説明

液晶装置に使用される化合物

液晶装置に使用される式(I)の液晶化合物は、中間相生成液晶コアの内部にジオキサテトラリン単位を含む。このジオキサテトラリン単位は、液晶化合物の中間相生成コア内の任意の位置に配置されてよく、液晶コアの末端に配置されても、それとは別に、液晶コアの中央に配置されてもよい。本発明の化合物は、高速スイッチングを示し、特に、画像またはディスプレイ媒体、例えば、モニターまたはテレビジョンに有用な液晶混合物として使用されてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶化合物として、または液晶混合物の成分として、液晶装置との関連において有用な新規化合物に関する。本発明はさらに、そのような新規化合物を調製するための方法、および、そのような化合物を含む液晶混合物または装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「液晶」という言葉はよく知られる。この言葉は、その構造のために、液体と固体の間の、中間的な一つの相、または複数の相を持ち、方向規則性、および、好ましくは、例えば、−40から200℃の動作温度において配列規則性が低下することによって特徴づけられる化合物を指す。これらの物質は、各種の装置、特に液晶ディスプレイ装置において有用である。
【0003】
液晶は、様々の相において存在することが可能である。事実上、液晶物質には3種の異なるクラスがあり、それぞれ特有の分子配列を持つ。そのクラスとは、ネマチック、キラルネマチック(コレステリック)、およびスメクチックである。液晶相および装置に関するさらに詳細な記述については、例えば、「液晶ハンドブック」(“The Handbook of Liquid Crystals,”), Ed. D. Demus, J. Goodby, GW Gray, H-W Spiess, V Vill, Pub Wiley VCH, 1998を参照されたい。
【0004】
大雑把に言うと、ネマチック化合物の分子は、バルクの物質としてある特定の方向に整列する。スメクチック物質は、同様な方向性を持つことに加えて、緊密に層状に整列する。
【0005】
広範囲のスメクチック相が存在する。例えば、スメクチックAおよびスメクチックCがそれである。前者では、分子は、基板または支持体に対して垂直に配列するが、一方、後者では、分子は、支持体に対して傾斜する。温度を変えると、いくつかの液晶相を呈する液晶物質もあれば、ただ一つの相しか持たないものもある。例えば、ある液晶物質は、等方相から冷却されると下記の相を呈する。すなわち、等方相-ネマチック-スメクチックA-スメクチックC-固相。ある物質をスメクチックAと記述する場合、それは、その物質が、有用な動作温度範囲においてスメクチックA相を持つことを意味する。
【0006】
このような物質は、特にディスプレイ装置において有用である。すなわち、ディスプレイ装置では、それらの物質分子が整列し、電圧の影響下にその配列を変える性質を利用して、偏光の通路に影響を及ぼして液晶ディスプレイを実現する。これらの物質は、時計、計算機、ディスプレイボードまたはパネル、テレビジョン、およびコンピュータスクリーン、特に、ラップトップコンピュータのスクリーンのような装置に広く使われている。化合物が電圧変化に反応する速度に影響を及ぼす、該化合物の性質としては、分子サイズ、伝導度、粘度、誘電率異方性(Δε)または双極子モーメント(μ)、および、スメクチックC相では、自発分極等が挙げられる。別態様として、光は偏光していなくともよく、混合物の中に二色性染料を取り込んで、装置のスイッチ操作によって光学的性質に変化を起すようにしてもよい(ゲスト-ホストLCD)。
【0007】
これらの化合物の性質はその構造に応じて変動する。従って、多種多様な構造は、広範囲の各種性質を確立し、次に、標的用途に対して特異的に適合させるためにも有用である。例えば、低い複屈折度(Δn〜0.12)を持つ化合物、例えば、あるフェニルシクロヘキシル誘導体は、反射光動作モードを用いる装置において実地に使用されるが、一方、高い複屈折度を持つ混合物は、それよりもはるかに薄い装置、または透過モードでの使用を可能とする。
【0008】
本出願者等は、ジオキサテトラリン成分を含む、一連の、新規化合物であって、液晶物質として使用するのに有用な性質を持つ化合物を工夫して生産した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、式(I):
【化1】

