説明

液晶表示装置

【課題】視認性が良好な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】電界無印加状態での液晶層105がツイスト配向した液晶表示装置では、液晶層105の550nmにおけるΔnd値が300〜400nmであり、一対の直線偏光子102a,102bの偏光軸方向はそれぞれ、液晶層105の近い側の端面の液晶分子の配向方向に対して略平行又は略垂直であり、一対の直線偏光子の偏光軸のなす角度が85°以上90°未満である。電界無印加状態での液晶層105が略垂直配向した液晶表示装置では、一対の直線偏光子の偏光軸のなす角度が85°以上90°未満である。横電界駆動方式の液晶表示装置では、液晶層105は電界無印加状態において一軸配向角度が−45°超−40°以下、若しくは+40°以上+45°未満である(「角度」は表示画面に対して真正面から見たときに時計の3時方向を0°とし、そこから反時計回り方向を「+」、時計回り方向を「−」。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低消費電力や小型軽量といったメリットを生かし、パーソナルコンピュータ(PC)及び携帯情報端末機器等のモニタ、あるいはTV等の表示装置等として用いられている。液晶表示装置は、マトリックス状に配置された複数の画素を備え、画素毎に光変調をして画像表示を行うデバイスである。
液晶表示装置としては、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)を用いたアクティブマトリックス型の液晶表示装置が広く用いられている。
【0003】
特許文献1、2には、液晶パネルの視認側に視差バリア層(パララックスバリア層)が設けられ、1つの液晶表示装置において視覚方向の異なる複数の観察者に対して同時に異なる画像を表示することが可能な視差バリア方式の複数画面液晶表示装置が提案されている。
【0004】
図13を参照して、従来の視差バリア方式のTFT液晶表示装置の基本構造について説明する。図13は概略断面図である。ここでは、表示画面に対して左方と右方にいる観察者に異なる画像を表示する左右2画面表示を例に挙げて説明する。
【0005】
図示する液晶表示装置3は、画素毎に画素電極(図示略)及びTFT(図示略)が形成され、さらに画素毎に駆動するために複数のゲート配線(走査信号配線)と複数のソース配線(表示信号配線)とからなる複数の信号配線210及び複数の信号配線210に接続された複数の引出配線(図示略)等が形成されたTFT基板204と、
対向電極(共通電極)、赤(R)/緑(G)/青(B)の着色層(カラーフィルタ層、図示略)、及び隣接する画素間を遮光する遮光膜(BM)207Aとが形成された対向基板(CF基板)206とが、
液晶層205を介して貼着された液晶パネル4を備えている。
図13中、符号205Xは液晶層205内の液晶分子を模式的に示すものである。
対向基板206において、隣接した遮光膜(BM)207Aの間隙が画素開口部207Bとなっている。
【0006】
液晶パネル4において、マトリックス状に配置された複数の画素は、表示画面に対して左視野用のデータを表示する画素PLと、表示画面に対して右視野用のデータを表示する画素PRとに振り分けられている。
図13に示すように、断面視、左視野用の画素PLと右視野用の画素PRとが交互に配置されている。
例えば、平面視、ライン状に一列に配置された複数の左視野用の画素PLからなるライン状の左視野用画素群と、ライン状に一列に配置された複数の右視野用画素PRからなるライン状の右視野用画素群とが、ストライプ状に交互に配置される。
【0007】
対向基板206の視認側には、遮光部208Aと開口部208Bとからなる視差バリア層208が設けられている。
互いに隣接した遮光膜(BM)207Aの間に形成された画素開口部207Bと、視差バリア層208に形成された開口部208Bとは、開口位置がずれている。具体的には、互いに隣接した左視野用の画素PLの画素開口部207Bと右視野用の画素PRの画素開口部207Bとの間に、視差バリア層208の開口部208Bが位置している。
【0008】
液晶表示装置3では、左視野用の画素PLからの表示データは、左視野用の画素PLの画素開口部207B及び視差バリア層208の開口部208Bを通って、表示画面に対して左方に選択的に出射される。これによって、表示画面に対して左方にいる観察者に、左視野用の表示画像ILが観察される。
同様に、右視野用の画素PRからの表示データは、右視野用の画素PRの画素開口部207B及び視差バリア層208の開口部208Bを通って、表示画面に対して右方に選択的に出射される。これによって、表示画面に対して右方にいる観察者に、右視野用の表示画像IRが観察される。
液晶表示装置3では、上記のように複数の画像IL、IRが角度分離されて表示されるよう、遮光膜(BM)207Aと視差バリア層208との距離、及び、画素開口部207Bと視差バリア層208の開口部208Bの開口位置と開口径が設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-312780号公報
【特許文献2】特開2008-8934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
視差バリア方式の左右2画面液晶表示装置では、左視野用の表示画像ILと右視野用の表示画像IRとが完全に分離されずに、一方の表示画像に他方の表示画像の一部が漏れて観察されるクロストークという問題がある。
特に2つの表示画像の境界付近の視角範囲においては、一方の表示画像に他方の表示画像が漏れやすい傾向がある。また、特に黒表示が多い表示画像においては、他方の表示画像の漏れ量が僅かでも、その漏れ画像が視認されやすい傾向がある。
上記クロストークのレベルが高い場合、表示画面に対して一方の側にいる観察者に対して、本来視認させたい表示画像に合わせて、本来他方の側にいる観察者に視認させたい表示画像の一部が入射するため、2つの表示画像が重なる表示不良が起こってしまう。
