説明

液晶配向剤および液晶表示素子

【課題】表示品位に優れ、長時間連続駆動した場合であっても焼き付きを来たさない液晶配向膜を形成することができ、且つ少量の液量で印刷を行った場合でも印刷性に優れる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】上記液晶配向剤は、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記重合体はその分子内の少なくとも一部に下記式(A)


(式(A)中、Rは液晶配向能を有する基であり、Xは単結合、−O−、−COO−または−OCO−(ただし以上において、「#」を付した結合手がRと結合する。)であり、「×」は結合手であることを示す。)
で表される基を有する、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、耐焼き付き性に優れた液晶配向膜を与えることができ、且つ印刷性に優れる液晶配向剤およびそれから得られる液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板表面に液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90°捻れるようにした、いわゆるTN型(Twisted Nematic)液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている(特許文献1)。また、TN型液晶表示素子に比して高いコントラスト比を実現できるSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子(特許文献2)や視角依存性の少ないIPS(In−Plane Switching)型液晶表示素子(特許文献3)、視角依存性が少ないとともに映像画面の高速応答性に優れた光学補償ベンド(OCB)型液晶表示素子(特許文献4)、負の誘電異方性を有するネマチック型液晶を用いるVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子(特許文献5)などが開発されている。
これらの液晶表示素子における液晶配向膜の材料としては、従来ポリイミド、ポリアミドおよびポリエステルなどが知られており、特にポリイミドは、耐熱性、液晶との親和性、機械的強度などに優れており、多くの液晶表示素子に使用されている(特許文献6〜11)。
近年、液晶表示素子の高精細化を始めとする表示品位向上、低消費電力化などの検討が進み、液晶表示素子の利用範囲が拡大している。特にブラウン管テレビに代わる液晶テレビ用としての利用が広まってきた。これに伴い、電気特性において従来よりも優れ、表示品位がより高度であるとともに、より長時間の連続駆動が可能な液晶表示素子が求められている。
しかしながら、従来知られているポリアミック酸またはポリイミドから形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、これを長時間連続駆動した場合に液晶セル内に静電気が蓄積し、これにより液晶分子の配向を乱し、あるいは残像ないし焼き付きとして表示品位を著しく低下させる問題が指摘されている。
そのため、表示品位に優れ、且つ長時間連続駆動した場合であっても表示品位が劣化することがなく、特に耐焼き付き性に優れるといった、トータルバランスの良い液晶配向素子の開発が待ち望まれている。
さらに、液晶配向剤を有効に利用するため、印刷時に使用する液晶配向剤の液量を低減する試みがなされており、少ない液量でも優れた印刷性を示す液晶配向剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−138457号公報
【特許文献2】特開平5−19231号公報
【特許文献3】特開平11−24109号公報
【特許文献4】特開平8−327822号公報
【特許文献5】特開平5−113561号公報
【特許文献6】特開平4−153622号公報
【特許文献7】特開昭60−107020号公報
【特許文献8】特開昭56−91277号公報
【特許文献9】米国特許第5,928,733号明細書
【特許文献10】特開平11−258605号公報
【特許文献11】特開昭62−165628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表示品位に優れ、長時間連続駆動した場合であっても焼き付きを来たさない液晶配向膜を形成することができ、且つ少量の液量で印刷を行った場合でも印刷性に優れる液晶配向剤および表示品位に優れる液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、
ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記重合体はその分子内の少なくとも一部に下記式(A)
【0005】
【化1】

【0006】
(式(A)中、Rは液晶配向能を有する基であり、Xは単結合、−O−、−COO−または−OCO−(ただし以上において、「#」を付した結合手がRと結合する。)であり、「×」は結合手であることを示す。)
で表される基を有する、を含有する液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液晶配向剤は、少量の液量で印刷を行った場合でも膜質の均一性に優れる塗膜を与えることができ、しかも耐焼き付き性に優れる液晶配向膜を形成することができる。
かかる本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する本発明の液晶表示素子は、高品位の表示が可能であり、長期間の駆動によっても焼き付きを起こすことがなく、表示品位が劣化しない。従って、本発明の液晶表示素子は種々の装置に好適に適用することができ、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記重合体はその分子内の少なくとも一部に上記式(A)で表される基を有する、を含有する。このような重合体を、本明細書において、以下、「特定重合体」という。
上記式(A)におけるRとしては、例えば炭素数4〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフルオロアルキル基、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基、ビシクロヘキサン骨格を有する炭素数12〜30の炭化水素基などを挙げることができる。ここで、ステロイド骨格とは、シクロペンタノ−ペルヒドロフェナントレン核からなる骨格またはその炭素−炭素結合の1つもしくは2つ以上が二重結合となった骨格をいう。上記アルキル基としては、炭素数6〜18のアルキル基が好ましい。
上記式(A)におけるRとしては、より好ましくは炭素数8〜13のアルキル基または下記式(R−1)〜(R−6)
【0009】
【化2】

【0010】
(上記式中、Rは、それぞれ独立に、下記式
【0011】
【化3】

【0012】
(上記式中、「+」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
のいずれかで表される基であり、「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
のいずれかで表される基である。上記アルキル基としては、直鎖のものが好ましい。Rとして特に好ましくはn−オクチル基、n−ドデシル基、もしくはn−トリデシル基または下記式
【0013】
【化4】

