説明

液晶表示装置

【課題】、黒表示時の青みを抑制し、コントラスト比を高めた高品位な画質を有する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】アクティブマトリクス基板であるガラス基板101と対向電極である樹脂フィルム基板102が、配向制御膜132の面で対向配置され、これらの間に液液晶層110Aが配置される。ガラス基板101および対向電極を構成する樹脂フィルム基板102の外側の面のそれぞれには、偏光板118,119が形成される。そして、樹脂フィルム基板102に一軸吸収異方性が付与される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係り、特に、黒表示での青みを抑制してコントラストを向上させた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表示品質が高く、且つ薄型で低電力消費である、といった特長から、その用途が多方面に広がっている。近年、携帯電話用モニター、デジタルスチルカメラ用モニターなどの携帯向けモニターからデスクトップパソコン用モニター、印刷やデザイン向けモニター、医療用モニターさらには液晶テレビとしての用途拡大に伴い、良好な色再現性,高いコントラスト比に対する要求が高まっている。特に、液晶テレビにおいては黒の表現が非常に重視され、かつ、高輝度も強く要求される。
【0003】
液晶テレビへの画質に対しては、色調に対する好みが大きく影響する。例えば日本では、液晶テレビの白表示は色彩学上の無彩色ではなく、高い色温度である9300K、さらには10000K以上に設定されることもある。
【0004】
一対の偏光板を用いて表示する液晶表示装置においては、白表示/黒表示は、用いる偏光板の直交偏光板、平行偏光板の透過特性に強く支配される。すなわち、黒は偏光板の直交透過率、白はその平行透過率の特性に影響される。直交透過率が低く、平行透過率が高いことが高いコントラスト比を得るために必要である。この種の偏光板は、ポリビニルアルコール樹脂等の基材にヨウ素を延伸させたものが広く用いられている。しかし、ヨウ素を延伸した樹脂中で配向させた偏光板の場合、短波長領域のコントラスト比が低くなってしまうことが多い。樹脂とヨウ素のオーダーパラメーターを完全に制御することが困難であるためと考えられている。
【0005】
このことから、短波長領域、すなわち青領域に相当する光の透過率は、長波長領域の透過光に対して黒表示時には高く、白表示時には低くなる。白表示で高色温度、すなわち青みが強い白で設定すると、黒表示の青みが強調され、黒の表現が重視される液晶テレビにおける画像の色調再現性が低下する。上記の偏光板起因による黒と白の色調差を解決する手段として、色調補正偏光板技術が[非特許文献1]に、偏光板の示す偏光度の波長依存性を補償する技術が[特許文献2]に報告されている。また、PVAモードの液晶表示装置における低階調の色調補正に関しては[特許文献1]を挙げることができる。
【特許文献1】特開2003−29724号公報
【特許文献2】特開2006−91393号公報
【非特許文献1】SID03 p.824−827
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示装置の構成例を図1により説明する。図1は、液晶表示装置の模式断面図である。液晶表示装置の原理は、入射側の偏光板118を透過した直線偏光を液晶層によってその配向方向を変化させて偏光状態を変化させ、出射側偏光板119を透過する光量を制御することによって表示する。理想的には、黒表示時において液晶層による偏光状態変化は全くなく、直交に配置された出射側の偏光板119で光源の光が遮断される。従って、黒表示は、用いる偏光板の直交分光透過率とカラーフィルター分光透過率の積となる。詳細には、基板や絶縁層、透明電極等の吸収もあるが、偏光板とカラーフィルターがほぼ支配的である。
【0007】
光を透過させる中間調及び白表示は、液晶層によって発生する複屈折光が出射側偏光板119を透過することで表示される。従って、白表示は、用いる偏光板の平行分光透過率と液晶の複屈折光とカラーフィルター分光透過率がほぼ支配的に作用する。ところが、ヨウ素を延伸したポリビニルアルコール等の樹脂中で配向させた偏光板の偏光度は、短波長領域で低下するため、黒表示では青く呈色し、白表示では青の透過率が低下してしまう。一方、黒表示においては、カラーフィルター層を形成する顔料粒子や液晶層による光散乱等で漏れ光が発生することもあり、理想的な黒表示から輝度が増大し、色調が変わる要因になっている。
【0008】
上述のように、偏光板を用いる液晶表示装置の表示特性は、主として偏光板の直交透過率と平行透過率の分光特性の差異により黒表示と白表示の色調が大きく変化する。特に、黒表示は偏光板の直交時の分光特性に大きく影響され、現在広く用いられているヨウ素延伸型の偏光板は直交時に400nm付近の光を遮蔽しきれず、青みを帯びてしまうという問題がある。
【0009】
特許文献1は、RGBの3つの画素を独立に制御し、色調を補正するという技術を開示する。しかし、青の透過光に対して無彩色化を図るためには、緑と赤の透過光を増大させることが必要である。黒表示においてこの方法を取れば、黒表示の輝度を増大させてしまうことになり、コントラスト比低下が避けられない。黒の表現を重視する液晶テレビ等においては、黒表示の輝度増大,コントラスト比低下を招くことは許容されない。また、RGB各画素における液晶分子の配向状態が異なる状態で黒を表示させることは、視野角特性を悪化させる要因になるため、この点でも好ましくない。
【0010】
特許文献2は、液晶表示装置の一対の偏光板間に一軸吸収異方層を付与し、偏光板の持つ偏光度の波長依存性を補償するという技術を開示する。本発明者らの鋭意研究により、液晶表示装置の黒表示時の青み低減、コントラスト比向上の効果を得るためには、この一軸吸収異方層の吸収軸および透過軸の吸光度、および二色比の値が非常に重要であることが明らかになった。例えば、一軸吸収異方層の透過軸の吸光度が高いと白表示での色調が変わってしまう要因となり、また一軸吸収異方層の吸収軸の吸光度がある一定以上ないと、十分な効果が得られない。
【0011】
非特許文献1で公表された短波長領域において二色性を示す色素を一対の偏光板のそれぞれ外側に配置して偏光板直交透過率特性の無彩色化を図る色調補正偏光板については、偏光層を4層形成するため、それぞれの軸を合わせるプロセスが必要となり、生産プロセスの負荷増大が避けられない。また、偏光板偏光度のばらつきが表示品質のばらつきを招くことも生産性の点で問題となる。
【0012】
本発明の目的は、黒表示時の青みを抑制し、コントラスト比を高めた高品位な画質を有する液晶表示装置を提供することにある。また、本発明は、製品信頼性の向上と共に生産性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明では光源から発せられた、または取り入れられた光が液晶表示装置の光学系を通り、観察者が認識するまでの光の光路内に吸収異方性をもつ光学層として液晶表示装置を構成するTFT基板とCF基板の一方又は双方に一軸吸収異方性を持たせたことを特徴とする。TFT基板とCF基板はガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルム基板等の透明基板とすることができる。一軸吸収異方性は入射側偏光板または出射側偏光板の吸収軸とほぼ平行または直交させることにより偏光板偏光度を補償できるため、黒表示時の輝度を低減、コントラスト比の向上に有効である。
【0014】
上記の吸収異方性は、各波長における吸収軸と透過軸の吸光度の比、すなわち二色比で表され、二色比が2以上のとき、コントラスト比向上に特に有効である。液晶表示装置の偏光板にヨウ素系偏光板を用いる際、ヨウ素系偏光板は約380〜450nm周辺の偏光度が他の可視波長域に比べ低いため、該一軸吸収異方性層はこの波長域で、より大きな吸収異方性をもつことが望ましく、黒表示時の青み抑制に有効である。
【0015】
本発明によれば、該一軸吸収異方性層の透過軸の吸光度は0.1以下とすることが好ましく、より好ましくは0.07以下、特に好ましくは0.04以下が好ましい。このとき、該一軸吸収異方性層は白表示にほとんど影響しないため、白表示時、黒表示時ともに良好な表示を得ることが出来る。
【0016】
また、本発明によれば、液晶表示装置の一対の基板において、該一軸吸収異方性層が形成された基板の透過軸と吸収軸における吸光度の差分が0.1以上であることが望ましく、より好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上であることを特徴とする。このとき、液晶表示装置のコントラスト比の向上に有効である。
【0017】
また、本発明では、該一軸吸収異方性を、さらに偏光板を構成する樹脂に付与することもできる。例示すると、偏光板の保護フィルムであるトリアセチルセルロース(TAC)にアゾ系化合物またはスチルベン系化合物などの光異性化を起こす二色性色素を添加した後、ほぼ直線に偏光した光を照射または/かつ延伸することにより一軸吸収異方性を付与する。光異性化反応では、照射した偏光光の偏光軸に対して垂直な方向に吸収軸を発現する。また、一軸延伸処理では、延伸方向と並行に吸収軸を発現する。
【0018】
ここで、二色性色素としては化学構造が長い直線的棒状構造をなすこと、化合物を構成する芳香族環が同一平面性を持つこと、水素結合に関与する基が少ないものが望ましい。代表例として、ポリアゾ系直接染料、C. I.ダイレクトイエロー12,44、C. I.ダイレクトオレンジ39、C. I.ダイレクトレッド23,28,31,37,79,81、C. I.ダイレクトバイオレット9,12、C. I.ダイレクトブルー1,22,78,90,151、C. I.ダイレクトグリーン1、C. I.ダイレクトブラック17、メチルオレンジ、ブリリアントイエロー、モダンイエロー10、アシッドレッド97などがあり、なかでもベンジジン系、ジフェニル尿素系、スチルベン系、ジナフチルアミン系、J−酸系、アントラキノン系構造を含む化合物が望ましい。本発明はこれらの化合物を偏光板の偏光度および色調を補償するように組み合わせて添加することを特徴とする。