以上の問題は、左右2画面液晶表示装置に限らず、任意の視差バリア方式の複数画面液晶表示装置において同様である。
【0011】
視差バリア方式の複数画面液晶表示装置において複数の表示画像が混ざってしまう上記クロストーク問題に対して、特許文献1では、予めクロストークの影響を見積もり、このデータに基づいてクロストーク補正された電位を画素電極に書き込むクロストーク補正画像生成方法が提案されている(請求項1〜4及び要約書等)。
また、特許文献2では、複数の視差バリア層(33、36)を設けてクロストークの低減を図っている(請求項1及び図1等)。
【0012】
しかしながら、特許文献1の手法では、クロストークの発生自体を抑制するものではなく、予めクロストークを見積って補正量を算出し、それを駆動回路に反映させる必要があり、回路構成が複雑化する。
特許文献2の手法では、複数の視差バリア層を設ける必要があり、コスト増になる。
【0013】
また、一般に液晶表示装置には視野角依存性があり、表示画面に対して正面から見た場合と斜め方向から見た場合とではコントラスト比(CR)などの表示特性が異なる。TVあるいはPCモニタなどで一般的に使用されている1画面液晶表示装置では、表示画面に対して正面から離れるほどCRが小さくなる傾向がある。
【0014】
視差バリア方式の複数画面液晶表示装置では一般に、正面視野での使用はほとんど想定されておらず、斜め方向の視野が想定される。例えば、左右2画面液晶表示装置であれば、正面から左方及び右方に20〜50°程度視角を振った範囲が所望の視野となるものが多い。
よって、斜め視野においてCRが低くなる上記の一般的な1画面液晶表示装置を複数画面液晶表示装置にそのまま適用した場合、主に使用が想定される斜め視野においては液晶表示装置自体のCRが低い状態で使用されるので、CR及びガンマ特性などの表示特性が悪くなってしまう。
【0015】
斜め視野においてCRが低くなるという上記の問題に対しては、視野角特性がもっとも優れたIPS(In-Plane Switching) モードあるいはFFS (Fringe Field Switching)モード等の横電界駆動方式を用いることで、ある程度解決することは可能である。
しかしながら、広範囲の視野において良好なCRが得られる横電界駆動方式の液晶モードを複数画面液晶表示装置に適用した場合、複数の表示画像のクロストークにより表示特性が悪化する視野が生じやすくなる。これは、表示画面に対して一方の側にいる観察者に対して、本来視認させたい表示画像に合わせて、本来他方の側にいる観察者に視認させたい表示画像の一部が入射する場合、本来視認させたい表示画像の輝度レベルが低いと、他方の表示画像の影響が大きくなるためである。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、回路構成を複雑化することなく、複数の視差バリア層を必須とせず低コストに、所望の視野領域において複数の表示画像のクロストークを低減することができ、コントラスト比が高く視認性が良好な視差バリア方式の液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
本発明は視差バリア方式の液晶表示装置に有効なものであるが、表示画面に対して斜め方向を所望の視野とする任意の液晶表示装置に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の液晶表示装置は、
液晶層と、当該液晶層を挟持して対向配置され、当該液晶層に電界を印加するための電極をそれぞれ備えた一対の基板と、当該一対の基板の外側に設けられ、特定の直線偏光を選択的に透過する一対の直線偏光子とを備えた液晶表示装置であって、
前記液晶層は、電界無印加状態においてツイスト配向しており、かつ波長550nmにおける屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積であるΔnd値が300nm以上400nm以下であり、
前記一対の直線偏光子の偏光軸方向はそれぞれ、前記液晶層の近い側の端面の液晶分子の配向方向に対して略平行又は略垂直であり、
前記一対の直線偏光子の偏光軸のなす角度が85°以上90°未満である液晶表示装置である。
【0018】
本明細書において、「直線偏光子の偏光軸」は、選択的に透過する特定の直線偏光の偏光軸を意味する。
本明細書において、特に明記しない限り、「略平行」は完全平行から±5°の範囲内と定義し、「略垂直」は完全垂直から±5°の範囲内と定義する。
また、特に明記しない限り、角度表記における「略」についても、記載の角度±5°の範囲内と定義する。
【0019】
本発明の第2の液晶表示装置は、
液晶層と、当該液晶層を挟持して対向配置され、当該液晶層に電界を印加する電極をそれぞれ備えた一対の基板と、当該一対の基板の外側に設けられ、特定の直線偏光を選択的に透過する一対の直線偏光子とを備えた液晶表示装置であって、
前記液晶層は電界無印加状態において略垂直配向しており、
前記一対の直線偏光子の偏光軸のなす角度が85°以上90°未満である液晶表示装置である。
【0020】
本発明の第3の液晶表示装置は、
液晶層と、当該液晶層を挟持して対向配置された一対の基板と、当該一対の基板の外側に設けられ、特定の直線偏光を選択的に透過する一対の直線偏光子とを備え、
前記一対の基板のうち一方の基板に、前記液晶層に対して横電界を印加する一対の電極が備えられた横電界駆動方式の液晶表示装置であって、
前記液晶層は電界無印加状態において一軸配向しており、かつ一軸配向角度が−45°超−40°以下、若しくは+40°以上+45°未満であり(ここで、「角度」は表示画面に対して真正面から見たときに時計の3時方向を0°とし、そこから反時計回り方向を「+」、時計回り方向を「−」としたときの値である。)、
前記一対の直線偏光子の偏光軸方向は、前記液晶層の一軸配向方向に対して略平行又は略垂直である液晶表示装置である。
【0021】
横電界駆動方式の液晶表示装置としては例えば、IPS(In-Plane Switching)モードあるいはFFS(Fringe Field Switching)モードの液晶表示装置が挙げられる。
