説明

液晶表示装置

【課題】本発明は、幅広い環境温度で高視野角かつ黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
液晶表示装置の液晶セルの両側に、偏光子の保護膜を有する一対の偏光板を直交配置し、偏光板の液晶セル側に配置される保護膜のRth(λ)が環境温度に対して負の特性を有するようにする。ここで、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に係り、特に、幅広い環境温度で高視野角かつ黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々用途が広がっている。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であったが、近年、液晶セル内の液晶分子の配列状態の異なる様々な高視野角モードが実用化されており、これによりテレビ等の高視野角が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。
【0003】
特にVAモードはコントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。しかしながらVAモードではパネル法線方向においてはほぼ完全な黒色表示ができるものの、斜め方向からパネルを観察すると光漏れが発生し、視野角が狭くなるという問題があった。
【0004】
この問題に対し、液晶セル側の偏光板保護膜のRe値、Rth値、液晶セルのΔndの関係を適切な範囲に設定し、さらに、偏光子を直交配置した時の色味、液晶表示装置のバックライトの色温度を適切な範囲に設定することで広視野角かつ黒表示のカラーシフトを小さくできることが報告された(例えば、特許文献2参照)。また、液晶セルと偏光フィルムとの間に位相差フィルムを設け、この位相差フィルムの波長分散特性を制御し、さらに特定の位相差フィルムを複数併用することにより、可視光領域全体にわたって光漏れが少なく、ほぼ無彩色な黒が表示できる技術が提案された(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これらの技術では、広視野角かつ黒表示の観点での改善がみられるものの、高温になると液晶セルのΔndが変化することが原因で、特に視野角方向でのコントラスト値が低下する問題は解決できていない。
Δndの変化に起因するコントラスト低下の問題に対しては、液晶セルのΔndの温度依存率に対応してレターデーションが変化する光学異方体フィルムを提供する手段が報告されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、
特許文献4の段落9に記載される光学異方体は、高分子と液晶化合物または液晶組成物を混合して得られる特定の物性を有する光学異方体フィルムであり、液晶化合物または液晶組成物は、「仕様として要求される位相差フィルムのレターデーション変化の下限以下のガラス転移温度を有し、組み合わせて使用する液晶セルのΔndの温度依存性に合うように等方相転移温度が選ばれてなる」と記載されているように特殊な組成物であり、位相差フィルムとしては生産適性があるとはいえなかった。また、この光学異方体フィルムは、液晶セルの温度変化に伴うΔndの変化には対応可能としても、波長変動に対するカラーシフトの改良ができていないという問題が残る。
【特許文献1】特許2587398号公報
【特許文献2】特開2007−140497号公報
【特許文献3】特許第3648240号明細書
【特許文献4】特開2000−155217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、幅広い環境温度で高視野角かつ黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、液晶セル側の偏光板保護膜に温度変化に対して負の特性を付与することで、液晶セルのΔndが低下する高温領域においても広視野角かつ黒表示のカラーシフトが小さな液晶表示装置を提供できることを見出した。
【0007】
本発明は以下の通りである。
〔1〕
液晶セルの両側に、偏光子の保護膜を有する一対の偏光板を直交配置した液晶表示装置であって、偏光板の液晶セル側に配置される保護膜の少なくとも一枚のRth(λ)が環境温度に対して負の特性を有することを特徴とする液晶表示装置(ただし、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する)。
〔2〕
前記液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大し、他方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜BのRthB(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少するとともに環境温度に対して負の特性を有することを特徴とする〔1〕に記載の液晶表示装置(ただし、Reは面内レターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する)。
〔3〕
前記保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)、保護膜BのReB(λ)およびRthB(λ)および液晶セルのΔndが下記式を満たすことを特徴とする〔2〕に記載の液晶表示装置。
(i)0.5≦RthA(550)/ReA(550)≦10
(ii)30≦RthA(550)≦400
(iii)0≦ReB(550)≦20
(iv)0≦RthB(550)≦150
(v)200≦Δnd≦800
(ただし、式中Δnは液晶の異常光屈折率neと常光屈折率noとの差(ne−no)であり、dは液晶セルのセルギャップ(単位:nm)である。)
〔4〕
前記保護膜Bが液晶セルの視認側の基板上に配置されることを特徴とする〔2〕または〔3〕に記載の液晶表示装置。
〔5〕
前記保護膜Bが、セルロースを構成するグルコース単位の水酸基を炭素原子数が2以上のアシル基で置換して得られたセルロースアシレートから実質的になるフィルムであって、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(vi)および(vii)を満たすセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
数式(vi): 2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(vii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
〔6〕
前記保護膜Bが、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料、およびマット剤から選択された1種以上を含有していることを特徴とする〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔7〕
前記保護膜Bが、棒状化合物または円盤状化合物のレターデーション制御剤を1種以上含有していることを特徴とする〔2〕〜〔6〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔8〕
前記レターデーション制御剤が液晶性を示す化合物であることを特徴とする〔7〕に記載の液晶表示装置。
〔9〕
前記液晶セルが垂直配向モードであることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、幅広い環境温度で高視野角かつ黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」との記載は、「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
【0010】
本発明は液晶セルの両側に、偏光子の保護膜を有する一対の偏光板を直交配置した液晶表示装置であって、偏光板の液晶セル側に配置される保護膜の少なくとも1枚の膜厚方向のレターデーションRth(λ)が環境温度に対して負の特性を有することを特徴としている。ただし、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。
ここで、温度25℃湿度60%RHの環境下でKOBRA 21ADH、WR、エリプソメーターおよびセナルモン法のいずれかで測定したReおよびRthの値が、測定環境の温度が上昇するにしたがって減少する特性を持つことを負の温度依存性(「負の特性」とも称する)を示す、とする。逆に測定温度の上昇にしたがってRe、Rth値が増大する特性をもつことを正の温度依存性(「正の特性」とも称する)を示す、とする。
面内レターデーション(Re)および膜厚方向のレターデーションの適正化および波長分散特性を制御するとともに、温度変化に対して負の特性を付与することで、液晶表示装置のΔndが低下する高温領域における視野角低下を抑制でき、黒表示のカラーシフトを低減できる。
以下、本発明の視野角低下抑制効果、および黒表示のカラーシフトの低減効果につき、詳細に説明する。
【0011】
(保護膜のRe、Rthと液晶セルのΔnd値との関係)
本発明では、液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)および RthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大(「波長に対し逆分散」とも言う)し、他方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜BのRthB(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少(「波長に対し順分散」とも言う)するとともに、環境温度に対して負の特性をもたせることで、Δndが低下する高温領域でも広視野角かつ黒表示のカラーシフトが小さい液晶表示装置を提供できることを見出した。