【0019】
また本発明では、配向制御膜に配向制御能を付与する方法は特に限定されない。配向制御能を付与する方法は、バフ布で配向制御膜を摩擦するラビング配向処理法と偏光光照射による非接触の光配向法がある。ラビング配向処理法に比べ、光配向法は、局所的な配向の乱れがなく、表示領域全面に渡り均一な配向を付与することが可能である。さらに、上記二色性色素は偏光光照射による光異性化反応により吸収異方性を発現するため、光配向法であれば、配向制御膜の配向処理と吸収異方性の付与処理を一括して行うことが可能である。
【0020】
特に、光反応性配向制御膜がシクロブタン環を有するポリイミドまたはポリアミック酸により構成される場合、低照射光量で配向規制力の高い配向制御膜を得ることができ、生産性の点で有効である。アゾ系化合物、スチルベン系化合物などの光異性化化合物は可視域に近い波長で反応し、また比較的低分子の化合物が多く、反応性も高いため、液晶表示装置の配向制御膜として用いるには製品の長期信頼性が低いという課題がある。
【0021】
本発明では、これら低分子系化合物を光反応性ポリイミド/ポリアミック酸に添加して用いることにより、光異性化化合物の配向状態を固定化し、製品信頼性という点でも有効である。
【0022】
本発明では、この光学異方性、さらに一軸吸収異方性を偏光板を構成する透明樹脂基板(プラスチック基板)、偏光板保護フィルム、偏光板の粘着層、配向制御膜、液晶に電界を印加するためのアクティブ素子の絶縁膜、カラーフィルター層、カラーフィルター保護絶縁膜などの各種構成部材(透明基材)の何れか又は複数に付与することもできる。
【0023】
具体的には、上記の透明基材にスチルベン系化合物またはアゾ系化合物などの二色性色素を添加し、これにほぼ直線に偏光した光を照射することにより達成する。透明プラスチック基板の場合は、上記二色性色素を添加し、延伸することにより吸収異方性を付与することもできる。
【0024】
以上のように、液晶表示装置に本発明は、TFT基板とCF基板の少なくとも一方に一軸吸収異方性を付与し、あるいはさらに各種透明基材の何れか又は複数に一軸吸収異方性を付与することで、偏光板偏光度の補助による偏光度向上、ならびに偏光度ばらつきの補償、発生した漏れ光吸収によって、黒表示の輝度低減と青み抑制が達成される。
【0025】
本発明で使用するTFT基板、CF基板を含む透明基材は特に限定されないが、380〜780nmでの透過率が高く、機械的強度、寸法安定性が優れ、耐熱性の良い材料が好適である。透明基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルホン(PES)、アセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのプラスチック材料やプラスチックフィルム材料が使用できる。なお、TFT基板、CF基板にはソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英などの無機材料などが使用できる。
【0026】
プラスチック基板またはプラスチックフィルム基板の380〜780nmにおける透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に90〜100%が好ましい。本発明におけるプラスチックフィルムは単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
【0027】
本発明で使用した偏光板は特に限定されないが、380〜780nmでの偏光度が高いものが好適である。図1の参照符号118で示した偏光板の構成を説明する。ここでは、偏光板118を液晶表示装置で一般に利用されるヨウ素による偏光板として例示しているが、色素による偏光板であってもよい。また、配向方法は、二色性を発現する方法であれば延伸以外の方法でもよい。ヨウ素を延伸して配向させた偏光板の場合、偏光板118は、ヨウ素を有するポリビニルアルコールフィルム163,耐候性を向上させるための偏光板保護フィルム161,162、上記透明基材と偏光板を張りあわせる粘着層164から構成される。
【0028】
偏光板保護フィルムはとくに限定されないが、380〜780nmでの透過率が高く、機械的強度を有し、耐熱性,防湿性,耐候性に優れ、染色されたポリビニルアルコールフィルムとの接着性に優れたものが好適である。偏光板保護フィルムとしては、酢酸セルロース、酪酸セルロースなどが使用できる。
【0029】
透明基材と偏光子を貼りあわせる粘着剤は特に限定されないが、380〜780nmでの透過率が高く、Tgが室温より低い材料が好適である。また、液晶表示装置を高温下に放置した場合、高温高湿から低温低湿へ環境を変化させた場合、連続してバックライトを表示させた場合などには、偏光板の寸法変化が生じ、この寸法変化に伴い、粘着層の発泡や、液晶セルなどの被着体からのハガレが生じやすくなる。粘着層は、粘着剤の分子量を上げたり、架橋度を上げるなどして、上記のような過酷な条件下における使用に耐えるように改良しているものを使用する。
【0030】
本発明では二色性色素をカラーフィルター層に添加することを特徴とするが、二色性を付与する際、カラーフィルター層の透過波長域と二色性色素の吸収波長域をほぼ一致させることがより有効である。
【0031】
上記吸収異方性が観察者側の基板に形成されている場合、該吸収軸を観察者側に配置された偏光板の吸収軸とほぼ平行にすることにより、白表示時の色調を大きく変化させずに黒表示時の色調を補償することができ、本発明が有効に作用する。
【0032】
上記一軸吸収異方性が光源側の基板(図1ではアクティブマトリクス基板101)に形成されている場合、該吸収軸を光源側に配置された偏光板の吸収軸とほぼ平行にすることにより、長期に渡り配向規制力の安定性を得ることができ、本発明が有効に作用する。
【0033】
本発明において、光源としては冷陰極管(CCFL)や発光ダイオード(LED)または有機エレクトロルミネッセンス(OLED)などの発光ユニットでも良く、また太陽光などの自然光を利用するものであっても良い。また、発光ユニットは赤、青、緑などの複数の異なる波長を発光するものを組み合わせても良い。光源の位置は液晶パネルの観測者側に対して直下、側面、前面にあっても本発明は有効に作用する。液晶層を形成する液晶分子の長軸方向が液晶層を挟持する一対の基板に対し平行である場合、本発明により低波長での光漏れを抑えることができるため、表示品位向上に有効に作用する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、新たな部材を追加することなく、液晶表示装置における黒表示時の青みを抑制し、コントラスト比を高めた高品位な画質を有する液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の最良の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では薄膜トランジスタ等のアクティブ素子を形成した基板をアクティブマトリクス基板と称する。また、その対向基板にカラーフィルターを有する場合はこれをカラーフィルター基板とも称する。また、本発明において、目標として望ましいコントラストは500:1以上であり、目標とする黒輝度と白輝度における色度差はΔu'v'にして0.04以下が望ましい。色度はTOPCON分光放射計SR‐3により測定した。
【0036】
一軸吸収異方性膜の吸収軸、および透過軸の吸収スペクトルを測定し、吸収軸吸光度(Aa)と透過軸吸光度(At)の比(Aa/At)により二色比を算出した。また差分は式(Aa‐At)により算出した。本実施例内では吸収軸のスペクトルにおいて、可視波長域380nm〜780nm内のピーク波長での二色比、および差分を掲載している。
【実施例1】
【0037】
図2は、本発明による液晶表示装置の実施例1を説明する一画素付近の模式断面図である。また、図3は、本発明による液晶表示装置の実施例1を説明する一画素付近の構成を説明するアクティブマトリクス基板の模式図である。図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のA−A'線に沿った断面図、図3(c)は図3(a)のB−B'線に沿った断面図を示す。なお、図3は図3(a)のA−A'線に沿った断面の一部に対応する。なお、図3(b)と図3(c)は要部構成を強調して模式的に示すもので、図3(a)のA−A'線、B−B'線の切断部に一対一で対応しない。例えば、図3(b)では半導体膜116は図示せず、図3(c)では対向電極とコモン配線120を接続するスルーホールは一箇所のみを代表して示してある。
【0038】
本実施例の液晶表示装置では、アクティブマトリクス基板としてのガラス基板101上には、Cr(クロム)からなるゲート電極(走査信号電極)104およびコモン配線(共通電極配線)120が配置され、このゲート電極104および共通電極配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコンまたはポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子として薄膜トランジスタ(TFT)の能動層として機能するようにされている。また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにCr・Mo(クロム/モリブデン)よりなるドレイン電極(映像信号配線)106とソース電極(画素電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護膜108が形成されている。
【0039】
また、図3(c)に模式的に示したように、ゲート絶縁膜107と保護膜108を貫通して形成されたスルーホール103Aを介して共通電極配線120に接続するコモン電極(共通電極)103がオーバーコート層(有機保護膜)133上に配置されている。また、図3(a)から分かるように、平面的には一画素の領域においてその画素電極105に対向するように、共通電極配線120よりスルーホール103Aを介して引き出されている共通電極103が形成されている。
