説明

液晶表示装置の調整方法、その調整方法を適用して調整することにより製造した液晶表示装置、およびその調整方法を含む液晶表示装置の製造方法

【課題】本発明は、焼付き量が最小となるような直流電圧成分を容易に求めて液晶に印加する電圧を調整することが可能な液晶表示装置の調整方法、その調整方法を適用して調整することにより製造した液晶表示装置、およびその調整方法を含む液晶表示装置の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明による液晶表示装置の調整方法は、液晶に印加される印加電圧を調整する液晶表示装置の調整方法であって、(a)フレームレートコントロール法を用いた、直流電圧成分を含む表示画像を生成する工程と、(b)工程(a)にて生成された表示画像を表示する工程と、(c)工程(b)にて表示された表示画像の表示品位と、直流電圧成分との関係を評価する工程と、(d)工程(c)による評価の結果に基づいて、印加電圧を調整する工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造時における液晶表示装置の調整方法、その調整方法を適用して調整することにより製造した液晶表示装置、およびその調整方法を含む液晶表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックス型の液晶表示装置は、ガラス基板上に画素電極をマトリックス状に形成するとともに、各画素電極に対応して薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を形成し、各画素電極に電圧を印加することによって液晶を駆動するようにした構成となっている。
【0003】
液晶に印加する電圧は、直流電圧を印加すると焼付き現象など液晶の劣化が発生してしまうため、交流駆動方式が採用されている。液晶表示装置では、通常1フレーム毎に表示の切り替えが行われており、当該表示の切り替えにあわせてフレーム毎に極性反転が行われている。1フレームは例えば60Hzからなっている。
【0004】
液晶表示装置を構成する走査線を駆動する際に、走査線と画素電極間の寄生容量などの影響により、走査線(ゲート)の電圧がオンからオフに変化する際に液晶への書き込み電圧が低下して直流電圧成分が発生するという現象が発生する。この現象によって低下した電圧は、フィードスルー電圧と呼ばれている。通常、液晶に印加する電圧は、フィードスルー電圧の影響を見込んで実際に液晶に印加する電圧より高く設定され、かつ、共通電極電圧も最適な値に設定されている。正電圧印加時と負電圧印加時との電圧差(極性反転前後の電圧差)により輝度の差が生じる場合はフィードスルー電圧による直流電圧成分が発生してフリッカや焼付き現象として表れる。フリッカや焼きつき現象が大きいと表示品位の低下につながるため、液晶に印加する電圧および共通電極電圧の最適化は、液晶表示装置の表示性能を向上させるための重要な要因のひとつとされている。
【0005】
フリッカの調整方法としては、フィードスルー電圧に影響するTFTの寄生容量などの値が製造ばらつきにより液晶表示装置毎に異なっていることから、従来では印加電圧を液晶表示装置毎に調整する必要があった。また、隣接画素毎に正負の極性が異なるドット反転方式では、表示品位が優れているため最もよく用いられているが、フリッカが見えにくいため調整が難しい場合があった。
【0006】
上記の問題の対策として、フリッカの調整を容易するために、液晶駆動方式をフリッカが見えやすいフレーム単位での全面反転駆動方式としている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、フィードスルー電圧以外にも液晶に印加する電圧に直流電圧成分が発生する場合がある。例えば、液晶に印加する2つの電極構造自体が互いに非対称である、あるいは互いに異なる材料で構成されることによって、液晶に直流電圧成分が発生する場合がある。この問題の対策として、フィードスルー電圧による直流電圧成分だけでなく、非対称電極構造などから発生する直流電圧成分に対しても予め補正している(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、液晶表示装置の多くの階調表現を行う方式としてフレームコントロール(Frame Rate Control:FRC)方式(FRC法)がある。FRC方式は、設定によって液晶に正または負の直流電圧成分が印加されてしまうため、フリッカや焼付き現象の原因となることがあり表示品位低下の要因となっていた。このような問題の対策として、FRCを設定するフレーム数を多くし、かつ正の直流電圧成分と負の直流電圧成分との発生数を等しく設定することによって表示品位低下を防いでいる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−73802号公報
