説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子

【課題】長時間連続駆動した場合であっても、電気的特性の悪化等による表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜、及びこの配向膜を形成するための材料として好適な液晶配向剤、並びにこの液晶配向膜を備える液晶表示素子の提供
【解決手段】本発明は[A]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、並びに[B]下記式(I)で表されるイミド環含有エポキシ化合物を含有する液晶配向剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向膜の形成材料として好適な液晶配向剤、この液晶配向剤から形成される液晶配向膜、及びこの液晶配向膜を備える液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、消費電力が小さく、小型化及びフラット化が容易である等の利点を有し、携帯電話等の小型の液晶表示装置から液晶テレビ等の大画面液晶表示装置まで幅広く用いられている。
【0003】
液晶表示装置の表示モードとしては、液晶分子の配向状態の変化に応じ、Twisted Nematic型(TN型)、Super Twisted Nematic型(STN型)、In−Plane Switching型(IPS型)、Vertical Alignment型(VA型)等の液晶セルを有する液晶表示素子が知られている。いずれの表示モードにおいても、液晶分子の配向状態は、液晶配向膜で制御されていることから、液晶配向膜及びこの液晶配向膜の材料となる液晶配向剤の有する特性が、液晶表示素子の特性の発現に影響する。
【0004】
かかる液晶配向剤の材料として、例えば特許文献1〜6には、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂材料が開示されており、特にポリアミック酸又はポリイミドを材料とする液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、液晶との親和性、耐熱性、機械的強度等に優れており、多くの液晶表示素子に適用されている。
【0005】
しかしながら、近年、液晶表示素子の利用範囲が拡大し、長時間の連続駆動においても表示品位が低下しない液晶表示素子が求められているところ、従来のポリアミック酸又はポリイミドを材料とする液晶表示素子では、長時間の連続駆動において熱や光により液晶配向膜が劣化し、電気的特性の悪化、液晶分子の配向不良等が発生するおそれがある。これを解決するために、多官能のエポキシ化合物を多く含んだ液晶配向剤を用いる技術が開発されている(特許3799700号公報、特開2008−299318号公報参照)。
【0006】
一方、液晶配向膜の製造工程において発生する塗膜のピンホール、塗布ムラ等の欠陥を含んだ基板は、再利用のために塗膜を剥離すること(以下、「リワーク」と称することがある。)があり、かかるリワークにおいて基板からの液晶配向膜の剥離性が求められる。しかしながら、上述の多官能のエポキシを多く含んだ液晶配向剤を用いると、ベーク時のエポキシ基の架橋反応によって、リワークの際の液晶配向膜の剥離性が低下するおそれがある。
【0007】
このような状況から、長時間連続駆動した場合であっても、電気的特性の悪化等による表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−153622号公報
【特許文献2】特開昭60−107020号公報
【特許文献3】特開昭56−91277号公報
【特許文献4】米国特許第5,928,733号公報
【特許文献5】特開昭62−165628号公報
【特許文献6】特開平11−258605号公報
【特許文献7】特許3799700号
【特許文献8】特開2008−299318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、長時間連続駆動した場合であっても、電気的特性の悪化等による表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜、及びこの配向膜を形成するための材料として好適な液晶配向剤、並びにこの液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体(以下、重合体[A]と称することがある。)、並びに
[B]下記式(I)で表されるイミド環含有エポキシ化合物(以下、エポキシ化合物[B]と称することがある。)
を含有する液晶配向剤である。
【化1】

(式(I)中、Rは単結合又は炭素数1〜4のアルカンジイル基である。Rは2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族基、2価の複素環式基、又はこれらを組み合わせた基である。nは0又は1の整数である。)
【0011】
当該液晶配向剤が、特定の重合体[A]及びエポキシ化合物[B]を含有することで、電気的特性の悪化等による表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜を形成できる。
【0012】
上記式(I)が、下記式(I―1)及び式(I−2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化2】

(式(I−1)及び式(I−2)中、Rは上記式(I)と同義である。R、R及びRは、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−OCO−を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。また、RとRとが、又はRとRとRとが、互いに連結して、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい環構造を形成してもよい。nは0又は1の整数である。)
【0013】
上記式(I)を特定の化合物とすることで、電気的特性の悪化等による表示品位の低下がより抑制され、かつ、リワークにおける剥離がより容易な液晶配向膜を形成できる。
【0014】
上記重合体[A]が、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物からなる群より選択される少なくとも1種を含むテトラカルボン酸二無水物を用いて合成されるポリアミック酸、及びこのポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。テトラカルボン酸二無水物として、かかる特定の化合物を用いて合成される重合体[A]を用いることで所望の特性をより発現する。
【0015】
上記式(I)のRがメタンジイル基であることが好ましい。また、上記式(I−1)及び式(I−2)において、RとRとが、互いに連結して、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいベンゼン環を形成することが好ましい。エポキシ化合物[B]が上記の特定構造を有することで、電気的特性及びリワークにおける剥離性をより向上できる。
【0016】
本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える。当該液晶表示素子は、種々の装置に好適に適用でき、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に用いられる。
【0017】
[A]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、並びに
[B]下記式(I)で表されるイミド環含有エポキシ化合物
を含有する重合体組成物。
【化3】

(式(I)中、Rは単結合又は炭素数1〜4のアルカンジイル基である。Rは2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族基、2価の複素環式基、又はこれらを組み合わせた基である。nは0又は1の整数である。)
【0018】
当該重合体組成物は、液晶配向膜を形成するための液晶配向剤等の成分として好適に使用できる。また、当該重合体組成物から形成された膜は、電子材料用絶縁膜として使用することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気的特性の悪化等による表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜が形成できる。当該液晶表示素子は、種々の装置に好適に適用でき、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0021】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体[A]及びエポキシ化合物[B]を含有する。当該液晶配向剤が、特定の重合体[A]及びエポキシ化合物[B]を含有することで、電気的特性の悪化等による表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜を形成できる。また、当該液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、任意成分を含有してもよい。以下、重合体[A]、エポキシ化合物[B]及び任意成分について詳述する。
【0022】
<重合体[A]>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体[A]は、ポリアミック酸及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種の重合体である。以下、ポリアミック酸及びポリイミドについて詳述する。
【0023】
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0024】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのほか、特願2009−157556号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0026】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0027】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
【0028】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が特に好ましい。テトラカルボン酸二無水物として、かかる特定の化合物を用いて合成される重合体[A]を用いることで所望の特性をより発現する。
【0029】
好ましいテトラカルボン酸二無水物の使用量としては、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含が好ましく、20モル%以上がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される1種以上のみを使用することが、特に好ましい。
【0030】
ジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらのほか、特願2009−157556号に記載のジアミン化合物を用いることができる。これらジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0032】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0033】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0034】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,4−ジアミノピリジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,6−ジアミノカルバゾール、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン及び下記式(1)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0035】
【化4】

【0036】
式(1)中、Xは炭素数1〜3のアルカンジイル基、−O−、−COO−又は−OCO−である。aは0又は1である。bは0〜2の整数である。cは1〜20の整数である。
【0037】
上記式(1)において、C2c+1基としては、例えば直鎖状又は分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0038】
上記式(1)で表されるジアミン化合物としては、例えば下記式(1−1)〜(1−5)で表される化合物等が挙げられる。
【0039】
【化5】

【0040】
上記式(1)において、a及びbは同時に0にならないことが好ましい。
【0041】
これらのジアミン化合物のうち、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンが好ましく、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンがより好ましい。
【0042】
[ポリアミック酸の合成]
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合としては、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0043】
ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.1時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜12時間がより好ましい。
【0044】
有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0045】
非プロトン性極性溶媒としては、例えばアミド類、ケトン類、エステル類、その他の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0046】
アミド類としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0047】
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0048】
エステル類としては、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート等が挙げられる。
【0049】
その他の非プロトン性極性溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等が挙げられる。
【0050】
フェノール誘導体としては、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール等が挙げられる。
【0051】
アルコール類としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0052】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール−ジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−ジ−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジイソペンチルエーテル等が挙げられる。
【0053】
ハロゲン化炭化水素類としては、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0054】
炭化水素類としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0055】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒が好ましく、NMP、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0056】
有機溶媒の使用量(a)としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(b)と有機溶媒の使用量(a)の合計(a+b)に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましい。
【0057】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0058】
ポリアミック酸を合成するに際し、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物とともに、適当な分子量調節剤を使用して末端修飾型の重合体を合成してもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに向上できる。
