説明

液滴吐出ヘッドの位置決め機構、液滴吐出装置、画像形成装置、液滴吐出ヘッドの位置決め方法ならびに交換方法

【課題】高精度なノズル配列が確保できる液滴吐出ヘッドの位置決め機構を提供する。
【解決手段】直交する側面に基準面19を設けた吐出ヘッド17と、基準面19の突当部25を設けたヘッド取り付け部材15と、基準面19を突当部側に押圧するヘッド押圧−スライド治具21を有し、ヘッド押圧−スライド治具21は円錐部26を有し、ヘッド押圧−スライド治具21をねじ込むことにより、円錐部26と突当部25の間で液滴吐出ヘッド17を挟持した状態でヘッド取り付け部材15に固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの位置決め機構、液滴吐出装置、画像形成装置、液滴吐出ヘッドの位置決め方法ならびに交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは広く知られているように、ノズルからインク滴を吐出させるインク滴吐出手段を備えるインクジェッド記録ヘッドにインクを供給し、そのインクジェッド記録ヘッドが有するインク滴吐出手段を入力される画像信号に基づいて駆動することにより、インクジェッド記録ヘッドからインクを吐出させ、その吐出させたインクを記録用紙上に付着させて、ドットパターン画像を形成する印刷装置(画像形成装置)である。
【0003】
このようなインクジェットプリンタとしては、キャリッジに搭載されたインクジェッド記録ヘッドを記録用紙の搬送方向に対して直交する方向に往復運動させながら印字を行うシリアル型のものと、印字1ライン分の印字領域を備えたインクジェッド記録ヘッドを用いて印字を行なうライン型のものが知られている。
【0004】
印字速度を高めるためには、インクジェッド記録ヘッドを走査する必要のないライン型のものが有利である。ライン型のインクジェットプリンタにおいて、1ライン分の印字幅をカバーするには多数のインクノズルが微細なピッチで配列された構造の長いラインインクジェッド記録ヘッドが必要である。しかし、このような長尺状のインクジェッド記録ヘッドを精度良く製作することは困難であり、また、歩留まりも悪いため、製造コストが高くなってしまい、現実的ではない。
【0005】
そのためライン型のインクジェットプリンタでは、小さな記録ヘッドユニットを記録用紙の幅方向(主走査方向)に複数個並べて配置して、印刷幅分のライン型ヘッドを形成し、それを記録用紙の搬送方向(副走査方向)に例えばマゼンダ、シアン、ブルー、黒などの必要な色分だけ並べて配置している。
【0006】
このようなライン型ヘッドの製造方法として、例えば特開平10−951144号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。
このインクジェッド記録ヘッドユニットでは、1ラインの印刷に用いられるインクノズル列を、そのライン方向において複数の分割インクノズル列に分け、この各分割インクノズル列でインクジェッド記録ヘッドを構成している。
【0007】
また、このように構成された複数個のインクジェッド記録ヘッドはベースプレートに千鳥状に配置され、それぞれ2箇所でベースプレートにねじ止めされている。この個々のインクジェッド記録ヘッドのベースプレートへの取付け位置精度は着弾位置精度を決める要素として、非常に重要であり、高い精度が要求される。ここで、インクジェッド記録ヘッドの位置合わせが正確でないと、印刷物にスジが発生する等の不具合が生じることがあった。
【0008】
そこで前記インクジェッド記録ヘッドを所望の位置に高精度で固定するために、例えば特開2004−322606号公報(特許文献2)のように、支持ベースプレートにインクジェッド記録ヘッドを組付ける際、ガラスからなるアライメントプレートにクロムのスパッタリングにより、ノズル穴の位置を示すマーカを形成する。このマーカとそれに相対するノズル穴とを画像上で合わせることにより、高精度な位置合わせを実現する方法が提案されている。
【0009】
また、特開2008−296518号公報(特許文献3)には、ヘッド交換時における作業時間の短縮と高位置合わせ精度の両立を目的として、V字状の切り欠き部等を備えたアライメントプレートをヘッドに取り付けた構成が開示されている。
【0010】
さらに、特許第3894000号公報(特許文献4)にはライン型ヘッドの組立て方法が、特開2007−76176号公報(特許文献5)にはライン型ヘッドの位置調整方法に関する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記特許文献2に示すようなヘッド組付け方法は、工場出荷時には設備が整っているため、インクジェッド記録ヘッドを高精度に配列・組付けることは可能であるが、ユーザ納入後のヘッド故障等によるヘッド交換時には、十分な設備がないため、ヘッド単品交換時の組付け作業に多大な時間を要し、その間はインクジェットプリンタを稼動させることができないため、印刷作業に影響を及ぼすという問題があった。
【0012】
このようなことを避けるために、複数個の記録ヘッドを備えたライン型ヘッドアレイの場合、ノズル配列精度を上げるため、ヘッドプレート側に取り付ける位置決めピンの位置精度及びピン外径精度とヘッド側のノズル位置と位置決め点(面)を高精度に製作し、機械精度で位置出しを行なっている。
【0013】
しかし、インクジェットプリンタが高速の連帳機の場合、装置が大型になり、ヘッドベースプレートが500mm以上もあることから、穴位置の加工精度を上げることは歩留まりが悪くなるため、コストアップの要因を招く。特に記録ヘッド数が多くなると、より顕著になる。
【0014】
またヘッド故障時には、ヘッド単体での交換となるため、交換対象であるヘッド単品の高精度要求による部品コストの増加は、ランニングコストの増加も招いてしまうという問題があった。
【0015】
前記特許文献3では、インクジェッド記録ヘッドの位置合わせが少ない工数で行なうことができるという特長はある。しかし、機構が複雑であり、複数個のヘッドをある規則を持って、小さいスペースで隣接した状態で配列することが、位置決め機構の搭載により、難しくなるため、ヘッド配列スペースが大きくなる問題がある。また、ヘッド交換時にヘッドをネジ等により固定する時のズレによる位置再現性の低下という問題を解消できていない。
【0016】
前記特許文献4には、ヘッドアレイを高精度に組立てるために、組付け治具を用いた組立て方法が記載されている。この方法の位置決めは組付け治具側のピンに対して、相手側が穴の組み合わせによるピンアライメント方式であるが、この方式では高精度の位置合わせを行なう際、ピン径と穴径の隙間を厳しくする必要があるが、その場合、組付け時にかじってしまうなど、操作性に問題がある。
【0017】
