説明

液晶表示装置

【課題】有機ELバックライトから放射される光の利用効率を高めた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】それぞれ間隔を開けて平行に配設された有機ELバックライト10、液晶パネル20、直線偏光反射板30および吸収板40を備え、有機ELバックライト10が液晶パネル20と直線偏光反射板30によって挟まれ、直線偏光反射板30が有機ELバックライト10と吸収板40によって挟まれるように配置されている。有機ELバックライト10は、透明基板11の前面に陽極となる透明電極12、有機EL層13および陰極となる透明電極14をこの順に積層した構成となっており、有機EL層13内の有機発光層には、発光寿命が100nsec〜1msecのりん光を発光させる有機EL材料を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に関し、特にバックライトに有機EL(エレクトロルミネッセンス:Electroluminescence)バックライトを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機ELバックライトを用いた液晶表示装置としては、特許文献1に示されるような構成が知られている。
【0003】
すなわち、特許文献1においては、透明基板の背面(液晶パネルとは反対側の表面)に透明電極、有機EL層、反射電極をこの順に積層して有機ELバックライトを形成している。
【0004】
透明基板はガラスで構成され、陽極である透明電極には導電性透明材料のITO(Indium Tin Oxide)で構成され、陰極である反射電極には金属材が使われている。
【0005】
有機EL層は、ホール輸送層、有機発光層、電子輸送層を備え、陽極に正電圧を、陰極に負電圧を印加すると、電子輸送層を介して有機発光層に注入された電子と、ホール輸送層を介して有機発光層に注入されたホールとが、有機発光層内で再結合し、有機発光層に蛍光が発生する。
【0006】
このようにして有機発光層で発生した光は、透明な陽極と透明基板とを透過して有機ELバックライトの前面(液晶パネル側の表面)から放出されるようになっている。
【0007】
ここで、有機EL層から放射される光は、自然放射光のため偏光の偏りがなく、直交する2つの直線偏光成分を同じ比率で含むか、右回り円偏光成分および左回り円偏光成分を同じ比率で含んでいる。また、自然放射光のためあらゆる方向に出射される。
【0008】
一方、液晶パネルに入射する光は、バックライト側に設けられた偏光板により一方の偏光方向の成分は透過するが、他方の偏光方向の成分は吸収される。
【0009】
【特許文献1】特開平9−50031号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上説明したように、従来の有機ELバックライトを用いた液晶表示装置では、有機ELバックライトから放射される光は偏光の偏りがないので、液晶パネルに入射する光のうち、液晶パネルで利用できる光は原理的に有機ELバックライトから放射される光の半分となり、有機ELバックライトから放射される光の利用効率が低いという問題があった。
【0011】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、有機ELバックライトから放射される光の利用効率を高めた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る請求項1記載の液晶表示装置は、EL(エレクトロルミネッセンス)発光を行う有機EL層を有した有機ELバックライトと、前記有機ELバックライトの前面側に配設された液晶パネルと、前記有機ELバックライトの前面側または背面側に配設され、前記有機ELバックライトで発生した2つの偏光成分を含む偏向光のうち、一の偏光成分の光を選択的に反射して前記有機ELバックライトに再入射させる偏光反射板と、を備え、前記有機EL層は、発光寿命が100nsec〜1msecのりん光を発生させる有機EL材料を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載の液晶表示装置によれば、有機ELバックライトで発生した2つの偏光成分を含む偏向光のうち、一の偏光成分の光を選択的に反射して有機ELバックライトに再入射させる偏光反射板を備え、有機ELバックライトに再入射した光によって有機EL層でりん光を発生させ、それによって高い効率で誘導放射を生じさせることができるので、液晶パネルに入射する光の偏光成分を液晶パネルを透過するものに偏らすことができるとともに、誘導放射により光の強度を増幅することができるので、有機ELバックライトから放射される光の利用効率が高まり、液晶パネルを透過する光量が増え、明るい液晶表示装置を実現できる。また、有機EL層は、発光寿命が100nsec〜1msecのりん光を発生させる有機EL材料を含むので、光子が励起状態にある有機EL材料の分子と出会う確率が高く、高い効率で誘導放射を生じさせることができる一方で、有機EL材料と酸素や水と反応することによる有機EL材料の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A.実施の形態1>
<A−1.装置構成>
図1に、本発明に係る実施の形態1の液晶表示装置100の基本構成を断面概略図で示す。
【0015】
図1に示すように、液晶表示装置100は、それぞれ間隔を開けて平行に配設された有機ELバックライト10、液晶パネル20、直線偏光反射板30および吸収板40を備えている。なお、これらは、有機ELバックライト10が液晶パネル20と直線偏光反射板30によって挟まれ、直線偏光反射板30が有機ELバックライト10と吸収板40によって挟まれた位置関係となっている。なお、以下の説明では、有機ELバックライト10に対して、液晶パネル20が配設された側を前面側とし、その反対側を背面側とする。
【0016】
有機ELバックライト10は、透明基板11の前面(液晶パネル側の表面)に陽極となる透明電極12、有機EL層13および陰極となる透明電極14をこの順に積層した構成となっており、有機EL層13が液晶パネル20側を向いている。そして、透明電極12および14は電源PWに接続されている。
【0017】
透明基板11としては、例えばガラスを使うが、ガラスの代わりにポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル、シクロオレフィン、脂環式ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、脂環式アクリル、ポリエステル等の樹脂からなるフィルムあるいはシートを用いても良い。
【0018】