【0040】
ガラス基板101はアクティブマトリクス基板(TFT基板)、基板102はカラーフィルター基板(CF基板)である。CF基板102は、樹脂フィルム基材(樹脂フィルム基板)で構成される。実施例1ではこれらのガラス基板と樹脂フィルム基板のうち、樹脂フィルム基板(カラーフィルター基板)に一軸吸収異方性を持たせている。実施例1においては、画素電極105は有機保護膜133の下層の保護膜108のさらに下層に配置され、有機保護膜133上に共通電極103が配置された構成となっている。これらの複数の画素電極105と共通電極103とに挟まれた領域で、一画素が構成される構造となっている。また、以上のように構成した単位画素をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板の表面、すなわち、共通電極103が形成された有機保護膜133上には配向制御膜131が形成されている。
【0041】
一方、図2に示されたように、カラーフィルター基板を構成する樹脂フィルム基板102には、カラーフィルター層111が遮光部(ブラックマトリクス)113で画素ごとに区切られて配置され、またカラーフィルター層111および遮光部113上は透明な絶縁性材料からなる有機保護膜134で覆われている。有機保護膜134は平滑層でもある。さらにその有機保護膜134上にも配向制御膜132が形成されてカラーフィルター基板を構成している。
【0042】
これらの配向制御膜131,132は、高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により液晶配向能が付与されている。
【0043】
アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101と対向電極を構成する樹脂フィルム基板102が、配向制御膜132の面で対向配置され、これらの間に液晶分子110で構成される液晶層(液晶組成物層)110Aが配置されている。また、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101および対向電極を構成する樹脂フィルム基板102の外側の面のそれぞれには、偏光板118,119が形成されている。本実施例では、樹脂フィルム基板102に一軸吸収異方性が付与されている。
【0044】
以上のようにして、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置(すなわち、TFT液晶表示装置)が構成される。このTFT液晶表示装置では、液晶層110Aを構成する液晶組成物(液晶分子)110は、電界無印加時には対向配置されている基板101,102面にほぼ平行に配向された状態となり、光配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。
【0045】
ここで、ゲート電極104に電圧を印加して薄膜トランジスタ(TFT)をオンにすると、画素電極105と共通電極103の間の電位差により液晶組成物層に電界117が印加され、液晶組成物が持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶組成物層を構成する液晶分子110は電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層の屈折異方性と偏光板118,119の作用により本液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。
【0046】
また、有機保護膜133、134は、絶縁性、透明性に優れるアクリル系樹脂、エポキシアクリル系樹脂、またはポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂を用いれば良い。また、有機保護膜133,134として光硬化性の透明な樹脂を用いても良いし、ポリシロキサン系の樹脂など無機系の材料を用いても良い。さらには、有機保護膜133,134が配向制御膜132を兼ねるものであっても良い。
【0047】
配向制御膜131,132の液晶配向制御能をバフ布で直接摩擦するラビング配向処理ではなく、非接触の光配向法を用いることにより、電極近傍に局所的な配向の乱れがなく、表示領域全面に渡り均一な配向を付与することが可能となる。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明による液晶表示装置の実施例2を説明する。図4は、本発明による液晶表示装置の実施例2を説明する一画素付近の模式断面図である。アクティブマトリクス基板であるガラス基板101とカラーフィルタ基板であるガラス基板102は、それ自体に一軸吸収異方性が付与されている。また、図5は、本発明による液晶表示装置の実施例2を説明する一画素付近の構成を説明するアクティブマトリクス基板の模式図である。図5(a)は平面図、図5(b)は図4(a)のA−A'線に沿った断面図、図5(c)は図4(a)のB−B'線に沿った断面図を示す。また、図4は図5(a)のA- A'線に沿った断面の一部を示している。なお、図5(b)と図5(c)の断面図は、要部構成を強調して模式的に示すもので、図3(a)のA−A'線、B−B'線の切断部に一対一で対応しない。例えば、図3(b)では半導体膜116は図示していない。
【0049】
本発明の実施例2の液晶表示装置では、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101上には、Crよりなるゲート電極104および共通電極配線120が配置され、ゲート電極104と共通電極配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコンあるいはポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子である薄膜トランジスタ(TFT)の能動層として機能するようにされている。
【0050】
また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにクロム・モリブデンよりなるドレイン電極106,ソース電極(画素電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護膜108が形成されている。この保護膜108上には、有機保護膜133が配置されている。この有機保護膜133は、例えばアクリル樹脂などの透明な材料から構成する。また、画素電極105はITO(In2 3 :Sn)などの透明電極から構成されている。共通電極103は、ゲート絶縁膜107、保護膜108、有機保護膜133を貫通するスルーホール103Aを介し、共通電極配線120に接続している。
【0051】
液晶を駆動する電界を与える場合に画素電極105と対をなす共通電極103は、平面的に一画素の領域を囲うように形成されている。また、この共通電極103は、有機保護膜133の上のオーバーコート層133の上に配置されている。そして、この共通電極103は、上部から見たときに下層に配置しているドレイン電極106、走査信号配線104および能動素子である薄膜トランジスタ(TFT)を隠すように配置され、半導体膜116を遮光する遮光層を兼ねている。
【0052】
なお、以上のように構成した単位画素(一画素)をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101の表面、すなわち、有機保護膜133上およびその上に形成された共通電極103の上には、配向制御膜131が形成されている。一方、対向基板を構成するガラス102にも、カラーフィルター層111およびその上に形成される有機保護膜134、配向制御膜132が形成されている。
【0053】
また、実施例1と同様に、高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により、これらの配向制御膜131,132に液晶配向能が付与されている。
【0054】
そして、ガラス基板101と対向基板102が、配向制御膜131,132の形成面で対向配置され、これらの間に液晶分子110で構成された液晶層110Aが配置されているように構成されている。また、ガラス基板101および対向基板102の外側の面のそれぞれには偏光板118,119が形成されている。
【0055】
本発明の実施例2においても、実施例1と同様に、画素電極105は有機保護膜133および保護膜108の下層に配置され、画素電極105と有機保護膜133との上に共通電極103が配置された構成となっている。また、共通電極103の電気抵抗が十分低い場合には、当該共通電極103は最下層に形成されている共通電極配線120も兼ねることができる。その際には、最下層に配置している共通電極配線120の形成およびそれに伴うスルーホールの加工を省くことができる。
【0056】
この実施例2では、図5(a)に示すように格子状に形成された共通電極103に囲まれた領域で一画素が構成され、画素電極105とあわせて一画素を4つの領域に分割するように配置されている。また画素電極105およびそれと対向する共通電極103がお互いに平行に配置されたジグザグな屈曲構造からなり、一画素が2つ以上の複数の副画素を形成している。これにより面内での色調変化を相殺する構造となっている。本実施例では、ガラス基板101とガラス基板102は、それ自体が一軸吸収異方性を具備しているものとしたが、これらの基板の一方にのみ一軸吸収異方性を付与するものとすることもできる。
【実施例3】
【0057】
図6は、本発明による液晶表示装置の実施例3を説明する一画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。図6に示すように、本実施例では、保護膜108の下層に配置した画素電極105をスルーホール103Aを介して有機保護膜133上に引き上げて共通電極103と同層に配置した。この構成とした場合には、液晶を駆動する電圧をさらに低減することが可能である。本実施例では、アクティブマトリクス基板101とカラーフィルタ基板102は、ガラス基板であっても樹脂フィルム基板であってもよく、それ自体が一軸吸収異方性を具備している。これらの基板の一方にのみ一軸吸収異方性を付与するものとすることもできる。
