説明

液晶表示装置用光拡散シート

【課題】光拡散機能に加えて近赤外線吸収機能を有し、液晶表示装置の近赤外線の放出及び輝度等の性能の低下を抑制することができる液晶表示装置用光拡散シートの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、透明な基材層とこの基材層の表面側に積層される光拡散層とを備える液晶表示装置用光拡散シートであって、近赤外線吸収剤を含有し、近赤外線透過率が50%以下であることを特徴とする。上記基材層の裏面側に、バインダー中にビーズが分散するスティッキング防止層を備えるとよい。上記基材層、光拡散層及び/又はスティッキング防止層に近赤外線吸収剤を含有するとよい。上記近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を備えてもよい。可視光透過率としては50%以上、全光線透過率としては50%以上が好ましい。上記基材層のリタデーション値としては50nm以下が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過光線を拡散させる光拡散機能と共に近赤外線吸収機能を有する液晶表示装置用光拡散シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。近年、液晶表示装置に要求される特性は、用途により様々であるが、明るい(高輝度化)、見やすい(広視野角化)、省エネルギー化、薄型軽量化等が挙げられる。
【0003】
従来の一般的な液晶表示装置は、図6に示すように、液晶表示素子51、各種の光学シート52及びバックライト53が表面側から裏面側にこの順に重畳された構造を有している。液晶表示素子51は、一対の偏光板54,55間に液晶セル56が挟持された構造を有し、TN、IPS等の様々な表示モードが提案されている。バックライト53は、液晶表示素子51を裏面側から照らして発光させるものであり、エッジライト型(サイドライト型)、直下型など形態が普及している。各種光学シート52は、液晶表示素子51及びバックライト53間に重畳されており、バックライト53の表面から出射された光線を効率良くかつ均一に液晶表示素子51全面に入射させるべく、法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を有する光拡散シート、プリズムシート等を備えている。
【0004】
液晶表示素子51の偏光板54,55は、吸収2色性により原理的に50%の光が吸収されるため、液晶表示装置の光の利用効率を低下する大きな理由の一つとなっている。かかる偏光板54,55による光の利用効率を低下を改善すべく、液晶表示装置における裏面側偏光板55の裏面側に反射偏光板(偏光分離器)を重畳する技術や、裏面側偏光板55の代わりに反射偏光板を用いる技術が開発されている。この反射偏光板は、裏面側偏光板55の透過軸成分についてはそのまま透過させ、それ以外の偏光成分を下方側へ戻すことで、光線を再利用するものである。
【0005】
また光学シート52は、具体的には光拡散シート、プリズムシート等であり、一般的には合成樹脂製の透明な基材層と、この基材層の表面に積層される光拡散層、プリズム列層等の光学層とを備えている(例えば特開2000−89007号公報、特開2004−4970号公報等参照)。これらの従来の光学シート52は、所定の構造を有する光学層によって法線方向側への屈折、拡散等の光学的機能を奏するよう構成されており、可視光の制御を意図している。
【特許文献1】特開2000−89007号公報
【特許文献2】特開2004−4970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今日まで液晶表示装置からは近赤外線の放出がないと考えられていたため、上記従来の液晶表示装置は、高輝度化、広視野角化、省エネルギー化、薄型軽量化等の向上を意図して設計されており、近赤外線の放出を防止するような機能を有していない。
【0007】
しかし、本発明者は、上記従来の液晶表示装置からもバックライト53の光源として使用される冷陰極管等に起因して近赤外線が放出されていることを見出した。このように液晶表示装置から放出される近赤外線により、近赤外線を使用するテレビ、エアコン、ビデオ等の家電機器のリモートコントロールシステムに誤作動を引き起こすおそれがある。また人体に悪影響を及ぼすおそれもある。特に今日では、液晶表示装置の大画面化が促進され、バックライト53の出力が増大する傾向にあるため、上述の近赤外線の放出による影響が大きくなると見込まれる。
【0008】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、光拡散機能に加えて近赤外線吸収機能を有し、液晶表示装置の近赤外線の放出及び輝度等の性能の低下を抑制することができる液晶表示装置用光拡散シートの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
透明な基材層と、この基材層の表面側に積層される光拡散層とを備える液晶表示装置用光拡散シートであって、
近赤外線吸収剤を含有し、
近赤外線透過率が50%以下であることを特徴とする液晶表示装置用光拡散シートである。
【0010】
当該液晶表示装置用光拡散シートは、近赤外線吸収剤を含有し、近赤外線吸収率が50%以下に調整されているため、液晶表示装置のバックライトから放出される近赤外線を効果的に吸収し、近赤外線の外部への放出を抑制することができる。そのため、当該液晶表示装置用光拡散シートは、液晶表示装置から放出される近赤外線による人体への悪影響や様々な家電リモートコントロール機器の誤作動を防止することができる。
【0011】
上記基材層の裏面側に、バインダー中にビーズが分散するスティッキング防止層を備えるとよい。このように基材層の裏面側にスティッキング防止層を備えることで、例えば液晶表示装置において、当該光拡散シートの裏面側に配設される導光板、プリズムシート等とのスティッキングが防止される。
【0012】
上記基材層、光拡散層及び/又はスティッキング防止層に近赤外線吸収剤を含有するとよい。このように近赤外線吸収剤を光拡散シートの基本構成層に混練することで、層数を増やすことなく近赤外線吸収機能が発現され、当該光拡散シートの薄型化及び輝度の低下防止に寄与する。
【0013】