【0059】
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0060】
酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルコハク酸無水物、n−ドデシルコハク酸無水物、n−テトラデシルコハク酸無水物、n−ヘキサデシルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0061】
モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン等が挙げられる。
【0062】
モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
分子量調節剤の使用割合としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0064】
[ポリイミド]
ポリイミドは、上記ポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより製造できる。
【0065】
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。ここでイミド環の一部は、イソイミド環であってもよい。
【0066】
ポリイミドのイミド化率は、30%以上が好ましく、40%〜99%がより好ましい。イミド化率とは、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。なお、イミド化率は、ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿物を室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定し得られたH−NMRスペクトルから下記式(2)で表わされる式により求めた。
【0067】
イミド化率(%)={1−(A/A)×α}×100 (2)
【0068】
式(2)中、AはNH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)である。Aはその他のプロトン由来のピーク面積である。αはポリアミック酸におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。
【0069】
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」と称することがある。)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。これらのうち、方法(ii)が好ましい。
【0070】
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0071】
脱水剤の使用量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1molに対して0.01mol〜20molが好ましい。
【0072】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0073】
脱水閉環触媒の使用量としては、含有する脱水剤1molに対して0.01mol〜10molが好ましい。
【0074】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0075】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、1.0時間〜120時間が好ましく、2.0時間〜30時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0076】
方法(ii)においては、ポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては公知の方法に従って行うことができ、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示したものと同様の方法等が挙げられる。
【0077】
以上のようにして得られる重合体[A]の濃度10質量%溶液における溶液粘度としては、20mPa・s〜800mPa・sが好ましく、30mPa・s〜500mPa・sがより好ましい。重合体の溶液粘度(mPa・s)は、γ−ブチロラクトン又はNMPを用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0078】
<エポキシ化合物[B]>
本発明の液晶配向剤に含有されるエポキシ化合物[B]は、上記式(I)で表されるイミド環含有エポキシ化合物である。
【0079】
上記式(I)中、Rは単結合又は炭素数1〜4のアルカンジイル基である。Rは2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族基、2価の複素環式基、又はこれらを組み合わせた基である。nは0又は1の整数である。
【0080】
炭素数1〜4のアルカンジイル基としては、例えばメタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基等が挙げられる。これらのうち単結合又はメタンジイル基が好ましい。
【0081】
上記式(I)は、上記式(I―1)及び式(I−2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記式(I)を特定の化合物とすることで、電気的特性の悪化等による表示品位の低下がより抑制され、かつ、リワークにおける剥離がより容易な液晶配向膜を形成できる。
【0082】
上記式(I−1)及び式(I−2)中、Rは上記式(I)と同義である。R、R及びRは、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−OCO−を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。また、RとRとが、又はRとRとRとが、互いに連結して、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい環構造を形成してもよい。nは0又は1の整数である。
【0083】
炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0084】
また、上記式(I−1)及び(I−2)におけるR、R及びRは、RとRとが、又はRとRとRとが、互いに連結して、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい環構造を形成してもよい。環構造としては、芳香環、脂肪族環、複素環、縮合環、及びこれらを組み合わせた環が挙げられる。これらのうち、芳香環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環がより好ましい。
【0085】
置換されていてもよい環構造が有する置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、カルボキシル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノアルキル基、ハロアルキル基等が挙げられる。これらのうち、ハロゲン原子、アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、シアノメチル基、メトキシ基がより好ましい。
【0086】
上記式(I−1)及び(I−2)におけるnは、0又は1の整数である。nは0が好ましい。
【0087】
上記式(I)のRがメタンジイル基であることが好ましい。また、上記式(I−1)及び式(I−2)において、RとRとが互いに連結して、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいベンゼン環を形成することが特に好ましい。エポキシ化合物[B]が上記の特定構造を有することで、電気的特性及びリワークにおける剥離性をより向上できる。
【0088】
上記式(I−1)及び(I−2)で表される化合物としては、例えば下記式(I−1−1)〜(I−1−16)、及び(I−2−1)〜(I−2−14)で表される化合物が挙げられる。
【0089】
【化6】

【0090】
【化7】

【0091】
上記式(I−1−1)〜(I−1−16)、及び(I−2−1)〜(I−2−14)のうち、(I−1−1)、(I−1−4)、(I−1−15)、(I−1−16)、(I−2−6)が特に好ましく、(I−1−4)、(I−2−6)が最も好ましい。