【0022】
本発明の第1〜第3の液晶表示装置は、前記一対の基板のうち視認側の基板に、前記液晶表示装置をなす個々の画素からの表示データがそれぞれ特定の角度範囲の視野領域に選択的に出射されるよう調整し、異なる角度範囲の複数の視野領域に異なる表示画像を表示するよう調整する少なくとも1層の視差バリア層を備えた視差バリア方式の複数画面表示装置に好ましく適用できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回路構成を複雑化することなく、複数の視差バリア層を必須とせず低コストに、所望の視野領域において複数の表示画像のクロストークを低減することができ、コントラスト比が高く視認性が良好な視差バリア方式の液晶表示装置を提供することができる。
本発明は視差バリア方式の液晶表示装置に有効なものであるが、表示画面に対して斜め方向を所望の視野とする任意の液晶表示装置に適用可能でき、コントラスト比が高く視認性が良好な液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る第1実施形態の視差バリア方式の複数画面液晶表示装置の概略分解斜視図である。
【図2】図1の液晶表示装置の主な構成要素を取り出して示す概略断面図である。
【図3A】図1の液晶表示装置の視差バリア層の平面パターン例を示す図である。
【図3B】図1の液晶表示装置の視差バリア層の平面パターン例を示す図である。
【図4】図1の液晶表示装置の主な構成要素を取り出して示す分解斜視図である。
【図5】通常のTNモードにおいて、クロスニコルの関係にある一対の直線偏光子を正面視野と斜め視野から見た場合の模式図である。
【図6】図1の液晶表示装置における一対の直線偏光子を正面視野と斜め視野から見た場合の模式図である。
【図7】図1の液晶表示装置における黒表示時の液晶表示装置の透過率の視野角特性の計算結果を示すグラフである。
【図8】図1の液晶表示装置におけるCRの視野角特性の計算結果を示すグラフである。
【図9】通常のTNモードにおける黒表示時の液晶表示装置の透過率の視野角特性の計算結果を示すグラフである。
【図10】通常のTNモードにおけるCRの視野角特性の計算結果を示すグラフである。
【図11】本発明に係る第2実施形態の視差バリア方式の複数画面液晶表示装置におけるCRの視野角特性の計算結果を示すグラフである。
【図12】本発明に係る第3実施形態の視差バリア方式の複数画面液晶表示装置におけるCRの視野角特性の計算結果を示すグラフである。
【図13】従来の視差バリア方式の複数画面液晶表示装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
「第1実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態の視差バリア方式の複数画面液晶表示装置について説明する。本実施形態では、左右2画面表示を例として説明する。本実施形態では、画素スイッチング素子としてTFTを用いたアクティブマトリックス型の液晶表示装置を例として、説明する。
【0026】
図1は本実施形態の液晶表示装置の概略分解斜視図である。図2は本実施形態の液晶表示装置の主な構成要素を取り出して示す概略断面図である。図3A及び図3Bは視差バリア層の平面パターン例を示す図である。
図1中の矢印は、液晶層105の配向方向、直線偏光子102a、102bの吸収軸、及び視野角補償フィルム103a、103bの配向方向を示している。
視認しやすくするため、各構成要素の縮尺や位置等は適宜実際のものとは異ならせてあり、一部の構成要素の図示を省略してある。断面図においては適宜ハッチングを省略してある。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の液晶表示装置1は、光源及び導光板等からなるバックライト(BL)101を備えた透過型液晶表示装置である。本実施形態での液晶表示装置1は、電界無印加状態において液晶層105が略90°ツイスト配向したツイストネマティック液晶(TN)モードの液晶パネル2を備えている。図2に示すように、液晶パネル2は、マトリックス状に配置された複数の画素PL、PRを有している。
【0028】
図1及び図2に示すように、液晶パネル2は、BL101側のTFT基板104と、視認側の対向基板(CF基板)106と、これら一対の基板間に挟持された液晶層105とを備えている。TFT基板104と対向基板106とは、これら基板間の周縁部に塗布されたシール材(図示略)を介して貼着されており、シール材の内側に液晶層105が封入されている。
【0029】
TFT基板104は、ガラス基板等の透光性基板上に画素毎に画素電極(図示略)及びスイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor、図示略)が形成され、さらに画素毎に駆動するために複数のゲート配線(走査信号配線)と複数のソース配線(表示信号配線)とからなる複数の信号配線110及び複数の信号配線110に接続された複数の引出配線(図示略)等が形成され、液晶層105側の最表面に配向膜(図示略)が形成された基板である。
【0030】
対向基板106は、ガラス基板等の透光性基板上に、対向電極(共通電極、図示略)と、赤(R)/緑(G)/青(B)の着色層(カラーフィルタ層、図示略)と、隣接する画素間を遮光する遮光膜(BM)107Aとが形成され、液晶層105側の最表面に配向膜(図示略)が形成された基板である。
対向基板206において、隣接した遮光膜(BM)107Aの間が画素開口部107Bとなっている。
対向基板106の全体厚みは0.1mm程度であり、対向基板106の視認側(液晶層105とは反対側)には、視差バリア層108が設けられている。
【0031】
液晶層105のBL側端面(図示下側の端面)の液晶分子105Xは、電界無印加時において、TFT基板104側の配向膜のラビング方向に配向が規制される。同様に、液晶層105の視認側端面(図示上側の端面)の液晶分子105Xは、電界無印加時において、対向基板106側の配向膜のラビング方向に配向が規制される。