また、有機EL層13は、ホール輸送層、有機発光層および電子輸送層で構成しても良いが、ホール輸送層、有機発光層、ホール阻止層、電子輸送層および電子注入層で構成しても良いし、あるいは、ホール注入層、ホール輸送層、有機発光層、ホール阻止層、電子輸送層および電子注入層で構成しても良い。
【0019】
そして、例えばホール注入層にCuPc、ホール輸送層にα−NPD、ホールが流れ出ることを妨げるホール阻止層にBCP、電子輸送層にAlq3(aluminato-tris-8-hydroxyquinolate)、電子注入層にLiFなどを使用すれば良い。
【0020】
また、有機発光層に使用するホスト材料としては、カルバゾール誘導体であるCBPまたはCBPを基に合成されたカルバゾール誘導体化合物等を使う。
【0021】
そして、有機発光層を構成する成分のうち少なくとも1成分として、発光寿命が100nsec〜1msecのりん光を発光させる有機EL材料を含み、有機発光層からりん光を発光させる構成となっている。
【0022】
具体例としては、有機発光層のホスト材料に、りん光発光ドーパントとして、例えばFIr(pic)、Ir(ppy)3、Btp2Ir(acac)等のイリジウム金属錯体をドーピングする。
【0023】
なお、有機発光層は、ホスト材料とドーパント材料とを共蒸着して作製するが、この場合、蒸着後の有機発光層中のホスト材料が80〜99.5質量%、ドーピング材料0.5〜20質量%となるように成分比を調整することが好ましい。
【0024】
また、有機発光層中にホールを注入するための陽極としての透明電極12にはITO(Indium Tin Oxide)を使用し、有機発光層中に電子を注入するための陰極としての透明電極14にはIZO(インジウム亜鉛酸化物)を使う。
【0025】
液晶パネル20は、2枚の透明基板23および24の間に液晶層25を封止し、透明基板23および24の外側を向いた主面表面には、それぞれ偏光板21および22が配設されているが、液晶パネル20の構成はこれに限定されるものではない。
【0026】
直線偏光反射板30は、有機ELバックライト10の透明基板11の背面側に配置され、例えば3M社のDBEFと呼称される反射材によって構成されている。
【0027】
吸収板40は直線偏光反射板30を透過する光を吸収するためのもので、光を反射せずに吸収できる材料であれば材質に限定はなく、直線偏光反射板30の有機ELバックライト10とは反対側の表面を黒く塗装することで、吸収板40の代わりとしても良い。
【0028】
<A−2.動作>
次に、液晶表示装置100における有機ELバックライト10から放射される光の振る舞いについて説明する。
【0029】
電源PWから有機EL層13に供給される電力によりEL発光が生じ、有機EL層13から液晶パネル20側に光1が、透明基板11の背面(液晶パネルとは反対側の表面)側に光2が放射される。
【0030】
光1および2は自然放射光であり、偏光の偏りがなく、2つの直交する直線偏光成分を同じ比率で含んでいる。
【0031】
また、光2の一方の直線偏光成分の光2eは直線偏光反射板30を透過して吸収板40で吸収されるが、他方の直線偏光成分の光2aは、直線偏光反射板30で反射され有機EL層13に再入射する。
【0032】
有機EL層13に再入射した光2aは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光2aと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光2b(誘導放射光)を発生させ、有機EL層13から増幅光2cとして放射される。
【0033】
このように、直線偏光反射板30を用いることで、光の偏光成分を液晶パネル20を透過するものに偏らすことができるので、液晶パネル20を透過する光量が増え、明るい液晶表示装置を実現できる。
【0034】
なお、液晶パネル20に入射した光1および2cは、液晶層25を通ることで偏光方向が変わり、偏光板22を介してそれぞれ光1aおよび2dとして放射される。
【0035】
ここで、先に説明したように、有機EL層13には、りん光を発光させる有機EL材料を含んでいるので、高い効率で誘導放射を生じさせることができる。
【0036】
さらに言えば、上記りん光を発光させる有機EL材料は、発光寿命が100nsec〜1msecのりん光を発生させるので、高い効率で誘導放射を生じさせることができるだけでなく、有機EL材料の劣化を抑制できる。
【0037】
すなわち、誘導放射が生じるためには、光子が励起状態にある有機EL材料の分子と出会う必要があるが、発光寿命(再結合時間)が短いと、出会いの確率が非常に小さくなり、誘導放射は殆ど生じない。例えば、蛍光発光では発光寿命が1nsec程度であるので誘導放射は殆ど生じない。一方で、発光寿命が1msecを越えるほど長いと、有機EL材料が励起状態にある時間が長くなるので、酸素や水と反応する確率が高まり、有機EL材料が劣化することになる。
【0038】
なお、有機EL層13に供給される電力は、自然放射光1および2を発生させるとともに、誘導放射光2dの発生にも寄与する。
【0039】
同じ電力では発生する光量は同じであるので、誘導放射光2bが発生しない場合に比べて自然放射光1および2の光量は減少するが、誘導放射光2bは、光の進行方向が有機EL層13の主面に対して垂直な方向にほぼ揃っており、液晶パネル20に入射する光2cの光量は自然放射光1および2の減少分よりも多くなり、また光2cの偏光方向が液晶パネル20の光入射側の偏光板21の透過軸と一致するように直線偏光反射板30を配置することで、光2cが効率よく液晶パネル20内に入射する。このため、明るい液晶表示装置100を実現できる。
【0040】
ここで、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料が含まれず、誘導放射が生じにくい場合は、誘導放射による増幅が期待できず単に自然放射光2の1方向の直線偏光成分の光2aを回収するに止まる。この場合、有機EL層13から放射され、液晶パネル20に入射する全ての光のうち、偏光板21の透過軸と偏光方向が一致する成分の光は、理想的な場合でも50%である。
【0041】
一方、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料を含めた液晶表示装置100においては、誘導放射によって自然放射光の一部が誘導放射光に置き換わり、増幅されるため、有機EL層13から放射され、液晶パネル20に入射する全ての光のうち、偏光板21の透過軸と偏光方向が一致する成分の光は理想的な場合で60%となり、液晶表示装置100が明るくなることが判る。
【0042】
<A−3.変形例>
