説明

液晶表示装置

【課題】入射光を選択的に反射する液晶表示装置に大面積の光電変換素子を搭載した、表示色特性が良好で、製造性に優れた液晶表示装置の実現。
【解決手段】入射光を選択的に反射する液晶12B,12G,12Rを対向基板間に封止した液晶表示素子10と、液晶表示素子の背面側に設けられた光電変換素子40と、液晶表示素子10と光電変換素子40との間に設けられ、光電変換素子40の表面反射色に対応した分光吸収特性を有する光学フィルタ31と、を備える液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,各企業及び各大学等において、電子ペーパーの開発が盛んに進められている。電子ペーパーが期待されている応用市場として、電子ブックを筆頭に、モバイル端末機器のサブディスプレイやICカードの表示部等、多用な応用携帯機器が提案されている。電子ペーパーの有力な表示方式の一つに、コレステリック相が形成される液晶組成物(コレステリック液晶、あるいはカイラルネマティック液晶と称される。ここでは、コレステリック液晶に統一して説明する。)を用いた表示素子がある。コレステリック液晶は、半永久的な表示保持特性(メモリ性)、鮮やかなカラー表示特性、高コントラスト特性、および高解像度特性等の優れた特長を有している。さらに、コレステリック液晶表示装置は、可撓性を有するフレキシブル表示装置を実現できる。
【0003】
コレステリック液晶表示装置では、データ電極駆動回路および走査電極駆動回路は、表示の書き換え時のみ駆動電圧を出力するが、表示を維持する時には駆動電圧を出力する必要がないため低消費電力である。そのため、コレステリック液晶表示装置は、商用交流電源(例えば、家庭用AC100V)コンセントなどに接続せずに、バッテリーなどの携帯可能な電源ユニットを設けて駆動することができる。
【0004】
一方、液晶表示装置に太陽電池型パネルなどの光電変換素子を搭載して、電源ユニットを充電することにより、携帯性を一層向上することができることが知られている。太陽電池型パネルの起電力は、パネルの面積に依存する。そこで、可撓性のある太陽電池型パネルをフレキシブルディスプレイの額縁部分に設置することが提案されている。しかし、額縁部分の面積を大きくすると、フレキシブルディスプレイの表示面以外のサイズが大きくなるという問題が生じる。
【0005】
また、反射型液晶表示パネルまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイの表示面の裏側に、太陽電池型パネルの受光面を設け、受光面を反射面として利用することが提案されている。これにより受光面の面積を大きくできる。しかし、この構成では、太陽電池型パネルの表面反射色がディスプレイの表示色に直接影響する。そこで、表示面と受光面の間に選択的反射層を設け、ディスプレイに対する反射面の反射色特性を所望の特性にすることが提案されている。さらに、反射型液晶表示パネルの下側電極と太陽電池型パネルの上側電極を共通化することも提案されている。その場合、カラー表示を行う場合に三原色に対応した異なる太陽電池をそれぞれ並列に設け1画素をつくるため、高い画素を有するフレキシブルディスプレイになればなるほど。膨大な数の太陽電池を用意する必要があり、その構成が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−249670号公報
【特許文献2】特開2008−134661号公報
【特許文献3】WO2006/103738A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コレステリック液晶表示素子のような入射光を選択的に反射する液晶を対向基板間に封止した液晶表示素子と、光電変換素子とを積層した表示装置において、ディスプレイのサイズを大きくすることなく大面積の光電変換素子を搭載することが望まれている。そこで、液晶表示素子の表示面と光電変換素子の受光面を重ねることが考えられるが、その場合でも光電変換素子の表面反射色が表示に影響せずに良好な表示色特性を実現することが要求される。
【0008】