【0014】
(上記式中、「*」は、それぞれ、結合手であることを示す。)
のいずれかで表される基である。
上記式(A)におけるXとしては、−OCO−(ただし、「#」を付した結合手がRと結合する。)であることが好ましい。
分子内の少なくとも一部に上記式(A)で表される基を有するポリアミック酸は、例えば
上記式(A)で表される基および2つのカルボン酸無水物基を有する化合物を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、を反応させるか、あるいは
テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A)で表される基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと、を反応させることにより得ることができ、
分子内の少なくとも一部に上記式(A)で表される基を有するポリイミドは、例えば上記の如くして得られたポリアミック酸を脱水閉環することにより得ることができる。
本発明の液晶配向剤に含有される特定重合体としては、テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A)で表される基および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンと、を反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体であることが好ましい。
【0015】
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明の液晶配向剤における好ましいポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、下記式(T−I)および(T−II)
【0016】
【化5】

【0017】
(上記式中、RおよびRは、それぞれ、芳香環を有する2価の有機基であり、RおよびRは、それぞれ、水素原子またはアルキル基であり、複数存在するRおよびRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
のそれぞれで表される化合物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物および脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(T−1)〜(T−4)
【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
のそれぞれで表される化合物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の液晶配向剤における好ましいポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記のうち、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,2,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、上記式(T−I)で表される化合物のうちの下記式(T−5)〜(T−7)
【0021】
【化8】

【0022】
のそれぞれで表される化合物および上記式(T−II)で表される化合物のうちの下記式(T−8)
【0023】
【化9】

【0024】
で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも一種(以下、「特定テトラカルボン酸」という。)を含むものであることが、良好な液晶配向性を発現させることができる観点から好ましい。
特定テトラカルボン酸としてより好ましくは、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ピロメリット酸二無水物および上記式(T−5)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも一種であり、特に好ましくは2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物である。
本発明の液晶配向剤における好ましいポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物は、上記の如き特定テトラカルボン酸を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、20モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、特に80モル%以上含むものであることが好ましい。
本発明における好ましいポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記の如き特定テトラカルボン酸二無水物のみを用いることが、最も好ましい。
【0025】
<ジアミン>
本発明の液晶配向剤における好ましいポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンは、上記式(A)で表される基および2つのアミノ基を有する化合物(以下、「化合物(A)」という。)を含むものである。
かかる化合物(A)としては、上記式(A)で表される基を有する芳香族ジアミンであることが好ましく、例えば下記式(A−1)
【0026】
【化10】

【0027】
(式(A−1)中、RおよびXは、それぞれ、上記式(A)におけるのと同義であり、XIIは単結合、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、−O−、−COO−または−OCO−(ただし以上において、「#」を付した結合手がRと結合する。)であり、XIIIは、それぞれ独立に、単結合または下記式(XIII−1)
【0028】
【化11】

【0029】
(式(XIII−1)中、XIVは単結合、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、−O−、−COO−または−OCO−、(ただし以上において、「#」を付した結合手がRと結合する。)であり、「#」を付した結合手がアミノ基と結合する。)
で表される2価の基である。)
で表される化合物を挙げることができる。
上記式(A−1)において、基−XIII−Rは、ベンゼン環上でピペリジン環に対して2,4−位または3,5−位にあることが好ましい。
上記式(A−1)におけるXIIとしては、単結合であることが好ましく、XIIIとしては、単結合または上記式(XIII−1)においてXIV−O−(ただし、「#」を付した結合手がRと結合する。)である2価の基が好ましい。
かかる化合物(A)としては、特に下記式(A−1−1)〜(A−1−36)
【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
【化16】