以上の説明においては有機ELバックライト10は、透明基板11上に有機EL層13を積層する構成としたが、直線偏光反射板30および吸収板40を積層したものを透明基板11の代わりに使用しても良い。
【0043】
<B.実施の形態2>
<B−1.装置構成>
図2に、本発明に係る実施の形態2の液晶表示装置200の基本構成を断面概略図で示す。
【0044】
図2に示すように、液晶表示装置200は、それぞれ間隔を開けて平行に配設された有機ELバックライト10、液晶パネル20、直線偏光反射板30、位相差板(1/4波長板)50および反射板60を備えている。なお、これらは、位相差板50が反射板60と有機ELバックライト10とによって挟まれ、有機ELバックライト10が位相差板50と直線偏光反射板30によって挟まれ、直線偏光反射板30が有機ELバックライト10と液晶パネル20によって挟まれた位置関係となっている。なお、図1に示した液晶表示装置100と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
<B−2.動作>
次に、液晶表示装置200における有機ELバックライト10から放射される光の振る舞いについて説明する。
【0046】
電源PWから有機EL層13に供給される電力によりEL発光が生じ、有機EL層13から液晶パネル20側に光1が、透明基板11の背面側に光2が放射される。
【0047】
有機EL層13から液晶パネル20側に放射された光1のうち、直線偏光反射板30の透過軸と一致する一方の直線偏光成分の光1aは直線偏光反射板30を透過し、さらに液晶パネル20の光入射側の偏光板21を透過する。この場合、直線偏光反射板30の透過軸と、偏光板21の透過軸とが一致するように直線偏光反射板30を配置することは言うまでもない。
【0048】
また、光1の他方の直線偏光成分の光1cは直線偏光反射板30で反射され有機EL層13に再入射する。
【0049】
有機EL層13に再入射した光1cは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1cと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1d(誘導放射光)を発生させ、有機EL層13から増幅光1eとして放射される。
【0050】
光1eは、位相差板50を通ることで円偏光(左回り円偏光または右回り円偏光)されて光1f(円偏光光)となる。
【0051】
さらに、光1fは反射板60で反射されて光1gとなり、位相差板50に再入射され、位相差板50を通ることで光1eに対して偏光方向が90°回転した直線偏光光1hとなり、有機EL層13に再々入射する。
【0052】
有機EL層13に再々入射した光1hは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1hと進行方向および偏光方向が同じで、強度がさらに増幅された増幅光1iを発生させる。増幅光1iは有機EL層13から増幅光1jとして放射される。なお、光1jは、直線偏光反射板30を透過して光1kとして液晶パネル20に入射する。
【0053】
先に説明したように、有機EL層13には、りん光を発光させる有機EL材料を含んでいるので、高い効率で誘導放射を生じさせることができる。
【0054】
ここで、透明基板11の背面側に放射された光2は、位相差板50を通ることで右回り円偏光成分および左回り円偏光成分を同じ比率で含んだ円偏光光2aとなる。光2aは反射板60で反射されて位相差板50に再入射され、位相差板50を通ることで再び2つの直交する直線偏光成分を同じ比率で含んだ直線偏光光となる。なお、光2aは反射板60で反射されて位相差板50に再入射することで偏光方向が90°回転するが、自然光である光2は偏光成分に偏りがないため、ただ単に光2が反射板60で反射して有機EL層に再入射するのと等価である。
【0055】
この再入射した光2も有機EL層13で誘導放射を生じさせるが、元々偏光成分に偏りがないため、液晶パネル20側に放射される光1と変わらず、光1と同じ振る舞いをすることになる。
【0056】
ここで、直線偏光反射板30を透過した光1aおよび1kの偏光方向が、液晶パネル20の入射側の偏光板21の透過軸と一致するので、光1aおよび1kが効率よく液晶パネル20内に入射する。なお、液晶パネル20に入射した光1aおよび1kは、液晶層25を通ることで偏光方向が変わり、偏光板22を介してそれぞれ光1bおよび1lとして放射される。
【0057】
有機EL層13に供給される電力は、自然放射光1および2を発生させるとともに、誘導放射光1dおよび1iの発生にも寄与する。
【0058】
同じ電力では発生する光量は同じであるので、誘導放射光1dおよび1iが発生しない場合に比べて自然放射光1および2の光量は減少するが、誘導放射光1dおよび1iは、光の進行方向が有機EL層13の主面に対して垂直な方向にほぼ揃っており、最終的に液晶パネル20に入射する光1kの光量は自然放射光1および2の減少分よりも多くなり、また光1kの偏光方向が液晶パネル20の光入射側の偏光板21の透過軸と一致するように直線偏光反射板30の透過軸を設定することで光1kが効率よく液晶パネル20内に入射する。このため、明るい液晶表示装置200を実現できる。
【0059】
ここで、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料が含まれず、誘導放射が生じにくい場合でも、液晶表示装置200と同様の構成を採れば、偏光光の回収により、理想的には有機EL層13から放射された自然放射光の100%が液晶パネル20の入射側の偏光板21の透過軸と偏光方向が一致した光として利用できる。
【0060】
しかしながら、自然放射光は有機EL層13から指向性を持たずにあらゆる立体角方向に放射されるので、液晶パネル20のパネル面に垂直な軸に対して大きな出射角で放射された光は、直線偏光反射板30、位相差板50および反射板60の各界面での反射率が大きくなり各界面で反射されるため、結果的には液晶パネル20には入射されず損失となる。
【0061】
一方、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料を含めた液晶表示装置200においては、自然放射光のうち大きな出射角で放射された光については同様の損失が生じるが、有機EL層13に再入射、再々入射できるような出射角が小さな光は、誘導放射により増幅される。この結果、特定の偏光成分でかつ液晶パネル20のパネル面に垂直な軸に近い角度成分を持つ光の割合を増やすことができ、有機EL層13から放射された光を、小さな損失で液晶パネル20に入射させることができる。
【0062】
また、直線偏光反射板30、位相差板50および反射板60を用いることで、光の偏光成分を液晶パネル20を透過するものに偏らすことができるので、液晶パネル20を透過する光量が増え、明るい液晶表示装置を実現できる。
