説明

液晶装置の製造方法

【課題】液晶分子のプレチルト角を所望の値に制御可能で、かつ成膜レートが良好で製造装置の小型化が可能であり、防湿性の高い配向膜を形成可能な液晶装置の製造方法を提供する。
【解決手段】、一対のターゲット5a,5bがプラズマ生成領域を挟んで対向するスパッタ装置3を用い、ターゲット5a,5bから被処理体となる基板W上に無機材料からなる配向膜材料5pを斜めに放出させて、基板W上に、基板Wの法線Z方向に対して斜め方向に結晶成長した複数の柱状構造体を有する無機配向層を形成する工程と、無機配向層の表面を官能基としてアルキル基を有するシランカップリング剤で表面処理し、無機配向層の表面に、無機配向層と化学結合した有機材料の単分子膜からなる有機配向層を形成する工程と、を有し、表面処理は、シランカップリング剤を炭素原子数により選択して、液晶分子のプレチルト角を所望の角度に設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、成膜室と、成膜室内にて基板に配向膜材料をスパッタ法で成膜して無機配向膜を形成するスパッタ装置とを備えた製造装置を用いて、無機配向膜を形成する液晶装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、スパッタ装置が一対のターゲットを有し、それらがプラズマ生成領域を挟んで対向するいわゆるFTS(Facing Target Sputtering)法を用いて無機配向膜を形成している。
【0003】
また、特許文献1の製造装置は、プラズマ生成領域に含まれる電子を捕捉ないし反射する電子拘束手段(磁界発生手段)を有している。また、プラズマ生成領域からスパッタ粒子を放出する開口部が、基板に対して斜め方向からスパッタ粒子を入射させる位置に配置されている。
これにより、プラズマに起因して所望形状の無機配向膜が得られなくなってしまうのを防止し、良好な無機配向膜を形成できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−286401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の液晶装置の製造方法では、スパッタ粒子が基板の法線となす入射角を小さくすると、液晶分子のプレチルト角が小さくなりすぎ、液晶装置の表示品質が低下するという課題がある。
一方、スパッタ粒子の入射角を大きくすると、液晶分子のプレチルト角を大きくすることができる。しかし、この場合には、成膜レートが低下するという課題がある。また、スパッタ装置の開口部と基板との距離が大きくなり、装置が大型化してしまうという課題がある。
【0006】
また、FTS法により成膜した無機配向膜が酸化珪素からなる場合には、その表面に分極した水酸基が多数存在してしまい、これらの水酸基によって無機配向膜の防湿性が低くなるという課題がある。このため、液晶装置の耐湿性や耐光性が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、液晶分子のプレチルト角を所望の値に制御可能で、かつ成膜レートが良好で製造装置の小型化が可能であり、防湿性と耐光性の高い配向膜を形成可能な液晶装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の液晶装置の製造方法は、対向して配置された一対の基板間に挟持された液晶層を備え、少なくとも一方の前記基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造方法であって、一対のターゲットがプラズマ生成領域を挟んで対向するスパッタ装置を用い、前記ターゲットから被処理体となる前記基板上に無機材料からなる配向膜材料を斜めに放出させて、前記基板上に、該基板の法線方向に対して斜め方向に結晶成長した複数の柱状構造体を有する無機配向層を形成する工程と、前記無機配向層の表面を、アルキル基を有するシランカップリング剤で表面処理し、前記無機配向層の表面に、該無機配向層と化学結合した有機材料の単分子膜からなる有機配向層を形成する工程と、を有し、前記有機配向層を形成する工程において、前記シランカップリング剤を炭素原子数により選択して、液晶分子のプレチルト角を所望の角度に設定することを特徴とする。
【0009】
このように製造することで、無機配向層を形成する工程においてスパッタ装置の一対のターゲットの間にプラズマを発生させて、基板上の無機配向層がプラズマにより影響を受けることを防止できる。
また、無機配向層を表面処理して有機配向層を形成する際に、シランカップリング剤により配向膜のプレチルト角を所望の角度に調整することができる。そのため、プレチルト角を大きくするために配向膜材料の放出角度を大きくする必要が無い。しがって、成膜レートの低下や装置の大型化を防止できる。
また、無機配向層が例えば酸化珪素からなる場合であっても、無機配向層の表面の分極した水酸基にシランカップリング剤が反応することで、この水酸基による液晶への劣化等を無くすことができる。
したがって、本発明によれば、液晶分子のプレチルト角を所望の値に制御可能で、かつ成膜レートが良好で製造装置の小型化が可能であり、防湿性と耐光性の高い配向膜を形成可能な液晶装置の製造方法を提供することができる。