一方、上記近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を備えてもよい。このように近赤外線吸収層を別途設けることで、光拡散シートの光拡散性等の光学的設計が容易になり、かつ近赤外線吸収機能の制御も容易かつ確実になる。
【0014】
当該液晶表示装置用光拡散シートにおいて、可視光透過率としては50%以上、全光線透過率としては50%以上が好ましい。このように可視光透過率及び全光線透過率を上記範囲とすることで、当該液晶表示装置用光拡散シートが近赤外線吸収機能を有することに起因する液晶表示装置の輝度の低下を抑制することができる。
【0015】
上記基材層のリタデーション値としては50nm以下が好ましい。液晶表示装置において、光線の利用効率を向上させるべく、液晶表示素子の裏面側偏光板(又はその裏面側の反射偏光板)の透過方向に入射光線の偏光方向(光線の偏光成分の最大平面方向)が合致するようバックライト、各種光学シート等の偏光特性が設計されている。そのため、このように基材層のリタデーション値を小さくすることで、当該液晶表示装置用光拡散シートによる透過光線の偏光方向の変換作用を抑制し、偏光板等の透過軸方向への偏光の最適化及び制御性に対して当該液晶表示装置用光拡散シートが及ぼす影響を抑制することができる。
【0016】
上記基材層を構成するマトリックス樹脂としてはポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートを用いとよい。かかるポリエチレンテレフタレートは安価でかつ強度、耐熱性等の諸機能に優れるため、基材層をポリエチレンテレフタレートを主ポリマーとして形成することで、当該液晶表示装置用光拡散シートの低コスト性、強度、耐熱性、熱的寸法安定性等が促進される。またポリカーボネートはリタデーション値の制御が容易であるため、基材層をポリカーボネートを主ポリマーとして形成することで、当該液晶表示装置用光拡散シートのリタデーション値を上述のような小さい範囲等に容易かつ確実に調整することができる。
【0017】
上記基材層の平均厚さとしては25μm以上1000μm以下が好ましい。上述のように液晶表示装置から放出される近赤外線による悪影響は大画面の液晶表示装置ほど大きいと考えられるが、このように基材層の平均厚さを上記範囲とすることで、当該液晶表示装置用光拡散シートの強度、撓み防止性等の特性が向上し、液晶表示装置の大画面化に対応することができる。
【0018】
上記光拡散層における表面粗さ(Ra)としては0.1μm以上0.5μm以下、表面粗さ(Ry)としては1μm以上20μm以下が好ましい。このように光拡散層の表面粗さ(Ra)及び表面粗さ(Ry)を上記範囲とすることで、当該液晶表示装置用光拡散シートの全光線透過率の低下を抑制しつつ液晶表示装置の画面のギラツキを防止することができる。
【0019】
上記光拡散層としては、(a)光拡散剤とそのバインダーとを有するもの(ビーズ塗工層等)や、(b)微小な凹凸形状を有するもの(マット層、マイクロレンズアレイ層、プリズムシートのプリズム列層等)とすることができる。かかるビーズ塗工シート、マットシート、マイクロレンズシート、プリズムシートなどの光学シートは通常液晶表示装置に使用されているため、当該手段のように一般的に備えられる光学シートとして当該液晶表示装置用光拡散シートを用いることで、液晶表示装置の光学シートの装備枚数の増大を招来することなく、近赤外線の放出が防止され、家電リモートコントロール機器の誤作動を防止することができる。
【0020】
なお、本発明において、「近赤外線透過率」とは波長が900nm以上1100nm以下の光線の透過率を意味し、「可視光透過率」とは波長が400nm以上700nm以下の光線の透過率を意味する。また「表面粗さ(Ra)」は算術平均粗さを意味し、「表面粗さ(Ry)」とは最大粗さを意味する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の液晶表示装置用光拡散シートは、光拡散機能に加えて近赤外線吸収機能を有し、液晶表示装置からの近赤外線の放出に起因する家電リモートコントロール機器の誤作動等の弊害を防止することができ、かつ液晶表示装置の輝度等の性能の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図、図2は図1の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図、図3は図1及び図2の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図、図4は図1、図2及び図3の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図、図5は図1、図2、図3又は図4の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図である。
【0023】
図1の液晶表示装置用光拡散シート1は、基材層2と、基材層2の表面に積層される光拡散層3と、基材層2の裏面に積層される近赤外線吸収層4とを備えている。
【0024】
基材層2は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。かかる基材層2に用いられる合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等が挙げられる。中でも、透明性に優れ、強度、耐熱性、熱的寸法安定性、撓み防止性が高いポリエチレンテレフタレートが好ましく、リタデーション値の制御性に優れるポリカーボネートが好ましい。
【0025】
基材層2の平均厚みとしては、特に限定されないが、25μm以上1000μm以下、特に150μm以上800μm以下、さらに188μm以上500μm以下が好ましい。基材層2の平均厚みが上記範囲未満であると、当該液晶表示装置用光拡散シートの強度、撓み防止性等の特性が低下し、液晶表示装置の大画面化に対応することができなくなるおそれがある。一方、基材層2の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示装置の輝度が低下してしまうおそれがあり、また液晶表示装置の薄型化の要求に反することにもなる。
【0026】