【0063】
<B−3.変形例>
以上の説明においては有機ELバックライト10は、透明基板11上に有機EL層13を積層する構成としたが、位相差板50および反射板60を積層したものを透明板11の代わりに使用しても良い。
【0064】
<C.実施の形態3>
<C−1.装置構成>
図3に、本発明に係る実施の形態3の液晶表示装置300の基本構成を断面概略図で示す。
【0065】
図3に示すように、液晶表示装置300は、それぞれ間隔を開けて平行に配設された有機ELバックライト10、液晶パネル20、直線偏光反射板30、位相差板(1/4波長板)50および反射板60を備えている。なお、これらは、有機ELバックライト10が反射板60と位相差板50によって挟まれ、位相差板50が有機ELバックライト10と直線偏光反射板30によって挟まれ、直線偏光反射板30が位相差板50と液晶パネル20によって挟まれた位置関係となっている。なお、有機ELバックライト10と間隔を開けて反射板60を配置する代わりに、透明基板11の背面にアルミニウム(Al)あるいは銀(Ag)等の反射性の膜をコーティングしてもよい。また、図1に示した液晶表示装置100と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0066】
<C−2.動作>
次に、液晶表示装置300における有機ELバックライト10から放射される光の振る舞いについて説明する。
【0067】
電源PWから有機EL層13に供給される電力により、有機EL層13から液晶パネル20側に光1が、透明基板11の背面側に光2が放射される。
【0068】
ここで自然放射光である光1および2は、右回り円偏光成分および左回り円偏光成分を同じ比率で含んでいる。
【0069】
有機EL層13から液晶パネル20側に放射された光1は、位相差板50で2つの直線偏光成分が直交する光1aに変換される。このとき、光1が位相差板50を通ることで偏光方向が90°回転するが、自然光である光1は偏光成分に偏りがないため、ただ単に光1が位相差板50を透過するのと等価である。
【0070】
そして、光1aの2つの直線偏光成分のうち、直線偏光反射板30の透過軸と一致する一方の直線偏光成分の光1bは、直線偏光反射板30を透過する。
【0071】
この場合、液晶パネル20の光入射側の偏光板21の透過軸と光1bの偏光方向とが一致するように位相差板50および直線偏光反射板30の設置方向を選ぶ。すなわち、位相差板50で変換された直交する2つの直線偏光成分のうちいずれか一方を、直線偏光反射板30が透過するように直線偏光反射板30を配設し、直線偏光反射板30の透過軸と偏光板21の透過軸とが一致するように直線偏光反射板30および偏光板21を配設する。
【0072】
また、光1aの他方の直線偏光成分の光1dは直線偏光反射板30で反射され、位相差板50で円偏光光1e(右回り円偏光成分または左回り円偏光成分を含む)に変換された後、有機EL層13に再入射する。
【0073】
有機EL層13に再入射した光1eは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1eと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1f(誘導放射光)を発生させる。増幅光1fは透明基板11を透過して光1eと進行方向および偏光方向が同じ増幅光1gとして放射される。光1gは、反射板60で反射されて反射光1hとなり、有機EL層13に再々入射する。
【0074】
有機EL層13に再々入射した反射光1hは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1hと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1i(誘導放射光)を発生させ、有機EL層13から光1hと進行方向および偏光方向が同じ増幅光1jとして放射される。
【0075】
そして光1jは、位相差板50を透過するが、その際に1方向の直線偏光成分を有するとともに、光1dに比べて偏光方向が90°回転した増幅光1kに変換される。
【0076】
この増幅光1kの偏光方向は、直線偏光反射板30の透過軸の方向と同じであり、直線偏光反射板30を透過して光1lとして液晶パネル20に入射する。
【0077】
なお、光反射板30を透過した光1bおよび1lの偏光方向は、液晶パネル20の入射側の偏光板21の透過軸と一致しているため、光1bおよび1lが効率よく液晶パネル20内に入射する。なお、液晶パネル20に入射した光1bおよび1lは、液晶層25を通ることで偏光方向が変わり、偏光板22を介してそれぞれ光1cおよび1mとして放射される。
【0078】
ここで、透明基板11の背面側に放射された光2は、反射板60で反射して有機EL層13に再入射する。この再入射した光2も有機EL層13で誘導放射を生じさせるが、元々偏光成分に偏りがないため、液晶パネル20側に放射される光1と変わらず、光1と同じ振る舞いをすることになる。
【0079】
有機EL層13に供給される電力は、自然放射光1および2を発生させるとともに、誘導放射光1fおよび1iの発生にも寄与する。
【0080】
同じ電力では発生する光量は同じであるので、誘導放射光1fおよび1iが発生しない場合に比べて自然放射光1および2の光量は減少するが、誘導放射光1fおよび1iは、光の進行方向が1方向に揃っており、最終的に液晶パネル20に入射する光1lの光量は自然放射光1および2の減少分よりも多くなり、また光1lの偏光方向が液晶パネル20の光入射側の偏光板21の透過軸と一致するように直線偏光反射板30の透過軸を設定することで光1lが効率よく液晶パネル20内に入射する。このため、明るい液晶表示装置300を実現できる。
【0081】
ここで、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料が含まれず、誘導放射が生じにくい場合でも、液晶表示装置300と同様の構成を採れば、偏光光の回収により、理想的には有機EL層13から放射された自然放射光の100%が液晶パネル20の入射側の偏光板21の透過軸と偏光方向が一致した光として利用できる。
【0082】
しかしながら、自然放射光は有機EL層13から指向性を持たずにあらゆる立体角方向に放射されるので、液晶パネル20のパネル面に垂直な軸に対して大きな出射角で放射された光は、直線偏光反射板30、位相差板50および反射板60の各界面での反射率が大きくなり各界面で反射されるため、結果的には液晶パネル20には入射されず損失となる。
【0083】
