層に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させること、重合性化合物がアクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有すること、特に、重合性化合物が、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有すること、液晶が、誘電率異方性が負の液晶であること、液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜きにより方向を規制されながら傾斜する性質を有すること、が好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、高品質の液晶表示装置およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1−A】焼き付きを評価するための液晶表示パネルの表示パターンを示す模式的平面図である。
【図1−B】焼き付きを生じた液晶表示パネルの表示画面を示す模式的平面図である。
【図2】液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合のバスラインと画素電極の配置を示す表示パネルの模式的平面図である。
【図3】液晶表示装置の表示パネルの模式的横断面図である。
【図4】液晶表示装置の表示パネルの模式的横断面における等電位線を示す模式図である。
【図5】液晶表示装置の表示パネルの模式的横断面における等電位線を示す他の模式図である。
【図6】液晶表示装置の表示パネルの模式的横断面における等電位線を示す他の模式図である。
【図7】頂点が信号電極の上に存在する突起を設けた様子を示す液晶表示パネルの模式的横断面図である。
【図8】図7の模式的横断面における等電位線を示す模式図である。
【図9】液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合のバスラインと画素電極の配置を示す表示パネルの模式的平面図である。
【図10】液晶表示装置の表示パネルの模式的横断面図である。
【図11】液晶表示装置の表示パネルの他の模式的横断面図である。
【図12】液晶パネルの模式的平面図である。
【図13】液晶パネルの他の模式的平面図である。
【図14】液晶パネルの他の模式的平面図である。
【図15】図14の液晶パネルの模式的横断面図である。
【図16】液晶パネルの他の模式的平面図である。
【図17】図16の液晶パネルの模式的横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態を図、表、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。図中、同一の符号は同一の要素を表す。
【0031】
本発明に係る液晶表示装置は、第一の基板に、液晶層に電圧を印加するための走査電極と信号電極と画素電極と薄膜トランジスタとを備え、第二の基板に対向電極を備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつまたは印加せず、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させて、液晶分子の配向方向を規定してなる表示パネル(液晶パネル)を有する。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0032】
本発明に係る重合性化合物は、重合すると液晶分子のダイレクタ方向を規制して、液晶分子を特定方向に傾斜させて配向させることが可能な分子構造を有し、かつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合するための光反応基を有する化合物である。液晶分子のダイレクタ方向を規制して、液晶分子を特定方向に傾斜させて配向させることが可能な分子構造としてはアルキル鎖が一般的であるが、重合の結果、液晶分子を特定方向に傾斜させて配向させることが可能なものであれば、どのような化合物でもよい。アルキル基の炭素数としては6〜18が好ましい。
【0033】
本発明に係る重合性化合物は、いわゆるモノマーでもオリゴマーでもよい。また、本発明に係る重合性化合物の光反応基は、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、エポキシ基等の重合性官能基で、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合可能である基を意味する。
【0034】
本発明に係る重合性化合物は、一成分からなっていても、複数の成分からなっていてもよい。架橋性成分からなり、あるいは架橋性成分を含むものが好ましい。架橋性成分としては、アクリレート基、メタクリレート基、エポキシ基、ビニル基、アリル基等の重合性官能基を一分子中に複数個有し、紫外線照射等の活性エネルギー線や熱により他の分子と重合可能である構造部分を有するものを例示することができる。なお、重合性化合物は、芳香族環や脂環等の環構造を有している方が重合反応速度が大きく有利である。本発明に係る液晶組成物には、上記重合性組成物と液晶分子とが含まれる。必要に応じて、所定量の触媒や重合開始剤、重合禁止剤を含ませてもよい。
【0035】
液晶表示装置の表示パネルの横断面において、液晶分子の配向に生じる乱れは、バスラインと画素電極の間に図4に示すような等電位線44の乱れが生じることが一因であることが判明した。なお、本発明において「バスライン」とは、走査電極と信号電極との総称である。等電位線の乱れは、走査電極と信号電極のうち画素電極に近い方の電極と画素電極との間で生じやすいが、第一の基板面上に、走査電極、信号電極、画素電極の順で積層されることが多いため、本発明は、バスラインのうちでも、特に信号電極に関連して適用する場合に効果が大きい。以下、主として、信号電極と画素電極との関係について説明するが、特に断らない限り、本発明は、走査電極と画素電極との関係についても成立する。
【0036】
図4は、基板31と32との間に挟まれた信号電極41と画素電極42を等電位とし、対向電極43との間に電圧を印加した様子を示す液晶パネルの模式的横断面図である。図4は理論的に求めた等電位線を基礎にした模式図であり、液晶分子の様子は想像したものである。信号電極と絶縁層との間では等電位線が凹み47を有するようになるため、液晶分子45と液晶分子46とは逆の方向に倒れることになり、この状態で重合を行うと、液晶の配向の乱れが記憶されることになる。なお、図4中、符号48,49はそれぞれ絶縁層を表す。
【0037】
この液晶の乱れを抑制するには、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態で、電極間に電圧を印加しつつまたは印加せず、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合することが有効であることが判明した。電極間に電圧を印加しつつ重合する場合には、たとえば図5のような、走査電極または信号電極と画素電極との間に凹みのない等電位線にできれば、液晶分子の配向方向が揃い、液晶の配向の乱れを抑制できる。なお、「信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態」を、実際に観察することは困難であるが、「信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いていない状態」があればディスクリネーションが発生するので、製作された画素にディスクリネーションが発生していないことで容易に確認することができる。すなわち、本発明では、何らかの手段で「信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態」(図5の例では符号45を付した液晶分子)を得ようとした場合、「信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態」そのものを確認する必要はなく、結果としてディスクリネーションが発生しなかったことを以て、この要件が満たされたことを判断すれば充分である。
