説明

液滴吐出不良検出装置、画像形成装置および液滴吐出不良検出方法

【課題】複数のノズルの吐出不良を高精度かつ短時間で検出することのできる液滴吐出不良検出装置、画像形成装置および液滴吐出不良検出方法を得る。
【解決手段】複数のノズルから同時かつ異なる速度で液滴を吐出するよう液滴吐出ヘッドを制御するヘッド制御部と、各ノズルから吐出される液滴の吐出方向と交差し、かつ同時に吐出される液滴の全てを同時に照射するように光を照射する発光部と、吐出された液滴が光に照射された際に生じる散乱光を受光して散乱光の光量に応じた検出信号を出力する受光部と、受光部から出力された検出信号の強度と所定の閾値とを比較することで各ノズルの液滴吐出状態を検出する液滴吐出検出手段と、を備える液滴吐出不良検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出不良検出装置、それを備える画像形成装置および液滴吐出不良検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、紙の幅ほどの長さを持つヘッド(ラインヘッド)を備えた記録装置においては、印字時には通常ヘッドを動かさず、その真下に紙を搬送し、その際にインクを吐出して画像形成を行っている。このような印字方法を取るため、ヘッドのノズルのつまりなどによりインクが吐出されなくなると、画像形成が正常に行えなくなる。
【0003】
そこで、ノズルのつまりを解消する必要があるが、そのために、まずノズルの不吐出状態の検知が行われる。その検知手段として、レーザダイオード(LD),フォトダイオード(PD)の組からなるセンサを用い、1列のノズルから1つずつ順にインク滴を吐出させて、LDから発せられたレーザ光がインク滴と交差した際に生ずる直接光または散乱光をPDにて検出することにより、ノズルの不吐出状態(欠損)を検知する技術が知られている。
【0004】
近年、ヘッドの高集積化、高密度化に伴い、ノズルの欠損を検知する時間が大幅に増加するようになっている。このような状況にあることから、例えば特許文献1に開示の技術では、検出光の光軸方向を液滴吐出口の並び方向に対して傾けるとともに液滴の吐出タイミングを制御する、或いは複数の液滴の吐出タイミングをずらして吐出させる制御を行うことにより、複数の吐出液滴を検出光の断面内において互いに重ならない状態で存在させて、飛翔液滴の検出を行う検出系を採用し、異なる液滴吐出口から吐出される複数の液滴を同時に検出することにより、検出時間の短縮を達成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の、各ノズルから1つずつ順にインク滴を吐出させてノズルの欠損を検出するという手法では、ヘッドの高集積化、高密度化が行われている状況では、ノズルの欠損を検知するのに時間がかかり過ぎるという問題があった。また、特許文献1の技術では、複数のノズルからインク滴を同時に吐出して、液滴の個数を判定することはできるが、どのノズルに欠損が生じているのかまで判定することはできない。
【0006】
また、特許文献1に記載されている方法では、ライン型インクジェットプリンタ等に用いられているノズル列の長いヘッドに対して吐出不良の検出を行う場合、複数の吐出液滴が検出光の断面内において重ならないように光軸を調整することは非常に困難である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、複数のノズルの吐出不良を高精度かつ短時間で検出することのできる液滴吐出不良検出装置、画像形成装置および液滴吐出不良検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数のノズルから同時かつ異なる速度で液滴を吐出するよう液滴吐出ヘッドを制御するヘッド制御部と、各ノズルから吐出される液滴の吐出方向と交差し、かつ同時に吐出される液滴の全てを同時に照射するように光を照射する発光部と、吐出された液滴が光に照射された際に生じる散乱光を受光して散乱光の光量に応じた検出信号を出力する受光部と、受光部から出力された検出信号の強度と所定の閾値とを比較することで各ノズルの液滴吐出状態を検出する液滴吐出検出手段と、を備える液滴吐出不良検出装置であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドと、上述した液滴吐出不良検出装置を備える画像形成装置であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドの吐出状態を検出する液滴吐出不良検出方法であって、吐出不良の検出対象となる各ノズルから同時かつ異なる速度で液滴を吐出する吐出工程と、液滴吐出ヘッドの各ノズルから吐出される液滴の吐出方向と交差し、かつ同時に吐出される液滴の全てを同時に照射するように発光素子から光を照射する発光工程と、吐出された液滴が光に照射された際に生じる散乱光を受光して散乱光の光量に応じた検出信号を出力する受光工程と、受光工程において出力された検出信号の強度と所定の閾値とを比較することで各ノズルの液滴吐出状態を検出する液滴吐出検出工程と、を備える液滴吐出不良検出方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のノズルの吐出不良を高精度かつ短時間で検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、インクジェト記録装置の所定の印字位置におけるヘッドユニットを側面から見た概略図である。
【図3】図3は、インクジェト記録装置の所定の印字位置におけるヘッドユニットを上面から見た概略図である。
【図4】図4は、インクジェト記録装置の所定の印字位置におけるヘッドユニットを搬送方向から見た概略図である。
【図5】図5は、インクジェット記録装置に備える吐出不良検知ユニットを示す、(A)は側面図、(B)は(ノズル側から見た)平面図である。
【図6】図6は、実施例1の液滴吐出不良検知方法を示した図である。
【図7】図7は、検出対象となる3つのノズル同士が隣接している様子を示す図である。
【図8】図8は、同時に吐出された全液滴が同時にレーザ光内に存在する様子を示す図である。
【図9】図9は、ヘッドコントロールボードの構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、ヘッドコントロールボードによる駆動波形の印加制御を説明する図である。
【図11】図11は、実施例1における、受光ユニットが捉えた散乱光の強さに応じて発する検出信号の強度と、吐出液滴数を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例1の液滴吐出不良検知方法を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施例2の液滴吐出不良検知方法を示す図である。
【図14】図14は、実施例2における、受光ユニットが捉えた散乱光の強さに応じて発する検出信号の強度と、吐出液滴数を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例2の液滴吐出不良検知方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
はじめに、画像形成装置の例として、印字ヘッドをライン上に配置したインクジェット記録装置の概略構成を、図1を用いて説明する。図1は、印字ヘッドをライン上に配置したインクジェット記録装置の全体の概略構成を示す図である。
【0015】
インクジェット記録装置10は、大まかに印字ヘッド11(以下、ヘッド11と記す)を制御し印字を行う印字ヘッドユニット12(以下、ヘッドユニット12と記す)と、用紙を給紙トレイから給紙し搬送させるための給紙ユニット14と、ヘッド11のメンテナンス等を行うための維持ユニット13と、ヘッドユニット12を制御するヘッドコントロールボード19や各ユニットを制御する各種コントロールボード20から構成されている。インクジェット記録装置10は、ラインプリンタとも呼ばれ、印字時には、ライン上に印字幅分のヘッド11を固定して配置し、搬送されてきた記録用紙に印字するようになっている。
【0016】
ヘッドユニット12には、通常、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを吐出する複数のヘッド11を用紙搬送方向に配置し、インク吐出方向を下方に向けて装着している。なお、インク色の数及び用紙搬送方向に対しての配列順序はこれに限るものではない。ヘッドユニット12に搭載されるヘッド11は、複数のものが千鳥状に並べて配置されるものであるが、ラインヘッドとして、1つのユニットを搭載しても構わない。
【0017】
また、図面には記載していないが、ヘッドユニット12には、各ヘッド11に各色のインクを供給するためのサブタンクを搭載している。この各色のサブタンクにはインク供給チューブを介して、カートリッジ装填部に装着されたインクカートリッジ(インクタンク)からインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部にはインクカートリッジ(インクタンク)内のインクを送液するための供給ポンプユニットが設けられている。
【0018】