【0035】
【化17】

【0036】
【化31】

【0037】
【化32】

【0038】
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも一種を使用することが好ましい。上記式(A−1−25)〜(A−1−36)において基−COO−または基-O−に結合しているアルキル基は、直鎖のものであることが好ましい。
かかる化合物(A)は、有機化学の定法を適宜に組み合わせることにより合成することができる。
例えば上記式(A−1−1)、(A−1−2)、(A−1−5)、(A−1−6)、(A−1−9)、(A−1−10)、(A−1−13)、(A−1−14)、(A−1−17)、(A−1−18)、(A−1−21)および(A−1−22)のそれぞれで表される化合物は、それぞれ、例えばフッ化セシウムなどの適当な塩基の存在下でジニトロフルオロベンゼンにイソニペコチン酸を付加し、次いでその反応生成物に、N,N−ジメチルアミノピリジンおよびジシクロヘキシルカルボジイミド存在下でそれぞれコレステロール、コレスタノール、ラノステロール、エルゴステロールまたはルミステロールを加えてエステル形成反応を行った後、パラジウムカーボンおよびヒドラジン一水和物などの適当な還元剤を用いてニトロ基を還元してアミノ基とすることにより合成することができる。
上記式(A−1−3)、(A−1−7)、(A−1−11)、(A−1−15)、(A−1−19)および(A−1−23)のそれぞれで表される化合物は、それぞれ、例えばフッ化セシウムなどの適当な塩基の存在下でジニトロフルオロベンゼンに4−ブロモピペリジンを付加し、次いでこれにそれぞれコレステロール、コレスタノール、ラノステロール、エルゴステロールまたはルミステロールのカリウム塩を加えてエーテル形成反応を行った後、パラジウムカーボンおよびヒドラジン一水和物などの適当な還元剤を用いてニトロ基を還元してアミノ基とすることにより合成することができる。
上記式(A−1−4)、(A−1−8)、(A−1−12)、(A−1−16)、(A−1−20)および(A−1−24)のそれぞれで表される化合物は、それぞれ、例えばフッ化セシウムなどの適当な塩基の存在下でジニトロフルオロベンゼンにニペコチン酸を付加し、次いでその反応生成物に、N,N−ジメチルアミノピリジンおよびジシクロヘキシルカルボジイミド存在下でそれぞれコレステロール、コレスタノール、ラノステロール、エルゴステロールまたはルミステロールを加えてエステル形成反応を行った後、パラジウムカーボンおよびヒドラジン一水和物などの適当な還元剤を用いてニトロ基を還元してアミノ基とすることにより合成することができる。
【0039】
上記式(A−1−25)、(A−1−26)、(A−1−29)〜(A−1−31)、(A−1−33)および(A−1−34)のそれぞれで表される化合物は、それぞれ、例えばフッ化セシウムなどの適当な塩基の存在下でジニトロフルオロベンゼンにイソニペコチン酸を付加し、次いでその反応生成物に、N,N−ジメチルアミノピリジンおよびジシクロヘキシルカルボジイミド存在下で所望のアルキル基を有するアルコールを加えてエステル形成反応を行った後、パラジウムカーボンおよびヒドラジン一水和物などの適当な還元剤を用いてニトロ基を還元してアミノ基とすることにより合成することができる。
また、上記式(A−1−27)、(A−1−31)および(A−1−35)のそれぞれで表される化合物は、それぞれ、例えばフッ化セシウムなどの適当な塩基の存在下でジニトロフルオロベンゼンに4−ブロモピペリジンを付加し、次いでこれに所望のアルキル基を有するアルコールのカリウム塩を加えてエーテル形成反応を行った後、パラジウムカーボンおよびヒドラジン一水和物などの適当な還元剤を用いてニトロ基を還元してアミノ基とすることにより合成することができる。
さらに、上記式(A−1−28)、(A−1−32)および(A−1−36)のそれぞれで表される化合物は、それぞれ、例えばフッ化セシウムなどの適当な塩基の存在下でジニトロフルオロベンゼンにニペコチン酸を付加し、次いでその反応生成物に、N,N−ジメチルアミノピリジンおよびジシクロヘキシルカルボジイミド存在下で所望のアルキル基を有するアルコールを加えてエステル形成反応を行った後、パラジウムカーボンおよびヒドラジン一水和物などの適当な還元剤を用いてニトロ基を還元してアミノ基とすることにより合成することができる。
【0040】
本発明の液晶配向剤における好ましいポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、上記の如き化合物(A)のみを用いてもよく、化合物(A)とその他のジアミンとを組み合わせて用いてもよい。
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
【0041】
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジン、下記式(D−I)
【0042】
【化18】

【0043】
(式(D−I)中、Rはピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する1価の有機基であり、Xは2価の有機基である。)
で表される化合物(ただし、化合物(A)に該当するものを除く。)、下記式(D−II)
【0044】
【化19】

【0045】
(式(D−II)中、Rはピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する2価の有機基であり、Xは、それぞれ、2価の有機基であり、複数存在するXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物などの分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
下記式(D−III)
【0046】
【化20】

【0047】
(式(D−III)中、Rは−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−および−CO−から選ばれる2価の有機基であり、Rはステロイド骨格、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基およびフルオロフェニル基から選ばれる基を有する1価の有機基または炭素数6〜30のアルキル基である。)
で表されるモノ置換フェニレンジアミン(ただし化合物(A)に該当するものを除く。);
下記式(D−IV)
【0048】
【化21】

【0049】
(式(D−IV)中、Rは、それぞれ、炭素数1〜12の炭化水素基を示し、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
で表される化合物などのジアミノオルガノシロキサン;
下記式(D−1)〜(D−5)
【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

【0052】
(式(D−4)中のyは2〜12の整数であり、式(D−5)中のzは1〜5の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
本発明の液晶配向剤における好ましいポリアミック酸を合成するために用いられるその他のジアミンとしては、上記のうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、上記式(D−1)〜(D−5)のそれぞれで表される化合物、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジン、上記式(D−I)で表される化合物のうちの下記式(D−6)
【0053】
【化24】

【0054】
で表される化合物、上記式(D−II)で表される化合物のうちの下記式(D−7)
【0055】
【化25】

【0056】
で表される化合物および上記式(D−III)で表される化合物のうちのドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼンおよび下記式(D−8)〜(D−16)
【0057】
【化26】