【0038】
このように、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態で、重合を行うには、どのような方法を採用してもよい。
【0039】
たとえば、画素電極と対向電極の間の電位差が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と対向電極との間の電位差より大きくなるように各電極に電圧を印加すれば、この目的を達成することができる。ただし、対向電極の電位は、画素電極と信号電極または走査電極の電位に対して、共に大きいか小さいかであり、一方の電位より大きく他方の電位より小さいことはない。すなわち、このときの電位差は絶対値で比較すればよいが、比較する電位差が互いに逆符号であることはない。たとえば、対向電極が画素電極に対し+5Vであり、信号電極に対しては+3Vである場合や、対向電極が画素電極に対し−5Vであり、信号電極に対しては−3Vである場合は本発明の範疇に属するが、対向電極が画素電極に対し+5V、信号電極に対しては−3Vである場合は該当しない。
【0040】
図5は、そのような電圧印加を行ったときの様子を示す、表示パネルの模式的横断面図である。このような電圧印加の条件下では、画素電極と信号電極の間の液晶分子は、全て画素電極の方向に倒れるため、ディスクリネーションが発生せず、液晶分子の配向の乱れを防止できる。このような効果は、画素電極と走査電極との間でも得られる。
【0041】
図5のような電位関係は、たとえば走査電極をONにした状態で信号電極に所定の電圧を印加して画素電極の電位を設定し、その後、走査電極をOFFにして信号電極の電位を変更することで実現できる。これによって、画素端の配向は安定し、遮光する必要性がなくなる。
【0042】
さらに、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さを調節することにより、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになすことが可能である。
【0043】
一般的に、走査電極と信号電極と画素電極とのそれぞれの間には絶縁層が設けられている。信号電極または走査電極と画素電極の間に設けられた絶縁層の厚さは数十nmのオーダーであるが、これをたとえば、絶縁層48と絶縁層40との二層により1μm程度にすると、図4における等電位線の凹み47を消滅させ、図6のような等電位線を実現することができる。すなわち、この場合には、上記のごとく電位差を調整することを行わずに重合をおこなっても、上記と同様の効果が得られる。たとえば通常の場合のように信号電極と画素電極を等電位にしたまま重合を行ってもよい。また、電極間に電圧を印加せずに重合を行ってもよい。
【0044】
信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さとしては、1〜5μmの範囲が実用的で好ましい。1μm未満では等電位線の形状を十分変形できない一方、5μmを超えると膜厚ムラが生じやすく加工が難しい。
【0045】
絶縁層に使用する材料としては公知のどのようなものを使用することもできる。SiN、SiO2を例示することができる。誘電率が高い方が、比較的薄い膜で所期の目的を達成できるので好ましい。
【0046】
この絶縁層は一層からなっていてもよいが、図6のように複数の層からなっていてもよい。信号電極や走査電極と画素電極の間に設けられた絶縁層としてはSiNのように厚膜化しにくい材料が使用されることが多いので、そのような場合には複数の層とし、厚膜化し易い材料を組み合わせ使用することも好ましい場合がある。たとえば、SiNのような無機材料の層と有機系材料の層とを組合わせることができる。有機系の材料としては、本発明の趣旨に反しない限り、公知のどのような材料を使用することもできる。たとえばアクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂を例示できる。
【0047】
液晶表示装置の表示画面をその断面方向から見た場合に走査電極と画素電極との間に信号電極を設置することが多いため、信号電極と画素電極の間に設けられた絶縁層の厚さを走査電極と信号電極の間に設けられた絶縁層の膜厚より厚くすることが好ましい。また、複数の層からなる絶縁層については、追加する層について、ポジ型の材料を使用することが好ましい。画素電極と走査電極を導通させるための穴(以下C穴と呼ぶ)を、フォトリソ工程等を経て、この絶縁層に設ける際、適度なテーパーを付けないと、C穴上の画素電極が断裂して導電が取れなくなる恐れがある。このためには、絶縁層表面から電極に向けて開口部が狭まるようにテーパーを付けやすいポジ型材料の方がその加工が容易だからである。
【0048】
なお、上記絶縁層の厚さを調整する代わりに、たとえば信号電極層の上にカラーフィルター層を設け、その上に画素電極を配置する構造を導入し、このカラーフィルター層を絶縁層の一部としても機能させる方法も考えられるが、カラーフィルター層は微小な加工が難しく、画素電極と走査電極の導通を取るための穴を設けるために大きなマージンが必要となり、開口率が低下する問題があることが分かった。また、一般にカラーフィルター材料はネガ型が多いため、上記と同様にC穴を開ける上での問題点もある。従って、カラーフィルターを設ける場合には、第一の基板側ではなく、第二の基板側に設けることが好ましい。
【0049】
さらに、別の方法としては、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間の液晶層接触面のうち、第一の基板側にある面部分が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極に向けて下る斜面を形成しているようにすることにより、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から画素電極の方向に傾いているようになした状態で、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させることが有効である。この場合には、電極間に電圧を印加しつつ重合させても印加せず重合させてもよい。また、画素電極と対向電極の間の電位差が、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と対向電極との間の電位差より大きくなるように各電極に電圧を印加しながら重合性化合物を重合させる方法を採用しても採用しなくてもよい。さらに、信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さを調節してもしなくてもよい。
【0050】
なお、本発明において液晶層接触面というときは、単なる基板の面を意味するものではなく、実際に液晶層が接する層の面を意味する。たとえば、絶縁層を介して基板と液晶層とが積層し、実際には液晶層が基板の表面ではなく絶縁層の表面に接する場合には、本発明における液晶層接触面は液晶と接する絶縁層面を意味する。絶縁層面がたとえば親水化加工してあればその加工面を意味する。
【0051】
このような斜面は、バスラインから画素電極に向けて下る形状である限りどのようなものでもよく、その形成方法もどのようなものでもよい。液晶層接触面にバスラインから画素電極に向けて下る形状を有する突起を設ける方法を例示できる。この突起の具体的な形状は、液晶分子の配向状態を見て任意に定めることができる。
【0052】
また、信号電極または走査電極と画素電極とは、表示画面を直視する方向から見た場合に、画素電極と隣接する画素電極との間に一つの信号電極と走査電極とが挟まれるように配置されることから、隣り合った画素電極の間に、頂点が信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方の上に存在する突起を設けてもよい。この場合「信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方の上」は、信号電極や走査電極の中央部にある必要はなく、液晶分子の配向状態を見て任意に定めることができる。
【0053】
