説明

液晶表示装置

【課題】滴下貼り合わせ方式で作成されるアクティブマトリクス型液晶表示装置における滴下痕の発生を防止すると共に、残像特性等に優れた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】酸性化合物(例えばフェノール誘導体412)を液晶組成に添加して比誘電率を調整して残像特性を改良し、滴下時に酸性化合物と水409との水素結合を防止するため、液晶組成に酸性化合物と水素結合し得る化合物(例えばアルコキシ化合物413)を添加し、滴下痕の発生を防止する。プログレッシブ方式では、前記酸性化合物の含有量は0.00010規定以上、前記酸性化合物と水素結合を形成する化合物の添加量は0.265mol/l以下であり、かつ、前記酸性化合物に対して10当量以上とする。インターレース方式では、前記酸性化合物の含有量は0.00100規定以上、前記酸性化合物と水素結合を形成する化合物の含有量は1.324mol/l以下であり、かつ、前記酸性化合物に対して150当量以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クリーンルーム等の湿度のある雰囲気で液晶組成物を基板に滴下する滴下貼り合わせ方式の液晶注入方法にて作製された横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、残像特性に優れ、滴下痕の発生しない液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)に代表されるアクティブ素子を備えたアクティブマトリクス型液晶表示装置は、CRTに匹敵する高画質、並びに薄い、軽量という特徴から表示端末として広く普及している。アクティブマトリクス型液晶表示装置は携帯機器、カーナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータ(PC)などの比較的小さなサイズの表示端末に利用されていたが、マザーガラスの大型化により表示サイズの大型化が可能となり、近年はテレビ用途にも広く用いられるようになっている。液晶表示装置には高輝度、高コントラスト比、豊かな階調性、高色度域などの特性が要求されるが、テレビ用途では特に高い動画表示性能、広い視野角特性が必要とされている。
【0003】
アクティブマトリクス型液晶表示装置としては、横電界駆動方式、VA(Vertical Alignment)方式、TN(Twist Nematic)方式がある。中でも、横電界駆動方式は、中間調での液晶の応答時間が短い点で高い動画表示性能の実現に有利であり、正面視野と斜め視野での階調−輝度特性の変化が小さく、かつ、斜め視野でのコントラスト比が高く広い視野角特性が得られることからテレビ用途に適している。VA方式及びTN方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置は、液晶を駆動する電極を2枚の基板表面上に形成し、相対向させた電極を用いて基板に垂直な方向の電界を印加し液晶を動作させている。一方、横電界駆動方式は1枚の基板上に設けた一対の櫛歯電極に電圧を印加し、基板に対して平行な方向に電界を発生し液晶を動作させている。
【0004】
横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置は、VA方式及びTN方式に比べ電極構造が異なることにより、液晶の容量が小さく、電界による影響を受けやすい。このため、異常な電界により配向乱れが生じることがあり、特に何らかの理由により液晶表示装置の液晶層近傍に静電荷が蓄積した場合、その静電荷に起因する電界により生じた配向乱れが、表示での残像として問題となりやすい。
【0005】
このような配向乱れを防止する方法として、特許文献1(特開平7−306417号公報)には、比抵抗の低い液晶を用いる技術が開示されている。本公知例では、横電界方式における開口率を向上させるために電極間ギャップを広げると液晶の容量がさらに小さくなるため静電気によって配向を乱しやすくなるので、その対策として、液晶の抵抗を小さくすることが有効な手段となると記載している。また、特許文献2(特開平11−302652号公報)には、液晶の比抵抗を予め特定された値に調整する手段として、フェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を10ppmから10wt%添加する技術が開示されている。本公知例では、開示されているフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を液晶組成物に添加すると液晶組成物の比抵抗が下がり、液晶表示装置の液晶層近傍への静電荷の蓄積が阻害されるため、液晶組成物の比抵抗が高いと問題となる残像が抑制されることが記載されている。代表するフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物として、2−シアノ−3−フルオロ−5−(4−n−プロピル−トランス−シクロヘキシル)フェノールがあり、上述した添加の範囲で比較的緩やかに比抵抗が変化することが示されており、横電界方式に必要な液晶の低抵抗化を制御する材料として適していると考えられる。
【0006】
液晶表示装置の製造において、2枚の基板の間に液晶を充填する方法としては、特許文献3(特開2006−133251号公報)の「背景技術」に記載されている滴下貼り合わせ方式が広く行われている。
【0007】
滴下貼り合わせ方式は、クリーンルーム雰囲気中で、一方の基板にシール材を塗布して液晶を滴下し、他方の基板を貼り合わせた後、加圧又は一対の基板の内側と外側との圧力差によりシール材を押し潰してギャップを形成した後、シール材を硬化させる方法であり、液晶を基板上に直接滴下するために作業時間を大幅に短縮することができ、また、必要最小限の液晶があればよいため高価な液晶の所要量を削減することができるという特徴がある。この滴下貼り合わせ方式について、図8を用いて説明する。
【0008】
まず、薄膜トランジスタ(TFT)を備えた基板(TFT基板)とカラーフィルタ及び柱状スペーサを備えた対向基板の双方の基板の表面に、印刷装置を用いてポリイミドの溶液を塗布し、仮焼成、本焼成を行って均一な膜厚の配向膜を形成し(工程(A))、焼成後に配向膜表面を回転金属ローラに巻き付けたバフ布などで一定方向に擦ってラビング処理を行う(工程(B))。そして、基板表面の残留物を除去するために両基板を洗浄し乾燥させる(工程(C))。
【0009】
次に、一対の対向する基板の一方(例えばTFT基板)上に、スクリーン印刷法やディスペンサ描画法等を用いて紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂等からなるシール材を塗布すると共にAgを塗布し、他方の基板(例えば対向基板)にポリマービーズ、シリカビーズ等のスペーサを湿式散布又は乾式散布により散布し、該スペーサを固着させる(工程(D)、(E))。
【0010】
次に、一方の基板(ここではTFT基板)のシール材に囲まれた表示領域に液晶滴下用ディスペンサなどの液晶滴下装置を用いて常圧で液晶を適量滴下した後(工程(F))、気泡が混入しないように真空中で他方の基板(ここでは対向基板)と位置合わせして貼り合わせる(工程(G))。その後、一対の基板を両外側から押圧してシール材を潰して所望のギャップを形成した後、基板(ここではTFT基板)の裏面から紫外線などを照射してシール材を仮硬化させ(工程(H))、更に所定の温度で加熱してシール材を本硬化させ(工程(I))、シール材の外側の所定の部分で一対の基板を切断して(工程(J))、液晶表示パネルが形成される。
【0011】
このような滴下貼り合わせ方式で作製された液晶表示装置では、滴下痕(液晶を基板に滴下した痕)が表示ムラとなる場合がある。この課題に対して、特許文献4(特開2003−156753号公報)では、液晶貯蔵容器と液晶滴下治具との間に脱水装置を設け、液晶中の水分を除去することにより、滴下痕を無くす技術が開示されている。また、特許文献5(特開2003−131244号公報)では、予め冷却した液晶を滴下し配向膜への液晶が吸着する速度を遅くさせ、かつ液晶を基板の主面の広がり方向に高速で均一に拡散させ基板の貼り合わせを行うことにより、滴下痕を無くす技術が開示されている。
【0012】
液晶表示装置は直流電圧を印加すると残像(画像の焼き付き)などの現象を起しやすいため、交流駆動をする必要がある。液晶表示装置では通常1枚の画面(1フレーム)の周波数は60Hzであり、映像信号の極性を画面(フレーム)毎に30Hzの周波数で反転させて液晶に印加する反転駆動が行われている。この反転駆動には、画面全体で同一極性の信号を入力し、かつ、所定フレーム数を駆動する毎に極性を反転させるフレーム反転駆動、所定の走査線(ライン)数毎に異なる極性の信号を入力し、かつ、所定フレーム数を駆動する毎に極性を反転するライン反転駆動、所定の画素(ドット)毎に異なる極性の信号を入力し、かつ、所定フレーム数を駆動する毎に極性を反転するドット反転駆動がある。
【0013】
PCなどの信号源から液晶表示装置の信号変換回路に入力される映像信号は、すべての走査線を1回の走査で描くプログレッシブ走査方式(プログレッシブ方式)が一般的である。一方、現在のテレビ放送における映像信号は一般的にNTSC方式のインターレース走査方式(インターレース方式)が用いられている。このNTSC方式のインターレース方式については、特許文献6(特開平9−236787号公報)の「従来技術」にて説明されている。インターレース方式は、1枚の画面(1フレーム)の映像信号を奇数番の走査線のみを集めた奇数フィールドと偶数番の走査線のみを集めた偶数フィールドに分け、奇数フィールドと偶数フィールドを交互に表示する方式であり、情報量を半分にしつつCRTなどのディスプレイで滑らかな映像を表示する技術である。NTSC方式では、1フレームが525本の走査線からなっており、2:1のインターレース走査を行っている。また、1フレームの周波数は30Hzであり、1フィールド(奇数フィールドまたは偶数フィールド分)の周波数は60Hzである。なお、CRTの表示領域で実際に表示するのは、525本の走査線のうちの480本程度である。
【0014】
インターレース方式の映像信号を液晶表示装置で表示するには、インターレースしない方式(ノンインターレース方式、または、プログレッシブ方式)の映像信号に変換する必要がある。映像信号をインターレース方式からプログレッシブ方式に変換することをインターレース−プログレッシブ変換(IP変換)といい、これを行う回路をIP変換回路という。走査線数が480本程度であり、フレーム毎に30Hzの周波数で反転駆動を行っている液晶表示装置に、NTSC方式のインターレース走査方式で伝送される映像信号を表示する場合、以下に示す方法でIP変換される。奇数フィールドと偶数フィールドのインターレース方式の映像信号のうち、奇数フィールドのインターレース方式の映像信号のみから、液晶表示装置の奇数(または偶数)番目のフレームを合成し、偶数フィールドの方式の映像信号のみから、液晶表示装置の偶数(または奇数)番目のフレームを合成する。例えば、インターレース方式の奇数フィールドの2N−1番目(Nは1以上の整数)の各走査線の表示で、液晶表示装置の奇数番目のフレームの第2N−1番目の走査線と、第2N番目の走査線を表示し、次にインターレース方式の偶数フィールドの第2N番目の各走査線の表示で、液晶表示装置の偶数番目のフレームの第2N−1番目の走査線と、第2N番目の走査線を表示する。
【0015】
インターレース方式の映像信号を上記の方法でIP変換した場合、横縞の固定パターンなど特定のパターンを表示した場合に直流電圧が液晶に印加される問題が生じる。図9は、ノーマリーブラック方式であり、かつ、1フレーム毎に映像信号が反転される液晶表示装置にインターレース方式の映像信号を入力した場合に、任意の1画素の液晶にかかる電圧を示す図であり、図9(a)は白表示のときに液晶にかかる電圧を示し、図9(b)は黒表示のときに液晶にかかる電圧を示し、図9(c)は水平方向の1走査線毎に白、黒の入れ替わる横縞表示のときに1画素にかかる電圧を示す。白表示の液晶印加電圧をE(V)、黒表示の液晶印加電圧を0(V)とすると、図9(a)に示すように、白表示のときは奇数フィールドでは+E(V)(または−E(V))、偶数フィールドでは−E(V)(または+E(V))の電圧が液晶に印加され、図9(b)に示すように、黒表示のときは奇数フィールド、偶数フィールドともに液晶印加電圧は0(V)となる。また、図9(c)に示すように、横縞表示の場合は、奇数フィールドで+E(V)(または−E(V))、偶数フィールドで0(V)、または、奇数フィールドで0(V)、偶数フィールドで+E(V)(または−E(V))の電圧が液晶に印加されることになる。このような液晶表示装置の駆動方法では、白表示、黒表示などでは液晶に直流電圧がかからないが、図9(c)に示すように横縞表示のときに正極性の電圧のみが印加され、平均するとE/2(V)の直流電圧が液晶に印加されることになり、残像などの表示品質の低下を生じるという問題がある。なお、横縞の固定パターンを例に説明したが、第2N−1番目と第2N番目の走査線上の隣接する画素にそれぞれ黒(または白)と白(または黒)を表示した場合には、反転駆動の種類(フレーム反転、ライン反転、ドット反転)に関わらず、同様の問題が発生する。