【0012】
本発明の効果を発揮する上で、ReA(λ)、RthA(λ)、ReB(λ)、RthB(λ)、Δndは下記式(i)から(v)を満たすことが好ましい。
(i)0.5≦RthA(550)/ReA(550)≦10
(ii)30≦RthA(550)≦400
(iii)0≦ReB(550)≦20
(iv)0≦RthB(550)≦150
(v)200≦Δnd≦800
ただし、式中Δnは液晶の異常光屈折率neと常光屈折率noとの差(ne−no)であり、dは液晶セルのセルギャップ(単位:nm)である。
尚、VAモードの液晶セルのΔnは、本発明においては0.06〜0.40、好ましくは0.06〜0.15、液晶セルのセルギャップすなわち液晶セルの液晶部分の厚みは2〜5μ、好ましくは3〜4μmである。また、通常の市販のVAモードの液晶セルは高温になるに従いΔnが減少する傾向にある。
【0013】
本発明において、保護膜Aは、バックライト側に設ける偏光板と液晶セルの間に設けるのが好ましい。
本発明において、保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)は、波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大(「波長に対し逆分散」とも言う)する特性を有し、以下に述べる式(viii)〜(iix)を満たすことが好ましい。
式(viii) 0.75≦ReA(450)/ReA(550)<1.0
式(x) 1.0<ReA(630)/ReA(550)≦1.2
式(ix) 0.75≦RthA(450)/RthA(550)<1.0
式(iix) 1.0<RthA(630)/RthA(550)≦1.2
更に、式(viii')〜式(iix')を満たすことが好ましい。
式(viii') 0.80≦ReA(450)/ReA(550)<0.95
式(x') 1.0<ReA(630)/ReA(550)≦1.1
式(ix') 0.80≦RthA(450)/RthA(550)<0.95
式(iix') 1.0<RthA(630)/RthA(550)≦1.1
【0014】
本発明において、保護膜BのRthB(λ)は、波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少(「波長に対し順分散」とも言う)する特性を有し、以下に述べる式(iiix) 〜式(ivx)を満たすことが好ましい。
式(iiix) 1.2≦RthB(450)/RthB(550)≦1.0
式(ivx) 1.0≦RthB(630)/RthB(550)≦0.8
更に式(iiix')〜式(ivx')を満たすことが好ましい。
式(iiix') 1.1≦RthB(450)/RthB(550)≦1.0
式(ivx') 1.0≦RthB(630)/RthB(550)≦0.85
【0015】
また、本発明において、保護膜のReB(550)の好ましい範囲は0以上20以下であり、さらに好ましくは0以上10以下の範囲である。
【0016】
本発明において、VA型液晶表示装置のバックライト側偏光板の液晶セル側保護膜に上記の保護膜Aを用い、フロント側偏光板の液晶セル側保護膜に上記の保護膜Bを用いることで、カラーシフトの小さい液晶表示装置を製造することができる。この作用機構については、ポアンカレ球を用いた説明が以前から行われており、詳細の説明は省略するが、簡単な説明を特開2007−140497号の図5を用いると以下のように理解できる。
【0017】
特開2007−140497号の図5のポアンカレ球は、光の伝播方向は方位角=45度、極角=34度である。 図5中、S2軸は、紙面上から下に垂直に貫く軸であり、 図5は、ポアンカレ球を、S2軸の正の方向から見た図である。また、図5は、平面的に示されているので、偏光状態の変化前と変化後の点の変位は、図中直線の矢印で示されているが、実際は、液晶層や光学補償フィルムを通過することによる偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、それぞれの光学特性に応じて決定される特定の軸の回りに、特定の角度回転させることで表されている。
【0018】
図5の点1は入射光の偏光状態を、点2は出射光の偏光状態を表し、点Aは位相差フィルムA(本発明では保護膜A)を通過した後のポアンカレ球上の位置、点Bは、点Aから垂直配向したVAセルを透過した後のポアンカレ球上の位置、点2は、点Bから位相差フィルムB(本発明では保護膜B)を通過した後のポアンカレ球上の位置を表す。
仮に、点1から入射した光が、保護膜A、液晶セル、保護膜Bを通過した後に点2に到達した時に可視光の成分B、G、R光が、点2に収束していればカラーシフトは起こらない。しかし実際には、複屈折性を有する材料を透過した光は、進行する距離がRth/λに依存するため、Rthが光の波長に依存しない固定値の場合は、B、G、R光により到達距離が異なることとなる。保護膜Aは、Rthが波長が大きくなるにつれて増大するように設計することにより、B、G、Rの各光が点Aに収束させることができる。通常のVA型液晶セルは垂直配向状態ではRthが波長が大きくなるにつれて減少するから、液晶セルを透過した光は点Bの付近には到達するが収束はしない。保護膜Bに、この液晶セルによる不収束の分をキャンセルするだけの波長依存性を持たせる事により、点2に収束させることができ、カラーシフトを減少させることができる。
【0019】
本発明において、保護膜BのRthB(λ)は、環境温度に対して負の特性を有し、以下に述べる式(11)満たす。
式(11) −3.0≦(RthB(λ)(T)/RthB(λ)(25℃))/(T−25)<0
(ここでRthB(λ)(T)はT℃における波長λnmにおけるRth値を示す。)
更に好ましくは、式(11')を満たす。
式(11') −2.5≦(RthB(λ)(T)/RthB(λ)(25℃))/(T−25)<0
本発明においては、保護膜Bは、フロント側に設ける偏光板と液晶セルの間に設けるのが好ましい。保護膜Bが上記の環境温度に対し変動することにより、液晶表示装置が各種の環境に曝された時の液晶セルの変動を補償する効果を発揮する。
【0020】
保護膜のRe値およびRth値は、保護膜としてセルロースアシレートフィルムを用いた場合、セルロースアシレートの置換度、セルロースアシレートフィルムに添加するレターデーション上昇剤の種類・量、セルロースアシレートフィルムの乾燥温度・時間、セルロースアシレートフィルムの延伸倍率・延伸温度・延伸時の残留溶媒量により調整することができる。制御因子各々の好ましい範囲、制御方法について以下に説明する。
【0021】
本発明では、液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大することが好ましい。
なお、以下の説明において光学フィルムの屈折率あるいは複屈折が可視光域の光に依存して(すなわち測定波長に依存して)変動することを、光学フィルムの屈折率あるいは複屈折の波長分散性といい、特に光学フィルムの屈折率あるいは複屈折が可視光域の光に対してその波長に依存して増大する性能を有することを「逆波長分散性を有する」、光学フィルムの屈折率あるいは複屈折が可視光域の光に対してその波長に依存して減少する性能を有することを「順波長分散性を有する」という。
本発明の液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜Aでは、高分子組成物に対して延伸等の配向処理を行って、延伸等による配向制御方向(以下、TD方向と示す)を正の方向とした場合の複屈折(Δn)を逆波長分散性とすることもできる。
ここで前記ΔnはTD方向の屈折率からMD方向の屈折率を差し引いた値である。このためΔnを逆波長分散性とするためにはTD方向の屈折率の波長分散性よりもMD方向の波長分散性がより右肩下がり(すなわち測定波長に対してそれぞれの屈折率の値を、短波長側を左、長波長側を右としてプロットした場合の屈折率の減少量が、MD方向のものが大きい)であることが必要である。
【0022】
屈折率の波長分散性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように物質の吸収波形に密接な関係にあり、MD方向の屈折率の波長分散性を、TD方向の波長分散性より右肩下がりにするためには、TD方向に比較してMD方向における吸収遷移波長をより長波長化すればよい。
【0023】
〔レターデーション制御剤A〕
本発明では、高分子材料に対して下記化合物(A)のような化合物を添加し、さらに延伸等の配向処理を施すことで、TD方向に比較してMD方向における吸収遷移波長をより長波長化することを可能とするものである。
すなわち化合物(A)としては高分子材料中に添加し、これに延伸処理を施した場合、該化合物(A)の分子長軸がTD方向に配向する性質を持つ化合物が選ばれる。さらに化合物(A)としては分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントMyに由来する分子吸収波長が、該分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントMxに由来する分子吸収波長より長波長であって、分子長軸方向と略直交方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|My|が分子長軸方向と略平行方向の遷移電気双極子モーメントの大きさ|Mx|より大きい化合物が適する。このような性質を有する化合物(A)の添加により、TD方向に比較してMD方向における吸収遷移波長をより長波長化することが可能となる。
【0024】
化合物(A)として好ましくは下記一般式(I)で表される化合物であるが、これに限定されるものではない。
【0025】
以下に、一般式(I)の化合物について詳細に説明する。
一般式(I):
【0026】
【化1】