【実施例4】
【0058】
図7は、本発明による液晶表示装置の実施例4を説明する一画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例では、電極などによる段差が大きい構造となっている。本実施例では、アクティブマトリクス基板101とカラーフィルタ基板102は、ガラス基板であっても樹脂フィルム基板であってもよく、それ自体が一軸吸収異方性を具備している。これらの基板の一方にのみ一軸吸収異方性を付与するものとすることもできる。
【実施例5】
【0059】
図8は、本発明による液晶表示装置の実施例5を説明する一画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例において、画素電極105および共通電極103はITOにより形成されており、共通電極107は画素のほぼ全体を覆うベタ電極で構成されている。本構成により電極上も透過部として利用することができ、開口率を向上することができる。また電極間隔を短くすることができ、電界を効率よく液晶に印加できる。本実施例では、アクティブマトリクス基板101とカラーフィルタ基板102は、ガラス基板であっても樹脂フィルム基板であってもよく、それ自体が一軸吸収異方性を具備している。これらの基板の一方にのみ一軸吸収異方性を付与するものとすることもできる。
【0060】
以上のように構成されたTFT型の液晶表示装置では、電界無印加時には、液晶層(液晶組成物層)110Aを構成する液晶分子110は対向配置されているガラス基板101と102面の面にほぼ平行な状態となり、光配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。ここで、ゲート電極104に電圧を印加して薄膜トランジスタ(TFT)をオンにすると、画素電極105と共通電極103の間の電位差により液晶組成物層110Aに電界117が印加され、液晶組成物が持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶分子110は電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層110Aの屈折異方性と偏光板118,119の作用により液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。本実施例では、アクティブマトリクス基板101とカラーフィルタ基板102は、ガラス基板であっても樹脂フィルム基板であってもよく、それ自体が一軸吸収異方性を具備している。これらの基板の一方にのみ一軸吸収異方性を付与するものとすることもできる。
【0061】
また、上記した本発明の液晶表示装置に係る各実施例においては、1つの画素における共通電極と画素電極から構成される表示領域は複数組設けることが可能である。このように複数組設けることによって、1つの画素が大きい場合でも、画素電極と共通電極との間の距離を短くできるので、液晶を駆動させるために印加する電圧を小さくできる。
【0062】
また、上記した本発明の液晶表示装置に係る各実施例においては、画素電極と共通電極の少なくとも一方を構成する透明導電膜の材料としては、特に制限はないが、加工の容易さ、信頼性の高さ等を考慮してインジゥーム−チン−オキサイド(ITO)のようなチタン酸化物にイオンドープされた透明導電膜、またはイオンドープされた亜鉛酸化物を用いるのが望ましい。
【0063】
一般的に、横電界方式と呼ばれるIPS方式においては、従来のTN方式に代表される縦電界方式と異なり基板面との界面チルトが原理的に必要なく、界面チルト角が小さいほど視角特性が良いことが知られており、光配向制御膜においても小さい界面チルト角が望ましく、特に1度以下が効果的である。
【0064】
次に、本発明による液晶表示装置の製造方法としての液晶配向制御膜のラビングレス配向法を用いた配向制御膜の形成について説明する。本発明による配向制御膜の形成工程のフローは以下のようになる。すなわち、
(1)配向制御膜の塗膜・形成(表示領域全面にわたり均一な塗膜を形成する)。
(2)配向制御膜のイミド化焼成(ワニス溶剤の除去と耐熱性の高いポリイミド化
を促進する)。
(3)偏光照射による液晶配向能付与(表示領域に均一な配向能を付与する)。
(4)(加熱、赤外線照射、遠赤外線照射、電子線照射、放射線照射)による配向能の促進・安定化。
【0065】
以上(1)乃至(4)の4段階のプロセスを介して配向制御膜を形成するが、(1)乃至(4)のプロセスの順番に限定されるものではなく、以下のような場合には更なる効果が期待される。(a)上記(3)(4)を時間的に重なるように処理することにより液晶配向能付与を加速し架橋反応などを誘起することで、さらに効果的に配向制御膜を形成することが可能となる。また(b)上記(4)の加熱、赤外線照射、遠赤外線照射などを用いる場合には、上記(2)(3)(4)を時間的にオーバーラップさせることにより、上記(4)のプロセスが上記(2)のイミド化プロセスを兼ねることも可能となり、短時間に配向制御膜の形成が可能となる。
【0066】
次に、本発明による液晶表示装置の製造方法の具体的な実施例について説明する。上記した液晶表示装置の製造方法に係る実施例を実施例6乃至13として説明する。なお、以下では、実施例の理解を容易にするための比較例も必要に応じて併せて説明する。
【実施例6】
【0067】
液晶表示装置の製造方法に係る実施例6は、前記液晶表示装置に係る実施例1で説明した液晶表示装置に対応する。以下、本発明の液晶表示装置の製造方法に係る実施例6について前記図2及び図3に示した構成を参照して詳細に説明する。
【0068】
本発明の実施例1で説明した液晶表示装置において、アクティブマトリクス基板(TFT基板)を構成する基板101として、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。対向基板(カラーフィルター基板:CF基板)を構成する基材102として、ポリイミドフィルムを樹脂フィルム基材とし、これにC.I.ダイレクトイエロー12を樹脂成分に対して30重量%添加し、十分に分散させた厚みが約0.5mmの樹脂フィルム基材を用いる。この樹脂フィルム基材の吸光度を測定したところ、吸収ピークは408であり、その吸光度は0.74であった。
【0069】
ここで、カラーフィルター基板を構成するポリイミドフィルムの樹脂フィルム基材102にカラーフィルター層111を形成する前に、前記樹脂フィルム基材102へ一軸吸収異方性を付与するために、延伸処理を施した。このとき、延伸条件を一連に変化させ、二色比の異なる基板を5枚作製した。これらのカラーフィルター基板の二色比を測定した結果を表1に示す。
【表1】

【0070】
このカラーフィルター基板に、ブラックレジストを用いて、膜厚1.0μmの遮光部113を形成した。次に、染料レジストを用いて、遮光部113で区切られて配置された画素からなる、カラーフィルター層111を形成した。本実施例では、青が3.0μm、緑が2.7μm、赤が2.5μmとしたが、膜厚は所望の色純度、もしくは液晶層厚に対して適宜あわせればよい。このカラーフィルター層111上に、各画素の段差を均一化するために、厚さ1.0μmのアクリル系樹脂からなるオーバーコート膜134を形成した。
次に、カラーフィルター基板の表面に配向制御膜として、ポリアミック酸ワニスを印刷形成し、220°Cで30分の熱処理を行い、約80nmの緻密なポリイミド膜からなる配向制御膜132を形成した。この配向制御膜にラビング処理を施し、配向制御能を付与した。その結果、前記ポリイミドフィルム基材の延伸方向と平行方向に光を吸収する軸を有し、延伸方向と直交方向に光を透過する軸を有するカラーフィルター基板を得た。
【0071】
アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101に形成する薄膜トランジスタ115は画素電極105、信号電極106、走査電極104及びアモルファスシリコン116から構成される。走査電極104、共通電極配線120および信号電極106、画素電極105はすべてクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。尚、共通電極103と画素電極105については低抵抗でパターニングの容易なクロム膜を使用したが、ITO膜を使用し透明電極を構成して、より高い輝度特性の達成することも可能である。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220°C、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある絶縁性有機膜133を厚さ1.5μmで形成した。
【0072】
次に、フォトリソグラフィーとエッチング処理により、図3(c)に示すように共通電極配線120までスルーホールを形成し、共通電極配線120と接続する共通電極103をパターニングして形成した。その結果、単位画素(一画素)内では図3(a)に示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号電極106と768本の走査電極104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。次に、配向制御膜として、ポリアミック酸ワニスを上記アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して220°Cで30分の熱処理によりイミド化し、約80nmの緻密なポリイミド配向制御膜131を形成する。この配向制御膜にラビング処理を施し、配向制御能を付与した。
【0073】