(I)
の化合物が提供される。上式において、R1およびR2は、シアノ、ハロ、置換されていてもよいヒドロカルビル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロシクリル、基R13C(O)O-または基R13OC(O)-から独立に選ばれ、前式においてR13は置換されていてもよいヒドロカルビルであり;
R3、R4、およびR5は、水素、ハロゲン、CF3、またはSF5から独立に選ばれ;
X1、X2、X3、およびX4は、直接結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、または-OCH2-から独立に選ばれ;
A、B、C、およびDは、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシル、またはヘテロ環から独立に選ばれ、いずれも置換されてもよく;
nは0か1であり、mは0か1であり、pは0か1であり、かつ、kは0から1であるが、ただしk+m+n+pが0よりも大きく、さらにkが0である場合、nは0であり、さらにmが0である場合、pは0である。
【0010】
本明細書で用いる用語「ヒドロカルビル」は、炭素および水素原子を含む任意の構造を指す。例えば、そのようなものとして、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール例えばフェニルまたはナフチル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはシクロアルキニルが挙げられる。それらは、最大20、好ましくは最大10個の炭素原子を含むことが好適である。
【0011】
「ヘテロ環」という用語は、例えば、4から20個、好適には5から10個の環原子を含む、芳香環または非芳香環であって、環原子の内の少なくとも一つはヘテロ原子、例えば、酸素、イオウ、または窒素である芳香環または非芳香環である。このグループの例としては、フリル、チエニル、ピロリル、ピロリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、イオスキノリニル、キノクサリニル、ベンズチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチエニル、またはベンゾフリルが挙げられる。
【0012】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、最大20個、好ましくは最大6個の炭素を含む、直鎖または分枝鎖アルキル基を指し、「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル基を指す。「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、例えば、2-20個の炭素原子、例えば2から6個の炭素原子を含む、不飽和の、直鎖または分枝鎖を指す。さらに、「アリール」という用語は、芳香族、例えば、フェニルまたはナフチルを指す。「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」および「シクロアルキニル」という用語は、環状であり、少なくとも3個、好適には5から20個の環原子を有する基を指す。これらの環は共に融合されて、2環、3環、または、さらに大きな複数環システムを形成してもよい。
【0013】
置換されていてもよいヒドロカルビル基は、官能基、または他のタイプのヒドロカルビル基によって置換されてもよい。例えば、環状基例えばアリール、ヘテロ環またはシクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル、これらはいずれも、ヒドロカルビル鎖、例えば、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基を始め、官能基によって置換されてもよい。ヒドロカルビル基自体がアルキル、アルケニル、またはアルキニル基である場合、該ヒドロカルビル基は、前述のように、環状基、例えば、ヘテロ環基、アリール基、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはシクロアルキニル基によって置換されてもよく、その際、後者は、それ自体がさらに、ヒドロカルビルまたは官能基によって置換されてもよい。置換されていてもよいヒドロカルビルはまた、O、S、CO2またはOCOまたは-C≡C-によって置換される、1個以上の非隣接炭素原子を有していてもよい。
【0014】
「官能基」という用語は、反応性の基、例えば、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、C(O)ORa、C(O)Ra、OC(O)Ra、ORa、S(O)tRa、NRbRc、OC(O)NRbRc、C(O)NRbRc、-NRbC(O)ORa、-NRbC(O)Ra、-NRaCONRbRc、=NORa、-N=CRbRc、S(O)tNRbRc、または-NRbS(O)tRaであり、前式において、Ra、Rb、およびRcは、水素または置換されていてもよいヒドロカルビルから独立に選ばれ、または、RbおよびRcは、共に置換されていてもよい環を形成し、該環はさらに、ヘテロ原子、例えば、イオウ、S(O)、S(O)2、酸素、および窒素を含み、tは、0、または1-3の整数である。
【0015】
本明細書で用いられる「ヘテロ原子」という用語は、上述の非炭素原子、例えば、酸素、窒素、セレン、またはイオウ原子を指す。窒素原子が存在する場合、アミノ残基の一部として存在し、その後に、例えば、水素またはアルキルで置換されてもよい。
【0016】
ヒドロカルビル基が存在する場合は、アルキル、アルコキシ、またはハロゲンによって置換されるのが好都合である。
【0017】
上に定義した液晶化合物では、R1およびR2は、適当な末端基を表し、一方、残余の中間構造体は中間相生成コアを表す。
【0018】
通常、R1およびR2は、(A、B、C、またはDの環システムに加えて)さらに別の環システムを含まない。特に、R1およびR2は、置換されていてもよい1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシル、またはヘテロ環からは選ばれない。
【0019】
R1およびR2がアルキルまたはアルコキシ基である場合、それらは3から8個の炭素原子、好ましくは3から5個の炭素原子を持つことが適当である。これらの炭素原子は直鎖として配置されるのが適当である。
【0020】
R1およびR2は、アルキルまたはアルコキシから独立に選ばれることが好ましい。大抵の配列において、アセタール基に対する隣接原子(この原子は、R1(p=m=0の場合)の一部、またはX3の一部であってもよい)は、アセタールの機能性を不安定にさせるヘテロ原子からは選ばれない。従って、p=m=0の場合、R1は、アルキルであり、アルコキシではないことが好ましい。
【0021】
ジオキサテトラリン成分に対する直接的置換挿入は有利である。なぜならば、置換原子は、アセタール成分の酸素に対する位置がロックされるからである。R3、R4、およびR5の内の少なくとも一つはハロゲンであることが好ましい。R3、R4、またはR5のいずれかがハロゲンである場合、それはフッ素または塩素であることが適当であるが、フッ素であることが好ましい。従って、特に、R3、R4、およびR5は、水素またはフッ素から選ばれる。
【0022】
X1、およびX3は、直接結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-CH2O-、-CH=CH-、または-C≡C-から独立に選ばれることが好ましい。
【0023】
X1、X2、X3、およびX4は、直接結合、または-CH2CH2-から選ばれることが適当である。-CH2CH2-基であるものは、X1、X2、X3、およびX4の内1個を超えないことが好ましく、X1、X2、X3、およびX4の全てが直接結合であることがもっとも好ましい。X3に対し酸素原子が直接付着しないことが好ましい。好ましい選択肢として、m+p=0で、R1がアルキルの場合、X1は-COO-であってはならない。
【0024】
k+m+n+pは、3以下であることが好ましく、k+m+n+pは1または2である。
【0025】
ジオキサテトラリン単位は、液晶化合物内の任意の位置に配置される、すなわち、液晶コアのどちらかの末端、または、それとは別に、液晶コアのほぼ真ん中に配置されることも本発明の範囲内にある。
【0026】
環A、B、C、またはDは、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシル、2,5-ジオキサニル、ピリジル、または2,5-ピリミジニルから選ばれるのが有利である。A、B、C、および/またはDは皆1,4-フェニレンであることが好ましく、あるいは、内部環AまたはCは、存在する場合は、1,4-フェニレンであり、外部環BまたはDは、存在する場合は、1,4-シクロヘキシルであることが好ましい。A、B、C、およびDは、存在する場合は、1,4-フェニレン、または置換されていてもよい1,4-フェニレンであることがより好ましい。
【0027】
環A、B、C、およびDに対する、好ましい任意の置換基は、ハロ、特にフルオロであり、さらに、これらの環における置換基は全てフルオロであることが有利である。存在する場合、A、B、C、およびDの内の少なくとも一つは、その環内の隣接炭素原子の上に配された2個のフルオロ置換基を含むことが好ましい。
【0028】
ある特に好ましい実施態様では、A、B、C、またはDから選ばれるもう一つの環も、存在する場合には、少なくとも1個のフルオロ置換基を含み、その構造体が立体配置的にロックされる、および/または、自由に回転できない場合には、全てのフッ素原子は、存在する場合には、構造体の同じ側にあると有利である。
【0029】
通常、式(I)の化合物は、少なくとも1個のフッ素原子を、ジオキサテトラリン単位に配されて、あるいは、より一般的には、環A、B、C、またはDの内の一つにおいて置換基として含む。式(I)の化合物は、2個以上のフッ素原子を含むことが好ましく、式(I)の化合物は3個以上のフッ素原子を含むことがさらに好ましい。
【0030】
環の側方フッ素置換を用いると、強力な側方双極性が付与されるので、ネマチック相において負の誘電率異方性を示す物質が得られる。少なくとも3個のフルオロ置換基を取り込むことによって、一般に、特に強力な、負の誘電率異方性が得られ、スメクチックC相では、双極の2軸性が増す。フルオロ置換基は、環A、B、C、D、および/またはジオキサテトラリン単位の内の任意の一つに存在してよい。しかしながら、存在するシクロヘキシル環はどれも置換されないことが好ましい。シクロヘキシル環が少なくとも1個のフッ素原子によって置換されているならば、フッ化水素の損失を回避するように注意しなければならない。
【0031】
フッ素化(もしあれば)の程度、および/または、フッ素化がある場合には、フッ素化の置換パターンを適切に選択することによって、式(I)の化合物が得られる。本化合物は、いくつかのモード、例えば、陽性誘電率異方性ネマチックス(AM/TN/STN)、陰性誘電率異方性ネマチックス(VAモード)、および、スメクチックスにおける使用、例えば、強誘電率、反強誘電率、および電傾装置における使用に好適な液晶を提供する可能性がある。
【0032】
陰性誘電率異方性ネマチック液晶は、テレビジョンディスプレイ用途を含むディスプレイに主に使用される、垂直配列(VA)モードの液晶装置に特に有用である。VA LCDについてはいくつかの実施態様があるが、全て、陰性誘電率異方性を示す液晶混合物を必要とする。
【0033】
式(I)の液晶化合物は、非直線的であるか、曲がっている。その利点の一つは、比較的融点の低い化合物をもたらす可能性のあることである。
【0034】
式(I)の化合物はキラルであり、キラル相を形成するのに使用されてもよい。キラル相の例としては、スメクチックC*相またはコレステリック相がある。化合物はラセミ混合物として形成され、得られたラセミ体は、光学的不活性液晶化合物および/または混合物として使用されることが好ましい。
【0035】
環CおよびDが存在しない、有用化合物は、式(XIX):
【化2】

の化合物を含む。上式において、k、n、R1、R2、R3、R4、R5、X1、X2、AおよびBは、上に定義した通りであり、k+n>0である。
【0036】
傾斜キラルスメクチックの強誘電性スイッチングに基づく電気光学装置の場合、液晶回転は、スイッチング曲線においてτVminとして示されるスイッチング電圧の低下を強調する。環A、B、C、およびD、それらが存在する場合、の内の任意の環における水素の内の任意の3個がフッ素によって置換される、式(I)の過フッ化化合物は、回転を示す可能性がある。
【0037】
ある好ましい実施態様では、本発明は、式(II):
【化3】

の化合物を提供する。上式において、R1、R2、R3、R4、R5、X1、およびX2は、上に定義した通りであり、R14、R15、R16、およびR17は、水素またはハロゲン、特にフッ素から独立に選ばれる。個々の基X1およびX2は同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
ある特定の実施態様では、R3、R4、R5、R14、R15、R16、およびR17の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、その他は水素である。前述したように、任意の三つがフッ素である場合、回転を示す可能性がある。
【0039】
式(I)の化合物、および後に定義するその誘導体において、少なくとも3個のフルオロ置換基を使用することによってさらに、化合物の融点低下の傾向が生ずる。
【0040】
式(II)の化合物は、スメクチックC相の高度の安定化を要する、化合物の混合物に対する添加剤として使用するのに特に好適である。式において、R3、R4、R5、R14、R15、R16、およびR17の内の二つのみがフルオロであり、他は水素である。
【0041】
式(II)の液晶化合物の特に好ましい例を、下記の表1に掲げる。
【0042】
【表1】

表1
【0043】
式(III)の液晶化合物の特に好ましい例を、下記の表2に掲げる。
【0044】
【表2】

表2
【0045】
本発明の化合物、特に、表1および2のものは、メマチックおよび/またはスメクチック相を形成し、液晶化合物として有用である。
【0046】
環CおよびDが存在せず、Bが1,4-シクロフェニル基である場合、Bは置換されないことが好ましい。従って、別の好ましい実施態様では、式(III):
【化4】