【0016】
この問題を解決する手段として、所定フレーム数を表示する毎に液晶に印加される電圧の極性を反転する反転駆動方法において、所定フレーム数毎にさらに極性を反転する方法が、特許文献6の「発明の実施の形態」に開示されている。
【特許文献1】特開平7−306417号公報
【特許文献2】特開平11−302652号公報
【特許文献3】特開2006−133251号公報
【特許文献4】特開2003−156753号公報
【特許文献5】特開2003−131244号公報
【特許文献6】特開平9−236787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら上述した従来技術には、次のような課題があった。
【0018】
第1の課題は、液晶組成物を低抵抗化して残像を抑制すると滴下痕が発生することである。特許文献2には、横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置に充填する液晶組成物にフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を添加することで残像を抑制する技術が開示されているが、滴下貼り合わせ方式で製造した液晶表示装置に発生する滴下痕に関する開示は一切されていない。
【0019】
一方、滴下痕を解決する手段として、特許文献5には、予め冷却した液晶を滴下し、配向膜へ液晶が吸着する速度を遅くさせ、かつ液晶を基板の主面の広がり方向に高速で均一に拡散させ基板の貼り合わせを行うことにより、滴下痕を無くす技術が開示されている。また、他の手段として特許文献4には、液晶貯蔵容器と液晶滴下治具との間に脱水装置を設け、液晶中の水分を除去することにより滴下痕を防止する技術が開示されている。しかしながら、上述した2つの公知例では残像を解決する技術は開示されておらず、また、残像と密接に関係する液晶の組成に関する知見についてもまったく開示されていないため、液晶組成物の低抵抗化に対する滴下痕の因果関係を示すものでない。
【0020】
第2の課題は、信号源から信号変換回路にインターレース方式の映像信号が入力される液晶表示装置では、残像が抑制されにくくなることである。プログレッシブ方式に対し、インターレース方式の映像信号が入力される液晶表示装置では、水平方向の1走査線毎に白、黒の入れ替わる横縞表示を行うと、最も液晶に大きな直流電圧が印加されるため、残像が課題となる。特許文献2で開示されているフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物は、残像改善を目的として液晶組成物に添加されるものであるが、本公知例にはインターレース方式の映像信号が入力される場合など、液晶に過大な直流電圧が印加された場合に発生する残像の改善方法に関する技術開示がなされていないため、依然インターレース方式での残像の課題が残る。
【0021】
また、滴下痕の出現程度は液晶表示装置に入力される映像信号及びその変換方法と密接に関係すると考えられるが、特許文献5及び特許文献4には、映像信号及びその変換方法とを関連付ける知見はまったく開示されていない。
【0022】
上記課題の対策として、特許文献6にて開示されている駆動信号を変換するIP変換方法は、残像の発生防止に有効であるが、前記IP変換方法は信号処理手順が複雑であるため、駆動回路の価格が高くなる問題がある。安価なテレビ用液晶表示装置を実現するために、従来の駆動回路は変えずに残像の発生を防止する技術として、例えば、液晶組成材料や製造条件変更のみでの対応などのコストアップにならない方法が望まれる。
【0023】
第3の課題として、表示シミ発生の懸念である。特許文献2には、フェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を添加することにより特定の比抵抗を有する液晶組成物を提供する技術が開示されているが、表示シミの発生しないフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物の添加量及び比抵抗についての開示がされていない。
【0024】
上述した課題に対して、本発明の発明者は、特許文献2に開示されているフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を含有する液晶組成物を充填した横電界方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置では滴下痕が発生し、フェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を含有しない場合では滴下痕が発生しないことから、前記フェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物が関与する現象であることを見出した。つまり、特許文献2に開示される液晶組成物では滴下痕が解決できず、また、残像を抑制し、かつ、表示シミを防止することはできない。また、特許文献4,5で開示される滴下痕を解決する技術では、残像を抑制する液晶組成物を充填した液晶表示装置の滴下痕を防止することができないことを意味している。
【0025】
本発明の目的は、通常のプログレッシブ方式の映像信号が入力される滴下貼り合わせ方式にて作製された横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、従来の技術では成し得なかった、残像、表示シミ、滴下痕の発生がなく、高速応答である液晶表示装置を提供するものである。
【0026】
さらには、インターレース方式の映像信号が入力される滴下貼り合わせ方式にて作製された横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、従来の技術では成し得なかった、残像、表示シミ、滴下痕の発生がなく、さらに液晶組成物が広い温度範囲でネマチック相を示すことで広い温度範囲の使用に耐える液晶表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の発明者は、2枚の基板間に滴下貼り合わせ方式にてフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を添加した液晶組成物を充填する横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置において課題である滴下痕に対して、液晶組成物に前記フェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物を添加することが有効であり、さらにその添加量は入力される映像信号により異なる所定当量以上とすることが有効であることを見出した。信号変換回路にプログレッシブ方式の映像信号が入力されるなどして、液晶に大きな直流電圧が印加されない場合には、前記酸性メソゲン化合物の含有量は0.00010規定以上で残像発生防止が可能であり、前記酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物の添加量は0.265mol/l以下であり、かつ、前記酸性メソゲン化合物に対して10当量以上とすることで滴下痕の発生防止が可能であることを見出した。さらに、信号変換回路にインターレース方式の映像信号が入力されるなどして、液晶に大きな直流電圧が印加される場合には、前記酸性メソゲン化合物の含有量は0.00100規定以上で残像発生防止が可能であり、前記酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物の含有量は1.324mol/l以下であり、かつ、前記酸性メソゲン化合物に対して150当量以上とすることで、滴下痕の発生防止が可能であることを見出した。
【0028】
すなわち、本発明は、酸性メソゲン化合物と、該酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物とを添加した液晶組成物が滴下貼り合わせ方式により充填され、かつ、信号源から信号変換回路にプログレッシブ方式の映像信号が入力されることを特徴とする液晶表示装置、特に、酸性メソゲン化合物の添加量が0.00010規定以上であり、酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物の添加量が0.265mol/l以下であり、かつ、前記酸性メソゲン化合物に対して10当量以上であることを特徴とする液晶表示装置に関する。
【0029】
また、本発明は、酸性メソゲン化合物と、該酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物とを添加した液晶組成物が滴下貼り合わせ方式により充填され、かつ、信号源から信号変換回路にインターレース方式の映像信号が入力されることを特徴とする液晶表示装置、特に、酸性メソゲン化合物の添加量が0.00100規定以上であり、酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物の添加量が1.324mol/l以下であり、かつ、前記酸性メソゲン化合物に対して150当量以上であることを特徴とする液晶表示装置に関する。
【0030】
酸性メソゲン化合物がフェノール誘導体であることが好ましく、酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物がアルコキシ化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、滴下貼り合わせ方式にてフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物を添加した液晶組成物を充填する横電解駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、液晶組成物に酸性メソゲン化合物と水素結合し得るメソゲン化合物を予め添加しておくことにより、酸性メソゲン化合物が製造過程で水と水素結合することにより発生する滴下痕を防止でき、また、プログレッシブ方式とインターレース方式との差違による異なる最適量を使用したことで、プログレッシブ方式では、残像特性、滴下痕特性、表示シミ特性、応答特性が良好な液晶表示装置が提供でき、インターレース方式では、残像特性、滴下痕特性、表示シミ特性、低温特性(液晶相溶性)が良好な液晶表示装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明において、「メソゲン化合物」とは、 単体で液晶性を示す化合物、或いは、他の単数または複数のメソゲン化合物と混合した場合に液晶性を示す化合物をいう。
【0033】
この滴下痕の発生原因は次のように推定される。
【0034】
図3は、一方の基板101にシール材102を塗布した後から、シール材102に囲まれた領域に液晶104を滴下し、真空中で貼り合わせるまでの工程を示している。液晶組成物を滴下する側の基板101(図3ではTFT基板)を、ラビング後に基板表面の残留物を除去するため洗浄乾燥(図8の工程(C))してから、シール材102に囲まれた表示領域に液晶滴下用ディスペンサなどの液晶滴下装置を用いて滴下するまでの工程をクリーンルーム雰囲気で行うと、基板101表面の配向膜が雰囲気中の水分を吸着し、基板の最表面に薄い水の層103が形成される(図3(A))。クリーンルーム雰囲気には剥離帯電防止を目的として、25℃で湿度60%前後となるように水分が含まれており、この水分が基板最表面にある配向膜に吸着されるためである。一般的に、配向膜の主成分であるポリイミドは、有機高分子材料の中でも比較的吸湿しやすい材料でもある。
【0035】
次に、一方の基板のシール材に囲まれた領域に液晶滴下ディスペンサなどの液晶滴下装置を用いて、予め50Paの圧力で1時間脱水及び脱気した液晶を滴下する(図3(B))。このとき、基板最表面に吸着された水分が液晶中に取り込まれ、液晶組成物に含有されるフェノール誘導体等の酸性メソゲン化合物の酸性基と水素結合を形成する。例えば、下記式(I)
【0036】
【化1】