実施形態によれば、入射光を選択的に反射する液晶表示装置に大面積の光電変換素子を搭載した、表示色特性が良好で、製造性に優れた液晶表示装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の観点によれば、入射光を選択的に反射する液晶を対向基板間に封止した液晶表示素子と、液晶表示素子の背面(裏面)側に設けられた光電変換素子と、液晶表示素子と光電変換素子との間に設けられ、光電変換素子の表面反射色に対応した分光吸収特性を有する光学フィルタと、を備える液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記の観点によれば、光電変換素子は液晶表示素子の背面側に設けられるので大面積化が可能であり、光学フィルタにより、光電変換素子の表面反射色を、可視波長域に渡って均一に低反射にできるので、裏面に光吸収層を設けた場合に近い表示色特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は,コレステリック液晶を用いたフルカラー表示が可能な液晶表示素子の一般的な断面構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、液晶表示装置の表示素子の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、実施例1の液晶表示装置の断面を含む概略構成を示す図である。
【図4】図4は、単結晶シリコン型の光電変換素子の反射スペクトルを示す図である。
【図5】図5は、単結晶シリコン型の光電変換素子上に積層する最も理想的な光学フィルタの透過スペクトルの例を示す図である。
【図6】図6は、透明基板に塗布する顔料の特性例を示す図である。
【図7】図7は、実施例1の液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図8】図8は、光学フィルタの選択、および表示素子と光学フィルタと光電変換素子の貼り付けを説明する図である。
【図9】図9は、コレステリック液晶表示素子のB層、G層およびR層がプレーナ状態の時の分光反射特性を示す図である。
【図10】図10は、表示素子を利用して簡易的に光電変換素子の表面反射色を測定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態を説明する前に、一般的なコレステリック液晶表示装置について説明する。
図1は,コレステリック液晶を用いたフルカラー表示が可能な液晶表示素子の一般的な断面構成を模式的に示している。表示素子10は、表示面から順に、青(B)表示パネル部10Bと、緑(G)表示パネル部10Gと、赤(R)表示パネル部10Rとが積層された構造を有している。図示において、上方の基板側が表示面であり、外光(実線矢印)は基板上方から表示面に向かって入射するようになっている。なお、基板上方に観測者の目及びその観察方向(破線矢印)を模式的に示している。
【0013】
B表示パネル部10Bは、一対の上下基板11B、13Bと、基板間に封入された青(B)用液晶の層12Bと、基板上の電極に所定のパルス信号を印加してB液晶層12Bに所定のパルス電圧を印加する青用駆動回路18Bと、を有している。G表示パネル部10GおよびR表示パネル部10Rも同様の構成を有するが、反射中心波長が異なる。G表示パネル部10GおよびR表示パネル部10Rは、緑用駆動回路18Gおよび赤用駆動回路18Rにより駆動される。R表示パネル部の下基板13Rの裏面には光吸収層17が配置されている。
【0014】
各R、G、R用液晶層に用いられているコレステリック液晶は、ネマティック液晶にキラル性の添加剤(カイラル材ともいう)を数十wt%の含有率で比較的大量に添加した液晶混合物である。ネマティック液晶にカイラル材を比較的大量に含有させると、ネマティック液晶分子を強く螺旋状に捻ったコレステリック相を形成することができる。このためコレステリック液晶はカイラルネマティック液晶とも称される。
【0015】
コレステリック液晶は双安定性(メモリ性)を備えており、液晶に印加する電界強度の調節によりプレーナ状態、フォーカルコニック状態、またはそれらの混合による中間的な状態のいずれかの状態をとることができ、一旦プレーナ状態、フォーカルコニック状態、またはそれらの中間的な状態になると、その後は無電界下においても安定してその状態を保持する。プレーナ状態は、例えば、上下基板間に所定の高電圧を印加して液晶層に強電界を与え、液晶をホメオトロピック状態にした後、急激に電界をゼロにすることにより得られる。