【0058】
【化27】

【0059】
【化28】

【0060】
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「他の特定ジアミン」という。)を含むものであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤におけるポリアミック酸の合成に用いられるジアミンは、化合物(A)を、全ジアミンに対して、1モル%以上含むものであることが好ましく、1〜80モル%含むものであることがより好ましく、5〜50モル%含むものであることがさらに好ましく、特に5〜30モル%含むものであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤が含有することのできるポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンは、さらに上記の如き他の特定ジアミンを、全ジアミンに対して20〜99モル%含むものであることが好ましく、50〜95モル%含むものであることがより好ましく、特に70〜95モル%含むものであることが好ましい。
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いられるジアミンは、化合物(A)および他の特定ジアミンのみからなるものであることが好ましい。
【0061】
<ポリアミック酸の合成>
本発明の液晶配向剤における好ましいポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と化合物(A)を含むジアミンとを反応させることにより得ることができる。
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンに含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。反応時間は、好ましくは1〜240時間であり、より好ましくは2〜12時間である。
ここで使用される有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール性溶媒などを挙げることができる。有機溶媒の使用量(a:ただし有機溶媒と後述の貧溶媒とを併用する場合には、それらの合計量をいう。)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量とすることが好ましい。
【0062】
前記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であると一般に信じられているアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。
ポリアミック酸を合成するに際して有機溶媒と上記の如き貧溶媒とを併用する場合、貧溶媒の使用割合は、有機溶媒と貧溶媒との合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0063】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。
この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液中の溶媒をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、エバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法により、ポリアミック酸を精製することができる。
【0064】
<ポリイミド>
本発明における好ましいポリイミドは、上記の如き好ましいポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
上記ポリイミドの合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上述したポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物と同じ化合物を挙げることができる。好ましいテトラカルボン酸二無水物の種類およびその好ましい使用割合もポリアミック酸の場合と同様である。
本発明における好ましいポリイミドを合成するために用いられるジアミンとしては、上記のポリアミック酸の合成に用いられるジアミンと同じジアミンを挙げることができる。すなわち、本発明における好ましいポリイミドの合成に用いられるジアミンは、上記の如き化合物(A)を含むものであり、化合物(A)のみを用いてもよく、上記化合物(A)と上記他のジアミンとを併用してもよい。好ましい他のジアミンの種類および各ジアミンの好ましい使用割合もポリアミック酸の場合と同様である。
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が20%以上であることが好ましく、特に40〜80%であることが好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。イミド化率は、ポリイミドを適当な重水素化溶媒(例えば重水素化ジメチルスルホキシド)に溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した結果から、下記数式(1)により求めることができる。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 (1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αはポリイミドの前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0065】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくは(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間は好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは2〜8時間である。
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望するイミド化率によるが、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。イミド化率は、上記の脱水剤および脱水閉環剤の使用割合を多くするほど高くすることができる。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは2〜8時間である。
【0066】
上記方法(i)において得られるポリイミドは、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換などの方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
【0067】
−末端修飾型の重合体−
本発明における好ましいポリアミック酸およびポリイミドは、それぞれ、分子量が調節された末端修飾型の重合体であってもよい。末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性などをさらに改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、重合反応系に分子量調節剤を添加することにより行うことができる。分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。
上記酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
上記モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを;
上記モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、ポリアミック酸を合成する際に使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100重量部に対して好ましくは20重量以下であり、より好ましくは5重量部以下である。
−溶液粘度−
以上のようにして得られるポリアミック酸およびポリイミドは、これらをそれぞれ濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0068】
<他の重合体>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き特定重合体を必須成分として含有するが、得られる液晶配向剤の溶液特性および形成される液晶配向膜の電気特性の改善のために、特定重合体とともに他の重合体を併用してもよい。
かかるその他の重合体は、特定重合体以外の重合体であり、例えばテトラカルボン酸二無水物と化合物(A)を含まないジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、他のポリアミック酸または他のポリイミドが好ましく、特に他のポリアミック酸が好ましい。その他の重合体の使用割合としては、重合体の合計(特定重合体および他の重合体の合計をいう。以下同じ。)に対して、好ましくは50重量以上100重量%未満であり、より好ましくは60〜90重量%であり、さらに65〜85重量%であることが好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される重合体としては、上記式(A)で表される基を有するポリイミドを用いるか、あるいは上記式(A)で表される基を有するポリイミドと他のポリアミック酸とを上記の割合で混合して用いることが、特に好ましい。
【0069】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き特定重合体を必須成分として含有し、任意的に他の重合体を含有することができるものであるが、さらに必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを好ましいものとして挙げることができる。これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計量(液晶配向剤に含有される特定重合体および他の重合体の合計量をいう。以下同じ。)100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0070】
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
これら官能性シラン化合物の配合割合は、重合体の合計量100重量部に対して、好ましくは40重量部以下である。
【0071】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き重合体および必要に応じて任意的に配合されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
本発明の液晶配向剤に使用できる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。かかる有機溶媒の好ましい例としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または2種以上を混合して使用することができる。
【0072】
本発明の液晶配向剤の固形分濃度(液晶配向剤のうち有機溶媒を除いた成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、これを基板表面に塗布し、有機溶媒を除去することにより液晶配向膜である塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難くなる場合があり、一方固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって同様に良好な液晶配向膜を得難くなる場合があり、また液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる場合がある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
【0073】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記の如き本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備するものである。
本発明の液晶表示素子は、好ましくはVA型液晶表示素子であり、例えば下記の方法により製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィンなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えば基板上にパターンなしの透明導電膜を形成した後フォト・エッチングにより所望のパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いてパターニングされた透明導電膜を直接形成する方法などを用いることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面と塗膜との接着性をさらに向上するために、例えば官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布しておいてもよい。液晶配向剤塗布後塗布した配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.1〜10分であり、より好ましくは0.5〜3分である。その後、溶剤を完全に除去することなどを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このポストベーク温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は好ましくは1〜180分であり、より好ましくは10〜120分である。
本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜である塗膜を形成するが、本発明の液晶配向剤が、ポリアミック酸またはイミド環構造とアミック酸構造とを併有するポリイミドを含有する場合には、塗膜形成後にさらに加熱することによってアミック酸単位の脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜(液晶配向膜)としてもよい。
ここで形成される液晶配向膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0074】
(2)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。2枚の基板間に液晶を配置するには、例えば以下の2つの方法を挙げることができる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。本発明の液晶配向剤は、垂直配向性に優れた液晶配向膜を形成することができるため、ODF法によりVA型液晶表示素子を製造したときでもODFムラが発生しない液晶表示素子を得ることができる利点を有する。
いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を製造することができる。
【0075】
ここに、シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球および硬化剤を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0076】
<化合物(A)の合成>
合成例1[上記式(A−1−2)で表される化合物の合成]
上記式(A−1−2)で表される化合物(以下、「化合物(A−1−2)」という。)を、下記スキーム1
【0077】
【化29】

