説明

液滴吐出ヘッドのキャッピング治具

【課題】液滴吐出ヘッド内の機能液の乾燥を抑制するとともに、手動で容易に着脱可能な液滴吐出装置のキャッピング治具を提供する。
【解決手段】キャッピング治具60のベース板61に、キャリッジに設けられた液滴吐出ヘッドに対応するようにヘッドキャップ68を配置するとともに、ヘッドキャップ68をZ軸方向に弾性保持する。ユニットプレートに対してベース板61を位置決めガイド板62a〜62e及びガイドピン63にてX軸方向及びY軸方向に位置決めするとともに高さ調整部材64a〜64dにてZ軸方向に位置決めする。そして、高さ調整部材64a〜64dの調整ネジ65の頭部の磁石とユニットプレートとを当接させ、キャッピング治具60をキャリッジに密着保持して、第1及び第2クランプ装置77a,77bを用いてキャリッジに連結固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドのキャッピング治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、機能液を使って基板上に所望のパターンを形成する装置として、機能液を液滴にして吐出するインクジェット装置、すなわち液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、ステージに載置される基板と機能液を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドとを2次元的に相対移動させながら、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の液滴を基板上の任意の箇所に配置することによりパターンを形成する。
【0003】
近年では、複数の液滴吐出ヘッドを1つのキャリッジに搭載し、さらに、このキャリッジを複数設けている液滴吐出装置が知られている。このような液滴吐出装置は、大画面カラーフィルタの製造などに用いられ、複数のキャリッジから同時に液滴を吐出することで、その描画速度を向上させている。
【0004】
ところで、液滴吐出ヘッドは、別設のタンクなどから機能液が供給されるとともに、供給された機能液をその内部に設けたインク室(キャビティ)に一時的に貯留する。そして、ステージと相対向するように設けたノズルプレートに多数形成されたノズル孔からインク室に貯留した機能液を液滴にして吐出する。
【0005】
ここで、液滴吐出ヘッドが待機しているとき、インク室に貯留した機能液は、乾燥してしまうことがある。機能液が乾燥すると、増粘して吐出量が変化するだけでなく、固化してしまいノズル孔の目詰まりや吐出時の飛行曲がりなどを起こしてしまう虞があった。
【0006】
そこで、このインク室の機能液の乾燥を防止する方法として、液滴吐出ヘッドのノズルプレートにキャップと呼ばれる密閉部材を自動的に当接させて密閉し、機能液の乾燥を防止する提案がなされている(例えば、特許文献1)。さらに、キャップに吸引手段を接続して、インク室の機能液を強制的に吐出させる提案もなされている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平5−42676号公報
【特許文献2】特開平6―336018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの方法を上述した液滴吐出装置に適用すると、例えば、各液滴吐出ヘッドを密閉するキャップやキャップを自動で昇降させる昇降手段、キャップを介してインク室の機能液を吸引する吸引手段などを設ける必要がある。そして、これらを備えた自動キャッピング装置は大規模なものとなってしまい、液滴吐出装置の低コスト化の実現を困難にしていた。しかも、家庭用プリンタなどの液滴吐出装置とは異なり、上述した液滴吐出装置は、長期間停止することが少なく、自動キャッピング装置を使用する機会は非常に限られていた。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、液滴吐出ヘッド内の機能液の乾燥を抑制するとともに、手動で容易に着脱可能な液滴吐出装置のキャッピング治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具は、キャリッジのユニットプレートに並設した複数の液滴吐出ヘッドをそれぞれ密閉するヘッドキャップを、前記各液滴吐出ヘッドの配置位置に対応させてベース板に設け、前記各液滴吐出ヘッドを対応する前記ヘッドキャップでそれぞれ密閉保持するキャッピング治具であって、前記各ヘッドキャップを、前記ベース板に対して離間する方向に、予め定めた距離間を移動可能に支持して、前記各ヘッドキャップを弾性部材にて前記離間する方向に弾性支持する。
【0010】