光拡散層3は、表面に微小かつランダムな凹凸形状を有している。この光拡散層3表面の微細凹凸形状により、透過光線を拡散させる機能が奏される。光拡散層3は、基材層2と一体でも別体でもよい。光拡散層3は、上記基材層2と同様の合成樹脂から形成されており、凹凸形状の成形性に優れる紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂、透明性及び強度に優れるポリエチレンテレフタレート及びリタデーション値の制御性に優れるポリカーボネートが特に好ましい。また基材層2としてポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム又はポリカーボネートフィルムを用い、その上に紫外線硬化性樹脂などで光拡散層3を形成することも好ましい。
【0027】
光拡散層3の表面粗さ(Ra)としては、0.1μm以上0.5μm以下が好ましく、0.2μm以上0.4μm以下が特に好ましい。また光拡散層3の表面粗さ(Ry)としては、1μm以上20μm以下が好ましく、5μm以上15μm以下が特に好ましい。このように光拡散層3の表面粗さ(Ra)及び表面粗さ(Ry)を上記範囲とすることで、当該液晶表示装置用光拡散シート1の全光線透過率の低下を抑制しつつ液晶表示装置の画面のギラツキを効果的に防止することができる。
【0028】
光拡散層3を構成する素材の屈折率の下限としては1.3が好ましく、1.45が特に好ましい。一方、この素材の屈折率の上限としては1.8が好ましく、1.6が特に好ましい。この範囲の中でも、光拡散層3を構成する素材の屈折率としては1.5が最も好ましい。このように光拡散層3を構成する素材の屈折率を上記範囲とすることで、表面の凹凸形状におけるレンズ的屈折作用が効果的に奏され、当該液晶表示装置用光拡散シート1の拡散機能が高められる。
【0029】
なお、基材層2及び光拡散層3には、上記の合成樹脂の他、例えばフィラー、可塑剤、安定化剤、劣化防止剤、分散剤等が配合されてもよい。
【0030】
近赤外線吸収層4は、マトリックス(バインダー)である合成樹脂と、この合成樹脂中に混合される近赤外線吸収剤とを有している。近赤外線吸収層4に使用される合成樹脂としては、光線を透過させるよう透明、特に無色透明のものであれば特に限定されるものではなく、具体的には上述の活性エネルギー線硬化型樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。中でも、成形性が良好な活性エネルギー線硬化型樹脂、透明性が高いアクリル系樹脂、リタデーション値の制御性が良好なポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0031】
近赤外線吸収剤としては、可視光に対して透過率が高く、かつ近赤外光を多く吸収するものが好ましく、具体的には(a)イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アルミニウム塩系化合物、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン系化合物、トリアリルメタン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物等の有機系近赤外線吸収剤、(b)カーボンブラック、酸化アンチモン又は酸化インジウムをドープした酸化錫、周期表の4、5又は6族に属する金属の酸化物、炭化物又はホウ化物等の無機系近赤外線吸収剤が挙げられ、これらの化合物を適宜組み合わせて使用することができる。中でも、近赤外線吸収性、可視光透過性、耐熱性、耐光性等に優れるイモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物又はアルミニウム塩系化合物が特に好ましい。
【0032】
近赤外線吸収層4をフィルム(シート)成形する場合の近赤外線吸収剤の配合量としては、マトリックスの合成樹脂100質量部(固形分換算)に対し、0.01質量部以上8質量部以下が好ましく、0.03質量部以上1質量部以下が特に好ましい。一方、近赤外線吸収層4を塗工成形する場合の近赤外線吸収剤の配合量としては、マトリックスの合成樹脂100質量部(固形分換算)に対し、1質量部以上40質量部以下が好ましく、2質量部以上15質量部以下が特に好ましい。近赤外線吸収剤の配合量が上記範囲より小さいと十分な近赤外線吸収機能が得られないおそれがあり、逆に近赤外線吸収剤の配合量が上記範囲を超えると可視光の透過率が低下するおそれがある。
【0033】
近赤外線吸収層4の平均厚さとしては、上記近赤外線吸収剤の配合量との関係から可視光透過性及び近赤外線吸収性が好適にバランスするよう適宜決定される。具体的には、フィルム(シート)成形する場合の近赤外線吸収層4の平均厚さとしては、10μm以上500μm以下が好ましく、50μm以上100μm以下が特に好ましい。一方、塗工成形する場合の近赤外線吸収層4の平均厚さとしては、1μm以上50μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下が特に好ましい。
【0034】
なお、近赤外線吸収層4には、上記合成樹脂及び近赤外線吸収剤の他、例えば酸化防止剤、ハロゲン剤、リン酸系などの難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができる。
【0035】
当該液晶表示装置用光拡散シート1の製造方法としては、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。基材層2及び光拡散層3の形成方法としては、基材層2を作成した後に光拡散層3を別に形成する方法と、基材層2と光拡散層3とを一体成形する方法とが可能であり、具体的には、
(a)光拡散層3の表面の反転形状を有するシート型に合成樹脂を積層し、そのシート型を剥がすことで形成する方法、
(b)光拡散層3の表面の反転形状を有する金型に溶融樹脂を注入する射出成型法、
(c)シート化された樹脂を再加熱して前記と同様の金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(d)光拡散層3の表面の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法、
