説明

液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、インクジェットヘッド及び画像形成装置

【課題】液滴吐出特性のバラツキを減らすことができる。
【解決手段】放熱部材232を駆動IC221の外面に接着する前に、駆動IC221を外気温、湿気及び機械的なストレスの外部環境から保護するための封止剤231を塗布したとしても、放熱部材232を駆動IC221の外面に接着する前に、放熱部材232の接着面と接着する駆動IC221の外面の接着部分に疎液処理を施しておく。これにより、封止剤231が接着部分に侵入してくることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、インクジェットヘッド及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機械変換膜を電極で挟むように構成された電気機械変換素子は、例えばインクの液滴を吐出する液体吐出ヘッドを備え、媒体を搬送しながらインク滴を用紙に付着させて画像形成を行うインクジェット記録装置で用いられている。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
【0003】
そして、上記インクジェット記録装置は、主として、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室、加圧液室、圧力室、インク流路室と称する液室と、該液室内のインクを吐出するための圧力発生手段とで構成されている。この圧力発生手段としては印加電圧に応じて変形変位するピエゾ型の圧力発生手段が知られている。このピエゾ型の圧力発生手段に使用される電気機械変換素子(圧力発生素子)は、共通電極と電気機械変換層と個別電極とが積層したものである。この電気機械変換素子において、共通電極は接地(アース)され、個別電極には駆動ICからの液滴吐出信号が、基板上に蒸着された配線を介して供給される。そして、電気機械変換素子によって吐出室の壁面を形成している振動板を変形変位させることで加圧液室の内圧を昇圧させてインク滴をノズルから吐出させている。
【0004】
近年、インクジェット記録装置における小型化の要求が一段と増している。この要求に応える一つの方法として、駆動IC(駆動素子)を電気機械変換素子の近傍に設け、かつ配線基板の配線長を短くする方法がある。このように駆動IC(駆動素子)を電気機械変換素子の近傍に設けると、駆動ICの発熱による熱が電気機械変換素子に伝わり易くなり、その電気機械変換素子が設けられている個別液室内のインクにも伝わる。このため、個別液室内のインクの粘度が変化し、液滴吐出特性にバラツキが生じる虞がある。小型化を図りつつ、液滴吐出特性のバラツキを抑制するためには、駆動ICの発熱による熱を放出する必要があった。
【0005】
この駆動ICの放熱方法として、特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1の放熱方法では、配線基板の配線と電気的に接続するための接続端子が設けられている駆動ICの面と反対側の駆動ICの面に、駆動ICの発熱による熱を放出する金属板(放熱部材)を接着している。そして、駆動ICの発熱による熱は駆動ICに接着された金属板に伝熱し、露出する金属板の表面から放出される。また、駆動ICを外気温、湿気や機械的ストレスから保護するための封止材料を溶剤に溶解した低粘度液状の封止剤が露出する金属板の表面を残して駆動ICを覆うように塗布される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の放熱方法では、配線基板上に駆動ICを搭載し、配線基板の配線と駆動ICの接続端子との電気的な結線を行い、次に駆動IC上に金属板を接着して最後に封止剤を塗布している。一方、上述したような近年の要望である液滴吐出ヘッドの小型化を追求すると、駆動ICの大きさは小さくなる。液滴吐出特性のバラツキを抑制するためにも放熱部材の金属板における所望の放熱効果をできるだけ下げないようにしたい。そのため、放熱部材の金属板の大きさを小さくすることはできない。この結果、放熱部材の金属板の大きさは駆動ICの大きさよりも大きなものとなる。そして、その場合の実装工程では、作業の容易性から構成部材の大きさが小さい順に実装していく。先ず配線基板上に駆動ICを搭載し、配線基板の配線と駆動ICの接続端子との電気的な結線を行い、次に封止剤を塗布して最後に駆動ICの接着箇所で金属板を接着する。この実装工程の場合、駆動ICと金属板との接触が十分となるために、駆動ICと金属板との接着箇所には封止剤を塗布しないようにしている。一方、封止剤の上記機能を十分に果たすためには、駆動IC全体を可能な限り隙間なく封止剤で覆う必要がある。そのために、封止剤は上記接着箇所に金属板を接着したときの金属板の端に近い箇所まで塗布しておきたい。しかし、封止剤を金属板の端に近い箇所まで塗布しても駆動ICの外面の濡れ性(親液性)によって当該接着箇所内まで封止剤が侵入してくる虞がある。