説明

液晶配向溶液

【課題】液晶デイスプレイ装置が非常に安定な配向特性を持つことを可能とする液晶配向溶液を提供する。
【解決手段】ポリアミド酸−ポリアミド酸ポリマ、ポリイミド−ポリアミド酸ポリマ、およびポリイミド−ポリイミドポリマからなるグループから選択される、少なくとも1つのポリマを有する液晶配向溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向溶液に関し、より具体的には、液晶ディスプレイ装置の性能を高めることができる液晶配向溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)は、液晶分子の特性を利用したディスプレイ装置である。電場が変化するに連れて液晶分子の配向性が変化させられ、液晶層を透過する光を制御して像を生成する。液晶ディスプレイは、小型、軽量、低消費電力、および良好なディスプレイ品質といった利点のため、近年の主流になっている。
【0003】
液晶ディスプレイの主な製造工程は、液晶パネルの製造と液晶モジュール(LCM)の組み立てを含む。液晶パネルの形成方法は、主として、上基板としてのカラーフィルタと、下基板としての薄膜トランジスタ(TFT)との間に液晶分子を封入することを含む。液晶ディスプレイにとっては、液晶分子の長軸方向が、基板表面とプレチルト角で均一に配列されることが重要である。液晶分子をプレチルト角に配向させることのできる物質は、配向層と呼ばれる。
【0004】
配向層を形成する2つの典型的な製造方法が業界内では知られている。第1の方法は、無機物質を蒸気蒸着することにより無機膜を形成する方法である。例えば、基板への酸化ケイ素の斜方蒸着によって膜が形成され、液晶分子が蒸着の方向に配向される。上記の方法では液晶分子の均一な配向性が得られるが、業界の経済性を満たさない。第2の方法は、基板表面に有機膜を塗布し、次いでゴムあるいは布(綿、ナイロン、あるいはポリエステル)によって有機膜をラビングして、配向性を決定する方法である。すなわち、液晶分子がラビングの方向に配向される。この方法は簡単であり、液晶分子の均一な配向性を容易に得られるので、業界内で広く用いられている。有機膜を形成するためのポリマとしては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)ポリアミド(PA)、あるいはポリイミド(PI)がある。耐化学性および熱安定性のため、ポリイミドが、配向層物質として最も頻繁に使用される物質である。
【0005】
通常、液晶ディスプレイ装置に電圧が加えられると、イオン性電子が配向層によって吸収される。しかし、電圧が遮断された時に、イオン性電子が配向層から完全には離れないため、残像が生じる。従って、近年の配向層物質の開発は、残像を低減することに焦点が当てられている。
【発明の開示】
【0006】
従って、本発明は、液晶配向溶液を提供し、形成された液晶配向層は、安定なプレチルト角、高コントラスト比、高い電圧保持率(VHR)、低残留直流(RDC)、良好なラビング特性、および高信頼性といった性質を持つ。それ故、液晶ディスプレイ装置の特性が向上する。
【0007】
本発明の提供する液晶配向溶液は、化学式(A)で表されるポリアミド酸−ポリアミド酸ポリマ、化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマ、および化学式(C)で表されるポリイミド−ポリイミドポリマからなるグループから選択される、少なくとも1つのポリマを含み、
【化1】

【化2】

【化3】

ここでTおよびTはそれぞれ独立な四価の有機基であり、m<n、p<q、r<s、DおよびDの少なくとも1つは、化学式(1)から化学式(15)よりなるグループから選択され、
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