図7はそのような突起を設けた様子を示す液晶表示パネルの模式的横断面図であり、図8は図7の構造に電界を付与したときの様子を示している。図7,8では信号電極41上に、液晶層72の液晶層接触面のうち、第一の基板側にある面部分73が、信号電極41から画素電極42に向けて下る斜面74を形成するように、突起71を設けた。この突起71の斜面により、電界に打ち勝って液晶分子を画素電極側に倒すことができ、図8のように、信号電極と画素電極との間に等電位線の凹みがあっても、液晶分子の配向方向を揃えることが可能となる。つまり、画素電極と信号電極の間の液晶分子は、全て画素電極の方向に倒れるため、ディスクリネーションが発生せず、画素電極上の液晶分子の配向を乱すことがなくなる。なお、本例では絶縁層の一部を利用して突起71を設けたが、本発明の趣旨に反しない限り、突起はどのような材料を使用して設けてもよい。
【0054】
上記の各手段を講じると、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に信号電極と画素電極との間にある部分で液晶分子の配向に乱れが生じがたくなり、良好な表示品質を得ることができる。なお、上記の各手段は、本発明の趣旨に反しない限り、組み合わせて採用できることは言うまでもない。
【0055】
さらに、絶縁層を調節する場合には、一般的に、信号電極や走査電極と画素電極との間に十分な相互距離が生じるため、信号電極や走査電極や画素電極が作る電気容量が小さくなるので、クロストークが発生しにくくなり、画素電極を信号電極に重ねることが可能になる。この様子を図2,3と図9,10との比較で示す。図2,9は、それぞれ、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合のバスラインと画素電極の配置を示す表示パネルの模式的平面図であり、図3,10は、それぞれ、液晶表示装置の表示パネルの模式的横断面図である。図2,3は従来の配置を示し、基板31と32との間に挟まれた信号電極41と画素電極42との間および走査電極21(図3には図示されず)と画素電極42との間に、画素電極のない部分23が存在する。この部分は画像の表示に寄与しないので、その分画素の開口率が小さくなる。これに対して、図9,10は本発明に係る配置であり、信号電極41と画素電極42との間および走査電極21と画素電極42との間に、画像の表示に寄与しない部分がなくなる。従って、その分画素開口率を大きくできる。すなわち、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、信号電極と画素電極とが重なり合った部分や、走査電極と画素電極とが重なり合った部分を設けることができ、このことにより、開口部をより大きくすることが可能となる。符号22は薄層トランジスタである。
【0056】
なお、液晶表示装置の運転中は、走査電極の電位が画素電極に対して低い電位である時間が長いことが一般的であり、その電界の影響が画素電極上の液晶の配向を乱し、黒浮きの原因になることがある。これを防止するには、液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、走査電極に対向する部分の近傍には遮光部分を設けることが好ましい。たとえば、走査電極に対向する部分およびそこから少しはみだした程度の大きさに遮光部分を設けることが好ましい。この「近傍」や「少しはみだした程度」をどの程度にするかは、実情に応じて任意に定めることができる。
【0057】
さらに、配向制御膜については、表示品質の点から見ると、垂直配向制御膜を設置することが好ましい。この場合、第一の基板および第二の基板側のいずれでもよいが、その両方に設置する方が表示品質の上から好ましい。
【0058】
以上の技術により、本液晶分子の配向の乱れを防止し、液晶パネルの表示性能を改良することが可能となる。
【0059】
「焼き付き」表示不良の改善に関しては、液晶層に電圧を印加する電極と液晶分子を垂直に配向させるための垂直配向制御膜とを備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させて、液晶分子にプレチルト角を持たせた液晶表示装置において、重合後に液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下であることが有効である。ここで、「プレチルト角を持たせた」とは、電圧印加時に方向を規制されながら傾斜する性質を有するように、電圧無印加時に垂直より若干傾けた方向および所定の方位に液晶分子を配向させることを意味する。
【0060】
重合後に液晶相中に残存している重合性化合物量は、望ましくは、液晶100重量部に対して0.02重量部以下である。なお、この重合性化合物量は「活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させる」工程の直後にこの値になっている必要はなく、実際に使用を開始する直前までにこの値になっていれは充分である。本発明において、たとえば、「重合後に液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下になるまで重合を行う」とは、このような意味で所定重量部以下になることを意味している。
【0061】
この液晶層中に残留している重合性化合物量は、通常ガスクロマトグラフィー(GC)により求めることができる。簡単な測定方法は、以下に示すとおりである。
【0062】
残存重合性化合物量=(重合反応後のGCにおける重合性化合物ピーク面積/重合反応前のGCにおける重合性化合物ピーク面積)×重合反応前の重合性化合物量
このようにして、残存重合性化合物量を減少させると、図1−Bに示したような「焼き付き」が改善されることが確認された。
【0063】
この効果は、光や熱による重合性化合物の反応が不十分な場合、図1−Aのような焼き付き試験を行うと、長時間駆動時にバックライト光により、残留している重合性化合物の重合がさらに促進され、液晶配向を規定するプレチルト角が変化したものと考えられる。このプレチルト角の変化は、不可逆的であり、一度焼き付くと二度と消えない重大な問題である。
【0064】
残存重合性化合物量の減少は、重合性化合物がアクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有する場合に有用である。重合性化合物が、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有する場合には、長時間駆動時にバックライト光の作用により架橋反応が進行し易いため、残存重合性化合物量の減少は特に有用である。
【0065】
また、液晶が、誘電率異方性が負の液晶である場合、更に詳しくは、液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜きにより方向を規制されながら傾斜する性質を有する場合に、ポリマーによる液晶分子のダイレクター方向の規制が重要な役割を果たすため、残存重合性化合物量の減少は特に有用である。なお、「ほぼ垂直配向」とは、基板面に対して完全な垂直をなすのではなく、上述したようにプレチルト角を有していることを意味している。
【0066】
以上の技術により、「焼き付き」表示不良を改善することが可能となる。なお、上記のように残存重合性化合物量を減少させる技術は、これまで説明してきた、液晶の配向方向を制御する技術と組み合わせて使用することができ、組み合わせて使用した場合には、表示品質をさらに向上させることが可能である。
【0067】
液晶注入口の反対側に現れる、液晶層への液晶や液晶組成物の注入に起因すると思われるハの字状の異常部分については、一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、この第一のシール壁により囲まれた液晶層と、液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、非表示部における液晶層の厚さが画像表示部における液晶層の厚さより大きく、非表示部のうち液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けることが有効であることが判明した。
【0068】