【特許文献2】特開2002−189460号公報
【特許文献3】特開2005−10520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の液晶表示装置では、液晶表示装置の製造時において、フリッカが最小となるように画素電極に印加する電圧を調整して直流電圧成分を補正していたが、フリッカを最小としても焼付き現象が発生する場合には、表示品位の低下を防ぐための有効な手法とはいえなかった。
【0011】
また、液晶に印加する2つの電極の非対称性が大きい(非対称の程度が大きい)場合などは、補正すべき直流電圧成分が大きいためその最適値を見つけるために多くの手間を必要とし、作業時間の増大およびコスト増加の要因となっていた。また、直流電圧成分を直接変化させて焼付き現象の焼付き量を測定する場合において、従来では信号線電圧を調整する必要があったため液晶表示装置の構造上調整することが難しく、測定を複数回繰り返す必要があり時間がかかっていた。
【0012】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、焼付き量が最小となるような直流電圧成分を容易に求めて液晶に印加する電圧を調整することが可能な液晶表示装置の調整方法、その調整方法を適用して調整することにより製造した液晶表示装置、およびその調整方法を含む液晶表示装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明による液晶表示装置の調整方法は、液晶に印加される印加電圧を調整する液晶表示装置の調整方法であって、(a)フレームレートコントロール法を用いた、直流電圧成分を含む表示画像を生成する工程と、(b)工程(a)にて生成された表示画像を表示する工程と、(c)工程(b)にて表示された表示画像の表示品位と、直流電圧成分との関係を評価する工程と、(d)工程(c)による評価の結果に基づいて、印加電圧を調整する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、(a)フレームレートコントロール法を用いた、直流電圧成分を含む表示画像を生成する工程と、(b)工程(a)にて生成された表示画像を表示する工程と、(c)工程(b)にて表示された表示画像の表示品位と、直流電圧成分との関係を評価する工程と、(d)工程(c)による評価の結果に基づいて、印加電圧を調整する工程とを備えるため、焼付き量が最小となるような直流電圧成分を容易に求めて液晶に印加する電圧を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1による液晶表示装置の製造工程の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1による液晶表示装置の表示エリアを示す図である。
【図3】本発明の実施形態1による液晶表示装置の表示エリアを示す図である。
【図4】本発明の実施形態1による液晶表示装置の表示エリアを示す図である。
【図5】本発明の実施形態1による液晶表示装置の画素の状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1による液晶表示装置にFRC法を適用していない場合における画素電圧のタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態1による液晶表示装置の各領域におけるフレームごとの各画素の駆動電圧、平均直流電圧成分、および表示状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態1による液晶表示装置における直流電圧成分と焼付き量との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態2および実施形態3による液晶表示装置の構成を説明するための平面図である。
【図10】本発明の実施形態5による液晶表示装置の液晶に印加される電界方向を示す断面図である。
【図11】前提技術による液晶表示装置の構成を示す平面図である。
【図12】前提技術による液晶表示装置の駆動を示す電圧波形のタイミングチャートである。
【図13】前提技術によるFRC法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。
【0017】
〈前提技術〉
まず、本発明の前提技術について説明する。
【0018】