【0010】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、前記スパッタ装置の前記基板の前記法線方向に対する前記配向膜材料の放出角度が60°未満であることを特徴とする。
【0011】
このように製造することで、成膜レートの低下を防止することができる。また、基板とスパッタ装置との間の距離を小さくし、製造装置を小型化することが可能になる。
【0012】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、前記放出角度が前記法線方向に対して45°以下であることを特徴とする。
【0013】
このように製造することで、成膜レートを良好なものとすることができる。また、基板とスパッタ装置との間の距離をより小さくし、製造装置をより小型化することができる。
【0014】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、前記炭素原子数が6以上18以下の前記シランカップリング剤を用いることを特徴とする。
【0015】
このように製造することで、配向膜のプレチルト角を約3°以上かつ約8°以下の範囲に設定することができる。
【0016】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、前記炭素原子数が8以上10以下の前記シランカップリング剤を用いることを特徴とする。
【0017】
このように製造することで、耐湿性と耐光性とを兼ね備えた配向膜を製造することができる。
【0018】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、前記炭素原子数が10以上18未満の前記シランカップリング剤を用いることを特徴とする。
【0019】
このように製造することで、配向膜のプレチルト角を約4°以上かつ約6°以下の最適な範囲に設定することができる。したがって、液晶装置の表示性能を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、前記プレチルト角を前記法線方向から3°以上に設定することを特徴とする。
【0021】
このように製造することで、液晶装置の表示性能が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における液晶装置の断面図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の実施形態における配向膜の拡大断面図である。
【図3】図2のP部(Q部)の部分拡大図である。
【図4】本発明の実施形態における有機配向層の炭素原子数とプレチルト角との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態における有機配向層の炭素原子数と耐光性及び耐湿性の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態における液晶装置に電圧を印加したときの継続時間と電圧の変化量の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態における液晶装置の製造装置を示す図であり、(a)は製造装置の概略構成図、(b)はスパッタ装置の側面構成図である。
【図8】本発明の実施形態におけるスパッタ装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)にのG−G’矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を適宜変更している。
図1は本実施形態の液晶装置の断面構造を模式的に示したものである。まず、図1を用いて本実施形態の液晶装置の構成について説明する。
【0024】
<液晶装置>
図1に示すように、本実施形態の液晶装置100は、液晶パネル50を備えている。液晶パネル50は、対向して配置された回路基板10と対向基板20との間に液晶層58が挟持された構成となっている。液晶層58は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶分子52からなる液晶材料により構成されている。
【0025】
回路基板10は、ガラス等の透光性材料からなる基板本体10Aを備えている。基板本体10Aの内面側(液晶層58側)には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電性材料からなる平面視矩形状の画素電極9が形成されている。また、回路基板10は、画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子、画像信号が供給されるデータ線、走査線、遮光膜等(いずれも図示略)を備えている。回路基板10の内面側には、複数の画素電極9を覆うようにして配向膜11が形成されている。
【0026】
対向基板20は、ガラス等の透光性材料からなる基板本体20Aを備えている。基板本体20Aの内面側には、ITO等の透明導電膜からなる共通電極21が形成されている。共通電極21は、基板本体20Aの略全面にベタ状に形成されている。また、対向基板20はカラーフィルタや遮光膜(いずれも図示略)を備えている場合もある。対向基板20の内面側には、共通電極21を覆うようにして配向膜22が形成されている。