前記特許文献5では、ヘッドアレイの長手方向の調整、及び回転方向の調整用としてテーパ形状の調整ビスを用いており、ヘッドを位置決めピンに対して押圧するものではない。
【0018】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解決し、高精度なノズル配列が確保できる液滴吐出ヘッドの位置決め機構、液滴吐出装置、画像形成装置、液滴吐出ヘッドの位置決め方法ならびに交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、
液滴を吐出するノズルを有し、第1の側面と、その第1の側面と直交する第2の側面に前記ノズルの位置を規定するための基準面をそれぞれ設けた液滴吐出ヘッドの位置決め機構であって、
前記液滴吐出ヘッドの基準面を突き当てる突当部をそれぞれ設けて、ヘッド取り付け面上に位置決めされた前記液滴吐出ヘッドを固定する例えば後述するベースフレームなどのヘッド取り付け部材と、
前記液滴吐出ヘッドの基準面を前記ヘッド取り付け部材の例えば後述する位置決めピンなどの突当部側に押圧するヘッド押圧−スライド治具を有し、
前記ヘッド押圧−スライド治具は前記ヘッド取り付け部材のヘッド取り付け面上に立設した状態で前記ヘッド取り付け面側に向けて徐々に径小になった円錐部を有し、
前記ヘッド押圧−スライド治具をヘッド取り付け面側に向けてねじ込むことにより、前記円錐部のテーパ周面を前記液滴吐出ヘッドの一部に当接して、ヘッド押圧−スライド治具のさらなるねじ込みにより、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材の突当部側に押圧・スライドして位置決めし、前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部と前記ヘッド取り付け部材の突当部の間で液滴吐出ヘッドを挟持した状態で、液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材に固定する構成になっていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記ヘッド取り付け部材の前記ヘッド押圧−スライド治具が設置される位置に位置決め穴が形成され、その位置決め穴に対して前記ヘッド押圧−スライド治具が着脱可能に設置される構成になっていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、
前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部が当接する前記液滴吐出ヘッドの部分に、押圧受け部材が液滴吐出ヘッドに対し着脱可能に載置され、前記押圧受け部材を介して前記ヘッド押圧−スライド治具により前記液滴吐出ヘッドを押圧・スライドする構成になっていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第4の手段は前記第1の手段において、
前記液滴吐出ヘッドの第1の側面に第1の基準面を設け、前記第2の側面に所定の間隔をおいて第2の基準面ならびに第3の基準面を設け、
前記ヘッド取り付け部材に前記第1の基準面、第2の側面ならびに第3の基準面をそれぞれ突き当てる第1の突当部、第2の突当部ならびに第3の突当部をそれぞれ設けて、
前記ヘッド押圧−スライド治具は軸方向の途中に前記円錐部を有する軸体を備え、その軸体は、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第1の突当部と対向する位置に設置される第1の軸体と、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第2の突当部と対向する位置に設置される第2の軸体と、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第3の突当部と対向する位置に設置される第3の軸体からなり、
前記第1の軸体、第2の軸体ならびに第3の軸体を前記ヘッド取り付け面側に向けてそれぞれねじ込むことにより、各軸体の円錐部により前記液滴吐出ヘッドを前記第1の突当部、第2の突当部ならびに第3の突当部側に押圧・スライドして位置決めすることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第5の手段は前記第4の手段において、
前記ヘッド取り付け部材の前記液滴吐出ヘッドを介して前記第1の突当部と対向する位置に第1の位置決め穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第2の突当部と対向する位置に第2の位置決め穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第3の突当部と対向する位置に第3の位置決め穴をそれぞれ設け、
前記ヘッド押圧−スライド治具が、前記第1の軸体、第2の軸体ならびに第3の軸体をそれぞれ所定の位置に回転可能に保持する保持部を有する部材保持フレームを備え、
前記各軸体の円錐部により下部に前記ヘッド取り付け部材にそれぞれ形成された各位置決め穴に挿通するシャフト部を設け、
前記各軸体の円錐部により上部に前記保持部のネジ穴に螺合するネジ部を設けて、
前記第1の軸体、第2の軸体ならびに第3の軸体を保持した部材保持フレームを前記ヘッド取り付け部材に着脱可能に装着する構成になっていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第6の手段は前記第4の手段において、
前記ヘッド取り付け部材の前記液滴吐出ヘッドを介して前記第1の突当部と対向する位置に第1の位置決めネジ穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第2の突当部と対向する位置に第2の位置決めネジ穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第3の突当部と対向する位置に第3の位置決めネジ穴をそれぞれ設け、
前記各軸体の円錐部により下部にネジ部を設けて、各軸体を前記位置決めネジ穴に着脱可能に装着する構成になっていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第7の手段は前記第4ないし第6の手段において、
前記軸体の頭部に当該軸体をねじ込むための操作部が設けられていることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第8の手段は前記第4ないし第6の手段において、
前記軸体の軸線と円錐形部のテーパ周面とのなす角をθt、前記位置決めピンの上端と液滴吐出ヘッドの接触点をP、前記円錐形部による液滴吐出ヘッドの押圧点をQとしたとき、前記接触点Pを通り、前記ヘッド取り付け面に対して水平な線と前記接触点Pと押圧点Qを結ぶ直線とのなす角をθhとしたとき、