ここでR、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立な一価の有機基、ハロゲン原子、あるいは水素原子、Rは一価のC4−40脂環式基あるいは一価のC8−20脂肪族基、R、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立なハロゲン原子あるいは一価の有機基、RおよびR10はそれぞれ独立な二価のC4−40脂環式基、Xは−O−、−S−、−SO−、−SO−、あるいは−CO−、Yは二価の有機基、Zは二価の有機基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、あるいは−CO−、X'およびY'は−O−、−NH−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、および−CONH−よりなるグループから選択されるそれぞれ独立な二価の基、Z'は−CF、−CN、−COCH、−COOH、−NO、−SOCH、−SOCH、−OCF、−F、および−Clよりなるグループから選択される一価の基、Aは−O−、−NH−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、および−CONH−よりなるグループから選択される二価の基、a、b、e、およびfはそれぞれ独立な0から4の整数、cおよびdはそれぞれ独立な0から3の整数、a'およびb'はそれぞれ独立な1以上の整数である。
【0008】
本発明の実施形態によれば、pは0.2以上である。
【0009】
本発明の実施形態によれば、Dは、化学式(1)から化学式(6)よりなる第1のグループ、および化学式(7)から化学式(15)よりなる第2のグループの一方から選択され、Dは、第1のグループおよび第2のグループの他方から選択される。
【0010】
本発明においては、液晶配向溶液を形成するポリマは、化学式(1)から化学式(6)よりなるグループの1つの基、および/または、化学式(7)から化学式(15)よりなるグループの別の基を有する。よって本発明の液晶配向溶液は、液晶ディスプレイ装置の残像を低減するのに役立ち、液晶ディスプレイ装置は高信頼性、高コントラスト比、高輝度、高電圧安定性、および長寿命といった特性を持つ。さらに液晶配向溶液は非常に安定なプレチルト角効果を持つので、これによって液晶ディスプレイ装置が非常に安定な配向特性を持つことを可能としている。
【0011】
本発明の、上述した、およびその他の目的、特徴、利点を理解するため、好ましい実施形態を式とともに以下に詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶配向溶液(あるいは混合物)は、化学式(A)で表されるポリアミド酸−ポリアミド酸ポリマ、化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマ、および化学式(C)で表されるポリイミド−ポリイミドポリマからなるグループから選択される、少なくとも1つのポリマを含み、
【化1】

【化2】

【化3】

ここでTおよびTはそれぞれ独立な四価の有機基であり、m<n、p<q、r<s、m≧0、n≧0、p>0、q>0、r≧0、s≧0、DおよびDの少なくとも1つは、化学式(1)から化学式(15)よりなるグループから選択され、
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

ここでR、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立な一価の有機基、ハロゲン原子、あるいは水素原子、Rは一価のC4−40脂環式基あるいは一価のC8−20脂肪族基、R、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立なハロゲン原子あるいは一価の有機基、RおよびR10はそれぞれ独立な二価のC4−40脂環式基、Xは−O−、−S−、−SO−、−SO−、あるいは−CO−、Yは二価の有機基、Zは二価の有機基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、あるいは−CO−、X'およびY'は−O−、−NH−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、および−CONH−よりなるグループから選択されるそれぞれ独立な二価の基、Z'は−CF、−CN、−COCH、−COOH、−NO、−SOCH、−SOCH、−OCF、−F、および−Clよりなるグループから選択される一価の基、Aは−O−、−NH−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、および−CONH−よりなるグループから選択される二価の基、a、b、e、およびfはそれぞれ独立な0から4の整数、cおよびdはそれぞれ独立な0から3の整数、a'およびb'はそれぞれ独立な1以上の整数である。
【0013】
実施形態においては、Dは、化学式(1)から化学式(6)よりなる第1のグループ、および化学式(7)から化学式(15)よりなる第2のグループの一方から選択され、Dは、第1のグループおよび第2のグループの他方から選択される。言い換えると、Dが化学式(1)から化学式(6)の1つである時は、Dは化学式(7)から化学式(15)の1つであり、もしくはDが化学式(7)から化学式(15)の1つである時は、Dは化学式(1)から化学式(6)の1つである。
【0014】
化学式(A)で表されるポリアミド酸−ポリアミド酸ポリマ、化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマ、および化学式(C)で表されるポリイミド−ポリイミドポリマが、化学式(1)から化学式(6)よりなるグループの1つを有する時、液晶ディスプレイ装置の残像が低減される。従って、液晶ディスプレイ装置は高信頼性、高コントラスト比、高輝度、高電圧安定性、および長寿命といった特性を持つ。本発明のポリマを形成する時、繰り返し単位の総量に対する、化学式(1)から化学式(6)よりなるグループの1つを有する化合物の含有量は、5モル%から95モル%であり、好ましくは10モル%から80モル%、より好ましくは40モル%から80モル%である。
【0015】
化学式(A)で表されるポリアミド酸−ポリアミド酸ポリマ、化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマ、および化学式(C)で表されるポリイミド−ポリイミドポリマが、化学式(7)から化学式(15)よりなるグループの1つを有する時、液晶配向溶液は、非常に安定なプレチルト角効果を持つので、これによって液晶ディスプレイ装置が非常に安定な配向特性を持つことを可能としている。本発明のポリマを形成する時、繰り返し単位の総量に対する、化学式(7)から化学式(15)よりなるグループの1つを有する化合物の含有量は、0.1モル%から50モル%であり、好ましくは0.1モル%から20モル%、より好ましくは0.5モル%から10モル%である。
【0016】
従って、Dが化学式(1)から化学式(6)よりなる第1のグループ、および化学式(7)から化学式(15)よりなる第2のグループの一方から選択され、Dが第1のグループおよび第2のグループの他方から選択される時、本発明の液晶配向溶液は、液晶ディスプレイ装置の残像を低減するのに役立ち、それ故、液晶ディスプレイ装置は高信頼性、高コントラスト比、高輝度、高電圧安定性および長寿命といった特性を持つ。さらに、液晶配向溶液は、非常に安定なプレチルト角効果を持つので、これによって液晶ディスプレイ装置が非常に安定な配向特性を持つことを可能としている。
【0017】
さらに、液晶配向溶液のイミド化率は、配向層の電気特性を改善するために20%以上とすることができる。実施形態においては、本発明の液晶配向溶液のポリマが化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマの時は、pは0.2以上である。
【0018】
本発明においては、化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマの形成方法は、有機溶媒中でのテトラカルボン酸二無水物とジアミンの重合反応を含み、脱水反応による部分閉環反応が行われて、ポリイミド−ポリアミド酸生成物が得られる。
【0019】
化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマを合成するためのテトラカルボン酸二無水物は、化学式(1)から化学式(6)よりなるグループの1つを有し、その例は表1(番号1−1から番号1−13)に示される。さらに、化学式(1)から化学式(6)よりなるグループ以外の基を有するテトラカルボン酸二無水物を使用することもできるが、その例は表2(表2A−表2C)(番号3−1から番号3−43)に示される。
【表1】

