説明

液晶表示装置

【課題】 小型化・薄型化を図る場合においても、効率的に色再現性を向上させることができ、かつ、輝度の著しい低減を抑制することができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 液晶表示装置は、白色光を照射する白色LEDを含む光源と、光源からの光に基づいてカラー画像を表示する液晶パネルを備えている。波長が580nmから600nmの範囲を減衰させる波長選択フィルタを、白色LEDからの白色光の光路上に配置した。これにより、カラー表示の色再現性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルを用いた液晶表示装置に関する。特に、光源からの光に基づいてカラー画像を表示する液晶パネルを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、携帯電話、PDA、電子辞書、カーナビゲーションシステム、音楽プレーヤー等、各種機器に用いられている。上述した液晶表示装置においては、主に、冷陰極管を用いたバックライトが配置されており、そこからの光が液晶表示パネルに向けて照射される。また、液晶表示装置は、携帯性の高い端末装置に採用される場合であっても、液晶表示パネルにカラーフィルタを備え、カラー画像を表示できるものが最近主流となっており、より色再現性に優れたカラー画像を表示させることが望まれている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示すように、光源である冷陰極線管の光のスペクトルに対応した波長選択フィルタを備えることで実現する例が示されている。具体的には、420nm〜460nm、500nm〜550nm、620nm〜710nmの波長域の透過率が80%程度で、それ以外の波長域の透過率が10%程度の透過率を有する波長選択フィルタを用いることにより、色再現性が“71%”の液晶表示装置を“88%”に向上させている。
【0004】
また、例えば、特許文献2では、冷陰極線管を光源として、その光源から液晶表示パネルまでの光路上に波長450nm、490nm、545nm、580nm、610nmにおける波長を選択的に吸収する波長選択フィルタを用いており、色再現性が“75%”の液晶表示装置を“80%”に向上させている。
【特許文献1】特開2006−72249号公報
【特許文献2】特開2007−147688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した液晶表示装置では、冷陰極管を光源としたバックライトを採用することによって、駆動するために外部部品を要するなどの理由から、薄型化・小型化が難しく、消費電力が高くなり、小型化・薄型化を図ることが容易ではない。このため、持ち運びをするような携帯型端末装置に用いられる液晶表示装置においては、白色LEDを光源としたバックライトを採用し、小型化・薄型化を図ることがある。
【0006】
また、上述した液晶表示装置における特性を有する波長選択フィルタを、白色LEDを用いた液晶表示装置に適用した場合には、著しく輝度が減衰する、色再現性が大幅には高まらないなど、輝度と色再現性とのバランスがとれないおそれがあった。
【0007】
具体的には後述の表1を用いて詳しく説明するが、特許文献1の構成では(表中の公知例1)、色再現性が“94%”と高まるものの、輝度が“330”と顕著に減衰してしまい、特許文献2の構成では(表中の公知例2)、輝度が“420”と顕著に減衰はしないものの、色再現性が“72%”と高くはならない。
【0008】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、小型化・薄型化を図る場合においても、効率的に色再現性を向上させることができ、かつ、輝度の著しい低減を抑制することができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、白色光を照射する白色LEDを含んだ光源と、光源からの光に基づいてカラー画像を表示する液晶パネルを備えており、白色LEDからの白色光の光路上に、波長が580nmから600nmの範囲を減衰させる波長選択フィルタを配置することとした。さらに、特定の偏光方向の光を透過し、それ以外の光を反射する反射型偏光子を、白色光の光路上に配置した。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、小型化・薄型化を図る場合においても、効率的に色再現性を向上させることができ、かつ、輝度の著しい低減を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の表示装置は、青色LEDと黄色蛍光体を備えて擬似白色光を照射する照明装置と、照明装置からの光に基づいてカラー表示を行なう液晶パネルを備えた液晶表示装置であって、580nmから600nmの範囲の波長成分を減衰させる波長選択フィルタが照明光の光路上に設けられている。これにより、擬似白色光に含まれる580nmから600nmの範囲の波長成分が減り、カラー表示の色再現性が向上する。
【0012】
さらに、特定の偏光方向の光を透過し、それ以外の光を反射する反射型偏光子を波長選択フィルタと液晶パネルの間に設けることとした。このような構成により、液晶パネルに入射する光が増えることとなり、輝度を向上することができる。