次に、基材であるアクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101とカラーフィルター基板を構成する樹脂フィルム102をそれぞれの液晶配向能を有する配向制御膜131,132を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマビ−ズからなるスペ−サを介在させ、周辺部にシ−ル剤を塗布し、液晶表示装置となる液晶表示パネル(セルとも称する)を組み立てた。2枚の基材の液晶配向方向は互いにほぼ並行で、かつ印加電界方向とのなす角度を75゜とした。このセルに誘電異方性Δεが正でその値が10.2(1kHz、20°C)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20°C)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76°Cのネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。
【0074】
この液晶表示パネルのリタデーション(Δnd)は、約0.31μmとなる。この液晶表示パネルを2枚の偏光板118,119で挾み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その際、観察者側のカラーフィルター基板に配置する偏光板119の吸収軸はカラーフィルター基板を構成する樹脂フィルム102の吸収軸方向とほぼ平行にして配置した。
【0075】
その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置5台を得た。本実施例では低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0076】
次に、本発明の実施例である上記5台の液晶表示装置の表示品位(コントラスト比(CR)および色度座標変化Δu'v')を評価したところ、次の表2に示す結果となった。
【表2】

【比較例1】
【0077】
比較例1では、実施例6のカラーフィルター基板を構成する樹脂フィルムにダイレクトイエローを添加しなかった他は実施例6と同様にして液晶表示装置を作製した。この比較例1の表示品位を確認したところ、コントラスト比430、Δu'v'は0.061であった。
【実施例7】
【0078】
本発明の液晶表示装置の製造方法に係る実施例7について図2及び図3に示した構造を参照して詳細に説明する。実施例6との相違点はカラーフィルター基板102もアクティブマトリクス基板101と同様にガラス基板としたものである。
【0079】
本発明の製造方法に係る本発明の実施例7において、アクティブマトリクス基板101と対向基板(カラーフィルター基板)102としては共に、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。このカラーフィルター基板を構成するガラス基板102に、ブラックレジストを用いて、膜厚1.0μmの遮光部113を形成した。次に染料レジストを用いて、遮光部113で区切られて配置された画素からなる、カラーフィルター層111を形成した。本実施例では、青が3.0μm、緑が2.7μm、赤が2.5μmとしたが、膜厚は所望の色純度、もしくは液晶層厚に対して適宜あわせればよい。このカラーフィルター層111上に、各画素の段差を均一化するために、厚さ1.0μmのアクリル系樹脂からなるオーバーコート膜134を形成した。
【0080】
次に、カラーフィルター基板であるガラス基板102の表面には配向制御膜として、ジアミン化合物、p−フェニレンジアミンと1,4−ジアミノピリジンをモル比1:1の割合で混合し、酸二無水物が1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物からなるポリアミック酸ワニスに色素としてC.I.ダイレクトイエロー12を添加し、樹脂分濃度5重量%、C.I.ダイレクトイエロー12濃度3重量%、NMP60重量%、γブチルラクトン20重量%、ブチルセロソルブ12重量%に調整して印刷形成し、220°Cで30分の熱処理を行い、約80nmの緻密なポリイミド膜からなる配向制御膜132を形成した。
【0081】
その表面に液晶配向能および吸収異方性を付与するために、偏光UV(紫外線)光をポリイミド配向制御膜132に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、240nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約10:1の直線偏光とし、約5J/cm2の照射エネルギーで基板にほぼ垂直に照射した。
【0082】
その結果、配向制御膜表面の液晶分子の配向方向が、照射した偏光UVの偏光方向に対して直交方向であり、照射した偏向UVの偏向方向と直交方向に光を吸収する軸を有し、照射した偏向UVの偏向方向と平行方向に光を透過する軸を有するカラーフィルター基板を得た。このカラーフィルター基板の偏光UVスペクトルを測定したところ、透過軸と吸収軸吸光度の差分が0.21であった。
【0083】
アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101に形成する薄膜トランジスタ115は画素電極105、信号電極106、走査電極104及びアモルファスシリコン116から構成される。走査電極104、共通電極配線120および信号電極106、画素電極105はすべてクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。尚、共通電極103と画素電極105については低抵抗でパターニングの容易なクロム膜を使用したが、ITO膜を使用し透明電極を構成して、より高い輝度特性を達成することも可能である。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220°C、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある絶縁性有機膜133を厚さ1.5μmで形成した。
【0084】
次に、フォトリソグラフィー、エッチング処理により、図3(c)に示すように共通電極配線120までスルーホールを形成し、共通電極配線120と接続する共通電極103をパターニングして形成した。
【0085】
その結果、単位画素(一画素)内では図3(a)に示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号電極106と768本の走査電極104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0086】
次に、配向制御膜として、ジアミン化合物、p−フェニレンジアミンと1,4−ジアミノピリジンをモル比1:1の割合で混合し、酸二無水物が1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物からなるポリアミック酸ワニスを、樹脂分濃度5重量%、NMP60重量%、γブチルラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%に調整し、上記アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して220°Cで30分の熱処理によりイミド化し、約80nmの緻密なポリイミド配向制御膜131を形成する。
【0087】
次に、これらの2枚のガラス基板101、102をそれぞれの液晶配向能を有する配向制御膜131,132を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマビ−ズからなるスペ−サを介在させ、周辺部にシ−ル剤を塗布し、液晶表示装置となる液晶表示パネル(セルとも称する)を組み立てた。2枚のガラス基板の液晶配向方向は互いにほぼ並行で、かつ印加電界方向とのなす角度を75゜とした。このセルに誘電異方性Δεが正でその値が10.2(1kHz、20°C)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20°C)、ねじれ弾性定数K2が7. 0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76°Cのネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。
【0088】
この液晶表示パネルのリタデーション(Δnd)は、約0.31μmとなる。この液晶表示パネルを2枚の偏光板118,119で挾み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その際、観察者側のガラス基板102に配置する偏光板119の吸収軸はカラーフィルター基板に形成された配向制御膜132の吸収軸方向とほぼ平行にして配置した。その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を得た。本実施例では低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0089】
次に、本発明の実施例7の製造方法で製造した上記の液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比630対1の高品位の表示が確認された。また、白表示時と黒表示時の色度座標変化を測定したところ、Δu'v'は0.029であった。
【比較例2】
【0090】
比較例2では実施例7の配向制御膜132にC.I.ダイレクトイエロー12を添加しなかった以外は図4で説明した液晶表示装置の実施例2と同様にして液晶表示装置を作製した。このとき得られた、カラーフィルター基板の偏光UVスペクトルを測定した結果、吸収の異方性はほとんど見られなかった。比較例2の液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比480対1、白表示時と黒表示時の色度差Δu'v'は0.052であった。
【実施例8】
【0091】
液晶表示装置の製造方法に係る本発明の実施例8では、液晶表示装置の実施例7の配向制御膜132に色素を添加せず、偏光板118の保護フィルム161,162の樹脂組成およびその処理方法を変更した以外は実施例7と同様にして液晶表示装置を作製した。厚さ1μmのヨウ素を吸着させたポリビニルアルコールフィルムを延伸して偏光子163を形成した。この偏光子163の保護フィルム161,162として、樹脂であるトリアセチルセルロースに色素であるブリリアントイエローを樹脂濃度に対して50重量%で添加、分散させたものを用いた。