【表2A】

【表2B】

【表2C】

【0020】
さらに、表1および表2(表2A−表2C)の化合物は、異性体化合物あるいはそれらの混合物であってよい。上記したテトラカルボン酸二無水物は、説明することを意図したものであるが、本発明を限定することを意図したものではない。従って、テトラカルボン酸二無水物は、ここで述べられていない化合物であってもよい。
【0021】
特に、液晶ディスプレイ装置が高い電圧保持率(VHR)を持つために、脂環式構造を有する少なくとも1つの化合物が、番号1−2、1−4、1−6、3−2、3−3、3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−11、3−12、3−13、3−14、3−15、3−16、3−18、3−19、3−20、3−22、3−23、および3−24よりなるグループから選択される。また、番号1−1、1−3、1−5、1−7、1−8、1−9、1−10、1−11、1−12、3−25、3−27、3−28、3−29、3−30、3−40、および3−41から選択される化合物は、残像現象を低減するために、他の適当な化合物と共に適切に構成されてよい。
【0022】
化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマを合成するためのジアミンは、化学式(1)から化学式(6)よりなるグループの1つを有し、その例は表3(番号1−14から番号1−33)に示される。あるいは、ジアミンは化学式(7)から化学式(15)よりなるグループの1つを有し、その例は表4(表4A−表4F)(番号2−1から2−86)に示される。加えて、化学式(1)から化学式(15)よりなるグループ以外の基を有するジアミンを使用することもできるが、その例は表5(表5A−表5D)(番号4−1から4−77)に示される。
【表3】