であって、上式において、R1、R2、R3、R4、R5、R14、R15、X1、およびX2は、上に定義した通りである、化合物が提供される。
【0047】
環Bが不在である、式(XIX)の好ましい化合物は、式(X):
【化5】

であって、上式において、R1、R2、R3、R4、R5、X1、R14、およびR15は上に定義した通りである、化合物を含む。R3、R4、R5、R14、およびR15の内の二つまたは三つはフッ素であり、他は水素であることが好ましい。
【0048】
さらに別の好ましい実施態様では、mは1で、kは1であり、pとnは共に0であり、従って、ジオキサテトラリン単位の両側に環が存在することによって、式(XX):
【化6】

の化合物が得られる。上式において、R1、R2、R3、R4、R5、X1、X3、AおよびCは、上に定義した通りである。
【0049】
環Aまたは環Cのどちらか、または理想的には両方が、少なくとも1個のフッ素原子によって置換されることが好ましい。通常、この化合物には、2個以上のフッ素原子が存在する。
【0050】
nとpが0であり、mとkの両方が1である場合、式(XX)の好ましい化合物は、式(XV):
【化7】

であって、上式において、X1およびX3は前に定義した通りであり、R1、R2、R3、R4、R5、R14、およびR15は前に定義した通りであり、かつ、水素またはハロゲンから独立に選ばれる化合物を提供する。R3、R4、R5、X1、R14、およびR15の内の一つ、二つ、または三つがフッ素であり、他は水素であることが好ましい。Aがシクロヘキシルから選ばれ、Cが1,4-フェニレンである別態様も好適に調製される。
【0051】
式(XXV):
【化8】

であって、上式において、R1、R2、R3、R4、R5、X1、およびX3は上に定義した通りであり、R14、R15、R44、およびR45は、水素またはハロゲンから独立に選ばれる化合物が好都合に提供される。
【0052】
nが0でありkが0である、さらに別の実施態様では、ジオキサンテトラリン単位のアセタール部分に少なくとも1個の環が与えられ、これによって、大きな末端基を有する液晶、すなわち、式(XVIII):
【化9】

の化合物が得られる。上式において、p、m、R1、R2、R3、R4、R5、X3、X4、CおよびDは、上に定義した通りである。
【0053】
環CまたはDは、少なくとも1個のフッ素原子によって置換されてもよく、その内の2個以上は存在してもよい。
【0054】
式(XVIII)の好ましい化合物は、式(XXX):
【化10】

によって与えられてもよい。上式において、R1、R2、R3、R4、R5、X3は上に定義した通りであり、R44およびR45は、水素またはハロゲンから独立に選ばれ、ハロゲンはフッ素であることが好ましい。R3、R4、R5、R44およびR45の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、他は水素であることが好ましい。
【0055】
式(XVIII)のさらに別の好ましい化合物が、式(XXXV):
【化11】

の化合物によって好都合に提供される。上式において、R1、R2、R3、R4、R5、X3、およびX4は上に定義した通りであり、R44、R45、R46、およびR47は、水素またはハロゲンから独立に選ばれ、ハロゲンはフッ素であることが好ましい。R3、R4、R5、R44、R45、R46、およびR47の内の少なくとも一つ、二つ、または三つはフッ素であり、他は水素であることが好ましい。
【0056】
本発明の化合物は、一般に、化学的に、光化学的に安定であり、高い固有抵抗を示す。
【0057】
本発明の物質は、装置の表面処理に応じて要求どおりに、ネマチック相で垂直配向または平行配向のいずれかに整列することが可能である。
【0058】
単一液晶物質が、装置に存在する液晶物質に要求される全ての性質を示すことはほとんどない。従って、所期の結果を実現するためには、式(I)の1種以上の化合物を含む混合物、または、他の既知の液晶化合物との混合物が必要とされる。化合物は互いに溶融することが重要であり、これは、スメクチックC混合物では特に問題となる。
【0059】
本発明の化合物では、他の液晶化合物との混和性が増す。このため、混合物処方においてより大きな融通性が得られる。
【0060】
式(I)の化合物は、例えば、式(IV):
【化12】

の化合物で、上式において、R1、R3、R4、R5、X1、およびAは、式(I)に関連して定義された通りであり、kは1であり、かつ、R20は反応基、例えばボロン酸B(OH)2、あるいは、脱離基、例えば、ハロ、特に臭化物、またはOSO2CF3基である化合物を、式(V):
【0061】
【化13】

の化合物と反応させることによって、例えば、縮合することによって好適に調製される。ただし、式(V)において、n、X2、B、およびR2は、式(I)に関連して定義した通りであり、R21は脱離基、例えば、ハロ、特に臭化物、またはOSO2CF3基であり、R20が反応基であるか、あるいは、R21が反応基、例えば、ボロン酸B(OH)2であり、R20は脱離基である。
【0062】
この反応は、結合剤、有機溶媒、および、塩基、その例は、ジメトキシエタン(DME)に溶解したPd(PPh3)4である、の存在下、かつ、アルカリ金属炭酸塩、例えば、Na2CO3の存在下で好適に実行される。
【0063】
式(IV)の化合物は新規化合物である、それ故、本発明のさらに別の局面を形成する。これらの化合物はそれ自体が液晶性を持つので、液晶成分として、または、ドーパントまたは添加物としても有用である。
【0064】
式(IV)の化合物は、式(VI):
【化14】

の化合物を、上式において、k、R3、R4、R5、X1、およびAは、式(I)に関連して定義された通りであるが、式(VIII):
【0065】
【化15】

の化合物と共に反応させることによって好適に調製される。なお、上式において、C、D、m、p、X3およびX4は上に定義した通りであり、R23は、任意の好適な脱離基であり、(VI)型の化合物であるジオールとアセタールを形成することが可能である。R23は、カルボニル、またはジハロから選ばれるのが好ましく、ダルボニルであることがより好ましい。
【0066】
式(VIII)において、1個または2個の環が存在することが好都合であり、環C、または環CとDが存在することが好都合である。
【0067】
式(VI)の化合物は、式(VII):
【化16】

の化合物を、上式において、R3、R4、およびR5は、式(I)に関連して定義された通りであり、R30は反応基、例えばボロン酸B(OH)2、あるいは、脱離基、例えば、ハロ、特に臭化物、またはOSO2CF3基である化合物を、式(VIIII):
【化17】