図2中、符号105Xは液晶層105内の液晶分子を模式的に示すものである。実際には、電界無印加時において、液晶層105内の液晶分子105Xは厚み方向に略90°ツイスト配向しているが、図2では簡略化して図示してある。
TFT基板104の画素電極と対向基板106の対向電極(共通電極)との間に電界が印加されると、液晶層105内の液晶分子105Xは電界印加方向に配向が変化する。
【0032】
図2に示すように、液晶パネル2において、マトリックス状に配置された複数の画素は、表示画面に対して左視野用のデータを表示する画素PLと、表示画面に対して右視野用のデータを表示する画素PRとに振り分けられている。
本実施形態において、断面視、左視野用の画素PLと右視野用の画素PRとが交互に配置されている。
左視野用の画素PLと右視野用の画素PRとの平面パターンは特に制限されない。例えば、平面視、ライン状に一列に配置された複数の左視野用の画素PLからなるライン状の左視野用画素群と、ライン状に一列に配置された複数の右視野用の画素PRからなるライン状の右視野用画素群とが、ストライプ状に交互に配置される。
【0033】
対向基板106の視認側には、遮光部108Aと開口部108Bとからなる視差バリア層108が形成されている。本実施形態では、視差バリア層108は1層でよいが、特許文献2のように必要に応じて複数設けても構わない。
視差バリア層108は、液晶表示装置1をなす個々の画素PL、PRからの表示データがそれぞれ特定の角度範囲の視野領域に選択的に出射されるよう調整し、異なる角度範囲の複数の視野領域に異なる表示画像を表示するよう調整するものである。
液晶表示装置1において、隣接した遮光膜(BM)107Aの間に形成された画素開口部107Bと、視差バリア層108の開口部108Bとは、開口位置がずれている。具体的には、互いに隣接した左視野用の画素PLの画素開口部107Bと右視野用の画素PRの画素開口部107Bとの間に、視差バリア層108の開口部108Bが位置している。
【0034】
液晶表示装置1では、左視野用の画素PLからの表示データは、左視野用の画素PLの画素開口部107B及び視差バリア層108の開口部108Bを通って、表示画面に対して左方に選択的に出射される。これによって、表示画面に対して左方にいる観察者に、左視野用の表示画像ILが観察される。例えば正面から左方に20〜50°程度視角を振った範囲に表示画像ILが観察される。
同様に、右視野用の画素PRからの表示データは、右視野用の画素PRの画素開口部107B及び視差バリア層108の開口部108Bを通って、表示画面に対して右方に選択的に出射される。これによって、表示画面に対して右方にいる観察者に、右視野用の表示画像IRが観察される。例えば正面から右方に20〜50°程度視角を振った範囲に表示画像IRが観察される。
【0035】
液晶表示装置1では、上記のように左視野用の画素PLからの表示データと右視野用の画素PRからの表示データとが角度分離されて出射されるよう、遮光膜(BM)107Aと視差バリア層108との距離、及び、画素開口部107Bと視差バリア層108の開口部108Bの開口位置と開口径が設計されている。
【0036】
本実施形態において、図1及び図3Aに示すように、視差バリア層108は、ドット市松状に複数の開口部108Bが形成され、その他の領域が遮光部108Aである平面パターンを有している。
視差バリア層108の平面パターンは上記例に限らず、表示画面に対して左方にいる観察者に左視野用の表示画像ILが観察され、表示画面に対して右方にいる観察者に右視野用の表示画像IRが観察されるよう、遮光部108Aと開口部108Bとのパターンが設計されたものであればよい。
具体的には、互いに隣接した左視野用の画素PLの画素開口部107Bと右視野用の画素PRの画素開口部107Bとの間に、視差バリア層108の開口部108Bが位置していればよい。例えば図3Bに示すように、視差バリア層108は、ストライプ状に複数の開口部108Bが形成され、その他の領域が遮光部108Aであるパターンを有していてもよい。
【0037】
図1に示すように、本実施形態の液晶表示装置1はさらに、BL101と液晶パネル2との間に、BL101側から特定の直線偏光(P偏光あるいはS偏光)を選択的に透過する直線偏光子102aと視野角を広げるように補償する視野角補償フィルム(Wide Viewing(WV)フィルム)103aとを順次備えている。
本実施形態の液晶表示装置1はまた、液晶パネル2の視認側に、液晶パネル2側から、視野角を広げるように補償する視野角補償フィルム(Wide Viewing(WV)フィルム)103bと特定の直線偏光(P偏光あるいはS偏光)を選択的に透過する直線偏光子102bとを順次備えている。
【0038】
本実施形態において、直線偏光子102a、102bは特定の直線偏光を選択的に透過し、それと直交する偏光軸の直線偏光を吸収する吸収型の直線偏光子である。吸収型の直線偏光子において、偏光軸(=選択的に透過する特定の直線偏光の偏光軸)と吸収軸(=選択的に吸収する特定の直線偏光の偏光軸)とは互いに直交した関係にある。
直線偏光子102a、102bは、特定の直線偏光を選択的に透過し、それと直交する偏光軸の直線偏光を反射する反射型の直線偏光子でもよい。
本実施形態において、直線偏光子102a、102bはセルローストリアセテートフィルム(TAC、図示略)を基板とした直線偏光子である。
視野角補償フィルム103a、103bはλ/4板(ここで、「λ」は光の波長を示す。)等の位相差補償素子である。
【0039】
通常のTNモードでは、液晶層のツイスト角は90°に設定され、一対の直線偏光子の偏光軸方向はそれぞれ、液晶層の近い側の端面の液晶分子の配向方向に対して略平行又は略垂直に設計される(「略平行又は略垂直」の定義については、段落0018を参照)。