ヘッド11には、インクを吐出するための複数のノズルが配置される。インクの吐出は、後述するヘッドコントロールボード19から与えられる制御信号により、ヘッド11内部の図示せぬアクチュエータ(例えば、圧電素子等)が動作することで行われる。
【0019】
通常、インクジェット記録装置10のヘッドユニット12は、ヘッド11のノズル開口部のインク乾燥防止のため、維持ユニット13でキャップした状態で待機している。ユーザが印字開始を始めるとヘッドユニット12は維持ユニット13でのキャップを解除し、印字開始するためのホームポジションへ移動する。印字は通常この位置で固定して行われる。印字が終わり、ヘッドユニット12をキャップさせたい場合は、待機状態として維持ユニット13へ移動しキャップさせる。長時間印字させない場合や電源を落とす場合は、この維持ユニット13でヘッド11のノズル開口部をキャップした状態にしておく。
【0020】
図1の給紙ユニット14には、用紙をセットする給紙トレイが搭載されており、この給紙トレイから用紙を1枚ずつ分離し給送するようになっている。この給紙トレイは任意の用紙サイズに適用できるよう構成されており、用紙がセットされた際にセンサで検知して、用紙サイズと用紙の方向(縦か横か)も判別できるようになっている。また、センサにより給紙トレイの用紙が無くなった時や給紙時のエラーも検知できるようになっている。また、連続で印字する時は、紙間も変更可能であり、用紙サイズや搬送速度(印字速度)に応じてその都度調整することも可能である。
【0021】
給紙された用紙は、エアー吸着用ファン(不図示)によって発生される負圧によって、図2および図3に示すエアー吸着用の搬送ベルト16に吸着され一枚毎に搬送される。搬送ベルト16には、用紙を搬送させ吸引するための穴が開いている。用紙がヘッドユニット12を通過する時に各ヘッド11よりインクを吐出させて文字や画像を印字する。印字終了した用紙は、排紙ユニット(不図示)へ搬送され排紙トレイに蓄積される。
【0022】
また、空吐出する際の廃液インクを収める廃液ユニット18がヘッドユニット12の下の所定の位置に配置されている。通常、この廃液ユニット18は満タンになるとセンサで検知しユーザが廃液として捨てるようになっている。
【0023】
ヘッドコントロールボード19は、PC30からの印刷データに基づきヘッド11の各ノズルのアクチュエータを制御することで、各ノズルのインク滴の吐出やインク滴の吐出量、吐出速度を制御する。また、後述の吐出検知の際の制御も行う。このヘッドコントロールボード19、および各種コントロールボード20は、CPUや、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ又はDRAMなどの揮発性メモリ等のメモリを実装した制御手段である。ヘッドコントロールボード19のメモリには、ヘッドユニット12を制御するための制御プログラムや、後述の吐出検知を制御するためのプログラム等が記憶されている。
【0024】
各ユニットと情報処理装置であるPC30とはUSBで接続され、PC30と各ユニットとのデータやコマンドのやりとりはUSB通信によって行われる。本インクジェット記録装置10では、給紙ユニット14と維持ユニット13はRS232Cで通信しているが、共通化を図るため、RS232CをUSBに変換している。これは市販の変換ケーブルを使用しており、これによりPC30とは全てのユニットがUSB通信できることになり、PC30では、接続された全てのユニットを異なるUSB機器として認識し、各識別IDにより通信、制御することができる。
【0025】
また、ヘッドユニット12は、複数のヘッド11を制御できるヘッドコントロールボード19をそれぞれUSBで接続し、USBハブでまとめてPC30と接続するようになっている。図1では、ライン上に配置した10個のヘッド11を1枚のヘッドコントロールボード19で制御するように示しているが、印字サイズ等により1枚のヘッドコントロールボード19で制御できるヘッド11の数は10個に限定するものではない。
【0026】
上記構成では、ヘッド11の構成を変更したい場合、それに対応したヘッドコントロールボード19をUSBで接続するだけで変更に対応することができるようになる。また、PC30からみれば、USB機器として認識されるので今まで通り容易に対応が可能となる。
【0027】
また、本実施形態では、給紙ユニット14からの所定のディスクリート信号をヘッドコントロールボード19にパラレルに接続する構成としている。よってヘッドコントロールボード19を追加する場合、このディスクリート信号をパラレルに接続していけば容易に対応することができる。
【0028】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置に設けられている、液滴吐出不良検出装置としての吐出不良検知ユニットについて図2〜図5を用いて説明する。