本発明の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具によれば、ユニットプレートに並設された各液滴吐出ヘッドの高さ位置に誤差が生じているときでも、各ヘッドキャップを弾性支持している弾性部材がその高さ位置の誤差を吸収し、全ての液滴吐出ヘッドを確実に密閉することができる。従って、ユニットプレートに並設した全ての液滴吐出ヘッドにおいて機能液の乾燥を抑制することができる。
【0011】
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具は、前記ベース板を前記キャリッジに対して連結保持する連結保持手段を設けてもよい。
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具によれば、ベース板をキャリッジに対して連結保持する連結保持手段を設けたことによって、手動でキャッピング治具をキャリッジに着脱することができる。従って、例えば、キャッピング治具を昇降させる自動昇降装置を備えた大規模なキャッピング装置を設ける必要がないので、液滴吐出装置の製造コストを低減することができる。
【0012】
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具は、前記各ヘッドキャップを、対応する前記液滴吐出ヘッドに対して位置決めする位置決め部材を設けてもよい。
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具によれば、ヘッドキャップを対応する液滴吐出ヘッドに対して位置決めする位置決め部材を設けることによって、ユニットプレートに並設した全ての液滴吐出ヘッドに対して、確実にヘッドキャップを密着させることができる。従って、液滴吐出ヘッドの機能液の乾燥を確実に抑制することができる。
【0013】
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具は、前記ユニットプレートと当接する当接部を有し、前記ユニットプレートと前記ベース板との間隔を調整する高さ調整手段を設けてもよい。
【0014】
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具によれば、ユニットプレートとベース板との間隔を調整する高さ調整手段を設けたことによって、キャリッジにキャッピング治具を取り付けたときの各ヘッドキャップとベース板との間隔を調整することができる。すなわち、弾性部材による離間方向への弾性力を調整することができる。従って、各ヘッドキャップと対応する液滴吐出ヘッドとの密着力を調整することができる。その結果、より確実に液滴吐出ヘッドを密閉することができる。
【0015】
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具は、前記当接部は、磁石を備えてもよい。
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具によれば、ユニットプレートに当接する当接部が磁石を備えていることによって、例えば、ユニットプレートを磁性材で形成することによって、キャッピング治具をユニットプレートに容易に密着保持させることができる。従って、当接部(磁石)で密着保持させた後、連結保持手段を用いて固定することによって、キャッピング治具をユニットプレートに容易に取り付けることができる。
【0016】
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具は、前記当接部を前記ユニットプレートから離脱させる離脱レバーを設けてもよい。
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具によれば、当接部(磁石)をユニットプレートから離脱させる離脱レバーを設けたことによって、当接部(磁石)をユニットプレートか
ら容易に離脱させることができる。その結果、キャッピング治具をキャリッジから容易に取り外すことができる。
【0017】
この液滴吐出ヘッドのキャッピング治具は、前記液滴吐出ヘッドに接続される配管接続部材を固定する固定部材を設けてもよい。
このキャッピング治具によれば、液滴吐出ヘッドに接続される配管接続部材を固定する固定部材を設けたことによって、例えば、搬送時などに配管接続部材を固定部材に固定して搬送することができる。従って、配管接続部材が搬送の邪魔をすることがないので、キャリッジを容易に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を実施したパターン形成装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、ブラックマトリクスが形成されたガラス基板に赤、緑、青のカラーフィルタを形成するためのパターン形成装置としての液滴吐出装置1の概略構成を示している。図1に示すように、液滴吐出装置1は、床面に主走査方向(X軸方向)に延在した基台2が設置され、その上面に2aに一対のX軸ガイドレール11が主走査方向(X軸方向)に敷設され、その一対のX軸ガイドレール11にはX軸移動プレート12が載置されている。X軸移動プレート12は、X軸ガイドレール11に沿って主走査方向に移動可能に搭載されている。一対のX軸ガイドレール11には、X軸リニアモータM1が備えられ、X軸リニアモータM1は、一対のX軸ガイドレール11に載置されたX軸移動プレート12を、エアスライダ(図示省略)を介してX軸方向に往復移動させる。