本実施形態では、液晶層105は、電界無印加状態において略90°ツイスト配向しており、かつ波長550nmにおける屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積であるΔnd値が300nm以上400nm以下であり、一対の直線偏光子102a、102bの偏光軸方向はそれぞれ、液晶層105の近い側の端面の液晶分子105Xの配向方向に対して略平行又は略垂直であり、一対の直線偏光子102a、102bの偏光軸のなす角度が85°以上90°未満に設計されている。
【0040】
本実施形態では、上記設計条件とすることで、正面視野及びその近傍の視野のCRは比較的低く、所望の斜め視野(例えば正面から左方及び右方に20〜50°程度視角を振った範囲)においてはCRが比較的高い液晶表示装置1が得られる。
【0041】
表1に、本実施形態の液晶表示装置1における、直線偏光子102a、102bの吸収軸角度、視野角補償フィルム103a、103bの配向角度、及び電界無印加時の液晶層105の配向角度(=配向膜のラビング角度)の設計例を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
本明細書における「角度」及び「Δnd値」の定義は、段落0017−0018を参照されたい。
本明細書において、特に明記しない限り、「Re」は波長550nmの面内レターデーション値であり、「Rth」は同波長の厚み方向のレターデーション値である。
【0044】
図4〜図6を参照して、上記パラメータ設計とすることで、正面付近のCRは比較的低く、所望の視野方向(例えば正面から左方及び右方に20〜50°程度視角を振った範囲)においてはCRが比較的高い液晶表示装置1が得られる理由について説明する。
【0045】
図4は主な構成要素を取り出して示す分解斜視図である。
図5において、左図は通常のTNモードにおいてクロスニコルの関係にある一対の直線偏光子を正面視野から見た場合の模式図であり、右図は通常のTNモードにおいてクロスニコルの関係にある一対の直線偏光子を斜め視野から見た場合の模式図である。図5においては、一対の直線偏光子を重ねて図示している。図中の矢印は一対の直線偏光子の吸収軸を示している。
【0046】
通常のTNモードの1画面液晶表示装置では黒つぶれの階調反転方向が液晶分子が立ち上がる方向で発生するため、電界無印加時における液晶層105のBL側の配向角度と視認側の配向角度をいずれも略+45°方向又は略−45°方向に設定することで、上下方向に階調反転方向を持ってくるのが普通である。そうしないと階調反転が左右方向のどちらかで発生し、左右の見栄えの非対称性が顕著になってしまうためである。
よって、主な視角領域が左右方向にある左右2画面表示装置の場合も、電界無印加時における液晶層105のBL側の配向角度と視認側の配向角度とはいずれも略+45°方向又は略−45°方向に持ってくることが好ましい。
【0047】
本実施形態では、電界無印加時における液晶層105のBL側の配向角度と視認側の配向角度とをいずれも略+45°方向又は略−45°方向に設定している。
表1に示す設計例では、電界無印加時における液晶層105のBL側の配向角度を−43°とし、視認側の配向角度を+43°としている。
【0048】
TNモードにおいて、BL側の直線偏光子102aの偏光軸は、電界無印加時における液晶層105のBL側端面の液晶分子105Xの配向方向(=液晶分子の長軸方向)に対して略平行もしくは略直交にする必要がある。視認側の直線偏光子102bの偏光軸は、電界無印加時における液晶層105の視認側端面の液晶分子105Xの配向方向に対して略平行もしくは略直交にする必要がある。
通常のTNモードでは、BL側の直線偏光子の吸収軸は、電界無印加時における液晶層のBL側端面の液晶分子の配向方向に対して略平行にし、視認側の直線偏光子の吸収軸は、電界無印加時における液晶層の視認側端面の液晶分子の配向方向に対して略平行に設定することが多い。そのため、BL側及び視認側の直線偏光子の吸収軸はいずれも、液晶層の配向角度に合わせて、略+45°方向又は略−45°方向に設定されることが多い。また、通常のTNモードでは、一対の直線偏光子は偏光軸が互いに直交したクロスニコル配置とすることが一般的である。
【0049】
本実施形態では、一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸角度は、電界無印加時における液晶層105の近い側の端面の液晶分子105Xの配向角度に一致させている。
表1に示す設計例では、BL側の直線偏光子102aの吸収軸角度は電界無印加時における液晶層105の配向角度に合わせて−43°とし、視認側の直線偏光子102bの吸収軸角度は電界無印加時における液晶層105の配向角度に合わせて+43°としている。
【0050】
通常のTNモードでは、一対の直線偏光子の吸収軸を互いに直交関係(クロスニコルの関係)とし、電界無印加時における液晶層のBL側端面の液晶分子はBL側の直線偏光子の吸収軸に対して略平行に配向させ、電界無印加時における液晶層の視認側端面の液晶分子は視認側の直線偏光子の吸収軸に対して略平行に配向させることが一般的である。
上記のように配向した液晶層に電界を印加すると、液晶分子は基板に対し略垂直に配向して液晶の旋光性がなくなり、BL側の直線偏光子を通過した直線偏光は、クロスニコルの関係にある視認側の直線偏光子に完全に遮断される。一対の直線偏光子の吸収軸を互いに直交関係(クロスニコルの関係)にするのは、正面の視野においてCRを高くすることができるためである。
本実施形態では、正面から見た場合、一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸のなす角が90°(クロスニコルの関係)からずれているため、通常のTNモードに比較して正面付近のCRが低くなる。
【0051】
通常のTNモードでは図5のように、斜め方向の視角において、例えば一対の直線偏光子の吸収軸の中間の方位(一方の吸収軸から45°回転させた方位)において、正面から左右方向に視角を振っていくと、一対の直線偏光子の吸収軸のなす角の正面視野からの見掛け上の角度が異なっていく。正面視野において一対の直線偏光子の吸収軸のなす角が90°(クロスニコルの関係)の場合、斜め視野において一対の直線偏光子の吸収軸のなす角が見掛け上90°より広くなりクロスニコルの関係がずれ、その視角においては光漏れが発生してCRが低下する。