【0027】
回路基板10の配向膜11及び対向基板20の配向膜22は、それぞれ液晶分子52に所定のプレチルト角θを付与する機能を有している。そして、液晶層58を構成する液晶分子52は、初期配向状態(電圧無印加時の状態)において、配向膜11,22によって所定のプレチルト角θを付与された垂直配向を呈している。
【0028】
図2(a)及び図2(b)は、それぞれ回路基板10の配向膜11と対向基板20の配向膜22の拡大断面図である。図3は、図2(a)、図2(b)の一部(破線部分P,Q)を拡大して示す部分拡大図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、配向膜11,22は、それぞれ無機配向層11a,22aと、有機配向層11b,22bと、により形成されている。
【0029】
無機配向層11a,22aは、例えばSiO2もしくはSiO等の珪素酸化物により形成されている。また、無機配向層11a,22aは、それぞれ回路基板10及び対向基板20の法線L1,L2方向に対して斜め方向に結晶成長した複数の柱状構造を有している。これにより、無機配向層11a,22aは、それぞれ単独で、液晶分子52に対して例えば約1.2°のプレチルト角θを付与するように形成されている。
【0030】
有機配向層11b,22bは、無機配向層11a,22aと化学結合した有機材料の単分子膜により形成されている。具体的には、図3に示すように、無機配向層11a,22aのSi原子に結合しているアルキル鎖28を主体として構成される。ここで、アルキル鎖28は炭素原子数が6以上18以下のものが用いられる。
【0031】
また、図1に示すように、液晶パネル50の両側には、一対の偏光板61,62がその偏光軸が液晶の方位角に対して略45°および135°の角度をなしており、かつ互いの偏光軸が略直交している。また、偏光板61の外側(液晶層58の反対側)には、不図示の光源ユニットが配置されている。
【0032】
このような構成の液晶装置100によれば、上述のように電圧無印加時において液晶分子52が垂直配向し、所定のプレチルト角θを有している。
そして、画素電極9と共通電極21との間に電圧を印加することにより、液晶層58の液晶分子52を基板面に略平行に倒すことができる。このとき、液晶分子52の倒れる方向をプレチルト角θにより規定することができる。
【0033】
ここで、図4は、横軸を有機配向層11b,22bのアルキル基の炭素原子数、縦軸をプレチルト角θとして、炭素原子数とプレチルト角θとの関係を示すグラフである。
図4のグラフの横軸に示す「Ref」は、無機配向層11a,22aのみからなる参照用の無機配向膜を示している。すなわち、液晶装置100の無機配向層11a,22aは液晶分子52に約1°〜約1.5°程度のプレチルト角θを付与する機能を有している。
【0034】
図4に示すように、有機配向層11b,22bのアルキル基の炭素原子数が6以上18以下の場合には、プレチルト角θを約3°〜約8°の範囲とすることができる。
また、炭素原子数が10以上18未満、例えば10以上16以下または10以上17以下の場合には、プレチルト角θを、点線で示すより好ましい範囲である約4°〜約6°の範囲とすることができる。これにより、液晶分子をより確実に所定の方向に倒すことが可能となり、液晶装置の表示性能を向上させることができる。
【0035】
図5は、横軸を有機配向層11b,22bのアルキル基の炭素原子数、縦軸を耐光性及び耐湿性として、炭素原子数と耐光性及び耐湿性の関係を示すグラフである。
図中、四角形(□)の点は耐湿性を、菱形(◆)の点は耐光性を示している。また、横軸に示す「Ref(1)」は、無機配向層11a,22aのみからなる参照用の無機配向膜を示している。また、「Ref(2)」は、ラビング処理が施されたポリイミドからなる配向膜を示している。また、耐光性を示す縦軸の数値は、「Ref(2)」で示すポリイミドからなる配向膜の耐光性を1とした場合の係数を表している。また、図5の耐湿性を示す縦軸は、温度60℃、湿度90%の加速試験の時間であり、500時間を「3」として表している。
【0036】
図5に示すように、有機配向層11b,22bのアルキル基の炭素原子数が6以上18以下の場合には、通常のポリイミドの配向膜や無機配向膜のみの場合と比較して耐湿性及び耐光性を向上させることができる。
また、図5中、炭素原子数が8以上10以下の場合には、破線で囲んだ領域に示すように、特に高い耐光性と高い耐湿性を兼ね備えた耐久性に優れた配向膜11,22となる。
【0037】
図6は、横軸を継続時間、縦軸を電圧の変化量として、液晶装置100の画素電極9と共通電極21との間に電圧を印加したときの継続時間と電圧の変化量の関係を示すグラフである。
図中、実線C8は有機配向層11b,22bのアルキル基の炭素原子数が8の配向膜11,22を示している。また、破線C10は炭素原子数が10の有機配向層11b,22bを、一点鎖線C18は炭素原子数が18の有機配向層11b,22bをそれぞれ備えた配向膜11,22を示している。
【0038】