(e)基材層2に紫外線硬化型樹脂を塗布し、上記と同様の反転形状を有するシート型、金型又はロール型に押さえ付けて未硬化の紫外線硬化型樹脂に形状を転写し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(f)上記と同様の反転形状を有する金型又はロール型に未硬化の紫外線硬化性樹脂を充填塗布し、基材層2で押さえ付けて均し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(g)紫外線硬化型樹脂の代わりに電子線硬化型樹脂を使用する方法
などがある。
【0036】
次に、近赤外線吸収層4の形成方法としては、具体的には、
(a)上述の合成樹脂及び近赤外線吸収剤を有機溶媒に溶解又は分散させた塗工液を調整し、この塗工液を基材層2の裏面にディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等の塗工方法で塗工し、硬化させる方法、
(b)上述の合成樹脂及び近赤外線吸収剤の混合物を光硬化、射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形、キャスティング等の方法を用いてフィルム状あるいはシート状に成形し、基材層2の裏面に接着する方法、
(c)上述の合成樹脂及び近赤外線吸収剤の混合物をTダイ等を用いたドライラミネーションにより直接基材層2の裏面に積層する方法
等がある。
【0037】
当該液晶表示装置用光拡散シート1は、近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層4を備えていることから、液晶表示装置のバックライトから放出される近赤外線を効果的に吸収し、近赤外線の外部への放出を抑制することができる。そのため、当該液晶表示装置用光拡散シート1は、液晶表示装置から放出される近赤外線に起因する家電機器のリモートコントロールシステムの誤作動や人体への悪影響を防止することができる。
【0038】
当該液晶表示装置用光拡散シート1の近赤外線透過率としては、50%以下とされており、30%以下が好ましく、10%以下が特に好ましい。近赤外線透過率を上記範囲とすることで、液晶表示装置から放出される近赤外線に起因する家電機器のリモートコントロールシステムの誤作動や人体への悪影響等の不都合を効果的に防止することができる。
【0039】
当該液晶表示装置用光拡散シート1において、可視光透過率としては50%以上、全光線透過率としては50%以上が好ましい。このように可視光透過率及び全光線透過率を上記範囲とすることで、当該液晶表示装置用光拡散シート1が近赤外線吸収機能を有することに起因する液晶表示装置の輝度の低下を抑制することができる。
【0040】
上記基材層2のリタデーション値としては50nm以下が好ましい。このように基材層2のリタデーション値を比較的小さくすることで、当該液晶表示装置用光拡散シート1の透過光線に対する偏光方向の変換作用を抑制し、液晶表示装置における偏光板等の透過軸方向への偏光の最適化及び制御性に対して当該液晶表示装置用光拡散シート1が及ぼす影響を抑制することができる。そのため、液晶表示装置において、上述のような光学的作用に弊害を生じることなく当該液晶表示装置用光拡散シート1を液晶表示素子の裏面に接近する部分、特に裏面側偏光板の裏面側(裏面側偏光板と反射偏光板の間)に積層することができ、その結果、光線の利用効率の低下を抑制し、近赤外線吸収機能を有することに起因する液晶表示装置の輝度の低下を格段に抑制することができる。
【0041】
図2の液晶表示装置用光拡散シート11は、基材層12と、基材層12の表面に積層される光拡散層3とを備えている。当該光拡散層3は、基材層12と別に成形されており、その内容は上記図1の液晶表示装置用光拡散シート1と同様である。
【0042】
基材層12は、合成樹脂中に近赤外線吸収剤が混練されている。この基材層12の平均厚さ、使用される合成樹脂、リタデーション値等は、上記液晶表示装置用光拡散シート1の基材層2と同様である。また基材層12における近赤外線吸収剤の具体的内容、配合量等は、上記液晶表示装置用光拡散シート1の近赤外線吸収層4と同様である。さらに当該液晶表示装置用光拡散シート11の近赤外線透過率、可視光透過率及び全光線透過率も、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様である。
【0043】
当該液晶表示装置用光拡散シート11は、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様に液晶表示装置のバックライトから放出される近赤外線を効果的に吸収し、近赤外線の外部への放出を抑制することができる。また当該液晶表示装置用光拡散シート11は、近赤外線吸収層を省略することができるため、液晶表示装置の輝度及び薄型化を促進することができる。
【0044】
図3の液晶表示装置用光拡散シート21は、基材層22と、基材層22の表面に積層される光拡散層23とを備えている。この基材層22と光拡散層23とは、一体成形されている。
【0045】
基材層22及び光拡散層23は、合成樹脂中に近赤外線吸収剤が混練されている。この基材層12の平均厚さ、使用される合成樹脂、リタデーション値等は、上記液晶表示装置用光拡散シート1の基材層2と同様である。光拡散層23の形状、表面粗さ等は、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様である。また基材層12及び光拡散層23における近赤外線吸収剤の具体的内容、配合量等は、上記液晶表示装置用光拡散シート1の近赤外線吸収層4と同様である。さらに当該液晶表示装置用光拡散シート21の近赤外線透過率、可視光透過率及び全光線透過率も、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様である。
【0046】
当該液晶表示装置用光拡散シート21は、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様に液晶表示装置のバックライトから放出される近赤外線を効果的に吸収し、近赤外線の外部への放出を抑制することができる。また当該液晶表示装置用光拡散シート21は、近赤外線吸収層を省略することができるため、液晶表示装置の輝度及び薄型化を促進することができる。さらに当該液晶表示装置用光拡散シート21は、基材層22及び光拡散層23が一体成形であるため、高い製造容易性を有し、低コスト性を促進することができる。