前記角θtと角θhの関係がθh<θtとなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
本発明の第9の手段は前記第4ないし第6の手段において、
前記位置決めピンの上端と液滴吐出ヘッドの接触点をP、前記円錐形部による液滴吐出ヘッドの押圧点をQ、前記ヘッド取り付け面から接触点Pまでの垂直方向の距離をL、前記ヘッド取り付け面から押圧点Qまでの垂直方向の距離をLtとしたとき、
前記距離Lと距離Ltの関係がL>Ltとなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第10の手段は液滴吐出装置において、
前記第1ないし第9の手段の液滴吐出ヘッドの位置決め機構を用いて、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材に位置決め固体したことを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第11の手段は画像形成装置において、
前記第1ないし第9の手段の液滴吐出ヘッドの位置決め機構を用いて、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材に位置決め固定したことを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第12の手段は前記11の手段において、
前記液滴吐出ヘッドを複数個、記録用紙の搬送方向に並べて1ライン分の印字領域を確保したことを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第13の手段は液滴吐出ヘッドの位置決め方法において、
液滴を吐出するノズルを有し、第1の側面と、その第1の側面と直交する第2の側面に前記ノズルの位置を規定するための基準面をそれぞれ設けた液滴吐出ヘッドを、前記液滴吐出ヘッドの基準面を突き当てる突当部をそれぞれ設けたヘッド取り付け部材のヘッド取り付け面上に載置する液滴吐出ヘッド載置工程と、
前記ヘッド取り付け面上に立設した状態でそのヘッド取り付け面側に向けて徐々に径小になった円錐部を有するヘッド押圧−スライド治具を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記各突当部と対向する側に立設するヘッド押圧−スライド治具設置工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具をヘッド取り付け面側に向けてねじ込むことにより、前記円錐部のテーパ周面を前記液滴吐出ヘッドの一部に当接して、ヘッド押圧−スライド治具のさらなるねじ込みにより、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材の突当部側に押圧・スライドして位置決めするヘッド位置決め工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部と前記ヘッド取り付け部材の突当部の間で液滴吐出ヘッドを挟持した状態で、液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材に固定するヘッド固定工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具を前記ヘッド取り付け部材から外すヘッド押圧−スライド治具外し工程を
備えていることを特徴とするものである。
【0032】
本発明の第14の手段は液滴吐出ヘッドの交換方法において、
交換すべき液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材から取り外すヘッド取り外し工程と、
液滴を吐出するノズルを有し、第1の側面と、その第1の側面と直交する第2の側面に前記ノズルの位置を規定するための基準面をそれぞれ設けた新品の液滴吐出ヘッドを、前記液滴吐出ヘッドの基準面を突き当てる突当部をそれぞれ設けた前記ヘッド取り付け部材のヘッド取り付け面上に載置する液滴吐出ヘッド載置工程と、
前記ヘッド取り付け面上に立設した状態でそのヘッド取り付け面側に向けて徐々に径小になった円錐部を有するヘッド押圧−スライド治具を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記各突当部と対向する側に立設するヘッド押圧−スライド治具設置工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具をヘッド取り付け面側に向けてねじ込むことにより、前記円錐部のテーパ周面を前記液滴吐出ヘッドの一部に当接して、ヘッド押圧−スライド治具のさらなるねじ込みにより、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材の突当部側に押圧・スライドして位置決めするヘッド位置決め工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部と前記ヘッド取り付け部材の突当部の間で液滴吐出ヘッドを挟持した状態で、液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材に固定するヘッド固定工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具を前記ヘッド取り付け部材から外すヘッド押圧−スライド治具外し工程を
備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明は前述のような構成になっており、高精度なノズル配列ができる液滴吐出ヘッドの位置決め機構、液滴吐出装置、画像形成装置、液滴吐出ヘッドの位置決め方法ならびに交換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る記録ヘッドの位置決め機構を説明するための分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態において、ヘッドフレームにヘッド押圧−スライド治具を搭載したときの一部を断面にした正面図で、ヘッド押圧−スライド治具の初期のセット状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態において、ヘッドフレームにヘッド押圧−スライド治具を搭載したときの一部を断面にした正面図で、ヘッド押圧−スライド治具による位置決め途中の状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態において、テーパ部材の円錐形部と記録ヘッドの押圧受け部材、位置決めピンのヘッドフレームに対する高さの位置関係について説明するための図である。