この接着箇所内まで封止剤が侵入した状態で駆動ICの接着箇所に金属板を接着すると、駆動ICの外面と金属板の接着面との間に封止剤が介在していることになる。このため、封止剤が侵入した面積分、駆動ICと金属板との接触面積が減り、金属板による放熱効果が下がるという問題があった。よって、駆動ICの発熱による熱が個別液室内のインクに伝わることを防ぐことができず、個別液室内のインクの粘度が変化し液滴吐出特性にバラツキが生じるという上記問題点を解決することはできなかった。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、駆動ICと放熱部材との接触箇所への封止剤の侵入を防止し、放熱部材の放熱効果が下がることを抑えることにより、液滴吐出特性のバラツキを減らすことができる液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、インクジェットヘッド及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液滴を吐出するノズルが設けられているノズル板と、該ノズル板と接合し、かつ内部に液体を収納する加圧液室を少なくとも形成する液室板と、前記加圧液室内の内圧を昇圧させて液体をノズルから吐出させる圧力発生素子と、該圧力発生素子に液滴吐出信号を供給する駆動素子とを備え、略平板形状をなす前記駆動素子の外面に放熱部材を接着し、前記駆動素子の発熱による熱を前記放熱部材を介して外部に放出する液滴吐出ヘッドにおいて、前記放熱部材の接着面と対向する前記駆動素子の外面で前記放熱部材の接着面と接着する接着部分に、疎液処理を施すことを特徴とするものである。ここでの疎液処理とは、水を含む液体に対して混ざりにくく、あるいは溶解しにくくなり、液体の接触角が大きくなるようにする表明改質処理である。
【0009】
本発明においては、上述したように放熱部材を駆動素子の外面に接着する前に駆動素子を保護するための封止剤を上記接着部分に近い箇所に塗布したとしても、放熱部材を駆動素子の外面に接着する前に、放熱部材の接着面と接着する駆動素子の外面の接着部分に疎液処理を施しておけば、上記封止剤が上記接着部分に侵入してくることはない。これにより、放熱部材の接着面と、該接着面と対向する駆動素子の外面とが上記接着部分で直接に接触して接着されることになり、放熱部材の放熱効果が下がることを抑えることができる。よって、加圧液室の近傍に設けられている駆動素子の発熱による熱の加圧液室内の液体への影響を減らすことができ、液滴吐出特性のバラツキを減らすことができる液滴吐出ヘッドを提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液滴吐出特性のバラツキを減らすことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の液滴吐出装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図2】液滴吐出装置の概略透視斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【図4】本実施形態の液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。
【図5】本実施形態の第1の変形例としての液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。
【図6】本実施形態の第2の変形例としての液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。
【図7】本実施形態の第3の変形例としての液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1は本発明の液滴吐出装置の一構成例を示す概略構成図である。また、図2は、同液滴吐出装置の概略透視斜視図である。両図に示す本発明の液滴吐出装置の一例であるインクジェット記録装置100は、主に、記録装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ101と、キャリッジ101に搭載した本発明を実施して製造した液滴吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッドからなる記録ヘッド102と、記録ヘッド102へインクを供給するインクカートリッジ103とを含んで構成される印字機構部104を有している。また、装置本体の下方部には前方側から多数枚の用紙105を積載可能な給紙カセット106を抜き差し自在に装着することができ、また用紙105を手差しで給紙するための手差しトレイ107を開倒することができ、給紙カセット106或いは手差しトレイ107から給送される用紙105を取り込み、印字機構部104によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ108に排紙する。
【0014】