【0019】
尚、図1において、主走査方向をX軸方向、主走査方向(X軸方向)に直交する副走査方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(上下方向)をZ軸方向、Z軸方向回りの回動方向をθ方向と表記する。
【0020】
X軸移動プレート12の上面には、基板ステージ14が設けられている。基板ステージ14は、真空吸着テーブルであって、その上面にガラス基板よりなるカラーフィルタ基板(CF基板という)Wを吸着固定し、同CF基板Wを搬送する。基板ステージ14は、X軸移動プレート12と基板ステージ14との間に設けた破線で示すステージ回動機構16によって、X軸移動プレート12に対してθ方向に回動可能に支持固定されている。
【0021】
従って、基板ステージ14(CF基板W)は、X軸移動プレート12とともにX軸方向(主走査方向)に移動する。また、基板ステージ14(CF基板W)は、X軸移動プレート12の平面(XY平面(水平面))に対して平行にθ方向に回動する。
【0022】
前記X軸ガイドレール11の上方向をY軸方向に跨ぐように、一対のY軸ガイドレール18が配設されている。一対のY軸ガイドレール18の一端の支柱19aは、基台2の上面2a一側に立設され、他端の支柱19bは基台2から離間した床に立設されている。一対のY軸ガイドレール18は、X軸方向に予め定めた間隔をおいて平行に配設されている。尚、本実施形態では、Y軸方向に平行に延びた一対のY軸ガイドレール18において、基台2の上方位置を作業領域、基台2から離間した位置を待機領域としている。
【0023】
一対のY軸ガイドレール18の間に、複数(本実施形態では、6個)のキャリッジプレート21が差し渡されるように配置されている。そして、各キャリッジプレート21は、Y軸ガイドレール18に沿って副走査方向(Y軸方向)に移動可能に載置されている。一対のY軸ガイドレール18には、Y軸リニアモータM2を備え、Y軸リニアモータM2は、一対のY軸ガイドレール18に載置された各キャリッジプレート21をそれぞれエアスライダ(図示省略)を介してY軸方向に往復移動させる。つまり、各キャリッジプレート
21は、Y軸ガイドレール18上の作業領域と待機領域との間を往復移動するようになっている。
【0024】
因みに、液滴吐出装置1を休止させているときは、各キャリッジプレート21は待機領域に案内されて、次の液滴吐出装置1の稼働まで待機領域で待機するようになっている。
各キャリッジプレート21の上面には、機能液供給ユニット22とヘッド用電装ユニット23とが載置されている。機能液供給ユニット22は、機能液F(図4(b)参照)を所定量貯蔵して、各液滴吐出ヘッド40(図4(a),(b)参照)に機能液Fを供給するための供給回路装置である。ヘッド用電装ユニット23は、各液滴吐出ヘッド40を駆動するための電気信号を供給するための電気回路装置である。
【0025】
また、ここでいう機能液Fとは、CF基板Wに形成されたブラックマトリクスの枠内に配置される赤、緑、青のフィルタ用インクである。機能液Fは、CF基板Wに形成されたブラックマトリクスの枠内に配置された後に乾燥されると、赤、緑、青のフィルタとなる。
【0026】
図2に示すように、各キャリッジプレート21の下面の中央位置には、吊下機構25が設けられ、その吊下機構25の下端部にキャリッジ30が取着されている。
吊下機構25は、吊下基板26と、吊下回動枠27と、吊下支持枠28とを有している。吊下基板26は、キャリッジプレート21の下面中央位置に連結固定され、その下端部に吊下回動枠27を連結している。吊下回動枠27は、その下端部に吊下支持枠28をθ方向に回動可能に連結支持している。吊下回動枠27には、θ軸回動モータ(図示省略)を有し、θ軸回動モータは吊下支持枠28を吊下基板26(キャリッジプレート21)に対してθ方向に回動させるようになっている。吊下支持枠28には、キャリッジ30が支持固定され、吊下機構25に垂設されたキャリッジ30をθ方向に回動させる。
【0027】
キャリッジ30は、略直方体形状のキャリッジ枠31を有している。キャリッジ枠31には、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの両側面に開口部が設けられており(X軸方向の各開口部については図8参照)、キャリッジ枠31の内側に対して、周囲の空気が流出入できるようになっている。また、キャリッジ30の略直方体形状のキャリッジ枠31の下端部には、ユニットプレート34が図示しないネジ等により固設されている。ユニットプレート34には、液滴吐出ヘッド40が着脱可能に、かつ、精度よく位置決め固定されて取り付けられている。本実施形態では、図3に示すように、X軸方向に沿って並設された3個の液滴吐出ヘッド40が、Y軸方向と平行に2列、すなわち合計6個の液滴吐出ヘッド40が取り付けられている。尚、キャリッジ枠31の内側は、配管や配線などが配設されているが、表示すると煩雑になるため図示を省略している。
