説明

液滴吐出ヘッドの異物除去方法および圧力調整弁の異物除去方法

【課題】液滴吐出ヘッド等の内部に混入した異物を、確実に除去することができる液滴吐出ヘッド等の異物除去方法を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッドに離接自在に密接するキャップに吸引流路を介して接続された真空吸引して、液体供給流路を介して液体タンクに接続された液滴吐出ヘッドのヘッド内流路37に通液して異物を吸引除去するに際し、液滴吐出ヘッドにキャップを密接・真空吸引して液体タンクより下流側の全流路に液体を通液する第1通液工程S1と、液体供給流路を閉止して液体供給流路およびヘッド内流路37を液体充填状態とする仮充填工程S2と、キャップを離脱し、キャップ内および吸引流路から液体を抜き取る液抜き工程S3と、液滴吐出ヘッドにキャップを再度密接して真空吸引を行う負圧生成工程S4と、真空吸引しつつ液体供給流路を開放して液体を通液する第2通液工程S5と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドに密接したキャップ等を介して液滴吐出ヘッドのヘッド内流路および圧力調整弁のバルブ内流路の異物を吸引除去する液滴吐出ヘッドの異物除去方法および圧力調整弁の異物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機能液の供給源となる2つのメインタンクから供給された機能液を貯留すると共に、複数の機能液滴吐出ヘッドに自然水頭を利用し機能液を供給する8つのサブタンクと、各サブタンクと各機能液滴吐出ヘッドとを接続する下流側流路と、各機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う吸引ユニットと、を有する機能液供給装置を搭載した液滴吐出装置が知られている(特許文献1参照)。
この液滴吐出装置では、まず、各機能液滴吐出ヘッドは、吸引ユニットに臨み、強制的な吸引を行うことにより各機能液滴吐出ヘッド内に機能液を充填する。その後、各機能液滴吐出ヘッドは、ワークに臨み、各サブタンクから機能液の供給を受けながら機能液滴を吐出し、ワークに対して描画処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液滴吐出装置では、この装置を設置したとき、機能液を異種の機能液と置換するとき、機能液滴吐出ヘッドの吐出不良や劣化等によりキャリッジ交換を行うとき等、機能液滴吐出ヘッドにキャッピングを行って機能液を強制吸引し、いわゆる初期充填を行う。この初期充填では、機能液滴吐出ヘッドのヘッド内流路や圧力調整弁のバルブ内流路(特に2次室)に、機能液に混入した気泡を含む異物が残存してしまうという問題が実際に生じていた。残存した異物は、機能液滴吐出ヘッドの吐出不良や圧力調整弁の動作不良の原因となる。この場合、吸引ユニットの吸引力を、より強くすることで係る問題は解決されるが、吸引ユニットの大幅な仕様変更を要するため、設置スペースの変更やこれに伴うコスト的な問題を生ずる。
【0005】
本発明は、液滴吐出ヘッドや圧力調整弁の内部に混入した異物を、確実に除去することができる液滴吐出ヘッドの異物除去方法および圧力調整弁の異物除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出ヘッドの異物除去方法は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドに離接自在に密接するキャップと、吸引流路を介してキャップに接続された真空吸引手段と、を用い、液体供給流路を介して液体タンクに接続された液滴吐出ヘッドのヘッド内流路に通液して、ヘッド内流路の異物を吸引除去する液滴吐出ヘッドの異物除去方法であって、液滴吐出ヘッドにキャップを密接すると共に真空吸引手段を駆動して、液体供給流路、ヘッド内流路、キャップ内および吸引流路に液体を通液する第1通液工程と、第1通液工程の後、液体供給流路を閉止して、液体供給流路およびヘッド内流路を液体充填状態とする仮充填工程と、仮充填工程の後、液滴吐出ヘッドからキャップを離脱させると共に真空吸引手段を駆動して、キャップ内および吸引流路から液体を抜き取る液抜き工程と、液抜き工程の後、液滴吐出ヘッドにキャップを再度密接すると共に真空吸引手段を駆動する負圧生成工程と、負圧生成工程の後、真空吸引手段の駆動を継続しつつ、液体供給流路を開放して、液体供給流路、ヘッド内流路、キャップ内および吸引流路に液体を通液する第2通液工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の圧力調整弁の異物除去方法は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドに離接自在に密接するキャップと、吸引流路を介してキャップに接続された真空吸引手段と、を用い、液体を液体タンクから液滴吐出ヘッドに供給する液体供給流路に介設した圧力調整弁のバルブ内流路に通液して、バルブ内流路の異物を吸引除去する圧力調整弁の異物除去方法であって、液滴吐出ヘッドにキャップを密接すると共に真空吸引手段を駆動して、液体供給流路、バルブ内流路、液滴吐出ヘッドのヘッド内流路、キャップ内および吸引流路に液体を通液する第1通液工程と、第1通液工程の後、液体供給流路を閉止して、液体供給流路、バルブ内流路およびヘッド内流路を液体充填状態とする仮充填工程と、仮充填工程の後、液滴吐出ヘッドからキャップを離脱させると共に真空吸引手段を駆動して、キャップ内および吸引流路から液体を抜き取る液抜き工程と、液抜き工程の後、液滴吐出ヘッドにキャップを再度密接すると共に真空吸引手段を駆動する負圧生成工程と、負圧生成工程の後、真空吸引手段の駆動を継続しつつ、液体供給流路を開放して、液体供給流路、バルブ内流路、ヘッド内流路、キャップ内および吸引流路に液体を通液する第2通液工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、仮充填工程から液抜き工程を経て真空吸引手段を駆動すると、液体タンクから真空吸引手段に至る全流路、特に、キャップ内および吸引流路内の空間は、強い負圧状態となる。この状態で上流側の液体供給流路を開放することにより、ヘッド内流路よりも上流側の液体は、負圧となった空間に引き込まれるように勢いよく流れ込む。これにより、液体は、通常の真空吸引手段による吸引時の流速よりも遥かに高い流速で流れるため、液体と共に異物を液体に乗せて流し去ることができ、ヘッド内流路に存する異物をヘッド内流路外へと確実に排出することができる。また、吸引力を高めるために特別な手段(機器等)を用いる必要がなく、既存の真空吸引手段で、簡単に且つ確実に異物を除去することができる。
【0009】
また、これらの場合、仮充填工程から第2通液工程に至る工程を複数回繰り返すことが好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、1度では除去できない異物であっても、高い流速の吸引を複数回繰り返すことで、これを確実に除去することが可能となる。これにより、異物除去率を高めることができる。
【0011】
この場合、圧力調整弁は、バルブハウジング内の1次室と2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を、2次室の1の面を構成する受圧膜体により大気圧基準で開閉し、液体タンクから1次室に供給された液体を、圧力調整し2次室を介して液滴吐出ヘッドに供給するものであることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、大気圧基準で圧力調整された液体を、液滴吐出ヘッドに対して安定供給することができる。
【0013】
また、この場合、異物が、気泡であることが好ましい。
【0014】
例えば、バルブ内流路内が空の圧力調整弁に対して液体を初期充填する場合や、液体の入れ替えする場合等において、圧力調整弁のバルブ内流路に気泡が入り込むことがある。しかし、この構成によれば、気泡を確実に排出することができる。これにより、適正な圧力制御特性を維持することができる。
【0015】
また、この場合、液体が、描画用のインクであることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、適正な圧力制御特性を維持できるため、液滴吐出ヘッドから安定したインクの吐出が可能となる。これにより、高品質な描画を安定して行うことができる。
【0017】
さらに、この場合、液体タンクから液滴吐出ヘッドに至る全流路に、液体を充填する充填工程を兼ねていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、圧力調整弁の異物除去と、液体タンクから液滴吐出ヘッドに至る全流路に対する液体の充填とを、同時並行に行えるため、液滴吐出ヘッドが適正に使用可能となるまでに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】本実施形態に係る液滴吐出装置に搭載されたキャリッジユニット(ヘッドユニット)を模式的に表した平面図である。
【図3】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図4】機能液滴吐出ヘッドのポンプ部を模式的に示した拡大斜視図である。
【図5】機能液供給ユニットおよび吸引ユニットを模式的に示した系統図である。