【0078】
に従って合成した。
(1)化合物(A−1a)の合成
撹拌機、温度計および窒素導入管を備えた3,000mL三口フラスコに、2,4−ジニトロフルオロベンゼン186g、イソニペコチン酸194gおよびジメチルスルホシキド1,000mLを仕込み、均一に溶解した。続いて、ここにフッ化セシウム167gを加えて室温で4時間反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチル3,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去することにより、化合物(A−1a)を290g得た。
(2)化合物(A−1−2a)の合成
窒素導入管および温度計を備えた3,000mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(A−1a)を148g、コレスタノール194g、N,N−ジメチルアミノピリジン12.2gおよびテトラヒドロフラン2,000mLを仕込み、氷浴で冷却した。続いて、ここにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)124gを加えて氷浴中で30分撹拌下に反応を行った後、さらに室温で5時間反応を行った。反応終了後、ろ過により沈殿を除去した後、ろ液に酢酸エチル2,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去して得た粗生成物を、酢酸エチル2,000mLおよびテトラヒドロフラン330mLからなる混合溶媒から再結晶することにより、化合物(A−1−2a)を210g得た。
(3)化合物(A−1−2)の合成
窒素導入管、還流管および温度計を備えた1,000mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(A−1−2a)133g、エタノール1,480mL、テトラヒドロフラン740mLおよび5重量%パラジウムカーボン6.6gを仕込み、さらにヒドラジン一水和物48.5mLをゆっくりと加え、そのまま室温で1時間撹拌下に反応を行った後、さらに66℃で1時間還流下に反応を行った。反応終了後、ろ過によりパラジウムカーボンを除去した後、ろ液に酢酸エチル5,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄した後、溶媒を除去することにより、化合物(A−1−2)の粉末を99g得た。
合成例2[上記式(A−1−18)で表される化合物の合成]
上記式(A−1−18)で表される化合物(以下、「化合物(A−1−18)」という。)を、下記スキーム2
【0079】
【化30】

【0080】
に従って合成した。
(1)化合物(A−1−18a)の合成
窒素導入管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記合成例1の(1)で得た化合物(A−1a)を139g、4’−ペンチル−ビシクロヘキシル−4−オール119g、N,N−ジメチルアミノピリジン12gおよびテトラヒドロフラン2,500mLを仕込み、氷浴で冷却した。続いて、ここにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)116gを加え、氷浴中で30分撹拌下に反応を行った後、さらに室温で5時間反応を行った。反応終了後、ろ過により沈殿を除去した後、ろ液に酢酸エチル3,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去して得た粗生成物を、エタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=5:1(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−18a)を200g得た。
(2)化合物(A−1−18)の合成
窒素導入管、還流管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記で得た(A−1−18a)を180g、エタノール2,000mL、テトラヒドロフラン1,000mLおよび5重量%パラジウムカーボン8.6gを仕込み、さらに、ここにヒドラジン一水和物86mLをゆっくりと加え、そのまま室温で1時間撹拌下に反応を行った後、さらに1時間還流下に反応を行った。反応終了後、ろ過によりパラジウムカーボンを除去した後、ろ液に酢酸エチル10,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄した後、溶媒を除去して得た粗生成物をエタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=10:3(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−18)の粉末を120g得た。
【0081】
合成例3[上記式(A−1−26)で表される化合物の合成]
上記式(A−1−26)で表される化合物(以下、「化合物(A−1−26)」という。)を、下記スキーム3
【0082】
【化33】

【0083】
に従って合成した。
(1)化合物(A−1−26a)の合成
窒素導入管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記合成例1の(1)と同様にして得た化合物(A−1a)139g、1−ドデカノール88g、N,N−ジメチルアミノピリジン12gおよびテトラヒドロフラン2,500mLを仕込み、氷浴で冷却した。続いて、ここにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)116gを加え、氷浴中で30分撹拌下に反応を行った後、さらに室温で5時間反応を行った。反応終了後、ろ過により沈殿を除去した後、ろ液に酢酸エチル3,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去して得た粗生成物を、エタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=5:1(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−26a)を175g得た。
(2)化合物(A−1−26)の合成
窒素導入管、還流管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(A−1−26a)を158g、エタノール2,000mL、テトラヒドロフラン1,000mLおよび5重量%パラジウムカーボン8.6gを仕込み、さらに、ここにヒドラジン一水和物86mLをゆっくりと加え、そのまま室温で1時間撹拌下に反応を行った後、さらに1時間還流下に反応を行った。反応終了後、ろ過によりパラジウムカーボンを除去した後、ろ液に酢酸エチル10,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄した後、溶媒を除去して得た粗生成物をエタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=10:3(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−26)の粉末を105g得た。
【0084】
合成例4[上記式(A−1−30)で表される化合物の合成]
上記式(A−1−30)で表される化合物(以下、「化合物(A−1−30)」という。)を、下記スキーム4
【0085】
【化34】