図6に示すように、有機配向層11b,22bの炭素原子数を8以上10以下とすることで、画素電極9と共通電極21との間の電圧の変化量を+0.1V〜−0.2Vの間に抑制することができる。また、炭素原子数が8の場合には、電圧の変化量を略0V〜+0.1V以内の範囲にすることができる。また、炭素原子数が10の場合には、電圧の変化量を約−0.1V〜約−0.2Vの範囲とすることができる。
【0039】
すなわち、有機配向層11b,22bの炭素原子数を選択することにより共通電極21と画素電極9との間に電圧を印加した場合に両基板10,20間で誘電率のバランスをとることができる。これにより、両基板10,20間における電気的非対称性が発生し難くなる。したがって、長時間駆動におけるLCcom変動を抑えることが可能となり、表示品位を向上させることができる。
【0040】
<液晶装置の製造装置>
次に、本実施形態の液晶装置100の製造装置について説明する。
図7(a)は液晶装置100の製造装置の一実施の形態を示す概略構成図である。図7(b)は、スパッタ装置3をXa方向に観察した側面構成図である。
図7(a)に示すように、製造装置1は、液晶装置100の構成部材となる回路基板10、対向基板20等の基板W上にスパッタ法により無機配向層11a,22aを成膜する装置である。製造装置1は、基板Wを収容する真空チャンバーである成膜室4と、基板Wの表面に無機材料からなる無機配向層11a,22aをスパッタ法により形成するスパッタ装置3とを備えている。スパッタ装置3は、そのプラズマ生成領域に放電用のアルゴンガスを流通させるガス供給手段31を備えている。成膜室4は、内部に収容された基板W上に飛来する配向膜材料と反応して無機配向層11a,22aを形成する反応ガスとしての酸素ガスを供給するガス供給手段32を備えている。
【0041】
成膜室4には、その内部圧力を制御し、所望の真空度を得るための排気制御装置42が配管41を介して接続されている。また、成膜室4の図示下側の壁面から外側に突出するようにして、スパッタ装置3との接続部を成す装置接続部43が形成されている。装置接続部43は、成膜室4内部に収容される基板Wの成膜面法線方向(図示Z軸方向)と所定の角度θ1を成して斜め方向に延びて形成されている。そして、その先端部に接続されるスパッタ装置3を基板Wに対して所定の角度θ1で斜めに向けて配置することができるようになっている。
ガス供給手段32は、装置接続部43に関して排気制御装置42と反対側に接続されている。また、ガス供給手段32から供給される酸素ガスは、矢印22fで示すように、成膜室4の+X側から基板W上を経由して排気制御装置42側へ図示−X方向に流通するようになっている。
【0042】
また実際の製造装置では、成膜室4の真空度を保持した状態での基板Wの搬入/搬出を可能とするロードロックチャンバーが、成膜室4のX軸方向外側に備えられている。ロードロックチャンバーにも、これを独立して真空雰囲気に調整する排気制御装置が接続され、ロードロックチャンバーと成膜室4とは、チャンバー間を気密に閉塞するゲートバルブを介して接続されている。かかる構成により、成膜室4を大気に解放することなく基板Wの出し入れを行えるようになっている。
【0043】
スパッタ装置3は、2枚のターゲット5a、5bを対向配置してなる対向ターゲット型のスパッタ装置であり、ターゲット5aは略平板状の第1電極33aに装着され、ターゲット5bは略平板状の第2電極33bに装着されている。第1電極33a、第2電極33bに支持されたターゲット5a、5bは、基板W上に形成する無機配向層11a,22aの構成物質を含む材料、例えばシリコンからなるものとされる。またターゲット5a,5bは図示Y方向に延びる細長い板状のものが用いられており(図8参照)、互いの対向面がほぼ平行になるように設置されている。
第1電極33aには直流電源又は高周波電源からなる電源4aが接続され、第2電極33bには直流電源又は高周波電源からなる電源4bが接続されている。そして、各々の電源4a,4bから供給される電力によりターゲット5a,5bが対向する空間(プラズマ生成領域)にプラズマPzを発生させるようになっている。
【0044】
第1電極33aのターゲット5aと反対側にはターゲット5aを冷却するための冷却手段8aが設けられている。冷却手段8aには冷媒循環手段18aが配管等を介して接続されている。また第2電極33bのターゲット5bと反対側には、ターゲット5bを冷却するための冷却手段8bが設けられており、冷却手段8bには、配管等を介して冷媒循環手段18bが接続されている。冷却手段8aは、図7(b)に示すようにターゲット5aとほぼ同一の平面寸法に形成されており、第1電極33aを介してターゲット5aと平面視で重なる位置に配設されている。また特に図示はしないが、冷却手段8bについても同様にターゲット5bと平面視で重なる位置に配設されている。冷却手段8a,8bは内部に冷媒を流通させる冷媒流路を備えており、かかる冷媒流路に対して冷媒循環手段18a,18bから供給される冷媒を循環させることでターゲット5a,5bの冷却を行うようになっている。
【0045】
また、図7(b)に示すように、平面視矩形状の冷却手段8aを取り囲むようにして矩形枠状の永久磁石、電磁石、これらを組み合わせた磁石等からなる磁界発生手段16aが配設されている。また、図1(a)に示す冷却手段8bを取り囲む磁界発生手段16bも同様の形状である。