の化合物と共に反応させることによって好適に調製される。式(VIIII)において、X1およびAは、式(I)に関連して上に定義した通りであり、R31は脱離基、例えば、ハロ、特に臭化物、またはOSO2CF3基であり、R30が反応基であるか、あるいは、R31が反応基、例えば、ボロン酸B(OH)2であり、R30は脱離基であり、R40は脱離基、脱離基の前駆物質、または保護された脱離基であり、あるいは、R40が脱離基であるならば、R31がR40とよりはむしろR30と反応する限り、R40はR20またはR2である。
【0068】
上に示したように、環A、B、C、D、または、ジオキサテトラリン単位の内の任意の一つ以上において1個以上のフッ素原子が挿入されてよく、これは、適当なものであれば、任意のフッ化技術によって実行されてもよい。
【0069】
本発明はさらに、新規の特性、または上に特定した新規の特性の任意の組み合わせを提供する。さらに別の局面では、本発明は、液晶化合物として使用するのに適切で、R1およびR2が、液晶化合物の末端基として一般に用いられる任意の末端基によって置換されることを除けば、上に定義された通りの式(I)を持つ、化合物を提供する。
【0070】
さらに別の局面では、本発明は、前述のものと同じ、少なくとも一つの化合物を含む、液晶混合物を提供する。液晶混合物は、式(I)を持つ、本発明による少なくとも2種の異なる化合物、および、要すれば任意に他の液晶化合物を含むことが好適である。
【0071】
本発明のさらに別の局面では、本発明による化合物の、液晶化合物としての使用が提供される。
【0072】
液晶化合物の使用法であって、化学式1を含む開始材料を選択すること、および、該材料を液晶装置の中に組み込むことを含む使用法が提供される。
【0073】
本発明の化合物は、液晶装置の中に用途を持つが、一つの好適モードは、反射光動作モードにおける使用である。該化合物はまた、液晶オンシリコン(LcoS)装置における用途、さらには捩れ型ネマチック(陽性誘電率異方性物質)、および垂直配向ネマチック(VAN)装置(陰性誘電率異方性物質)における用途においても好適である。さらに、該化合物は、強誘電率ディスプレイおよびSTNにおいて、活性マトリックス、または、陽性誘電率異方性によって動作するTN装置において有用である可能性がある。
【0074】
本発明はまた、前述の式(I)と同じ、少なくとも一つの化合物、または、前述のものと同じ液晶混合物を含む液晶装置を提供する。
【0075】
本発明のさらに別の局面は、二つの、隔てられたセル壁を含む装置であって、各セル壁は電極構造を担持し、少なくとも一つの対向面において配向層で処理され、セル壁の間には、液晶物質の層が挟持され、本発明による化合物の少なくとも一つを含むことを特徴とする装置を提供する。
【0076】
さらに、二つの、隔てられたセル壁を含む装置であって、各セル壁は電極構造を担持し、少なくとも一つの対向面において配向層で処理され、セル壁の間には、液晶混合物の層が挟持され、本発明による少なくとも2種の化合物から成る液晶混合物を含むことを特徴とする装置を提供する。
【0077】
別の配置では、装置は、少なくとも4個の電極を含み、そのために前記液晶化合物または混合物が、一つを超える方向において切り換えが可能とされるセル壁を含む。
【0078】
さらに提供されるものは、双安定型ネマチック液晶装置であって、
液晶物質または混合物(上に定義した通りの)の層を挟持する二つのセル壁;
両壁における電極構造;
液晶分子に対し配向を与える、両セル壁の対向面における表面配向;
液晶物質の複数のスイッチ状態を区別する手段;
少なくとも一つのセル壁における表面配向格子であって、液晶分子が、同じ方位角面において二つの異なるプレティルト角度を取ることを可能とする表面配向格子を含み、
配置は、適当な電気信号が電極に印加された後、二つの安定な液晶分子形態が存在可能となるように行われ、
前記液晶物質の層が、式(I)の化合物を含む、
ことを特徴とする前記液晶装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
次に、本発明を、単に例示として下記の実施例と図面を参照しながら説明する。
【0080】
図1、2、および3の装置は、スペーサリング5によって、典型的には1から15 μm隔てられる、2枚のガラス壁3,4の間に含まれる、本発明による液晶混合物2の層によって形成される液晶セル1を含む。両ガラス壁3,4の内面は、電極6によってコートされる。電極は、壁全体を被うシート様形状であってもよく、あるいは、例えば、複数のストリップ電極であって、番地割り当てが可能な、電極交差点配列を与える、ストリップ電極として形成されてもよい。壁はまた、本発明による物質から成る、配向層(図示せず)によってコートされる。
【0081】
混合物2がネマチックである場合、装置は、既知の、スーパー捩れ型ネマチック装置、別名STN装置であってもよい。この場合、装置の電圧ONおよびOFF状態を区別するために偏光板13が使用される。
【0082】
液晶混合物は、ネマチック、キラルネマチック(コレステリック)、またはスメクチック(例えば、強誘電性)混合物であってもよい。装置は、ディスプレイ装置、例えば、英数字を表示する装置、または、情報を表示するx,yマトリックスであってもよい。それとは別に、装置は、光の透過を変調するシャッターとして、例えば、空間光変調器として、または、プライバシー保護ウィンドウとして動作してもよい。
【0083】
透過型マトリックス装置(図1に示す様な)の場合、例えば、InSnO2から成る、ストリップ様列電極61から6mが、一方の壁3に形成され、同様の行電極71から7nが、他方の壁4に形成される。m列の電極とn行の電極があると、これは、番地割り当ての可能な要素から成る、m x nのマトリックスを形成する。各要素は、列電極と行電極の交点によって形成される。アクティブマトリックス装置であれば、各ピクセルに対し、点状の非線形装置、例えば、トランジスターまたはダイオードが連結する。
【0084】
パッシブマトリックス装置の場合は、列駆動器が、各列電極6に電圧を供給する。同様に、行駆動器9は、各行電極7に電圧を供給する。印加された電圧の調節は、電源11から電力を、クロック12からタイミングを受容するコントロールロジック10によって行われる。
【0085】
アクティブ装置、例えば、薄層トランジスターアクティブマトリックス液晶装置(TFT AMLCD)の場合、液晶の反対側における共通電極の外に、3タイプの電極、ピクセル、走査、およびシグナル電極が存在する。コントロール電極は、シグナル電極の電圧が、関連ピクセル電極に印加されるようにゲートを操作する。
【0086】
次に、本発明を体現する、混合物および装置使用の例を図2を参照しながら説明する。
【0087】
本液晶装置は、例えば、ガラスでできた、2枚の透明な板3および4から成る。アクティブマトリックス装置の場合、通常、この透明な板は、SiO2から成るパッシベーション層を多くの場合伴う、アルミノケイ酸(アルカリ非含有)ガラスによって構成される。アクティブマトリックス・ディスプレイの場合、アクティブデバイス、例えば、薄層トランジスターが製造され、フルカラー表示のためにはカラーフィルター層が加えられる。上記プレートの内面は、多くの場合インジウム・スズ・酸化物(ITO)である、透明電極6および7によってコートされる。電極は、フォトリソグラフィ技術によってパターン焼付けされる。
【0088】
透明プレート3および4は、本発明による1種以上の液晶化合物を含む、光活性サンプルによってコートされる。典型的コーティング過程は、本発明の化合物の内の一つを、溶媒、例えば、シクロペンタノンに溶解し、次いで、該光活性化合物を透明板の上にスピンコーティングすることを含む。光活性化合物がプレートの上にコートされたならば、該化合物を、光化学的放射に暴露し、光活性分子の架橋結合を誘発する。この架橋結合過程は、配向層の複屈折を測定することによって監視することが可能である。各行電極および列電極の交点は、番地割り当て可能な要素またはピクセルから成るx, yマトリックスを形成する。例えば、ポリメチルメタクリレートから成るスペーサ5は、ガラス板3および5を、適当な距離、例えば、2-7ミクロン、好ましくは4-6ミクロン隔てる。ガラス板の間のスペースを充填することによって、液晶混合物2が、ガラス板3,4の間に導入される。これは、標準技術によるセルの流動充填によって実行してもよい。既存の技術を用い、真空中で接着剤によってスペーサ5を密封する。セルの前および後ろに偏光板13を配置してもよい。
【0089】
装置は、透過モードでも、または反射モードで動作してもよい(図2および3を参照)。前者の場合、例えば、タングステン球から発せられる、装置を通過する光が、選択的に透過または遮断されて、所望のディスプレイを形成する。反射モードでは、ミラー、または散乱反射器(16)が第2偏光板13の後ろに設置され、周辺光を反射して再びセルおよび2枚の偏光板を透過させる。ミラーを部分的に反射性にすることによって、透過モードおよび反射モードの両方で装置を動作させることも可能である。
【0090】
配向層(図示せず)は二つの機能を持つ。一つは、接触液晶分子を好ましい方向に配向することであり、他の一つは、これらの分子に、数度、典型的には、約4°または5°の傾き−いわゆる表面ティルト−を与えることである。別態様では、単一偏光子および染料混合物を混合してもよい。本発明の液晶化合物は、アクティブ番地マトリックスを備えるLCD、例えば、薄層トランジスターLCD(TFT-LCD)に用いてもよいし、あるいは、パッシブ番地マトリックスを備えるLCD、例えば、二重走査STNに用いてもよい。
【0091】
一般的反応スキーム
本発明による新規液晶化合物生産のための下記の反応スキームは、本発明のさらに別の局面を形成する。
【0092】
スキーム1
スキーム1は、環システムが、アセタール成分の反対側に配される、式(XIX)の化合物の前駆体の合成を示す。
【0093】
【化18】