【図5】本発明の別の実施形態において、ヘッドフレームにヘッド押圧−スライド治具を搭載したときの一部を断面にした正面図である。
【図6】本発明の実施形態において、記録ヘッドの交換手順について説明するための図である。
【図7】ネジの締め付けによって記録ヘッドが動いた状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るインクジェッド記録ヘッドユニットを図9の図中Z方向から見た平面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に本発明の実施形態について図面とともに説明する。
(プリンタ全体の説明)
図9は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【0036】
同図に示すようにインクジェットプリンタは、記録用紙(ウェブ)1の搬送方向に沿って給紙搬送ユニット2、1個または複数個(本実施形態では1個)の作像ユニット3、排紙搬送ユニット4が配列され、これらが組み合わさって1台のインクジェットプリンタを構成している。
【0037】
前記給紙搬送ユニット2は、内部にニップローラ5と、インフィードローラ6と、複数個のガイドローラ7ならびに前記インフィードローラ6を駆動するモータ(図示せず)などを有している。また給紙搬送ユニット2は、記録用紙1の蛇行補正機構部、除電機構部、クリーニング機構部など各種機能部を有している。
【0038】
前記作像ユニット3は、ユニットの上部に4個(Y,M,C,K用)のインクカセット8と、そのインクカセット8の下部に搭載された4個(Y,M,C,K用)のインクジェッド記録ヘッドユニット9と、そのインクジェッド記録ヘッドユニット9の下面近傍を通るように記録用紙1を搬送ガイドする複数個のプラテンローラ10と、インク試し打ちのためのインク受け11と、前記インクカセット8内のインクをインクジェッド記録ヘッドユニット9に供給するインク供給経路(図示せず)などを内部に備えている。
【0039】
前記排紙搬送ユニット4は、内部にアウトフィードローラ12と、ニップローラ13と、複数個のガイドローラ14ならびに前記アウトフィードローラ12を駆動するモータ(図示せず)などを有している。
【0040】
(インクジェッド記録ヘッドユニットの説明)
次に前記インクジェッド記録ヘッドユニット9の構成について説明する。図8は、インクジェッド記録ヘッドユニット9を図9の図中Z方向から見た平面図である。
インクジェッド記録ヘッドユニット9は、平板状のベースフレーム15にインクを吐出する複数個のノズル孔16を列設した記録ヘッド17が記録用紙1の搬送方向(図中の矢印参照)に2列、全体として7個配列されたユニットとして、固定ネジ18a,18b(図1参照)で固定されている。この複数個の記録ヘッド17は、ベースフレーム15上に千鳥状に配置されている。
【0041】
記録ヘッド17はそれに設けられた3箇所の基準面19a,19b,19cをもって、ベースフレーム15上での記録ヘッド17の主走査方向(記録用紙1の搬送方向に対して直交する方向)X、および副走査方向(記録用紙1の搬送方向)Yの位置が決められている。
【0042】
本実施形態ではインクジェッド記録ヘッドユニット9は、異なる色、例えばイエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),黒(K)の4色分で4種類のインクジェッド記録ヘッドユニット9a,9b,9c,9dが記録用紙1の搬送方向に沿って配列され、図示しないフレームにネジで固定されている。記録ヘッド17は、記録用紙1の幅サイズに応じて主走査方向Xに更に並べることが可能である。
【0043】
(ヘッド位置決め機構の説明)
このインクジェッド記録ヘッドユニット9は、記録ヘッド17を高い位置精度でベースフレーム15上に組み込む必要があり、特に主走査方向(記録用紙1の搬送方向に対して直交する方向)Xの配列精度が悪い場合、隣接する記録ヘッド17間でノズル孔16のピッチ間隔がずれることになり、印刷結果としてスジが発生し、印刷品質の低下を招くことになる。
【0044】
図1は、本発明の実施形態に係る記録ヘッドの位置決め機構を説明するための分解斜視図である。
インク滴を吐出するための複数個のノズル孔16を列設した記録ヘッド17には、図1に示すように、その端面(側面)に3つの基準面19a,19b,19cが、副走査方向Yに1個(基準面19a)、それと直交する主走査方向Xに2個(基準面19b,19c)、それぞれ垂直に設けられている。この基準面19a,19b,19cはノズル孔16の位置を光学顕微鏡などで観察しながら高精度に形成されており、ベースフレーム15上でのノズル孔16の位置を規定するための基準面となっている。
【0045】
前記ベースフレーム15には、記録ヘッド17の位置を決めるための位置決めピン25a,25b,25cが、前記基準面19a,19b,19cと対応するように副走査方向Yに1箇所(位置決めピン25a)、それと直交する主走査方向Xに2箇所(位置決めピン25b,25c)、それぞれベースフレーム15の上面であるヘッド取り付け面32に対して垂直に立設されている。
【0046】
なお、図1では基準面19a,19b,19cや位置決めピン25a,25b,25cなどの形状や位置関係を明確に表すため、図8に示す配置とは反対になっている。
【0047】
記録ヘッド17は、それに設けられている基準面19a,19b,19cをベースフレーム15の位置決めピン25a,25b,25cに突き当てることにより、ノズル孔16の配列位置精度を確保した状態で、ネジ18a,18bでベースフレーム15に固定される。前述のように記録ヘッド17は、位置決め時に3点支持された状態になっている。
【0048】
この記録ヘッド17を位置決めピン25a,25b,25cに当接させるにあたり、ヘッド押圧−スライド治具21を使用して、記録ヘッド17の位置を動かないようにした後に、記録ヘッド17をベースフレーム15にネジ18a,18bで固定する。
【0049】
次に図1ないし図6を用いてヘッド位置決め機構の具体的な構成について説明する。
図1に示すようにヘッド押圧−スライド治具21は、3つのテーパ部材22a、22b、22cと、それらテーパ部材22を回転可能に垂設する平面形状が略コ字形の部材保持フレーム23から構成されている。
【0050】
テーパ部材22は例えば図3示すように、記録ヘッド17に当接して記録ヘッド17をベースフレーム15のヘッド取り付け面32上で水平方向に移動させる円錐形部26と、その円錐形部26の下部に設けられてテーパ部材22の位置を決めるためのシャフト部27と、円錐形部26の上部に設けられてテーパ部材22を垂直方向に移動させるためのネジ部28と、そのネジ部28の上部に設けられてテーパ部材22をドライバーなどで回転させる溝状あるいは+状の操作部29からの一体物で構成されている。