図14は、一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、シール壁により囲まれた液晶層と、液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有する液晶表示装置の模式的平面図、図15はその横断面図である。図14,15では、一対の基板31,32の間に、液晶注入口123、第一のシール壁122、第二のシール壁143、液晶層72、カラーフィルター144、上下の透明電極147,148、カラーフィルター144に対応する位置にある表示部141,非表示部142が示されている。液晶層72は第一のシール壁122により囲まれており、液晶または液晶組成物を注入口123から基板間に注入した後、液晶注入口123を封止することにより、液晶層72は第一のシール壁122により封止されることになる。
【0069】
非表示部における液晶層の厚さが画像表示部における液晶層の厚さより大きいとは、図15のW1がW2より大きいことを意味する。こうすることにより、
シール壁起因の汚染物質を収集した、液晶または液晶組成物は、表示部144を通過することなく、図15の左側のシール壁に到達して、跳ね返ることになる。そして、第二のシール壁143の存在により、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物は、表示部に到達することなく、第一のシール壁と第二のシール壁との間にとどまることになる。このようにして、液晶または液晶組成物の注入に起因すると思われる表示異常が改善されたものと思われる。なお、この非表示部の幅(図14のW3,W4)については、特に制限はないが、0.5mm以上あることが好ましい。あまり大きいと表示パネル全体における表示部の占める面積が小さくなるので不必要に大きくすることは好ましくない。
【0070】
第二のシール壁の材質には特に制限はなく、実情に応じて任意に定めることができるが、汚染物質の種類を複雑にしない意味からは第一のシール壁の材質と同一であることが好ましい。
【0071】
第二のシール壁は、第一のシール壁とは異なり、液晶や液晶組成物の外部への漏洩を防止するものではないので、一対の基板の間(図15では上下の基板間)を完全にシールしている必要性は小さいが、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物が、第二のシール壁と基板との隙間を通って表示部に到達しないようにする程度にはシールされていることが好ましい。
【0072】
第一のシール壁と第二のシール壁との距離(図14,15ではL2で表されている)は、表示部と第二のシール壁との距離(図14,15ではL3で表されている)よりも大きいことが好ましい。第一のシール壁と第二のシール壁との距離が大きいほど、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物を第一のシール壁と第二のシール壁との間にとどめやすくなる。
【0073】
第二のシール壁のサイズは、実情に応じて任意に定め得る。第二のシール壁の厚さが、第一のシール壁の厚さと同一であることが、均一なセル厚を実現しやすい点で好ましい。また、第二のシール壁の長さL1は、短すぎると汚染物質を収集した液晶または液晶組成物が表示部の上に影響を与え得るので、実験等により適切な長さを決めることが好ましい。
【0074】
第二のシール壁の形状は、必ずしも直線状でなくともよい。たとえば曲線状の形状が考えられる。なお、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物が、表示部により到達し難いようにするには、第二のシール壁の両端が表示部に近接または接触していることが好ましい。
【0075】
この方策として、たとえばカラーフィルターの一部を図16,17のように延在して、第二のシール壁の両端に近接または接触するようにすることが考えられる。このようにすると、図16に示すように第一のシール壁に衝突して跳ね返った、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物が、図16の矢印に示すように表示部に回り込むことを防止し易くない。ここで「近接」の程度は、汚染物質を収集した液晶または液晶組成物が表示部に影響を与えるかどうかを見て適宜決定することができる。なお、カラーフィルターの一部を延在する場合には、その延在部分には、かならずしも画像を表示する機能を付与する必要はない。この意味で、本発明における「表示部」には画像を表示しない部分が含まれる場合もある。
【0076】
なお、上記のように液晶または液晶組成物の注入に起因すると思われる異常表示を改善する技術を適用する液晶表示装置としては、液晶層に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより重合性化合物を重合させたものが好ましい。この目的のために使用する重合性化合物としては、アクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有するもの、より具体的には、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有するものが好ましく、使用する液晶としては誘電率異方性が負の液晶が好ましい。また、このような、液晶と重合性化合物とを含む液晶組成物は、液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜きにより方向を規制されながら傾斜する性質を有するようにすることが好ましい。
【0077】
上記のように液晶または液晶組成物の注入に起因すると思われる異常表示を改善する技術は、これまで説明してきた、液晶の配向方向を制御する技術や残存重合性化合物量を減少させる技術と組み合わせて使用することができ、組み合わせて使用した場合には、表示品質をさらに向上させることが可能である。
【0078】
上記の各方法または各方法を組み合わせて作製した、本発明に係る液晶表示装置は、液晶分子の配向の乱れを防止し、「焼き付き」表示不良を改善し、また、液晶または液晶組成物の注入に起因すると思われる表示異常を改善することができ、更に、これらの効果を組み合わせて実現することもできるため、ノート型パーソナルコンピュータ、TV、携帯TV、モニター、投射型プロジェクター等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0079】
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0080】
比較例1および実施例1〜4については、特に記載しない限り、以下の条件で液晶表示パネルを作製した。図2または図9の電極構造を使用する場合には、画素電極の電極幅とスリット幅を共に3μmとした。
【0081】
15型XGAを使用し、両基板には垂直配向制御膜を塗布した(図示はされていない)。重合性化合物としてジアクリレートモノマーを用い、白色表示電圧相当の電圧を液晶層に印加しながら、室温でi線(365nm)の活性エネルギー線を照射した。
【0082】
走査電極と信号電極と画素電極とは、基板(第一の基板)上に、走査電極、信号電極、画素電極をこの順に設置した。走査電極と信号電極の間は300nm厚のSiN層で絶縁し、信号電極上にも300nm厚のSiN層を設けた。
【0083】
画素電極にはITOを使用した。対向基板上にはカラーフィルター(図示はされていない)を設け、その上にITOによる対向電極を積層した。
【0084】
[比較例1]
図2,3の構造を採用した。モノマーを重合する際、画素電極には20V、信号電極に20V、対向電極には0Vの電圧を印加した。この結果、このときの液晶パネルの透過率は、従来の大きな突起や大きな電極スリットを設けたMVA構造の液晶パネルに対し15%改善したが、一部の画素に配向乱れ(ディスクリネーション)が現れた。
【0085】
[実施例1]
図2,3の構造を採用した。モノマーを重合する際、画素電極には20V、信号電極に10V、対向電極には0Vの電圧を印加した。電圧印加を簡単にするために、全ての信号電極または走査電極を各々一箇所ないし数箇所で束ねて同時に電圧印加することを可能な配線とし、モノマー重合後各々のバスラインが独立するように束ねた部分を切断した。