【0037】
(式中、Rは炭素数7以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
で表されるフェノール誘導体の水酸基は、水と水素結合を形成しやすく、水分子の酸素とフェノール誘導体の水酸基の水素が配位結合を形成してオキソニウムイオンとなり、結果としてフェノール誘導体の水酸基の水素イオンが解離することにより、フェノキシドイオンが生成される解離平衡を示す(下記スキームA)。
【0038】
【化2】

【0039】
次に、一方の基板101と対向基板105を真空中で貼り合わせる前に、液晶組成物を滴下した一方の基板101を真空中で保持する。このとき、基板最表面に付着した水分のうち、液晶組成物を滴下していない部分のものは揮発してなくなるが、液晶組成物の下の水分は揮発せず基板と液晶の間に残留する(図3(C))。その後、一方の基板101と対向基板105を貼り合わせると液晶104は拡がり、シール102に囲まれた領域全体に行き渡る。しかし、オキソニウムイオンとフェノキシドイオンは、一方の基板101と液晶の界面側にのみ存在するため、シール102に囲まれた領域全体には行き渡らず滴下位置に留まる(図3(D))。すなわち、滴下位置の内側ではオキソニウムイオンとフェノキシドイオンが多量に存在するが、滴下位置の外側ではほとんど存在しないことになる。
【0040】
図4は従来の横電界駆動方式アクティブマトリクス型液晶表示装置の表示画素の断面を表した図であり、図4(a)は液晶滴下位置の内側、図4(b)は液晶滴下位置の外側の状態を表す図である。液晶表示装置では配線抵抗の増加に伴うゲート信号の鈍りによってフィードスルー電圧が表示部内で分布を持つ。液晶に印加される駆動電圧は、所定フレーム毎に極性反転するドレイン電圧からこのフィードスルー電圧分だけずれるが、共通電極電位は表示部内で均一である。このため、表示部の一部で液晶に直流電圧が印加されることとなる。特に近年液晶表示装置の大型高精細化により、端部から中央部への距離は長くなり、配線幅は狭くなる傾向にあり、フィードスルー電圧の不均一性は増大する方向にある。例えば、画面サイズ21.3インチのUXGA(縦:1200画素、横:1600画素)の液晶表示装置では、表示部内で共通電極電位は最大で0.3V程度の分布を持っている。したがって、上記液晶装置では最大で0.3Vの直流電圧が液晶に印加されることとなる。
【0041】
このように液晶に0.3V程度の直流電圧がかかると、図4(a)に示す滴下位置の内側では配向膜406表面の水分109とフェノール誘導体から発生したオキソニウムイオン411とフェノキシドイオン410により液晶の比抵抗が著しく低下するため、液晶に印加される直流電圧は短時間に打ち消されてしまう。これは分子レベルで見た場合、液晶にかかる直流電圧を打ち消すようにオキソニウムイオン411とフェノキシドイオン410が移動することを意味している。一方、図4(b)に示す滴下位置の外側にも滴下位置と同濃度でフェノール誘導体412が存在するが、水がほとんど存在しないため、オキソニウムイオンとフェノキシドイオンはほとんど生成されない。したがって、滴下位置の外側ではオキソニウムイオンとフェノキシドイオンの存在量が滴下位置の内側と比較して少なく、液晶の比抵抗は相対的に高いままであるため、直流電圧が全て打ち消されてしまうことはない。ノーマリーブラックモードである横電界駆動方式の液晶表示装置では、直流電圧が打ち消される滴下位置の内側は直流電圧がかかり続ける外側に比べて暗くなり、滴下痕として視認されることとなる。
【0042】
なお、図4において、401は第1の透明基板(TFT基板)、402は第1の層間絶縁膜、403は共通電極、404は第2の層間絶縁膜、405は画素電極、407は液晶408は第2の透明基板(対向基板)を示す。
【0043】
これに対し、本発明では、フェノール誘導体と水素結合しうるメソゲン化合物、特に液晶組成物との相溶性に優れる下記式(II)のアルコキシ化合物を添加することで、フェノール誘導体が水分と反応して、オキソニウムイオンとフェノキシドイオンとが生成することを防止している。例えば、フェノール誘導体の添加された液晶組成物に、下記式(II)のアルコキシ化合物
【0044】
【化3】