【0016】
フォーカルコニック状態は、例えば、上記高電圧より低い所定電圧を上下基板間に印加して液晶層に電界を与えた後、急激に電界をゼロにすることにより得られる。あるいは、プレーナ状態から徐々に電圧を加えることで得ることができる。
プレーナ状態とフォーカルコニック状態の中間的な状態は、例えば、フォーカルコニック状態が得られる電圧よりも低い電圧を上下基板間に印加して液晶層に電界を与えた後、急激に電界をゼロにすることにより得られる。プレーナ状態とフォーカルコニック状態の中間の状態においては,その状態に応じて反射光と透過光の割合を調整できるので,反射光の強度を可変できる。
【0017】
このように,コレステリック液晶では、螺旋状に捻られた液晶分子の配向状態で光の反射量を制御することができる。液晶分子の配向状態を変化させるには、前述したとおり、液晶表示素子を封入した上下基板に電圧を印加する必要がある。
【0018】
図2は、液晶表示装置の表示素子10の概略構成を示している。図2に示すように、B表示部10Bの下基板13BのB用液晶層12Bの側には、図3の図中上下方向に延びる複数の帯状のデータ電極14が並列して形成されている。また、上基板11BのB用液晶層12Bの側には、図2の図中左右方向に延びる複数の帯状の走査電極15が並列して形成されている。データ電極14、および走査電極15は、透明電極のパターニングにより、所望のピッチで形成される。G表示パネル部10GおよびR表示パネル部10Rも同様の構成を有する。
【0019】
図2に示すように、上下基板の電極形成面を法線方向に見て、両電極は、互いに交差して対向配置されている。両電極の各交差領域がそれぞれピクセル(画素)となる。ピクセルがマトリクス状に配列されて表示画面を形成している。
【0020】
上基板11(11B、11G、11R)には、複数の走査電極15を駆動する走査電極用ドライバICが実装された走査電極駆動回路21が接続されている。また、下基板13(13B、13G、13R)には、複数のデータ電極を駆動するデータ電極用ドライバICが実装されたデータ電極駆動回路22が接続されている。これらの駆動回路は、制御回路23から出力された所定の信号に基づいて、走査信号やデータ信号を所定の走査電極15あるいはデータ電極14に出力するようになっている。
以上、コレステリック液晶表示装置の一般的な構成を説明したが、その構成は広く知られているので、これ以上の説明は省略する。
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
図3は、実施例1の液晶表示装置の断面を含む概略構成を示す図である。図3に示すように、実施例1の液晶表示装置は、表示素子と、表示素子の背面側に光学フィルタ31を介して貼り合わせた光電変換素子40と、充電回路51と、蓄電装置52と、駆動・制御回路53と、を有する。表示素子の表示面と光電変換素子40の受光面はほぼ同じサイズであることが望ましく、それに応じて光学フィルタ31も表示面および受光面と同じサイズを有する。充電回路51、蓄電装置52および駆動・制御回路53は、図3では光電変換素子40の裏面に設けられているが、これに限定されず、どこに設けてもよい。
【0023】
表示素子は、積層した青(B)表示パネル部10B、緑(G)表示パネル部10Gおよび、赤(R)表示パネル部10Rを有し、図1で説明したコレステリック液晶表示素子と同じものであるが、光吸収層17は設けられていない。また、駆動・制御回路53は、図2に示した。走査電極駆動回路21、データ電極駆動回路22および制御回路23に対応する。
【0024】
光学フィルタ31は、光電変換素子40の表面反射色を吸収し、その色以外の色を透過させる。光学フィルタ31は、可視光領域の反射が略フラットになるように、さらに好ましくは,可視光領域の反射が可能な限り低くなるようなフィルタが望ましい。言い換えれば、光学フィルタ31は、光電変換素子40の表面反射色とは異なる色を透過させる特性を有する。
【0025】