【0013】
また、本発明の他の構成の表示装置は、カラーフィルタを備える液晶パネルと、光源を有するとともに液晶パネルに光を照射する照明装置を備えたカラー表示を行なう液晶表示装置であって、カラーフィルタを透過しない波長域の光成分を減衰させる波長選択フィルタを光源からの光の光路上に設けるとともに、特定の偏光方向の光を透過し、それ以外の光を反射する反射型偏光子を、波長選択フィルタと液晶パネルの間に設けることとした。このような構成によれば、波長選択フィルタが、光源に含まれる成分のうちカラーフィルタに不要な成分をカットするため、色再現性が向上するとともに、反射型偏光子が液晶パネルに届く照明光を増加させるため輝度が向上することになる。すなわち、色再現性と輝度の向上が同時に実現できる。
【0014】
本発明の実施例を図1、図2を用いて以下に説明する。図1は、本実施例の液晶表示装置を模式的に示す断面図である。図示するように、液晶表示装置10は、導光板2、波長選択フィルタ1、反射型偏光子4、下吸収型偏光子6、液晶表示パネル5、上吸収型偏光子7を含み、その順で積層された状態で配置されている。また、導光板2の側面側近傍には白色LED3が配置され、バックライトを構成している。波長選択フィルタ1、反射型偏光子4、下吸収型偏光子6、液晶表示パネル5及び上吸収型偏光子7は、導光板2の照射面から出る光の同一光路上に配置されている。導光板2は、白色LED3からの白色光を波長選択フィルタ1や液晶表示パネル5に向かって導くこととなる。図2は、本実施例の液晶表示装置に関する波長特性を示す図である。図2では、波長(nm)を横軸に、輝度または透過率を縦軸にしている。
【0015】
本実施例の白色LED3は、青色発光ダイオードを用いて黄色の蛍光体を励起させることによって白色光を発光する。このような白色LED3は、図2(A)に示すような波長特性の白色光を発光する。
【0016】
波長選択フィルタ1は、導光板2から照射される光を分光して反射型偏光子4に向けて透過する。すなわち、波長選択フィルタ1は、特定の波長域の光を透過させない特性を持つ。本実施例の波長選択フィルタ1は、図2(B)に示すような波長特性を持つフィルタであり、580nmから600nmの波長の光を減衰させる機能がある。
【0017】
反射型偏光子4は、特定の偏光方向の光を透過し、それ以外の光を反射する。反射型偏光子4は、波長選択フィルタ1を透過してきた光の一部を透過し、それ以外の光を反射する。透過した光は吸収型偏光子6や液晶表示パネル5などに向かう。一方、反射型偏光子4によって反射させた光はバックライトと反射型偏光子4の間で反射を繰り返すこととなる。反射が繰り返されるうちに、反射型偏光子を透過する偏光方向に変わった光は、液晶表示パネル5に入射する光となる。すなわち、従来の構成では液晶表示パネルに届かなかった光も利用できるようになり、これによって、輝度の減衰を抑制することができる。
【0018】
吸収型偏光子は、特定の偏光方向の光を透過させ、それ以外の光を吸収する。下吸収型偏光子6と上吸収型偏光子7は、液晶表示パネル5を狭持するように配置されている。各吸収型偏光子6及び7は、液晶表示パネル5に適した偏光を行う。本実施例では、位相差フィルムなどを備えていないが、これに限らず、例えば、位相差フィルムを備える構成であってもよい。
【0019】
液晶表示パネル5は、外部電圧などがかかると分子配列の並びが変わる液晶層や、画素毎に対応して赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタを有する。本実施例の液晶表示装置では、液晶表示パネル5と白色光を発する照明装置の間に580nm〜600nmの波長域を減衰させる波長選択フィルタ1が配置されているので、液晶表示パネル5は波長選択された白色光に基づいてカラー画像を表示する。すなわち、白色LEDからの白色光のうち、580nm〜600nmの波長が減衰されて、図2(D)に示すような波長特性の光が液晶表示パネルの照明光となる。この光は青色、緑色、赤色におよそピークを持った波長特性であり、図2(C)に示すような青色光、緑色光、赤色光の波長特性に近づくため、色再現性が高まることとなる。
【0020】
本発明による構成の液晶表示装置10や、従来の構成の液晶表示装置に関して輝度や色再現性について算出した結果を表1に示す。表中の比較例は、本実施例と同様の白色LEDを用いるものの波長選択フィルタ1を設けない構成で、すなわち、本発明を採用しない場合である。公知例1は上述した特許文献1の構成、公知例は特許文献2の構成であり、光源にはいずれも白色蛍光管が用いられている。本発明にかかる構成として、波長選択フィルタ1のみを有する構成、波長選択フィルタと反射型偏光子を共に有する構成を例示した。これらの各構成での輝度、色再現性を算出し、その結果を元に輝度減衰率、色再現性変化率、効率を算出した。ここで、輝度減衰率、色再現性変化率は、比較例の輝度、色再現性を基準としたときの割合を示しており、効率は、輝度減衰率と色再現性変化率の積である。
【表1】

【0021】
表1に示すように、波長選択フィルタ1を用いない比較例では、輝度が“560”、色再現性がNTSC比71%である。
【0022】