【0047】
図4の液晶表示装置用光拡散シート31は、基材層2と、基材層2の表面に積層される光拡散層32と、基材層2の裏面に積層される近赤外線吸収層4とを備えている。当該液晶表示装置用光拡散シート31の基材層2及び近赤外線吸収層4は、上記図1の液晶表示装置用光拡散シート1と同様である。
【0048】
光拡散層32は、基材層2表面に略均一かつ緻密に敷設される光拡散剤33と、その光拡散剤33を固定するバインダー34とを備えている。かかる光拡散剤33はバインダー34で被覆されている。このように光拡散層32中に含有する光拡散剤33によって、光拡散層32を裏側から表側に透過する光線を均一に拡散させることができる。また光拡散剤33によって光拡散層32の表面に微細な凸部が略均一かつ略緻密に形成されている。このように液晶表示装置用光拡散シート31表面に形成される微細な凹凸のレンズ的屈折作用により、光線をより良く拡散させることができる。光拡散層32の平均厚みは、特には限定されないが、例えば1μm以上30μm以下程度とされている。
【0049】
光拡散剤33は、光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、具体的には、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。有機フィラーの具体的な材料としては、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。これらの中でも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0050】
光拡散剤33の形状は、特に限定されるものではなく、例えば球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光拡散性に優れる球状のビーズが好ましい。
【0051】
光拡散剤33の平均粒子径の下限としては1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましく、光拡散剤33の平均粒子径の上限としては50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。これは、光拡散剤33の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散剤33によって形成される光拡散層32表面の凹凸が小さくなり、光拡散シートとして必要な光拡散性を満たさないおそれがあり、逆に、光拡散剤33の平均粒子径が上記範囲を越えると、液晶表示装置用光拡散シート31の厚さが増大し、かつ、均一な拡散が困難になることからである。
【0052】
光拡散剤33の配合量(バインダー34の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては10部、特に20部、さらに50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、光拡散剤33の配合量が上記範囲未満であると、光拡散性が不十分となってしまい、一方、光拡散剤33の配合量が上記範囲を越えると光拡散剤33を固定する効果が低下することからである。なお、プリズムシートの表面側に配設される所謂上用光拡散シートの場合、高い光拡散性を必要とされないため、光拡散剤33の配合量としては10部以上40部以下、特に10部以上30部以下が好ましい。
【0053】
バインダー34は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。このバインダー34によって基材層2の表面全面に光拡散剤33が略等密度に配置固定される。なお、このバインダー34を形成するためのポリマー組成物は、その他に例えば、微小無機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
【0054】
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光拡散層32を形成することができるポリオールが好ましい。またバインダー34に用いられる基材ポリマーは、光線の透過性を高める観点から透明が好ましく、無色透明が特に好ましい。
【0055】
当該ポリマー組成物の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及び、上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー34は耐候性が高く、光拡散層32の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
【0056】
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0057】
上記ポリマー組成物中には微小無機充填剤を含有するとよい。このバインダー34中に微小無機充填剤を含有することで、光拡散層32ひいては液晶表示装置用光拡散シート31の耐熱性が向上する。この微小無機充填剤を構成する無機物としては、特に限定されるものではなく、無機酸化物が好ましい。この無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。また無機酸化物を構成する金属元素としては、例えば元素周期律表第2族〜第6族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表第3族〜第5族から選ばれる元素がさらに好ましい。特に、Si、Al、Ti及びZrから選択される元素が好ましく、金属元素がSiであるコロイダルシリカが、耐熱性向上効果及び均一分散性の面で微小無機充填剤として最も好ましい。また、微小無機充填剤の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0058】