光学フィルタ31は、光学フィルタ31の下層に設けられる光電変換素子40の表面反射色をあらかじめ測定しておき、その測定した色を吸収し、他の色を透過させる波長吸収特性(波長透過特性)のものを選択する。光学フィルタ31は、透明な素材(フィルム基板、ガラス基板等)で形成された基板に、顔料、染料を表面に塗布するか、光吸収物質をガラス中に分散させることで容易に製造することができる。
【0026】
例えば、単結晶シリコン型の光電変換素子40は、紺色の表面反射色を有することが多く、アモルファスシリコン型の光電変換素子40は、茶色の表面反射色を有している。そのため、単結晶シリコン型の光電変換素子40であれば、紺色系、特に420nm-500nm付近の波長を吸収する光学フィルタ31を用いる。
【0027】
図4は、単結晶シリコン型の光電変換素子40の反射スペクトルを示す。図5は、単結晶シリコン型の光電変換素子40上に積層する最も理想的な光学フィルタ31の透過スペクトルの例を示す。図5に示すように、380nmから780nmまでの可視光領域にて、単結晶シリコン型の光電変換素子40で反射される光を吸収するような特性を持つフィルタであれば十分に光学フィルタ31として利用できる。
【0028】
図6は、透明基板に塗布する顔料の特性例を示す図である。実線がフタロシアニングリーンの透過特性を、破線がフタロシアニンブルーの透過特性を示す。いずれの顔料も、400nmから500nmの波長域の透過率が低く、単結晶シリコン型の光電変換素子40に入射する400nmから500nm付近の光を減少させる。これにより、単結晶シリコン型の光電変換素子40が400nmから500nm付近で高い反射率で光を反射しても、光学フィルタ31と透過して再び表示素子に戻る光を低減し、全可視波長域で比較的一様な反射率になる。
【0029】
アモルファスシリコン型など、単一波長でない表面反射色を有する光電変換素子40であれば、複数の顔料や染料などを組み合わせることで、その表面反射色に含まれる波長を吸収する光学フィルタを形成することが可能である。
【0030】
光電変換素子40は、光学フィルタ31側から順に、反射防止膜45、n型層44、p型層43、p+層42、裏面電極41が積層されて形成されている。この光電変換素子40は、pn接合のシリコン単結晶型の光電変換素子の例を示したものであるが、光電変換素子は特に限定されるものではなく、既存の光電変換素子であればなんでも構わない。一般的な光電変換素子40は、大別すると、シリコン半導体によるものと、化合物半導体によるものがある。シリコン半導体には、単結晶、多結晶の種類を有する結晶系のものと、アモルファスシリコンによる非結晶系のものと、がある。また、化合物半導体によるものでは、III ―V族と、II―IV族(多結晶薄膜)、その他がある。
【0031】
充電回路51および蓄電装置52は、光電変換素子40と組み合わせて太陽電池パネルを構成する。充電回路51および蓄電装置52は、一般の太陽電池パネルに使用されているものが使用可能である。
【0032】
図7は、実施例1の液晶表示装置の概略構成を示している。光電変換素子40、充電回路51および蓄電装置52を除く部分は、図2に示した一般的な液晶表示装置と同じ構成である。実施例1の液晶表示装置は、光電変換素子40が発生した電力を、充電回路51が蓄電装置52に蓄積する。蓄電装置52に蓄電された電力は、表示素子の表示を書換える時に、表示素子の走査電極駆動回路21、データ電極駆動回路22および制御回路23に供給される。なお、表示素子は、図示していないが通信回路などを備える場合があり、そのような場合には、必要に応じてそのような回路に蓄電装置52から電力を供給する。また、光電変換素子40が表示素子の表示の書き換えに必要な電力以上の電力を発生する場合には、蓄電装置52に蓄電された電力を随時外部に供給して、太陽電池としての機能を実行するようにしてもよい。
【0033】
以上説明したように、実施例1の液晶表示装置は、コレステリック液晶表示素子と光電変換素子とを積層するので、装置のサイズを大きくすることなく光電変換素子を搭載できる。さらに、実施例1の液晶表示装置は、光電変換素子の表面反射色が表示に影響しない色特性を有し、光電変換素子を液晶表示素子の下に積層するという簡単な構成であるため製造性に優れた、カラー表示可能な液晶表示装置(カラー電子ペーパー)である。