【0094】
ジオールは市販の試薬であるが、このジオールを、選ばれたR1基を含むアルデヒドによって、パラトルエンスルフォン酸(PTSA)とトルエンの存在下に縮合して、対応するアセタールを生成する。
【0095】
要すればフッ素化されていてもよいフェニル成分は、所期のR2基とボロン酸を含む。このボロン酸は、公共施設において標準法に従って調製されたものである。次に、ジオキサテトラリン成分の臭化物を、Pd(PPh3)、炭酸ナトリウム、DME、および水の存在下に、スズキ結合反応を介してボロン酸に結合させて、最終産物の液晶物質を高い収率で生成する。
【0096】
スキーム2
スキーム2は、2(4'-アルキルシクロヘキシル)-6-ブロモベンゾ[1,3]ジオキサン、および式(XX)の化合物の前駆体の合成を例示として示す。この化合物では、ジオキサテトラリン成分は、環システムの間に配される。
【0097】
【化19】

【0098】
化合物は、市販のtrans-4-アルキルシクロヘキサンカルボン酸から合成した。この酸を、水素化アルミニウムリチウムによってアルコールに還元し、得られたアルコールを、ピリジニウムクロロクロメートによって選択的に酸化して所期のアルデヒドとした。アルデヒドを、PTSAトルエン液という酸性条件下で、5-ブロモ-2-ヒドロキシベンジルアルコールによって縮合すると、2(4'-アルキルシクロヘキシル)-6-ブロモベンゾ[1,3]ジオキサンなる中間体が得られた。
【0099】
付加的環システムが存在する(XV)を含む、式(XX)の化合物は、スキーム1で詳述したように、臭化物をアリールボロン酸と結合させるスズキの結合によって調製されて、所望の産物が得られる。
【0100】
スキーム3
スキーム3は、ジオキサテトラリン単位のフッ素化がR5において実現される、式(I)の化合物に対する前駆体の合成を示す。
【0101】
【化20】

【0102】
ベンジル保護開始材料を、THFに溶解したn-BuLiに-78℃で加え、次に、得られた有機金属にB(OMe)3を加えた。反応を酸性条件下で進めたところボロン酸が得られた。このボロン酸を、過酸化水素を用いて酸化しアルコールとした。炭酸カリウムの存在下に、所望の臭化アルキル(BrCnH2n+1)を用いてウィルアムソンのエーテル合成を行ったところ、所望のエーテルが得られた。次の工程は、酸性プロトンの除去であり、このエーテルを、THFに溶解したn-BuLiに-78℃で加え、得られた陰イオンをDMFで反応停止させ、反応を塩化アンモニウム中で進行させて対応するアルデヒドを生成した。水素の存在下活性炭上パラジウムと反応させることによってアルデヒドの還元および脱ベンジル化が実現され、ベンジルジオールが得られた。ジオールをアルデヒドR1CHOと縮合させたところ、スキーム1で記載したものと同様のやり方でアセタールが得られた。
【0103】
スキーム4
スキーム4は、ジオキサテトラリン単位のフッ素化がR3および/またはR4において実現される、式(I)の化合物に対する前駆体の合成を示す。
【0104】
【化21】

【0105】
要すればフッ素化されていてもよいブロモフェノールを、酸性条件下にパラフォルムアルデヒドと反応させたところ、ヒドロキシ基に対してオルトのアルデヒドが得られた。このアルデヒドと、ボロン酸付属フェノールとを反応させたところボロン酸エステルが得られ、これを、過酸化水素によって酸化的に分断すると、ジオールが得られた。このジオールを、所望のR1基を含む、適当なカルボン酸R1COOHと、PTSAの酸性条件下で反応させると、対応するアセタールが生産された。
【0106】
最後に、この臭化物と、所望の環システムとR2末端基を含む適当なアリールボロン酸とのスズキ結合を、スキーム1で詳述したように実行すると、所望の産物が得られた。
【0107】
ジオキサテトラリン成分に、R3、R4、およびR5の内の任意の基においてハロゲン置換を導入するための上記スキームは、本発明のもう一つの局面を形成する。
【0108】
スキーム3によって製造される化合物を、3-ブロモ-2-フルオロフェノールを開始材料としてこの方法によって調製することが可能であることも本発明の範囲内にある。
【0109】
RK287合成の特異的例
下記に示す、本発明による、2フッ素化、2環式液晶化合物、すなわちRK287を合成するための好ましい方法を次に説明する。合成は、前述のスキーム1に基づくが、ボロン酸の初期調製の詳細の外に、他の、些少の実験的修正を含む。
【0110】
【化22】

【0111】
2,3-ジフルオロフェノール(50 g, 0.384 mol)、1-ブロモヘプタン(75.6 g, 0.422 mol)、K2CO3 (53.1 g, 0.384 mol)、およびブタノン(400 mL)を一緒に還流下一晩加熱する。完了後、無機塩をろ過除去し、Et2Oによる抽出後、溶媒を減圧留去する。ヘプチルエーテル産物を減圧蒸留によって精製する(105-115℃/0.5 mmHg)。収量85 g(97%)。
【0112】
乾燥THF(400 mL)に溶解した前記ヘプチルエーテル(84 g, 0.370 mol)の攪拌冷却(-78℃)液に、乾燥窒素の雰囲気下、nブチルリチウム(2.5ヘキサン液、148 mL, 0.370 mol)を滴下する。この反応混合液を攪拌し(2.5時間)、次に、乾燥THF(100 mL)に溶解したB(OMe)3 (57.7 g, 0.555 mol)の、あらかじめ冷却(-78℃)した液を-78℃で滴下する。この反応混合液を一晩放置し室温に温め、次に、HCl希薄液(18.5%, 200 mL)と共に攪拌する(1時間)。産物をEt2Oに抽出し、合わせた抽出液を水と塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥する。溶媒を減圧除去したところ、ボロン酸が得られた。収量96 g(96%)。
【0113】
3-ブロモ-2-ヒドロキシベンジルアルコール(4.0 g, 12.77 mmol)を、DME(100 mL)、および50 mLのNa2CO3の水溶液(15 g, 141.5 mmol)に溶解する。溶液を減圧し、乾燥窒素の雰囲気でフラッシュする。触媒Pd(PPh3)4 (0.5 g, 0.43 mmol)を加え、DME(100 mL)に溶解したボロン酸(4.17 g, 15.32 mol)を滴下する。この反応を、還流下(12時間)、乾燥雰囲気下に加熱する。次に、この冷却反応混合液をEt2Oに抽出し、水と塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥する。乾燥剤はろ過除去し、溶媒は減圧留去する。産物RK287は、シリカ(ヘキサン)によるカラムクロマトグラフィーにて精製し、エタノールから再結晶する。収量4.8 g(81%)。
【実施例】
【0114】
下記の実施例は、本出願人によって調製された、選ばれた、本発明の化合物および混合物、およびその性質、液晶装置に使用した場合の適性について詳細に説明する。
【0115】
(実施例1)
下記の表に示すように、ある範囲のアルキル/アルコキシ末端基を持つ、ある選ばれた範囲の2および3環システムを合成した。これらの化合物において、2および3個の環は、ジオキサテトラリン成分のフェニル環部分に配される。化合物は、前述のスキーム1を用い、ただし、適当に修飾されたボロン酸試薬を用いて合成した。
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

表3:選ばれた3環システム
【0118】
【表5】

表8:選ばれた2環システム
【0119】
表3および表8において、R3、R4、およびR5は水素であり、かつ、X1およびX2(存在する場合)は直接結合である。選択範囲の上記化合物について各種の試験を行ったところ、下記のような物理的性質が確認された。
【0120】
光学的性質
これら全ての化合物の内でもっとも低い融点を持つものはRK203であることが特定された。これを、ホスト材料20-113(市販の、低Δε混合物)に20%および40%の添加レベルで溶解した。
【0121】
次に、この混合物について、表3および8に記録されているものと同様の、その相転移特性を、その材料を標準的試験セルに入れ、それが加熱、冷却されている際に、顕微鏡を通してそれを観察することによって調べた。
【0122】
同様のことを、2環システムRK241についても行った。アッベの屈折計を用いて複屈折を測定した。液晶混合物は、必要に応じてPVAまたはレシチンを用いて整列し、結果を、100%ドーパントに外挿した。
【0123】
下記が観察された。
【表6】

