説明

液滴吐出方法及びカラーフィルターの製造方法

【課題】吐出する液滴の量を高精度に補正可能な液滴吐出方法を提供する。
【解決手段】ノズルから液滴を複数吐出して、シート部材に塗布する塗布工程と、シート部材に塗布された液滴を撮像する撮像工程と、撮像した複数の液滴の面積をそれぞれ計測する計測工程と、計測した液滴の面積に基づいてノズルから吐出する液滴の量を補正する補正工程S39とを有する。計測工程で面積を計測した複数の液滴のうち、所定の面積範囲を超える液滴の割合が所定値を超えた異常ノズルの数を計数するとともに、計数された異常ノズルの数が所定数を超えたときに、補正工程前に塗布工程、撮像工程及び計測工程を順次再実行する再計測工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出方法及びカラーフィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、携帯型コンピューターなどの電子機器の表示部に液晶装置、有機EL(Electro-Luminescent)装置等の電気光学装置が用いられている。これらの電気光学装置は、一般にフルカラー表示が行われる。例えば、液晶装置によるフルカラー表示は、液晶層によって変調される光をカラーフィルターに通すことによって表示される。このようなカラーフィルターは、液滴吐出法を用いた成膜技術によって、基板表面にインクをドット状に吐出することで形成される。
【0003】
ところで、液滴吐出法を用いた成膜技術においては、複数のノズルのインク吐出量に僅かながらばらつきが生じる。そして、インク吐出量にばらつきを有した状態で描画した場合には、カラーフィルターに筋状の濃淡ムラ(スジムラ)が発生する場合がある。このようなスジムラは視認されやすく、カラーフィルターを介して表示される画像の画質が低下してしまう惧れがある。
【0004】
このような問題点を解決するための技術が検討されており、例えば特許文献1では、複数の異なるインク吐出密度で被着色媒体を着色し、この着色部分の色濃度を測定して、複数の異なるインク吐出密度で着色された着色部分の各々の色濃度と、それに対応するインク吐出密度と、の関係を算出している。この関係に基づいて、所望の色濃度が得られるインク吐出密度になるように補正することにより、表示画像の画質の低下を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−260306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
特許文献1では、複数の異なるインク吐出密度で着色された着色部分の各々の色濃度を、被着色媒体の着色部の吸光度により表している。この吸光度の測定の際に誤差が生じると、精度の高い補正ができず、画質の低下を抑制することが困難な場合がある。
【0007】
一方、複数のノズルから吐出されたインクの重量を測定する方法が、従来用いられている。しかしながら、インクの重量を測定することは、測定が容易ではなく膨大な工数を要するので、生産効率に劣るため量産面で好ましくない。
そこで、吐出したインクを、例えば撮像装置を用いて撮像した結果に基づいて、吐出量を補正することも考えられるが、インクを着弾させたメディアの表面にキズ等があると、着弾したインクの形状がくずれて正確な補正ができない可能性がある。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、吐出する液滴の量を高精度に補正可能な液滴吐出方法及びカラーフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の液滴吐出方法は、液滴吐出ヘッドの複数のノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出方法であって、前記ノズルから前記液滴を複数吐出して、シート部材に塗布する塗布工程と、前記シート部材に塗布された前記液滴を撮像する撮像工程と、撮像した前記複数の液滴の面積をそれぞれ計測する計測工程と、計測した前記液滴の面積に基づいて前記ノズルから吐出する前記液滴の量を補正する補正工程とを有し、前記計測工程で前記面積を計測した複数の前記液滴のうち、所定の面積範囲を超える液滴の割合が所定値を超えた異常ノズルの数を計数するとともに、計数された前記異常ノズルの数が所定数を超えたときに、前記補正工程前に前記塗布工程、前記撮像工程及び前記計測工程を順次再実行する再計測工程を有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、本発明の液滴吐出方法では、複数のノズル間の吐出量の差は、撮像した液滴の面積の差として計測できるため、複数の液滴の面積を計測・統計処理して得られた吐出量を用いて、ノズルからの吐出量を補正することにより、容易に液滴吐出量のばらつきを抑制することができる。
また、本発明では、面積計測結果において複数の前記液滴のうち、所定の面積範囲を超える液滴の割合が所定値を超えた異常ノズルの数を計数するとともに、計数された異常ノズルの数が所定数を超えないときには、突発的(偶発的)にエラーが生じたと想定できるが、異常ノズル数が所定回数(例えば二回)を超えたときに、再計測工程を実行することにより、シート部材の表面特性や液滴吐出ヘッドの液滴吐出特性に何らかの不具合があったとしても、当該不具合が生じた箇所を特定して、不具合に応じた処置を採ることができる。
【0011】
上記の手順においては、前記再計測工程では、先の塗布工程で前記シート部材に前記液滴を吐出した箇所とは異なる箇所に前記液滴を塗布することが好ましい。
これにより、本発明では、再計測結果に問題が生じない場合には、シート部材の表面特性に問題があったと原因を特定することができ、再計測結果に問題が生じた場合には、液滴吐出ヘッドに問題があったと原因を特定することができる。
【0012】