【0086】
この結果、比較例1のような配向乱れは発生しなかった。このパネルには、操作電極およびその近傍に対向する対向基板上に遮光膜を設けた。このとき、コントラストは800であった。このときの液晶パネルの透過率は、従来の大きな突起や大きな電極スリットを設けたMVA構造の液晶パネルに対し15%改善した。
【0087】
[実施例2]
図2の平面構造と図11の横断面構造を組み合わせた。追加した絶縁層40の厚さは3μmであった。絶縁層40を構成する材料としてはアクリル系樹脂を使用した。
【0088】
モノマーを重合する際、画素電極、信号電極に20V、対向電極には0Vの電圧を印加した。対向基板には走査電極近傍を遮光する層を設けた。
【0089】
この結果、比較例1のような配向乱れは発生しなかった。また、コントラストは800であった。
【0090】
このパネルの液晶パネルの透過率は、従来の大きな突起や大きな電極スリットを設けたMVA構造の液晶パネルに対し30%改善した。
【0091】
なお、追加した絶縁層にカラーフィルターの役割を持たせても良い。この場合、対向基板側のカラーフィルター層は不要になる。
【0092】
[実施例3]
図9の平面構造と図10の横断面構造を組み合わせた。追加した絶縁層40の厚さは3μmであった。モノマーを重合する際、画素電極、信号電極に20V、対向電極には0Vの電圧を印加した。
【0093】
この結果、比較例1のような配向乱れは発生しなかった。また、このパネルには、電極、薄膜トランジスタ以外に遮光層を設けなかったが、正面コントラストは700を超えており、問題なかった。このパネルの透過率は、従来の大きな突起や大きな電極スリットを設けたMVA構造の液晶パネルに対し37%改善した。
【0094】
追加した絶縁層にカラーフィルターの役割を持たせても良い。この場合、対向基板側のカラーフィルター層は不要になる。
【0095】
[実施例4]
図2の平面構造と図7の横断面構造を組み合わせた。対向基板には走査電極近傍を遮光する層を設けた。追加した突起71の高さは1.5μmであった。モノマーを重合する際、画素電極、走査電極と信号電極に20V、対向電極には0Vの電圧を印加した。
【0096】
この結果、比較例1のような配向乱れは発生しなかった。この液晶パネルのコントラストは800、透過率は従来のMVA構造の液晶パネルに対し15%改善した。
【0097】
なお、上記実施例では、図2,9に示すような微細構造の画素電極に電圧を印加することによってモノマー重合時の配向方向を規定したが、その代わりに、画素電極を長方形状にして微細導電突起を用いたり、ラビングを施したりして配向方向を規定してもよい。
【0098】
[実施例5]
以下のような材料・重合方法で、液晶パネルを作製した。
【0099】
・液晶:Δε=−3.8
・モノマー:液晶100重量部に対し2官能のメタクリレートモノマーを0.3重量部の割合で混合し、液晶組成物とした。
【0100】
・重合方法:セル厚4μmとなるようにスペーサで制御しながら2枚の電極の形成された基板間に、液晶組成物を注入した。その後、液晶層に10V電圧を印加しながら、室温で所定量(0.5〜10J/cm2)のUVを照射し、液晶にプレチルト角を付与した。
【0101】
表1に、照射量に対する残留モノマー量と、上記方法による焼き付き率を示す。
【0102】
上記結果より、一般的な用途で必要とされる2日レベルならば残留モノマーは0.05重量%以下、特殊用途で望まれる1ヶ月以上でも焼き付きの生じないパネルを作製するためには、残留モノマー濃度を液晶に対して0.02重量%以下にする必要があることが見出された。
【0103】
【表1】

【0104】
[実施例6]
実施例5と同様な液晶組成物を用いてパネルを作製した。重合条件は下記のようにした。
【0105】
・重合方法:セル厚4μmとなるようにスペーサで制御しながら2枚の電極の形成された基板間に、液晶組成物を注入した。その後、液晶層に10V電圧を印加しながら、室温でUV光を1J/cm2照射し、さらにその後液晶パネル全画素に電圧を無印加(0V)状態の下、室温でUV光を0〜40J/cm2照射した。
【0106】
表2に、照射量に対する残留モノマー量と上記方法による焼き付き率を示す。
【0107】
【表2】

【0108】
表2の結果からも、一般的な用途で必要とされる2日レベルならば残留モノマーは0.05重量%以下、特殊用途で要求される1ヶ月でも焼き付きの生じないパネルを作製するためには、残留モノマーを液晶に対して0.02重量%以下にする必要があることが見出された。
【0109】
すなわち、実施例5,6から、一般的な使用環境(2日程度)ならば0.05重量%以下、1ヶ月の長時間でも焼き付き現象を生じさせなくするには、重合後の液晶層中の残存モノマー量を0.02重量%以下にする必要があることが確認できた。
【0110】
なお、モノマーについては、アクリレート(アクリル酸エステル)やメタクリレート(メタクリル酸エステル)に限定されず、エポキシ基やビニル基などの官能基を持つものであっても良い。ただし、一般的に、光や熱で反応しやすいアクリレート基やメタクリレート基が反応時間の短縮と言う観点からは好ましい。また、モノマー分子内の官能基数についても、モノマーの反応性の観点から、単官能(1官能)よりも複数の官能基を有している方が好ましい。
【0111】
液晶に関しても、本実施例では誘電率異方性が負の液晶を用いたが、これに限定されるものではない。ただし、ラビングレスでの液晶配向のマルチドメイン化による広視野角化が容易なことから、誘電率異方性が負の液晶の方が好ましい。
【0112】
[実施例7]
第一および第二のシール壁の材料としては、紫外線硬化型のアクリル樹脂を使用した。紫外線硬化型のアクリル樹脂の代わりに熱硬化性のエポキシ樹脂を使用してもよい。
【0113】
図14,15に示すように第二のシール壁を形成した。第一のシール壁幅(図15のW5)は約1mm、カラーフィルタと透明電極との合計の厚み(図15のW6)は約2μm、W1は6μm程度、W2は4μm程度であった。また、図14の左側における第一のシール壁と表示部との距離W4は4.5mmとした。
【0114】
図14,15に示すように第二のシール壁を形成した。第二のシール壁幅(図15のW7)は約1mmとした。図14に示すように、第二のシール壁の長さは、平行する第一のシール壁の長さより短いが、第二のシール壁に平行する表示部の辺より若干長くした。更に、L2=2mm、L3=0.5mmとした。図14の上下における第一のシール壁と表示部との距離W3は2mmとした。この結果、液晶注入口の反対側にハの字状の異常部分が表われる異常を完全に防止できた。
【0115】
[実施例8]
実施例7に加え、カラーフィルタの端に近い部分のパターンを延在させて、図16に示すように、第二のシール壁と接触させた。このことにより、シール122の近傍にて注入されてきた液晶が意に反して第二のシールとカラーフィルターとの間に侵入してしまうのを防ぐことができる。
【0116】
ここまでにおいて、液晶の「回り込み」をシール142によって防止できるのであるが、真空注入を行っているので、液晶が注入されない間隙が生じることはあり得ないことを注記しておく。
【0117】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0118】
(付記1)
第一の基板に、液晶層に電圧を印加するための走査電極と信号電極と画素電極と薄膜トランジスタとを備え、第二の基板に対向電極を備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から当該画素電極の方向に傾いているようになした状態で、電極間に電圧を印加しつつまたは印加せず、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させてなる、
液晶表示装置。
【0119】
(付記2)
前記画素電極と前記対向電極の間の電位差が、前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と当該対向電極との間の電位差より大きくなるように各電極に電圧を印加しながら重合性化合物を重合させてなる、付記1に記載の液晶表示装置。
【0120】
(付記3)