【0045】
(式中、Rは炭素数7以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、ORは炭素数10以下のアルコキシ基を示す。)
を当量以上添加することにより、フェノール誘導体のほとんどがアルコキシ化合物と下記スキームBで表されるように水素結合を形成している。
【0046】
【化4】

【0047】
図5は、本発明の実施の横電界駆動方式アクティブマトリクス型液晶表示装置の表示画素の断面を表した図であり、図5(a)は液晶滴下位置の内側、図5(b)は液晶滴下位置の外側の状態を表す図である。図5(a)に示す滴下位置の内側には配向膜406表面に水分409が存在するが、液晶組成物にはフェノール誘導体412に対してアルコキシ化合物413が当量以上に含有されているため、ほとんどのフェノール誘導体412はアルコキシ化合物413と水素結合を形成している。したがって、オキソニウムイオンとフェノキシドイオンはほとんど生成されない。また、図5(b)に示す滴下位置の外側では、水分が少なく、更にフェノール誘導体412とアルコキシ化合物413が水素結合を形成しているため、オキソニウムイオンとフェノキシドイオンは生成されない。したがって、液晶滴下位置の外側と内側で液晶にかかる直流電圧はほぼ同等であるため、滴下痕は発生しない。
【0048】
また、液晶に直流電圧がかかると、フェノール誘導体412が添加されておらず比抵抗が高い液晶組成物では、液晶層近傍に静電荷が蓄積するため残像となる。しかし、本発明の液晶組成物ではフェノール誘導体を添加し比抵抗を下げているため、液晶層近傍への静電荷の蓄積が阻害され、残像特性が良好となる。
【0049】
本発明の実施例1及び実施例2では酸性化合物として後述するフェノール誘導体(I−1)を用いているが、液晶組成物に溶解し、かつ、水素の解離定数が前記フェノール誘導体と同等の酸性化合物であって、1.0×1013Ωcmから1.0×1014Ωcmの比抵抗の液晶組成物に0.00050規定添加することにより、1.0×1011Ωcmから1.0×1012Ωcmに比抵抗を低下させる化合物であれば使用することができる。
【0050】
本発明の液晶組成物に含有される酸性メソゲン化合物は、式(1)又は式(2)で表される置換フェノールや、式(3)又は式(4)で表される置換安息香酸であっても良い。
【0051】
【化5】

【0052】
(式(1)において、RはH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0053】
【化6】

【0054】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、
この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH又はHであり、X、X、X、X、Xの少なくとも1つはOHである)
【0055】
【化7】

【0056】
(式(2)において、R1 、Rは独立して、それぞれH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0057】
【化8】

【0058】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R 、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、
この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH又はHであり、X、X、X、Xの少なくとも1つはOHである)
【0059】
【化9】

【0060】
(式(3)において、RはH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0061】
【化10】

【0062】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、
この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH又はHであり、X、X、X、X、Xの少なくとも1つはCOOHである)
【0063】
【化11】

【0064】
(式(4)において、R1 、Rは独立して、それぞれ、H、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0065】
【化12】

【0066】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R 、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、
この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH又はHであり、X、X、X、Xの少なくとも1つはCOOHである)
【0067】
また、酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物としては、上記酸性メソゲン化合物のOH基あるいはCOOH基と水素結合し得る化合物であれば使用することができ、中でも、式(5)〜(8)で表されるアルコキシ化合物のうち、式(1)及び式(2)で表されるフェノール誘導体のOH基、及び、式(3)及び式(4)で表される安息香酸誘導体のCOOH基と水素結合を形成するアルコキシ化合物を選択することが可能である。
【0068】
【化13】

【0069】
(式(5)において、RはH、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0070】
【化14】

【0071】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、
この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH、OR’’又はHであり、R’’はH、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0072】
【化15】

【0073】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R’’は又、CN,F,Cl又はCOOR’’’、適当であればOHであり、R’’’はH又はR’’であり(ここでCN,F,OH又はCOOR’’は除かれる)、X、X、X、X、Xの少なくとも1つはOR’である)
【0074】
【化16】

【0075】
(式(6)において、RはH、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0076】
【化17】

【0077】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH、OR’’又はHであり、R’’はH、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0078】
【化18】

【0079】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R’’は又、CN,F,Cl又はCOOR’’’、適当であればOHであり、R’’’はH又はR’’であり(ここでCN,F,OH又はCOOR’’は除かれる)、X、X、X、X、Xの少なくとも1つはOR’である)
【0080】
【化19】

【0081】
(式(7)において、R1 、Rは独立して、それぞれ、H、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0082】
【化20】

【0083】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R 、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH、OR’’又はHであり、R’’はH、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0084】
【化21】

【0085】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R’’は又、CN,F,Cl又はCOOR’’’、適当であればOHであり、R’’’はH又はR’’であり(ここでCN,F,OH又はCOOR’’は除かれる)、X、X、X、Xの少なくとも1つはOR’である)
【0086】
【化22】

【0087】
(式(8)において、R1 、Rは独立して、それぞれ、H、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0088】
【化23】

【0089】
、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R 、Rは又、CN,F,Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、R’はH又はRであり(ここでCN,F,OH又はCOOR’は除かれる)、
、A、Aは互いに独立して、それぞれ、
(a)1,4−シクロへキシレン又はトランス−1,4−シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
(b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
(c)1,4−ビシクロ[2,2,2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テロラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、この一般式において、(a)及び(b)はF原子により一置換体又は多置換体であることができ;
、Z及びZは互いに独立して、それぞれ−CO−O−、−O−CO−、−COCH−、−CH−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、トラン基、−(CH−、−(CHCO−、−(CH−O−CO−、−(CH−(CO−O)−、−CH=CH−CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−又は単結合であり、
n、m、oは互いに独立してそれぞれ0又は1であり、
、X、X、Xは互いに独立して、それぞれOH、F、Cl、COOR’、NO、CN、COOH、OR’’又はHであり、R’’はH、1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、−O−、−S−、
【0090】
【化24】