印字機構部104は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド109と従ガイドロッド110とでキャリッジ101を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ101にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッドからなる記録ヘッド102を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ101には記録ヘッド102に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ103を交換可能に装着している。インクカートリッジ103は上方に大気と連通する大気口、下方には記録ヘッド102へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により記録ヘッド102へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0015】
また、記録ヘッド102としてここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。ここで、キャリッジ101は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド109に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド110に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ101を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ111で回転駆動される駆動プーリ112と従動プーリ113との間にタイミングベルト114を張装し、このタイミングベルト104をキャリッジ101に固定しており、主走査モータ111の正逆回転によりキャリッジ101が往復駆動される。
【0016】
一方、給紙カセット106にセットした用紙105を記録ヘッド102の下方側に搬送するために、給紙カセット106から用紙105を分離給装する給紙ローラ115及びフリクションパッド116と、用紙105を案内するガイド部材117と、給紙された用紙105を反転させて搬送する搬送ローラ118と、この搬送ローラ118の周面に押し付けられる搬送コロ119及び搬送ローラ118からの用紙105の送り出し角度を規定する先端コロ120とを設けている。搬送ローラ118は副走査モータ121によってギヤ列を介して回転駆動される。そして、キャリッジ101の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ118から送り出された用紙105を記録ヘッド102の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材122を設けている。この印写受け部材122の用紙搬送方向下流側には、用紙105を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ123、拍車124を設け、さらに用紙105を排紙トレイ108に送り出す排紙ローラ125及び拍車126と、排紙経路を形成するガイド部材127、128とを配設している。
【0017】
記録時には、キャリッジ101を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド102を駆動することにより、停止している用紙105にインクを吐出して1行分を記録し、用紙105を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙105の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙105を排紙する。
【0018】
また、キャリッジ101の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド102の吐出不良を回復するための回復装置129を配置している。回復装置129はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ101は印字待機中にはこの回復装置129側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド102をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0019】