(液滴吐出ヘッド40)
次に、ユニットプレート34に取着した液滴吐出ヘッド40について図4を参照して説明する。図4(a)は、液滴吐出ヘッドを基板ステージ14側から見た外観斜視図である。この液滴吐出ヘッド40は、2つの接続針42を有する液体導入部41と、液体導入部41の側方に連なるヘッド基板43と、液体導入部41に連なるポンプ部44と、ポンプ部44に連なるノズルプレート45とを備えている。
【0028】
液体導入部41の接続針42には、機能液供給ユニット22に接続された配管接続部材50(図2参照)が接続されている。ヘッド基板43には、一対のヘッドコネクタ43Aが実装されており、当該ヘッドコネクタ43Aを介して、ヘッド用電装ユニット23に接続された図示しないフレキシブルフラットケーブルが接続される。
【0029】
一方、ポンプ部44とノズルプレート45とにより、方形のヘッド本体40Aが構成されている。
ノズルプレート45のノズル形成面45aには、液滴Fbを吐出する吐出ノズル46からなる2本のノズル列47が形成されている。2本のノズル列47は相互に平行に列設されており、各ノズル列47は、等ピッチで並設された180個(図示では模式的に表している)の吐出ノズル46で構成されている。すなわち、ヘッド本体40Aのノズル形成面45aには、その中心線を挟んで2本のノズル列47が対称に配設されている。
【0030】
図4(b)は、液滴吐出ヘッド40のポンプ部44の内部を示し、各吐出ノズル46の上側にそれぞれキャビティ52、振動板53及び圧電素子PZを有している。各キャビティ52は、それぞれ配管接続部材50を介して機能液供給ユニット22に接続され、同機能液供給ユニット22からの機能液F(フィルタ用インク)を収容し、そのフィルタ用インクを吐出ノズル46に供給する。振動板53は、各キャビティ52に対向する領域をZ方向に振動することによって、該キャビティ52の容積を拡大及び縮小させて、これに伴って吐出ノズル46のメニスカスを振動させる。各圧電素子PZは、それぞれ所定の駆動波形信号を受けるとき、Z方向に収縮して伸張することによって、振動板53の各領域をZ方向に振動させる。各キャビティ52は、それぞれの振動板53がZ方向に振動するとき、収容するフィルタ用インクの一部を所定重量の液滴Fbにして吐出ノズル46から吐出させる。
【0031】
ポンプ部44の基部側、すなわちヘッド本体40Aの基部側は、液体導入部41を受けるべく方形フランジ状にフランジ部48が形成されている。このフランジ部48は、抜け止めの役目を果たすとともに、ヘッド止めネジ(図示せず)でユニットプレート34と連結固定される連結部の役目を果たす。フランジ部48には、液滴吐出ヘッド40をユニットプレート34に固定する小ネジ用のネジ孔(雌ネジ)49が一対形成されている。つまり、液滴吐出ヘッド40は、ユニットプレート34の所定の位置に形成された貫通穴(図示せず)に、ヘッド本体40Aを貫挿させて、ユニットプレート34を貫挿してネジ孔49と螺合するヘッド止めネジ(図示せず)によってユニットプレート34に固定される。
【0032】
図2〜図4に示したX軸、Y軸、Z軸は、図1に示したX軸、Y軸、Z軸と同一である。すなわち、ユニットプレート34が液滴吐出装置1に取り付けられた状態では、液滴吐出ヘッド40に形成されたノズル列47(図4参照)は、Y軸方向に延在する構成になっている。
(キャッピング治具60)
次に、液滴吐出装置1が休止して全てのキャリッジ30(キャリッジプレート21)が待機領域で、稼働されるまで待機しているとき、その待機している間に、各キャリッジ30の各液滴吐出ヘッド40の乾燥を防ぐためのキャッピング治具60について説明する。
【0033】
図5に示すように、キャッピング治具60は、各キャリッジ30に対してそれぞれ取着される。
キャッピング治具60は、ベース板61を有し、そのベース板61はキャリッジ30に固着された複数の液滴吐出ヘッド40を取着したユニットプレート34に対して所定の間隔で保持されている。
【0034】
図6は、キャッピング治具60を上方から見た全体斜視図を示し、そのベース板61の上面61aであってその四隅には、位置決め部材としての第1〜第4位置決めガイド板62a,62b,62c,62dが固着されている。また、ベース板61の上面61aであってX軸方向の一側辺の中央位置には、第5位置決めガイド板62eが固着されている。
【0035】
そして、第1位置決めガイド板62aがユニットプレート34の第1側面S1(図3参照、以下同様)、第2位置決めガイド板62bがユニットプレート34の第2側面S2、第3位置決めガイド板62cがユニットプレート34の第3側面S3、第4位置決めガイ