表4:複屈折データ
*はドーパントが一晩の中に溶液から脱出したことを示す。
【0124】
これらの物質は、その直線的複合構造、および、複合芳香環の数のために比較的高い複屈折を示す。
【0125】
熱的性質
ジオキサテトラリンから、代表的ホスト混合物を処方し、100%の新規化合物を含むネマチック相を得、相互の混和性を確かめた。この混合物は、三つの代表的同族体の混合物として単純に処方したもので、その混合物を共晶体として最適化しようという試みはしなかった。三つの同族体とは:
*RK216 30%
*RK208 30%
*RK203 40%
【0126】
下記の相的振る舞いが観察された
K 38.9 SmA 124.6 N 169.1 I
【0127】
誘電試験
ネマチック溶液としての材料の誘電率についても試験し、下記の結果が得られた。
【0128】
【表7】

表5:ジオキサテトラリン材料液の誘電率及び100%添加レベルに外挿したもの。
【0129】
これらの物質において、単一のフルオロ置換基は、陽性誘電率異方性をもたらすが、一方、2個(またはそれ以上)のフルオロ置換基は、陰性誘電率異方性を示すネマチック相をもたらす。
【0130】
電気光学試験
本試験では、上述のように、RK241およびRK203を、それぞれ、40%および20%のレベルで20-113に添加することによって生産したネマチック材料を用いた。これらの材料は、RK203の場合は垂直配向剤で、RK241の場合は平行配向剤であらかじめ調整したセルを充填するのに用いた。次に、これらのセルを、交差偏光板越しに顕微鏡で観察した。交差偏光板の間に観察される光学的消滅は、RK203を含む混合物において垂直配向が実現されていることを証明する。次に、これらのセルを、電圧誘発複屈折モードにおいて試験した。試験は、先ず、スタチックスイッチング曲線を調べ、スイッチング閾値電圧を定め、次に、材料のスイッチング時間を測定することである。RK203に関するこれらの結果は、あらかじめ調整されたプレティルトを設けていない垂直配向セルにおいて得られたものであること、および、いずれの場合も、セルまたは光学的形態の最適化を行っていないことを強調しなければならない。試験は、20%添加材料RK203のみについて行った。
【0131】
20-113ホスト材料に対する20% RK203の混合物で満たされた、7.55 μm厚の装置の電気光学的反応では、約17Vの閾値電圧が観察された。
【0132】
【表8】

表6:20-113に添加された20% RK203の電気光学反応
【0133】
RK203は、スイッチングオフ時は比較的高速の反応を示すが、主にΔεが低いために、スイッチオン時間は遅い。この装置は、0V と22V RMSの間でスイッチされた。閾値電圧はいずれの場合も高かったが、これは、このように最適化されていない条件下で、かつ、実質的にゼロの異方性を持つホストにおける希薄液を用いているので予期されたことであった。
【0134】
いずれの場合も、分子の長軸に対して垂直な誘電定数を増すために、側方フッ素化を用いている。環のモノおよびジフッ素化の作用を比較するために、さらに一連の化合物を同様に合成し、評価した。
【0135】
(実施例2)
モノフッ素化化合物
表7に示す、一連の4-アルコキシ-2-フルオロフェニル誘導体を合成した。融点は一般に極めて低く、化合物は、ネマチック相を示す傾向を持つが、基本的に若干のスメクチック傾向も有していた。
【0136】
【表9】

表7:モノフルオロフェニル置換ジオキサテトラリンLC
【0137】
化合物の物理的性質は、ホストシステム20-113に対する20%濃度において調べた。相的振る舞いは、偏光顕微鏡およびMettler EP82加温ステージおよびコントローラによる鏡検によって調べた。屈折率および複屈折は、アッベの屈折計を用い25、45、および60℃で測定し、誘電定数は、平行(SiOxまたはNissan SE130)配向セル、および垂直(クロム複合体)配向セルにおいて、ヒューレットパッカードLCR計を用い25℃で測定した。試験化合物の20%をホストに溶解できない場合は、代わりに10%濃度を用いた。ある場合には、40%の試験化合物も用いた。結果を表9に示す。表10は、3種の試験化合物について、温度による複屈折および屈折係数の変動を示す。
【0138】
モノフルオロフェニル化合物は、一般に、ホスト混合物に比べて、ε平行、およびε垂直の両方において比較的高い値を持つ、Δεがやや陽性の物質である。RK285の場合、誘電率異方性はほとんどゼロである。混合物の複屈折はホストのものよりも高いが、これは、2芳香環システムから予期した通りである。
【0139】
混合物が陽性誘電率異方性を持つ時には、平行配向を呈する、ラビングされたSE180ポリマー表面を持つ、抗平行配向(フレデリックス)させたセルに、該混合物を満たした。1 kHzの方形波を、0.5から1秒の期間印加し、次に遮断し、セルの緩和時間を追跡した。セルを、x4の対物レンズを備える顕微鏡の中に設置した。照明は、dc安定化白光電源から供給し、レーザーノッチフィルターにより589.0 nmの光を得た。反応は、大面積の高速応答性(<1 μs)フォトダイオードによって検出した。混合物の回転粘性率および緩和時間は、光学反応を理論式に当てはめることによって求めた。
【0140】
これらの混合物の誘電率異方性がきわめて低いことは、この測定法では、スイッチングが20と25Vの間で起こっていること、および、Δndについてセル厚を最適化する必要のないことを意味する。ホスト20-113のスイッチング態度も調べた。
【0141】
【表10】

表9:20-113において測定した、モノフルオロフェニル置換ジオキサテトラリンの混合物の物理的性質
【0142】
【表11】

表10:各種温度における複屈折および屈折係数
【0143】
【表12】

表11:8-9ミクロン平行配向セルにおける混合物のスイッチング行動
【0144】
(実施例3)
ジフッ素化化合物
2個のフルオロ置換基を持つ、いくつかの化合物も合成した。20-113との混合物におけるこれらの化合物の物理的性質を定め、その結果を表12および13に示す。
【0145】
【表13】

表12:いくつかのアルキルおよびアルコキシジフルオロフェニル置換ジオキサテトラリンの相的振る舞い
【0146】
【表14】

表13:各種濃度のアルキルジ-フルオロフェニル-ジオキサテトラリンを含む混合物の物理的性質
【0147】
ジフッ素化化合物は、陰性Δε物質であり、その値は、20-113における混合物から外挿すると、-1.8から-2.5の範囲を持つ。これらの混合物の複屈折率は、予期した通り約0.1に留まる。温度の関数としての複屈折値を下記の表14に示す。
【0148】
【表15】

表14:20-113に加えたアルキルジ-フルオロフェニル-ジオキサテトラリンの、25、40、および60℃における複屈折および屈折係数
【0149】
約8ミクロン厚を持つクロム複合体(垂直配向)セルにおける混合物のスイッチング特性を求めた。下記の表15は、混合物の反応速度を示す。ジフッ素化物質は、モノフッ素化物質に比べ、はるかに大きい値の誘電率異方性を持つ。これは、閾値電圧の低下に反映される。すなわち、閾値電圧は典型的には5Vに近い。この変化は、もちろん、誘電率異方性の符号が正から負へと変わる変化に加わるものである。混合物は皆立派な陰性誘電率異方性を持ち、従って、スイッチング電圧はホスト材料よりも低く、スイッチング時間および粘度も、予想のように若干ドーパントの濃度に依存するものの適正である。
【0150】
【表16】

表15:8ミクロン厚の、垂直配向セルにおける混合物のスイッチング行動
【0151】
(実施例4)
3-環ジフッ素化ビフェニル化合物
これらの化合物では、環システムは、ジオキサテトラリン単位の両側に配されるが、スキーム2(+スキーム1)を用いて合成される場合がある。いくつかの、このような化合物の相行動および構造を表16に示す。
【0152】
【表17】