微小無機充填剤の平均粒子径の下限としては、5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。一方、微小無機充填剤の平均粒子径の上限としては50nmが好ましく、25nmが特に好ましい。これは、微小無機充填剤の平均粒子径が上記範囲未満では、微小無機充填剤の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなるためであり、逆に、平均粒子径が上記範囲を超えると、短波長の影響で白濁し、液晶表示装置用光拡散シート31の透明性を完全に維持することができなくなることからである。
【0059】
微小無機充填剤の基材ポリマー100部に対する配合量(無機物成分のみの配合量)の下限としては固形分換算で5部が好ましく、50部が特に好ましい。一方、微小無機充填剤の上記配合量の上限としては500部が好ましく、200部がより好ましく、100部が特に好ましい。これは、微小無機充填剤の配合量が上記範囲未満であると、液晶表示装置用光拡散シート31の耐熱性を十分に発現することができなくなってしまうおそれがあり、逆に、配合量が上記範囲を越えると、ポリマー組成物中への配合が困難になり、光拡散層32の光線透過率が低下するおそれがあることからである。
【0060】
微小無機充填剤としては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定微小無機充填剤を用いることで、バインダー34中での分散性やバインダー34との親和性の向上が図られる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
【0061】
なお、微小無機充填剤は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、微小無機充填剤のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
【0062】
上記基材ポリマーとしてはシクロアルキル基を有するポリオールが好ましい。このように、バインダー34を構成する基材ポリマー(ポリオール)中にシクロアルキル基を導入することで、バインダー34の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での当該液晶表示装置用光拡散シート31の耐撓み性、寸法安定性等が改善される。また、光拡散層32の硬度、耐候性、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、表面に有機ポリマーが固定された微小無機充填剤との親和性及び微小無機充填剤の均一分散性がさらに良好になる。
【0063】
上記シクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
【0064】
上記シクロアルキル基を有するポリオールは、シクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体を共重合することで得られる。このシクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。この重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
また、ポリマー組成物中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにポリマー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、より一層強固な架橋構造となり、光拡散層32の被膜物性がさらに向上する。このイソシアネートとしては上記多官能イソシアネート化合物と同様の物質が用いられる。中でも、被膜の黄変色を防止する脂肪族系イソシアネートが好ましい。
【0066】
さらに、ポリマー組成物中に帯電防止剤を混練するとよい。このように帯電防止剤が混練されたポリマー組成物からバインダー34を形成することで、当該液晶表示装置用光拡散シート31に帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、プリズムシート等との重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。また、帯電防止剤を表面にコーティングすると表面のベタツキや汚濁が生じてしまうが、このようにポリマー組成物中に混練することでかかる弊害は低減される。この帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、帯電防止効果が比較的大きいカチオン系帯電防止剤が好ましく、少量の添加で帯電防止効果が奏される。
【0067】
また、上記ポリマー組成物中に紫外線吸収剤を含有するとよい。このように紫外線吸収剤を含有するポリマー組成物からバインダー34を形成することで、当該液晶表示装置用光拡散シート31に紫外線カット機能が付与され、バックライトユニットのランプから発せられる微量の紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止することができる。
【0068】
この紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収し、効率よく熱エネルギーに変換できるもので、かつ、光に対して安定な化合物であれば特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。中でも、紫外線吸収機能が高く、上記基材ポリマーとの相溶性が良好で、基材ポリマー中に安定して存在するサリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。また紫外線吸収剤としては、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマー(例えば、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズなど)も好適に使用される。かかる分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを用いることで、バインダー34の主ポリマーとの相溶性が高く、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。なお、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーをバインダー34の基材ポリマーとすることも可能である。また、この紫外線吸収基が結合されたポリマーをバインダー34の基材ポリマーとし、さらにこの基材ポリマー中に紫外線吸収剤を含有することも可能であり、紫外線吸収機能をより向上させることができる。