【図6】キャップユニットの平面図(a)および吸引ユニットの側面図(b)である。
【図7】吸引ユニットの配管系統図である。
【図8】キャリッジユニットに搭載された圧力調整弁の外観側面図である。
【図9】圧力調整弁の流入コネクター側の縦断面図(a)および流出コネクター側の縦断面図(b)である。
【図10】機能液滴吐出ヘッドおよび圧力調整弁の異物除去方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る機能液滴吐出ヘッドおよび圧力調整弁の異物除去方法を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、有機EL装置の各画素となる発光層やカラーフィルタのフィルタエレメント等を形成するものである。また、この液滴吐出装置では、機能液滴吐出ヘッドおよび圧力調整弁の内部に気泡等の異物が残留しないように、機能液を吸引し、導入する。
【0021】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース12a上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル12と、複数本の支柱11を介してX軸テーブル12を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース13a上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル13と、Y軸テーブル13に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド25が搭載された13個のキャリッジユニット14と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバー15と、チャンバー15を貫通して機能液滴吐出ヘッド25に機能液を供給する機能液供給ユニット16と、を備えており、チャンバー15の側壁の一部には、機能液供給ユニット16の主要部を為すメインタンク40等を収納するタンクキャビネット50が設けられている。この液滴吐出装置1は、制御装置17により装置全体が統括制御され、X軸テーブル12およびY軸テーブル13の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド25を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット16から供給された6色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0022】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット21、吸引ユニット22、ワイピングユニット23、吐出性能検査ユニット24から成るメンテナンス装置18を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド25の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド25の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル12とY軸テーブル13とが交わる部分にキャリッジユニット14を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル13とメンテナンス装置18(吸引ユニット22、ワイピングユニット23)が交わる部分にキャリッジユニット14を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド25の機能維持・機能回復を行う。
【0023】
図1および図2に示すように、各キャリッジユニット14は、R・G・B・C・M・Yの6色、各2個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド25と、12個の機能液滴吐出ヘッド25を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート26と、各機能液滴吐出ヘッド25に機能液を大気圧基準で供給する12個の圧力調整弁27と、を有するヘッドユニット19を備えている。各圧力調整弁27は、ヘッドプレート26上において機能液滴吐出ヘッド25の分割方向と直交する方向に6個ずつ2群に分割して配設されている。各キャリッジユニット14は、一対のY軸支持ベース13aに掛け渡されたブリッジプレート13bに吊設されている。各キャリッジユニット14は、ブリッジプレート13b上に配設されたサブタンク41から自然水頭を利用し、かつ圧力調整弁27を介して各機能液滴吐出ヘッド25に機能液が供給されるようになっている(図5参照)。なお、キャリッジユニット14の個数および各キャリッジユニット14に搭載される機能液滴吐出ヘッド25の個数は任意である。