【表4A】

【表4B】

【表4C】

【表4D】

【表4E】

【表4F】

【表5A】

【表5B】

【表5C】

【表5D】

【0023】
さらに、表3、表4(表4A−表4F)、および表5(表5A−表5D)の化合物は、異性体化合物あるいはそれらの混合物であってよい。上記したジアミンは、説明することを意図したものであるが、本発明を限定することを意図したものではない。従って、ジアミンは、ここで述べられていない化合物であってもよい。
【0024】
液晶分子のプレチルト角は、ポリイミド−ポリアミド酸ポリマの側鎖長を変化させることによって、主としてジアミンの側鎖長を変化させることによって調整することができる。番号2−1から番号2−86に示されるジアミンのうち少なくとも1つを選択することにより、適切なプレチルト角を提供することができる。
【0025】
ポリイミド−ポリアミド酸の合成法を以下に記載する。
【0026】
ポリイミド−ポリアミド酸を合成するための、ジアミンに対するテトラカルボン酸二無水物の比率を以下に記載する。テトラカルボン酸二無水物の無水物基が1当量の時、ジアミンのアミノ基は、好ましくは0.5−2当量であり、より好ましくは0.7−1.5当量である。
【0027】
ポリイミド−ポリアミド酸の合成反応は、有機溶媒中で行う。ポリイミド−ポリアミド酸の溶解性は、いくつかの有機溶媒中の方が、他の有機溶媒中よりもよい。ポリイミド−ポリアミド酸に対してより良好な溶解性を有する有機溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン、およびピリジンなどを含み、使用時に、上記の溶媒の2つ以上が混合されてもよい。
【0028】
ポリイミド−ポリアミド酸が混合有機溶媒から沈澱されない限り、ポリイミド−ポリアミド酸に対してより悪い溶解性を有する有機溶媒を、上記の有機溶媒と混合することもできる。ポリイミド−ポリアミド酸に対してより悪い溶解性を有する有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、およびn−オクタンなどを含む。
【0029】
ポリイミド−ポリアミド酸を形成するためには、脱水閉環反応が必要である。脱水閉環反応は、直接加熱、あるいは脱水剤および触媒を加えることによって行われる。
【0030】
(1)直接加熱
【0031】
反応温度は、例えば50℃から300℃であり、好ましくは100℃から250℃である。反応温度が50℃より低い場合には、脱水閉環反応は起こらない。
【0032】
(2)脱水剤および触媒添加
【0033】
反応温度は、例えば−20℃から150℃であり、好ましくは0℃から120℃である。脱水剤は、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、あるいはトリフルオロ酢酸無水物といった無水物である。脱水剤の量は、所要の閉環率に依存する。ポリイミド−ポリアミド酸の繰り返し単位1モル毎に、0.01−20モルの脱水剤を使用することが好ましい。触媒は、例えばトリエチルアミン、ピリジン、あるいはジメチルピリジンといった3級アミンである。脱水剤1モル毎に0.01−10モルの触媒を使用することが好ましい。
【0034】
ポリイミド−ポリアミド酸の精製方法は、沈澱を得るために、より悪い溶解性を有する溶媒を多量にポリイミド−ポリアミド酸の反応溶媒中に注ぐことを含む。その後、乾燥工程を減圧下で行い、粗ポリイミド−ポリアミド酸を得る。その後、粗ポリイミド−ポリアミド酸を有機溶媒に溶解し、次いでより悪い溶解性を有する別の溶媒を使用して沈澱させる。上記の工程ステップは、ポリイミド−ポリアミド酸を精製するために、1回あるいは複数回実行することができる。そして、ポリイミド−ポリアミド酸を、より良好な溶解性を有する溶媒に溶解する。
【0035】
液晶配向溶液の粘度(ηln)は数式(I)で得られる。
【数1】