【0092】
なお、式(I)中のエポキシ基は、置換されていてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、カルボキシル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノアルキル基、ハロアルキル基等が挙げられる。
【0093】
かかるエポキシ化合物[B]の合成方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて行うことができる。また、市販品を利用することもできる。
【0094】
エポキシ化合物[B]の含有割合としては、重合体[A]100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部が好ましく、1質量部〜40質量部がより好ましく、3質量部〜30質量部が特に好ましい。エポキシ化合物[B]の含有割合を上記範囲とすることで長時間駆動した場合でも電気的特性の悪化が小さく表示品位が高い液晶表示素子を形成する液晶配向膜を与えることができるとともに、かつ、形成される膜のリワークにおける剥離性が良好な液晶配向剤を提供できる。
【0095】
<任意成分>
任意成分としては、例えば官能性シラン化合物等が挙げられる。
【0096】
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上する目的で使用できる。
【0097】
官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0098】
官能性シラン化合物の使用割合としては、重合体[A]100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、0.02質量部〜0.2質量部がより好ましい。
【0099】
<液晶配向剤の調製方法>
当該液晶配向剤は、上述の通り、重合体[A]及びエポキシ化合物[B]を含有し、必要に応じて任意成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された組成物として調製される。
【0100】
有機溶媒としては、例えばNMP、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0101】
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の質量が液晶配向剤の全質量に占める割合としては、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、1質量%〜10質量%が好ましい。固形分濃度が1質量%未満では、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得られない場合がある。一方、固形分濃度が10質量%を超えると、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得られない場合があり、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。好ましい固形分濃度の範囲としては、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合の固形分濃度としては、1.5質量%〜4.5質量%が好ましい。印刷法では、固形分濃度を3質量%〜9質量%とし、それによって溶液粘度を12mPa・s〜50mPa・sとすることが好ましい。インクジェット法による場合、固形分濃度を1質量%〜5質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3mPa・s〜15mPa・sの範囲とすることが好ましい。
【0102】
当該液晶配向剤を調製する際の温度としては、10℃〜50℃が好ましく、20℃〜30℃がより好ましい。
【0103】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、当該液晶配向剤から形成される。従って、当該液晶配向膜は、電気的特性の悪化等による表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易である。
【0104】
<液晶配向膜の形成方法>
本発明の液晶配向膜は、基板上に当該液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成し、所望の表示モードによってはさらにラビング処理を施すことにより形成できる。
【0105】
表示モードがTN型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、当該液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法又はインクジェット法により塗布し、次いで、各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。
【0106】
基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート(脂環式オレフィン)等のプラスチック基材を含む透明基板等が挙げられる。
【0107】
基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜等が挙げられる。
【0108】
パターニングされた透明導電膜を得る方法としては、例えばパターンなしの透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等が挙げられる。液晶配向剤の塗布に際し、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面の塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物等を予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0109】
当該液晶配向剤を塗布した後、液垂れ防止等の目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベークの温度としては、30℃〜200℃が好ましく、40℃〜150℃がより好ましく、40℃〜100℃が特に好ましい。プレベークの時間としては0.25分〜10分が好ましく、0.5分〜5分がより好ましい。
【0110】
次に、溶剤を完全に除去し、必要に応じてポリアミック酸を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)が実施される。ポストベークの温度としては、80℃〜300℃が好ましく、120℃〜250℃がより好ましい。ポストベークの時間としては、5分〜200分が好ましく、10分〜100分がより好ましい。
【0111】
このようにして、形成される塗膜の膜厚は、10nm〜500nmが好ましく、10nm〜200nmがより好ましい。
【0112】
表示モードがIPS型の液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、当該液晶配向剤を好ましくはオフセット印刷法、スピンナー法又はインクジェット法によって塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。基板の材質、透明導電膜の材質、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理、及び液晶配向剤を塗布した後の加熱方法、形成される塗膜の好ましい膜厚は、表示モードがTN型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合に挙げたものと同様である。
【0113】
表示モードがVA型の液晶表示素子である場合には、上記のようにして形成される塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、所望に応じて後述するラビング処理を行った後に使用に供してもよい。
【0114】
表示モードがVA型以外の液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜とする。ラビング処理は、上記のようにして形成される塗膜面に対し、例えばナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与され液晶配向膜となる。
【0115】