【0091】
、−CO−、CO−O−、O−CO−、O−CO−O−により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、R’’は又、CN,F,Cl又はCOOR’’’、適当であればOHであり、R’’’はH又はR’’であり(ここでCN,F,OH又はCOOR’’は除かれる)、X、X、X、Xの少なくとも1つはOR’である)
【0092】
これらのアルコキシ化合物は、かつては液晶組成に含まれていたが、昨今の応答速度の向上が求められる液晶表示装置では、その使用が避けられる傾向にある。本発明では、滴下貼り合わせ方式にて作製される液晶表示装置に、昨今使用が避けられているこれらアルコキシ化合物を使用することで、酸性メソゲン化合物の偏在化による滴下痕を防止できるという極めて顕著な効果を奏するものである。
【0093】
一般的に液晶組成物の調製は、含有される液晶組成物などの成分の重量を測定してから混合することにより行われる(以下、滴下前液晶)。本発明の液晶組成物においても、含有される各成分の重量を測定してから混合しているため、フェノール誘導体とアルコキシ化合物を所定の含有量にすることは容易である。
【0094】
さらに本発明者は、滴下前液晶の組成と、滴下し液晶表示装置に封入された液晶の組成とを機器分析によって比較したが、両者の液晶組成の差はフェノール誘導体とアルコキシ化合物ともに10%程度の差であり、本発明の結果に影響を与えない程度であることを確認している。
【0095】
また、液晶組成物に含有するフェノール誘導体とアルコキシ化合物の含有量のwt%の算出は、ガスクロマトグラフ質量分析法(Gas Cromatography Mass Spectroscopy:GCMS)で行うことが可能である。ガスクロマトグラフ質量分析法は、ガスクロマトグラフ分析法(GC)と質量分析法(MS:マス)を組み合わせた分析法である。GCMS分析では、液晶組成物を100倍から10000倍のアセトン等有機溶剤に溶解し、この溶液をガスクロマトグラフ分析装置のカラムと呼ばれる細い分離管に通すことで、液晶組成物に含まれる各成分を分離して複数のピークとして出現させる。次に質量分析装置では質量スペクトルを測定することにより、その分離されたピークがどのような化合物であるかを特定する。
【0096】
ガスクロマトグラフ分析で出現する各成分のピークの強度は、各成分の含有量とは一般的に一致しない。すなわち、化合物A、Bの等重量混合物のガスクロマトグラフ分析を行った場合、両ピーク面積は必ずしも等しくならない。この補正は補正係数によって行われる。例えば、化合物Aと化合物Bの任意の割合での混合物のガスクロマトグラフ分析を行う場合、まず、化合物Aと化合物Bそれぞれについて、トルエン等の基準物質とのピーク面積の比である相対感度を測定し、相対感度の逆数である補正係数を求め、化合物Aと化合物のBのピーク面積に補正係数をかけることにより、化合物Aと化合物Bの重量比を求めることができる。任意の液晶組成物に含まれる成分の補正係数は不明であるが、幸いなことに各成分の補正係数はほぼ1であるため、ガスクロマトグラフ分析での各成分のピーク面積比を各成分のwt%と見なすことができる。
【0097】
ガスクロマトグラフ分析での分析精度は検出器に依存するが、汎用検出器として用いられる水素炎イオン化検出器(FID)を例にとると、導入した溶液に1mgに対して最小検出量は25ngである。これは液晶組成物をアセトン溶液で400倍に希釈した場合、元々の液晶組成物に0.001wt%含有する成分の量に一致する。
【0098】
本発明の横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置の画素構造を図1を用いて説明する。
【0099】
まず、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTとする)が形成されたTFT基板10の構造を図1−1の平面図と、図1−1のA−A線での断面図(図1−2)を用いて説明する。TFT基板10には、第1の透明基板11の上に第1の層間絶縁膜12を形成し、前記第1の層間絶縁膜12上に画素補助電極13およびデータ線14を配し、さらに画素補助電極13とデータ線14の上に、第2の層間絶縁膜17を形成してある。第2の層間絶縁膜17は、基板側から窒化シリコン膜15と透明アクリル樹脂膜16が積層された2重構造である。第2の層間絶縁膜17上には、透明導電膜であるITOからなる画素電極18と共通電極19とが配置されている。画素電極18と共通電極19は、互いに平行であり、かつ、データ線14の延長方向(ラビング方向)に沿ってジグザグ構造をしている。第1の透明基板11と第1の層間絶縁膜12との間には走査線31を配置し、前記データ線14と前記走査線31が交差する近傍にはTFTを配している。TFTは、図1−1のB−B線での断面図(図1−3)に示すように、ゲート電極(走査線31)上の第1の層間絶縁膜12の上にアモルファスシリコン32が形成され、前記アモルファスシリコン32がオーミック層33を介してドレイン電極34とソース電極35に接続した構造である。TFTのソース電極35は、ソース電極35上に設けられた第2の層間絶縁膜17のコンタクトホール36を介して、第2の層間絶縁膜17上のITOからなる画素電極18に接続されている。さらに、第1の透明基板11と第1の層間絶縁膜12との間には、図1−1の平面図に示す位置に、共通電極配線37が設けられている。ITOからなる共通電極19は、第1の層間絶縁膜12および第2の層間絶縁膜17を通して形成するコンタクトホール38を介して、共通電極配線37に接続されている。
【0100】
前記TFT基板10の対向側にはカラーフィルタ基板20を配している。カラーフィルタ基板20には第2の透明基板22上にブラックマトリクス23と色層24が形成されている。前記色層24と前記ブラックマトリクス23上にはオーバーコート膜25を形成し、前記オーバーコート膜25上には、ギャップ形成のための柱状スペーサ(図示せず)を配している。前記柱状スペーサは、TFT基板10でゲート配線が配され、かつデータ線およびアモルファスシリコンの配されていない領域に対向する位置に配している。
【0101】
TFT基板10とカラーフィルタ基板20の対向する面には、ポリイミド等の均一な膜厚の配向膜40が形成されており、後述するようにラビング処理が施されている。そして、両基板間には液晶41が注入される。また、TFT基板10とカラーフィルタ基板20の外面には偏光板42がそれぞれ設けられている。なお、カラーフィルタ基板20の偏光板42の内側には導電層21が設けられている。
【0102】
次に、本発明の実施例の液晶表示装置の製造方法を図2を用いて説明する。
まず、前記TFT基板と前記カラーフィルタ基板(対向基板)の双方の基板を洗浄し、赤外線乾燥(IR乾燥)し水分を蒸発させた後、両基板の表面に印刷装置を用いてポリイミドの溶液を塗布し、仮焼成、本焼成を行って均一な膜厚の配向膜を形成し(工程(A))、焼成後に配向膜表面を回転金属ローラに巻き付けたバフ布などで一定方向に擦ってラビング処理を行う(工程(B))。このとき、図1−1に示すように、ラビング方向は走査線31の延在方向に垂直な方向とした。画素電極18および共通電極19は、互いに平行であり、ラビング方向に対称な方向に屈曲させてある。ラビング方向と画素電極18ないし共通電極19の長手方向とのなす角(β)は、例えば、15度とすることができる。その後、基板表面の残留物を除去するために両基板を洗浄し乾燥させる(工程(C))。
【0103】
次に、一対の対向する基板の一方(例えばTFT基板)上に、スクリーン印刷法やディスペンサ描画法等を用いて紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂等からなるシール材を表示領域の周囲に塗布する(工程(D))。
【0104】
次に、一方の基板(ここではTFT基板)のシール材に囲まれた表示領域に液晶滴下用ディスペンサなどの液晶滴下装置を用いて、予め真空状態に放置し混入した水分又は気体成分を除去した本発明の液晶組成物をクリーンルーム雰囲気中で適量滴下した後(工程(E))、気泡が混入しないように空チャンバー内で他方の基板(ここではカラーフィルタ基板)と位置合わせして貼り合わせる(工程(F))。真空チャンバーでは基板を常圧でステージに載置した後、例えば、約90秒かけて1Paの圧力まで減圧し、基板を貼り合わせている。その後、一対の基板を両外側から押圧してシール材を潰して所望のギャップを形成した後、基板(ここではTFT基板)の裏面から紫外線などを照射してシール材を仮硬化させ(工程(G))、更に所定の温度で加熱してシール材を本硬化させ(工程(H))、シール材の外側の所定の部分で一対の基板を切断する(工程(I))。その後、偏光板を貼りつけ、液晶表示パネルを作製した。第1の透明基板上の偏光板は、その偏光透過軸と、第一の透明基板に形成された配向膜のラビング方向とが、略平行になるように貼りつける。また、第二の透明基板上の偏光板は、その偏光透過軸と、第二の透明基板に形成された配向膜のラビング方向とが、略垂直になるように貼りつける。
【0105】
次に、液晶表示パネルには、ソースドライバ、ゲートドライバ、バックライト、電源回路と入力されたアナログ方式の映像信号を8ビット(256階調)のデジタル方式に変換する信号変換回路とを備えた変換基板、バックライトインバータの制御信号を出力する制御回路を備えたインターフェース基板、信号処理回路を備えた信号処理基板が実装され、液晶表示装置が完成する。
【0106】
本発明の液晶表示装置は横電界駆動方式のアクティブマトリクス駆動液晶表示装置であるが、酸性メソゲン化合物を添加した液晶組成物を用いて滴下貼り合わせ方式により作製する液晶表示装置の製造に広く適用することが可能である。
【0107】
本発明は、横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置に関するが、STN(Super Twist Nematic)方式など液晶を低抵抗化するために酸性化合物を添加する全ての液晶表示装置の残像及び滴下痕の発生防止に有効である。
【0108】
本発明の横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置では、画素電極と共通電極が同層であり、かつ配向膜に接する構造をとったIPS(In-Plane Switching)方式の液晶表示装置としているが、画素電極と共通電極は異層であっても良い。また、画素電極と共通電極のいずれか片方、または両方が配向膜に接していなくても良い。また、FFS(Fringe Field Switching)方式の横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置にも適用できる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を参照して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
実施例1
実施例1の液晶表示装置には、例えば、比抵抗が25℃で5.0×1013Ωcmである液晶組成物に、前記式(I)で表されるフェノール誘導体0.0125wt%と、前記式(II)で表されるアルコキシ化合物4wt%を添加し、カイラル剤は添加していないものである。上記液晶組成物は、主に末端フッ化化合物及び末端フッ素含有化合物から成り、特許文献2の「0036」に記載される各特許文献(GB 23 10 669、EP 0 807 153、DE 19528104、DE 19528107、EP 0 768 359、DE 19 611096及びDE 19 625 100)により横電界方式の表示体用液晶混合物及びこれらの液晶表示体用の混合物の概念で構成されるものである。また、上記フェノール誘導体として、2−シアノ−3−フルオロ−5−(4−n−プロピル−トランス−シクロヘキシル)フェノール(以下、フェノール誘導体(I−1)と称す)は、添加量に対して比較的緩やかに比抵抗が変化することから抵抗値を調整しやすいことが上記公知例で知られており、選定した。さらに、上記アルコキシ化合物は、特表平11−510199号公報の請求項9の式XVIIに記載される化合物が知られており、低粘性であり、さらに揮発性が小さいことから、上記式(II)において、Rがプロピル基、Rがメチル基である化合物(以下、アルコキシ化合物(II−1)と称す)を選定した。なお、本発明におけるモル濃度は全て25℃の値である。
【0111】
【化25】