【0036】
本発明においては、粘度および揮発性の観点から、液晶配向溶液の固体含有量は好ましくは1から10重量%である。
【0037】
本発明による液晶配向溶液を基板に塗布して、液晶配向層を形成する。液晶配向溶液の固体含有量が1重量%より小さい時は、液晶配向層が薄すぎるため、液晶分子の配向性に影響があり、液晶配向溶液の固体含有量が10重量%より大きい時は、塗布の品質が劣化する。
【0038】
また、液晶配向溶液の製造温度は、好ましくは0℃から150℃であり、より好ましくは25℃から50℃である。
【0039】
本発明における液晶配向溶液の有機溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテルなどが含まれ、使用時に、上記の溶媒の2つ以上が混合されてもよい。
【0040】
本発明による液晶配向溶液は、アミノプロピル−トリメトキシ−シラン、アミノプロピル−トリエトキシ−シラン、ビニル−メチル−シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチル−ジメトキシ−シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシ−シラン、ビニル−トリエトキシ−シラン、3−メタクリロキシ−プロピル−トリメトキシ−シラン、3−エポキシプロポキシ−プロピル−トリメトキシ−シラン、3−エポキシプロポキシ−プロピル−メチル−ジメトキシ−シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチル−トリメトキシ−シラン、3−ウレイド−プロピル−トリメトキシ−シラン、3−ウレイド−プロピル−トリエトキシ−シラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピル−トリエチレン−トリアミン、N−トリメトキシシリルプロピル−トリエチレン−トリアミン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピル−トリメトキシ−シラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピル−トリエチル−シランなどの有機シロキサン化合物をさらに含んでもよい。上記の有機シロキサン化合物は、有機シロキサン化合物の量が液晶配向層に必要な特性に影響を与えない条件下で、液晶配向層と基板との間の密着性を改善することができる。もし液晶配向溶液中の有機シロキサン化合物の量が多過ぎると、液晶配向層の配向特性が低下し、もし液晶配向溶液中の有機シロキサン化合物の量が十分でないと、液晶配向層中にラビングmuraおよび粒子が発生する。従って、液晶配向溶液のポリマ重量に対する、液晶配向溶液中の有機シロキサン化合物の濃度は、好ましくは0.01から5重量%、より好ましくは0.1から3重量%である。
【0041】
さらに、本発明による液晶配向溶液はまた、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N',N'−テトラグリシジル−メタ−キシレン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3−(N−プロペニル−N−グリシジル)アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノブチル−トリメトキシシランといったエポキシ化合物を含んでもよい。上記のエポキシ化合物は、エポキシ化合物の量が液晶配向層に必要な特性に影響を与えない条件下で、液晶配向層と基板との間の密着性を改善することができる。もし液晶配向溶液中のエポキシ化合物の量が多過ぎると、液晶配向層の配向特性が低下し、もし液晶配向溶液中のエポキシ化合物の量が十分でないと、液晶配向層中にラビングmuraおよび粒子が発生する。従って、液晶配向溶液の総重量に対する、液晶配向溶液中のエポキシ化合物の濃度は、好ましくは0.01から3重量%であり、より好ましくは、0.1から2重量%である。
【0042】
液晶ディスプレイの製造方法を以下に記載する。
【0043】
(1)本発明による液晶配向溶液を、ロール塗布、スピン塗布、あるいは印刷塗布によってガラス基板に塗布する。ガラス基板は、パターン形成された透明な導電性膜を持つ。ガラス基板に液晶配向溶液を塗布した後にベーク工程を行うことで、液晶配向溶液の有機溶媒が除去され、非環式ポリアミド酸に脱水閉環反応が起きてポリイミド膜を形成する。ベーク温度は、例えば80℃から300℃であり、好ましくは100℃から240℃である。膜厚は、好ましくは0.005μmから0.5μmである。
【0044】
(2)ナイロンあるいは綿といった布を取り付けたローラによって、固定した方向にラビング工程を膜に対して行い、液晶分子がラビングの方向に配向される。こうして液晶配向層を有する基板を形成する。
【0045】
(3)液晶配向層を有する基板にフレームを塗布し、液晶配向層を有する別の基板にスペーサを噴霧し、次に、ラビング方向が互いに垂直あるいは平行になるように、上記の2つの基板を一緒に形成する。その後、2つの基板の間のギャップに液晶分子を注入し、次いで注入口を密封して液晶ディスプレイパネルを形成する。
【0046】
以下の特性が、液晶ディスプレイ装置の評価に一般的に使用される。
【0047】
(1)プレチルト角
【0048】
液晶分子が注入された液晶ディスプレイパネルに結晶回転法を行うことにより、プレチルト角を測定する。
【0049】
(2)ラビング特性
【0050】
液晶配向溶液を、酸化インジウムスズ(ITO)基板にスピン塗布する。次いでベーク工程をオーブン中で行う。その後、回転速度1000回転/分およびプラットフォーム移動速度60ms/秒の条件下で、ラビング工程を固定した方向に10回行う。その後、ラビングされた表面を、偏光顕微鏡の下で観察する。
【0051】
(3)電圧保持率(VHR)
【0052】
周辺温度60℃において、パルス幅60μ秒および周波数60Hzで、3Vの直流電圧を液晶ディスプレイ装置に加えて、液晶ディスプレイ装置の電圧保持率を測定する。
【0053】
(4)残留直流(RDC)
【0054】
周辺温度60℃において、5Vの直流電圧を液晶ディスプレイ装置に1時間加え、次に直流電圧を遮断して、液晶ディスプレイ装置の残留直流電圧を測定する。
【0055】
(5)イミド化率
【0056】
減圧、室温条件で、ポリマあるいは液晶配向溶液に乾燥工程を行う。乾燥された固体を、重水素化したジメチルスルホキシドに溶解する。テトラメチルシランを内部標準として使用したH−NMR(プロトンNMR)により、数式(II)に基づいてイミド化率を求める。
【数2】