前記円錐形部26は下側に行くに従って徐々に径小になっており、外周に先細り状のテーパ周面26aが形成されている。
【0051】
図1ないし図3に示すように、前記部材保持フレーム23の内側にはテーパ部材保持部34が突設され、そのテーパ部材保持部34のネジ34aに前記テーパ部材22のネジ部28が螺合されている。従って、3つのテーパ部材22a、22b、22cは部材保持フレーム23によって所定の位置にそれぞれ保持されて、1つの治具として取り扱われる。
【0052】
図1に示すようにヘッドフレーム15には、テーパ部材22a、22b、22cの各シャフト部28を挿通すためのストレートな位置決め穴30a、30b、30cが設けられている。なお、位置決め穴30aは位置決めピン25a、位置決め穴30bは位置決めピン25b、位置決め穴30cは位置決めピン25cと、それぞれ対応する位置に設けられている。
【0053】
また、図2ならびに図3に示すように、記録ヘッド17のテーパ部材22と対向する角部には段差部33が形成されており、この段差部33には記録ヘッド17の位置決め時での部品の磨耗を防止するために小径の円柱状あるいは球状の耐磨耗性材料(金属や硬質合成樹脂など)からなる押圧受け部材31が載置される。
【0054】
(記録ヘッドの位置決め手順)
図2ならびに図3はヘッドフレーム15にヘッド押圧−スライド治具21を搭載したときの一部を断面にした正面図で、図2はヘッド押圧−スライド治具21の初期のセット状態を示す図、図3はヘッド押圧−スライド治具21による位置決め途中の状態を示す図である。
【0055】
まず、図2に示すように、記録ヘッド17をヘッドフレーム15上の位置決めピン25の近くに載置し、記録ヘッド17の位置が調整可能なように固定ネジ18a,18bを緩く締めて仮固定しておく。
【0056】
部材保持フレーム23に保持された各テーパ部材22a,22b,22cのシャフト部27の下端をヘッドフレーム15に形成されている各位置決め穴30a,30b,30cに挿入して、各テーパ部材22a,22b,22cを垂直に保持し、その状態で部材保持フレーム23をネジ42a,24bでヘッドフレーム15に固定する。
【0057】
これと同じ状態が図6に示されており、平面形状が略コ字状をした部材保持フレーム23の内側に記録ヘッド17が配置されている。そして、テーパ部材22aが記録ヘッド17(基準面19a)を介して位置決めピン25aと、テーパ部材22bが記録ヘッド17(基準面19b)を介して位置決めピン25bと、また、テーパ部材22cが記録ヘッド17(基準面19c)を介して位置決めピン25cと、それぞれ対向している。
【0058】
また、記録ヘッド17に設けられた段差部33の上に押圧受け部材31を載置してセットする。この押圧受け部材31は記録ヘッド17の側面よりも若干テーパ部材22側に突出しており、必ず耐磨耗性の押圧受け部材31を介してテーパ部材22で記録ヘッド17を押圧するようになっている。
【0059】
この状態でテーパ部材22を回転させることにより、テーパ部材22が徐々に下方に下がり、円錐形部26のテーパ周面26aが押圧受け部材31に当接し、さらにテーパ部材22を回転させると押圧受け部材31に押圧力(荷重)が作用して、記録ヘッド17がヘッドフレーム15のへッド取り付け面32に沿って水平方向にスライドし始める。
【0060】
テーパ部材22の回転を続行し、記録ヘッド17(基準面19)が位置決めピン25に突き当たったところで記録ヘッド17の位置が決まり、その位置が保持されることになる。図3は、位置決めピン25に記録ヘッド17(基準面19)が当接して位置決めされた状態を示している。この位置決めは各テーパ部材22a,22b,22cと位置決めピン25a,25b,25cの共働によってなされ、記録ヘッド17は主走査方向Xならびに副走査方向Yの適正な位置に確保される。
【0061】
これと同じ状態が図6に示されており、同図では各テーパ部材22a,22b,22cによる押圧方向が矢印で示されており、それぞれが位置決めピン25a,25b,25c側を向いている。
【0062】
ここで、テーパ部材22の円錐形部26と記録ヘッド17の押圧受け部材31、位置決めピン25のヘッドフレーム15に対する高さの位置関係について図4を用いて説明する。
【0063】
図4に示すように、テーパ部材22の軸線と円錐形部26のテーパ周面26aとのなす角をθt、位置決めピン25の上端と記録ヘッド17の接触点をP、押圧受け部材31と円錐形部26(テーパ周面26a)の接触点(すなわち、円錐形部26による記録ヘッド17の押圧点)をQとしたとき、前記接触点Pを通り、ヘッド取り付け面32に対して水平な線と前記接触点Pと接触点Qを結ぶ直線とのなす角をθhとすると、角θtと角θhの関係をθh<θtとなるような、位置関係(構成)としておく。
【0064】
この位置関係では、接触点Qの位置で円錐形部26(テーパ周面26a)が押圧受け部材31を押す荷重は円錐形部26のテーパ26aに対して垂直な向きFとなり、荷重Fの分力は接触点Pを押す方向の荷重F2と、接触点Pと接触点Qを結んだ直線に対して図中の下向きに垂直な方向の荷重F1となるので、記録ヘッド17は接触点P回りにF1の荷重と向きを持った方向にモーメントが働く。
【0065】
よって、前述の位置関係を保った構成をとることにより、記録ヘッド17をテーパ部材22で押しつけたときに接触点P周りのモーメントはヘッド取付け面側に働くため、ヘッド取り付け面32から記録ヘッド17が浮き上がるという現象が原因となって生じる位置ずれが解決され、高精度な記録ヘッド17の位置決めが可能となる。
【0066】
図5は、本発明の別の実施形態を説明するための図である。
この実施形態において、図4と同様に位置決めピン25の上端と記録ヘッド17との接触点をP、押圧受け部材31と円錐形部26(テーパ26a)の接触点(すなわち、円錐形部26による記録ヘッド17の押圧点)をQとする。さらに、ヘッド取り付け面32から接触点Pまでの垂直方向の距離をL、ヘッド取り付け面32から接触点Qまでの垂直方向の距離をLtとすると、距離Lと距離Ltの関係をL>Ltとなるような位置関係としておく。
【0067】
この位置関係では、接触点Qの位置で円錐形部26(テーパ周面26a)が押圧受け部材31を押す荷重は円錐形部26のテーパ周面26aに対して垂直な向きFとなり、荷重Fの分力は接触点Pを押す方向の荷重F2と、接触点Pと接触点Qを結んだ直線に対して図中の下向きに垂直な方向の荷重F1となるので、記録ヘッド17は接触点P回りにF1の荷重と向きを持った方向にモーメントが働く。
【0068】