図3は本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。同図に示すインクジェットヘッド200は、イエローのヘッド部201Y、マゼンタのヘッド部201M、シアンのヘッド部201C、黒のヘッド部201Kの4色のヘッド部の詳細構成を示している。インクジェットヘッド200は、インクが吐出されるノズル202が形成されたノズル基板203と、インクの逆流を防止するリストリクタ204及びノズル毎に設けられた個別流路205が形成された個別流路板206とを含んで構成されている。そして、個別流路205のインクを押し込んでノズル202から吐出させるための振動板207、インクを押し込むために振動板207を変形させ、個別電極208及び電気機械変換素子であるPZT等からなる圧力発生素子209と共通電極210から成る圧力発生部、個別電極208と共通電極210のショートを防止する絶縁層211、圧力発生部の支持部材212、4つの共通流路形成部材213、214、215、216を含んで構成されている。そして、共通流路形成部材213、214、215、216で形成された共通流路217、218、219、220、インクジェットヘッドを駆動させる駆動IC221、駆動IC221からの駆動信号を圧力発生部の個別電極208に供給するための半田ボール222、223、駆動IC221の発熱による熱を放熱する放熱部材224、駆動IC221を封止する封止剤225から構成されている。共通流路217、218、219、220には、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒の4色のインクが充填されている。
【0020】
駆動IC221は、インクジェットヘッドを駆動させるための駆動信号を出力している。4色のインクの吐出制御を2個の駆動IC221で行っている。この駆動IC221は圧力発生部に駆動信号を出力する際に発熱する。そのため、駆動IC221の発熱により駆動IC221自体が破壊するおそれがある。また、駆動IC221から発生する熱が、電気機械変換素子が設けられている個別液室内のインクに伝達されると、インクの粘度が変化し、吐出特性にバラツキが生じる。このため、駆動ICから発生する熱を放出する必要がある。これらの駆動IC221の破壊、吐出特性の変動を防止するため、駆動IC221の発熱による熱を放熱する必要がある。
【0021】
図4は本実施形態の液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。同図において、図3と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
同図の(a)に示すように、駆動IC221の配線基板と接続される接合面の反対側の面(放熱部材の設置面)に疎水膜230を形成する。疎液処理された領域の幅(ノズル列に直交する方向の幅)が駆動IC221の設置面の全幅である。この疎水膜230は、ドデカンチオール等のチオール基の溶剤やテトラヒドロデシミルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤などで形成されている。ここで、疎水膜と親水膜が連続している部分では、疎水膜と親水膜の境目に液体を塗布すると、表面張力により疎水膜側から親水膜側へ液体が移動することが知られている。そして、この原理により、同図の(b)に示すように、駆動IC221の周辺部と下部に封止剤231を塗布する。このとき、駆動IC221の設置面には疎液処理が施されているので、封止剤231が駆動IC221の設置面に塗布されることはない。この疎水処理は水に対して混ざりにくく、あるいは溶解しにくくなり、水の接触角が大きくなるようにする表明改質処理であるが、水以外の液体に対しても同様な作用が生じるような処理(疎液処理)も含む。次に、同図の(c)に示すように、駆動IC221の発熱による熱を放熱するための放熱部材232を駆動IC221の設置面に密着させて設ける。この放熱部材232の平面部、つまり駆動IC221の設置面に密着している面の幅(図4中、W1で示す)は、駆動IC221の設置面の全幅(図4中、W2で示す)より狭くなっている。これにより、駆動IC221の発熱による熱を効果的に放熱部材232から放熱することができる。そして、同図の(d)に示すように、放熱部材232の一部は露出されるように、放熱部材232の一部(空間への露出部)以外を覆うように封止剤231を塗布する。放熱部材232は銅やアルミニウムなどの熱伝導率が高い材料が望ましい。また、放熱部材232の平面部の幅W1が駆動IC221の設置面の全幅W2より狭い(W1<W2)ので、放熱部材232の平面部が少なくとも駆動IC121の設置面と密着している。
【0022】
図5は本実施形態の第1の変形例の液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。同図において、図4と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
同図の(a)に示すように、駆動IC221の配線基板と接続される接合面の反対側の面(放熱部材の設置面)に疎水膜230を形成する。疎液処理された領域の幅が駆動IC221の設置面の全幅より小さい。そして、同図の(b)に示すように、駆動IC221の周辺部、下部及び疎水膜230が形成されていない面に、封止剤231を塗布する。このとき、駆動IC221の設置面の一部には疎液処理が施されているので、封止剤231が駆動IC221の設置面の一部に塗布されることはない。次に、同図の(c)に示すように、駆動IC221の発熱による熱を放熱するための放熱部材232を駆動IC221の設置面に密着させて設ける。この放熱部材232の平面部、つまり駆動IC221の設置面に密着している面の幅(図5中、W3で示す)は、駆動IC221の設置面の全幅(図5中、W4示す)より狭くなっている。これにより、駆動IC221の発熱による熱を効果的に放熱部材232から放熱することができる。そして、同図の(d)に示すように、放熱部材232の一部は露出されるように、放熱部材232の一部(空間への露出部)以外を覆うように封止剤231を塗布する。放熱部材232は銅やアルミニウムなどの熱伝導率が高い材料が望ましい。また、放熱部材232の平面部の幅W3が駆動IC221の設置面の全幅W4より狭い(W3<W4)ので、放熱部材232の平面部が少なくとも駆動IC121の設置面と密着している。