ド板62dがユニットプレート34の第4側面S4、及び、第5位置決めガイド板62eがユニットプレート34の第5側面S5に、それぞれ当接する。これによって、ベース板61のユニットプレート34のX軸方向及びY軸方向に対する位置決めが行われる。
【0036】
また、ベース板61の上面61aであってX軸方向の両側辺には、位置決め部材としての位置決めガイドピン63がそれぞれ固着されている。
そして、位置決めガイドピン63がユニットプレート34に設けた一対のピン孔(図示せず)と嵌合する。これによって、ベース板61のユニットプレート34のX軸方向及びY軸方向に対する位置決めが精密に行われる。
【0037】
さらに、ベース板61の上面61aであってX軸方向の両側辺には、それぞれ一対の高さ調整部材64a,64b,64c,64dがそれぞれ固着されている。高さ調整部材64a,64b,64c,64dは、当接部としての調整ネジ65を有し、その調整ネジ65の頭部が、ユニットプレート34に当接することによって、ベース板61のユニットプレート34のZ軸方向に対する位置決めが精密に行われる。
【0038】
調整ネジ65の頭部は、磁石で構成されていて、ベース板61を、ユニットプレート34に位置決め調整しながら保持する際に、調整ネジ65の頭部が、磁力によりユニットプレート34に密着保持される。
【0039】
そして、ベース板61の上面61aであってX軸方向の他側辺には、調整ネジ65の頭部の磁力でユニットプレート34に密着保持されているベース板61をユニットプレート34から外すための離脱レバー66が設けられている。
【0040】
さらにまた、ベース板61の上面61aであってX軸方向の両側辺には、連結保持手段としての第1及び第2クランプ装置77a,77bがそれぞれ固着されている。
そして、第1クランプ装置77aはユニットプレート34の第6側面S6(図3参照、以下同様)、第2クランプ装置77bはユニットプレート34の第7側面S7をクランプし、ベース板61がユニットプレート34から離脱しないように連結するようになっている(図5参照、第2クランプ装置77bは図示せず)。
【0041】
従って、ベース板61は、ユニットプレート34の下側に装着するとき、第1〜第5位置決めガイド板62a〜62e及び位置決めガイドピン63にてガイドされてX軸方向及びY軸方向が位置決めされるとともに、高さ調整部材64a〜64dにてZ軸方向に対して位置決めされて、調整ネジ65の磁力によってユニットプレート34に連結保持される。そして、ベース板61は、第1及び第2クランプ装置77a,77bにて、ユニットプレート34に強固に連結保持される。
【0042】
ベース板61は、図6に示すように、ユニットプレート34に設けた各液滴吐出ヘッド40に対応した数のヘッドキャップ68(本実施形態では6個)が各液滴吐出ヘッド40とそれぞれ相対向するように配置されている。
【0043】
各ヘッドキャップ68は、図7に示すように、ベース板61に上面61aに形成した凹部61bにキャップ本体69が配設されている。キャップ本体69のY軸方向の両側には貫通孔69aが形成され、その貫通孔69aにはベース板61の下面61cから貫挿されたガイド軸70が貫通している。ガイド軸70の先端には抜け止め部材71が取着され、前記キャップ本体69が、ガイド軸70に沿って移動可能にかつガイド軸70から抜け落ちないようになっている。
【0044】
キャップ本体69とベース板61の間のガイド軸70には、弾性部材としてのコイルバ
ネSPが配設されている。従って、キャップ本体69(ヘッドキャップ68)は、コイルバネSPによって、ベース板61に対して離間する位置(抜け止め部材71と係合する位置)に弾圧保持されている。そして、キャップ本体69(ヘッドキャップ68)を、コイルバネSPの弾性力に抗して押圧すると、キャップ本体69(ヘッドキャップ68)はベース板61に向かって移動するようになっている。
【0045】
キャップ本体69には、液滴吐出ヘッド40の全吐出ノズル46を内包した状態でノズル形成面45aに密着する環状のシール部材73を備えている。そして、キャップ本体69とシール部材73とによって、上面が開口しているキャップ室72が形成されている。
【0046】
従って、ベース板61をユニットプレート34に連結保持した時、ベース板61に設けた各ヘッドキャップ68は、対応するユニットプレート34に設けた液滴吐出ヘッド40に対して、環状のシール部材73が全吐出ノズル46を内包した状態でノズル形成面45aに密着するようになっている。その結果、ユニットプレート34に設けた各液滴吐出ヘッド40は、外気に晒されて機能液Fが乾燥されることによる目詰まりといった不具合は解消される。
【0047】
このとき、ユニットプレート34に設けた各液滴吐出ヘッド40について、Z軸方向に取付け誤差がそれぞれ生じていても、各ヘッドキャップ68は、ガイド軸70及びコイルバネSPによって、Z軸方向に移動可能に弾圧保持されているので、対応する液滴吐出ヘッド40に対して確実に密着する。