【0027】
一般式(I)中、L1およびL2は、それぞれ、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2は−O―、―NR―(Rは水素原子または置換基)、―S―、―CO−からそれぞれ独立に選ばれる基である。R1、R2、R3、R4およびR5は置換基を表す。nは0から2までの整数を表す。
【0028】
1およびL2は好ましくは下記の例が挙げられる。
【0029】
【化2】

【0030】
さらに好ましくは−O―、―COO―、―OCO−である。
【0031】
1は置換基であり、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、環を形成しても良い。置換基の例としては下記のものが適用できる。
【0032】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、
【0033】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0034】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、
【0035】
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N'フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、
【0036】
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0037】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り、さらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0038】
1は好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、アミノ基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基である。
【0039】
2、R3は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例があげられる。好ましくは置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のシクロヘキサン環である。より好ましくは置換基を有するベンゼン環、置換基を有するシクロヘキサン環であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するベンゼン環、4位に置換基を有するシクロヘキサン環である。
【0040】
4、R5は各々独立に置換基を表す。例としては上記R1の例があげられる。好ましくは、ハメットの置換基定数σp値が0より大きい電子吸引性の置換基であることが好ましく、σp値が0〜1.5の電子吸引性の置換基を有していることがさらに好ましい。このような置換基としてはトリフルオロメチル基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。また、R4とR5とが結合して環を形成してもよい。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー、91巻、165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
【0041】
1およびA2は−O―、―NR―(Rは水素原子または置換基)、―S―、―CO−からそれぞれ独立に選ばれる基である。好ましくは−O―、―NR―(Rは置換基)、―S―からそれぞれ独立に選ばれる基である。
【0042】
nは0または1が好ましく、0であることが最も好ましい。
【0043】
以下、本発明の保護膜、とりわけ保護膜Aが含有することが好ましい、一般式(I)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。下記化合物に関しては、指定のない限り括弧( )内の数字にて例示化合物(X)と示す。
【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
一般式(I)で表される化合物の合成は、既知の方法を参照して行うことができる。例えば、一般式(I)の例示化合物(16)は、下記スキームに従って合成することができる。
【0053】
【化11】

【0054】
前記スキーム中、化合物(1−A)から化合物(16−D)までの合成は、"Journal of Chemical Crystallography"(1997);27(9);p.515-526.に記載の方法を参照して行うことができる。
【0055】
さらに、前記スキームに示したように、化合物(16−E)のテトラヒドロフラン溶液に、メタンスルホン酸クロライドを加え、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを滴下し攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを加え、化合物(16−D)のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、その後、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のテトラヒドロフラン溶液を滴下することで、例示化合物(16)を得ることができる。
【0056】
本発明における、化合物(A)あるいは一般式(I)で表される化合物の含有量は、セルロース化合物に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましく、1〜12質量部であることがさらに好ましく、1〜5質量部であることが最も好ましい。
【0057】
化合物(A)あるいは一般式(I)で表される化合物は、100℃〜300℃の温度範囲で液晶相を発現することが好ましい。より好ましくは120℃〜200℃である。液晶相は、ネマチィク相またはスメクティック相が好ましい。
【0058】
(レターデーション制御剤B)
上記(制御剤A)の他に、好ましいレターデーション上昇剤として、少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物からなるものを挙げることができる。
【0059】
本発明の棒状化合物は、複数の芳香族環を直線的に連結した(直線的な分子構造を有する)化合物である。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造の角度が140°以上であることを意味する。
棒状芳香族化合物は、液晶性を示すことが好ましい。棒状芳香族化合物は、加熱により液晶性を示す(サーモトロピック液晶性を有する)ことがさらに好ましい。液晶相は、ネマチィク相またはスメクティック相が好ましい。
【0060】
棒状芳香族化合物は、下記式(I)で表されることが好ましい。
(I) Ar1−L1−Ar2
式(I)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環および芳香族性ヘテロ環を芳香族環として有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
【0061】
式(I)において、L1 は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、二価の飽和ヘテロ環基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
【0062】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましく、2乃至8であることがより好ましく、2乃至6であることがさらに好ましく、2乃至4であることがさらにまた好ましく、2(ビニレンまたはエチニレン)であることが最も好ましい。
二価の飽和ヘテロ環基は、3員乃至9員のヘテロ環を有することが好ましい。ヘテロ環のヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子またはゲルマニウム原子が好ましい。飽和ヘテロ環の例には、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、テトラヒドロチオフェン環、1,3−チアゾリジン環、1,3−オキサゾリジン環、1,3−ジオキソラン環、1,3−ジチオラン環および1,3,2−ジオキサボロランが含まれる。特に好ましい二価の飽和ヘテロ環基は、ピペラジン−1,4−ジイレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイレンおよび1,3,2−ジオキサボロラン−2,5−ジイレンである。
【0063】
組み合わせからなる二価の連結基の例を示す。
L−1:−O−CO−アルキレン基−CO−O−
L−2:−CO−O−アルキレン基−O−CO−
L−3:−O−CO−アルケニレン基−CO−O−
L−4:−CO−O−アルケニレン基−O−CO−
L−5:−O−CO−アルキニレン基−CO−O−
L−6:−CO−O−アルキニレン基−O−CO−
L−7:−O−CO−二価の飽和ヘテロ環基−CO−O−
L−8:−CO−O−二価の飽和ヘテロ環基−O−CO−
【0064】
式(I)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
【0065】
棒状芳香族化合物は、下記式(II)で表されることがさらに好ましい。
式(II) Ar1−L2−X−L3−Ar2
式(II)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環および芳香族性ヘテロ環を芳香族環として有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
【0066】
式(II)において、L2およびL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
【0067】
式(II)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
以下に、式(I)で表される棒状芳香族化合物の例を示す。
【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
【化21】

【0078】
具体例(1)〜(34)、(41)、(42)、(46)、(47)、(52)、(53)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)、(46)、(47)、(52)、(53)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
【0079】
【化22】

【0080】
前述したように、レターデーション上昇剤として用いる棒状芳香族化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0081】
(制御剤C)
本発明におけるレターデーション上昇剤としては、下記一般式(II)で表される化合物も好ましい。
一般式(II)
【0082】
【化23】

【0083】
一般式(II)中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。
4、R5、R6、R7、R8及びR9が各々表す置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0084】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
【0085】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0086】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、1,3,5−トリアジル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0087】
4、R5、R6、R7、R8及びR9で表される置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はハロゲン原子である。
【0088】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、特開2007−249180号公報の段落番号[0122]および[0123]に記載の化合物を挙げることができる。
【0089】
(制御剤D)
本発明におけるレターデーション上昇剤としては、さらに下記一般式(III)で表される化合物も好ましい。
一般式(III)で表される化合物について説明する。
一般式(III):
【0090】
【化24】

【0091】
上記一般式(III)中:
12は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
11は、各々独立に、単結合または−NR13−を表す。ここで、R13は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0092】
12が表す芳香族環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R12が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基が含まれる。
【0093】
12が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
11が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
【0094】
【化25】