【0024】
図3に示すように、機能液滴吐出ヘッド25は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針34を有する機能液導入部31と、機能液導入部31の側方に連なる2連のヘッド基板32と、ヘッド基板32の下方に連なる2連のポンプ部33と、ポンプ部33に連なるノズルプレート35と、を備えている。機能液導入部31の接続針34には、後述する2本の2次側チューブ43bが接続されている(図5参照)。ノズルプレート35のノズル面NFには、2列のノズル列NLが相互に平行に列設されており、各ノズル列NLは、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル36で構成されている。
【0025】
図4に模式的に示すように、ポンプ部33は、接着フィルム33a上に設置され、各吐出ノズル36に対応する圧電素子33bと、接着フィルム33aとノズルプレート35とを接合して、各吐出ノズル36に対応する圧力室33dを構成するシリコンキャビティ33cと、で構成されている。また、ポンプ部33には、圧力室33dに供給するための機能液を溜めると共に各接続針34に連通する共通室33eと、各圧力室33dと共通室33eとをつなぐ供給路33fと、が形成されている。そして、各圧力室33dは、各吐出ノズル36(圧電素子33b)に対応し、各吐出ノズル36に連通している。ヘッド基板32には、2つのコネクター32aが設けられ(図3参照)、制御装置17に連なるフレキシブルフラットケーブル(図示省略)が接続されている。そして、制御装置17から出力された駆動波形が各ポンプ部33(の各圧電素子33b)に印加されることで、各吐出ノズル36から機能液が吐出される。なお、各接続針34から各吐出ノズル36に至る経路を、以下「ヘッド内流路37」と呼ぶ。
【0026】
図1および図5に示すように、機能液供給ユニット16は、チャンバー15に併設のタンクキャビネット50に収容された6個(6色)のメインタンク40と、各ブリッジプレート13b上に配設された複数(13個)のサブタンク41と、メインタンク40と複数のサブタンク41とを接続するタンク側チューブ42と、各サブタンク41と各機能液滴吐出ヘッド25を接続する複数のヘッド側チューブ43と、を備えている。各ヘッド側チューブ43には、機能液滴吐出ヘッド25と共にキャリッジユニット14に搭載された圧力調整弁27が介設されており、ヘッド側チューブ43は、サブタンク41と圧力調整弁27とを接続する1次側チューブ43aと、圧力調整弁27と機能液滴吐出ヘッド25とを接続する2次側チューブ43bと、を有している。
【0027】
メインタンク40から送液された機能液は、タンク側チューブ42を通って各サブタンク41に貯留される。各サブタンク41の機能液は、各機能液滴吐出ヘッド25の駆動に応じ、ヘッド側チューブ43および圧力調整弁27を介して、機能液滴吐出ヘッド25に自然水頭で供給される。一方、1次側チューブ43aには、サブタンク41の近傍に位置してチューブ開閉バルブ43cが介設されており、キャリッジユニット14(ヘッドユニット19)を交換する場合には、このチューブ開閉バルブ43cを閉弁した後、1次側チューブ43aを圧力調整弁27から接続を解除(離脱)し、この状態で交換が行われる。
【0028】
図1に示すように、フラッシングユニット21は、一対の描画前フラッシングユニット21aと、定期フラッシングユニット21bと、を有し、描画処理直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド25の捨て吐出を受ける。吸引ユニット22は、13台のキャップユニット44を有し、各機能液滴吐出ヘッド25の吐出ノズル36から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット23は、吸引後の機能液滴吐出ヘッド25のノズル面NFを拭取る。吐出性能検査ユニット24は、機能液滴吐出ヘッド25の吐出の有無および飛行曲りを検査する。
【0029】
次に、図5ないし図7を参照して、吸引ユニット22について説明する。吸引ユニット22は、12個の機能液滴吐出ヘッド25に対応する12個の吸引キャップ44aをキャッププレート44bに配置した13台のキャップユニット44と、支持部材45aを介して各キャップユニット44を昇降させる13台の昇降機構45と、各キャップユニット44に連なると共に機能液の流路を有する13個の吸引流路系46と、各吸引流路系46に連なると共に2つの圧力水準の異なる(高圧・低圧)2つのエジェクター55に対応した2つの廃液タンク53を有する吸引機構47と、を備えている。また、吸引ユニット22は、吸引機構47等に制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備48と、各部から排気を行うための排気設備49と、を備えている。