【0052】
本実施形態では、一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸のなす角を90°より狭く85°以上90°未満に設計している。
かかる設計条件で、斜め方向の視角において、一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸の中間の方位(一方の吸収軸から45°回転させた方位)において、正面から視角を振っていくと、図6のように一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸のなす角が見掛け上90°(クロスニコルの関係)に近づき、所望の斜め視野において完全90°(クロスニコルの関係)あるいはそれに極めて近い角度にすることができ、その視角範囲においては光漏れが発生せず、所望の斜め視野においてCRを高くすることができる。
【0053】
電界無印加時における液晶層105の上下端面の液晶分子105Xの配向角度は、近い方の直線偏光子102a、102bの吸収軸に対して略平行もしくは略垂直になっていればよく、本実施形態では略平行に設定している。
表1に示す設計例では、電界無印加時における液晶層105の上下端面の液晶分子105Xの配向角度を、近い方の直線偏光子102a、102bの吸収軸角度と同一に設定しているが、近い方の直線偏光子102a、102bの吸収軸角度とは±5°の範囲でずれていてもよく、かかる範囲であれば光学特性への影響はほとんどない。
【0054】
本実施形態において、セルギャップについては従来のTNモードと同じ範囲で問題なく、液晶層105の波長550nmにおけるΔnd値は300nm以上400nm以下に設計している。表1の設計条件では、Δnd値を375nmとしている。
【0055】
表1の条件で液晶表示装置1を設計したときの、視野角特性の計算結果を図7及び図8に示す。比較例として、従来のTNモードの液晶表示装置の視野角特性の計算結果を図9及び図10に示す。
従来のTNモードの液晶表示装置は、液晶のツイスト角を90°、一対の直線偏光子の吸収軸のなす角度を90°、Δnd値を375nmとして、計算した結果である。表1以外の設計条件は、液晶表示装置1と従来のTNモードの液晶表示装置で同じ条件として、計算した。
図7及び図9は黒表示時の液晶表示装置の透過率の視角依存性の計算結果である。図8及び図10はCRの視角依存性の計算結果である。いずれも、視角方向は左右方向である。
【0056】
図7〜図10に示すように、正面視野及びその付近の視野においては、本実施形態の液晶表示装置1は黒表示時の透過率が比較的高く、その結果、正面視野及びその付近のCRが比較的低くなっている。正面視野においては2つの表示画像IL、IRが混ざり合う度合いが相対的に大きくなるが、他方の画像が混ざったとしても、CRが低くなっているので混ざってくる画像を視認しづらくする。
正面視野から左右方向に視角を20〜50°程度振った斜め視野では、本実施形態の液晶表示装置1は従来のTNモードよりもCRが高くなっている。したがって、2画面表示装置において、もっとも多く観察される斜め視野においては、CRが高くガンマ特性のずれが小さい表示特性が得られている。
【0057】
以上のように、本実施形態では、特に正面視野及びその近傍の視野において2つの表示画像IL、IRが混ざり合う度合いが大きくなるため、正面視野及びその近傍の視野においてはCRを落として、本来視認させたい表示画像に合わせて他方の表示画像が混ざっても、本来視認させたい表示画像の輝度レベルを混ざってくる表示画像の輝度レベルよりも高くして、混ざってくる表示画像を視認しづらくしている。その一方で、所望の斜め視野においてはCRが高く良好な表示特性が得られるようにしている。
【0058】
本実施形態では、特許文献1のように、予めクロストークを見積って補正量を算出し、それを駆動回路に反映させる必要がない。特許文献2のように、視差バリア層を複数設ける必要もない。
したがって、本実施形態によれば、回路構成を複雑化することなく、複数の視差バリア層を必須とせず低コストに、所望の視野領域において複数の表示画像のクロストークを低減することができ、コントラスト比が高く視認性が良好な視差バリア方式の液晶表示装置1を提供することができる。
上述したように、本実施形態において視差バリア層108を複数設けることは必須ではないが、特許文献2のように視差バリア層108を複数設けても構わない。
【0059】
本実施形態は視差バリア方式の液晶表示装置に有効なものであるが、表示画面に対して斜め方向を所望の視野とする任意の液晶表示装置に適用可能でき、コントラスト比が高く視認性が良好な液晶表示装置を提供することができる。
【0060】
「第2実施形態」
本発明に係る第2実施形態の視差バリア方式の複数画面表示液晶表示装置について説明する。本実施形態においても、左右2画面表示装置を例として、説明する。
本実施形態の液晶表示装置は基本構成が第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様、バックライト(BL)を備えた透過型の液晶表示装置である。本実施形態の液晶表示装置が第1実施形態と異なるのは、液晶が電界無印加状態で略垂直配向したVA(Vertical Alignment)モードである点である。
本実施形態においては基本構成は第1実施形態と同様であるので、第1実施形態の図面及び符号を参照して、説明する。
【0061】
VAモードは正面視野のCRを非常に高くできることが長所であるが、この長所が視差バリア方式の複数画面表示装置においては、短所となってしまう。なぜなら、「発明が解決しようとする課題」の項において記載したとおり、特に複数の表示画像を分離する境界付近(左右2画面表示であれば、正面及びそれに近い浅い角度での視角)においては、本来視認させたい表示画像に視認させたくない他方の表示画像が漏れる比率が高くなり、この際、黒を表示させている視野に対して他方の明るい画像が混ざった場合、CRが高いと本来観察されるべき黒の輝度が低いために、混ざってくる明るい画像が相対的に視認しやすくなるためである。