【0112】
【化26】

【0113】
本発明の実施例1の横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置の信号変換回路に、信号源からプログレッシブ方式の映像信号を入力した場合の動作について説明する。
【0114】
本発明の実施例1の液晶表示装置は、非常に良い残像特性を有している。これはフェノール誘導体(I−1)を0.0125wt%含有しているためである。実施例1の液晶表示装置に使われる液晶組成物に、フェノール誘導体(I−1)とアルコキシ化合物(II−1)を添加する前の液晶組成物の比抵抗は5.0×1013Ωcmであり、この液晶組成物にアルコキシ化合物(II−1)のみを添加した液晶組成物の比抵抗は5.0×1013Ωcmであり変化しない。しかし、さらにこの液晶組成物にフェノール誘導体(I−1)が添加された実施例1の液晶組成物では、フェノール誘導体(I−1)により比抵抗が5.0×1011Ωcmに低下しているため、残像特性が良好である。
【0115】
さらに、本発明の実施例1では、フェノール誘導体(I−1)を0.0125wt%含有することに加え、アルコキシ化合物(II−1)を4wt%含有している。フェノール誘導体(I−1)の分子量は261であり、本発明の液晶組成物の25℃での密度は1.05g/mlであるため、液晶組成物1リットル当たりの物質量(モル)であるモル濃度でフェノール誘導体(I−1)の含有量を表すと0.00050mol/lとなる。また、フェノール誘導体(I−1)は1価の酸であるため、規定度で表すと0.00050規定となる。ここで、規定度とはモル濃度に酸・塩基の価数を乗じたものである。さらに、アルコキシ化合物(II−1)の分子量は238であるため、アルコキシ化合物(II−1)の添加量をモル濃度で表すと、0.176mol/lとなる。アルコキシ化合物(II−1)はフェノール誘導体(I−1)の約352当量に相当する量含有されており、フェノール誘導体(I−1)に対してアルコキシ化合物(II−1)が10当量以上含有されているため、後述する理由により滴下痕が発生しない。すなわち、実施例1によれば、残像特性と滴下痕の2つの課題を共に解決することができる。
【0116】
表−1から表−4に、前記した液晶表示装置の製造方法を用いて、液晶表示装置に封入した液晶組成物におけるフェノール誘導体とアルコキシ化合物の含有量と、残像特性、表示シミ特性、滴下痕特性、応答特性の関係を示す。なお、表1から4の液晶表示装置の信号処理回路には信号源からプログレッシブ方式の映像信号が入力されている。また、表−1から表−4の液晶表示装置における液晶組成物のフェノール誘導体とアルコキシ化合物の含有量は液晶表示装置を分解して組成分析をした値である。表−1に示す残像特性の判定は、1辺が100画素からなる正方形をした黒(0階調)表示部と白(255階調)表示部とが、交互に配されたチェッカーフラグパターンを8時間連続表示し、次に127階調のベタ画面を30分間表示した後に行い、前記チェッカーフラグパターンの位置と一致する輝度ムラが127階調のベタ画面表示で視認できない場合を「○」、視認できる場合を「×」とした。また、表−2に示す表示シミ特性の判定は、液晶表示装置を温度60℃、湿度60%に保持した恒温恒湿槽内に載置し、1000時間白(256階調)表示をした後に行い、127階調のベタ画面表示で表示部内に新たに発生した輝度がムラの視認できない場合を「○」、視認できる場合を「×」とした。表−3に示す滴下痕特性の判定は、17階調ベタ表示画面で、ほぼ円形であり、かつ、液晶の滴下位置に一致する輝度ムラの視認の可否で行い、視認できない場合を「○」、視認できる場合を「×」とした。滴下痕の判定を行った17階調は、0から255階調の全階調でもっとも滴下痕が視認しやすい階調である。また、表−4の応答特性は、表示を黒から白へ切り替えたときの液晶の応答時間と、表示を白から黒へ切り替えたときの応答時間の合計値を示したものであり、フェノール誘導体濃度が0規定(0wt%)であり、アルコキシ化合物濃度が0mol/l(0wt%)の液晶組成物の応答時間を1として、相対値を表示している。なお、黒から白の応答時間は、輝度が白表示の輝度に対して10%から90%に変化する時間であり、白から黒の応答時間は、輝度が白表示の輝度に対して90%から10%に変化する時間としている。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
表−1に示すように、残像特性は、フェノール誘導体の濃度が0.00004規定以下(0.001wt%以下)であると良くないが、0.00010規定以上(0.0025wt%以上)で良好であることがわかる。しかしながら、フェノール誘導体の濃度が高過ぎても良くない。表−2に示すようにフェノール誘導体の濃度が0.04023規定(1wt%)を超えると表示シミが問題となる。これは、液晶の抵抗が低くなり過ぎ、液晶に印加される電圧が1フレーム内で大きく低下するためである。したがって、液晶組成物中のフェノール誘導体の濃度が0.00010規定以上0.04023規定以下(0.0025wt%以上1wt%以下)であれば、表示シミ等の不具合なく良好な残像特性が実現できる。
【0120】
滴下痕は表−3に示すように、フェノール誘導体の濃度が0.00004規定以上0.00201規定以下(0.0010wt%以上0.0500wt%以下)の範囲ではアルコキシ化合物濃度が0.044mol/l以上(1wt%以上)で発生せず、フェノール誘導体の濃度が0.00402規定(0.1wt%)ではアルコキシ化合物濃度が0.176mol/l以上(4wt%以上)で発生しない。また、フェノール誘導体濃度が0.02011規定(0.5wt%)では、アルコキシ化合物濃度が0.265mol/l以上(6wt%以上)で発生せず、フェノール誘導体の濃度が0.04023規定(0.1wt%)ではアルコキシ化合物濃度が0.397mol/l以上(9wt%以上)で発生しない。
【0121】
表−5には、フェノール誘導体に対するアルコキシ化合物の当量を示した。表−5において黒い太線で囲んだ領域が滴下痕の発生しない領域である。液晶組成物にフェノール誘導体に対してアルコキシ化合物が10当量以上含有されると滴下痕が発生しないが、10当量未満含有される場合は滴下痕が発生している。したがって、アルコキシ化合物の含有量が0.044mol/l以上であり、かつ、フェノール誘導体に対して10当量以上であれば、滴下痕は発生しない。
【0122】
【表3】