前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さを調節することにより、前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から当該画素電極の方向に傾いているようになした状態を実現してなる、付記1または2に記載の液晶表示装置。
【0121】
(付記4)
前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間に設けられた絶縁層が複数の層よりなっている、付記3に記載の液晶表示装置。
【0122】
(付記5)
前記複数の層として無機材料の層と有機系材料の層とを使用した、付記4に記載の液晶表示装置。
【0123】
(付記6)
前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さが1〜5μmの範囲にある、付記1〜5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0124】
(付記7)
前記信号電極と前記画素電極の間に設けられた絶縁層の厚さが前記走査電極と前記信号電極の間に設けられた絶縁層の膜厚より大きい、付記1〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0125】
(付記8)
液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間にある液晶層接触面のうち、第一の基板側にある面部分が、当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から当該画素電極に向けて下る斜面を形成している、付記1〜7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0126】
(付記9)
前記画素電極について、隣り合った画素電極の間に、頂点が前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方の上に存在する突起を有する、付記8に記載の液晶表示装置。
【0127】
(付記10)
前記液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極とが重なり合った部分を有する、付記1〜9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0128】
(付記11)
前記液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、前記走査電極に対向する部分の近傍にのみ遮光部分を設ける、付記1〜10のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0129】
(付記12)
前記第二の基板にカラーフィルターを設けた、付記1〜11のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0130】
(付記13)
前記第一の基板および第二の基板上に垂直配向制御膜が塗布されている、付記1〜12のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0131】
(付記14)
液晶層に電圧を印加する電極と液晶分子を垂直に配向させるための垂直配向制御膜とを備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させて、液晶分子にプレチルト角を持たせた液晶表示装置において、
重合後に当該液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下である、液晶表示装置。
【0132】
(付記15)
重合後に前記液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下である、付記1〜13のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0133】
(付記16)
重合後に前記液晶相中に残存している重合性化合物量が、前記液晶100重量部に対して0.02重量部以下である、付記14または15に記載の液晶表示装置。
【0134】
(付記17)
前記重合性化合物がアクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有する、付記1〜16のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0135】
(付記18)
前記重合性化合物が、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有する、付記1〜17のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0136】
(付記19)
前記液晶が、誘電率異方性が負の液晶である、付記1〜18のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0137】
(付記20)
前記液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜きにより方向を規制されながら傾斜する性質を有する、付記1〜19のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0138】
(付記21)
一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、当該第一のシール壁により囲まれた液晶層と、当該液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、
当該非表示部における液晶層の厚さが当該画像表示部における液晶層の厚さより大きく、
当該非表示部のうち当該液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けた
液晶表示装置。
【0139】
(付記22)
前記第二のシール壁の材質および厚さが、それぞれ、前記第一のシール壁の材質および厚さと同一である、付記21に記載の液晶表示装置。
【0140】
(付記23)
前記第二のシール壁の両端が前記表示部に近接または接触している、付記21または22に記載の液晶表示装置。
【0141】
(付記24)
前記第一のシール壁と第二のシール壁との距離が、前記表示部と第二のシール壁との距離よりも大きい、付記21〜23のいずれかに項記載の液晶表示装置。
【0142】
(付記25)
前記液晶層に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させてなる、
付記21〜24のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0143】
(付記26)
前記重合性化合物がアクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有する、付記21〜25のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0144】
(付記27)
前記重合性化合物が、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有する、付記21〜26のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0145】
(付記28)
前記液晶が、誘電率異方性が負の液晶である、付記21〜27のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0146】
(付記29)
前記液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜きにより方向を規制されながら傾斜する性質を有する、付記21〜28のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0147】
(付記30)