図11は、前提技術による液晶表示装置の構成を示す平面図である。図11に示すように、外部から入力された映像信号は、装置内のタイミング信号発生回路61および映像信号処理回路62にて基板10に入力する信号に変換される。共通電極電圧発生回路63は、例えば、共通電極が一定となる駆動方式の場合において常に一定の直流電圧を供給している。基板10は、例えば、TFTアレイ基板およびカラーフィルター(Color Filter:CF)基板などから形成されている。基板10には、表示領域41と当該表示領域41を囲むように設けられた額縁領域42とが設けられている。表示領域41には、複数の走査線43(ゲート配線)と複数の信号線44(ソース配線)とが、それぞれ平行に形成されている。また、走査線43と信号線44とは、互いに交差するように形成されている。画素47は、隣接する走査線43と信号線44とで囲まれた領域である。従って、基板10では、画素47はマトリクス状に配列される。共通電極11は、走査線43と平行に形成されている。
【0019】
基板10の額縁領域42には、走査信号駆動回路45と表示信号駆動回路46とが設けられている。走査線43は、表示領域41から額縁領域42まで延設され、基板10の端部で走査信号駆動回路45に接続されている。また、信号線44も同様に、表示領域41から額縁領域42まで延設され、基板10の端部で表示信号駆動回路46と接続されている。
【0020】
走査信号駆動回路45および表示信号駆動回路46には、外部からの各種信号が供給される。走査信号駆動回路45は、タイミング信号発生回路61からの制御信号に基づいて、順次選択された走査線43に走査信号を供給する。表示信号駆動回路46は、映像信号処理回路62からの制御信号や表示データに基づいて、信号線44に表示信号を供給する。これにより、表示データに応じた表示電圧を各画素47に供給することができる。
【0021】
画素47内には、少なくとも1つのTFT50が形成されている。TFT50は信号線44と走査線43との交差点近傍に配置される。例えば、TFT50は画素電極に表示電圧を供給し、走査線43からの走査信号によって、スイッチング素子であるTFT50がオンする。この状態で、信号線44からの表示信号によって、TFT50のドレイン電極に接続された画素電極に表示電圧が印加される。
【0022】
なお、図11に示す基板10の表面には、配向膜が形成されている。また、液晶容量48および補助容量49は同一の共通電極11に接続されているが、同一である必要はなく、独立して配線され額縁領域42で電気的に接続される場合もある。
【0023】
図12は、前提技術による液晶表示装置の駆動を示す電圧波形のタイミングチャートである。液晶表示装置は通常1フレーム毎に表示の切り替えが行われており、それにあわせてフレーム毎に極性反転が行われている。図12に示すように、液晶に電圧を印加する2つの電極のうち一方の電極(例えば、共通電極)に印加される電圧を基準電圧とした場合において、他方の電極(例えば、画素電極)に対してあるフレームでは基準電圧より高い正の電圧が印加され、その次のフレームでは基準電圧より低い負の電圧が印加されており、液晶には正負の電圧が交互に印加されている。
【0024】
走査線を駆動する際において、走査線と画素電極との間の寄生容量などの影響によって、走査線(ゲート)の電圧がオンからオフに変化するときに液晶への書き込み電圧が低下するという現象が発生する。この現象によって低下した電圧は、フィードスルー電圧(図12の直流電圧成分)とよばれている。通常、液晶に印加する電圧はフィードスルー電圧の影響を見込んで実際に液晶に印加する電圧よりも高く設定され、かつ、共通電極電圧も最適な値に設定されている。
【0025】
次に、液晶表示装置の中間調の表示方式について説明する。最も簡単な方法は、液晶に印加する電圧を映像信号の表示階調毎に設定する方法であるが、当該方法は表示階調数に対応した複数のアナログ電圧値を出力するために、表示信号駆動回路に含まれる内部素子数を増やす必要があるため、製造コストが高くなるという問題点がある。
【0026】
製造コストを高めずに表示階調数を増やす方法としては、フレームレートコントロール(Frame Rate Control:FRC)方式(以下、単にFRC方式とも称する)がある。図13は、前提技術によるFRC法を説明するための図である。なお、階調が高くなると液晶に印加される電圧の絶対値が大きくなる場合について説明する。また、液晶印加電圧と液晶評価装置の輝度のみについて考察し、フィードスルーの影響は省略している。図13に示すように、フレーム1では正の電圧が、フレーム2では負の電圧が印加されている。図13(a)は高階調時を示し、図13(c)は低階調時を示している。