【0034】
実施例1の液晶表示装置では、光電変換素子40の表面を光吸収層として利用する。そのため、光学フィルタ31に光電変換素子40の表面反射色を打ち消すような色特性(分光特性)を持たせる。光電変換素子40の表面反射色は、光電変換素子40に吸収されて起電力の発生に寄与しない波長であると考えられる。そのため、光学フィルタ31でこのような波長の光を吸収しても、光電変換素子40の起電力の低下は小さいと考えられる。
【0035】
次に、実施例1の液晶表示装置の製造方法を説明する。
まず、縦横の長さが10cm×8cmの大きさに切断した2枚のポリカーボネート(PC)フィルム基板上にIZO透明電極14,15を形成してエッチングによりパターニングし、0.24mmピッチのストライプ状の電極を形成する。ストライプ状の電極は、320×240ドットのQVGA表示ができるように、2枚のPCフィルム基板上には、それぞれ320本または240本のストライプ状の電極が形成される。
【0036】
次に電極が形成された基板を洗浄し、配向膜としてポリイミドを厚さ50nmで塗布し、150℃、1時間で焼成し、その後、レーヨン製の布でラビングを行う。ラビングの方向は、2枚の基板を重ね合わせたときに直交する方向(クロスラビング)とする。
【0037】
次に、一方のPCフィルム基板上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ工程を経てレジストをパターニングし、150℃で120分焼成することで、高さ5μmの構造体を作製する。次に、一方のPCフィルム基板上の周縁部にエポキシ系のシール材をディスペンサを用いて塗布する。次いで、2枚のPCフィルム基板を貼り合わせて、1kg/cm2の力で加圧しながら160℃で1時間加熱する。これにより、シール剤が硬化し両基板と接着する。また同時に構造体も両基板と接着するので、液晶を注入するための均一な空隙ができる。
【0038】
次に、真空注入法により、注入口から、B用、G用、R用のコレステリック液晶を注入した後、エポキシ系の封止材で注入口を封止する。また、各表示素子に駆動用のドライバICを接続し、表示データに基づいた駆動制御を行う。 以上により、3種類の液晶にて、明るいカラー表示が可能となるコレステリック液晶表示素子が完成する。
【0039】
さらに、下層に積層する光学フィルタは、あらかじめ光電変換素子の色を測定しておき、その色を吸収するフィルタを作製する。このフィルタは、顔料や染料をガラスやフィルムからなる基板に混ぜあわせる、あるいは、顔料、染料による樹脂を基板に成膜するなどの周知技術にて作製可能である。
【0040】
次に、光学フィルタの下層に位置する光電変換素子の製造方法を述べる。ここでは、一例として、シリコン太陽電池の一般的な製造方法を述べることとする。まず、p型シリコン基板の受光面側にn型不純物原子をドーピングし、n型不純物領域であるn層を形成し、p層とn層との間にpn接合面を形成する。つぎに、n層上にパッシベーション膜および反射防止膜を形成する。反射防止膜は複数層とする場合があり、パッシベーション膜を兼ねる場合もある。また、パッシベーション方法としては、パッシベーション膜を形成せず、水素プラズマ処理によりパッシベーション効果を発揮させることもできる。その後、フォトリソグラフィにより反射防止膜などをパターン化し、n層と接続するように表面電極を形成する。つぎに、受光面と反対側の面である非受光面に、高濃度のp型不純物領域であるp+層を形成し、p+層の上に裏面電極を形成すると、シリコン太陽電池を製造することができる。かかる構造を有するシリコン太陽電池が光を受けると、pn接合面に光起電力が生じ、この起電力により表面電極および裏面電極を介して負荷に電流が供給される。
【0041】
表示素子と、光学フィルタ、光電変換素子は接着剤などを用いて接着され、光電変換素子の表面電極ならびに裏面電極から表示素子の駆動回路へ電源が供給されるよう配線される。
【0042】
図8は、光学フィルタ31の選択、および表示素子と光学フィルタと光電変換素子の貼り付けを説明する図である。