【0092】
色素が添加された前記偏光板保護フィルム161,162に吸収異方性を付与するため、偏光UV(紫外線)光を、垂直方向に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、330nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約15:1の直線偏光とし、約5J/cm2の照射エネルギーで照射した。この偏光板保護フィルム161,162の吸収軸が偏光子163の吸収軸とほぼ平行になるようにして貼り付けた。実施例8で作製した液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比720対1、白表示時と黒表示時の色度差Δu'v'は0.037であった。
【実施例9】
【0093】
液晶表示装置の製造方法に係る本発明の実施例9では、液晶表示装置の実施例2の配向制御膜132に色素を添加せず、偏光板119を基板102に貼り付けるために形成された粘着層のアクリル系樹脂に樹脂濃度に対してブリリアントイエローを30重量%、C.I.ダイレクトレッド81を10重量%、C.I.ダイレクトブルーを10重量%添加、分散させたものを用いた。
【0094】
前記粘着層により偏光板119を基板102に貼り付けた後、前記粘着層に吸収異方性を付与するために、偏光UV(紫外線)光を偏光子167の透過軸と一致するように偏光板側から前記粘着層に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、330nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約15:1の直線偏光とし、約10J/cm2の照射エネルギーで基板にほぼ垂直に照射した。
【0095】
この偏光板粘着層により偏光板を石英基板上に貼り付け、偏光UVスペクトルを測定した結果、照射した偏光UV光に対して垂直な方向に吸収軸をもつ吸収異方性を有していた。実施例9で作製した液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比680対1、白表示時と黒表示時の色度差Δu'v'は0.039であった。
【実施例10】
【0096】
液晶表示装置の製造方法に係る本発明の実施例10では、実施例7のカラーフィルター基板側に形成されたカラーフィルター層111のレジスト材料組成およびその処理方法を変更した以外は実施例7と同様にして液晶表示装置を作製した。また、カラーフィルターの青を表示するレジスト材料にはレジスト材料に対してC.I.ダイレクトイエロー44を5重量%、緑を構成するレジスト材料にはC.I.ダイレクトレッド81を3重量%、赤を構成するレジスト材料にはC.I.ダイレクトブルー151を3重量それぞれ添加、分散させたものを用いた。
【0097】
色素が添加されたカラーレジストによりカラーフィルター層111を形成した後、オーバーコート膜134を形成する前に前記カラーレジスト部に吸収異方性を付与するために、偏光UV(紫外線)光をカラーフィルター層111に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、330nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約15:1の直線偏光とし、約8J/cm2 の照射エネルギーで基板にほぼ垂直に照射した。さらに得られたカラーフィルター基板上に、オーバーコート膜134、配向制御膜132を形成した。このとき、配向制御膜132に照射する偏光光の偏光軸はカラーフィルター層111に照射した偏光光の偏光軸とほぼ平行にした。
【0098】
その結果、照射した偏光UVの偏光方向と直交方向に吸収軸を有するカラーフィルター基板を得た。この偏光UVスペクトルを測定したところ、透過軸と吸収軸吸光度の差分が0.31であった。実施例10で作製した液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比730対1、白表示時と黒表示時の色度差Δu'v'は0.023であった。
【実施例11】
【0099】
液晶表示装置の製造方法に係る本発明の実施例10では、実施例5のカラーフィルター基板側に形成されたオーバーコート膜134のアクリル系樹脂組成およびその処理方法を変更した以外は実施例10と同様にして液晶表示装置を作製した。前記オーバーコート膜134のアクリル系樹脂にC.I.ダイレクトイエロー12を樹脂に対して30重量%で添加、分散させたものを用いた。
【0100】
カラーフィルター層111上に色素が添加されたオーバーコート膜134を形成した後、配向制御膜132を形成する前に前記オーバーコート膜134の表面に吸収異方性を付与するために、偏光UV(紫外線)光を前記オーバーコート膜134に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、330nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約15:1の直線偏光とし、約12J/cm2 の照射エネルギーで基板にほぼ垂直に照射した。さらに得られたカラーフィルター基板上に、実施例2と同様に配向制御膜132を形成した。このとき、配向制御膜132に照射する偏光光の偏光軸はオーバーコート膜134に照射した偏光光の偏光軸とほぼ平行にした。
【0101】
その結果、照射した偏光UVの偏光方向と直交方向に吸収軸を有するカラーフィルター基板を得た。この偏光UVスペクトルを測定したところ、透過軸と吸収軸吸光度の差分が0.37であった。実施例11で作製した液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比780対1、白表示時と黒表示時の色度差Δu'v'は0.018であった。
【実施例12】
【0102】
液晶表示装置の製造方法に係る本発明の実施例12を、図8を用いて説明する。本発明の第12の実施例である液晶表示装置の製造方法では、基板101として、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。基板101上には電極103,105,106,104の短絡を防止するための絶縁膜107,薄膜トランジスタ115,薄膜トランジスタ115及び電極105、106を保護する絶縁性有機保護膜108にブリリアントイエローを樹脂濃度に対して10重量%添加、分散させ、製膜してTFT基板とした。
【0103】
薄膜トランジスタ115は画素電極105,信号電極106,走査電極104及びアモルファスシリコン116から構成される。走査電極104はアルミニウム膜をパターニングし、信号電極106はクロム膜をパターニングし、そして共通電極103と画素電極105とはITOをパターニングして形成する。絶縁膜107と、絶縁性有機保護膜108の膜厚はそれぞれ0.2μmと0.3μmとした。容量素子は画素電極105と共通電極103で絶縁膜107,108を挟む構造として形成する。画素電極105は、ベタ形状の共通電極103の上層に重畳する形で配置されている。画素数は1024×3(R,G,Bに対応)本の信号電極106と768本の走査電極104とから構成される1024×3×768個とする。
【0104】
配向制御膜131を形成する前に、絶縁性有機保護膜108の表面に吸収異方性を付与するため、偏光UV(紫外線)光を絶縁性有機保護膜108に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、330nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約15:1の直線偏光とし、約4J/cm2の照射エネルギーで基板にほぼ垂直に照射した。このとき、配向制御膜131に照射する偏光光の偏光軸は絶縁性有機保護膜108に照射した偏光光の偏光軸とほぼ平行にした。その結果、照射した偏光UVの偏光方向と直交方向に吸収軸を有するTFT基板を得た。この偏光UVスペクトルを測定したところ、二色比が3.53であった。
【0105】
次に、配向制御膜として、ジアミン化合物にp−フェニレンジアミンと3,4−ジアミノチオフェンをモル比3:1の割合とし、酸無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物のモル比1:1からなるポリアミック酸ワニスを、樹脂分濃度5重量%、NMP60重量%、γブチルラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%に調整し、上記アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して220°Cで30分の熱処理によりイミド化し、約110nmの緻密なポリイミド配向制御膜131を形成する。
【0106】
次に、ITOを成膜したもう一方のアクティブマトリクス基板102の表面には同様のポリアミック酸ワニスを印刷形成し、220°Cで30分の熱処理を行い、約110nmの緻密なポリイミド膜からなる配向制御膜132を形成した。
【0107】
TFT基板及びカラーフィルター基板における配向制御膜131,132の配向方向は互いにほぼ平行とし、かつ印加電界117の方向とのなす角度を15度とした。これらの基板間に平均粒径が4μmの高分子ビーズをスペーサーとして分散し、TFT基板とカラーフィルター基板との間に液晶110を挟み込んだ。液晶110は、誘電異方性Δεが正でその値が10.2(1kHz、20°C)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20°C)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76°Cのネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.0μmの液晶パネルを製作した。
【0108】
TFT基板とカラーフィルター基板とを挟む2枚の偏光板118,119はヨウ素をポリビニルアルコールに吸着させ、延伸によって作製したものを用い、クロスニコルに配置した。その際、観察者側のアクティブマトリクス基板102に配置する偏光板119の吸収軸はカラーフィルター基板に形成された配向制御膜132の吸収軸方向とほぼ平行にして配置した。そして、低電圧で暗状態,高電圧で明状態をとるノーマリークローズ特性を採用した。
【0109】
この液晶表示パネルのリタデーション(Δnd)は、約0.30μmとなる。この液晶パネルのガラス基板101側にバックライト光源を配置し、その他液晶を駆動するための回路を設置し、液晶表示装置を作製した。本発明の実施例12である上記の液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比620対1の高品位の表示が確認された。また、白表示時と黒表示時の色度座標変化を測定したところ、Δu'v'は0.029であった。
【実施例13】
【0110】
液晶表示装置の製造方法に係る本発明の実施例13では、垂直配向モード(PVA)液晶表示装置を構成するカラーフィルター層111上に有するアクリル系樹脂からなるオーバーコート膜134に一軸吸収異方性膜を形成した。以下、本発明の実施例13について図9を参照して説明する。図9は、垂直配向モード液晶表示装置の模式断面図である。本発明の実施例13である液晶表示装置の製造方法において、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101および対向基板(カラーフィルター基板)を構成するガラス基板102として、厚みが0.7mmで表面を研磨した無アルカリガラス基板を用いる。
【0111】
ガラス基板102上に、連続スパッタリングによって、クロムを160nm、酸化クロム膜を40nmの厚さで製膜し、ポジ型レジストを塗布、プリベーク、露光、現像、エッチング、剥離、洗浄の工程を経て遮光部113を形成した。次に、赤,緑,青のカラーレジストを用いて、定法であるフォトリソグラフィー法に従い、塗布、プリべーク,露光,現像,リンス,ポストベークの工程を経て、カラーフィルター層111を形成した。本実施例では、青が3.0μm、緑が2.7μm、赤が2.5μmとしたが、膜厚は所望の色純度、もしくは液晶層厚に対して適宜合わせればよい。
【0112】
このカラーフィルター層111上に、各画素の段差を均一化するために、アクリル系樹脂からなるオーバーコート膜134を形成した。露光は高圧水銀ランプのi線により200mJ/cm2の光量を照射、次いで230℃で30分加熱により形成した。膜厚はカラー画素上でほぼ1.2〜1.5μmであった。
【0113】
次に、ITOをスパッタにより140nmの厚さで真空蒸着し、240℃で90分間加熱するにより結晶化、フォト工程、エッチング処理により、共通電極103のパターンを形成した。共通電極103の開口部は、画素電極105の開口部を中間に挟む。次に、柱状スペーサーを感光性樹脂を用いて、定法であるフォトリソグラフィー法とエッチングにより、画素同士に挟まれた遮光部113上に、ほぼ3.5μm の高さで形成した。
【0114】
アクティブマトリクス基板101上には、Mo/Al(モリブデン/アルミニウム)からなる走査電極(ゲート電極)104(図示せず)を形成した。同層に、保持容量電極がクロムやアルミニウムで形成してもよい(図示せず)。これらを被覆するようにゲート絶縁膜107が形成され、
【0115】
実施例6と同様に信号電極(ドレイン電極)106と薄膜トランジスタを形成した(図示せず)。それらを被覆する保護絶縁膜として、アクリル系樹脂にブリリアントイエローを3重量パーセント添加し、これを用いて有機絶縁膜134を形成した。その上に開口パターンを有する画素電極105をITOで形成した。なお、IZOなどの透明導電体を用いてもよい。画素数は1024×3(R,G,Bに対応)本の信号電極106と768本の走査電極104から構成される1024×3×768個のアクティブマトリクス基板が得られた。
【0116】
次に、光源に高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、330nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約15:1の直線偏光とし、230℃で約5J/cm2の照射エネルギーで基板にほぼ垂直に照射した。このとき、アクティブマトリクス基板に照射した偏光の偏光方向は、信号電極方向とした。異方層の吸収軸は、出射側偏光板119の透過軸と直交する方向に形成する。
【0117】
その結果、照射した偏光UVの偏光方向と直交方向に吸収軸を有するアクティブマトリクス基板を得た。この偏光UVスペクトルを測定したところ、二色比が2.58であった。本実施例では、出射側偏光板119の透過軸を基板短辺方向(信号電極106と同一方向)、吸収軸方向が基板長辺方向(走査電極104方向、図示せず)であるが、偏光板の軸配置を変えた場合には、それに合わせて軸を決定すればよい。
【0118】
アクティブマトリクス基板、カラーフィルター基板に垂直配向の配向制御膜131,132をそれぞれ形成し、基板の周辺部にシール剤を塗布し、負の誘電異方性を有する液晶材料をODF法によって滴下封入して液晶層110Aとし、液晶パネルを組み立てた。偏光板118,119は前述の通り、入射側偏光板118の透過軸を基板の長辺方向、出射側偏光板119の透過軸を基板短辺方向として直交させた。偏光板には、視角特性を補償する複屈折性フィルムを具備する視野角補償偏光板を用いた。その後、駆動回路,バックライトユニットなどを接続して液晶モジュールとし、液晶表示装置を得た。
【0119】
この液晶表示装置の表示品質を評価したところ、基板のほぼ全面に渡ってコントラスト比が800:1であり、また、黒表示と白表示の色度差Δu'v'が0.023であり、良好な表示品質であることを確認した。
【0120】
なお、本実施例では、ITOの切り欠けパターンを用いたPVAモードの液晶表示装置を用いたが、カラーフィルター基板に突起を設けるMVA方式の場合には、ITO形成後、突起のプロセスを経てから柱状スペーサーの工程に進む。異方層の形成は本実施例と同様にできる。
【比較例3】
【0121】
比較例3では、実施例13で説明した垂直配向モード液晶表示装置において、アクティブマトリクス基板側に形成した有機絶縁膜134にブリリアントイエローを添加しなかった他は実施例8と同様にして液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置の表示品質を評価したところ、基板のほぼ全面に渡ってコントラスト比が480:1であり、また、黒表示と白表示の色度差Δu'v'が0.045であった。
【実施例14】
【0122】
次に、本発明の液晶表示装置に係る実施例14を説明する。実施例14は半透過型液晶表示装置に本発明を適用した。従来の半透過型液晶表示装置を図10に示す。半透過型液晶表示装置では反射部と透過部の光路長を一致させるため、反射部に段差を設ける必要がある。なぜなら反射部では太陽光などの外光が偏光板119を通り、液晶層110Aを通過し、反射板で反射した後、再度液晶層を通り、偏光板119に至るという経路をとるため、透過部と光路長を一致させるためには反射部の液晶層の厚みは透過部の約半分にする必要がある。また、透過部と同じノーマリーブラックとするには位相差板も必要である。段差を形成する従来型の半透過型液晶表示装置では上下基板の合わせマージンを大きくとる必要があり、開口率の点で非常に不利であった。
【0123】
実施例14では、反射部にセル内蔵の偏光膜を形成することにより、段差が無く、開口率の大きい半透過型液晶表示装置を得ることができる。以下本発明による実施例14について説明する。実施例14では、半透過型液晶表示装置に一軸吸収異方性膜を形成した。以下、本発明の第14実施例について図11を参照して説明する。図11は、本発明による半透過型液晶表示装置の模式断面図である。
【0124】
本発明の実施例14の液晶表示装置の製造においては、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101および対向基板(カラーフィルター基板)を構成するガラス基板102として、厚みが0.7mmで表面を研磨した無アルカリガラス基板を用いる。このカラーフィルター基板を構成するガラス基板102に、ブラックレジストを用いて、膜厚1.0μmの遮光部113を形成した。次に、染料レジストを用いて、遮光部113で区切られて配置された画素からなる、カラーフィルター層111を形成した。膜厚は、それぞれ青が3.0μm、緑が2.7μm、赤が2.5μmとしたが、所望の色純度、もしくは液晶層厚に対して適宜あわせればよい。色素が添加されたカラーレジストによりカラーフィルター層111を形成した後、各画素の段差を均一化するために、厚さ1.0μmのアクリル系樹脂からなるオーバーコート膜134を形成した。
【0125】
次に、カラーフィルター基板の表面に配向制御膜として、ジアミン化合物、p−フェニレンジアミンと1,4−ジアミノピリジンをモル比1:1の割合で混合し、酸二無水物が1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物からなるポリアミック酸ワニスを印刷形成し、220°Cで30分の熱処理を行い、約80nmの緻密なポリイミド膜からなる配向制御膜132を形成した。
【0126】
一方、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101に薄膜トランジスタ、走査電極、共通電極配線、信号電極、画素電極(図示せず)はすべてクロム膜をパターニングして形成した。尚、前記共通電極と前記画素電極は低抵抗でパターニングの容易なクロム膜を使用したが、ITO膜を使用し透明電極を構成して、より高い輝度特性を達成することも可能である。その上に透明で絶縁性のある絶縁性有機膜133を厚さ1.5μmで形成後、表面に凹凸を形成し、アルミニウムにより反射部121を形成した。