図13(a)および図13(b)のそれぞれにおいて、フレーム1とフレーム2とに対して液晶に印加される電圧は、VCOMに対して絶対値が等しい正負の値となっている。一方、図13(b)では、フレーム1に対しては図13(a)と同じ正の大きな電圧が印加され、フレーム2では図13(c)と同じ負の小さな電圧が印加されている。このときの明るさは図13(a)と図13(c)との中間の明るさとなる。図13(a)と図13(c)の2階調しか持たない液晶表示装置に対して図13(b)のような状態を追加することによって3階調の表示が可能となる。ただし、図13(b)の状態ではVCOMに対して正の平均直流電圧成分が発生している。なお、図13では、1画素に対して2フレームでFRCを設定しているため階調数が1増えるだけであったが、基準となるフレームの繰りかえし数を多く設定すればそれだけ多くの中間調を生成することが可能となる。
【0027】
前述の通り、液晶に印加する2つの電極の非対称性が大きい(非対称の程度が大きい)場合やFRC方式による中間階調の表現時には直流電圧成分が生じ、これが焼付きとなって表示品位を低下させる要因となっていた。従来では、直流電圧成分を直接変化させて焼付き現象の焼付き量を測定する場合において、信号線電圧を調整する必要があるため液晶表示装置の構造上調整することが難しく、測定を複数回繰り返す必要があり時間がかかっていた。
【0028】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、詳細を以下に説明する。
【0029】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1による液晶表示装置の製造工程の一例を示す図である。図1に示すように、TFT側ガラス基板(TFTが形成されるガラス基板)上には、画素を駆動させるためにTFT、配線、および画素電極が形成される。CF側ガラス基板(CFが形成されるガラス基板)上にはブラックマトリックス、各色のカラーフィルター、オーバーコート膜、および透明電極膜が形成される。なお、これらは全て形成される必要はなく、形成の順序が変更されてもよい。また、図1の例とは別に一方のガラス基板にTFTおよびCFの機能を集約するよう形成してもよい。また、カラーフィルターの色は一般的にはRed(赤)、Green(緑)、Blue(青)であるがこれに限定されるものではない。また、モノクロ表示パネルであればカラーフィルターは不要であり、カラー表示パネルでもバックライトにて色を制御する場合はカラーフィルターを形成しなくてもよい。
【0030】
次に、両方の基板に配向膜を配置し、配向膜形成後にラビング処理を行う。垂直配向液晶などではラビング処理が不要な場合がある。次に、TFT側基板に周辺シール部を形成し、CF側基板にギャップ材を形成する。周辺シール部、ギャップ材形成は、どちらの基板に形成してもよい。また、ギャップ材は配向膜が形成される前のTFT側ガラス基板、CF側ガラス基板のいずれかに形成されてもよい。
【0031】
次に、TFT側ガラス基板とCF側ガラス基板とを重ね合わせ、個々の液晶表示装置に分離させるために2つのガラス基板を切断して、ガラス基板で重なった領域に液晶を注入して封止する。なお、液晶の注入はガラス基板の重ね合せ前に行ってもよい。
【0032】
TFT側ガラス基板およびCF側ガラス基板に偏光板を貼り付けた後、実装基板を取り付ける。最後にバックライトを取り付けることで液晶モジュールとして完成する。一般的に、実装基板の内部には液晶に印加する電源回路などが含まれている。液晶に印加される電圧は前提技術(図11参照)で説明した信号線44と共通電極11との電圧で決まるため、製造時には焼付きなどの表示不良が発生しないようにこれらの電圧を調整する必要がある。なお、信号線の電圧は表示階調毎に決められている。このようにして液晶表示装置が製造される。
【0033】
次に、本実施形態1による液晶表示装置の焼付きを評価する方法について説明する。
【0034】
図2は、本実施形態1による液晶表示装置の表示エリアを示す図である。図2に示すように、表示エリアを複数の焼付き領域(領域1〜5)に分割し、各領域に対して異なる条件で焼付きを測定することによって1回で5つの条件について測定することができ、短時間での評価が可能となる。すなわち、本実施形態1では、直流電圧成分がそれぞれ異なる複数の表示画像を一つの液晶表示装置に同時に表示する。焼付き量の評価は、最初に全面一様な条件で表示させ、次ぎに焼付き表示に切り替え、最後に全面一様な条件での表示に戻した際における輝度変化量の大きさを測定することによって定義することができる。
【0035】