一般に、光電変換素子40は、光電変換の材料が決まれば略同一の表面反射色を有する。また、実用化されている光電変換の材料の種類も限られる。そこで、光電変換の材料の種類に応じてあらかじめ適切な分光透過率を有する光学フィルタを準備しておき、光電変換素子40の光電変換材料に応じて光学フィルタを選択して使用する。
【0043】
なお、屋根や壁に設置済みの既存の太陽光発電(電池)パネルを、新たに表示素子として利用する場合が考えられる。その場合、太陽光発電パネル(光電変換素子40)は、経年変化により、表面反射色が変化している場合がある。このような場合には、図8の(A)に示すように、分光反射計60で光電変換素子40の表面反射色を測定する。分光反射計60は、例えば、白色光を光電変換素子40の表面に照射し、表面からの反射光を受光し、受光した光をカラーフィルタで分光して各色の反射光の強度を測定する。そして、各色の強度から、光電変換素子40の表面反射色を算出する。複数の波長において狭い波長幅を有する複数のカラーフィルタを使用すれば、分光反射率が測定できる。また、RGBの3色のカラーフィルタを使用すれば、表面反射色と平均反射率が測定できる。
【0044】
光電変換素子40の表面の反射色にむらがある場合があるので、図8の(A)に示すように、分光反射計60を光電変換素子40の表面に沿って移動し、光電変換素子40の表面の複数箇所について測定を行い、結果を平均化することが望ましい。
【0045】
そして、あらかじめ準備しておく光学フィルタの種類を増加させておき、測定した光電変換素子40の表面反射色に適した光学フィルタを選択する。さらに、使用する分光反射計60を限定し、所定の分光特性を有する光学フィルタに型番を付しておき、分光反射計60は測定結果に基づいて適切な分光特性を有する光学フィルタの型番を出力するようにしてもよい。取り付け業者は、指示された型番の光学フィルタを設置する。
【0046】
図8の(B)に示すように、光学フィルタ31は、両面に接着剤層32が塗布され、剥離紙33が表面に貼られた状態で供給される。接着剤は、例えば、シリコーン系樹脂のものが使用できる。表示素子10と光学フィルタ31と光電変換素子40を貼り合わせる場合には、光学フィルタ31の両面の剥離紙33を剥がした上で、図8の(C)のように表示素子10と光電変換素子40を、光学フィルタ31に貼り合わせる。
【0047】
光学フィルタ31を、表示素子10と光電変換素子40を貼り合わせる接着剤層を実現することも可能である。この場合は、光吸収物質を分散させ、層状にした時に所望の分光透過率が得られるように調整した接着剤34を、図8の(D)に示すように、光電変換素子40の受光面上に滴下し、フィルム状の表示素子10を貼り付ける。これにより、接着剤が、表示素子10と光電変換素子40の間に光学フィルタ31を形成する。この場合、接着剤の厚さを管理することが重要である。
【0048】
図8の(A)では、光電変換素子40の表面反射色を測定するのに分光反射計60を使用したが、表示素子10を利用して簡易的に光電変換素子40の表面反射色を測定することができる。
【0049】
図9は、コレステリック液晶表示素子のB層、G層およびR層がプレーナ状態の時の分光反射特性を示す図である。言い換えれば、表示素子10は、分光フィルタとして機能する。
【0050】
図10は、表示素子10を利用して簡易的に光電変換素子40の表面反射色を測定する処理を示すフローチャートである。
【0051】
S11では、表示素子10を光電変換素子40の受光面に重ねて配置し、全面に一様な光を照射する。晴天で、測定中に太陽が雲などの陰にならない条件であれば、太陽光の下で作業を行えばよい。そして、B層、G層およびR層を黒表示に対応するフォーカルコニック状態にする。この時、表示素子10は、全可視波長域に渡ってもっとも光を透過する状態になる。
【0052】
S12では、光電変換素子40の出力(起電力)を読み取って記録する。光電変換素子40の出力は、この状態で最大になる。
【0053】
S13では、B層、G層およびR層を白表示に対応するプレーナ状態にする。この時、表示素子10は、全可視波長域に渡ってもっとも光を反射する状態、言い換えれば、もっとも光を透過しない状態になる。
【0054】
S14では、光電変換素子40の出力(起電力)を読み取って記録する。光電変換素子40の出力は、この状態で最小になる。