【0127】
さらに、6重量%ポリイミド酸溶液にブリリアントイエローを3重量%、C.I.ダイレクトレッド81を2重量%、C.I.ダイレクトブルー151を2重量%添加し、十分に分散させた溶液を用いて約200nmのポリイミド膜122を反射部121上に印刷形成した。次に光源に高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、330nm〜600nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約15:1の直線偏光とし、230℃で約5J/cm2の照射エネルギーで基板にほぼ垂直に照射した。一軸吸収異方性層の吸収軸は、出射側偏光板119の透過軸と直交する方向に形成した。
【0128】
次に、共通電極103をスパッタによりITOを100nmの厚さで形成した。その後、窒化珪素からなる保護絶縁膜108を膜厚300nmで製膜後、画素電極105を形成し、アクティブマトリクス基板を形成した。その後、配向制御膜として、ジアミン化合物、p−フェニレンジアミンと1,4−ジアミノピリジンをモル比1:1の割合で混合し、酸二無水物が1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物からなるポリアミック酸ワニスを、樹脂分濃度5重量%、NMP60重量%、γブチルラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%に調整し、上記アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して220°Cで30分の熱処理によりイミド化し、約80nmの緻密なポリイミド配向制御膜131を形成した。
【0129】
得られたアクティブマトリクス基板は、照射した偏光UVの偏光方向と直交方向に吸収軸を有していた。この偏光UVスペクトルを測定したところ、二色比が5.38であった。本実施例では、出射側偏光板119の透過軸を基板短辺方向(信号電極106と同一方向)、吸収軸方向が基板長辺方向(走査電極104方向、図示せず)であるが、偏光板の軸配置を変えた場合には、それに合わせて軸を決定すればよい。
【0130】
アクティブマトリクス基板,カラーフィルター基板に垂直配向の配向制御膜131,132をそれぞれ形成し、基板の周辺部にシール剤を塗布し、負の誘電異方性を有する液晶材料をODF法によって滴下封入して液晶層110Aとし、液晶パネルを組み立てた。偏光板118,119は前述の通り、入射側偏光板118の透過軸を基板の長辺方向、出射側偏光板119の透過軸を基板短辺方向として直交させた。偏光板には、視角特性を補償する複屈折性フィルムを具備する視野角補償偏光板を用いた。その後、駆動回路、バックライトユニットなどを接続して液晶モジュールとし、液晶表示装置を得た。
【0131】
この液晶表示装置の表示品質を評価したところ、透過部のコントラスト比が650:1、反射部のコントラスト比が10:1であり、従来型の半透過液晶表示装置のコントラスト比(5;1)以上のコントラスト比を示した。本発明による半透過液晶表示装置と従来型の半透過液晶表示装置の開口率を比較したところ、本発明による半透過液晶表示装置は従来型に対して開口率が約13%向上していた。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】液晶表示装置の模式断面図である。
【図2】本発明による液晶表示装置の実施例1の構成を説明する模式断面図である。
【図3】本発明による液晶表示装置の実施例1の画素構成を説明する画素部分の模式平面図および模式断面図である。
【図4】本発明による液晶表示装置の実施例2の構成を説明する模式断面図である。
【図5】本発明による液晶表示装置の実施例2の画素構成を説明する画素部分の模式平面図および模式断面図である。
【図6】本発明による液晶表示装置の実施例3の構成を説明する模式断面図である。
【図7】本発明による液晶表示装置の実施例4の構成を説明する模式断面図である。
【図8】本発明による液晶表示装置の実施例12を説明する模式断面図である。
【図9】本発明による液晶表示装置の実施例13を説明する模式断面図である。
【図10】従来型の半透過型液晶表示装置の模式断面図である。
【図11】本発明による液晶表示装置の実施例14である半透過型液晶表示装置の模式断面図である。
【符号の説明】
【0133】
100・・・・光源、101,102・・・・透明基板、103・・・・共通電極(コモン電極)、104・・・・走査電極(ゲ−ト電極)、105・・・・画素電極(ソ−ス電極)、106・・・・信号電極(ドレイン電極)、107・・・・絶縁膜、108・・・・保護絶縁膜、110・・・・液晶分子、110'・・・・液晶層(液晶組成物層)、111・・・・カラーフィルター、113・・・・遮光膜(ブラックマトリクス)、114・・・・カラーフィルターレジスト、115・・・・薄膜トランジスタ、116・・・・半導体膜、117・・・・電界方向、118,119・・・・偏光板、120・・・・共通電極配線、121・・・・反射膜、122・・・・段差部、123・・・・位相差膜、131,132・・・・配向制御膜、133,134・・・・有機絶縁膜、141・・・・TFT層、151・・・・バックライト光源ユニット、161,162,165,166・・・・偏光板保護フィルム、163,167・・・・偏光子、164,168・・・・偏光板粘着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、前記一対の基板の少なくとも何れか一方に配置された偏光板と、前記一対の基板間に配置された液晶層と、前記一対の基板の少なくとも何れか一方に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群からなる液晶表示装置において、
前記一対の基板の少なくとも一方が、一軸吸収異方性を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
波長域380〜780nmにおいて、前記一軸吸収異方性を有する部材を持つことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
波長域550〜780nmにおける前記一軸吸収異方性を有する部材の二色比が2以上の領域を持つことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1において、
波長域450〜650nmにおける前記一軸吸収異方性を有する部材の二色比が2以上の領域を持つことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1において、
波長域380〜550nmにおける前記一軸吸収異方性を有する部材の二色比が2以上の領域を持つことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項2又は3において、
波長域550〜780nmにおける前記一軸吸収異方性を有する部材の示す吸収軸の吸光度が0.2以上の領域を持つことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項2又は4において、
波長域450〜650nmにおいて、前記一軸吸収異方性を有する部材の示す吸収軸の吸光度が0.2以上の領域を持つことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項2又は5において、
波長域380〜550nmにおける前記一軸吸収異方性を有する部材の示す吸収軸の吸光度が0.2以上の領域を持つことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項2、3又は6において、
波長域550〜780nmにおいて、前記一軸吸収異方性を有する部材の示す吸収軸と透過軸での吸光度差が0.1以上であることを特徴とする請求項9、10、13に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
請求項2、4又は7において、
波長域450〜650nmにおいて、前記一軸吸収異方性を有する部材の示す吸収軸と透過軸での吸光度差が0.1以上であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項2、5又は9において、
波長域380〜550nmにおいて、前記一軸吸収異方性を有する部材の示す吸収軸と透過軸での吸光度差が0.1以上であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項2、5、8又は11において、
波長域380〜780nmにおいて、前記一軸吸収異方性を有する部材の示す吸光度の最大値が波長域380〜550nmにあることを特徴とする液晶表示装置
【請求項13】
請求項1乃至12の何れかにおいて、
前記一軸吸収異方性は、樹脂中に色素を分散させた部材であることを特徴とする載の液晶表示装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記一軸吸収異方性は、ほぼ直線に偏光した光照射および/または延伸することにより発現する材料からなることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記色素が、光異性化化合物であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項16】
請求項13、14、15の何れかにおいて、
前記一軸吸収異方性を有する部材の吸収軸が、一対の偏光板の何れか一方の吸収軸とほぼ平行または直交であることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−103828(P2009−103828A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274240(P2007−274240)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】