なお、測定は目視でもよく、輝度分布を定量的に測定してもよい。また、図2では領域を5分割しているが、それより多くても少なくてもよい。また、同じ条件に設定された領域を複数配置してもよく、1条件1領域に限定してもよい。また、図3に示すように、領域1〜5の周辺に非焼付き領域(領域6)を表示させ、焼付き領域(領域1〜5)と非焼付き領域(領域6)との差を見るようにしてもよい。また、図4に示すように、領域1〜領域5を表示エリア内に複数配置して、面内分布の影響を調べるようにしてもよい。
【0036】
次に、図2から図4に示される各領域の詳細な設定について説明する。
【0037】
ここでは説明を簡単にするために、FRCの設定(FRC法を用いた設定)を2×2画素単位で行うものとする。図5は、本実施形態1による液晶表示装置の画素の状態を示す図である。図5に示すように、液晶表示装置では、2×2画素単位が複数配置されており、各画素単位はa、b、c、dの4種類の画素で構成されている。なお、FRCの設定は、2×2画素より多くの画素単位としてもよい。また、図5では、液晶表示装置の色(例えば、Red、Green、Blue)の違いは省略している。
【0038】
次に、a、b、c、dの4種類の画素について個別に説明する。図6は、本実施形態1による液晶表示装置にFRC法を適用していない場合における画素電圧のタイミングチャートである。図5に示すように、液晶に印加される電圧と明るさについて、FRCを用いていない2つの状態(図5(a)、図5(b))を定義する。図5(a)は、輝度が明るい状態を示しており、このとき液晶に印加される電圧は、VCOMに対して正の電圧をVPH、負の電圧をVMHとする。また、図5(b)は、輝度が暗い状態を示しており、このとき液晶に印加される電圧は、VCOMに対して正の電圧をVPL、負の電圧をVMLとする。なお、VPH、VMHの絶対値はそれぞれ、VPL、VMLの絶対値より大きいとする。
【0039】
2×2画素に対してFRCを設定する方法はいくつか考えられるが、ここでは図7に示す領域1(図7(a))、領域2(図7(b))、領域4(図7(d))、領域5(図7(e))の4つの状態について定義する。図7は、本実施形態1による液晶表示装置の各領域におけるフレームごとの各画素の駆動電圧、平均直流電圧成分、および表示状態を示す図である。図7に示すように、本実施形態1では、4フレーム単位で周期的に画像を変化させる(以下、FRCパターンとも称する)とする。
【0040】
図7(a)に示すように、領域1では、各フレームの表示時において、2つの画素を低輝度とし2つの画素を高輝度としている。また、各画素の4フレーム内での平均直流電圧成分は全て(VPH+VML)/2となるように設定している。
【0041】
同様に、領域2、4、5についても定義する。領域2、4では、3つの画素を低輝度とし1つの画素を高輝度としている。また、領域5は2つの画素を低輝度とし2つの画素を高輝度としている。なお、領域3はFRCを設定していない4つの画素全てを低輝度とした場合について示している。
【0042】
上記のVPH=+5V、VPL=+4V、VCOM=0V、VML=−4V、VMH=−5Vとすると、領域1の平均直流電圧成分は+0.5Vとなり、領域2の平均直流電圧成分は+0.25Vとなり、領域4の平均直流電圧成分は−0.25Vとなり、領域5の平均直流電圧成分は−0.5Vとなる。また、FRCを設定していない領域3の平均直流電圧成分は0Vである。このように平均直流電圧成分が設定された領域1〜5を図2〜4のいずれかに示すように配置し、各領域1〜5を同時に液晶表示装置に表示して焼付き評価を行うことによって、1回の測定で5条件の直流電圧成分による焼付きの影響を測定することが可能となる。すなわち、本実施形態1では、FRC法を用いて、直流電圧成分を含む表示画像を生成し、生成された表示画像を表示している。
【0043】
図8は、本実施形態1による液晶表示装置における直流電圧成分と焼付き量(表示品位)との関係を示す図である。図8の実線に示すように、焼付きに対して未知の直流電圧成分が発生している場合において、上述の条件で焼付き評価を行う(すなわち、表示された表示画像の焼付き量(表示品位)と、直流電圧成分との関係を評価する)ことによって、直流電圧成分が0.25V近傍のときに焼付き量の最小値であることを明確にすることができる。従って、焼付き量が最小となる直流電圧成分を求めることが可能となる。すなわち、焼付き量が最小になる直流電圧成分を評価し、焼付き量が最小になる直流電圧成分となるように印加電圧を調整する。なお、本実施形態1では、FRCの設定の周期は4フレームであったが、周期当たりのフレーム数を多くすると設定可能な条件数を多くすることが可能である。また、その他のFRCの設定についても本説明について限定するものではなく、他の方法を用いてもよい。また、本実施形態1では、直流電圧成分は5条件で設定したが、更に多く設定すれば高精度に焼付き最小となる条件を求めることが可能となる。また、少なくとも直流電圧成分は3条件で設定すれば最小2乗法から最適な値を求めることが可能となる。