【0055】
S15では、B層をプレーナ状態に、G層およびR層をフォーカルコニック状態にする。この時、表示素子10は、青色、すなわち可視波長域の短波長側の透過率が低く、緑色および赤色、すなわち可視波長域の中間波長から長波長を透過する状態になる。
【0056】
S16では、光電変換素子40の出力(起電力)を読み取って記録する。この状態で、光電変換素子40の出力の出力変化が少ない場合には、光電変換素子40は青色の光、すなわち短波長側の光を吸収せず、大部分を反射すると考えられる。言い換えれば、光電変換素子40の表面反射色には青色が多く含まれると考えられる。逆に、この状態で、光電変換素子40の出力の出力変化が大きい場合には、光電変換素子40は青色の光、すなわち短波長側の光を吸収し、反射量は少ないと考えられる。言い換えれば、光電変換素子40の表面反射色には青色はあまり含まれないと考えられる。
【0057】
S17では、G層をプレーナ状態に、B層およびR層をフォーカルコニック状態にする。この時、表示素子10は、緑色、すなわち可視波長域の中間波長の透過率が低く、青色および赤色、すなわち可視波長域の短波長と長波長を透過する状態になる。
【0058】
S18では、光電変換素子40の出力(起電力)を読み取って記録する。この状態で、光電変換素子40の出力の出力変化が少ない場合には、光電変換素子40は緑色の光、すなわち中間波長の光を吸収せず、大部分を反射すると考えられる。言い換えれば、光電変換素子40の表面反射色には緑色が多く含まれると考えられる。逆に、この状態で、光電変換素子40の出力の出力変化が大きい場合には、光電変換素子40は緑色の光、すなわち中間波長の光を吸収し、反射量は少ないと考えられる。言い換えれば、光電変換素子40の表面反射色には緑色はあまり含まれないと考えられる。
【0059】
S19では、R層をプレーナ状態に、B層およびG層をフォーカルコニック状態にする。この時、表示素子10は、赤色、すなわち可視波長域の長波長側の透過率が低く、青色および緑色、すなわち可視波長域の短波長と中間波長を透過する状態になる。
【0060】
S20では、光電変換素子40の出力(起電力)を読み取って記録する。この状態で、光電変換素子40の出力の出力変化が少ない場合には、光電変換素子40は赤色の光、すなわち長波長の光を吸収せず、大部分を反射すると考えられる。言い換えれば、光電変換素子40の表面反射色には赤色が多く含まれると考えられる。逆に、この状態で、光電変換素子40の出力の出力変化が大きい場合には、光電変換素子40は赤色の光、すなわち長波長の光を吸収し、反射量は少ないと考えられる。言い換えれば、光電変換素子40の表面反射色には赤色はあまり含まれないと考えられる。
【0061】
S21では、S12,S14,S16,S18,S20で記録した光電変換素子40の出力から光電変換素子40の表面反射色、すなわち光電変換素子40の表面反射の分光特性を求める。この時、S12およびS14での出力から、黒表示と白表示の時の反射レベルも求める。
【0062】
S22では、表面反射色、すなわち光電変換素子40の表面反射の分光特性の逆数から所望の光学フィルタ特性を求め、黒表示と白表示の時の反射レベルも考慮して光学フィルタを選定する。
【0063】
なお、B層、G層およびR層のうち2層をプレーナ状態に、残りの一層をフォーカルコニック状態にして光電変換素子40の出力を記録する工程を加えてもよい。
【0064】
以上説明したように、実施形態によれば、簡単な構成で、太陽電池型パネルの色味が表示色に影響を与えない、自己発電型のカラー液晶表示装置(電子ペーパー)を実現することができる。実施形態の液晶表示装置であれば、屋根に搭載された太陽光発電パネルをカラー表示可能なディスプレイとして利用可能であり、太陽光発電パネルを広告媒体としても利用することが可能となる。また、将来的に構成される部品が軽量化した際には、鞄などにも貼り付ける形式の自己発電機能を有する液晶表示装置を実現できる。
【0065】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【0066】
以下、実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