【0048】
上記実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、キャッピング治具60の各ヘッドキャップ68は、ガイド軸70に沿って移動可能にするとともに、コイルバネSPによってベース板61から離間方向へ弾性保持した。従って、各キャリッジ30に取り付けた各液滴吐出ヘッド40のユニットプレート34からの高さに誤差があったとしても、コイルバネSPの弾性力によって確実にシール部材73をノズル形成面45aに密着させることができる。すなわち、キャリッジ30の各液滴吐出ヘッド40を確実に密閉することができる。その結果、各液滴吐出ヘッド40内の機能液Fの乾燥を抑制することができる。
【0049】
(2)上記実施形態によれば、キャッピング治具60をキャリッジ30に取り付ける際に、ユニットプレート34に対してキャッピング治具60の位置を調整する第1〜第5位置決めガイド板62a〜62eと位置決めガイドピン63とを設けた。従って、キャッピング治具60(ヘッドキャップ68)をユニットプレート34(液滴吐出ヘッド40)に対して位置調整し、各液滴吐出ヘッド40にヘッドキャップ68を確実に密着させることができる。その結果、各液滴吐出ヘッド40を確実に密閉することができる。
【0050】
(3)上記実施形態によれば、キャッピング治具60のベース板61には、ユニットプレート34とベース板61との間隔を調整する高さ調整部材64a〜64dを設けた。また、高さ調整部材64a〜64dの調整ネジ65の頭部を磁石とした。従って、ユニットプレート34とベース板61との間隔を高さ調整部材64a〜64dで調整することによって、ヘッドキャップ68の各液滴吐出ヘッド40に対する密着力を高めることができる。その結果、より確実に各液滴吐出ヘッド40を密閉することができる。
【0051】
また、高さ調整部材64a〜64dの調整ネジ65の頭部(磁石)をユニットプレート34に当接させることによって、キャッピング治具60をユニットプレート34に容易に密着保持することができる。そして、その状態から第1及び第2クランプ装置77a,77bを操作することによって、キャッピング治具60をキャリッジ30に容易に取り付けることができる。
【0052】
(4)上記実施形態によれば、高さ調整部材64a〜64dの調整ネジ65の頭部(磁石)によって、キャッピング治具60をユニットプレート34に密着保持しているとき、高さ調整部材64a〜64dの調整ネジ65の頭部(磁石)をユニットプレート34から離脱させる離脱レバー66を設けた。
【0053】
従って、高さ調整部材64a〜64dの調整ネジ65の頭部(磁石)とユニットプレート34とが当接しているとき、離脱レバー66を操作することによって、キャッピング治具60をユニットプレート34から容易に取り外すことができる。
【0054】
(5)上記実施形態によれば、キャッピング治具60をキャリッジ30に対して連結固定する第1及び第2クランプ装置77a,77bを設けた。従って、キャッピング治具60をキャリッジ30に、手動で容易に連結固定することができる。その結果、例えば昇降手段などを備えた大規模なキャッピング装置を設けることなく、各液滴吐出ヘッド40を密閉して機能液Fの乾燥を抑制できるので、液滴吐出装置1のコストを低減することができる。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について図8及び図9に従って説明する。
【0055】
図8に示すように、本実施形態のキャッピング治具80は、キャリッジプレート21(吊下支持枠28)から取り外した状態のキャリッジ30を輸送する際に、そのキャリッジ30に取着され各液滴吐出ヘッド40の乾燥を防ぐためのキャッピング治具である。尚、第1実施形態と構成が同じところは符号を同じにしてその説明は省略する。
【0056】
図9に示すように、キャッピング治具80は、ベース板81を有し、そのベース板81はキャリッジ30に固着され、複数の液滴吐出ヘッド40を取着したユニットプレート34に対して所定の間隔で保持されている。ベース板81の外形は、ユニットプレート34の外形と少し大きい相似形に形成されている。
【0057】
そのベース板81の上面81aであってその四隅には、2本を一組とする位置決め部材としての第1〜第4位置決めガイド82a,82b,82c,82dが固着されている。
そして、第1〜第4位置決めガイド82a,82b,82c,82dは、ユニットプレート34の各四隅をそれぞれ挟持することによって、ベース板81のユニットプレート34のX軸方向及びY軸方向に対する位置決めが行われる。
【0058】
さらに、ベース板81の上面81aであってX軸方向の両側辺には、それぞれ高さ調整部材84a,84b,84c,84d,84e,84fがそれぞれ固着されている。高さ調整部材84a〜84fは当接部としての調整ネジ85を有し、その調整ネジ85の頭部が、ユニットプレート34に当接することによって、ベース板81のユニットプレート34のZ軸方向に対する位置決めが精密に行われる。