一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、当該第一のシール壁により囲まれた液晶層と、当該液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、
当該非表示部における液晶層の厚さが当該画像表示部における液晶層の厚さより大きく、
当該非表示部のうち当該液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けた、
付記1〜20のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0148】
(付記31)
第二のシール壁の材質および厚さが、それぞれ、前記第一のシール壁の材質および厚さと同一である、付記30に記載の液晶表示装置。
【0149】
(付記32)
前記第二のシール壁の両端が前記表示部に近接または接触している、付記30または31に記載の液晶表示装置。
【0150】
(付記33)
前記第一のシール壁と第二のシール壁との距離が、前記表示部と第二のシール壁との距離よりも大きい、付記30〜32のいずれかに項記載の液晶表示装置。
【0151】
(付記34)
第一の基板に、液晶層に電圧を印加するための走査電極と信号電極と画素電極と薄膜トランジスタとを設け、
第二の基板に対向電極を設け、
これら一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から当該画素電極の方向に傾いているようになした状態で、電極間に電圧を印加しつつまたは印加せず、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させる、
液晶表示装置の製造方法。
【0152】
(付記35)
前記画素電極と前記対向電極の間の電位差が、前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と当該対向電極との間の電位差より大きくなるように各電極に電圧を印加しながら重合性化合物を重合させる、付記34に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0153】
(付記36)
前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さを調節することにより、前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と画素電極との間隙上における液晶分子が、当該信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方から当該画素電極の方向に傾いているようになす、付記34または35に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0154】
(付記37)
前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間に設けられた絶縁層を複数の層により形成する、付記36に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0155】
(付記38)
前記複数の層として無機材料の層と有機系材料の層とを使用する、付記37に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0156】
(付記39)
前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間に設けられた絶縁層の厚さを1〜5μmの範囲にする、付記34〜38に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0157】
(付記40)
前記信号電極と前記画素電極の間に設けられた絶縁層の厚さを前記走査電極と前記信号電極の間に設けられた絶縁層の膜厚より厚くする、付記34〜39に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0158】
(付記41)
液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極との間にある液晶層接触面のうち、第一の基板側にある面部分が、当該信号電極から当該画素電極に向けて下る斜面を形成するようにする、付記34〜40に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0159】
(付記42)
前記画素電極について、隣り合った画素電極の間に、頂点が前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方の上に存在する突起を設ける、付記41に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0160】
(付記43)
前記液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、前記信号電極および走査電極の少なくともいずれか一方と前記画素電極とが重なり合った部分を有するようにする、付記34〜42に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0161】
(付記44)
前記液晶表示装置の表示画面を直視する方向から見た場合に、前記走査電極に対向する部分の近傍にのみ遮光部分を設ける、付記34〜42に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0162】
(付記45)
前記第二の基板にカラーフィルターを設ける、付記34〜44に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0163】
(付記46)
前記第一の基板および第二の基板上に垂直配向制御膜を塗布する、付記34〜45に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0164】
(付記47)
液晶層に電圧を印加する電極と液晶分子を垂直に配向させるための垂直配向制御膜とを備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させて、液晶分子にプレチルト角を持たせる液晶表示装置の製造方法において、
重合後に当該液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下になるまで当該重合を行う、
液晶表示装置の製造方法。
【0165】
(付記48)
重合後に前記液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下になるまで前記重合を行う、付記34〜46のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【0166】
(付記49)
重合後に前記液晶相中に残存している重合性化合物量が、前記液晶100重量部に対して0.02重量部以下になるまで前記重合を行う、付記47または48に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0167】
(付記50)
前記重合性化合物がアクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有する、付記34〜49に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0168】
(付記51)
前記重合性化合物が、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有する、付記34〜50に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0169】
(付記52)
前記液晶が、誘電率異方性が負の液晶である、付記34〜51に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0170】
(付記53)