なお、冷却手段8a,8bは、導電部材により作製してそれぞれ第1電極33a,33bと電気的に接続してもよく、この場合には冷却手段8a,8bに対しそれぞれ電源4a,4bを電気的に接続することができる。また、第1電極33a,33bの内部に冷媒流路を形成することで第1電極33a,33bが冷却手段を兼ねる構成としてもよい。
【0046】
図8は、図7(a)に示すスパッタ装置3の構成を示す図であり、図8(a)はスパッタ装置3を成膜室4側から見た平面図であり、図8(b)は図8(a)におけるG−G’矢視図である。
図7及び図8に示すように、第1電極33a及び第2電極33bは、それらの一端部(−Za側端部)に接続された側壁部材34と、第1電極33a及び第2電極33bのY軸方向両端部にそれぞれ接続された側壁部材33c,33dとともにスパッタ装置3の真空チャンバーとなる箱形筐体を構成している。ただし、箱形筐体を構成する第1電極33a、第2電極33b、及び側壁部材33c,33d,34は互いに絶縁された構造である。箱形筐体は、第1電極33a及び第2電極33bの側壁部材34と反対側の端部にスパッタ粒子5pが排出される開口部3aを有している。そして、開口部3aを介して成膜室4に突出形成された装置接続部43と接続され、かかる接続構造により箱形筐体の内部は成膜室4の内部と連通している。
【0047】
図7(a)に示すように、ターゲット5a、5bに挟まれるプラズマ生成領域に対して成膜室4と反対側に配置された側壁部材34には、ガス供給手段31が接続されている。ガス供給手段31から供給されるアルゴンガスは、側壁部材34側からプラズマ生成領域(ターゲット対向領域)に流入し、装置接続部43を介して成膜室4内に流入するようになっている。そして、成膜室4に流入したアルゴンガスは、矢印21fで示すように、ガス供給手段32から供給されて矢印22fに沿って流通する酸素ガスと合流して排気制御装置42側へ流れるようになっている。本実施形態の製造装置1では、スパッタガスであるアルゴンガスを図示Za方向に沿って成膜室4側へ流通させ、成膜室4内を−X方向に流通する酸素ガスと合流させ、その後−X方向に流通させるようになっている。そして、スパッタガスである酸素ガスの流通方向とアルゴンガスの流通方向との成す角度が鋭角になるようにしてスパッタガスを円滑に流通させるようになっている。これにより、酸素ガスとアルゴンガスとの合流地点においてガス流が乱れるのを防止することができ、基板Wに対するスパッタ粒子5pの入射角度がばらつくのを防止することができる。
【0048】
第1電極33aのターゲット5aと反対側に磁界発生手段16aが配置され、第2電極33bのターゲット5bと反対側には磁界発生手段16bが配置されている。図8(b)に示すように、磁界発生手段16bは、矩形状のターゲット5bの外周端に沿って配置された矩形枠状であり、磁界発生手段16aも同様である。従って磁界発生手段16aと磁界発生手段16bとは、対向配置されたターゲット5a,5bの外周部で互いに対向して配置されている。そして、これらの磁界発生手段16a,16bがターゲット5a,5bを取り囲むXa方向の磁界をスパッタ装置3内に発生させる。そして、この磁界によってプラズマPzに含まれる電子をプラズマ生成領域内に拘束する電子拘束手段を構成している。
【0049】
スパッタ装置3の下方には、基板Wをその被処理面(成膜面)が水平(XY面に平行)になるようにして保持する基板ホルダ6が設けられている。基板ホルダ6には、基板ホルダ6を図示略のロードロックチャンバー(図示せず)側からその反対側へ水平に搬送する移動手段6aが接続されている。移動手段6aによる基板Wの搬送方向は、図1においてX軸方向に平行であり、ターゲット5a、5bの長さ方向(Y軸方向)と直交する方向となっている。
【0050】
また、基板ホルダ6には、保持した基板Wを加熱するためのヒータ(加熱手段)7が設けられており、さらに、保持した基板Wを冷却するための冷却手段8cが設けられている。ヒータ7は、電源等を具備した制御部7aに接続されており、制御部7aを介した昇温動作により所望の温度に基板ホルダ6を加熱し、これによって基板Wを所望の温度に加熱できるように構成されている。一方、冷却手段8cは、冷媒循環手段18cと配管等を介して接続されている。そして、冷媒循環手段18cから供給される冷媒を循環させることにより所望の温度に基板ホルダ6を冷却し、これによって基板Wを所望の温度に冷却するように構成されている。
【0051】
製造装置1により液晶装置の構成部材である基板W上に無機配向膜を形成するには、ガス供給手段31からアルゴンガスを導入しつつ、第1電極33a及び第2電極33bにDC電力(RF電力)を供給する。これにより、ターゲット5a、5bに挟まれる空間にプラズマPzを発生させ、プラズマ雰囲気中のアルゴンイオン等をターゲット5a、5bに衝突させる。そして、ターゲット5a、5bから配向膜材料(シリコン)をスパッタ粒子5pとしてたたき出す。さらにプラズマPzに含まれるスパッタ粒子5pのうち、プラズマPzから開口部3a側へ飛行するスパッタ粒子5pのみを選択的に成膜室4側へ放出する。そして、基板Wの面上に斜め方向から飛来したスパッタ粒子5pと、成膜室4を流通する酸素ガスとを基板W上で反応させることで、酸化珪素からなる無機配向層11a,22aを基板W上に形成するようになっている。
【0052】
<液晶装置の製造方法>