一方、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料を含めた液晶表示装置300においては、自然放射光のうち大きな出射角で放射された光については同様の損失が生じるが、有機EL層13に再入射、再々入射できるような出射角が小さな光は、誘導放射により増幅される。この結果、特定の偏光成分でかつ液晶パネル20のパネル面に垂直な軸に近い角度成分を持つ光の割合を増やすことができ、有機EL層13から放射された光を、小さな損失で液晶パネル30に入射させることができる。
【0084】
また、位相差板50および反射板60を用いることで、光の偏光成分を液晶パネル20を透過する偏光方向に偏らすことができので、液晶パネル20を透過する光量が増え、明るい液晶表示装置を実現できる。
【0085】
<C−3.変形例1>
以上説明した実施の形態3の液晶表示装置300の変形例1として、図4に示す液晶表示装置300Aのような構成を採ることによっても、液晶表示装置300と同様の効果を得ることができる。
【0086】
図4に示す液晶表示装置300Aにおいては、図3に示した液晶表示装置300の有機ELバックライト10の代わりに有機ELバックライト10Aを備え、反射板60は備えていない。
【0087】
すなわち、有機ELバックライト10Aは、透明基板11の背面(液晶パネルとは反対側の表面)に陽極となる透明電極12、有機EL層13および陰極となる反射電極15をこの順に積層した構成となっており、透明基板11が液晶パネル20側を向いている。そして、透明電極12および反射電極15は電源PWに接続されている。
【0088】
透明基板11、透明電極12および有機EL層13の材質および含有成分等は、有機ELバックライト10と同様であり、有機発光層中に電子を注入するための陰極としての反射電極15にはアルミニウムを使う。その他、図4に示した液晶表示装置300と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0089】
液晶表示装置300Aにおける有機ELバックライト10Aから放射される光の振る舞いは、基本的には液晶表示装置300と同様であるが、有機EL層13の背面(液晶パネルとは反対側の表面)上に反射電極15が配設されているので、光の反射動作において差異が生ずる。
【0090】
すなわち、位相差板50からの円偏光光1e(右回り円偏光成分または左回り円偏光成分を含む)は有機EL層13に再入射し、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1eと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1f(誘導放射光)を発生させる。光1fは反射電極15で反射されて有機EL層13に再々入射する。
【0091】
有機EL層13に再々入射した光1fは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1fと進行方向および偏光方向が同じで、強度がさらに増幅された増幅光1i(誘導放射光)を発生させる。光1iは透明基板11を透過して増幅光1jとして放射される。
【0092】
なお、有機EL層13から反射電極15側に放射された自然放射光は、反射電極15で反射して有機EL層13に再入射する。この再入射した光も有機EL層13で誘導放射を生じさせるが、元々偏光成分に偏りがないため、液晶パネル20側に放射される光1と変わらず、光1と同じ振る舞いをすることになるので図示は省略している。
【0093】
このような構成を採ることで、構成が簡略化され、小型で安価な液晶表示装置を得ることができる。
【0094】
以上の説明において、有機ELバックライト10Aは、透明基板11上に有機EL層13を積層する構成としたが、位相差板50および直線偏光反射板30を積層したものを透明板11の代わりに使用しても良い。
【0095】
<C−4.変形例2>
また、液晶表示装置300の変形例2として、図5に示す液晶表示装置300Bのような構成を採ることによっても、液晶表示装置300と同様の効果を得ることができる。
【0096】
図5に示す液晶表示装置300Bにおいては、図3に示した液晶表示装置300の有機ELバックライト10の代わりに有機ELバックライト10Bを備え、反射板60は備えていない。
【0097】
すなわち、有機ELバックライト10Bは、支持基板16の前面(液晶パネル側の表面)に陽極となる反射電極17、有機EL層13および陰極となる透明電極14をこの順に積層した構成となっており、有機EL層13が液晶パネル20側を向いている。そして、反射電極17および透明電極14は電源PWに接続されている。
【0098】
支持基板16としては、例えばガラスを使うが、ガラスの代わりにポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル、シクロオレフィン、脂環式ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、脂環式アクリル、ポリエステル等の樹脂からなるフィルムあるいはシートを用いても良い。
【0099】
なお、支持基板16は透明でも絶縁体でもある必要がなく、アルミニウム,銅,ステンレス等の金属材料あるいはAl23等のセラミック材料、ABS、ポリフエニレンエーテル等の不透明樹脂で構成しても良い。
【0100】
透明電極14および有機EL層13の材質および含有成分等は、有機ELバックライト10と同様であり、有機発光層中にホールを注入するための陽極としての反射電極17には、金(Au)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等の仕事関数の大きい金属あるいはAl上にITOを積層した膜を使うことができる。
【0101】
液晶表示装置300Bにおける有機ELバックライト10Bから放射される光の振る舞いは、基本的には液晶表示装置300と同様であるが、有機EL層13の背面(液晶パネルとは反対側の表面)上に反射電極17が配設されているので、光の反射動作において差異が生ずる。
【0102】
すなわち、位相差板50からの円偏光光1e(右回り円偏光成分または左回り円偏光成分を含む)は有機EL層13に再入射し、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1eと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1f(誘導放射光)を発生させる。増幅光1fは反射電極17で反射されて有機EL層13に再々入射する。
【0103】
有機EL層13に再々入射した光1fは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1fと進行方向および偏光方向が同じで、強度がさらに増幅された増幅光1i(誘導放射光)を発生させる。光1iは透明基板11を透過して増幅光1jとして放射される。