【0029】
吐出不良検知ユニットは、発光ユニット21、受光ユニット22、および、ヘッドの制御を行うヘッドコントロールボード19(図1参照)により構成されている。
【0030】
図2および図3は、本実施形態のインクジェット記録装置のヘッドユニット12と吐出不良検知ユニットの位置関係を示した図であり、図2は印字ユニットを側面から見た図、図3は印字ユニットをヘッドユニット12側から見た図である。
【0031】
ヘッドユニット12には、計8組の吐出不良検知ユニットがそれぞれのヘッド列毎に搭載されており、ヘッド11全体のノズルに応じた吐出検知を行えるようになっていて、ノズルの欠損を検知することができる。
【0032】
ヘッドユニット12の両端には、発光ユニット21と受光ユニット22を搭載している。印字位置では、ヘッド11−搬送ベルト16間のギャップは通常1mm程度とされている。このギャップ間で吐出不良検知を行うが、印字直前に吐出不良検知を行っても問題のない場合には、そのまま搬送ベルト16を動作させ印字用紙を搬送させて印字が行われる。また、印字直前の吐出不良検知でノズル欠損等が判明した時は、印字ユニットを維持位置へ移動し、維持ユニット13で欠損のあるノズルのみ回復動作を行うものとする。
【0033】
なお、維持位置(維持ユニット13上の所定位置)は、ヘッド11のクリーニング等の回復動作を行う場所であり、前述のように、この維持ユニット13にはヘッド11を乾燥等から防ぐためのキャップがあって、印字を行わない場合は通常ヘッド11はこのキャップで塞いでおくようになっている。
【0034】
図4は、ヘッドユニット12を搬送方向から見た概略図である。ヘッドユニット12の両端には、それぞれ吐出検知用の発光ユニット21と受光ユニット22がある。この発光ユニット21及び受光ユニット22をヘッドユニット12に取り付ける際は、光軸調整を行い精度よく取り付けることが必要であり、通常、取付用の冶具等を用いて取付けを行っている。発光ユニット21のLDから発せられるレーザ光は、ヘッド11−搬送ベルト16間のギャップを通る。従って、このレーザ光は、ヘッド11の各ノズルから吐出されるインク滴の吐出方向と交差するように照射されることになる。そして、このレーザ光がヘッド11から吐出されたインク滴にあたって散乱された散乱光を受光ユニット22のPDで受光する。なお、本実施形態では、レーザ光に反射した間接光(散乱光)をみる間接法により吐出検出を行うので、PDは、レーザ光の光軸からずれた位置に設けられる。この受光側のPDにて液滴を検知した時にその出力電圧レベルが上がることにより液滴の吐出を検出することができる。なお、PDの、光軸からずらした位置、距離によってそのPDの出力電圧レベルは変わる。
【0035】
図5(A)、図5(B)はそれぞれ、ヘッドコントロールボード19を除く吐出不良検知ユニットの側面図、および(ノズル側から見た)平面図である。
【0036】
吐出不良検知ユニットは、発光ユニット21のLDから照射されるレーザ光を、ヘッド11のノズルから吐出されるインク滴と交差するように照射し、吐出されたインク滴にレーザ光が照射された際に生じる散乱光を受光ユニット22のPDで受光して、このPDから出力される出力電圧レベルからインク滴の吐出を判定することにより、液滴吐出状態を検出する。液滴の吐出制御およびノズル欠損の判定は、ヘッドコントロールボード19により行われる。
【0037】
発光ユニット21は、LD、コリメートレンズ23、アパーチャ24を備え、LDが発するレーザ光はコリメートレンズ23とアパーチャ24を介して照射される。
【0038】
受光ユニット22は、PDを備え、吐出されたインク滴にレーザ光が照射された際に生じる散乱光をPDにより受光して、インク滴の吐出を検出する。PDは散乱光を受光するため、レーザ光が直接PDに入射しないよう、PDがレーザ光の光軸上から外れる位置となるように受光ユニット22は設置される。
【0039】
ヘッド11は、図6(B)に示すように、ノズル列1、ノズル列2の2列のノズル列を備える。発光ユニット21から照射されるレーザ光の幅は、ノズル列間の幅よりも広く、ノズル列1、ノズル列2から吐出されるインク滴は全てこのレーザ光によって照射される。
【0040】
上述した構成を備えた吐出不良検知ユニットによる液滴吐出不良検出方法の各実施例について、以下に説明する。
【0041】
(実施例1)
液滴吐出不良検知方法の実施例1について、図6〜10を用いて説明する。
【0042】