【0086】
に従って合成した。
(1)化合物(A−1−30a)の合成
窒素導入管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記合成例1の(1)と同様にして得た化合物(A−1a)を139g、1−トリデカノール61g、N,N−ジメチルアミノピリジン12gおよびテトラヒドロフラン2,500mLを仕込み、氷浴で冷却した。続いて、ここにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)116gを加え、氷浴中で30分撹拌下に反応を行った後、さらに室温で5時間反応を行った。反応終了後、ろ過により沈殿を除去した後、ろ液に酢酸エチル3,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去して得た粗生成物を、エタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=5:1(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−30a)を180g得た。
(2)化合物(A−1−30)の合成
窒素導入管、還流管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記で得た(A−1−30a)を162g、エタノール2,000mL、テトラヒドロフラン1,000mLおよび5重量%パラジウムカーボン8.6gを仕込み、さらに、ここにヒドラジン一水和物86mLをゆっくりと加え、そのまま室温で1時間撹拌下に反応を行った後、さらに1時間還流下に反応を行った。反応終了後、ろ過によりパラジウムカーボンを除去した後、ろ液に酢酸エチル10,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄した後、溶媒を除去して得た粗生成物をエタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=10:3(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−30)の粉末を110g得た。
【0087】
合成例5[上記式(A−1−34)で表される化合物の合成]
上記式(A−1−34)で表される化合物(以下、「化合物(A−1−34)」という。)を、下記スキーム5
【0088】
【化35】