上記の手順においては、前記再計測工程を実行した結果に基づいて、前記液滴吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス工程を有する手順を採ることが好ましい。
これにより、本発明では、液滴吐出ヘッドに問題があったと原因が特定された場合には、この原因を解消することが可能になる。
【0013】
また、本発明では、前記ノズルからの前記液滴の吐出特性に関する管理情報を保持しておき、前記計測工程及び前記再計測工程を実行した結果を前記管理情報に反映させる手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、複数のノズルに対して使用可否等の管理情報に面積計測結果を反映させることにより、最新のノズル状態を容易に確認することができる。
【0014】
そして、本発明のカラーフィルターの製造方法は、先に記載の液滴吐出方法を用いて、前記ノズルから吐出する前記液滴の量を補正する工程と、基材上に設けられた所定領域に前記機能液を配置してカラーフィルターを形成する工程とを有することを特徴とするものである。
従って、本発明のカラーフィルターの製造方法では、上述したように、各ノズルからの吐出量を高精度に補正して、液滴吐出ヘッドの全ノズルから均一な量のインクが吐出されるので、スジムラの無い高品質なカラーフィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液滴吐出装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの概略構成を示す模式図である。
【図3】基板上にカラーフィルターを形成する方法の説明図である。
【図4】液滴吐出方法の工程を示すフローチャートである。
【図5】インク吐出量と着弾面積の関係を示す図である。
【図6】印加電圧と着弾面積の関係を示す図である。
【図7】インク吐出量のばらつき補正前後の液滴吐出ヘッドの吐出特性を示す図である。
【図8】第1着弾面積測定工程の詳細工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の液滴吐出方法及びカラーフィルターの製造方法の実施の形態を、図1ないし図8を参照して説明する。
かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0017】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がワークステージ16に対して平行な方向に設定され、Z軸がワークステージ16に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0018】
(液滴吐出装置)
図1は本発明に係る液滴吐出装置1の概略構成を示す模式図である。液滴吐出装置1は、例えばインクジェット方式によりカラーフィルター基板(基材)Pの所定領域にカラーフィルター材料(機能液)の液滴を吐出してカラーフィルター層を形成する装置である。また、液滴吐出装置1は、本発明の液滴吐出方法を行うものでもある。
【0019】
液滴吐出装置1は、ワークステージ16、液滴吐出ヘッド5、チューブ44、タンク33、シート部材搬送台11、供給リール12、巻取リール13、面積計測用カメラ14、制御ユニット(制御手段)31、面積測定解析ユニット(着弾面積測定手段)32、第1配線41、第2配線42、第3配線43を備えている。
【0020】
ワークステージ16は、ステージ移動装置(図示略)によってX軸方向に移動可能に設置されている。また、ワークステージ16は、搬送装置(図示略)から搬送されるカラーフィルター基板Pを、真空吸着機構(図示略)によりXY平面上に保持する。
【0021】
液滴吐出ヘッド5は、第1配線41を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。液滴吐出ヘッド5は、複数のノズルN(図2参照)を有し、制御ユニット31から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、カラーフィルター材料の液滴を吐出する。また、液滴吐出ヘッド5は、カラーフィルター材料のR(赤)、G(緑)、B(青)に対応して設けられている。また、液滴吐出ヘッド5は、チューブ44を介してタンク33と連結されている。
【0022】
液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向及びZ軸方向に対してポールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構(図示略)を備えている。そして、液滴吐出ヘッド5は、制御ユニット31から入力されるY座標及びZ座標を示す位置制御信号に基づいて、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能になっている。
【0023】
チューブ44は、タンク33と液滴吐出ヘッド5とを連結するカラーフィルター材料の供給用チューブである。タンク33は、R(赤)用のカラーフィルター材料、G(緑)用のカラーフィルター材料、B(青)用のカラーフィルター材料、の3色のカラーフィルター材料を貯蔵している。タンク33は、3色のカラーフィルター材料を貯蔵するとともに、チューブ44を介して3色に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。
【0024】
シート部材搬送台11は、搬送台移動装置(図示略)によってX軸方向に移動可能になっている。シート部材搬送台11は、供給リール12から供給される帯状のシート部材15を搬送するシート部材15の搬送台である。供給リール12から供給されたシート部材15は、巻取リール13によって巻き取られる。
【0025】
シート部材15は、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNから吐出されたインク(機能液)のドット状の着弾面積が記録可能な記録媒体である。このシート部材15としては、例えばロール紙等の記録紙を用いることができる。なお、シート部材15としては、ロール紙に代えて例えばガラス基板等の撥水性を有する基板を用いることもできる。