さらに、上記のようにして形成される液晶配向膜に対し、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、特開平5−107544号公報に示されているような液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成したうえで先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善できる。
【0116】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向膜を備える。当該液晶表示素子は、種々の装置に好適に適用でき、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に用いられる。
【0117】
<液晶表示素子の形成方法>
本発明の液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造できる。当該液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。ここで、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
【0118】
第一の方法としては、従来から知られている方法であって、まず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(以下、「セルギャップ」と称することがある。)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造できる。
【0119】
第二の方法としては、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法であって、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造できる。
【0120】
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶注入時の流動配向を除去することが望ましい。そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、当該液晶表示素子が得られる。
【0121】
シール剤としては、例えば,スペーサーとしての酸化アルミニウム球及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0122】
液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等が挙げられる。これらのうちネマティック型液晶が好ましい。VA型液晶セルの場合、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましい。このような液晶としては、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が挙げられる。TN型液晶セル又はSTN型液晶セルの場合、正の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましい。このような液晶としては例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が挙げられる。また上記液晶に、例えばコレステリルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶(メルク社、「C−15」、「CB−15」)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等をさらに添加して使用できる。
【0123】
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
【0124】
<重合体組成物>
本発明の重合体組成物は、[A]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、並びに[B]上記式(I)で表されるイミド環含有エポキシ化合物を含有する。当該重合体組成物は、液晶配向膜を形成するための液晶配向剤等の成分として好適に使用できる。また、当該重合体組成物から形成された膜は、電子材料用絶縁膜として使用することもできる。
【0125】
上記式(I)中、Rは単結合又は炭素数1〜4のアルカンジイル基である。Rは2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族基、2価の複素環式基、又はこれらを組み合わせた基である。nは0又は1の整数である。
【実施例】
【0126】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0127】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物98g(0.50mol)及びピロメリット酸二無水物109g(0.50mol)、並びにジアミン化合物として4,4’−ジアミノジフェニルメタン198g(1.0mol)をNMP230g及びγ―ブチロラクトン2,060gからなる混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行った後、γ―ブチロラクトン1,350gを追加し、ポリアミック酸(PA−1)を10質量%含有する溶液を得た。この溶液の溶液粘度は118mPa・sであった。
【0128】
[合成例2]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0mol)並びにジアミン化合物として2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル212g(1.0mol)をNMP370g及びγ―ブチロラクトン3,300gからなる混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸(PA−2)を含有する溶液を得た。この溶液の溶液粘度は154mPa・sであった。
【0129】
<ポリイミドの合成>
[合成例3]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0mol)並びにジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン106g(0.985mol)及び3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル7.8g(0.015mol)をNMP3,042gに溶解し60℃で6時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液の溶液粘度は181mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP3,380gを追加し、ピリジン395g及び無水酢酸306gを添加して110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、ピリジン、無水酢酸を系外に除去した。このようにして、イミド化率約95%のポリイミド(PI−1)を15質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取しγ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は102mPa・sであった。
【0130】
[合成例4]
テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50mol)及び1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン160g(0.50mol)並びにジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン94g(0.87mol)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン25g(0.10mol)及び3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン9.6g(0.015mol)、モノアミンとしてオクタデシルアミン8.1g(0.030mol)をNMP960gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えて固形分濃度10%の溶液で粘度を測定したところ、58mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP2,700gを追加し、ピリジン400g及び無水酢酸410gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなγ―ブチロラクトンで溶剤置換することにより、ピリジン、無水酢酸を系外に除去した。このようにしてイミド化率95%のポリイミド(PI−2)を約15質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、γ−ブチロラクトンを加えてポリイミド濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は72mPa・sであった。