次に、本実施形態の液晶装置100の製造方法について説明する。なお、以下では、配向膜11,22の形成方法について主に説明する。回路基板10及び対向基板20のうち、走査線、データ線及び容量線等の各種配線、TFT等の駆動回路素子、画素電極9及び共通電極21等の形成については既に完了しているものとする。
また、以下の説明では、上述の製造装置1を用いて回路基板10の内面側に無機配向層11a、有機配向層11bを形成する工程について説明する。なお、対向基板20の内面側に無機配向層22a、有機配向層22bを形成する工程は、無機配向層11a、有機配向層11bの製造工程と同様であるので、説明は省略する。
【0053】
(無機配向層成膜工程)
図7に示すように、基板ホルダ6に回路基板10を固定して移動手段6aにより成膜室4の所定位置に配置する。次いで、回路基板10に対して所定の角度θ1傾けて配置された対向ターゲット型のスパッタ装置3により、開口部3aから放出されるスパッタ粒子5pを配向膜材料として所定の角度θ1で斜め方向から回路基板10の成膜面に入射させる。
これにより、斜め方向から配向膜材料であるスパッタ粒子5pが入射して回路基板10上の成膜面に堆積する。そして、図2(b)に示すように、回路基板10上に法線L1方向に対して斜め方向に結晶成長した複数の柱状構造体を有する無機配向層11aが形成される。
【0054】
この際、上述のスパッタ装置3の角度θ1が60°未満となるように製造装置1を構成し、スパッタ装置3の回路基板10の法線L1(図7のZ軸方向)に対するスパッタ粒子5pの放出角度が60°未満となるようにすることが好ましい。本実施形態では、角度θ1が45°となるように製造装置1を構成し、スパッタ粒子5pの回路基板の法線L1に対する放出角度を45°以下とする。
【0055】
ここで、表1に、スパッタ粒子5pの放出角度(成膜角度)と、形成された無機配向層11aの性状、及びスパッタ装置3と回路基板10の成膜面との距離TS(図7参照)の関係を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、成膜角度を45°とした場合には、無機配向層11aが液晶分子52に付与することのできるプレチルト角(プレチルト能力)は、約1.2°となる。また所定時間スパッタ粒子5pを堆積させた後の無機配向層11aの膜厚は約100nmであった。そして、このときのスパッタ装置3と回路基板10の成膜面との距離TSは約150mmであった。
【0058】
一方、成膜角度を約60°とした場合には、無機配向層11aのプレチルト能力を約2.5°に向上させることができるが、スパッタ装置3と回路基板10の成膜面との距離TSが約250mm(約2倍)に増加してしまうため、成膜レートが低下し、成膜角度が約45°の場合よりも約2倍の成膜時間が必要となる。
また、成膜角度を約80°とした場合には、無機配向層11aのプレチルト能力を約3.8°に向上させることができるが、スパッタ装置3と回路基板10の成膜面との距離TSが約1300mmと、かなり大きくなってしてしまうため、成膜レートは著しく低下し、成膜角度が約45°の場合の約70倍程度の成膜時間が必要となる。
【0059】
したがって、成膜角度はできるだけ小さいほうが望ましい。好ましくは60°未満がよい。これにより、無機配向層11aの成膜レートが低下することを防止して、液晶装置100の生産性が低下することを防止できる。また、回路基板10とスパッタ装置3との間の距離TSを250mm未満にして、製造装置1を小型化することが可能になる。
さらに、本実施形態では、成膜角度を45°とすることで、無機配向層11aの成膜レートをさらに良好なものとすることができる。したがって、液晶装置100の生産性を向上させることができる。また、回路基板10とスパッタ装置3との間の距離TSを150mmとより小さくし、製造装置1をより小型化することができる。
【0060】
また、対向ターゲット型のスパッタ装置3では、開口部3aから放出されないスパッタ粒子は、主にターゲット5a、5bに入射して再利用されるため、極めて高いターゲット利用効率を得られるようになっている。さらにスパッタ装置3においては、ターゲット間隔を狭めることで開口部3aから放出されるスパッタ粒子5pの指向性を高めることができる。そのため、回路基板10に到達するスパッタ粒子5pの入射角θ1は高度に制御されたものとなり、形成される無機配向層11aにおける柱状構造の配向性も良好なものとなる。
【0061】
また、無機配向層11aの成膜に際して、スパッタ装置3のターゲット5a、5bを取り囲む矩形枠状の磁界発生手段16a,16bにより形成される磁界によって、プラズマPzに含まれる電子5rを捕捉ないし反射させることができる。これにより、プラズマPzをターゲット5a,5bが対向する領域内に良好に閉じ込めることができる。そのため、前記電子5rが基板Wの成膜面に入射して基板W表面の濡れ性が上昇するのを防止することができる。これにより、回路基板10に付着したスパッタ粒子5pの再配置により柱状構造の形成が阻害されるのを良好に防止することができる。また、後述する有機配向層11bを形成する際に、シランカップリング剤の塗布性を良好なものとすることができる。
【0062】