図6は、実施例1の液滴吐出不良検知方法を示した図である。検出対象ノズルとして同じノズル列から3つのノズルが選択される。図7に示すように検出対象となる3つのノズル同士は隣接している。全てのノズルの吐出不良検出を行う場合は、ノズル列1の端から3つのノズルが選択され、順次検出対象ノズルが変更されていく。ノズル列1の吐出不良検出終了後、ノズル列2の吐出不良検出が同様に行われる。なお、ノズルからの液滴の吐出に関する制御は全てヘッドコントロールボード19により行われる。
【0043】
3つの検出対象ノズルからは、それぞれV1、V2、V3の異なる速度の液滴が同時に吐出される。各液滴は全て同じ直径となっている。また、各速度の関係はV1>V2>V3であり、それぞれの液滴の速度差をX、同時に液滴を吐出するノズルの数をnとすると、速度の関係はV=Vn−1+Xと表すことができる。
【0044】
また、Xは、図6または図8に示すように、同時に吐出された全液滴が同時にレーザ光内に存在することが可能となるように設定される。
【0045】
レーザ光断面において、各液滴間の距離をd、液滴が吐出されてからの時間をtとすると、各吐出液滴間の距離はd=Xtとなる。そのためXは、レーザ光径をW、液滴の直径をr、もっとも速度の速い液滴がレーザ光を通過し終える時間をTとしたとき、W>XT、XT>rを満たすように設定される。
【0046】
ここで、液滴の吐出速度の制御方法について説明する。図9はヘッドコントロールボード19の構成を示すブロック図である。ヘッドコントロールボード19は、1印刷周期内に複数の駆動パルスで構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部401と、印刷画像に応じた印加波形データと、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部402とを備えている。
【0047】
なお、滴制御信号M0〜M3は、ヘッドドライバ310の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ415の開閉を滴毎に指示する信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0048】
ヘッドドライバ310は、データ転送部402からの転送クロック(シフトクロック)およびシリアル画像データ(印加画像データ)を入力するシフトレジスタ411と、シフトレジスタ411の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路412と、印加波形データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ413と、デコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ415が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ414と、レベルシフタ414を介して与えられるデコーダ413の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ415とを備えている。
【0049】
アナログスイッチ415には、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部401からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号M0〜M3をデコーダ413でデコードした結果に応じてアナログスイッチ415がオンになることで、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
【0050】
図10は、ヘッドコントロールボード19による駆動波形の印加制御を説明する図である。図9を用いて説明した滴制御信号M0からM3は、それぞれ図10の非駆動、速度V1の滴、速度V2の滴、速度V3の滴の制御信号に対応している。
【0051】
図10に示すように、各ノズルの圧電素子の駆動を制御するためには、図示する滴制御信号を用いる。所望の駆動波形の滴制御信号をヘッドドライバに入力することにより、滴制御信号のH、Lに応じてアナログスイッチが開閉するため、駆動波形を部分的に使用して圧電素子に所望の駆動波形を印加することができる。
【0052】
なお、この吐出制御方法では、各ノズルから速度の異なる液滴を吐出する際、吐出タイミングは異なるが、この吐出タイミングの差は液滴吐出速度の差に対し非常に小さいものであり、同時に吐出しているとみなすことができる。
【0053】
上述したように、各ノズルから吐出される液滴の速度が異なるため、検出時、それぞれの液滴はレーザ光断面内での位置が異なる。そのため、吐出した全液滴を同時にレーザ光によって照射することが可能となる。レーザ光が照射されたそれぞれの液滴から散乱光が生じるため、吐出滴数が多いほど散乱光の光量は多くなる。本実施例に係る液滴吐出不良検知方法は、この吐出液滴数と散乱光の関係を用いて液滴の吐出不良を検知する。