【0044】
以上のことから、焼付き量が最小となるような直流電圧成分を容易に求め、当該直流電圧成分に基づいて液晶に印加する電圧を調整することが可能となる。また、調整が容易になることによって、従来よりも調整時間を短縮することができ、液晶表示装置の低価格化を達成することができる。また、上記の調整方法を適用して調整された液晶表示装置を製造することによって、焼付きの影響が小さい液晶表示装置が得られ、焼付きによる表示不良を防ぐことができて表示品位が向上するという効果が得られる。
【0045】
なお、調整を行った後の実際の液晶表示装置の使用時には、上述の通り設定したFRCパターンによる直流電圧成分が焼付き最小となる条件に近ければそのまま用いてもよく、使用しなくてもよい。焼付きが大きくなる条件であれば用いない方が好ましい。
【0046】
〈実施形態2〉
本発明の実施形態2では、FRC法を用いて直流電圧成分を含む表示画像の生成が、液晶表示装置に接続した外部装置で行われることを特徴としている。以下、液晶表示装置に任意に設定したFRCパターンを表示する具体的な方法の一例として、液晶表示装置にFRC方式の中間階調発生方法が存在しない場合について説明する。
【0047】
図9は、本実施形態2による液晶表示装置の構成を説明するための平面図である。図9では外部信号源64が示されているが、その他の構成は図11と同様であるためここでは説明を省略する。図9に示すように、液晶表示装置には外部信号源64(外部装置)が接続されており、外部信号源64から液晶表示装置に映像信号が入力されている。外部信号源64にて任意に設定したFRCのパターンを発生できるようにすれば、液晶表示装置にFRCの機能が内蔵されていなくても所定の目的を果たすことができ、液晶表示装置の製造コスト抑制することができる。
【0048】
以上のことから、本実施形態2によれば、液晶表示装置にFRCの機能が内蔵されていない場合であっても、外部信号源64を用いることによって実施形態1と同様の効果が得られるとともに、液晶表示装置の製造コスト抑制することができる。また、液晶表示装置にFRCの機能が内蔵されている場合であっても、外部信号源64を用いることによって複雑なFRCパターンを表示することができる。
【0049】
〈実施形態3〉
本発明の実施形態3では、FRC法を用いて直流電圧成分を含む表示画像の生成が、液晶表示装置の内部機能で行われることを特徴としている。以下、液晶表示装置に任意に設定したFRCパターンを表示する具体的な方法の一例として、液晶表示装置にFRC方式の中間階調発生方法の機能が存在する場合について図9を用いて説明する。
【0050】
図9に示すように、液晶表示装置には外部信号源64から映像信号が入力されている。外部信号源64では、通常の表示信号のみが生成されている。装置内の映像信号処理回路62は、FRCの機能を有しており(内部機能)、FRCパターンを生成することができる。その他の処理および動作は、実施形態1と同様であるためここでは説明を省略する。液晶表示装置を上記の構成とすることによって、外部信号源64には低価格で簡単な機能のみを有するものを用いることができる。
【0051】
以上のことから、本実施形態3によれば、液晶表示装置に内蔵されたFRCの機能を用いることによって、簡素な構成の外部信号源64を用いることができ、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
〈実施形態4〉
本実施形態4では、任意に設定したFRCパターンを表示して直流電圧成分の最適化を行う液晶表示装置の具体的な台数について説明する。
【0053】
焼付き量が最小となる直流電圧成分の最適値は、個々の液晶表示装置によってわずかに異なることがある。その要因は、製造時のばらつきに構成部材の膜厚や寸法等が異なることによって直流電圧成分が異なるためである。このような場合に、個別の液晶表示装置毎に実施形態1〜3による方法を用いて直流電圧成分の最適化を行えば焼付き量が小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0054】