【0069】
バインダー34の基材ポリマーに対する上記紫外線吸収剤の含有量の下限としては0.1質量%、特に1質量%、さらに3質量%が好ましく、紫外線吸収剤の上記含有量の上限としては10質量%、特に8質量%、さらに5質量%が好ましい。これは、基材ポリマーに対して紫外線吸収剤の質量比が上記下限より小さいと、液晶表示装置用光拡散シート31の紫外線吸収機能を効果的に奏することができないためであり、逆に、紫外線吸収剤の質量比が上記上限を超えると、基材ポリマーに悪影響を及ぼし、バインダー34の強度、耐久性等の低下をもたらすことからである。
【0070】
上記紫外線吸収剤に代え又は紫外線吸収剤と共に、紫外線安定剤(分子鎖に紫外線安定基が結合した基材ポリマーを含む)を使用することも可能である。この紫外線安定剤により、紫外線で発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。この紫外線安定剤としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤が好適に用いられる。なお、紫外線吸収剤と紫外線安定剤を併用することで、紫外線による劣化防止及び耐候性が格段に向上する。
【0071】
次に、当該液晶表示装置用光拡散シート31の製造方法について説明する。当該液晶表示装置用光拡散シート31の製造方法は、(a)バインダー34を構成するポリマー組成物に光拡散剤33を混合することで光拡散層用塗工液を製造する工程と、(b)この光拡散層用塗工液を基材層2の表面に塗工することで光拡散層32を積層する工程と、(c)近赤外線吸収層4を積層する工程とを有する。この近赤外線吸収層4の積層手段は、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様である。
【0072】
当該液晶表示装置用光拡散シート31は、光拡散層32中に含有する光拡散剤33の界面での反射や屈折及び光拡散層32表面に形成される微細凹凸での屈折により、高い光拡散機能を有し、この光拡散機能に起因して法線方向側への屈折機能(集光拡散機能)を有している。また当該液晶表示装置用光拡散シート31は、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様に、近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層4によって液晶表示装置のバックライトから放出される近赤外線を効果的に吸収し、液晶表示装置から放出される近赤外線に起因する家電機器のリモートコントロールシステムの誤作動や人体への悪影響を防止することができる。さらに当該液晶表示装置用光拡散シート31は、通常液晶表示装置に使用されている一般的な光拡散シートと代替することで、液晶表示装置の光学シートの装備枚数の増大を招来することなく、近赤外線の放出が防止され、ひいては近赤外線吸収機能の発現に起因する液晶表示装置の輝度の低下を抑制することができる。
【0073】
図5の液晶表示装置用光拡散シート41は、基材層2と、基材層2の表側に積層される光拡散層32と、基材層2の裏面に積層される近赤外線吸収層4と、近赤外線吸収層4の裏面に積層されるスティッキング防止層42とを備えている。当該液晶表示装置用光拡散シート41における基材層2及び近赤外線吸収層4は上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様であり、光拡散層32は上記液晶表示装置用光拡散シート31と同様である。
【0074】
スティッキング防止層42は、バインダー44と、このバインダー44中に分散するビーズ43とを備えている。このバインダー44も、上記光拡散層32のバインダー34と同様のポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。また、ビーズ43の材料としては光拡散層32の光拡散剤33と同様のものが用いられる。なお、このスティッキング防止層42の厚み(ビーズ43が存在しない部分でのバインダー44部分の厚み)は特には限定されないが、例えば1μm以上10μm以下程度とされている。
【0075】
このビーズ43の配合量は比較的少量とされ、ビーズ43は互いに離間してバインダー44中に分散し、ビーズ43の多くはその下端がバインダー44からごく少量突出している。そのため、この液晶表示装置用光拡散シート41を導光板と積層すると、突出したビーズ43の下端が導光板等の表面に当接し、液晶表示装置用光拡散シート41の裏面の全面が導光板等と当接することがない。これにより、液晶表示装置用光拡散シート41と導光板等とのスティッキングが防止され、液晶表示装置の画面の輝度ムラが抑えられる。
【0076】
次に、液晶表示装置用光拡散シート41の製造方法を説明する。当該液晶表示装置用光拡散シート41の製造方法は、(a)バインダー34を構成するポリマー組成物に光拡散剤33を混合することで光拡散層用塗工液を製造する工程と、(b)この光拡散層用塗工液を基材層2の表面に塗工することで光拡散層32を積層する工程と、(c)基材層2の裏面に近赤外線吸収層4を積層する工程と、(d)バインダー44を構成するポリマー組成物にビーズ43を混合することでスティッキング防止層用塗工液を製造する工程と、(e)このスティッキング防止層用塗工液を近赤外線吸収層4の裏面に塗工することでスティッキング防止層42を積層する工程とを有する。この近赤外線吸収層4の積層手段は、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様である。
【0077】
当該液晶表示装置用光拡散シート41は、上記液晶表示装置用光拡散シート31と同様に光拡散層32によって高い光拡散機能(集光拡散機能)を有している。また当該液晶表示装置用光拡散シート41は、上記液晶表示装置用光拡散シート1と同様に、近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層4によって液晶表示装置のバックライトから放出される近赤外線を効果的に吸収し、液晶表示装置から放出される近赤外線に起因する家電機器のリモートコントロールシステムの誤作動や人体への悪影響を防止することができる。さらに当該液晶表示装置用光拡散シート41は、裏面側に積層されるスティッキング防止層42によって導光板等とのスティッキングが防止され、液晶表示装置の画面の輝度ムラが抑えられる。