【0054】
図11は、実施例1において、受光ユニット22が捉えた散乱光の強さに応じて発する検出信号の強度と、吐出液滴数を示すグラフである。
【0055】
ヘッド11に吐出信号が入力されると、検出対象ノズルから速度の異なる液滴が同時に吐出される。吐出された液滴がレーザ光を通過するときに生じる散乱光が、受光ユニット22により検出されると、図11に示すような検出信号が出力される。
【0056】
検出対象ノズルから吐出される液滴のそれぞれにレーザ光が照射され、生じる散乱光が受光ユニット22により受光される。受光ユニット22からの検出信号は、受光する散乱光の光量に応じて異なる。ノズルに欠損がある場合には液滴が吐出されず、散乱光が生じないため、検出信号は出力されない。そして、吐出液滴数が多いほど受光部が受光する散乱光の光量は多くなり、検出信号のレベルは高くなる。
【0057】
そのため、吐出ノズル数により受光ユニット22からの検出信号レベルがそれぞれ異なるため、図示するように吐出液滴数毎の散乱光の光量に対応する3つの閾値、すなわち散乱光を発する吐出液滴数が1つの場合、2つの場合および3つの場合の閾値を設定することで、吐出ノズル数を検出することができる。
【0058】
図12は、実施例1の液滴吐出不良検知方法を示すフローチャートである。なお、この検知の際の制御およびノズル欠損の判断は、ヘッドコントロールボード19によって行われ、これは後述する実施例2においても同様である。
【0059】
液滴吐出不良検出が開始されると、ステップS1において、検査対象となる3つのノズルから、それぞれ速度の異なる液滴が同時に吐出される。吐出された液滴に対して、発光ユニット21のLDからレーザ光が照射される。
【0060】
次に、ステップS2において、受光した液滴からの散乱光を受光ユニット22により受光され、散乱光の強度に応じた検出信号が出力され、その出力信号が閾値1と比較される。この閾値1は3つの液滴にレーザ光が照射された場合の散乱光、すなわち液滴吐出不良検出対象となる3つのノズルの全てから液滴が吐出されている場合の散乱光の強度を示す閾値である。
【0061】
検出信号の強度が閾値1以上である場合、ステップS3において吐出不良の生じているノズルは無いと判断され、ステップS4へと進む。
【0062】
次に、ステップS4において、全ノズルに対する液滴吐出不良検出が完了したか否かの判断がされる。全ノズルの液滴吐出不良検出が終了していない場合には、ステップS10に進み検出対象となるノズルの変更が行われ、再びステップS1へと進む。ステップS4において全ノズルの液滴吐出不良検出が完了していると判断された場合には、液滴吐出不良検出が終了する。
【0063】
一方、ステップS2において出力信号が閾値1を超えなかった場合には、ステップS5に進み、出力信号が閾値2と比較される。閾値2は2つの液滴にレーザ光が照射された場合の散乱光、すなわち液滴吐出不良検出対象となる3つのノズルのうち1つに吐出不良(以下「欠損」ともいう。)が生じている場合の散乱光の強度を示す閾値である。
【0064】
検出信号の強度が閾値2以上である場合、ステップS6において1つのノズルに欠損が生じていると判断され、ステップS4へと進む。ステップS4以降の処理は上述したものと同様であるためここではその説明は省略する。
【0065】
一方、ステップS5において出力信号が閾値2を超えなかった場合には、ステップS7に進み、出力信号が閾値3と比較される。閾値3は1つの液滴にレーザ光が照射された場合の散乱光、すなわち液滴吐出不良検出の対象となる3つのノズルのうち2つに欠損が生じている場合の散乱光の強度を示す閾値である。
【0066】
検出信号の強度が閾値3以上である場合、ステップS8において2つのノズルに欠損が生じていると判断され、ステップS4へと進む。ステップS4以降の処理は上述したものと同様であるためここではその説明は省略する。
【0067】
一方、ステップS7において出力信号が閾値3を超えなかった場合には、ステップS9において3つのノズルに欠損が生じていると判断され、ステップS4へと進む。ステップS4以降の処理は上述したものと同様であるためここではその説明は省略する。
【0068】
なお、図示はしないが、1ノズル欠損、2ノズル欠損の判定後、検出対象ノズルから1ノズルずつ順次吐出を行う処理を加えることで欠損しているノズルを特定することができる。この時の各滴から吐出される液滴の速度はノズルごとに変化させる必要はない。1ノズルずつ吐出を行い、検出信号のレベルが閾値3を超えなかったノズルが欠損ノズルである。
【0069】