【0030】
各キャップユニット44は、各色2個、計12個の機能液滴吐出ヘッド25に対応した吸引キャップ44aと、これらを一括して搭載したキャッププレート44bと、から成り、12個の吸引キャップ44aは、12個の機能液滴吐出ヘッド25と同じ並びで且つ同じ傾き姿勢で、キャッププレート44bに搭載されている(図6(a)参照)。各昇降機構45は、支持部材45aを介して吸引キャップ44aを直接昇降させる昇降シリンダ45bと、昇降シリンダ45bによる昇降をガイドする一対のリニアガイド45cと、これらを支持するベース部45dと、を有している(図6(b)参照)。昇降機構45は、吸引用の密接位置と、フラッシング用の離間位置と、ヘッドユニット19の交換やキャップユニット44の消耗品交換(メンテナンス)用の交換位置との間でキャップユニット44を3段階に昇降させる。
【0031】
図7に示すように、各吸引流路系46は、各キャップユニット44に連なるキャップ側流路51と、キャップ側流路51に連なるタンク側流路52と、から構成されている。キャップ側流路51は、12個の吸引キャップ44aに接続され、機能液の色別に合流して計6本になり、その各下流端で一次マニホールド51aに接続されている。タンク側流路52は、上流端を一次マニホールド51aに接続し、各二次マニホールド52aを介して、2つの圧力水準に対応した各廃液タンク53に、それぞれ接続されている。なお、キャップ側流路51およびタンク側流路52には、流路の開閉するキャップ側流路開閉バルブ51bおよびタンク側流路開閉バルブ52bが、それぞれ介設されている。
【0032】
吸引機構47の廃液タンク53は、高圧(第1水準)で使用する第1廃液タンク53aと、低圧(第2水準)で使用する第2廃液タンク53bとで構成されている。さらに、第2廃液タンク53bには、上記したフラッシングユニット21が、フラッシング流路54を介して接続されている。また、エジェクター55は、圧縮エアー供給設備48から一次側に圧縮エアーを導入すると共に、二次側にタンク連通流路56を介して接続した廃液タンク53から、排気設備49にエアーを排気することでタンク連通流路56内を減圧する。
【0033】
本実施形態における液滴吐出装置1の稼動停止時には、Y軸テーブル13により13個のキャリッジユニット14が13台の吸引ユニット22の位置まで移動し、キャップユニット44を密接位置に上昇させ、全機能液滴吐出ヘッド25に対し、いわゆるキャッピングが行われる。一方、稼動開始時には、全機能液滴吐出ヘッド25に対し、キャッピングされた状態でエジェクター55を駆動して吸引処理が行なわれ(初期充填)、続いてキャリッジユニット14単位でワイピング処理が行なわれる。そして、13台のキャリッジユニット14は順次、X軸テーブル12にセットされたワークW上に移動する。
【0034】
次に、図8および図9を参照して、圧力調整弁27について説明する。圧力調整弁27は、主要部を成す調整弁本体60と、調整弁本体60の流入側に差込み接合した流入コネクター61と、調整弁本体60の流出側に差込み接合した流出コネクター62と、を備えている。また、流入コネクター61には、サブタンク41に連なる1次側チューブ43aが接続され、他方、流出コネクター62には、機能液滴吐出ヘッド25に連なる2次側チューブ43bが接続されている。
【0035】
調整弁本体60は、略円板状で、かつ前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブハウジング64と、バルブハウジング64と共に1次室67を画成する蓋体65と、バルブハウジング64に受圧膜体78(ダイヤフラム)を固定することでバルブハウジング64と共に2次室68を画成するドーナツ状の膜体押え部材66と、で構成されており、バルブハウジング64の中心部には、1次室67および2次室68を連通する連通流路69が形成されている。
【0036】
1次室67は、受圧膜体78と同心となる略円柱形状に形成され、1次室67の上部には、1次室67から径方向斜めに延びる流入ポート71が形成されている。流入ポート71には、流入コネクター61が差し込み接合されており、流入コネクター61と1次室67とを連通する流入流路部72が形成されている(図9(a)参照)。また、1次室67の中心部には、連通流路69が開口しており、この開口周縁部を弁座として、1次室67側から連通流路69を開閉する弁体73が臨んでいる。この弁体73は、これと蓋体65との間に介設した弁体付勢ばね74によって、閉弁方向(2次室68側)に弱い力で付勢されている。