【0089】
に従って合成した。
(1)化合物(A−1−34a)の合成
窒素導入管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記合成例1の(1)と同様にして得た化合物(A−1a)を139g、1−オクタノール94g、N,N−ジメチルアミノピリジン12gおよびテトラヒドロフラン2,500mLを仕込み、氷浴で冷却した。続いて、ここにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)116gを加え、氷浴中で30分撹拌下に反応を行った後、さらに室温で5時間反応を行った。反応終了後、ろ過により沈殿を除去した後、ろ液に酢酸エチル3,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を除去して得た粗生成物を、エタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=5:1(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−34a)を151g得た。
(2)化合物(A−1−34)の合成
窒素導入管、還流管および温度計を備えた5,000mLの三口フラスコに、上記で得た(A−1−34a)を138g、エタノール2,000mL、テトラヒドロフラン1,000mLおよび5重量%パラジウムカーボン8.6gを仕込み、さらに、ここにヒドラジン一水和物86mLをゆっくりと加え、そのまま室温で1時間撹拌下に反応を行った後、さらに1時間還流下に反応を行った。反応終了後、ろ過によりパラジウムカーボンを除去した後、ろ液に酢酸エチル10,000mLを加えて有機層を得た。該有機層を水で3回洗浄した後、溶媒を除去して得た粗生成物をエタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶媒(エタノール:テトラヒドロフラン=10:3(体積比))から再結晶することにより、化合物(A−1−34)の粉末を90g得た。
【0090】
<特定重合体の合成>
[上記式(A)で表される基を有するポリイミドの合成]
合成例F−1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)36.2gならびにジアミンとして化合物(A−1−2)(上記合成例1で得たもの。以下同じ。)19.7g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン14.1gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,385mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン12.8gおよび無水酢酸16.5gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換(この溶媒置換操作により、脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率49%のポリイミド(F−1)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−2
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)41.0gならびにジアミンとして化合物(A−1−2)11.1g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン17.9gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,517mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン14.5gおよび無水酢酸18.7gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率52%のポリイミド(F−2)を20重量%含有する溶液を得た。
【0091】
合成例F−3
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)36.2gならびにジアミンとして化合物(A−1−2)19.7g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン14.1gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,325mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン25.6gおよび無水酢酸33.0gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率82%のポリイミド(F−3)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−4
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)41.0gならびにジアミンとして化合物(A−1−2)11.1g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン17.9gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,490mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン28.9gおよび無水酢酸37.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率80%のポリイミド(F−4)を20重量%含有する溶液を得た。
【0092】
合成例F−5
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)16.5gならびにジアミンとして化合物(A−1−2)9.0g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)、上記式(D−10)で表される化合物3.9g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン5.6gをN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,071mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン5.8gおよび無水酢酸7.5gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率51%のポリイミド(F−5)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−6
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)38.7gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)(上記合成例2で得たもの。以下同じ。)16.3g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン15.0gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,871mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン13.7gおよび無水酢酸17.6gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率51%のポリイミド(F−6)を20重量%含有する溶液を得た。
【0093】
合成例F−7
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)42.5gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)9.0g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン18.5gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は2,109mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン15.0gおよび無水酢酸19.4gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率50%のポリイミド(F−7)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−8
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)38.7gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)16.3g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン15.0gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,880mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン27.3gおよび無水酢酸35.2gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率80%のポリイミド(F−8)を20重量%含有する溶液を得た。
【0094】
合成例F−9
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)43.8gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)9.2g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン17.0gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は2,018mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン30.9gおよび無水酢酸39.9gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率78%のポリイミド(F−9)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−10
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)17.5gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)7.4g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)、上記式(D−10)で表される化合物4.1g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン6.0gをN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,390mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン6.2gおよび無水酢酸8.0gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率48%のポリイミド(F−10)を20重量%含有する溶液を得た。
【0095】
合成例F−11
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)32.4gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)20.5g(TCA1モルに対して0.3モルに相当する。)および3,5−ジアミノ安息香酸13.3g(TCA1モルに対して0.6モルに相当する。)および1,4−ビス−(4−アミノ−フェニル)−ピペラジン3.90g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)をN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は812mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン17.1gおよび無水酢酸22.1gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率64%のポリイミド(F−11)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−12
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)31.9gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)10.1g(TCA1モルに対して0.15モルに相当する。)および上記式(D−10)で表される化合物11.2g(TCA1モルに対して0.15モルに相当する。)、3,5−ジアミノ安息香酸13.0g(TCA1モルに対して0.6モルに相当する。)および1,4−ビス−(4−アミノ−フェニル)−ピペラジン3.8g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)をN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,112mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン16.9gおよび無水酢酸21.8gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率65%のポリイミド(F−12)を20重量%含有する溶液を得た。
【0096】
合成例F−13
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)32.1gならびにジアミンとして化合物(A−1−18)10.2g(TCA1モルに対して0.15モルに相当する。)、上記式(D−8)で表される化合物10.7g(TCA1モルに対して0.15モルに相当する。)、3,5−ジアミノ安息香酸13.2g(TCA1モルに対して0.6モルに相当する。)および1,4−ビス−(4−アミノ−フェニル)−ピペラジン3.9g(TCA1モルに対して0.1モルに相当する。)をN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,114mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン17.0gおよび無水酢酸22.0gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率64%のポリイミド(F−13)を20重量%含有する溶液を得た。
【0097】
合成例F−14
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)40.0gならびにジアミンとして化合物(A−1−26)(上記合成例3で得たもの。以下同じ。)14.5g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン15.5gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,901mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン28.2gおよび無水酢酸36.4gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率80%のポリイミド(F−14)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−15
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)32.6gならびにジアミンとして化合物(A−1−26)29.5g(TCA1モルに対して0.5モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン7.9gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,856mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン11.5gおよび無水酢酸14.85gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率49%のポリイミド(F−15)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−16
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)39.7gならびにジアミンとして化合物(A−1−30)(上記合成例4で得たもの。)14.9g(TCA1モルに対して0.2モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン15.4gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,890mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン14.0gおよび無水酢酸18.1gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率49%のポリイミド(F−16)を20重量%含有する溶液を得た。
合成例F−17
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)34.6gならびにジアミンとして化合物(A−1−34)(上記合成例5で得たもの。)27.0g(TCA1モルに対して0.5モルに相当する。)およびp−フェニレンジアミン8.4gをN−メチル−2−ピロリドン280gに溶解し、60℃で4時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。この溶液につき、25℃で測定した溶液粘度は1,861mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン650gを追加し、ピリジン24.4gおよび無水酢酸31.5gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶媒置換することにより、イミド化率79%のポリイミド(F−17)を20重量%含有する溶液を得た。
【0098】
<他の重合体の合成>
[他のポリアミック酸の合成]
合成例G−1
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物109g(0.50モル)および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物98g(0.50モル)ならびにジアミンとして4,4−ジアミノジフェニルエーテル200g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,290gに溶解し、40℃で3時間反応を行った後、N−メチル−2−ピロリドン1,350gを追加することにより、他のポリアミック酸(G−1)を10重量%含有する溶液約3,990gを得た。
この他のポリアミック酸溶液の溶液粘度は180mPa・sであった。
合成例G−2
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物98g(0.50モル)およびピロメリット酸二無水物109g(0.50モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルメタン198g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,290gに溶解し、40℃で3時間反応を行った後、N−メチル−2−ピロリドン1,350gを追加することにより、他のポリアミック酸(G−2)を10重量%含有する溶液約4,000gを得た。
この他のポリアミック酸溶液の溶液粘度は113mPa・sであった。
合成例G−3
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)およびジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,246gに溶解し、40℃で4時間反応を行った後、N−メチル−2−ピロリドン1,321gを追加することにより、他のポリアミック酸(G−3)を10重量%含有する溶液約3,900gを得た。
この他のポリアミック酸溶液の溶液粘度は189mPa・sであった。
【0099】
合成例G−4
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)およびジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン3,670gに溶解し、40℃で3時間反応を行うことにより、他のポリアミック酸(G−4)を10重量%含有する溶液約4,020gを得た。
この他のポリアミック酸溶液の溶液粘度は144mPa・sであった。
合成例G−5
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)およびジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,404gに溶解し、40℃で4時間反応を行い、N−メチル−2−ピロリドンを1,412g追加することにより、他のポリアミック酸(G−5)を10重量%含有する溶液約4,200gを得た。
この他のポリアミック酸溶液の溶液粘度は162mPa・sであった。
【0100】
<液晶配向剤の調製および評価>
実施例1
[印刷性評価用液晶配向剤の調製]
上記合成例F−1で得たポリイミド(F−1)を含有する溶液を、これに含有されるポリイミド(F−1)に換算して100重量部に相当する量だけとり、ここにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン20重量部を加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加えて溶媒組成がNMP:BC=60:40(重量比)、固形分濃度7重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、印刷性評価用液晶配向剤(P−1)を調製した。
[印刷性の評価]
上記で調製した液晶配向剤(P−1)につき、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製、型式「オングストローマーS40L―532」)を用い、アニロックスロールへの液晶配向剤滴下量を往復20滴(約0.2g)の条件にてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布した。ここで、上記の液晶配向剤滴下量は、同型の印刷機について通常採用される滴下量(往復30滴(約0.3g))と比較して液量が少なく、より厳しい印刷条件である。
液晶配向剤塗布後の基板を、80℃で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、180℃で10分間加熱(ポストベーク)することにより、膜厚80nmの塗膜を形成した。
この塗膜を目視で観察してハジキ(ピンホール)および印刷ムラの有無を調べたところ、ピンホールおよび印刷ムラの双方とも観察されず、上記液晶配向剤(P−1)の印刷性は良好であった。
【0101】
[液晶セル製造用液晶配向剤の調製]
上記[印刷性評価用液晶配向剤の調製]において、ろ過前の溶液の固形分濃度を4重量%としたほかは、上記と同様にして液晶セル製造用液晶配向剤(S−1)を調製した。
[液晶セルの製造]
厚さ1mmのガラス基板の片面全面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、上記で調製した液晶配向剤(S−1)をスピンナーにより塗布し、ホットプレート上にて80℃、1分間のプレベークを行い、次いでクリーンオーブン中にて200℃で30分間ポストベークすることにより、膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、透明導電膜上に液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)製造した。
上記一対の基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が対向するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、垂直配向型液晶セルを製造した。
[液晶セルの評価]
(1)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶セルに対し、60℃において、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.7マイクロ秒のスパンで印加した後、電圧印加の解除から16.7ミリ秒後の電圧保持率を測定した。
結果は第2表に示した。
(2)耐焼き付き性の評価
上記と同様にして製造した液晶セルにつき、60℃において5Vの電圧を20時間印加した後の残留DC電圧を測定し、この値が0〜500mVであったとき耐焼き付き性「優良」、500mVを超えて1,000mV以下であったとき耐焼き付き性「良好」として評価した。
評価結果は第2表に示した。
【0102】
実施例2〜21および55
上記実施例1において、ポリイミド(F−1)を含有する溶液に代えて、第1表に記載した種類の重合体を含有する溶液をそれぞれ用い、エポキシ化合物であるN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンの使用量をそれぞれ第1表に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にして印刷性評価用液晶配向剤(P−2)〜(P−21)および(P−55)ならびに液晶セル製造用液晶配向剤(S−2)〜(S−21)および(S−55)をそれぞれ調製し、印刷性の評価ならびに液晶セルの製造および評価を行った。
評価結果は第1表および第2表に示した。
【0103】
実施例22
[印刷性評価用液晶配向剤の調製と印刷性の評価]
上記合成例F−1で得たポリイミド(F−1)を含有する溶液のポリイミド(F−1)に換算して20重量部に相当する量と、上記合成例G−1で得たポリアミック酸(G−1)を含有する溶液のポリアミック酸(G−1)に換算して80重量部に相当する量とを合わせ、ここにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン20重量部を加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加えて溶媒組成がNMP:BC=60:40(重量比)、固形分濃度7重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、印刷性評価用液晶配向剤(P−22)を調製した。
上記で調製した液晶配向剤(P−22)を用いたほかは実施例1と同様にして、印刷性の評価を行った。
評価結果は第1表に示した。
[液晶セル製造用液晶配向剤の調製と評価]
上記[印刷性評価用液晶配向剤の調製]において、ろ過前の溶液の固形分濃度を4重量%としたほかは、上記と同様にして液晶セル製造用液晶配向剤(S−22)を調製した。
上記で調製した液晶配向剤(S−22)を用いたほかは実施例1と同様にして、液晶セルの製造および評価を行った。
評価結果は第2表に示した。
【0104】
実施例23〜54および56〜58
上記実施例22において、第1表に記載した種類および量のポリイミドおよびポリアミック酸をそれぞれ含有する溶液を用い、エポキシ化合物であるN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンの使用量をそれぞれ第1表に記載のとおりとしたほかは実施例22と同様にして、印刷性評価用液晶配向剤(P−23)〜(P−54)および(P−56)〜(P−58)ならびに液晶セル製造用液晶配向剤(S−23)〜(S−54)および(S−56)〜(S−58)をそれぞれ調製し、印刷性の評価ならびに液晶セルの製造および評価を行った。
評価結果は第1表および第2表に示した。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、ただし前記重合体はその分子内の少なくとも一部に下記式(A)
【化1】