【0131】
[合成例5]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物226g(1.0mol)並びにジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン76g(0.80mol)、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル53g(0.10mol)及びコレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン100g(0.20mol)を、NMP1,820gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えて固形分濃度10%の溶液で粘度を測定したところ、80mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP4,225gを追加し、ピリジン104g及び無水酢酸134gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなNMPで溶剤置換することにより、ピリジン、無水酢酸を系外に除去した。このようにして、イミド化率66%のポリイミド(PI−3)を約15質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は98mPa・sであった。
【0132】
[合成例6]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0mol)並びにジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン87g(0.80mol)及びコレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン99g(0.20mol)を、NMP1,848gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えて固形分濃度10%の溶液で粘度を測定したところ、120mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP3,809gを追加し、ピリジン79g及び無水酢酸102gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなNMPで溶剤置換することによりピリジン、無水酢酸を系外に除去した。このようにして、イミド化率49%のポリイミド(PI−4)を約15質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取しNMPを加えてポリイミド濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は155mPa・sであった。
【0133】
[合成例7]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0mol)並びにジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン76g(0.70mol)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン40g(0.20mol)及びコレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン50g(0.10mol)を、NMP1,556gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えて固形分濃度10%の溶液で粘度を測定したところ、133mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP3,614gを追加しピリジン79g及び無水酢酸102gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなNMPで溶剤置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した。)、イミド化率46%のポリイミド(PI−5)を約15質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は133mPa・sであった。
【0134】
<液晶配向剤(TN型の液晶表示素子用)の調製>
[実施例1]
重合体[A]としてポリアミック酸(PA−1)を含有する溶液及びポリイミド(PI−1)を含有する溶液を、ポリアミック酸(PA−1):ポリイミド(PI−1)=80:20(質量比)になるように混合し、これにγ−ブチロラクトン、NMP及びエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテルを加え、さらにエポキシ化合物[B]として上記式(I−1)の例として挙げた式(I−1−1)を、重合体[A]の合計100質量部に対して10質量部に相当する量を加えて十分に撹拌し溶媒組成がγ−ブチロラクトン:NMP:エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル=71:17:12(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(S−1)を調製した。
【0135】
[実施例2〜13、比較例1〜12]
重合体[A]及びエポキシ化合物[B]の種類とその使用量を、それぞれ表1に示す通りとし、実施例1と同様に操作して、液晶配向剤(S−2)〜(S−13)及び(CS−1)〜(CS−12)を調製し、これらをそれぞれ実施例2〜13、比較例1〜12とした。
【0136】
なお、比較例でエポキシ化合物[B]に対応させて使用している(G−1)〜(G−3)は、それぞれ以下のとおりである。また表1中の(I−1−4)、(I−1−15)、(I−1−16)、(I−2−6)は、それぞれ上記式(I−1)及び式(I−2)の例として挙げた化合物を意味する。
G−1 N,N,N',N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン
G−2 N,N,N',N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
G−3 ポリオキシエチレン(5)フェニルグリシジルエーテル (ナガセケムテックス社、EX145)
【0137】
<液晶配向剤(VA型の液晶表示素子用)の調製>
[実施例14]
重合体[A]としてポリイミド(PI−3)を含有する溶液にNMP及びエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテルを加え、さらにエポキシ化合物[B]として上記の(I−1−1)を、[A]重合体の合計100質量部に対して10質量部に相当する量を加えて十分に撹拌し、溶媒組成がNMP:エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル=60:40(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(S−14)を調製した。
【0138】
[実施例15〜27、比較例13〜25]
重合体[A]及びエポキシ化合物[B]の種類とその使用量を、それぞれ表1に示す通りとし、実施例14と同様に操作して、液晶配向剤(S−15)〜(S−27)及び(CS−13)〜(CS−25)を調製し、これらをそれぞれ実施例15〜27、比較例13〜25とした。
<TN型の液晶表示素子の製造>
[実施例28]