【0059】
調整ネジ85の頭部は、磁石で構成されていて、ベース板81を、ユニットプレート34に位置決め調整しながら保持する際に、調整ネジ85の頭部が、磁力によりユニットプレート34に密着保持される。
【0060】
さらにまた、ベース板81の上面81aであってX軸方向の両側辺には、連結保持手段としての第1及び第2クランプ装置87a,87bがそれぞれ固着されている。そして、第1及び第2クランプ装置87a,87bは、図8に示すように、キャリッジ枠31のX軸方向の側面の下辺32をそれぞれクランプし、ベース板81がキャリッジ30(ユニットプレート34)から離脱しないように連結するようになっている。
【0061】
従って、ベース板81は、ユニットプレート34の下側に装着するとき、第1〜第4位置決めガイド82a,82b,82c,82dにてX軸方向及びY軸方向が位置決めされるとともに、高さ調整部材84a〜84fにてZ軸方向に対する位置決めされて、調整ネジ85の磁力によってユニットプレート34に連結保持される。そして、ベース板81は、第1及び第2クランプ装置87a,87bにて、ユニットプレート34に強固に連結保持される。
【0062】
そして、ベース板81は、図9に示すように、第1実施形態と同様な構成のヘッドキャップ68が設けられている。
従って、ベース板81をユニットプレート34に連結保持した時、ベース板81に設けた各ヘッドキャップ68は、対応するユニットプレート34に設けた液滴吐出ヘッド40に対して、環状のシール部材73が全吐出ノズル46を内包した状態でノズル形成面45aに密着するようになっている。その結果、ユニットプレート34に設けた各液滴吐出ヘッド40は、外気に晒されて機能液Fが乾燥されることによる目詰まりといった不具合は解消される。
【0063】
このとき、ユニットプレート34に設けた各液滴吐出ヘッド40について、Z軸方向に取付け誤差がそれぞれ生じていても、各ヘッドキャップ68は、ガイド軸70及びコイルバネSPによって、Z軸方向に移動可能に弾圧保持されているので、対応する液滴吐出ヘッド40に対して確実に密着する。
【0064】
さらにまた、ベース板81の上面81aであってX軸方向の両側辺には、L字状に屈曲形成された固定部材としてのチューブ固定板88がそれぞれ固着されている。チューブ固定板88は、図8に示すように、キャッピング治具80がキャリッジ30に連結保持されたとき、前記機能液供給ユニット22から各液滴吐出ヘッド40に機能液Fを供給するための配管接続部材50(図2参照)を束ねて固定するようになっている。
【0065】
上記実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(5)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(6)上記実施形態によれば、キャッピング治具80には、配管接続部材50を束ねて固定するチューブ固定板88を設けたことによって、キャリッジ30を搬送するときに配管接続部材50を固定することができる。従って、キャリッジ30の搬送を容易に行うことができる。
【0066】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1及び第2実施形態では、第1及び第2クランプ装置77a,77b及び第1及び第2クランプ装置87a,87bを用いてキャッピング治具60,80をキャリッジ30に連結保持した。これに限らす、例えば、キャッピング治具60,80をキャリッジ30に対してねじ等を用いて連結保持させるようにしてもよい。
【0067】
・上記第1及び第2実施形態では、弾性部材は、コイルバネSPとした。これに限らず、たとえば、板バネなどを用いてもよい。
・上記第1及び第2実施形態では、液滴吐出ヘッド40を6個搭載したキャリッジ30に具体化した。これに限らず、キャリッジに搭載される液滴吐出ヘッドの配置及び数は適宜変更してもよい。
【0068】
・上記第1及び第2実施形態では、フィルタ用インクを液滴にして吐出させてCF基板にカラーフィルタを形成する液滴吐出装置に具体化した。これに限定されるものではなく、金属配線を形成する液滴吐出装置、絶縁層を形成する液滴吐出装置、液晶層や配向膜を
形成する液滴吐出装置、有機EL表示装置の発光層を形成する液滴吐出装置等に応用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】キャリッジプレートとキャリッジの関係を表す平面図。
【図3】液滴吐出ヘッドを搭載したユニットプレートをノズルプレート側から見たときの概略構成を示す斜視図。
【図4】(a)液滴吐出ヘッドをノズルプレート側から見た斜視図、(b)液滴吐出ヘッドの要部断面図。
【図5】第1実施形態において、キャッピング治具をキャリッジに取り付けたときの斜視図。