【0037】
2次室68は、受圧膜体78が膜体押え部材66によりバルブハウジング64に取り付けられ、バルブハウジング64に凹型形成した内面壁68aと受圧膜体78とによって、全体として受圧膜体78を底面とする円錐台形状に形成されている。すなわち、内面壁68aは、テーパー部位68bを有する有底すり鉢状に形成されている。2次室68の下部には、2次室68から真下に延びる流出ポート75が形成され、流出コネクター62が差し込み接合されている。そして、2次室68と流出コネクター62とを連通する流出流路部76が、テーパー部位68bに開口している(図9(b)参照)。また、2次室68の中心部には、上記した連通流路69が開口しており、この開口周縁部と受圧膜体78との間には、受圧膜体78を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね77が介設されている。
【0038】
受圧膜体78(ダイヤフラム)は、樹脂フィルムで構成した膜体本体78aと、膜体本体78aの中央部に接着した樹脂製の受圧板78bとで構成されている。受圧板78bは、膜体本体78aと同心の円板状に、且つ膜体本体78aに対し十分に小径に形成されており、その中央に上記の弁体73が離接するようになっている。
【0039】
このように構成された圧力調整弁27では、機能液の吐出等により2次室68の圧力が低くなると、受圧膜体78が後方(内側)に変形し、受圧板78bが弁体73を後方に押して開弁し、1次室67から2次室68に機能液が流入する。機能液の流入が進み2次室68の圧力が高まると、受圧膜体78が前方(外側)に変形し、弁体73が閉弁する。すなわち、圧力調整弁27は、大気圧と2次室68の内部圧力とのバランスにより受圧膜体78が変形することで連通流路69を開閉する。なお、流入コネクター61から流出コネクター62に至る機能液の流路を、以下「バルブ内流路79」と呼ぶ。
【0040】
ここで、本実施形態に係る液滴吐出装置1では、本装置を設置した際、ワークWへの描画を開始するに先立ち、サブタンク41から機能液滴吐出ヘッド25および圧力調整弁27に対して機能液を供給する、いわゆる初期充填を行う。この初期充填は、吸引ユニット22の複数の吸引キャップ44aにより、各機能液滴吐出ヘッド25のノズル面NFを封止(キャッピング)して、複数の吐出ノズル36から機能液を強制吸引することで行われる。また、この初期充填は、液滴吐出装置1を設置したとき以外にも、例えば、導入する機能液を異種のものに置換する場合や、機能液滴吐出ヘッド25の吐出不良や劣化等によりキャリッジユニット14の交換を行う場合等にも行われる。
【0041】
しかし、通常の強制吸引では、機能液滴吐出ヘッド25のヘッド内流路37や圧力調整弁27のバルブ内流路79(特に2次室68)に異物(機能液に混入した気泡を含む)が存在する場合に、これを確実に排出することができなかった。排出されずに残存した異物は、機能液滴吐出ヘッド25の吐出不良や圧力調整弁27の動作不良の原因となっていた。
そこで、本実施形態に係る液滴吐出装置1(吸引ユニット22)では、初期充填における強制吸引の際に、機能液滴吐出ヘッド25および圧力調整弁27から確実に異物を除去することができるように、以下のような方法(異物除去方法)を採用している。
【0042】
図5および図10を参照して、本実施形態に係る液滴吐出装置1の制御装置17による吸引ユニット22を用いた機能液滴吐出ヘッド25および圧力調整弁27の異物除去方法(主に気泡除去)について説明する。この異物除去方法は、サブタンク41から廃液タンク53までの全流路に機能液を通液する第1通液工程S1と、第1通液工程S1の後、ヘッド側チューブ43を閉止して、ヘッド側チューブ43、バルブ内流路79およびヘッド内流路37を機能液が充填された状態とする仮充填工程S2と、仮充填工程S2の後、吸引キャップ44a内、キャップ側流路51およびタンク側流路52から機能液を抜き取る液抜き工程S3と、液抜き工程S3の後、機能液滴吐出ヘッド25に吸引キャップ44aを再度密接すると共にエジェクター55を駆動する負圧生成工程S4と、負圧生成工程S4の後、エジェクター55の駆動を継続しつつ、ヘッド側チューブ43を開放して、サブタンク41から廃液タンク53までの全流路に機能液を通液する第2通液工程S5と、を備えている。
【0043】
まず、第1通液工程S1では、対応するキャップユニット44を、昇降機構45を駆動して密接位置に上昇させ、各機能液滴吐出ヘッド25のノズル面NFを封止すると共に、チューブ開閉バルブ43c、キャップ側流路開閉バルブ51bおよびタンク側流路開閉バルブ52bを開き、各サブタンク41と第1廃液タンク53aとを連通させる。そして、高圧で吸引処理を行うことで、各サブタンク41より下流側の全流路、つまり、ヘッド側チューブ43(液体供給流路)、バルブ内流路79、ヘッド内流路37、吸引キャップ44a内、キャップ側流路51およびタンク側流路52(吸引流路)に機能液を通す。なお、第2廃液タンク53bに連通させ、低圧で吸引してもよい。