一般的に、液晶パネル内部の構造が全て同じ仕様の液晶表示装置であれば、多少の製造ばらつきが発生しても、焼付き量が最小となる直流電圧成分は大きく変わらない場合が多い。そこで、同じ仕様の液晶表示装置については、1から数台に対して実施形態1〜3による方法を用いて直流電圧成分の最適化を行って焼付き量が最小となる直流電圧成分を求める。そして、1から数台に対して求められた直流電圧成分を、他の全ての液晶表示装置に適用することによって、焼付き量が小さい液晶表示装置を得ることができる。すなわち、同一仕様の液晶表示装置が複数ある場合において、少なくとも1つ以上の液晶表示装置に対して調整方法を行い、当該調整方法と同条件の調整を他の液晶表示装置に対しても行っている。このように、全ての液晶表示装置に対して直流電圧成分を求めて調整する必要がないため、調整に必要な時間を短縮することができる。なお、調整の対象となる液晶表示装置の台数は多いほどよいが、台数が多いと調整に必要な時間が長くなってしまうので、対象台数は例えば1から10台程度が好ましい。
【0055】
以上のことから、本実施形態4によれば、個別の液晶表示装置に対して直流電圧成分を求めることによって、焼付き量が最小となる直流電圧成分が個々の液晶表示装置で異なる場合であっても、焼付き量が小さい液晶表示装置を得ることができる。また、同一仕様の液晶表示装置について、1から複数台の液晶表示装置に対して直流電圧成分を求めることによって、個別の液晶表示装置に対して調整を行う場合よりも容易に焼付きが小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0056】
〈実施形態5〉
本発明の実施形態による液晶表示装置の調整方法は、液晶表示装置のどのような液晶モード(型)であっても適用可能である。以下では、各種の液晶モードについて説明する。図10は、複数の液晶モードについて、液晶に印加される電界方向を示す液晶表示装置の断面図である。なお、図10において、液晶に印加される電極とその間に形成される物以外で、例えばTFTや配線等は大幅に省略している。
【0057】
図10(a)は、代表的な液晶モードであるTN(Twist Nematic:TN)型の液晶表示装置を示す図であり、第1のガラス基板1側に第1の電極2が、第2のガラス基板7側に第2の電極6がそれぞれ配置されている。第1の電極2と第2の電極6との間には第1の配向膜3と第2の配向膜5とが配置され、第1の配向膜3と第2の配向膜5との間に液晶4が配置されている。電界は、第1の電極2と第2の電極6の間の上下方向に発生している。図10(a)に示すような構造であっても、実際の液晶パネル内ではTFT等の構造が存在することによって液晶に電圧を印加する2つの電極の面積や形状が互いに異なっているため非対称構造となり、液晶に対して電圧を印加したときに直流電圧成分が発生することがある。垂直配向型の液晶モードなどもほぼ同様である。
【0058】
図10(a)に示すような液晶表示装置において、上記の他に反射型液晶表示装置がある。反射型液晶表示装置は、第1の電極2が、例えばIn、Sn、およびOの化合物や、In、Zn、およびOの化合物などの導電性を持つ透明な膜で形成されており、第2の電極6は、AlやAg、およびそれらを主成分とする合金で形成されている。このように、第1の電極2と第2の電極6とが異種の金属となる場合には、それらの仕事関数差によって起電力が生じて大きな直流電圧成分が発生する場合がある。半透過型液晶表示装置についても反射型液晶表示装置と同様に、大きな直流電圧成分が発生する場合がある。従って、反射型液晶表示装置に限らず、第1の電極2と第2の電極6とが異なる材質で形成されている場合には、液晶に対して電圧を印加したときに直流電圧成分が発生する。
【0059】
図10(b)は、インプレーンスイッチング(In−Plane Switching:IPS)モードの液晶表示装置を示す図である。図10(b)に示すような液晶表示装置では、第2の電極6上に絶縁膜8が配置された構造となっているため、第1の電極2と第2の電極6とが非対称構造となって直流電圧成分が発生することがある。第1の電極2および第2の電極6上のいずれにも絶縁膜8が配置されていない場合でも、TFT等の構造の影響で非対称構造となって直流電圧成分が発生することがある。
【0060】
図10(c)は、フリンジフィールドスイッチング(Fringe Field Switching:FFS)モードの液晶表示装置を示す図である。図10(c)に示すような液晶表示装置における直流電圧成分は、図10(b)に示すような液晶表示装置と同様に考えればよい。
【0061】
なお、上記で説明したIPSモードやFFSモードに限らず、片側が配向膜以外の絶縁膜で覆われている場合は同じように考えればよい。また、電極に対して絶縁膜が部分的に除去されて一部のみが覆われている場合(すなわち、2つの電極のうち、一方の電極の少なくとも一部が絶縁膜で覆われている場合)も同じように考えればよい。また、絶縁膜は、無機材料、有機材料のいずれであってもよい。無機材料の例としては、SiNやSiO2などがあり、有機材料としては、アクリル系樹脂などがある。また、2つの電極が異なる材質で形成された上にどちらかに絶縁膜が形成されていてもよい。