よって、前述の位置関係を保った構成をとることにより、図4と同様に記録ヘッド17をテーパ部材22で押しつけた時に接触点P周りのモーメントはヘッド取付け面32側に働くため、ヘッド取り付け面32から記録ヘッド17が浮き上がるという現象が原因となって生じる位置ずれは解決でき、高精度な記録ヘッド17の位置決めが可能となる。
【0069】
このようにして記録ヘッド17が位置決めピン25a,25b,25cとテーパ部材22a,22b,22cの間で挟持、位置決めされると固定ネジ18a,18bを締めて、記録ヘッド17をベースフレーム15のヘッド取り付け面32上に固定する。記録ヘッド17の固定後、テーパ部材22a,22b,22cを保持している部材保持フレーム23をベースフレーム15から外し、さらに、押圧受け部材31を記録ヘッド17から取り外すことにより、記録ヘッド17の位置決め作業が終了する。
【0070】
なお、取り外された前記ヘッド押圧−スライド治具21と押圧受け部材31は、次の記録ヘッド17の位置決めに利用される。
【0071】
前記2つの実施形態において必要なことは、記録ヘッド17が点Pを中心として、浮き上がらないように図4,5に紙面に向って記録ヘッド17に時計回り方向のモーメントが働くことであり(図中の矢印参照)、それを満たす手段として角度を規定しても距離で規定しても良い。
【0072】
図4の場合、位置決めピン25の高さをなるべく低くすることにより、ベースフレーム15に対する位置決めピン25の倒れによる突き当て位置の誤差が小さくなり、高い位置決め精度を得ることができる。一方、図5の場合、角θhを比較的緩やかにできるので、記録ヘッド17を横方向にスライドさせる力が小さくて済み、記録ヘッド17の位置決めの操作性が良好である。
【0073】
(記録ヘッドの交換手順)
次に図6を用いて、記録ヘッド17の交換手順について説明する。同図は、ベースフレーム15上に複数個の記録ヘッド17を配列した状態を示す平面図である。
【0074】
何らかの不都合で故障した記録ヘッド17があればそれを特定し、その記録ヘッド17の固定ネジ18a,18bを緩めて、ベースフレーム15から取り外す。
【0075】
そして、新品の記録ヘッド17をベースフレーム15に固定ネジ18a,18bで仮止めする。次に仮止めした新品の記録ヘッド17の近くにヘッド押圧−スライド治具21を載置し、ヘッド押圧−スライド治具21に保持されている各テ―パ部材22a,22b,22cの下端部をベースフレーム15に形成されている位置決め穴30a,30b,30cに挿入し、固定ネジ24a,24bでヘッド押圧−スライド治具21をベースフレーム15上に固定するとともに、新品の記録ヘッド17の段差部33に押圧受け部材31をセットする。この状態は前述した図2と同様である。
【0076】
次にドライバーなどを使用してテーパ部材22a,22b,22cを回転させ、回転しなくなるところまで回転させる。これにより新品の記録ヘッド17は、3箇所の位置決めピン25a,25b,25cに突き当たり、主走査方向Xと副走査方向Yの位置きめが同時になされる。この状態は前述した図3と同様である。
【0077】
なお、3本のテーパ部材22a,22b,22cの回転順序は特に規定しない。また、テーパ部材22の回転終了状態の管理として、ネジのトルク管理をすると、テーパ部材22のテーパ周面26aや押圧受け部材31の表面損傷などの防止が可能となる。
【0078】
このようにして記録ヘッド17の位置決めが終了すると固定ネジ18a,18bを本締めし、ヘッド押圧−スライド治具21をベースフレーム15から外すとともに、押圧受け部材31を記録ヘッド17から取り外して、記録ヘッド17の交換作業を終了する。
【0079】
記録ヘッド17の交換時の課題は、記録ヘッド17におけるノズル孔16の位置再現性である。ライン型ヘッドの場合、各記録ヘッド間の配列精度は数μm〜数十μm程度と高精度に組み上げられており、位置決めピン25a,25b,25cに対して十分な押し付けを行い、かつ、ネジ締め後もその状態を保持することが必要である。特にネジで固定する場合、ネジの締め付けによって記録ヘッド17が図7で鎖線のように動いてしまうため、ノズル孔16の位置再現性が確保できないという課題がある。
【0080】
また、記録ヘッド17の交換時の作業時間や作業の困難さは、プリンタのダウンタイムの増加やCPPの増加に影響を及ぼすという課題もある。
【0081】
これらの課題に対して本発明では、記録ヘッド17をネジ18で固定する際、テーパ部材22a,22b,22cと位置決めピン25a,25b,25cによって記録ヘッド17全体が挟持(仮固定)されているから、図7の鎖線で示すように動くようなことがなく、ノズル孔16の位置再現性が確保できる。また、記録ヘッド17の交換作業が容易であるから、プリンタのダウンタイムの増加やCPPの増加を招くこともない。
【0082】
以上のように本発明では、簡単な手順で、高精度に記録ヘッドの交換ができるため、プリンタを保守管理するサービスマンだけでなく、一般のオペレータでも記録ヘッドの交換が可能である。
【0083】
前記実施形態では、記録ヘッド17の基準面19a,19b,19cを突き当てるために位置決めピン25a,25b,25cを設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばベースフレーム15に一体に設けられた段状あるいは突起状の突当部など、他の形状の突当部でも構わない。
【0084】
前記実施形態では、例えば図2に示すように、ベースフレーム15に設けられたストレートな位置決め穴30にテーパ部材22のシャフト部27を挿通し、一方、テーパ部材22のネジ部28をテーパ部材保持部34のネジ穴34aに螺合する構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばベースフレーム15の位置決め穴30と、テーパ部材22のシャフト部27に、それぞれネジ部を設けて、テーパ部材22をベースフレーム15にねじ込むことも可能である。この際、テーパ部材22の円錐形部26の上部はストレートなシャフト部として、そのシャフト部がテーパ部材保持部34に設けられた貫通穴に挿通した構造にすればよい。
【0085】
前記実施形態では、部材保持フレーム23に3つのテーパ部材22a,22b,22cを保持し、その部材保持フレーム23をベースフレーム15に取り付ける間接取り付け構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、部材保持フレーム23を用いずに、3つのテーパ部材22a,22b,22cを直接ベースフレーム15に取り付けることも可能である。この際前述のように、ベースフレーム15の位置決め穴30と、テーパ部材22のシャフト部27に、それぞれネジ部を設けて、テーパ部材22をベースフレーム15にねじ込む構造をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