【0095】
一般式(III)中、X11は単結合または−NR13−を表す。R13は独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
13が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)およびアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
【0096】
13が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様の置換基を挙げることができる。
13が表す芳香族環基および複素環基は、R12が表す芳香族環および複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基および複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様の置換基を挙げることができる。
【0097】
本発明で使用される一般式(III)で表されるレターデーション上昇剤の具体例としては、特開2007−249180号公報の段落[0087]〜[0113]に記載の化合物を挙げることができる。
【0098】
本発明に用いるレターデーション上昇剤は、上記レターデーション制御剤(A)〜(D)であることが好ましく、これらの化合物を単独で用いても混合して用いてもよい。
本発明に用いる保護膜Aは、上記レターデーション制御剤(A)、(B)、(D)から選ばれる少なくとも1種を含有し、他の種類を併用しても良い。制御剤(C)は必要に応じて添加することができる。保護膜Aにおいて、目的とするRe、Rthを得、かつそのレターデーション値を長波長ほど高レターデーションとするための好ましい制御剤の組み合わせは、制御剤(A)と(B)の組み合わせ、または制御剤(A)と(D)との組み合わせである。
本発明に用いる保護膜Bは上記レターデーション制御剤(A)〜(D)から選ばれる少なくとも1種を含有し、他の種類を併用しても良い。保護膜Bにおいて、目的とするRe、Rthを得、かつそのレターデーション値を長波長ほど低レターデーションとするためには、制御剤(C)または(D)を用いることが好ましく、(C)と(D)を併用してもよい。また、さらに保護膜BのRthの温度依存性を制御するためには、前記(C)、(D)に加えて制御剤(A)、(B)から選ばれる少なくとも1種を加えて用いることが好ましく、その際には制御剤(A)と(B)を併用することがより好ましい。
【0099】
本発明に用いられるレターデーション制御剤(A)〜(D)の添加量は保護膜の基材ポリマーに対して、それぞれ0.1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%である。レターデーション制御剤(A)〜(D)の総添加量は保護膜の基材ポリマーに対して、0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%である。
さらに、保護膜Aの基材ポリマーに対して、制御剤(A)の添加量は0.1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%であり、制御剤(B)〜(D)は、合算して0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%である。
また、保護膜Bの基材ポリマーに対して、制御剤(C)の添加量は0.1〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%であり、制御剤(A)、(B)、(D)は、合算して0.1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%である。
【0100】
本発明に用いる保護膜Aは、上記のレターデーション制御剤を含む基材ポリマーのフィルム、すなわちセルロースアシレートフィルムである。目的とするRe、Rthを得、かつそのレターデーション値を長波長ほど高レターデーションとするためには、上記のレターデーション制御剤の選択と添加量の最適化の他に、フィルムを製造するための工程条件を調整する必要がある。特に以下に述べる延伸条件によりそのレターデーション値を調整することができる。また、レターデーション値の波長依存性を調整するためには、セルロース分子鎖の配向制御、レターデーション制御剤の配向制御が必要であり、セルロース組成物ドープの流延以降の工程でのフィルムの乾燥速度、乾燥温度、延伸時の残留溶媒量等を制御することで調整できる。
【0101】
本発明に用いる保護膜Bは、上記のレターデーション制御剤を含む基材ポリマーのフィルム、すなわちセルロースアシレートフィルムである。目的とするRe、Rthを得、かつそのRth値を短波長ほど高レターデーションとするためには、上記のレターデーション制御剤の選択と添加量の最適化の他に、フィルムを製造するための工程条件を調整する必要がある。特に以下に述べる延伸条件によりそのレターデーション値を調整することができる。また、レターデーション値の波長依存性を調整するためには、セルロース分子鎖の配向制御、レターデーション制御剤の配向制御が必要であり、セルロース組成物ドープの流延以降の工程でのフィルムの乾燥速度、乾燥温度、延伸時の残留溶媒量等を制御することで調整できる。また、保護膜BのRthの温度依存性を制御するためには、セルロース内で環境温度に対して配向を変化させることができるレターデーション制御剤を用いることが有効である。特に、Rthに負の温度依存性を付与するためにはレターデーション制御剤の膜厚方向の配向を温度上昇に伴い低下させる必要がある。具体的な手段とをしては、レターデーション制御剤としてセルロース内で液晶性を示す化合物を用いることが挙げられる。
【0102】
次に、本発明において用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。
本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いても良い。セルロースアシレートフィルムが偏光板の液晶セル側に配置される保護膜である場合、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(vi)および(vii)を満たすことが好ましい。
式(vi) :2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
式(vii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
上記式(vi)および(vii)を満たすことにより、溶剤への溶解性が向上し、また光学異方性の湿度依存性を小さくすることができる。
DS2+DS3+DS6の総和は小さいほうが光学異方性の発現性が大きいが、光学異方性の湿度変化が大きくなり実用的に問題となる。逆にDS2+DS3+DS6の総和が大きいと、光学異方性の湿度変化は小さくなるが、光学異方性の発現性が小さくなる。したがって、光学異方性の発現性と湿度変化を両立させるためには、DS2+DS3+DS6の総和は2.2〜2.9が好ましく、2.4〜2.85がさらに好ましい。
光学異方性の発現性を損なわずに湿度変化を抑制するためには、さらにDS6/(DS2+DS3+DS6)を0.315以上とすることが好ましく、0.318以上とすることが更に好ましい。
本発明の液晶セルの視認側に設けられる保護膜Bは上記式(vi)および式(vii)を満たすことがとくに好ましい。
【0103】
前記の特定のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基および炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記式(viii)および(xiv)を満足するセルロースアシレートであってもよい。
式(viii):2.0≦A+B≦3.0
式(xiv) :0<B
ここで、式中AおよびBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
本発明では、水酸基のAとBとの置換度の総和(A+B)は、上記数式(viii)に示すように、2.0〜3.0であり、好ましくは2.2〜2.9であり、特に好ましくは2.40〜2.85である。また、Bの置換度は上記数式(xiv)に示すように、0より大きいことが好ましく、0.6以上であることがさらに好ましい。
A+Bが2.0未満であると、親水性が強くなり環境湿度の影響を受けやすくなる。
さらにBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましいが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。
また更に、セルロースアシレートの6位のAとBの置換度の総和が0.75以上であるのが好ましく、さらには0.80以上が、特には0.85以上が好ましい。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性、濾過性の好ましいフィルム調製用の溶液が作製でき、非塩素系有機溶媒においても、良好な溶液の調製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の調製が可能となる。
【0104】
前記炭素原子数3以上のアシル基(B)としては、脂肪族基でも芳香族炭化水素基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、好ましくはプロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などである。特に好ましくはプロピオニル、ブタノイル基である。また、プロピオニル基の場合には置換度Bは1.3以上であるのが好ましい。
【0105】
前記混合脂肪酸セルロースアシレートとしては、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0106】
(セルロースアシレートの合成方法)
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
【0107】
前記セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0108】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、前記セルロースアシレートとしては低分子成分を除去したものが有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロースアシレート100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており含水率2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
【0109】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記の特定のセルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ることができる。
【0110】
(添加剤)
本発明において前記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、染料、レターデーション(光学異方性)上昇剤、レターデーション(光学異方性)減少剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション上昇剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤および染料の少なくとも1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いることができ、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0111】
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
【0112】
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
【0113】
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%未満では添加効果を十分に発揮することができず、添加量が5質量%を超えると、フィルム表面へ紫外線吸収剤がブリードアウトする場合がある。
【0114】
また、紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶解時に同時に添加しても良いし、溶解後のドープに添加しても良い。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができ、好ましい。
【0115】
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
【0116】
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。また、前記可塑剤が、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートから選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としてはクエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。さらに赤外吸収剤としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。
また、本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。又インライン添加する紫外線吸収剤液に添加しても良い。特開平5−34858号公報に記載されているアントラキノン誘導体のような縮合環のキノン化合物の染料を用いることができる。
【0117】
これらの添加剤を添加する時期はドープ調製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層である場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これら添加剤の種類や添加量の選択によって、セルロースアシレートフィルムの動的粘弾性測定機(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御株式会社))で測定するガラス転移点Tgを70〜150℃に、引張試験機(ストログラフ−R2(東洋精機))で測定する弾性率を1500〜4000MPaすることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点Tgが80〜135℃、弾性率が1500〜3000MPaである。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板加工や液晶表示装置組立ての工程適性の点で、ガラス転移点Tg、弾性率を上記の範囲とすることが好ましい。
さらに添加剤については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
【0118】
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
前記二酸化珪素微粒子を用いる場合の使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
【0119】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1.5μmよりも大きいとヘイズが強くなり、0.2μmよりも小さいときしみ防止効果が小さくなる。
1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
【0120】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0121】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0122】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0123】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0124】
次に、本発明のセルロースアシレートが溶解される前記有機溶媒について記述する。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
(塩素系溶媒)
本発明のセルロースアシレートの溶液を調製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される他の有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
【0125】
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組み合せ例としては以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/5/5/7、質量部)、・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (70/10/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、などを挙げることができる。
【0127】
(非塩素系溶媒)
次に、本発明のセルロースアシレートの溶液を調製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0128】
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、非塩素系溶媒としては、前記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる、混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
【0129】
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0130】
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.12−16に詳細に記載されている。本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)、・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/10/5/7、質量部)、・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5、質量部)、・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/14/5/6、質量部)、・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、・酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
【0132】
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、・1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール (55/20/10/5/5/5、質量部)、などをあげることができる。
更に下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法。
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
【0133】
(セルロースアシレート溶液特性)
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを10〜30質量%の濃度で溶解させた溶液であるのが製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として調製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
【0134】
次に、本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液中のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが、溶剤への溶解性の点で好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が18万〜900万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜+4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜+2×10-4である。
【0135】
ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定する。測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過する。そして、ろ過した溶液の静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折率計で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定する。
【0136】
(ドープ調製)
次にセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製について述べる。セルロースアシレートの溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.22−25に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0137】
セルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が以下に述べる範囲であることが、流延しやすく好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率 G'(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であるのが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sで、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万である。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paが好ましい。
【0138】
本発明においては、前述の特定のセルロースアシレートを用いているので、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
【0139】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましい。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.6MPa以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更には1.0MPa以下、特に0.2MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調整されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜+70℃であり、より好ましくは−5〜+55℃である。
【0140】
(製膜)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法および設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製する際に、ドープをドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平07−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、および特開平02−208650号の各公報に記載の方法を本発明では用いることができる。
【0142】
(重層流延)
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0143】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤および紫外線吸収剤の少なくともいずれかを含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層にのみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0144】
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0145】
(乾燥)
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
ドープ膜が流延された金属支持体上の温度、金属支持体上に流延されたドープ膜に当てる乾燥風の温度および風量を調節することによっても、セルロースアシレートフィルムのRe値およびRth値を調整することができる。特にRth値は金属支持体上における乾燥条件の影響を大きく受ける。金属支持体の温度を高くする、またはドープ膜に当てる乾燥風の温度を高くする、乾燥風の風量を大きくする、つまりドープ膜に与える熱量を大きくすることによりRth値は低くなり、逆に熱量を小さくすることによりRthは高くなる。特に流延直後から剥ぎ取るまでの間の前半部の乾燥がRth値に対して大きく影響を与える。
【0146】
(延伸処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするために、製造したフィルムを延伸する。
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、延伸時のフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg〜Tg+20℃であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。縦延伸は0.1〜50%の延伸が行われる。好ましくは1〜10%の延伸が、特に好ましくは2から5%延伸を行う。横延伸は3〜100%の延伸が行われる。好ましくは10〜50%の延伸が、特に好ましくは20から40%延伸を行う。フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って横延伸の倍率を縦延伸の倍率よりも大きくすることが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量が2〜40%で好ましく延伸することができる。
面内の遅相軸の幅方向に対するバラツキを小さくするために、横延伸後に緩和工程を設けることが好ましい。緩和工程では緩和前のフィルムの幅に対して緩和後のフィルムの幅を100〜70%の範囲(緩和率0〜30%)に調節することが好ましい。緩和工程における温度はフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg−10〜Tg+20℃であることが好ましい。また緩和工程における残留溶剤量は2〜20%の範囲とすることが好ましい。
ここで、延伸工程におけるフィルムの見かけ上のTgは、残留溶剤を含んだフィルムをアルミパンに封入し、示差走査熱量計(DSC)で25℃から150℃まで20℃/分で昇温し、吸熱曲線をもとめることにより求めた。
【0147】
乾燥後得られる本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常5から500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用として特にVA液晶表示装置用としては40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られたセルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
【0148】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内レターデーションおよび膜厚方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA WR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)はフィルム法線方向を入射角0度とし、面内の遅相軸(KOBRA WRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して入射角−50°から+50°まで10°毎に波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA WRが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折率計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA WRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
全幅のRe(590)値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth(590)値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、およびRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
【0149】
本発明のセルロースアシレートフィルムのフィルム面内の遅相軸角度のバラつきは、ロールフィルムの基準方向に対して−2度から+2度の範囲にあることが好ましく、−1度から+1度の範囲にあることがさらに好ましく、−0.5度から+0.5度の範囲にあることが最も好ましい。ここで、基準方向とは、セルロースアシレートフィルムを縦延伸する場合はロールフィルムの長手方向であり、横延伸する場合はロールフィルムの幅方向である。
【0150】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値との差ΔRe(=Re10%RH−Re80%RH)が0〜10nmであり、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値との差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜30nmであるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃80%RHにおける平衡含水率が3.2%以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
【0151】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24hrの透湿度(膜厚80μm換算)が、400g/m2・24hr以上1800g/m2・24hr以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
ガラス転移温度の測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(ハ゛イフ゛ロン:DVA−225(アイティー計測制御株式会社製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
【0152】
弾性率の測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料10mm×150mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ―R2(東洋精機製))で、チャック間距離100mm、温度25℃、延伸速度10mm/分で行なった。
吸湿膨張係数の測定は、25℃80%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定値した値L80から25%10%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定した値L10から、次式にて求めた。
(L10−L80)/(80%RH−10%RH)×1000000
【0153】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが0.01〜2%であるのが、好ましい。ここで、ヘイズは、以下のようにして測定できる。
ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定する。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%であるのが、好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%であるのが、好ましい。
光弾性係数が、50×10-13cm2/dyne以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
【0154】
(偏光板)
次に、本発明に用いる偏光板について説明する。
本発明に用いる偏光板は、好ましくは、上述のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚、偏光子の保護膜として用いたものである。
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。そして、本発明では、少なくとも一方の保護膜として、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるのが好ましい。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。液晶セル側の保護膜と、液晶セルと反対側の保護膜の厚み、弾性率、吸湿膨張係数の関係を調整し、偏光板のカールを調節することができる。
【0155】
偏光子の偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子およびその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶セルへ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
【0156】
本発明のセルロースアシレートフィルムの偏光子への貼り合せ方は、 図6に示すように、偏光子の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルム(図中のTAC1)の遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。
なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板は、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じ、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られない為、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
偏光板のクロスニコルにおける色相a*およびb*は、液晶表示装置の黒表示状態における色味を適切な範囲に設定するために、それぞれ−1.0≦a*≦2.0かつ−1.0≦b*≦2.0が好ましく、−0.5≦a*≦1.5かつ−0.5≦b*≦1.5であることが更に好ましい。
偏光板の色相a*およびb*は、偏光板の可視域における分光透過率を分光光度計で測定し、測定した分光透過率に等色関数を乗じ積分することで三刺激値X、Y、Zを求め、CIE1976L***色空間の定義から求める。詳細は「色再現光学の基礎」((株)コロナ社)に記載がある。
具体的には分光光度計UV−3100(島津製作所(株)製)においてカラー測定モードにおいて、以下の測定条件にて透過率測定を行い偏光板色相を算出した。測定波長範囲:780〜380nm、スキャンスピード:中速、スリット幅:2.0nm、サンプリングピッチ:1.0nm、光源:C光源、視野:2°。ここで、2枚の偏光板はセル側保護膜同士を向かい合わせ、各々の透過軸が直交となるように組合せ、偏光板透過軸が分光光度計の試料室の法線方向(グレーティングの溝の方向)に対して45°となるように配置した。
【0157】
(表面処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.30−32に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0158】
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法または鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法で実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
【0159】
また、本発明に用いる偏光板は、偏光板の他方の側の保護膜の表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたものであるのが好ましい。すなわち、 図7に示すように偏光板の液晶表示装置への使用時において液晶セルと反対側に配置される保護膜(TAC2)には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましく、かかる機能性膜としてハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けるのが好ましい。なお、各層はそれぞれ別個の層として設ける必要はなく、例えば、防眩層を、反射防止層やハードコート層にその機能を持たせることにより反射防止層を反射防止層および防眩層として機能させることにより設けても良い。
本発明の偏光板に用いられる上記各機能層としては、特開2007−140497号公報の〔0158〕〜〔0159〕に記載の反射防止層が、同公報の〔0160〕〜〔0161〕に記載の光散乱層が、同公報の〔0162〕〜〔0163〕に記載の中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層(ARフィルム)が、同公報の〔0164〕〜〔0165〕に記載のハードコート層、帯電防止層に記載された技術を利用できる。
【0160】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、本発明の保護膜を有する偏光板を少なくとも1枚用いた液晶表示装置(第1形態)、本発明の保護膜を有する偏光板のいずれかをセル上下に1枚ずつ用いたVAモード、OCBモードおよびTNモード液晶表示装置(第2形態)、および本発明の保護膜を有する偏光板のいずれか1枚をバックライト側にのみ用いたVAモード液晶表示装置(第3形態)である。
すなわち、本発明の保護膜は光学補償シートとして有利に用いられる。また、本発明の保護膜を用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の保護膜は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching )、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、VAモードまたはOCBモードに好ましく用いることができる。
【0161】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード、CPAモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置としては、図8に示すように、液晶セル(VAモードセル)およびその両側に配置された二枚の偏光板(TAC1、偏光子およびTAC2からなる偏光板)からなるものが挙げられる。液晶セルは、特に図示しないが二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
【0162】
本発明の透過型液晶表示装置の態様では、図8のセルロースアシレートフィルムTAC1に本発明のシート状保護膜を用いることが好ましい。特に、光源側TAC1に本発明の保護膜A、観察者側TAC1に本発明の保護膜Bが用いられることが好ましい。液晶セルへの貼り合わせは、セルロースアシレートフィルム(TAC1)をVAセル側にすることが好ましい。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護膜のみに本発明の保護膜を用いた場合、これは、上側偏光板(観察側)、下側偏光板(バックライト側)のどちら側でもよい。ただし、両側の偏光板保護膜に本発明の保護膜を用いることがより好ましい実施形態である。
図8の保護膜(TAC2)は、市販のセルレートアシレートフィルムでも良く、本発明のセルロースアシレートフィルムより薄いことが好ましい。たとえば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカオプト株式会社製60μm)、TD80(富士写真フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0163】
以下、本発明を実施例に基づき基本的に説明するが、本発明は下記例に限定されない。
【0164】
<実施例1>
[視認側偏光板保護膜の作製(F−1〜F−8)]
(1)F−1の作製
下記表1に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−1を作製した。膜厚は70μとした。
【0165】
【表1】