入射光を選択的に反射する液晶を対向基板間に封止した液晶表示素子と、
前記液晶表示素子の背面側に設けられた光電変換素子と、
前記液晶表示素子と前記光電変換素子との間に設けられ、前記光電変換素子の表面反射色に対応した分光吸収特性を有する光学フィルタと、を備えることを特徴とする液晶表示装置。
(付記2)
前記光学フィルタは、前記光電変換素子の表面反射色の透過率が低く、前記光電変換素子の表面反射色と異なる色の透過率が高い付記1記載の液晶表示装置。
(付記3)
前記液晶表示素子は、反射状態時の反射色が青色、緑色、赤色である3層のパネルを備える付記1または2記載の液晶表示装置。
(付記4)
前記液晶表示素子の液晶材料は、コレステリック液晶またはカイラルネマティック液晶である付記1から3のいずれか記載の液晶表示装置。
(付記5)
前記光電変換素子は、前記液晶表示素子の背面側全域に形成されている付記1から4のいずれか記載の液晶表示装置。
(付記6)
前記光電変換素子の起電力により充電される蓄電装置を備え、
前記液晶表示素子は、前記蓄電装置に蓄電された電力で駆動される付記1から5のいずれか記載の液晶表示装置。
(付記7)
前記光学フィルタは、着色された透明接着剤層である付記1から6のいずれか記載の液晶表示装置。
(付記8)
入射光を選択的に反射する液晶を対向基板間に封止した液晶表示素子を、受光面を有する光電変換素子上に貼り付ける貼付方法であって、
前記光電変換素子の表面反射色を測定し、
測定した前記表面反射色に対応した分光吸収特性を有する光学フィルタを選択し、
前記液晶表示素子を、前記光学フィルタを介して前記光電変換素子上に貼り付ける、ことを特徴とする貼付方法。
(付記9)
前記光学フィルタは、着色された透明接着剤層である付記8記載の貼付方法。
(付記10)
前記液晶表示素子は、反射状態時の反射色が青色、緑色、赤色である3層のパネルを備え、
前記光電変換素子の表面反射色は、
前記光電変換素子の表面上に前記液晶表示素子を配置して、前記3層のパネルの反射状態を変化させた時の前記光電変換素子の出力を測定することにより行う付記8または9記載の貼付方法。
【符号の説明】
【0067】
10 表示素子
10B 青(B)層
10G 緑(G)層
10R 赤(R)層
21 走査電極駆動回路
22 データ電極駆動回路
23 制御回路
31 光学フィルタ
40 光電変換素子
51 充電回路
52 蓄電装置
53 駆動・制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を選択的に反射する液晶を対向基板間に封止した液晶表示素子と、
前記液晶表示素子の背面側に設けられた光電変換素子と、
前記液晶表示素子と前記光電変換素子との間に設けられ、前記光電変換素子の表面反射色に対応した分光吸収特性を有する光学フィルタと、を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記光学フィルタは、前記光電変換素子の表面反射色の透過率が、前記光電変換素子の表面反射色と異なる色の透過率よりも高い請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示素子は、反射状態時の反射色が青色、緑色、赤色である3層のパネルを備える請求項1または2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示素子の液晶材料は、コレステリック液晶またはカイラルネマティック液晶である請求項1から3のいずれか一項記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記光電変換素子は、前記液晶表示素子の背面側全域に形成されている請求項1から4のいずれか一項記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32420(P2012−32420A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169018(P2010−169018)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】