【図6】第1実施形態におけるキャッピング治具の斜視図。
【図7】ヘッドキャップとベース板との関係を示す関係図。
【図8】第2実施形態において、キャッピング治具をキャリッジに取り付けたときの斜視図。
【図9】第2実施形態におけるキャッピング治具の斜視図。
【符号の説明】
【0070】
F…機能液、Fb…液滴、W…CF基板、M1…X軸リニアモータ、M2…Y軸リニアモータ、PZ…圧電素子、S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7…側面、SP…コイルバネ、1…液滴吐出装置、2…基台、2a…上面、11…X軸ガイドレール、12…X軸移動プレート、14…基板ステージ、16…ステージ回動機構、18…Y軸ガイドレール、19a…支柱、19b…支柱、21…キャリッジプレート、22…機能液供給ユニット、23…ヘッド用電装ユニット、25…吊下機構、26…吊下基板、27…吊下回動枠、28…吊下支持枠、30…キャリッジ、31…キャリッジ枠、32…下辺、34…ユニットプレート、40…液滴吐出ヘッド、40A…ヘッド本体、41…液体導入部、42…接続針、43…ヘッド基板、43A…ヘッドコネクタ、44…ポンプ部、45…ノズルプレート、45a…ノズル形成面、46…吐出ノズル、47…ノズル列、48…フランジ部、49…ネジ孔、50…配管接続部材、52…キャビティ、53…振動板、60…キャッピング治具、61…ベース板、61a…上面、61b…凹部、61c…下面、62a,
62b,62c,62d,62e…位置決めガイド板、63…位置決めガイドピン、64a,64b,64c,64d…高さ調整部材、65…調整ネジ、66…離脱レバー、68…ヘッドキャップ、69…キャップ本体、69a…貫通孔、70…ガイド軸、71…抜け止め部材、72…キャップ室、73…シール部材、77a,77b…クランプ装置、80…キャッピング治具、81…ベース板、81a…上面、82a,82b,82c,82d…位置決めガイド、84a,84b,84c,84d,84e,84f…高さ調整部材、85…調整ネジ、87a,87b…クランプ装置、88…チューブ固定板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジのユニットプレートに並設した複数の液滴吐出ヘッドをそれぞれ密閉するヘッドキャップを、前記各液滴吐出ヘッドの配置位置に対応させてベース板に設け、前記各液滴吐出ヘッドを対応する前記ヘッドキャップでそれぞれ密閉保持するキャッピング治具であって、
前記各ヘッドキャップを、前記ベース板に対して離間する方向に、予め定めた距離間を移動可能に支持して、
前記各ヘッドキャップを弾性部材にて前記離間する方向に弾性支持することを特徴とする液滴吐出ヘッドのキャッピング治具。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具において、
前記ベース板を前記キャリッジに対して連結保持する連結保持手段を設けたことを特徴とする液滴吐出ヘッドのキャッピング治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具において、
前記各ヘッドキャップを、対応する前記液滴吐出ヘッドに対して位置決めする位置決め部材を設けたことを特徴とする液滴吐出ヘッドのキャッピング治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具において、
前記ユニットプレートと当接する当接部を有し、前記ユニットプレートと前記ベース板との間隔を調整する高さ調整手段を設けたことを特徴とする液滴吐出ヘッドのキャッピング治具。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具において、
前記当接部は、磁石を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドのキャッピング治具。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具において、
前記当接部を前記ユニットプレートから離脱させる離脱レバーを設けたことを特徴とする液滴吐出ヘッドのキャッピング治具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドのキャッピング治具において、
前記液滴吐出ヘッドに接続される配管接続部材を固定する固定部材を設けたことを特徴とする液滴吐出ヘッドのキャッピング治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−82853(P2009−82853A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257660(P2007−257660)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】