【0104】
なお、有機EL層13から反射電極17側に放射された自然放射光は、反射電極17で反射して有機EL層13に再入射する。この再入射した光も有機EL層13で誘導放射を生じさせるが、元々偏光成分に偏りがないため、液晶パネル20側に放射される光1と変わらず、光1と同じ振る舞いをすることになるので図示は省略している。
【0105】
このような構成を採ることで、構成が簡略化され、小型で安価な液晶表示装置を得ることができる。
【0106】
<D.実施の形態4>
<D−1.装置構成>
図6に、本発明に係る実施の形態4の液晶表示装置400の基本構成を断面概略図で示す。
【0107】
図6に示すように、液晶表示装置400は、それぞれ間隔を開けて平行に配設された有機ELバックライト10、液晶パネル20、位相差板(1/4波長板)50、反射板60および円偏光反射板70を備えている。なお、これらは、有機ELバックライト10が反射板60と円偏光反射板70によって挟まれ、円偏光反射板70が有機ELバックライト10と位相差板50によって挟まれ、位相差板50が円偏光反射板70と液晶パネル20によって挟まれた位置関係となっている。
【0108】
円偏光反射板70は、例えばMerck社のTRANSMAXと呼称される反射材、あるいは日東電工社のNIPOCSと呼称される反射材によって構成されている。
【0109】
なお、有機ELバックライト10と間隔を開けて反射板60を配置する代わりに、透明基板11の背面にアルミニウム(Al)あるいは銀(Ag)等の反射性の膜をコーティングしてもよい。また、図1に示した液晶表示装置100と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0110】
<D−2.動作>
次に、液晶表示装置400における有機ELバックライト10から放射される光の振る舞いについて説明する。
【0111】
電源PWから有機EL層13に供給される電力により、有機EL層13から液晶パネル20側に光1が、透明基板11の背面側に光2が放射される。
【0112】
ここで自然放射光である光1および2は、右回り円偏光成分および左回り円偏光成分を同じ比率で含んでいる。
【0113】
有機EL層13から液晶パネル20側に放射された光1のうち、一方の円偏光成分の光1aは円偏光反射板70を透過し、位相差板50で1つの直線偏光成分を有する光1bに変換され、液晶パネル20に入射する。
【0114】
この場合、円偏光反射板70を透過した光1aが、位相差板50を透過することで、その偏光方向が偏光板21の透過軸と一致する光1bになるように、位相差板50を配置する。
【0115】
また、光1の他方の円偏光成分の光1dは円偏光反射板70で反射され、有機EL層13に再入射する。
【0116】
有機EL層13に再入射した光1dは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1dと進行方向および円偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1e(誘導放射光)を発生させる。光1eは透明基板11を透過して増幅光1fとして放射される。
【0117】
光1fは、反射板60で反射されて反射光1gとなり、有機EL層13に再々入射する。
【0118】
有機EL層13に再々入射した反射光1gは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1gと進行方向および偏光方向が同じで、強度がさらに増幅された増幅光1h(誘導放射光)を発生させ、有機EL層13から増幅光1iとして放射される。
【0119】
この増幅された光1iの円偏光方向は、円偏光反射板70を透過した光1aと同じ方向であり、円偏光反射板70を透過して光1jとなる。
【0120】
光1jは、位相差板50を透過することで、1方向の直線偏光成分を有するとともに、その偏光方向が偏光板21の透過軸と一致した増幅光1kに変換される。
【0121】
なお、位相差板50で変換された1つの直線偏光成分を有する光1bおよび1kの偏光方向は、液晶パネル20の入射側の偏光板21の透過軸と一致しているため、光1bおよび1kが効率よく液晶パネル20内に入射する。なお、液晶パネル20に入射した光1bおよび1kは、液晶層25を通ることで偏光方向が変わり、偏光板22を介してそれぞれ光1cおよび1lとして放射される。
【0122】
ここで、透明基板11の背面側に放射された光2は、反射板60で反射して有機EL層13に再入射する。この再入射した光2も有機EL層13で誘導放射を生じさせるが、元々偏光成分に偏りがないため、液晶パネル20側に放射される光1と変わらず、光1と同じ振る舞いをすることになる。
【0123】
有機EL層13に供給される電力は、自然放射光1および2を発生させるとともに、誘導放射光1eおよび1hの発生にも寄与する。
【0124】
同じ電力では発生する光量は同じであるので、誘導放射光1eおよび1hが発生しない場合に比べて自然放射光1および2の光量は減少するが、誘導放射光1eおよび1hは、光の進行方向が1方向に揃っており、最終的に液晶パネル20に入射する光1kの光量は自然放射光1および2の減少分よりも多くなり、また、光1kの偏光方向が液晶パネル20の光入射側の偏光板21の透過軸と一致するように位相偏光板50の透過軸を設定することで光1kが効率よく液晶パネル20内に入射する。このため、明るい液晶表示装置400を実現できる。
【0125】
ここで、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料が含まれず、誘導放射が生じにくい場合でも、液晶表示装置400と同様の構成を採れば、偏光光の回収により、理想的には有機EL層13から放射された自然放射光の100%が液晶パネル20の入射側の偏光板21の透過軸と偏光方向が一致した光として利用できる。
【0126】
しかしながら、自然放射光は有機EL層13から指向性を持たずにあらゆる立体角方向に放射されるので、液晶パネル20のパネル面に垂直な軸に対して大きな出射角で放射された光は、位相差板50、反射板60および円偏光反射板70の各界面での反射率が大きくなり各界面で反射されるため、結果的には液晶パネル20には入射されず損失となる。
【0127】
一方、有機EL層13にりん光を発光させる有機EL材料を含めた液晶表示装置400においては、自然放射光のうち大きな出射角で放射された光については同様の損失が生じるが、有機EL層13に再入射、再々入射できるような出射角が小さな光は、誘導放射により増幅される。この結果、特定の偏光成分でかつ液晶パネル20のパネル面に垂直な軸に近い角度成分を持つ光の割合を増やすことができ、有機EL層13から放射された光を、小さな損失で液晶パネル30に入射させることができる。