【0023】
図6は本実施形態の第2の変形例の液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。同図において、図4と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図の(a)に示すように、駆動IC221の配線基板と接続される接合面の反対側の放熱部材の設置面及びほぼ垂直の面(側面)の一部を連続して疎水膜230が形成される。そして、同図の(b)に示すように、駆動IC221の周辺部と下部に封止剤231を塗布する。このとき、駆動IC221の設置面及び側面の一部の領域は疎液処理が施されているので、封止剤231が駆動IC221の設置面及び側面の一部に塗布されることはない。次に、同図の(c)に示すように、駆動IC221の発熱による熱を放熱するための放熱部材232を駆動IC221の設置面に密着させて設ける。この放熱部材232の平面部の幅(図6中、W5で示す)は、駆動IC221の設置面において疎液処理された領域の幅(図6中、W6で示す)より広くなっている。そして、同図の(d)に示すように、放熱部材232の一部は露出されるように、放熱部材232の一部(空間への露出部)以外を覆うように封止剤231を塗布する。これにより、駆動IC221の発熱による熱を効果的に放熱部材232から放熱することができる。また、放熱部材232の平面部の幅W5が駆動IC221の疎液処理の領域の幅W6より広い(W5>W6)ので、放熱部材232の平面部が駆動IC221の設置面の全ての面と密着している。
【0024】
図7は本実施形態の第3の変形例としての液滴吐出ヘッドにおける放熱部材の設置工程を示す工程断面図である。同図において、図4と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図の(a)に示すように、駆動IC221の配線基板と接続される接合面の反対側の放熱部材の設置面及びほぼ垂直の面(側面)の一部を連続して疎水膜230が形成される。そして、同図の(b)に示すように、駆動IC221の周辺部と下部に封止剤231を塗布する。このとき、駆動IC221の設置面及び側面の一部の領域は疎液処理が施されているので、封止剤231が駆動IC221の設置面及び側面の一部に塗布されることはない。次に、同図の(c)に示すように、駆動IC221の発熱による熱を放熱するための放熱部材232を駆動IC221の設置面に密着させて設ける。この放熱部材232の平面部の幅(図7中、W7で示す)は、駆動IC221の設置面において疎液処理された領域の幅(図7中、W8で示す)より狭くなっている。そして、同図の(d)に示すように、放熱部材232の一部は露出されるように、放熱部材232の一部(空間への露出部)以外を覆うように封止剤231を塗布する。これにより、駆動IC221の発熱による熱を効果的に放熱部材232から放熱することができる。また、放熱部材232の平面部の幅W7が駆動IC221の疎液処理の領域の幅W8より狭い(W7<W8)ので、放熱部材232の平面部が少なくとも駆動IC221の設置面と密着している。
【0025】
以上説明した実施形態では、圧力発生素子が電気機械変換素子の場合について説明したが、電気熱変換素子であってもよい。また、4色一体のインクジェットヘッドの場合について説明したが2色一体のインクジェットヘッド等の場合でも同様の効果が得られる。
【0026】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
放熱部材の接着面と対向する駆動素子の外面で放熱部材の接着面と接着する接着部分に、疎液処理を施す。これによれば、上記実施形態について説明したように、放熱部材232を駆動IC221の外面に接着する前に駆動IC221を保護するための封止剤231を塗布したとしても、放熱部材232を駆動IC221の外面に接着する前に、放熱部材232の接着面と接着する駆動IC221の外面の接着部分に疎液処理を施しておけば、封止剤231は上記接着部分に侵入してくることはない。これにより、放熱部材232の接着面と、該接着面と対向する駆動IC221の外面とが封止剤231を介することなく直接に接触することになり、放熱部材232の放熱効果が下がることを抑えることができる。よって、加圧液室の近傍に設けられている駆動IC221の発熱による熱の影響を減らすことができ、液滴吐出特性のバラツキを減らすことができる液滴吐出ヘッドを提供できる。
(態様B)