前記実施形態では、本発明をインクジェットプリンタ(画像形成装置)に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば3次元の造形物を製造する3次元造形装置など他の技術分野においても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:記録用紙(ウェブ)、
2:給紙搬送ユニット、
3:作像ユニット、
4:排紙搬送ユニット、
8:インクカセット、
9、9a〜9d:インクジェッドヘッドユニット、
15:ベースフレーム、
16:ノズル孔、
17:記録ヘッド、
18a,18b:固定ネジ、
19a,19b,19c:基準面、
20a,20b:固定ネジ、
21:ヘッド押圧−スライド治具、
22a,22b,22c:テーパ部材、
23:部材保持フレーム、
24:固定ネジ、
25a,25b,25c:位置決めピン、
26:円錐形部、
26a:テーパ周面、
27:シャフト部、
28:ネジ部、
29:操作部、
30a,30b,30c:位置決め穴、
31:押圧受け部材、
32:ヘッド取り付け面、
33:段差部、
34:テーパ部材保持部材、
34a:ネジ穴、
X:主走査方向、
Y:副走査方向。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開平10−951144号公報
【特許文献2】特開2004−322606号公報
【特許文献3】特開2008−296518号公報
【特許文献4】特許第3894000号公報
【特許文献5】特開2007−76176号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有し、第1の側面と、その第1の側面と直交する第2の側面に前記ノズルの位置を規定するための基準面をそれぞれ設けた液滴吐出ヘッドの位置決め機構であって、
前記液滴吐出ヘッドの基準面を突き当てる突当部をそれぞれ設けて、ヘッド取り付け面上に位置決めされた前記液滴吐出ヘッドを固定するヘッド取り付け部材と、
前記液滴吐出ヘッドの基準面を前記ヘッド取り付け部材の突当部側に押圧するヘッド押圧−スライド治具を有し、
前記ヘッド押圧−スライド治具は前記ヘッド取り付け部材のヘッド取り付け面上に立設した状態で前記ヘッド取り付け面側に向けて徐々に径小になった円錐部を有し、
前記ヘッド押圧−スライド治具をヘッド取り付け面側に向けてねじ込むことにより、前記円錐部のテーパ周面を前記液滴吐出ヘッドの一部に当接して、ヘッド押圧−スライド治具のさらなるねじ込みにより、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材の突当部側に押圧・スライドして位置決めし、前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部と前記ヘッド取り付け部材の突当部の間で液滴吐出ヘッドを挟持した状態で、液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材に固定する構成になっていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記ヘッド取り付け部材の前記ヘッド押圧−スライド治具が設置される位置に位置決め穴が形成され、その位置決め穴に対して前記ヘッド押圧−スライド治具が着脱可能に設置される構成になっていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部が当接する前記液滴吐出ヘッドの部分に、押圧受け部材が液滴吐出ヘッドに対し着脱可能に載置され、前記押圧受け部材を介して前記ヘッド押圧−スライド治具により前記液滴吐出ヘッドを押圧・スライドする構成になっていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項4】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記液滴吐出ヘッドの第1の側面に第1の基準面を設け、前記第2の側面に所定の間隔をおいて第2の基準面ならびに第3の基準面を設け、
前記ヘッド取り付け部材に前記第1の基準面、第2の側面ならびに第3の基準面をそれぞれ突き当てる第1の突当部、第2の突当部ならびに第3の突当部をそれぞれ設けて、
前記ヘッド押圧−スライド治具は軸方向の途中に前記円錐部を有する軸体を備え、その軸体は、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第1の突当部と対向する位置に設置される第1の軸体と、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第2の突当部と対向する位置に設置される第2の軸体と、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第3の突当部と対向する位置に設置される第3の軸体からなり、
前記第1の軸体、第2の軸体ならびに第3の軸体を前記ヘッド取り付け面側に向けてそれぞれねじ込むことにより、各軸体の円錐部により前記液滴吐出ヘッドを前記第1の突当部、第2の突当部ならびに第3の突当部側に押圧・スライドして位置決めすることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記ヘッド取り付け部材の前記液滴吐出ヘッドを介して前記第1の突当部と対向する位置に第1の位置決め穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第2の突当部と対向する位置に第2の位置決め穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第3の突当部と対向する位置に第3の位置決め穴をそれぞれ設け、
前記ヘッド押圧−スライド治具が、前記第1の軸体、第2の軸体ならびに第3の軸体をそれぞれ所定の位置に回転可能に保持する保持部を有する部材保持フレームを備え、
前記各軸体の円錐部により下部に前記ヘッド取り付け部材にそれぞれ形成された各位置決め穴に挿通するシャフト部を設け、
前記各軸体の円錐部により上部に前記保持部のネジ穴に螺合するネジ部を設けて、
前記第1の軸体、第2の軸体ならびに第3の軸体を保持した部材保持フレームを前記ヘッド取り付け部材に着脱可能に装着する構成になっていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項6】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記ヘッド取り付け部材の前記液滴吐出ヘッドを介して前記第1の突当部と対向する位置に第1の位置決めネジ穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第2の突当部と対向する位置に第2の位置決めネジ穴を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記第3の突当部と対向する位置に第3の位置決めネジ穴をそれぞれ設け、