【0128】
また、位相差板50および円偏光反射板70を用いることで、光の偏光成分を液晶パネル20を透過する偏光方向に偏らすことができので、液晶パネル20を透過する光量が増え、明るい液晶表示装置を実現できる。
【0129】
<D−3.変形例1>
以上説明した実施の形態4の液晶表示装置400の変形例1として、図7に示す液晶表示装置400Aのような構成を採ることによっても、液晶表示装置400と同様の効果を得ることができる。
【0130】
図7に示す液晶表示装置400Aにおいては、図6に示した液晶表示装置400の有機ELバックライト10の代わりに有機ELバックライト10Aを備え、反射板60は備えていない。
【0131】
すなわち、有機ELバックライト10Aは、透明基板11の背面(液晶パネルとは反対側の表面)に陽極となる透明電極12、有機EL層13および陰極となる反射電極15をこの順に積層した構成となっている。そして、透明電極12および反射電極15は電源PWに接続されている。
【0132】
透明基板11、透明電極12および有機EL層13の材質および含有成分等は、有機ELバックライト10と同様であり、有機発光層中に電子を注入するための陰極としての反射電極15にはアルミニウムを使う。その他、図6に示した液晶表示装置400と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0133】
液晶表示装置400Aにおける有機ELバックライト10Aから放射される光の振る舞いは、基本的には液晶表示装置400と同様であるが、有機EL層13の背面(液晶パネルとは反対側の表面)上に反射電極15が配設されているので、光の反射動作において差異が生ずる。
【0134】
すなわち、円偏光反射板70からの円偏光光1d(右回り円偏光成分または左回り円偏光成分を含む)は有機EL層13に再入射し、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1dと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1e(誘導放射光)を発生させる。光1eは反射電極15で反射されて有機EL層13に再々入射する。
【0135】
有機EL層13に再々入射した光1eは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1eと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1h(誘導放射光)を発生させる。光1hは透明基板11を透過して増幅光1iとして放射される。
【0136】
なお、有機EL層13から反射電極15側に放射された自然放射光は、反射電極15で反射して有機EL層13に再入射する。この再入射した光も有機EL層13で誘導放射を生じさせるが、元々偏光成分に偏りがないため、液晶パネル20側に放射される光1と変わらず、光1と同じ振る舞いをすることになるので図示は省略している。
【0137】
このような構成を採ることで、構成が簡略化され、小型で安価な液晶表示装置を得ることができる。
【0138】
以上の説明において、有機ELバックライト10Aは、透明基板11上に有機EL層13を積層する構成としたが、円偏光反射板70および位相差板50を積層したものを透明板11の代わりに使用しても良い。
【0139】
<D−4.変形例2>
また、液晶表示装置400の変形例2として、図8に示す液晶表示装置400Bのような構成を採ることによっても、液晶表示装置400と同様の効果を得ることができる。
【0140】
図8に示す液晶表示装置400Bにおいては、図6に示した液晶表示装置400の有機ELバックライト10の代わりに有機ELバックライト10Bを備え、反射板60は備えていない。
【0141】
すなわち、有機ELバックライト10Bは、支持基板16の前面(液晶パネル側の表面)に陽極となる反射電極17、有機EL層13および陰極となる透明電極14をこの順に積層した構成となっている。そして、反射電極17および透明電極14は電源PWに接続されている。
【0142】
支持基板16としては、例えばガラスを使うが、ガラスの代わりにポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル、シクロオレフィン、脂環式ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、脂環式アクリル、ポリエステル等の樹脂からなるフィルムあるいはシートを用いても良い。
【0143】
なお、支持基板16は透明でも絶縁体でもある必要がなく、アルミニウム,銅,ステンレス等の金属材料あるいはAl23等のセラミック材料、ABS、ポリフエニレンエーテル等の不透明樹脂で構成しても良い。
【0144】
透明電極14および有機EL層13の材質および含有成分等は、有機ELバックライト10と同様であり、有機発光層中にホールを注入するための陽極としての反射電極17には、Au、Ni、Pt等の仕事関数の大きい金属あるいはAl上にITOを積層した膜を使うことができる。
【0145】
液晶表示装置400Bにおける有機ELバックライト10Bから放射される光の振る舞いは、基本的には液晶表示装置400と同様であるが、有機EL層13の背面(液晶パネルとは反対側の表面)上に反射電極17が配設されているので、光の反射動作において差異が生ずる。
【0146】
すなわち、円偏光反射板70からの円偏光光1d(右回り円偏光成分または左回り円偏光成分を含む)は有機EL層13に再入射し、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1dと進行方向および偏光方向が同じで、強度が増幅された増幅光1e(誘導放射光)を発生させる。光1eは反射電極17で反射されて有機EL層13に再々入射する。
【0147】
有機EL層13に再々入射した光1eは、有機EL層13において誘導放射を生じさせ、光1eと進行方向および偏光方向が同じで、さらに強度が増幅された増幅光1h(誘導放射光)を発生させる。光1hは透明基板11を透過して増幅光1iとして放射される。
【0148】
なお、有機EL層13から反射電極17側に放射された自然放射光は、反射電極17で反射して有機EL層13に再入射する。この再入射した光も有機EL層13で誘導放射を生じさせるが、元々偏光成分に偏りがないため、液晶パネル20側に放射される光1と変わらず、光1と同じ振る舞いをすることになるので図示は省略している。
【0149】