表16:ジオキサテトラリンが両側において置換され、LC鎖の中央にいる3-環システム
【0153】
20-113と前記化合物の混合物の物理的性質をここでも求め、結果を表17に示す。化合物RK360は、物理測定試験で用いた正常の20%の代わりに、10%でかろうじて可溶であった。これらの化合物は、陰性の誘電率異方性の外に、3個の芳香環を含む化合物において典型的に見られる複屈折値を示した。
【0154】
【表18】

表17:3-環化合物を含む混合物の物性
【0155】
化合物RK361およびRK360の、外挿された、陰性誘電率異方性値、-3および-3.7は、化合物RK203(上に記載)の値Δε= -1.6にほぼ等しい。
【0156】
二種類の混合物VM631およびVM632のスイッチング行動を求め、その結果を表18に示す。
【表19】

表18:混合物VM631およびVM632の反応時間
【0157】
(実施例5)
シクロヘキシルジオキサテトラリン
従来好都合にも、芳香族環、例えば、1,4-フェニレンは、シクロアルキル環、好ましくはシクロヘキシルによって置換されてもよいことが見出されていた。フェニルがシクロヘキシルによって置換された化合物は、類縁のフェニル含有化合物と比べ、複屈折率および粘度が低くなるばかりでなく、ディスプレイ用途の長期の使用における安定性が増す。
【0158】
下記の表19に示す化合物は、上記のスキーム1およびスキーム2を用い、市販のtrans-4-アルキルシクロヘキサンカルボン酸から合成された。
【0159】
【表20】

表19:いくつかのシクロヘキシル化合物の相行動と構造
【0160】
非フッ素化化合物RK331は、スメクチックA相しか示さない。他の化合物は全て1個以上のフッ素原子を含み、スメクチック相ばかりでなくネマチック相も示す。RK354に比べると、RK368における末端アルキル/アルコキシ鎖は短く、これは、融点および澄明点を上げ、1個のフッ素原子が存在する場合、スメクチック相出現を抑える。2個のフッ素原子が存在する場合、アルコキシおよびアルキル置換化合物RK325、RK348、およびRK349は皆、ネマチック相ばかりでなくスメクチックA相をも示す。2アルキル同族体RK325およびRK349の融点は、この分子のサイズとしては低い。
【0161】
20-113との混合物における化合物の物性を、前述の技術を用いて求め、結果を表20および21に示す。上で見たように、モノフッ素化化合物は、低い、陽性のΔεを示すが、一方、ジフッ素化化合物は陰性のΔε材料である。外挿Δεは、モノフッ素化化合物では+0.4から+0.9の範囲を持つが、ジフッ素化化合物では-1.6から-3.5の範囲を持つ。これらは、前述のフェニエル化合物のものと近似した値である。
【0162】
8ミクロンセルにおける混合物のスイッチング行動を求め、その結果を表22に示す。
【0163】
【表21】

表20:シクロヘキシル化合物の物性評価
【0164】
【表22】

表21:シクロヘキシル単位を含む混合物の複屈折および屈折係数
【0165】
【表23】

表22:シクロヘキシル単位を含む混合物のスイッチング速度
【0166】
化合物VM627からVM624までは、ここでも陽性Δε混合物であり、優れたスイッチング挙動を示す。
【0167】
陰性Δε混合物VM625からVM629は、一般に、モノフルオロ化合物よりもスイッチングが速く、中でも、もっとも短い末端鎖を持つ化合物を含む混合物VM626が最高速であった。
【0168】
(実施例6)
ジオキサテトラリン環のフッ素化
ジオキサテトラリン環の直接的フッ素化は、フッ素原子(単数または複数)が、ジオキサテトラリン成分の酸素に対してその位置がロックされるという利点を持つ。この化合物を調製するには、上述のスキーム3および4が好適ルートとなる。
【0169】
R3位置にフッ素が存在することによって、そのフッ素と、ジオキサテトラリン成分の酸素との間に相互作用が可能となる。
【0170】
表23に示す下記の化合物が調製された。
【表24】

表23:フッ素化ジオキサテトラリン環化合物の相行動および構造
【0171】
モノフッ素化ジオキサテトラリン成分は、20%濃度で20-113に取り込まれた。この混合物の物性を評価し、その結果を下記の表24に示す。
【0172】
【表25】

表24:フッ素化ジオキサテトラリン環化合物の物性の評価
【0173】
【表26】

表25:フッ素化ジオキサテトラリン環を含む混合物の複屈折および屈折係数
【0174】
この化合物は、陽性の誘電率異方性を持つが、優れた安定性と相行動を示す。この化合物にはスメクチック相は存在しない。
【0175】
本発明の化合物は、同様にIPS作用を利用するディスプレイ装置に特に有用である。液晶の局所的表面配向に対する面内電極の配置に応じて、IPSモードは、陽性または陰性いずれかの誘電率異方性を持つ、本発明の化合物を含むネマチック液晶を使用することが可能である。
【0176】
本発明による化合物は、例えば、捩れ型ネマチック、垂直配向ネマチック、複屈折変動性および/またはIPS装置であって、表面配向、緩和特性、またはパターン化電極を用いて、各ピクセルにおいて、または、ピクセルクラスターにおいて複数のドメインを誘起し、そうすることによって、均一性、コントラスト、または視角の改善を図る装置に使用されてよい。本発明の化合物または混合物を取り込んだ装置は、光学的成分、例えば、リターデーションフィルム、レンザティックフィルム、ディフューザー、およびホログラフィックフィルムと組み合わせて、コントラスト、視角、および色バランスの選ばれた組み合わせを実現するために使用されてもよい。
【0177】
本発明の特定の目的は、アクティブマトリックス基板にネマチックまたはスメクチック液晶層を用いる高品質ディスプレイに好適な物質を供給することである。
【0178】
本発明の物質が使用可能な、さらに別のディスプレイモードとしては、捩れが180度異なる状態間の切り換えに基づいて動作する双安定性ネマチック装置、複数の、好ましい方位角配向を示す表面に基づいて動作する双安定性ネマチック装置、および、高および低ティルト状態間の切り換えが、実質的なヒステレシスによって実行される双安定性装置が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。本発明の装置は、他にも、例えば、45度捩れ型ネマチックディスプレイ、電圧制御捩れ型装置、および、透過/反射ハイブリッドネマチックディスプレイを含む装置にも使用されてよいが、ただしこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、マトリックス番地マルチプレックス液晶装置の平面図である。
【図2】図2は、透過モードで動作する図1の装置の断面図である。
【図3】図3は、図2と同様であるが、ただし、反射モードで動作する装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物。
【化1】

(I)
(式中、R1およびR2は、シアノ、ハロ、置換されていてもよいヒドロカルビル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロシクリル、基R13C(O)O-または基R13OC(O)-から独立に選ばれ、前式においてR13は置換されていてもよいヒドロカルビルであり;
R3、R4、およびR5は、水素、ハロゲン、CF3、またはSF5から独立に選ばれ;
X1、X2、X3、およびX4は、直接結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、または-OCH2-から独立に選ばれ;
A、B、C、およびDは、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシル、またはヘテロ環から独立に選ばれ、いずれも置換されてもよく;
nは0か1であり、mは0か1であり、pは0か1であり、かつ、kは0から1であるが、ただしk+m+n+pは0よりも大きく、さらにkが0である場合、nは0であり、さらにmが0である場合、pは0である。)
【請求項2】
R1およびR2が共にアルキルまたはアルコキシから独立に選ばれることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
アルキルまたはアルコキシ基は3から8個の炭素原子を持つことを特徴とする、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R3、R4、およびR5が水素またはフッ素から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
X1、X2、X3、およびX4が、直接結合、または-CH2CH2-基から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
X1、X2、X3、およびX4が、直接結合であることを特徴とする請求項5記載の化合物。
【請求項7】
k+m+n+pが1または2であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
存在する場合、各環A、B、C、またはDは、少なくとも1個のフッ素原子によって置換されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
2個以上のフッ素原子が存在することを特徴とする、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
A、B、C、およびDは、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシル、2,5-ジオキサニル、ピリジル、または2,5-ピリミジニルから選ばれることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
A、B、C、およびDは、1,4-フェニレン、または1,4-シクロヘキシルから選ばれることを特徴とする、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
下記式(XIX)の化合物を含む、請求項1記載の化合物。
【化2】