(態様A)において、疎液処理された駆動素子の外面の長手方向の幅は、放熱部材の接着面の長手方向の幅と略同じ、もしくは広い。これによれば、上記実施形態、第1の変形例、第2の変形例及び第3の変形例について説明したように、放熱部材232の接着面と駆動IC221の外面との接着部分には封止剤231は侵入することができない。これにより、放熱部材232からの放熱効果は下がらない。
(態様C)
(態様A)又は(態様B)において、放熱部材との接触箇所がある駆動素子の外面の全部分又は中央部分に、疎液処理を施す。これによれば、上記実施形態及び第1の変形例について説明したように、放熱部材232の接着面と駆動IC221の外面との接着部分には封止剤231は侵入することができない。これにより、放熱部材232からの放熱効果は下がらない。
(態様D)
(態様A)において、圧力発生素子が電気機械変換素子である。これによれば、上記実施形態について説明したように、放熱部材の放熱効果が下がらないため、加圧液室内の液体への熱の影響が減る。これにより、電気機械変換素子の変形変位による加圧液室の内圧を昇圧させることでの液滴吐出特性から変わらない。
(態様E)
(態様A)〜(態様D)のいずれかの液滴吐出ヘッドを備えている。これによれば、上記実施形態について説明したように、放熱部材の放熱効果が減少しないことで、加圧液室内のインクへの熱の影響が減る。これにより、液滴吐出特性のバラツキを減らすことができ、安定した液滴吐出を行うことができる液滴吐出装置を提供できる。
(態様F)
(態様A)〜(態様D)のいずれかの液滴吐出ヘッドを用いて記録液を記録媒体に吐出する。これによれば、上記実施形態について説明したように、放熱部材の放熱効果が減少しないことで、加圧液室内のインクへの熱の影響が減る。これにより、記録液の液滴吐出特性も変わらず、安定した記録液の液滴吐出を行うことができる。
(態様G)
(態様F)のインクジェットヘッドを備えている。これによれば、上記実施形態について説明したように、放熱部材の放熱効果が減少しないことで、加圧液室内のインクへの熱の影響が減る。これにより、記録液の吐出特性も変わらず、安定した記録液の液滴吐出を行い、高画質な画像を形成することができる画像形成装置を提供できる。
【符号の説明】
【0027】
100 インクジェット記録装置
200 インクジェットヘッド
201 ヘッド部
202 ノズル
203 ノズル板
204 リストリクタ
205 個別流路
206 個別流路板
207 振動板
208 個別電極
209 圧力発生素子
210 共通電極
211 絶縁層
212 支持部材
213 共通流路形成部材
214 共通流路形成部材
215 共通流路形成部材
216 共通流路形成部材
217 共通流路
218 共通流路
219 共通流路
220 共通流路
221 駆動IC
222 半田ボール
223 半田ボール
224 放熱部材
225 封止剤
230 疎水膜
231 封止剤
232 放熱部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2004−327556号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルが設けられているノズル板と、該ノズル板と接合し、かつ内部に液体を収納する加圧液室を少なくとも形成する液室板と、前記加圧液室内の内圧を昇圧させて液体をノズルから吐出させる圧力発生素子と、該圧力発生素子に液滴吐出信号を供給する駆動素子とを備え、略平板形状をなす前記駆動素子の外面に放熱部材を接着し、前記駆動素子の発熱による熱を前記放熱部材を介して外部に放出する液滴吐出ヘッドにおいて、
前記放熱部材の接着面と対向する前記駆動素子の外面で前記放熱部材の接着面と接着する接着部分に、疎液処理を施すことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
疎液処理された前記駆動素子の外面の長手方向の幅は、前記放熱部材の接着面の長手方向の幅と略同じ、もしくは広いことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記放熱部材との前記接触箇所がある前記駆動素子の外面の全部分又は中央部分に、疎液処理を施すことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記圧力発生素子が電気機械変換素子であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの液滴吐出ヘッドを用いて記録液を記録媒体に吐出することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
請求項6のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59886(P2013−59886A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198727(P2011−198727)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】