(式(A)中、Rは液晶配向能を有する基であり、Xは単結合、−O−、−COO−または−OCO−(ただし以上において、「#」を付した結合手がRと結合する。)であり、「×」は結合手であることを示す。)
で表される基を有する、を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【請求項2】
前記重合体が、テトラカルボン酸二無水物と、下記式(A−1)
【化2】

(式(A−1)中、RおよびXは、それぞれ、上記式(A)におけるのと同義であり、XIIは単結合、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、−O−、−COO−または−OCO−(ただし以上において、「#」を付した結合手がRと結合する。)であり、XIIIは、それぞれ独立に、単結合または下記式(XIII−1)
【化3】

(式(XIII−1)中、XIVは単結合、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、−O−、−COO−または−OCO−、(ただし以上において、「#」を付した結合手がRと結合する。)であり、「#」を付した結合手がアミノ基と結合する。)
で表される2価の基である。)
で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
【請求項4】
テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A−1)で表される化合物を含むジアミンと、を反応させて得られるポリアミック酸。
【請求項5】
テトラカルボン酸二無水物と、上記式(A−1)で表される化合物を含むジアミンと、を反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド。
【請求項6】
上記式(A−1)で表される化合物。

【公開番号】特開2011−18023(P2011−18023A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85386(P2010−85386)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】