【0166】
【化26】

【0167】
【化27】

【0168】
(光学性能の評価)
25℃60%RHで波長450nm、550nm、630nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。ここで本発明のフィルムにおいては平均屈折率を1.48としてRth(λ)を算出した。さらに、測定したフィルムをガラス板に粘着剤を介して貼り合わせ、膜面の温度が60℃に達するまで加熱した状態で同様に波長450nm、550nm、630nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。以下、F−1〜F−8まで同様の手法でレターデーション測定を行った。
【0169】
(2)F−2の作製
F−1と同様のセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−2を作製した。膜厚は92μとした。
【0170】
(3)F−3の作製
下記表2に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−3を作製した。膜厚は80μとした。
【0171】
【表2】

【0172】
【化28】

【0173】
(4)F−4の作製
レターデーション制御剤Cを2.6%とした以外はF−3と同じセルロースアシレート溶液を金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−3を作製した。膜厚は80μとした。
【0174】
(5)F−5の作製
市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士フイルム(株)製)をF−5とした。
【0175】
(6)F−6の作製
下記表3に記載の各成分を混合して、セルロースアシレートプロピオネート溶液を調製した。このセルロースアシレートプロピオネート溶液を、ドープ温度30℃で金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−6を作製した。膜厚は40μとした。
【0176】
【表3】

【0177】
(7)F−7の作製
厚さ100μのノルボルネン系フィルムゼオノアZF14(日本ゼオン(株)製)を150℃で15%二軸延伸することでF−7を作製した。膜厚は80μであった。平均屈折率を1.52とした以外はF−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
【0178】
(8)F−8の作製
下記表4に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムF−8を作製した。膜厚は80μとした。
【0179】
【表4】

【0180】
【化29】

【0181】
上記視認側偏光板保護膜F−1〜F−8のレターデーション測定結果を下記表5に示す。
【0182】
【表5】

【0183】
<実施例2>
[バックライト側偏光板保護膜の作製(R−1〜R−2)]
(1)R−1の作製
下記表6に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で3%縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて32%の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に7%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレートフィルムを製膜した。膜厚は80μとした。
【0184】
【表6】