このような構成を採ることで、構成が簡略化され、小型で安価な液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明に係る実施の形態1の液晶表示装置の基本構成を示す断面概略図である。
【図2】本発明に係る実施の形態2の液晶表示装置の基本構成を示す断面概略図である。
【図3】本発明に係る実施の形態3の液晶表示装置の基本構成を示す断面概略図である。
【図4】本発明に係る実施の形態3の液晶表示装置の変形例1の基本構成を示す断面概略図である。
【図5】本発明に係る実施の形態3の液晶表示装置の変形例2の基本構成を示す断面概略図である。
【図6】本発明に係る実施の形態4の液晶表示装置の基本構成を示す断面概略図である。
【図7】本発明に係る実施の形態4の液晶表示装置の変形例1の基本構成を示す断面概略図である。
【図8】本発明に係る実施の形態4の液晶表示装置の変形例2の基本構成を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0151】
10 有機ELバックライト、20 液晶パネル、30 直線偏光反射板、40 吸収板、50 位相差板、60 反射板、70 円偏光反射板、11 透明基板、13 有機EL層、12,14 透明電極、15,17 反射電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EL(エレクトロルミネッセンス)発光を行う有機EL層を有した有機ELバックライトと、
前記有機ELバックライトの前面側に配設された液晶パネルと、
前記有機ELバックライトの前面側または背面側に配設され、前記有機ELバックライトで発生した2つの偏光成分を含む偏向光のうち、一の偏光成分の光を選択的に反射して前記有機ELバックライトに再入射させる偏光反射板と、を備え、
前記有機EL層は、発光寿命が100nsec〜1msecのりん光を発生させる有機EL材料を含む、液晶表示装置。
【請求項2】
前記有機EL材料は、FIr(pic)、Ir(ppy)3およびBtp2Ir(acac)から選択される1つの材料を含み、
その含有比率は、ホスト材料の80〜99.5質量%に対して0.5〜20質量%である、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記偏光反射板は、前記有機ELバックライトの背面側に配設され、
前記偏光反射板の前記有機ELバックライトとは反対側の表面に対面するように配設され、前記偏光反射板を透過する偏光成分の光を吸収する吸収板をさらに備える、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記偏光反射板は、直線偏光反射板であって、前記有機ELバックライトと前記液晶パネルとの間に配設され、
前記有機ELバックライトの背面側に配設された1/4波長板と、
前記1/4波長板の前記有機ELバックライトとは反対側の表面に対面するように配設され、前記1/4波長板を透過する光を反射する反射板と、をさらに備える、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記偏光反射板は、直線偏光反射板であって、前記有機ELバックライトと前記液晶パネルとの間に配設され、
前記有機ELバックライトと前記直線偏光反射板との間に配設された1/4波長板と、
前記有機ELバックライトの背面側に配設され、前記有機ELバックライトからの光を反射する反射板と、をさらに備える、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記偏光反射板は、直線偏光反射板であって、前記有機ELバックライトと前記液晶パネルとの間に配設され、
前記有機ELバックライトと前記直線偏光反射板との間に配設された1/4波長板をさらに備え、
前記有機ELバックライトは、
透明基板と、
前記透明基板上において前記有機EL層を挟むように配設された陽極および陰極、を有し、
前記陽極は、前記透明基板の前記液晶パネルとは反対側の表面に配設され、
前記陰極は、前記有機EL層からの光を反射する反射板を兼用する、請求項5記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記偏光反射板は、直線偏光反射板であって、前記有機ELバックライトと前記液晶パネルとの間に配設され、
前記有機ELバックライトと前記直線偏光反射板との間に配設された1/4波長板をさらに備え、
前記有機ELバックライトは、
支持基板と、
前記支持基板上において前記有機EL層を挟むように配設された陽極および陰極、を有し、
前記陽極は、前記支持基板の前記液晶パネル側の表面に配設され、前記有機EL層からの光を反射する反射板を兼用する、請求項5記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記偏光反射板は、円偏光反射板であって、前記有機ELバックライトと前記液晶パネルとの間に配設され、
前記円偏光反射板と前記液晶パネルとの間に配設された1/4波長板と、
前記有機ELバックライトの背面側に配設され、前記有機ELバックライトからの光を反射する反射板と、をさらに備える、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記偏光反射板は、円偏光反射板であって、前記有機ELバックライトと前記液晶パネルとの間に配設され、
前記円偏光反射板と前記液晶パネルとの間に配設された1/4波長板をさらに備え、
前記有機ELバックライトは、
透明基板と、
前記透明基板上において前記有機EL層を挟むように配設された陽極および陰極、を有し、
前記陽極は、前記透明基板の前記液晶パネルとは反対側の表面に配設され、
前記陰極は、前記有機EL層からの光を反射する反射板を兼用する、請求項7記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記偏光反射板は、円偏光反射板であって、前記有機ELバックライトと前記液晶パネルとの間に配設され、
前記円偏光反射板と前記液晶パネルとの間に配設された1/4波長板をさらに備え、
前記有機ELバックライトは、
支持基板と、
前記支持基板上において前記有機EL層を挟むように配設された陽極および陰極、を有し、
前記陽極は、前記支持基板の前記液晶パネル側の表面に配設され、前記有機EL層からの光を反射する反射板を兼用する、請求項7記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−64999(P2007−64999A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247063(P2005−247063)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】