また、開口部3aと回路基板10との間に位置する成膜室4や装置接続部43の壁部は、接地電位に保持しておくことが好ましい。このような構成とすることで、電子拘束手段から漏れ出た電子を前記壁部により捕捉し除去することができ、回路基板10表面の濡れ性が上昇してしまうのを効果的に防止することができる。
【0063】
また、スパッタ法によってターゲットから放出されるスパッタ粒子(配向膜材料)5pの持つエネルギーは例えば10eVであり、蒸着法によって蒸着源から発生するクラスター状粒子の持つエネルギーが例えば0.1eVであるのに比べて格段に大きいため、スパッタ粒子5pは蒸着法によるクラスター状粒子に比べて密着性が高いものとなる。すなわち、クラスター状粒子の場合、例えば成膜室4や装置接続部43の内壁面に付着した粒子が振動等によって脱落し、発塵を起こしてこれが回路基板10上に異物となって付着してしまうおそれがある。しかし、スパッタ粒子5pの場合には、内壁面などに一旦付着すると、その高密着性によって容易には脱落せず、従ってこれが基板W上に異物となって付着してしまうといった不都合を回避することができる。
【0064】
また、基板ホルダ6に回路基板10を冷却するための冷却手段8cを設けているので、成膜時に冷却手段8cによって回路基板10を冷却し、回路基板10を室温等の所定温度に保持することができる。このため、スパッタによって回路基板10に付着した配向膜材料分子の回路基板10上での拡散(マイグレーション)を抑制することができる。これにより、回路基板10上における配向膜材料の局所的な成長が促進され、一軸方向に柱状に成長した無機配向層11aを容易に得られるようになる。
【0065】
(有機配向層形成工程)
次に、上述の工程で形成された無機配向層11aの表面を、官能基としてアルキル基を有するシランカップリング剤で表面処理する。シランカップリング剤としては、例えば以下の式(1)により表されるものを用いることができる。
【0066】
n2n+1−Si−Y …(1)
【0067】
式(1)において、Yはアルコキシ基(−OR)、ハロゲン(−Cl)等、nは6以上18以下の整数とする。例えばアルキル基の炭素原子数が6のCH3(CH25Si(OCH3)、アルキル基の炭素原子数が12の(C652SiCl2、アルキル基の炭素原子数が18のCH3(CH217Si(OH3)等を用いることができる。
なお、本実施形態では、図4に示すように、シランカップリング剤を炭素原子数により選択して、液晶分子52のプレチルト角θを所望の角度に設定する。
【0068】
シランカップリング剤を用いた無機配向層11aの表面処理は、気相法と液相法の二通りの手法が可能である。気相法では、例えば無機配向層11aを形成した回路基板10をCVD装置に入れ、シランカップリング剤を蒸気として導入することにより、このシランカップリング剤の蒸気によって無機配向層11aを表面処理する。液相法で表面処理する場合には、シランカップリング剤を適宜な溶媒に溶解して無機配向層11aを表面処理することができる。
【0069】
表面処理の具体的な手法としては、スピンコート法などの塗布法による接触処理や、スプレー法などによる接触処理、さらには浸漬法なども採用可能である。特に、シランカップリング剤の溶液に回路基板10を浸漬してその無機配向層11aの表層部を表面処理する場合、その状態で回路基板10や溶液に超音波を与え、またはこの処理室内を減圧するのが好ましい。このように超音波処理や減圧処理を併せて行うことにより、シランカップリング剤溶液が無機配向層11aの表層部の間隙内により良好に入り込み、この間隙内のシラノール基(Si−OH)と反応し易くなる。
【0070】
このようにして表面処理がなされた無機配向層11aは、その表面に有機官能基からなる有機材料の単分子膜である有機配向層11bが形成される。
以上により、無機配向層11aの表面に、無機配向層11aと化学結合した有機材料の単分子膜からなる有機配向層11bが形成された配向膜11が形成される。
【0071】
本実施形態では、上述のように無機配向層11aの表面処理に用いるシランカップリング剤を炭素原子数により選択して、液晶分子52のプレチルト角θを所望の角度に設定している。そのため、例えば炭素原子数が6以上18以下のシランカップリング剤を用いることで、図4に示すように、配向膜11により液晶分子52に付与可能なプレチルト角θを約3°以上かつ約8°以下の範囲に設定することができる。
【0072】
また、例えば炭素原子数が8以上10以下のシランカップリング剤を用いた場合には、図5に示すように、耐湿性と耐光性とを兼ね備えた配向膜11を製造することができる。
また、炭素原子数が10以上18未満のシランカップリング剤を用いた場合には、図4に示すように、配向膜11のプレチルト能力を約4°以上かつ約6°以下の最適な範囲に設定することができる。したがって、液晶装置100の表示性能を向上させることができる。
また、液晶分子52のプレチルト角θを3°以上に設定することで、液晶装置100の表示性能が低下することを防止できる。
【0073】
また、無機配向層11aを表面処理して有機配向層11bを形成する際に、シランカップリング剤により配向膜11によるプレチルト角θを所望の角度に調整することができる。そのため、プレチルト角θを大きくするために配向膜材料の放出角度を大きくする必要が無い。しがって、成膜レートの低下や製造装置1の大型化を防止できる。
【0074】