【0185】
(光学性能の評価)
25℃60%RHで波長450nm,550nm,630nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。ここで本発明のフィルムにおいては平均屈折率1.48としてRth(λ)を算出した。
【0186】
(2)R−2の作製
下記表7に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で5%縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて25%の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に2%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレートフィルムを製膜した。膜厚は60μとした。R−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
【0187】
【表7】

【0188】
(3)R−3の作製
R−2と同様に流延したフィルムを幅方向に30%延伸したフィルムをR−3とした。膜厚は45μとした。R−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
【0189】
(4)R−4の作製
F6と同様に作製したセルロースアシレートプロピオネート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で125%縦方向に延伸し、セルロースプロピオネートフィルムを製膜した。膜厚は74μとした。
R−1と同様の手法でレターデーション値を測定した。
【0190】
上記バックライト側偏光板保護膜R−1〜R−4のレターデーション測定結果を下記表8に示す。
【0191】
【表8】

【0192】
<実施例3>
[偏光板の作製]
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ化カリウム濃度2質量%のヨウ化カリウム水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子Aを得た。
また、厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ化カリウム濃度12質量%のヨウ化カリウム水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子Bを得た。
表5および8に示した実施例1および2で作製した保護膜および市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士写真フイルム(株)製)を1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行った実施例1および2で作製した保護膜と市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士写真フイルム(株)製)を、偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板FH−1〜FH−8、RH−1〜RH−4を得た。偏光子と実施例1から2で作製した保護膜はR−4を除き、偏光子のMD方向と保護膜のMD方向が一致するように貼り合わせた。R−4はMD方向が直交するように貼り合わせた。
【0193】
<実施例4>
[液晶表示装置の作製]
市販の40インチVAモード液晶テレビ(SONY製)の表裏の偏光板および位相差板を剥して、液晶セルとして用いた。この液晶セルのΔnd値は、25℃では300nm、60℃では225nmであった。
下記表9の構成で、作製した偏光板FH−1〜FH−8およびRH−1〜RH−4を液晶セルに粘着剤を介して貼り合わせ、図9に示すように、液晶表示装置を作製した。なお、視認側の偏光板の透過軸が上下方向に、そして、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
【0194】
【表9】

【0195】
<実施例5>
[表示性能の測定]
測定機(EZ−contrast 160D,ELDIM社製)を用いて、25℃60%に調整された暗室内で黒表示および白表示の輝度および色度を測定し、黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比を算出した。さらに、暗室内の温度を60%に設定し同様にカラーシフトおよびコントラスト比を測定値から算出した。結果を表9に示した。黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比は以下の指標を用いた。
[コントラスト比]
方位角45°/135°/225°/315°での極角60°におけるコントラスト比の平均値をCRとした。
[カラーシフト]
極角60°で方位角0〜360°視野を回転させたときのu'v'色度図からu'の最大値、最小値をそれぞれu'(max),u'(min)、v'の最大値、最小値をそれぞれv'(max),v'(min)とし次式からΔu'v'を定義した。
Δu'v'={(u'(max)2- u'(min)2)+(v'(max)2-v'(min)2)}0.5
【0196】
表9に示した結果から、視認側のRthレターデーション値が温度に対して負の特性を示すFH−1〜FH−4を実装した液晶表示装置(構成1〜構成5 本発明)の60℃におけるコントラスト比および黒表示時のカラーシフトが、視認側のRthレターデーション値が温度に対して正の特性を示すFH−5〜FH−8を実装した液晶表示装置(構成6〜構成9 比較例)に対して良好な値を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】図1はVAモードの液晶表示装置の構成例およびパネル法線方向にパネルに入射する場合を説明する概略模式図である。
【図2】図2はVAモードの液晶表示装置の構成例およびパネル斜め方向にパネルに入射する場合を説明する概略模式図である。
【図3】図3は本発明の液晶表示装置の一態様の構成例を説明する概略模式図である。
【図4】図4は本発明に用いられる光学補償フイルムの一例についての光学特性を示すグラフである。
【図5】図5は本発明の液晶表示装置の一例における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図6】図6は本発明の偏光板の製造時におけるセルロースアシレートフィルムの貼り合わせ方法を示す模式図である。
【図7】図7は本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は本発明の実施例における偏光版の断面構造を模式的に示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルの両側に、偏光子の保護膜を有する一対の偏光板を直交配置した液晶表示装置であって、偏光板の液晶セル側に配置される保護膜の少なくとも一枚のRth(λ)が環境温度に対して負の特性を有することを特徴とする液晶表示装置(ただし、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。)。
【請求項2】
前記液晶表示装置の一方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて増大し、他方の偏光板の液晶セル側に配置される保護膜BのRthB(λ)が波長400〜700nmにおいて波長が大きくなるにつれて減少するとともに環境温度に対して負の特性を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置(ただし、Reは面内レターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。)。
【請求項3】
前記保護膜AのReA(λ)およびRthA(λ)、保護膜BのReB(λ)およびRthB(λ)および液晶セルのΔndが下記式を満たすことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
(i)0.5≦RthA(550)/ReA(550)≦10
(ii)30≦RthA(550)≦400
(iii)0≦ReB(550)≦20
(iv)0≦RthB(550)≦150
(v)200≦Δnd≦800
(ただし、式中Δnは液晶の異常光屈折率neと常光屈折率noとの差(ne−no)であり、dは液晶セルのセルギャップ(単位:nm)である。)
【請求項4】
前記保護膜Bが液晶セルの視認側の基板上に配置されることを特徴とする請求項2または3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記保護膜Bが、セルロースを構成するグルコース単位の水酸基を炭素原子数が2以上のアシル基で置換して得られたセルロースアシレートから実質的になるフィルムであって、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記数式(vi)および(vii)を満たすセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。
数式(vi): 2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
数式(vii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
【請求項6】
前記保護膜Bが、可塑剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、染料、およびマット剤から選択された1種以上を含有していることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記保護膜Bが、棒状化合物または円盤状化合物のレターデーション制御剤を1種以上含有していることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記レターデーション制御剤が液晶性を示す化合物であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶セルが垂直配向モードであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−198822(P2009−198822A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40508(P2008−40508)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】