【0044】
仮充填工程S2では、チューブ開閉バルブ43cを閉じ、機能液の通液(エジェクター55の駆動)を停止する。すると、サブタンク41より下流側の全流路には、機能液が充填された状態となる。なお、初期充填に供される機能液滴吐出ヘッド25および圧力調整弁27には、予め保管液が充填されている場合があり、かかる場合には、保管液を完全に抜き取って(機能液と置換)仮充填となる。
【0045】
続く液抜き工程S3では、各機能液滴吐出ヘッド25から吸引キャップ44aを離脱させ、高圧(低圧でもよい)で吸引を行い、吸引キャップ44a内、キャップ側流路51およびタンク側流路52に充填されている機能液を抜き取る。なお、チューブ開閉バルブ43cは閉じられているため、吸引キャップ44aより上流側の流路、つまり、ヘッド側チューブ43、バルブ内流路79およびヘッド内流路37には、通液した機能液が充填されたままの状態となっている。
【0046】
負圧生成工程S4では、再び、対応するキャップユニット44を密接位置に上昇させ、各機能液滴吐出ヘッド25をキャッピングする。これと共に、キャップ側流路開閉バルブ51bおよびタンク側流路開閉バルブ52bを開き、各吸引キャップ44aと第1廃液タンク53aとを連通させ、高圧で吸引処理を行う(なお、チューブ開閉バルブ43cは閉止状態維持)。これにより、各サブタンク41より下流側の全流路に負圧を作用させる。特に、吸引キャップ44a内、キャップ側流路51内およびタンク側流路52内の各空間(圧縮流体)は、強い負圧状態となる。
【0047】
そして、第2通液工程S5では、負圧生成工程S4において形成した負圧を維持した状態で、且つ、エジェクター55を駆動したまま、チューブ開閉バルブ43cを開く。すると、吸引キャップ44aより上流側の流路に充填されている機能液は、負圧となった下流側の空間に引き込まれるように勢いよく流れ込む。これにより、機能液は通常の吸引(高圧)処理時の流速よりも遥かに高い流速で流れるため、ヘッド内流路37およびバルブ内流路79に存する異物(気泡等)は、機能液と共に廃液タンク53へと確実に排出することができる。つまり、異物を機能液に乗せて流し去ることができる。また、このような異物除去方法によれば、吸引力を高めるために特別な手段(機器等)を用いる必要がなく、既設のエジェクター55等の吸引手段で、簡単に且つ確実に異物を除去することができる。
【0048】
この後、再び仮充填工程S2に戻り、それ以降の工程(仮充填工程S2から第2通液工程S5まで)を、更に4回繰り返す。つまり、この異物除去方法では、上記の流速を速めた強制吸引を、合計5回繰り返すことで、1度では除去できない異物であっても確実に除去することが可能となり、この異物除去方法による異物除去率を、更に高めている。なお、吸引の繰り返し回数は任意であり、5回より多くても少なくてもよい。
【0049】
また、最後の5回目の第2通液工程S5の後、各サブタンク41より下流側の全流路には、気泡等の異物のない状態で機能液が充填されている。つまり、この異物除去方法が終了することにより、機能液滴吐出ヘッド25および圧力調整弁27に対する機能液の初期充填が終了する。すなわち、この異物除去方法は、機能液滴吐出ヘッド25および圧力調整弁27に対する機能液の充填工程を兼ねている。
【0050】
以上の構成によれば、大気圧基準で圧力調整された異物のない機能液を、機能液滴吐出ヘッド25に対して安定供給することができる。また、機能液滴吐出ヘッド25から不良吐出のない、安定した機能液の吐出が可能となるため、ワークWに対して高品質な描画を行うことができる。なお、本実施形態では、キャリッジユニット14の交換に使用するチューブ開閉バルブ43cを利用して、異物除去を行っているが、単にオペレーターが、1次側チューブ43aを摘んで流路閉止し、異物除去動作を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
22:吸引ユニット、25:機能液滴吐出ヘッド、27:圧力調整弁、37:ヘッド内流路、41:サブタンク、43:ヘッド側チューブ、43c:チューブ開閉バルブ、44a:吸引キャップ、51:キャップ側流路、51b:キャップ側流路開閉バルブ、52:タンク側流路、52b:タンク側流路開閉バルブ、53:廃液タンク、55:エジェクター、79:バルブ内流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の液滴吐出ヘッドに離接自在に密接するキャップと、吸引流路を介して前記キャップに接続された真空吸引手段と、を用い、