上述した実施例1に係る液滴吐出不良検出方法によると、複数のノズルからの液滴吐出を同時に行い、一度に吐出不良検出を行うため、吐出不良検出にかかる時間を短縮することができる。また、各ノズルからの液滴の吐出速度を変化させることで、複数の液滴をレーザ光の断面内において互いに重ならない状態で存在させることができるため、高精度の吐出不良検出を行うことができる。
【0070】
なお、上述した実施例1においては3つのノズルについて同時に吐出不良検出を行っていたが、本発明においてはこれに限らず、2つ、または3つ以上のノズルに対しても同様に吐出不良検出を行うことができる。この場合も、複数のノズルから吐出される液滴の吐出速度を所定の速度ずつ変化させ、複数の液滴をレーザ光の断面内において互いに重ならない状態で存在させることができる態様であれば良い。
【0071】
(実施例2)
液滴吐出不良検知方法の実施例2について、図13〜15を用いて説明する。
【0072】
図13は、実施例2の液滴吐出不良検知方法を示した図である。検出対象ノズルとして同じノズル列から2つのノズルが選択される。図13に示すように検出対象となる2つのノズル同士は隣接している。全てのノズルの吐出不良検出を行う場合は、ノズル列1の端から2つのノズルが選択され、順次検出対象ノズルが変更されていく。ノズル列1の吐出不良検出終了後、ノズル列2の吐出不良検出が同様に行われる。
【0073】
同じノズル列から選択された2つのノズルからは、速度の異なる液滴が同時に吐出される。また、実施例2では吐出滴のサイズもそれぞれ異なり、ノズル1からは大滴、ノズル2からは小滴が吐出される。
【0074】
実施例1の場合と同様に、各ノズルから吐出される液滴の速度が異なるため、検出時、レーザ光断面内におけるそれぞれの液滴の位置が異なる。そのため、吐出した全液滴を同時にレーザ光によって照射することが可能となる。また、液滴にレーザが照射された際の散乱光量は液滴のサイズにより異なり、液滴のサイズが大きいほど散乱光量は多くなる。本実施例においては、この液滴サイズと散乱光量の変化に基づき、液滴吐出不良検出が行われる。
【0075】
図14は、実施例2において、受光ユニット22が捉えた散乱光の強さに応じて発する検出信号の強度と、吐出液滴を示すグラフである。実施例2では、各ノズルから吐出される液滴のサイズが異なるため、図示するように吐出ノズル数だけではなく、吐出ノズルによっても検出信号のレベルは異なる。ノズル1から大滴、ノズル2から小滴が吐出されているため、ノズル1のほうが検出信号のレベルは高くなる。
【0076】
各ノズルの検出信号のレベルが異なるため、図示するように閾値1〜3を設定することにより、検出対象ノズルの吐出ノズル数を判別することができ、欠損ノズルがある場合には欠損ノズルを特定することができる。なお、閾値1は大小2つの液滴が吐出されているときの信号強度を示す値であり、閾値2は大滴のみが吐出されているときの信号強度を示し、閾値3は小滴のみが吐出されているときの信号強度を示す値である。
【0077】
図15は、実施例2の液滴吐出不良検知方法を示すフローチャートである。なお、この検知の際の制御も、ヘッドコントロールボード19によって行われる。
【0078】
液滴吐出不良検出が開始されると、ステップS21において、検査対象となる2つのノズルから、それぞれサイズと速度の異なる液滴が同時に吐出される。吐出された液滴に対して、発光ユニット21のLDからレーザ光が照射される。
【0079】
次に、ステップS22において、受光した液滴からの散乱光を受光ユニット22により受光され、散乱光の強度に応じた検出信号が出力され、その出力信号が閾値1と比較される。
【0080】
検出信号の強度が閾値1以上である場合、ステップS23において吐出不良の生じているノズルは無いと判断され、ステップS24へと進む。
【0081】
次に、ステップS24において、全ノズルに対する液滴吐出不良検出が完了したか否かの判断がされる。全ノズルの液滴吐出不良検出が終了していない場合には、ステップS30に進み検出対象となるノズルの変更が行われ、再びステップS21へと進む。ステップS24において全ノズルの液滴吐出不良検出が完了していると判断された場合には、液滴吐出不良検出が終了する。
【0082】
一方、ステップS22において出力信号が閾値1を超えなかった場合には、ステップS25に進み、出力信号が閾値2と比較される。
【0083】
検出信号の強度が閾値2以上である場合、ステップS26においてノズル2に欠損が生じていると判断され、ステップS24へと進む。ステップS24以降の処理は上述したものと同様であるためここではその説明は省略する。
【0084】
一方、ステップS25において出力信号が閾値2を超えなかった場合には、ステップS27に進み、出力信号が閾値3と比較される。