【0062】
本実施形態では、視差バリア方式の左右2画面表示装置にVAモードを適用した場合に、正面視野及びそれに近い浅い角度範囲の視野においてはCRが比較的低く、所望の斜め視野においてはCRが比較的高くなる特性を実現したものである。
【0063】
本実施形態において、液晶層105は電界無印加状態において略垂直配向しており、一対の直線偏光子102a、102bの偏光軸のなす角度は85°以上90°未満に設計されている。
【0064】
通常のVAモードの液晶表示装置においては、一対の直線偏光子の吸収軸角度はそれぞれ0°又は90°に設定され、一対の直線偏光子の吸収軸のなす角度は0°又は+90°に設計されている(本明細書における「角度」の定義については、段落0018を参照。)。
本実施形態では、一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸角度をそれぞれ略+45°または略−45°に設計し、かつ、一対の直線偏光子102a、102bのなす角度を85°以上90°未満に設計している。
本実施形態では、上記設計条件とすることで、正面視野及びその近傍の視野のCRは比較的低く、所望の斜め視野(例えば正面から左方及び右方に20〜50°程度視角を振った範囲)においてはCRが比較的高い液晶表示装置が得られる。その理由は、第1実施形態と同様である。
本実施形態における設計例を表2に示す。
【0065】
【表2】

本明細書における「角度」、「Re」、「Rth」、及び「Δnd」の定義については、段落0017−0018、0043を参照されたい。
【0066】
表2の条件で液晶表示装置を設計したときの、CRの視野角特性(左右方向)の計算結果を図11に示す。4分割されたマルチドメインVAモードを前提とし、TAC補償のみの最もコストの低いVAモードで計算を実施した。一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸角度をいずれも略45°方向に設定するため、電界印加時の液晶分子の倒れる方向は、0°方向、45°方向、90°方向、135°方向の計4方向で計算を実施した。正面視野及びその付近の視野においてはCRが低くなっているが、正面から左右方向に視角を20°程度振った地点ではCRが高くなっており、所望の斜め視野においてCRが高くガンマ特性のずれが小さい表示特性が得られている。
【0067】
本実施形態によっても、回路構成を複雑化することなく、複数の視差バリア層を必須とせず低コストに、所望の視野領域において複数の表示画像のクロストークを低減することができ、コントラスト比が高く視認性が良好な視差バリア方式の液晶表示装置を提供することができる。
本実施形態においても、視差バリア層108を複数設けることは必須ではないが、特許文献2のように視差バリア層108を複数設けても構わない。
【0068】
本実施形態は視差バリア方式の液晶表示装置に有効なものであるが、表示画面に対して斜め方向を所望の視野とする任意の液晶表示装置に適用可能でき、コントラスト比が高く視認性が良好な液晶表示装置を提供することができる。
【0069】
「第3実施形態」
本発明に係る第3実施形態の視差バリア方式の複数画面表示液晶表示装置について説明する。本実施形態においても、左右2画面表示装置を例として、説明する。
本実施形態の液晶表示装置は基本構成が第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様、バックライト(BL)を備えた透過型液晶表示装置である。本実施形態の液晶表示装置が第1実施形態と異なるのは、横電界駆動方式の液晶モードであるIPS(In-Plane Switching)モードあるいはFFS(Fringe Field Switching)モードである点である。これらのモードでは、一方の基板側に、画素電極と対向電極の両方が形成される。
本実施形態においては基本構成は第1実施形態と同様であるので、第1実施形態の図面及び符号を参照して、説明する。
【0070】
IPSモードあるいはFFSモードはCR視野角特性が広いことが長所であるが、正面視野及びその付近の視野においてCRが高いために、視差バリア方式の複数画面表示装置として用いた場合、従来構成では「発明が解決しようとする課題」の項に記載したとおり、複数の表示画像のクロストークが視認されやすい。
【0071】
本実施形態は、IPSモードあるいはFFSモードを複数画面表示装置に用いた際に、正面視野及びそれに近い浅い角度での視野においてはCRが比較的低く、所望の斜め視野においてはCRが比較的高くなる特性を実現したものである。
【0072】
本実施形態において、液晶層105は電界無印加状態において一軸配向しており、かつ一軸配向角度が−45°超−40°以下、若しくは+40°以上+45°未満であり(「角度」の定義については段落0018を参照。)、一対の直線偏光子102a、102bの偏光軸方向は、液晶層105の一軸配向方向に対して略平行又は略垂直に設計されている。
【0073】
通常のIPSモードあるいはFFSモードの液晶表示装置においては、一対の直線偏光子の吸収軸角度はそれぞれ0°または+90°に設計される。本実施形態では、一対の直線偏光子の吸収軸角度はそれぞれ略+45°または略−45°に設計している。
【0074】
本実施形態では、上記設計条件とすることで、正面視野及びその近傍の視野のCRは比較的低く、所望の斜め視野(例えば正面から左方及び右方に20〜50°程度視角を振った範囲)においてはCRが比較的高い液晶表示装置が得られる。
本実施形態における設計例を表3に示す。
【0075】
【表3】

本明細書における「角度」、「Re」、「Rth」、及び「Δnd」の定義については、段落0017−0018、0043を参照されたい。
【0076】
正面視野及びその付近の視野のCRが比較的低く、所望の斜め視野においてCRが比較的高くなる原理は、第1〜第2実施形態とは異なる。