本発明の構成例1は波長選択フィルタ1を備えるという点で比較例と異なっており、構成例1では、輝度が“400”、色再現性が“83%”であり、比較例と比べて輝度減衰率が“71%”となるが、その際の色再現性変化率は“117%”と向上し、効率は“83%”となった。このように、波長選択フィルタ1を設けた場合は、比較例に比べて色再現性が高まる。輝度は低くなるが、著しく減衰しているわけではなく、輝度の著しい低減が抑制できる。
【0023】
また、波長選択フィルタ1と反射型偏光子4が設けられた本発明の構成例2では、輝度が“520”、色再現性が“85%”となり、比較例と比べて輝度減衰率が“93%”、色再現性変化率が“119%”、効率が“110%”となった。
【0024】
このように、波長選択フィルタ1と反射型偏光子4を設けた構成例2では、反射型偏光子4を設けなかった構成例1と比べても、輝度、色再現性、効率がともに高まる。また、構成例2ではフィルタが多く存在するために、比較例と比べて輝度が減少してしまうものの、色再現性、効率がともに高まる。とはいえ、輝度の減少は僅かであり、輝度の著しい低減を抑制することができており、光源自体の発光輝度を大幅に高める必要がない。
【0025】
また、光源に冷陰極管を用いた公知例1や公知例2では、それぞれ輝度が“330”、“420”、色再現性が“94”、“72”、その際の輝度減衰率が“60%”、“74%”、色再現性変化率が“131%”、“101%”、効率が“77%”、“75%”となった。光源に白色LED3を用い、波長選択フィルタ1と反射型偏光子4を設けた構成例2は、公知例1や公知例2と比べて、色再現性か輝度のいずれか一方が高まり、他方が低くなる。特に、公知例1や公知例2では、いずれかが著しく低くなり、輝度、色再現性のバランスが悪くなる。また、冷陰極管を光源とすると駆動するために外部部品を要することなど各種の理由により、また、光源として白色LED3を用いることによって、液晶表示装置の薄型化・小型化、また消費電力の低減を実現することができる。
【0026】
このように、光源として白色光を照射する白色LEDと、白色LEDからの白色光の光路上に配置され、波長が580nmから600nmの範囲を減衰させる波長選択フィルタとが液晶表示装置に組み込まれることによって、効率的に色再現性を向上させることができ、かつ、輝度の著しい低減を抑制することができる。また、白色LEDを用いているため、薄型化・小型化が実現可能であり、携帯性の高い端末装置に採用することができる。また、反射型偏光子を光路上に配置することによって、色再現性、輝度の更なる向上を測ることができる。
【0027】
なお、液晶表示パネル5は、TN型、IPS型、VA型、OCB型など、光学的スイッチング機能を有するものである。
【0028】
また、本実施例では、波長が580nmから600nmの範囲を減衰させる波長選択フィルタを用いたが、これに限らず、例えば、別途、別の波長範囲を減衰させる波長選択フィルタを用いてもよい。また、本実施例においては、図2(A)に示すような白色光を照射する白色LEDを採用したが、これに限らず、例えば、別の波長特性を有する白色光を照射する白色LEDを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による液晶表示装置を示す断面図である。
【図2】本発明による液晶表示装置に関する波長特性を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 波長選択フィルタ
2 バックライト導光板
3 白色LED
4 反射型偏光子
5 液晶表示パネル
6 吸収型偏光子
10 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有する照明装置と、前記照明装置からの光に基づいてカラー表示を行なう液晶パネルと、を備えた液晶表示装置であって、
前記照明装置は、青色LEDと黄色蛍光体を備えて白色光を照射するとともに、
580nmから600nmの範囲の波長成分を減衰させる波長選択フィルタを前記光源からの光の光路上に設けたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
特定の偏光方向の光を透過し、それ以外の光を反射する反射型偏光子が、前記波長選択フィルタと前記液晶パネルの間に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
カラーフィルタを備える液晶パネルと、光源を有するとともに前記液晶パネルに光を照射する照明装置を備え、カラー表示を行なう液晶表示装置であって、
前記カラーフィルタを透過しない波長域の光成分を減衰させる波長選択フィルタを前記光源からの光の光路上に設けるとともに、
特定の偏光方向の光を透過し、それ以外の光を反射する反射型偏光子を、前記波長選択フィルタと前記液晶パネルの間に設けたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−192793(P2009−192793A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33072(P2008−33072)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】