ここでAは、NH基のプロトンによって生じた10ppmのピークの積分面積、Aは、他のプロトンのピークの積分面積、αはポリマ前駆体(ポリアミド酸)における、NH基のプロトンに対する他のプロトンの数の比である。
【0057】
(6)密着性
【0058】
液晶配向溶液をITO基板に塗布し、次いでITO基板を、100℃の水で1時間煮沸する。その後、3Mテープを用いてクロスカット法を行う。
【0059】
(7)信頼性
【0060】
高温多湿の環境(温度50℃、および相対湿度90%)において、液晶ディスプレイ装置に、周波数60Hzで5Vの電圧を500時間加える。その後、液晶ディスプレイ装置を、偏光顕微鏡の下で観察する。
【0061】
合成例(ポリマA1−A146、およびB1−B79)、および対照例(ポリマa1、b1、およびb2)の合成法を以下に記載する。
【0062】
テトラカルボン酸二無水物、およびジアミンをN−メチル−2−ピロリドンに続けて加え(比率は表6(表6A−表6F)および表7(表7A−表7D)に示す)、固体含有量25重量%の溶液を形成した。溶液を50−60℃で4−5時間反応させ、次いでポリアミド酸を得た。ピリジンおよび無水酢酸(ピリジンおよび無水酢酸の量はイミド化率に依存)をポリアミド酸に加え、脱水閉環反応を100−110℃で3−4時間行った。得られた溶液を、メタノールによって沈澱、精製した。その後、乾燥工程を減圧下で行い、表6(表6A−表6F)、表7(表7A−表7D)に示す固有粘度およびイミド化率で、ポリマA1−A146、B1−B79、a1、b1、およびb2を得た。
【表6A】

【表6B】

【表6C】

【表6D】

【表6E】

【表6F】

【表7A】

【表7B】

【表7C】

【表7D】

【0063】
合成例および対照例の実験方法を以下に記載する。
【0064】
固体ポリマAおよび固体ポリマB(Bに対するAの比率は固定)を、γ−ブチロラクトンおよびN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、固体含有量6重量%の溶液を形成した。溶液を、直径1μmのフィルタによってろ過した。ろ過された溶液は、本発明による液晶配向溶液である。
【0065】
液晶配向溶液をローラープリンタによってガラス基板に塗布した。次いで乾燥工程を200℃の加熱プレートによって20分間行い、厚さ0.05μmの膜を形成した。ローラ回転速度1000回転/分、プラットフォーム移動速度60ms/秒、侵入深さ0.4μmの条件下で、固定した方向に、ラビング工程を膜に対して行った。
【0066】
基板に膜を塗布し、別の基板にスペーサを噴霧した。その後、前記の2つの基板を、ラビング方向が互いに垂直になるように一緒に形成した。その後、2つの基板の間のギャップに液晶(ZLI−4792)を注入し、次いで、注入口を密封して液晶ディスプレイ装置を形成した。
【0067】
液晶ディスプレイ装置のプレチルト角、ラビング特性、電圧保持率、残留直流、密着性、および信頼性を評価した。評価結果を表8(表8A−表8K)に示す。
【表8A】