IPSモードあるいはFFSモードでは、液晶層105の位相差(Δnd値)が例えば270nmとその他のモードよりも非常に大きく設計されるため、液晶層105の位相差が大きくなる斜め視野においては、液晶層105の位相差(Δnd値)の影響が大きくなる。
【0077】
正面視野及びその付近の視野のCRを低くし所望の斜め視野においてはCRを高くする設計パラメータは、TNモードの第1実施形態及びVAモードの第2実施形態では、一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸角度が支配要因であったのに対して、IPSモードあるいはFFSモードでは、電界無印加状態における液晶層105の一軸配向角度が支配要因となる。本実施形態では、電界無印加状態における液晶層105の一軸配向角度を略+45°または略−45°の方向に設計している。
【0078】
直線偏光子102a、102bの吸収軸は、電界無印加状態の液晶層105の一軸配向方向に対して略平行もしくは略垂直になっていればよい。表3の設計例では、一対の直線偏光子102a、102bの吸収軸は、電界無印加状態の液晶層105の一軸配向角度と同じ値に設定しているが、±5°の範囲でずれていてもよく、かかる範囲内のずれであれば光学特性への影響はほとんどない。
【0079】
表3の条件で液晶表示装置を設計したときのCRの視野角特性(左右方向)の計算結果を図12に示す。正面視野及びその付近の視野においてはCRが比較的低くなっているが、正面視野から左右方向に30°程度振った地点ではCRが高くなっており、所望の斜め視野においてCRが高くガンマ特性のずれが小さい表示特性が得られている。
【0080】
本実施形態によっても、回路構成を複雑化することなく、複数の視差バリア層を必須とせず低コストに、所望の視野領域において複数の表示画像のクロストークを低減することができ、コントラスト比が高く視認性が良好な視差バリア方式の液晶表示装置を提供することができる。
本実施形態においても、視差バリア層108を複数設けることは必須ではないが、特許文献2のように視差バリア層108を複数設けても構わない。
【0081】
本実施形態は視差バリア方式の液晶表示装置に有効なものであるが、表示画面に対して斜め方向を所望の視野とする任意の液晶表示装置に適用可能でき、コントラスト比が高く視認性が良好な液晶表示装置を提供することができる。
【0082】
「設計変更」
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、設計変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 液晶表示装置
2 液晶パネル
101 バックライト(BL)
102a、102b 直線偏光子
103a、103b 視野角補償フィルム
104 TFT基板
105 液晶層
105X 液晶分子
106 対向基板(CF基板)
107A 遮光膜(BM)
107B 画素開口部
108 視差バリア層
108A 視差バリア層の遮光部
108B 視差バリア層の開口部
PL 左視野用の画素
PR 右視野用の画素
IL 左視野用の表示画像
IR 右視野用の表示画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、当該液晶層を挟持して対向配置され、当該液晶層に電界を印加するための電極をそれぞれ備えた一対の基板と、当該一対の基板の外側に設けられ、特定の直線偏光を選択的に透過する一対の直線偏光子とを備えた液晶表示装置であって、
前記液晶層は、電界無印加状態においてツイスト配向しており、かつ波長550nmにおける屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積であるΔnd値が300nm以上400nm以下であり、
前記一対の直線偏光子の偏光軸方向はそれぞれ、前記液晶層の近い側の端面の液晶分子の配向方向に対して略平行又は略垂直であり、
前記一対の直線偏光子の偏光軸のなす角度が85°以上90°未満である液晶表示装置。
【請求項2】
液晶層と、当該液晶層を挟持して対向配置され、当該液晶層に電界を印加する電極をそれぞれ備えた一対の基板と、当該一対の基板の外側に設けられ、特定の直線偏光を選択的に透過する一対の直線偏光子とを備えた液晶表示装置であって、
前記液晶層は電界無印加状態において略垂直配向しており、
前記一対の直線偏光子の偏光軸のなす角度が85°以上90°未満である液晶表示装置。
【請求項3】
液晶層と、当該液晶層を挟持して対向配置された一対の基板と、当該一対の基板の外側に設けられ、特定の直線偏光を選択的に透過する一対の直線偏光子とを備え、
前記一対の基板のうち一方の基板に、前記液晶層に対して横電界を印加する一対の電極が備えられた横電界駆動方式の液晶表示装置であって、
前記液晶層は電界無印加状態において一軸配向しており、かつ一軸配向角度が−45°超−40°以下、若しくは+40°以上+45°未満であり(ここで、「角度」は表示画面に対して真正面から見たときに時計の3時方向を0°とし、そこから反時計回り方向を「+」、時計回り方向を「−」としたときの値である。)、
前記一対の直線偏光子の偏光軸方向は、前記液晶層の一軸配向方向に対して略平行又は略垂直である液晶表示装置。
【請求項4】
前記一対の基板のうち視認側の基板に、前記液晶表示装置をなす個々の画素からの表示データがそれぞれ特定の角度範囲の視野領域に選択的に出射されるよう調整し、異なる角度範囲の複数の視野領域に異なる表示画像を表示するよう調整する少なくとも1層の視差バリア層を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−63584(P2012−63584A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207821(P2010−207821)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】