【0078】
なお、本発明の液晶表示装置用光拡散シートは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、紫外線吸収剤層、帯電防止剤層、トップコート層、アンカーコート層等の他の層が積層されてもよい。
【0079】
液晶表示装置用光拡散シート1又は液晶表示装置用光拡散シート11において、光拡散層3にも近赤外線吸収剤を含有してもよい。また液晶表示装置用光拡散シート1又は液晶表示装置用光拡散シート11において、表面に微小かつランダムな凹凸形状を有する光拡散層3に替えて、表面に複数のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイを有する光拡散層や、表面に三角柱状のプリズムを多条に有する光拡散層等とすることができる。
【0080】
液晶表示装置用光拡散シート31又は液晶表示装置用光拡散シート41において、近赤外線吸収層4を省略し、基材層2に替えて液晶表示装置用光拡散シート11の基材層12を用いることができる。また液晶表示装置用光拡散シート31又は液晶表示装置用光拡散シート41において、近赤外線吸収層4を省略し、光拡散層32のバインダー34、光拡散層32の光拡散剤33、スティッキング防止層42のバインダー44及び/又はスティッキング防止層42のビーズ43中に近赤外線吸収剤を含有することもできる。かかる手段によっても、同様に近赤外線吸収機能が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明の光拡散シートは、液晶表示装置の構成要素として有用であり、特に透過型液晶表示装置に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図
【図2】図1の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図
【図3】図1及び図2の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図
【図4】図1、図2及び図3の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図
【図5】図1、図2、図3及び図4の液晶表示装置用光拡散シートとは異なる形態に係る液晶表示装置用光拡散シートを示す模式的断面図
【図6】一般的な液晶表示装置を示す模式的断面図
【符号の説明】
【0083】
1 液晶表示装置用光拡散シート
2 基材層
3 光拡散層
4 近赤外線吸収層
11 液晶表示装置用光拡散シート
12 基材層
21 液晶表示装置用光拡散シート
22 基材層
23 光拡散層
31 液晶表示装置用光拡散シート
32 光拡散層
33 光拡散剤
34 バインダー
41 液晶表示装置用光拡散シート
42 スティッキング防止層
43 ビーズ
44 バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材層と、この基材層の表面側に積層される光拡散層とを備える液晶表示装置用光拡散シートであって、
近赤外線吸収剤を含有し、
近赤外線透過率が50%以下であることを特徴とする液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項2】
上記基材層の裏面側に、バインダー中にビーズが分散するスティッキング防止層を備えている請求項1に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項3】
上記基材層、光拡散層及び/又はスティッキング防止層に近赤外線吸収剤を含有する請求項1又は請求項2に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項4】
上記近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を備えている請求項1又は請求項2に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項5】
可視光透過率が50%以上で、全光線透過率が50%以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項6】
上記基材層のリタデーション値が50nm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項7】
上記基材層を構成するマトリックス樹脂としてポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが用いられている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項8】
上記基材層の平均厚さが25μm以上1000μm以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項9】
上記光拡散層における表面粗さ(Ra)が0.1μm以上0.5μm以下で、表面粗さ(Ry)が1μm以上20μm以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項10】
上記光拡散層が、光拡散剤とそのバインダーとを有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の液晶表示装置用光拡散シート。
【請求項11】
上記光拡散層が、表面に微小な凹凸形状を有している請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の液晶表示装置用光拡散シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−145883(P2008−145883A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335044(P2006−335044)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】