【表8B】

【表8C】

【表8D】

【表8E】

【表8F】

【表8G】

【表8H】

【表8I】

【表8J】

【表8K】

【0068】
まとめると、本発明の液晶配向溶液によって形成された液晶配向層は、安定なプレチルト角、高い電圧保持率、低残留直流、良好なラビング、および高信頼性といった特性を持つ。従って、形成された液晶配向層は、デスクトップコンピュータスクリーン、腕時計、携帯電話パネル、パーソナルコンピュータ、液晶データプロジェクタ、および液晶テレビ(TV)などの機器の、様々なディスプレイ装置に適用することができる。
【0069】
本発明を好ましい実施形態において上記の様に開示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の精神と範囲とから離れることなく、何らかの変更や工夫が成されてもよいことが、当業者に理解される。よって、本発明の範囲を以下の特許請求の範囲によって定義する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(A)で表されるポリアミド酸−ポリアミド酸ポリマ、化学式(B)で表されるポリイミド−ポリアミド酸ポリマ、および化学式(C)で表されるポリイミド−ポリイミドポリマからなるグループから選択される少なくとも1つのポリマを有する液晶配向溶液であって、
【化1】

【化2】

【化3】

およびTは、それぞれ独立な四価の有機基であり、
m<n、
p<q、
r<s、
およびDの少なくとも1つは、化学式(1)から化学式(15)よりなるグループから選択され、
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立な一価の有機基、ハロゲン原子、あるいは水素原子であり、
は、一価のC4−40脂環式基あるいは一価のC8−20脂肪族基であり、
、R11、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立なハロゲン原子あるいは一価の有機基であり、
およびR10は、それぞれ独立な二価のC4−40脂環式基であり、
Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、あるいは−CO−であり、
Yは、二価の有機基であり、
Zは、二価の有機基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、あるいは−CO−であり、
X'およびY'は、−O−、−NH−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、および−CONH−よりなるグループから選択される、それぞれ独立な二価の基であり、
Z'は、−CF、−CN、−COCH、−COOH、−NO、−SOCH、−SOCH、−OCF、−F、および−Clよりなるグループから選択される一価の基であり、
Aは、−O−、−NH−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、および−CONH−よりなるグループから選択される二価の基であり、
a、b、e、およびfは、それぞれ独立な0から4の整数であり、
cおよびdは、それぞれ独立な0から3の整数であり、
a'およびb'は、それぞれ独立な1以上の整数である液晶配向溶液。
【請求項2】
pが0.2以上である請求項1に記載の液晶配向溶液。
【請求項3】
は化学式(1)から化学式(6)よりなる第1のグループ、および化学式(7)から化学式(15)よりなる第2のグループの一方から選択され、Dは前記第1のグループおよび前記第2のグループの他方から選択される請求項1に記載の液晶配向溶液。
【請求項4】
有機溶媒をさらに有する請求項1に記載の液晶配向溶液。
【請求項5】
前記有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテル、およびそれらの組み合わせを有する請求項4に記載の液晶配向溶液。
【請求項6】
有機シロキサン化合物をさらに有する請求項1に記載の液晶配向溶液。
【請求項7】
前記有機シロキサン化合物は、アミノプロピル−トリメトキシ−シラン、アミノプロピル−トリエトキシ−シラン、ビニル−メチル−シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチル−ジメトキシ−シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシ−シラン、ビニル−トリエトキシ−シラン、3−メタクリロキシ−プロピル−トリメトキシ−シラン、3−エポキシプロポキシ−プロピル−トリメトキシ−シラン、3−エポキシプロポキシ−プロピル−メチル−ジメトキシ−シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチル−トリメトキシ−シラン、3−ウレイド−プロピル−トリメトキシ−シラン、3−ウレイド−プロピル−トリエトキシ−シラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピル−トリエチレン−トリアミン、N−トリメトキシシリルプロピル−トリエチレン−トリアミン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピル−トリメトキシ−シラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピル−トリエチル−シラン、およびそれらの組み合わせを有する請求項6に記載の液晶配向溶液。
【請求項8】
エポキシ化合物をさらに有する請求項1に記載の液晶配向溶液。
【請求項9】
前記エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N',N'−テトラグリシジル−メタ−キシレン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3−(N−プロペニル−N−グリシジル)アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノブチル−トリメトキシシラン、およびそれらの組み合わせを有する請求項1に記載の液晶配向溶液。

【公開番号】特開2010−250307(P2010−250307A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−69762(P2010−69762)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(508054404)達興材料股▲ふん▼有限公司 (8)
【Fターム(参考)】