前記重合後、前記液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜きにより方向を規制されながら傾斜する性質を有するようになる、付記34〜52に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0171】
(付記54)
一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、当該第一のシール壁により囲まれた液晶層と、当該液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、
当該非表示部における液晶層の厚さが当該画像表示部における液晶層の厚さより大きく、
当該非表示部のうち当該液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けた
液晶表示装置の製造方法。
【0172】
(付記55)
前記第二のシール壁の材質および厚さが、それぞれ、前記第一のシール壁の材質および厚さと同一である、付記54に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0173】
(付記56)
前記第二のシール壁の両端が前記表示部に近接または接触している、付記54または55に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0174】
(付記57)
前記第一のシール壁と第二のシール壁との距離が、前記表示部と第二のシール壁との距離よりも大きい、付記54〜56のいずれかに項記載の液晶表示装置の製造方法。
【0175】
(付記58)
前記液晶層に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させてなる、
付記54〜57のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【0176】
(付記59)
前記重合性化合物がアクリレート基またはメタクリレート基またはその両方を有する、付記54〜58のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【0177】
(付記60)
前記重合性化合物が、アクリレート基またはメタクリレート基を、一分子に複数個有する、付記54〜59のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【0178】
(付記61)
前記液晶が、誘電率異方性が負の液晶である、付記54〜60のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【0179】
(付記62)
前記液晶が、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時に基板上に形成された突起または電極の抜きにより方向を規制されながら傾斜する性質を有する、付記54〜61のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【0180】
(付記63)
一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、当該第一のシール壁により囲まれた液晶層と、当該液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、
当該非表示部における液晶層の厚さを当該画像表示部における液晶層の厚さより大きくし、
当該非表示部のうち当該液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設ける、
付記54〜62のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【0181】
(付記64)
第二のシール壁の材質および厚さが、それぞれ、前記第一のシール壁の材質および厚さと同一である、付記63に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0182】
(付記65)
前記第二のシール壁の両端を前記表示部に近接または接触させる、付記63または64に記載の液晶表示装置の製造方法。
【0183】
(付記66)
前記第一のシール壁と第二のシール壁との距離を、前記表示部と第二のシール壁との距離よりも大きくする、付記63〜65のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【符号の説明】
【0184】
21 走査電極
22 薄層トランジスタ
23 画素電極のない部分
31 基板
32 基板
40 絶縁層
41 信号電極
42 画素電極
43 対向電極
44 等電位線
45 液晶分子
46 液晶分子
47 凹み
48 絶縁層
49 絶縁層
71 突起
72 液晶層
73 液晶層接触面のうち、第一の基板側にある面部分
74 斜面
121 ハの字状の異常部分
122 第一のシール壁
123 液晶注入口
141 表示部
142 非表示部
143 第二のシール壁
144 カラーフィルター
147,148
上下の透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層に電圧を印加する電極と液晶分子を垂直に配向させるための垂直配向制御膜とを備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させて、液晶分子にプレチルト角を持たせた液晶表示装置において、
重合後に当該液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下である、液晶表示装置。
【請求項2】
一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、当該第一のシール壁により囲まれた液晶層と、当該液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、
当該非表示部における液晶層の厚さが当該画像表示部における液晶層の厚さより大きく、
当該非表示部のうち当該液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けた
液晶表示装置。
【請求項3】
液晶層に電圧を印加する電極と液晶分子を垂直に配向させるための垂直配向制御膜とを備えた一対の基板間に、液晶と、活性エネルギー線または活性エネルギー線と熱の組み合わせにより重合し得る重合性化合物とを含む液晶組成物を配置し、
電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射または活性エネルギー線の照射と熱とにより当該重合性化合物を重合させて、液晶分子にプレチルト角を持たせる液晶表示装置の製造方法において、
重合後に当該液晶相中に残存している重合性化合物量が、液晶100重量部に対して0.05重量部以下になるまで当該重合を行う、
液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
一対の基板間に、液晶注入口を有する第一のシール壁と、当該第一のシール壁により囲まれた液晶層と、当該液晶層中にあって、画像を表示する表示部と、その周辺にある非表示部とを有し、
当該非表示部における液晶層の厚さが当該画像表示部における液晶層の厚さより大きく、
当該非表示部のうち当該液晶注入口と反対側の位置に、第二のシール壁を設けた
液晶表示装置の製造方法。

【図1−A】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図1−B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2009−163261(P2009−163261A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101597(P2009−101597)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【分割の表示】特願2004−265552(P2004−265552)の分割
【原出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】