前記各軸体の円錐部により下部にネジ部を設けて、各軸体を前記位置決めネジ穴に着脱可能に装着する構成になっていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記軸体の頭部に当該軸体をねじ込むための操作部が設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項8】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記軸体の軸線と円錐形部のテーパ周面とのなす角をθt、前記位置決めピンの上端と液滴吐出ヘッドの接触点をP、前記円錐形部による液滴吐出ヘッドの押圧点をQとしたとき、前記接触点Pを通り、前記ヘッド取り付け面に対して水平な線と前記接触点Pと押圧点Qを結ぶ直線とのなす角をθhとしたとき、
前記角θtと角θhの関係がθh<θtとなるように構成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項9】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構において、
前記位置決めピンの上端と液滴吐出ヘッドの接触点をP、前記円錐形部による液滴吐出ヘッドの押圧点をQ、前記ヘッド取り付け面から接触点Pまでの垂直方向の距離をL、前記ヘッド取り付け面から押圧点Qまでの垂直方向の距離をLtとしたとき、
前記距離Lと距離Ltの関係がL>Ltとなるように構成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め機構。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構を用いて、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材に位置決め固体したことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッドの位置決め機構を用いて、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材に位置決め固定したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成装置において、前記液滴吐出ヘッドを複数個、記録用紙の搬送方向に並べて1ライン分の印字領域を確保したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
液滴を吐出するノズルを有し、第1の側面と、その第1の側面と直交する第2の側面に前記ノズルの位置を規定するための基準面をそれぞれ設けた液滴吐出ヘッドを、前記液滴吐出ヘッドの基準面を突き当てる突当部をそれぞれ設けたヘッド取り付け部材のヘッド取り付け面上に載置する液滴吐出ヘッド載置工程と、
前記ヘッド取り付け面上に立設した状態でそのヘッド取り付け面側に向けて徐々に径小になった円錐部を有するヘッド押圧−スライド治具を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記各突当部と対向する側に立設するヘッド押圧−スライド治具設置工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具をヘッド取り付け面側に向けてねじ込むことにより、前記円錐部のテーパ周面を前記液滴吐出ヘッドの一部に当接して、ヘッド押圧−スライド治具のさらなるねじ込みにより、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材の突当部側に押圧・スライドして位置決めするヘッド位置決め工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部と前記ヘッド取り付け部材の突当部の間で液滴吐出ヘッドを挟持した状態で、液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材に固定するヘッド固定工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具を前記ヘッド取り付け部材から外すヘッド押圧−スライド治具外し工程を
備えていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの位置決め方法。
【請求項14】
交換すべき液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材から取り外すヘッド取り外し工程と、
液滴を吐出するノズルを有し、第1の側面と、その第1の側面と直交する第2の側面に前記ノズルの位置を規定するための基準面をそれぞれ設けた新品の液滴吐出ヘッドを、前記液滴吐出ヘッドの基準面を突き当てる突当部をそれぞれ設けた前記ヘッド取り付け部材のヘッド取り付け面上に載置する液滴吐出ヘッド載置工程と、
前記ヘッド取り付け面上に立設した状態でそのヘッド取り付け面側に向けて徐々に径小になった円錐部を有するヘッド押圧−スライド治具を、前記液滴吐出ヘッドを介して前記各突当部と対向する側に立設するヘッド押圧−スライド治具設置工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具をヘッド取り付け面側に向けてねじ込むことにより、前記円錐部のテーパ周面を前記液滴吐出ヘッドの一部に当接して、ヘッド押圧−スライド治具のさらなるねじ込みにより、前記液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部材の突当部側に押圧・スライドして位置決めするヘッド位置決め工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具の円錐部と前記ヘッド取り付け部材の突当部の間で液滴吐出ヘッドを挟持した状態で、液滴吐出ヘッドをヘッド取り付け部材に固定するヘッド固定工程と、
前記ヘッド押圧−スライド治具を前記ヘッド取り付け部材から外すヘッド押圧−スライド治具外し工程を
備えていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−161992(P2012−161992A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24053(P2011−24053)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】