【0085】
検出信号の強度が閾値3以上である場合、ステップS28においてノズル1に欠損が生じていると判断され、ステップS24へと進む。ステップS24以降の処理は上述したものと同様であるためここではその説明は省略する。
【0086】
一方、ステップS27において出力信号が閾値3を超えなかった場合には、ステップS29において2つのノズルの両方に欠損が生じていると判断され、ステップS24へと進む。ステップS24以降の処理は上述したものと同様であるためここではその説明は省略する。
【0087】
上述した実施例2に係る液滴吐出不良検出方法によると、複数のノズルからの液滴吐出を同時に行い、一度に吐出不良検出を行うため、吐出不良検出にかかる時間を短縮することができる。また、各ノズルからの液滴の吐出速度を変化させることで、複数の液滴をレーザ光の断面内において互いに重ならない状態で存在させることができるため、高精度の吐出不良検出を行うことができる。さらに、各ノズルから吐出される液滴のサイズが異なるため、欠損の有無だけでなく、欠損しているノズルも併せて特定することができる。
【0088】
なお、上述した実施例2においては2つのノズルについて同時に吐出不良検出を行っていたが、本発明においてはこれに限らず、3つ以上のノズルに対しても同様に吐出不良検出を行うことができる。この場合も、複数のノズルから吐出される液滴のサイズを異ならせるとともに、吐出速度を所定の速度ずつ変化させ、複数の液滴をレーザ光の断面内において互いに重ならない状態で存在させることができる態様であれば良い。
【符号の説明】
【0089】
10 インクジェット記録装置
11 印字ヘッド(ヘッド)
12 印字ヘッドユニット(ヘッドユニット)
13 維持ユニット
14 給紙ユニット
16 搬送ベルト
18 廃液ユニット
19 ヘッドコントロールボード
20 各種コントロールボード
21 発光ユニット
22 受光ユニット
23 コリメートレンズ
24 アパーチャ
30 PC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2006−110964号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルから同時かつ異なる速度で液滴を吐出するよう液滴吐出ヘッドを制御するヘッド制御部と、
前記液滴吐出ヘッドの各ノズルから吐出される液滴の吐出方向と交差し、かつ同時に吐出される液滴の全てを同時に照射するように発光素子から光を照射する発光部と、
吐出された液滴に前記発光部から前記光が照射される際に生じる散乱光を受光し、前記散乱光の光量に応じた検出信号を出力する受光部と、
前記受光部から出力された前記検出信号の強度と所定の閾値とを比較することで各ノズルの液滴吐出状態を検出する液滴吐出検出手段と、
を備える液滴吐出不良検出装置。
【請求項2】
前記同時に吐出される液滴の直径は全て同じである請求項1記載の液滴吐出不良検出装置。
【請求項3】
前記同時に吐出される液滴の直径がそれぞれ異なる請求項1記載の液滴吐出不良検出装置。
【請求項4】
前記各ノズルから同時に吐出される全ての液滴が前記光の照射範囲に収まるように、全ての液滴が一定の速度差で吐出される請求項1乃至3の何れかに記載の液滴吐出不良検出装置。
【請求項5】
複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドと、
請求項1乃至4の何れかに記載の液滴吐出不良検出装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドの吐出状態を検出する液滴吐出不良検出方法であって、
吐出不良の検出対象となる各ノズルから同時かつ異なる速度で液滴を吐出する吐出工程と、
前記液滴吐出ヘッドの各ノズルから吐出される液滴の吐出方向と交差し、かつ同時に吐出される液滴の全てを同時に照射するように発光素子から光を照射する発光工程と、
吐出された液滴が前記光に照射された際に生じる散乱光を受光して散乱光の光量に応じた検出信号を出力する受光工程と、
前記受光工程において出力された前記検出信号の強度と所定の閾値とを比較することで各ノズルの液滴吐出状態を検出する液滴吐出検出工程と、
を備える液滴吐出不良検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−43438(P2013−43438A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185006(P2011−185006)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】