(式中、k、n、R1、R2、R3、R4、R5、X1、X2、AおよびBは、請求項1に定義した通りであり、k+n>0である。)
【請求項13】
環AまたはBが少なくとも1個のフッ素原子によって置換されることを特徴とする、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
2個以上のフッ素原子が存在することを特徴とする、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
下記式(II)の化合物を含む、請求項12記載の化合物。
【化3】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X1、およびX2は、請求項1に定義した通りであり、R14、R15、R16、およびR17は、水素またはハロゲンから独立に選ばれる。)
【請求項16】
R3、R4、R5、R14、R15、R16、およびR17の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、その他は水素であることを特徴とする、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
下記式(III)の化合物を含む、請求項12記載の化合物。
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X1、およびX2は、請求項1に定義した通りであり、R14およびR15は、請求項15に定義した通りである。)
【請求項18】
下記式(X)の化合物を含む、請求項12記載の化合物。
【化5】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、およびX1は、請求項1に定義した通りであり、R14およびR15は、請求項15に定義した通りである。)
【請求項19】
R3、R4、R5、R14、およびR15の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、その他は水素であることを特徴とする、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
下記式(XX)の化合物を含む、請求項12記載の化合物。
【化6】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X1、X3、AおよびCは請求項1に定義した通りである。)
【請求項21】
環AおよびCのそれぞれが、少なくとも1個のフッ素原子によって置換されることを特徴とする、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
2個以上のフッ素原子が存在することを特徴とする、請求項20記載の化合物。
【請求項23】
下記式(XV)の化合物を含む、請求項20記載の化合物。
【化7】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X3およびX1は、請求項1に定義した通りであり、R14およびR15は、請求項13に定義した通りである。)
【請求項24】
R3、R4、R5、R14、およびR15の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、その他は水素であることを特徴とする、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
下記式(XXV)の化合物を含む、請求項20記載の化合物。
【化8】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X1、およびX3は、請求項1に定義した通りであり、R14、R15は請求項15に定義した通りであり、かつ、R44、およびR45は、水素またはハロゲンから独立に選ばれる。)
【請求項26】
R3、R4、R5、R14、およびR15の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、その他は水素であることを特徴とする、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
下記式(XVIII)の化合物を含む、請求項1記載の化合物。
【化9】

(式中、p、m、R1、R2、R3、R4、R5、X3、X4、CおよびDは、請求項1に定義した通りである。)
【請求項28】
環CまたはDが少なくとも1個のフッ素原子によって置換されることを特徴とする、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
2個以上のフッ素原子が存在することを特徴とする、請求項28記載の化合物。
【請求項30】
下記式(XXX)の化合物を含む、請求項27記載の化合物。
【化10】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、およびX3は、請求項1に定義した通りであり、R44およびR45は、請求項25に定義した通りである。)
【請求項31】
R3、R4、R5、R44およびR45の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、他は水素であることを特徴とする、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
下記式(XXXV)の化合物を含む、請求項27記載の化合物。
【化11】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、X3、およびX4は、請求項1に定義した通りであり、R44、R45は請求項25に定義した通りであり、かつ、R46およびR47は、水素またはハロゲンから独立に選ばれる。)
【請求項33】
R3、R4、R5、R44、R45、R46、およびR47の内の一つ、二つ、または三つはフッ素であり、他は水素であることを特徴とする、請求項31記載の化合物。
【請求項34】
請求項1に定義される、式(I)の化合物を調製するための任意の製造方法。
【請求項35】
請求項1に定義される式(I)の化合物を調製するための方法であって、
下記式(IV)の化合物を、
【化12】

(式中、R1、R3、R4、R5、X1、およびAは、式(I)に関連して定義された通りであり、kは1であり、かつ、R20は、反応基または脱離基である。)
下記式(V)の化合物と反応させることによって式(I)の化合物を調製することを特徴とする、前記方法。
【化13】

(式中、n、X2、B、およびR2は、式(I)に関連して定義された通りであり、かつ、R21が脱離基でありR20が反応基であるか、あるいは、R21が反応基でありR20が脱離基である。)
【請求項36】
請求項35に定義される式(IV)の化合物を調製するための方法であって、
下記式(VI)の化合物を、
【化14】

(式中、k、R3、R4、R5、X1、およびAは、式(I)に関連して定義された通りである。)
下記式(VIII)の化合物と共に縮合させることによって式(IV)の化合物を調製することを特徴とする、前記方法。
【化15】

(式中、C、D、m、p、X3およびX4は、請求項1に定義した通りであり、R23は脱離基である。)
【請求項37】
R23が、カルボニル、またはジハロから選ばれることを特徴とする、請求項36記載の方法。
【請求項38】
請求項36に定義される、式(VI)の化合物を調製するための方法であって、
下記式(VII)の化合物を、
【化16】

(式中、R3、R4、およびR5は、式(I)に関連して定義された通りであり、R30は反応基または脱離基である。)
下記式(VIIII)の化合物と共に縮合することによって調製することを特徴とする、前記方法。
【化17】

(式中、X1およびAは、式(I)に関連して定義された通りであり、R31は、R30が反応基である場合は、脱離基であり、あるいは、R31は、R30が脱離基である場合は、反応基であり、かつ、R40は、脱離基、脱離基の前駆物質、または保護された脱離基から選ばれ、あるいは、R40はR20またはR2であるが、ただしR40が脱離基であるならば、R30が、R40とではなくむしろR31と反応する。)
【請求項39】
請求項35に定義される、式(IV)の化合物。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか1項記載の化合物の、液晶化合物としての使用。
【請求項41】
請求項39に定義される、式(IV)の化合物を調製するための方法。
【請求項42】
請求項1〜33のいずれか1項、または請求項39記載の少なくとも1種の化合物を含む液晶混合物。
【請求項43】
請求項1〜33のいずれか1項、または請求項39記載の少なくとも1種の化合物、または請求項42記載の液晶混合物を含む液晶装置。
【請求項44】
二つの、隔てられたセル壁であって、それぞれ、電極構造を担持し、少なくとも一つの対抗面において配向層で処理されたセル壁、該セル壁の間に挟持される液晶物質の層を含む装置であって、請求項1〜33のいずれか1項、または請求項39記載の少なくとも1種の化合物、または請求項42記載の液晶混合物を含むことを特徴とする、前記装置。
【請求項45】
装置が、アクティブマトリックス装置、STN装置、またはTN装置であることを特徴とする、請求項43または44記載の液晶装置。
【請求項46】
双安定型ネマチック液晶装置であって、
液晶物質の層を挟持する二つのセル壁;
両壁における電極構造;
液晶分子に対し配向を与える、両セル壁の対向面における表面配向;
液晶物質の複数のスイッチ状態を区別する手段;
少なくとも一つのセル壁における表面配向格子であって、液晶分子が、同じ方位角面において二つの異なるプレティルト角度を取ることを可能とする表面配向格子を含み、
配置は、適当な電気信号が電極に印加された後、二つの安定な液晶分子形態が存在可能となるように行われ、
前記液晶物質の層が、少なくとも一つの式(I)の化合物を含む、
ことを特徴とする、前記液晶装置。
【請求項47】
セル壁が少なくとも4個の電極を含み、それによって、前記液晶化合物または混合物が少なくとも二つの方向に切り換え可能とされることを特徴とする、請求項43〜46のいずれか1項記載の装置。
【請求項48】
請求項1〜47のいずれか1項記載の少なくとも1種の液晶化合物を含む装置を調製する方法。
【請求項49】
本明細書において付属の図面を参照しながら記載された、および/または、付属の図面に図示された使用、産物、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−518899(P2008−518899A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538517(P2007−538517)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004204
【国際公開番号】WO2006/048620
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(501297550)キネティック リミテッド (57)
【Fターム(参考)】