【0123】
しかしながら、表−4に示すように、アルコキシ化合物濃度が大きくなるに従い、応答時間が遅くなる。表−6には、液晶組成物の回転粘性係数の相対値を、フェノール誘導体濃度が0規定(0wt%)であり、かつ、アルコキシ化合物濃度が0mol/l(0wt%)である液晶組成物の回転粘性係数を1として示しているが、応答時間は回転粘性係数に比例するため、アルコキシ化合物濃度が大きくなるに従い、応答時間が遅くなる。液晶組成物に誘電率異方性を持たせるため、液晶組成物には電気陰性度の大きいフッ素原子を含む化合物が添加されているが、このフッ素原子とアルコキシ化合物の酸素の非共有電子対が引きあうことにより液晶組成物の粘度を増大させる。応答時間は液晶組成物の粘度に比例するため、アルコキシ化合物濃度が大きくなるに従い、応答時間が遅くなる。アルコキシ化合物の濃度が0.265mol/l以下(6wt%以下)であれば、アルコキシ化合物0wt%(0mol/l)の場合と比較しても応答時間の増加は10%以下と小さく、良好な応答速度を確保できる。
【0124】
したがって、液晶組成物中のアルコキシ化合物の含有量が0.044mol/l以上0.265mol/l以下(1wt%以上6wt%以下)であり、かつ、フェノール誘導体に対してアルコキシ化合物が10当量以上であれば、滴下痕が無く、また、良好な応答時間を確保可能である。
【0125】
なお、液晶組成物には製造工程においてナトリウム、カリウム等の不純物の混入を無くすることはできず、液晶組成物には微量の不純物が混入している。これらの不純物量は一定に制御できないため、液晶組成物の比抵抗は幅を持つことになる。本発明の実施例におけるフェノール誘導体とアルコキシ化合物を添加する前と後の液晶組成物の比抵抗は、それぞれ5.0×1013Ωcmと5.0×1011Ωcmであるが、同じ組成比、同じ製法で液晶組成物を製造しても、含有する不純物量により前者で1.0×1013Ωcmから1.0×1014Ωcm、後者で1.0×1011Ωcmから1.0×1012Ωcmの幅を持つことがわかっている。しかしながら、比抵抗が異なっても、フェノール誘導体の含有量が同じであれば、残像特性、滴下痕特性は変わらないことを確認している。液晶組成物に予め含有される不純物量より液晶表示装置の製造工程において液晶組成物に混入する不純物量の方が多く、さらに製造工程において混入する不純物量がほぼ一定であるため、フェノール誘導体の含有量を一定にすれば、2枚の基板間に封入された液晶組成物の比抵抗も一定になるためと考えられる。
【0126】
以上、信号源から信号変換基板にプログレッシブ方式の映像信号が入力される本発明の液晶表示装置場合の効果を図6のダイアフラムにまとめて示す。図6に示すように、フェノール誘導体濃度が0.00010規定(0.0025wt%)以上で、アルコキシ化合物が0.265mol/l(6wt%)以下で、且つフェノール誘導体に対してアルコキシ化合物が10当量以上であるハッチングされた領域において残像特性、滴下痕特性、表示シミ特性、応答特性が良好である。
【0127】
実施例2
次に、本発明の第2の実施例の横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置について説明する。本発明の第2の実施例の液晶表示装置は第1の実施例と製造方法は同じであり、液晶組成物のみ異なる。本発明の第2の実施例の液晶組成物は主に末端フッ化化合物及び末端フッ素含有化合物から成り、さらに、酸性化合物としてフェノール誘導体(I−1)を0.05wt%と、アルコキシ化合物(II−1)を14wt%含有し、カイラル剤を含有しない。
【0128】
本発明の第2の実施例の液晶表示装置にはインターレース方式の映像信号を入力し、さらに水平方向の1走査線毎に黒、白の入れ替わる横縞表示を行った場合の動作について説明する。横縞表示を行った場合、ノーマリーブラック表示である横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置では、白電圧の1/2の直流電圧が液晶に印加される。本発明の第2の実施例では白電圧を6Vとしており、液晶には平均して3Vの直流電圧が印加されることになる。しかしながら、本発明の第2の実施例の液晶表示装置は、良好な残像特性を有している。フェノール誘導体を添加し液晶の比抵抗を下げていることにより、直流電圧による液晶中の電荷の偏りが緩和されるため、残像特性が良好となる。
【0129】
さらに、本発明の実施例2では、フェノール誘導体(I−1)を0.05wt%添加することに加え、アルコキシ化合物(II−2)を14wt%添加している。フェノール誘導体(I−1)の分子量は261であり、本発明の液晶組成物の25℃での密度は1.05g/mlであるため、フェノール誘導体の添加量をモル濃度で表すと0.00201mol/lとなり、また、このフェノール誘導体(I−1)は1価の酸であるため、規定度で表すと0.00201規定となる。さらに、アルコキシ化合物(II−1)の分子量は238であるため、アルコキシ化合物(II−1)の添加量をモル濃度で表すと、0.618mol/lとなる。アルコキシ化合物(II−1)は、フェノール誘導体(I−1)の約307当量に相当する量が添加されており、アルコキシ化合物に対してフェノール誘導体が150当量以上含有されているため、後述する理由により、滴下痕が発生しない。
【0130】
液晶表示装置にインターレース方式の映像信号で水平方向の1走査線毎に黒、白の入れ替わる横縞表示を行う場合の残像特性、表示シミ特性、滴下痕特性を表−7から表−9に示す。なお、表−7から表−9の液晶表示装置の液晶組成物のフェノール誘導体とアルコキシ化合物の含有量は、液晶表示装置を分解して組成分析をした値である。表−7に示す残像特性の判定は、1辺が100画素からなる正方形をした黒(0階調)表示部と、水平方向の1走査線毎に白(255階調)、黒(0階調)の入れ替わる横縞表示部とが、交互に配されたチェッカーフラグパターンを30分間連続表示し、次に127階調のベタ画面を30分間表示した後に行い、前記チェッカーフラグパターンの位置と一致する輝度ムラが127階調のベタ画面表示で視認できない場合を「○」、視認できる場合を「×」とした。また、表−8に示す表示シミ特性の判定は、液晶表示装置を温度60℃、湿度60%に保持した恒温恒湿槽内に載置し、水平方向の1走査線毎に黒、白の入れ替わる横縞表示を1000時間行った後、127階調のベタ画面表示で表示部内に新たに発生した輝度がムラの視認できない場合を「○」、視認できる場合を「×」とした。表−9に示す滴下痕特性の判定は、水平方向の1走査線毎に白(255階調)、黒(0階調)の入れ替わる横縞表示を30分間連続表示した後、17階調ベタ画面表示に切替えた直後に、ほぼ円形であり、かつ、液晶の滴下位置に一致する輝度ムラの視認の可否で行い、視認できない場合を「○」、視認できる場合を「×」とした。滴下痕の判定を行った17階調は、0から255階調の全階調でもっとも滴下痕が視認しやすい階調である。
【0131】
【表4】

【0132】
また、表−10には、本発明の第2の実施例と、フェノール誘導体とアルコキシ化合物の含有量のみ異なる液晶組成物の低温特性(相溶性)を示す。表−10に示す低温特性の判定は、液晶組成物を−20℃の冷凍庫で1週間静置し、スメクチック相が発生しなかった場合を「○」、スメクチック相が発生した場合を「×」とした。
【0133】
【表5】