【0062】
上記では電極や絶縁膜の違いについて説明したが、他に、第1の配向膜3と第2の配向膜5との種類や膜厚が違う場合なども同様に考えればよい。なお、図10において、第1の電極2と第2の電極6とは、それぞれ画素電極と共通電極のいずれであってもよい。また、上記で説明した以外の液晶モードであっても、構造や材料の非対称性があれば同様に考えてよい。
【符号の説明】
【0063】
1 第1のガラス基板、2 第1の電極、3 第1の配向膜、4 液晶、5 第2の配向膜、6 第2の電極、7 第2のガラス基板、8 絶縁膜、10 基板、11 共通電極、41 表示領域、42 額縁領域、43 走査線、44 信号線、45 走査信号駆動回路、46 表示信号駆動回路、47 画素、48 液晶容量、49 補助容量、50 TFT、61 タイミング信号発生回路、62 映像信号処理回路、63 共通電極電圧発生回路、64 外部信号源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶に印加される印加電圧を調整する液晶表示装置の調整方法であって、
(a)フレームレートコントロール法を用いた、直流電圧成分を含む表示画像を生成する工程と、
(b)前記工程(a)にて生成された前記表示画像を表示する工程と、
(c)前記工程(b)にて表示された前記表示画像の表示品位と、前記直流電圧成分との関係を評価する工程と、
(d)前記工程(c)による前記評価の結果に基づいて、前記印加電圧を調整する工程と、
を備えることを特徴とする、液晶表示装置の調整方法。
【請求項2】
前記工程(b)は、前記直流電圧成分がそれぞれ異なる複数の前記表示画像を一の前記液晶表示装置に同時に表示することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置の調整方法。
【請求項3】
前記工程(a)は、前記液晶表示装置に接続した外部装置で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶表示装置の調整方法。
【請求項4】
前記工程(a)は、前記液晶表示装置の内部機能で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶表示装置の調整方法。
【請求項5】
前記工程(c)において、前記表示品位は焼付き量であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の液晶表示装置の調整方法。
【請求項6】
前記工程(c)において、前記焼付き量が最小になる前記直流電圧成分を評価し、前記工程(d)において、前記焼付き量が最小になる前記直流電圧成分となるように前記印加電圧を調整することを特徴とする、請求項5に記載の液晶表示装置の調整方法。
【請求項7】
前記調整方法は、個別の前記液晶表示装置に対してそれぞれ行われることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の液晶表示装置の調整方法。
【請求項8】
同一仕様の前記液晶表示装置が複数ある場合において、少なくとも1つ以上の前記液晶表示装置に対して前記調整方法を行い、当該調整方法と同条件の調整を他の前記液晶表示装置に対しても行うことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の液晶表示装置の調整方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の調整方法を適用して調整することにより製造された液晶表示装置。
【請求項10】
前記液晶に前記印加電圧を印加するための2つの電極を備え、当該2つの電極はそれぞれ異なる材質であることを特徴とする、請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記2つの電極のうち、一方の電極の少なくとも一部が絶縁膜で覆われていることを特徴とする、請求項9または10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
請求項1ないし8のいずれかに記載の液晶表示装置の調整方法を含む液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−177734(P2012−177734A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39405(P2011−39405)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】