液体供給流路を介して液体タンクに接続された前記液滴吐出ヘッドのヘッド内流路に通液して、前記ヘッド内流路の異物を吸引除去する液滴吐出ヘッドの異物除去方法であって、
前記液滴吐出ヘッドに前記キャップを密接すると共に前記真空吸引手段を駆動して、前記液体供給流路、前記ヘッド内流路、前記キャップ内および前記吸引流路に液体を通液する第1通液工程と、
前記第1通液工程の後、前記液体供給流路を閉止して、前記液体供給流路および前記ヘッド内流路を液体充填状態とする仮充填工程と、
前記仮充填工程の後、前記液滴吐出ヘッドから前記キャップを離脱させると共に前記真空吸引手段を駆動して、前記キャップ内および前記吸引流路から前記液体を抜き取る液抜き工程と、
前記液抜き工程の後、前記液滴吐出ヘッドに前記キャップを再度密接すると共に前記真空吸引手段を駆動する負圧生成工程と、
前記負圧生成工程の後、前記真空吸引手段の駆動を継続しつつ、前記液体供給流路を開放して、前記液体供給流路、前記ヘッド内流路、前記キャップ内および前記吸引流路に前記液体を通液する第2通液工程と、を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの異物除去方法。
【請求項2】
前記仮充填工程から前記第2通液工程に至る工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの異物除去方法。
【請求項3】
インクジェット方式の液滴吐出ヘッドに離接自在に密接するキャップと、吸引流路を介して前記キャップに接続された真空吸引手段と、を用い、
液体を液体タンクから前記液滴吐出ヘッドに供給する液体供給流路に介設した圧力調整弁のバルブ内流路に通液して、前記バルブ内流路の異物を吸引除去する圧力調整弁の異物除去方法であって、
前記液滴吐出ヘッドに前記キャップを密接すると共に前記真空吸引手段を駆動して、前記液体供給流路、前記バルブ内流路、前記液滴吐出ヘッドのヘッド内流路、前記キャップ内および前記吸引流路に前記液体を通液する第1通液工程と、
前記第1通液工程の後、前記液体供給流路を閉止して、前記液体供給流路、前記バルブ内流路および前記ヘッド内流路を液体充填状態とする仮充填工程と、
前記仮充填工程の後、前記液滴吐出ヘッドから前記キャップを離脱させると共に前記真空吸引手段を駆動して、前記キャップ内および前記吸引流路から前記液体を抜き取る液抜き工程と、
前記液抜き工程の後、前記液滴吐出ヘッドに前記キャップを再度密接すると共に前記真空吸引手段を駆動する負圧生成工程と、
前記負圧生成工程の後、前記真空吸引手段の駆動を継続しつつ、前記液体供給流路を開放して、前記液体供給流路、前記バルブ内流路、前記ヘッド内流路、前記キャップ内および前記吸引流路に前記液体を通液する第2通液工程と、を備えたことを特徴とする圧力調整弁の異物除去方法。
【請求項4】
前記圧力調整弁は、バルブハウジング内の1次室と2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を、前記2次室の1の面を構成する受圧膜体により大気圧基準で開閉し、前記液体タンクから前記1次室に供給された前記液体を、圧力調整し前記2次室を介して前記液滴吐出ヘッドに供給するものであることを特徴とする請求項3に記載の圧力調整弁の異物除去方法。
【請求項5】
前記仮充填工程から前記第2通液工程に至る工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項3または4に記載の圧力調整弁の異物除去方法。
【請求項6】
前記異物が、気泡であることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の圧力調整弁の異物除去方法。
【請求項7】
前記液体が、描画用のインクであることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の圧力調整弁の異物除去方法。
【請求項8】
前記液体タンクから前記液滴吐出ヘッドに至る全流路に、前記液体を充填する充填工程を兼ねていることを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の圧力調整弁の異物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−214615(P2010−214615A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60952(P2009−60952)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】