また、無機配向層11aが酸化珪素からなる場合であっても、無機配向層11aの表面に有機配向層11bを形成し、有機配向層11bを側鎖アルキル基によってシラノール基に化学結合させることができる。これにより、シラノール基における水酸基の活性を消失させることができる。したがって、無機配向層11aの水酸基による水の吸着等を無くすことができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、液晶分子52のプレチルト角θを所望の値に制御可能で、防湿性の高い配向膜11,22を形成可能な液晶装置100の製造方法を提供することができる。また、製造装置1の小型化が可能であり、かつ成膜レートが良好な液晶装置100の製造方法を提供することができる。
【0076】
また、有機配向層11bは、その有機官能基によって液晶分子52を良好に配向させることができる。また、無機配向層11aの表面を覆うことで、撥水化により防湿性が向上し、さらには耐光性も向上させることができる。また、無機配向層11a表面のミクロ的なポア(孔)に有機材料が埋め込まれる。これにより、表面を緻密にすることができることから、この無機配向層11aと、液晶パネル50の回路基板10と対向基板20を接合して液晶層50を封止するシール材(図示略)との間の密着性を高めることができる。これにより、これら無機配向層11aとシール材との界面におけるシール部での気密性を高めることもできる。
【0077】
また、シランカップリング剤の炭素原子数が6未満のアルキル鎖だと液晶の配向性能低下を招き、配向膜として機能しなくなる可能性がある。炭素原子数が18より多いと、隣接するアルキル鎖28との立体障害が大きくなりすぎてしまい、無機配向層11a,22a上においてアルキル鎖28の付着が不均一となってしまう。しかし、本実施形態では、シランカップリング剤の炭素原子数を6以上18以下としているので、このような不具合を防止することができる。
【0078】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、使用するシランカップリング剤としては、上述の条件を満たすものであれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
3 スパッタ装置、5a,5b ターゲット、5p スパッタ粒子(配向膜材料)、10 回路基板(基板)、11 配向膜、11a 無機配向層、11b 有機配向層、20 対向基板(基板)、22 配向膜、22a 無機配向層、22b 有機配向層、52 液晶分子、58 液晶層、100 液晶装置、L1 法線、Pz プラズマ、W 基板、θ プレチルト角、θ1 角度(放出角度)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された一対の基板間に挟持された液晶層を備え、少なくとも一方の前記基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造方法であって、
一対のターゲットがプラズマ生成領域を挟んで対向するスパッタ装置を用い、前記ターゲットから被処理体となる前記基板上に無機材料からなる配向膜材料を斜めに放出させて、前記基板上に、該基板の法線方向に対して斜め方向に結晶成長した複数の柱状構造体を有する無機配向層を形成する工程と、
前記無機配向層の表面を、アルキル基を有するシランカップリング剤で表面処理し、前記無機配向層の表面に、該無機配向層と化学結合した有機材料の単分子膜からなる有機配向層を形成する工程と、を有し、
前記有機配向層を形成する工程において、前記アルキル基の炭素原子数が6以上18以下である前記シランカップリング剤を用いて、液晶分子のプレチルト角を所望の角度に設定することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
前記スパッタ装置の前記基板の前記法線方向に対する前記配向膜材料の放出角度が60°未満であることを特徴とする請求項1記載の液晶装置の製造方法。
【請求項3】
前記放出角度が前記法線方向に対して45°以下であることを特徴とする請求項2記載の液晶装置の製造方法。
【請求項4】
前記アルキル基の炭素原子数が8以上10以下である前記シランカップリング剤を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項5】
前記アルキル基の炭素原子数が10以上18未満である前記シランカップリング剤を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項6】
前記プレチルト角を前記法線方向から3°以上8°以下に設定することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−237714(P2010−237714A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170197(P2010−170197)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【分割の表示】特願2008−128031(P2008−128031)の分割
【原出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】