【0134】
表−7に示すように本発明の第2の実施例のようにインターレース方式の映像信号が入力された場合の残像特性は、アルコキシ化合物の含有量に依存せず、フェノール誘導体の濃度が0.00100規定以上(0.025wt以上)で良好であることがわかる。しかしながら、表−8に示すようにフェノール誘導体の濃度が0.04023規定(1wt%)を超えると表示シミが問題となる。これは、液晶の抵抗が低くなり電導度が増加し、液晶に印加される電圧が1フレームで大きく低下するためと考えられる。したがって、液晶組成物中のフェノール誘導体の濃度は0.00100規定以上0.04023規定以下(0.025wt%以上1wt%以下)であれば、表示シミ等の不具合なく良好な残像特性を実現できる。
【0135】
滴下痕は表−9に示すように、フェノール誘導体の濃度が0.00100規定(0.025wt%)ではアルコキシの濃度が0.176mol/l以上(4wt%以上)で発生せず、フェノール誘導体の濃度が0.00201規定(0.05wt%)ではアルコキシ化合物の濃度が0.397mol/l以上(9wt%以上)で発生しない。また、フェノール誘導体の濃度が0.00403規定(0.1wt%)ではアルコキシ化合物の濃度が0.618mol/l以上(14wt%以上)で発生しない。
【0136】
表−11には、フェノール誘導体に対するアルコキシ化合物の当量を示した。表−11において黒い太線で囲んだ領域が滴下痕の発生しない領域である。液晶組成物にフェノール誘導体に対してアルコキシ化合物が150当量以上含有されると滴下痕が発生しないが、150当量未満含有される場合は滴下痕が発生している。したがって、アルコキシ化合物の含有量がフェノール誘導体に対して150当量以上であれば、滴下痕は発生しない。
【0137】
液晶組成物には残像特性からフェノール誘導体を0.00100規定以上(0.025wt%以上)含有する必要があるため、アルコキシ化合物の濃度はフェノール誘導体0.00100規定の150当量に対応する0.15mol/l(3.4wt%)以上となる。
【0138】
フェノール誘導体に対するアルコキシ化合物の添加量の当量比は、プログレッシブ方式では10当量以上であるが、インターレース方式では150当量以上であり、インターレース方式の方が大きい。プログレッシブ方式では液晶に印加される直流電圧は前述のとおり最大で約0.3Vであるが、インターレース方式では約3Vである。プログレッシブ方式よりインターレース方式の方が液晶に印加される直流電圧が大きく、滴下痕の発生を防止するためには、インターレース方式ではプログレッシブ方式よりオキソニウムイオンとフェノキシドイオンの生成を少なくする必要があるため、インターレース方式で滴下痕が発生しないフェノール誘導体に対するアルコキシ化合物の添加量の当量比はプログレッシブ方式よりを大きいと考えられる。
【0139】
滴下痕発生を防止するためには、液晶組成物は多くのアルコキシ化合物を含有する必要があるが、アルコキシ化合物濃度が1.324mol/l(30wt%)を超えると、表10に示すように液晶の相溶性が悪くなり、スメクチック相が発生する。したがって、液晶組成物中のフェノール誘導体の濃度を0.15mol/l以上1.324mol/l以下(3.4wt%以上30wt%以下)であり、かつ、フェノール誘導体に対してアルコキシ化合物が150当量以上であれば、滴下痕が無く、また、液晶組成物の相溶性を良好に保つことが出来る。
【0140】
なお、アルコキシ化合物の濃度の上限が1.324mol/l(30wt%)であり、フェノール誘導体に対してアルコキシ化合物は少なくとも150当量以上とする必要があるため、フェノール誘導体の添加量の上限は0.00883規定(0.22wt%)以下となる。
【0141】
したがって、信号源から液晶表示装置の信号変換回路にインターレース方式の映像信号が入力される場合、フェノール誘導体の濃度を0.00100規定以上0.00883規定以下(0.025wt%以上0.22wt以下)とし、アルコキシ化合物の濃度を0.15mol/l以上1.324mol以下(3.4wt%以上30wt%以下)とし、かつ、フェノール誘導体に対して150当量以上とすることにより、残像特性、表示シミ特性、滴下痕特性、液晶組成物の相溶性に対して良好な特性を得ることが出来る。
【0142】
以上、インターレース方式の映像信号を入力した場合の効果を図7のダイアフラムにまとめて示す。図7に示すように、フェノール誘導体が0.00100規定(0.025wt%)以上で、アルコキシ化合物が1.324mol/l(30wt%)以下で、且つフェノール誘導体に対してアルコキシ化合物が150当量以上となるハッチングされた領域で、残像特性、滴下痕特性、表示シミ特性、低温特性(液晶相溶性)が良好となる。
【0143】
本発明の第1の実施例では、プログレッシブ方式の映像信号を入力しているが、特許文献6(特開平9−236787号公報)の「発明の実施の形態」に記載されているようなインターレース−プログレッシブ変換回路(IP変換回路)を備えている映像信号処理回路を搭載した回路基板を実装した液晶表示装置に、インターレース方式の映像信号を入力した場合にも適用できる。
【0144】
本発明の第2の実施例では、水平方向の1走査線毎に黒、白の入れ替わる横縞表示を行った場合の動作について説明しているが、第2N−1番目(Nは1以上の整数)と第2N番目の走査線上の隣接する画素にそれぞれ黒(または白)と白(または黒)を表示した場合には、反転駆動の種類(フレーム反転、ライン反転、ドット反転)に関わらず同様の問題が発生する。これらの表示において課題となる残像及び滴下痕に対しても、本発明は有効である。また、黒の代わりに黒以外の階調、白の代わりに白以外の階調を表示した場合も、液晶に大きな直流電圧がかかるときには本発明による残像及び滴下痕改善効果がある。
【0145】
本発明の第2の実施例では白表示の電圧を6Vとしているが、白表示の電圧が4Vから8Vの範囲で滴下痕特性の評価を行い、この電圧範囲で滴下痕特性が良好であることを確認している。
【0146】
本発明の液晶表示装置の製造方法では、一方の基板のシール材に囲まれた表示領域に液晶組成物をクリーンルーム雰囲気中で滴下しているが、クリーンルーム雰囲気中でなく窒素雰囲気中、または、減圧下で液晶を基板に滴下する場合でも滴下痕発生のリスク低減に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1−1】本発明の液晶表示装置の画素構造を示す平面図である。
【図1−2】図1−1のA−A線での断面図である。
【図1−3】図1−1のB−B線での断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の製造方法を説明するフローシートである。
【図3】従来技術による液晶表示装置の製造方法を説明するフローシートである。
【図4】従来の横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置の表示画素断面図であり、(a)は液晶滴下箇所、(b)はそれ以外の部分を示す。
【図5】本発明の横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置の表示画素断面図であり、(a)は液晶滴下箇所、(b)はそれ以外の部分を示す。
【図6】プログレッシブ方式の映像信号を入力した場合の効果を示すダイアフラムである。
【図7】インターレース方式の映像信号を入力した場合の効果を示すダイアフラムである。
【図8】発明の課題を説明するシール塗布から真空貼り合わせまでの工程を表した工程断面図である。
【図9】ノーマリーブラック方式であり、かつ、1フレーム毎に映像信号を反転される液晶表示装置にインターレース方式の映像信号を入力した場合に、任意の1画素の液晶にかかる電圧を示す図であり、(a)は白表示のときに液晶にかかる電圧を示し、(b)は黒表示のときに液晶にかかる電圧を示し、(c)は水平方向の1走査線毎に白、黒の入れ替わる横縞表示のときに1画素にかかる電圧を示す。
【符号の説明】
【0148】
10 TFT基板
11 第1の透明基板
12 第1の層間絶縁膜
13 画素補助電極
14 データ線
15 窒化シリコン膜
16 透明アクリル樹脂膜
17 第2の層間絶縁膜
18 画素電極(ITO)
19 共通電極(ITO)
20 対向基板
21 導電層
22 第2の透明基板
23 ブラックマトリクス
24 色層
25 オーバーコート層
40 配向膜
41 液晶
42 偏光板
31 走査線(ゲート電極)
32 アモルファスシリコン
33 オーミック層
34 ドレイン電極
35 ソース電極
36 コンタクトホール(画素電極用)
37 共通電極配線
38 コンタクトホール(共通電極用)
101 第1の基板(TFT基板)
102 シール
103 水分
104 液晶
105 第2の基板(対向基板)
401 第1の透明基板(TFT基板)
402 第1の層間絶縁膜
403 共通電極
404 第2の層間絶縁膜
405 画素電極
406 配向膜
407 液晶
408 第2の透明基板(対向基板)
410 フェノキシドイオン
411 オキソニウムイオン
412 フェノール誘導体
413 アルコキシ化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性メソゲン化合物と、該酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物とを添加した液晶組成物が滴下貼り合わせ方式により充填され、かつ、信号源から信号変換回路にプログレッシブ方式の映像信号が入力されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
酸性メソゲン化合物と、該酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物とを添加した液晶組成物が滴下貼り合わせ方式により充填され、かつ、信号源から信号変換回路にインターレース方式の映像信号が入力されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
酸性メソゲン化合物の添加量が0.00010規定以上であり、酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物の添加量が0.265mol/l以下であり、かつ、前記酸性化合物に対して10当量以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
酸性メソゲン化合物の添加量が0.00100規定以上であり、酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物の添加量が1.324mol/l以下であり、かつ、前記酸性化合物に対して150当量以上であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
酸性メソゲン化合物がフェノール誘導体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
酸性メソゲン化合物と水素結合を形成するメソゲン化合物がアルコキシ化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
酸性メソゲン化合物が下記一般式(I)で表され、アルコキシ化合物が下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
【化1】

(式中、Rは炭素数7以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化2】

(式中、Rは炭素数7以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、ORは炭素数10以下のアルコキシ基を示す。)
【請求項8】
液晶組成物にカイラル剤が添加されないことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
横電界駆動方式のアクティブマトリクス型液晶表示装置である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−231360(P2008−231360A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76696(P2007−76696)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】