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、液晶配向剤(S−1)をスピンナーにより塗布し、ホットプレートで80℃、1分間、プレベークを行い、次いで200℃で30分間加熱することにより、膜厚80nmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数500rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。次に、上記一対の基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより液晶表示素子を製造し、これを実施例28とした。
【0139】
[実施例29〜40及び比較例26〜37]
実施例1〜13の液晶配向剤(S−1)〜(S−13)及び比較例1〜12の液晶配向剤(CS−1)〜(CS−12)を用い、実施例28と同様に操作して液晶表示素子を製造し、これらを実施例29〜40及び比較例26〜37とした。
【0140】
<VA型の液晶表示素子の製造>
[実施例41]
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、液晶配向剤(S−14)をスピンナーにより塗布し、ホットプレートで80℃、1分間、プレベークを行い、次いで210℃で30分間加熱することにより、膜厚80nmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。次に、上記一対の基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより液晶表示素子を製造し、これを実施例41とした。
【0141】
[実施例42〜54及び比較例38〜50]
液晶配向剤(S−14)〜(S−27)及び比較例13〜25の液晶配向剤(CS−13)〜(CS−25)を用い、実施例41と同様に操作して液晶表示素子を製造し、これらを実施例42〜54及び比較例38〜50とした。
【0142】
<評価>
実施例1〜27及び比較例1〜25の液晶配向剤並びに実施例28〜54及び比較例26〜50の液晶表示素子について、以下の評価をした。
【0143】
[剥離性の測定]
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、実施例1〜27及び比較例1〜25にかかる各液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、ホットプレートで100℃、90秒間、プレベークを行い、膜厚約80nmの塗膜を形成した。この操作を繰り返し、塗膜付きの基板を2枚作成した。次に、得られた基板を窒素雰囲気下25℃の暗室に保管し、12時間後、72時間後にそれぞれ暗室から取り出し、40℃のNMPの入ったビーカーに2分間浸漬した。2分後、基板をビーカーから取り出し、超純水で数回洗浄した後、エアブローにて表面の水滴を取り去り、基板を観察し、塗膜が残っていないかを観察した。72時間経過後に暗室から取り出し、NMP浸漬後に塗膜が残っておらず剥離性が良好なものを「○」、72時間経過後に暗室から取り出した基板は剥離できなかったが12時間後に暗室から取り出した基板であって、剥離可能であったものを「△」、剥離できないものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0144】
[電圧保持率の測定]
表示品位の低下につながる電気的特性の悪化について液晶表示素子の電圧保持率から評価した。実施例28〜54及び比較例26〜50にかかる各液晶表示素子について、70℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒スパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を東陽テクニカ社、VHR−1により測定し、その値を初期電圧保持率(VH1N)とした。次いで、初期電圧保持率測定後の液晶セルに対し、カーボンアークを光源とするウェザーメーターを用いて1,000時間の光照射を行った。光照射後の液晶表示素子について、上記と同様の方法により再度電圧保持率を測定し、その値を光照射後電圧保持率(VHAF)とした。VHIN−VHAFとして求めた電圧保持率の減少量をΔVHRと定義して算出した。
TN型の液晶表示素子(実施例28〜40及び比較例26〜37)については、電圧保持率の減少量ΔVHRが7%未満の場合を信頼性「◎」、7%以上10%未満の場合を信頼性「○」、10%以上の場合を信頼性「×」とした。
VA型の液晶表示素子(実施例41〜54及び比較例38〜50)については、電圧保持率の減少量ΔVHRが2.5%未満の場合を信頼性「◎」、2.5%以上5%未満の場合を信頼性「○」、5%以上の場合を信頼性「×」とした。結果を表2に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の液晶配向剤から形成した液晶配向膜
は、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜を形成できる。また、当該液晶配向膜を備える本発明の液晶表示素子は、TN型及びVA型のいずれの表示モードにおいても電圧保持率が良好で、電気的特性を悪化させることなく表示品位の低下を抑制できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明によれば、電気的特性の悪化等の表示品位の低下が抑制され、かつ、リワークにおける剥離が容易な液晶配向膜を形成できる。当該液晶表示素子は、種々の装置に好適に適用でき、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に用いられる。また、当該重合体組成物から形成された膜は、電子材料用絶縁膜として使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、並びに
[B]下記式(I)で表されるイミド環含有エポキシ化合物
を含有する液晶配向剤。
【化1】

(式(I)中、Rは単結合又は炭素数1〜4のアルカンジイル基である。Rは2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族基、2価の複素環式基、又はこれらを組み合わせた基である。nは0又は1の整数である。)
【請求項2】
上記式(I)が、下記式(I―1)及び式(I−2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(I−1)及び式(I−2)中、Rは上記式(I)と同義である。R、R及びRは、それぞれ独立して、−O−、−COO−、−OCO−を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。また、RとRとが、又はRとRとRとが、互いに連結して、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい環構造を形成してもよい。nは0又は1の整数である。)
【請求項3】
上記[A]重合体が、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物からなる群より選択される少なくとも1種を含むテトラカルボン酸二無水物を用いて合成されるポリアミック酸、及びこのポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記式(I)のRが、メタンジイル基である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
上記式(I−1)及び式(I−2)において、RとRとが、互いに連結して、水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいベンゼン環を形成する請求項2、請求項3又は請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。
【請求項8】
[A]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、並びに
[B]下記式(I)で表されるイミド環含有エポキシ化合物
を含有する重合体組成物。
【化3】

(式(I)中、Rは単結合又は炭素数1〜4のアルカンジイル基である。Rは2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族基、2価の複素環式基、又はこれらを組み合わせた基である。nは0又は1の整数である。)

【公開番号】特開2011−237483(P2011−237483A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106452(P2010−106452)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】