【0026】
また、シート部材15は、生産前、つまりカラーフィルター基板P上への描画前に、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNの吐出状態(ノズル抜け、曲がり)を確認するために用いられるものでもある。
【0027】
面積計測用カメラ14は、シート部材搬送台11上のシート部材15の記録面(上面)に対向する位置に配置されている。面積計測用カメラ14は、複数のノズルNからシート部材15に吐出されたインクの着弾面積を撮像するカメラである。面積計測用カメラ14は、第2配線42を介して面積測定解析ユニット32に電気的に接続されている。面積計測用カメラ14は、撮影したインクの着弾面積の画像データを面積測定解析ユニット32に出力する。
【0028】
面積測定解析ユニット32は、面積計測用カメラ14によって撮影されたインクの着弾面積を測定する機能を有するものである。面積測定解析ユニット32は、第3配線43を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。面積測定解析ユニット32は、測定した複数のノズルNにおけるインクの着弾面積の測定データを制御ユニット31に出力する。
【0029】
制御ユニット31は、面積測定解析ユニット32から入力される着弾面積の測定データに基づいて、駆動素子PZ(図2参照)を有する液滴吐出ヘッド5に印加する電圧を調整する。そして、駆動素子PZにより複数のノズルNにおけるインクの着弾面積のばらつきが調整される。つまり、複数のノズルNにおけるインクの着弾面積のばらつきが補正される。駆動素子PZによりインクの着弾面積のばらつきが補正された後、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNからカラーフィルター基板P上の所定の位置にカラーフィルター材料の液滴が吐出される。
【0030】
また、制御ユニット31には、予め各ノズルNのインク吐出特性に関する管理情報が保持されている。この管理情報としては、ノズルN毎の平均吐出量や、予め計測して求められたインク滴の吐出不良(インク抜けや飛行曲がり)を起こすノズルNの情報等が挙げられる。この管理情報の詳細については、例えば特開2008−080207に詳述されているため、ここでは省略する。
【0031】
図2は液滴吐出ヘッド5の概略構成を示す模式図である。図2(a)は液滴吐出ヘッド5をワークステージ16から見た平面図、図2(b)は、液滴吐出ヘッド5の部分斜視図、図2(c)は液滴吐出ヘッド5の1ノズルの部分断面図である。
【0032】
図2(a)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向に配列された複数(例えば180個)のノズルN1〜N180を備えている。ノズルN1〜N180によってノズル列NAが形成されている。図2(a)では1列分のノズルを示しているが、液滴吐出ヘッド5に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、Y軸方向に配列した1列分ノズルをX軸方向に複数列設けても良い。
【0033】
図2(b)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、チューブ44と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルN1〜N180が設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられた液溜まり22と、複数の隔壁23と、複数の収容室24とを備えている。振動板20上には、各ノズルN1〜N180に対応して駆動素子PZ1〜PZ180が配置されている。駆動素子PZ1〜PZ180は、例えばピエゾ素子である。
【0034】
液溜まり22には、材料供給孔20aを介して供給される液状のカラーフィルター材料が充填されるようになっている。収容室24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されている。また、収容室24は、各ノズルN1〜N180に1対1に対応して設けられている。また、各収容室24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、液溜まり22からカラーフィルター材料が導入されるようになっている。
【0035】
図2(c)に示すように、駆動素子PZ1は、圧電材料25を一対の電極26で挟持したものである。この駆動素子PZ1は、一対の電極26に駆動信号を印加すると圧電材料25が収縮するよう構成されたものである。そして、このような駆動素子PZ1が配置されている振動板20は、一対の電極26に駆動信号を印加すると駆動素子PZ1と一体になって同時に外側(収容室24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによって収容室24の容積が増大するようになっている。
【0036】
したがって、収容室24内に増大した容積分に相当するカラーフィルター材料が、液溜まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から駆動素子PZ1への駆動信号の印加を停止すると、駆動素子PZ1と振動板20はともに元の形状に戻り、収容室24も元の容積に戻る。これにより、収容室24内のカラーフィルター材料の圧力が上昇し、ノズルN1からカラーフィルター基板Pに向けてカラーフィルター材料の液滴Lが吐出される。また、駆動素子PZ1を用いることにより、収容室24内に微振動を生じさせてインク吐出量を精度よく調整することができる。
【0037】
図3は、液滴吐出ヘッド5を用いてカラーフィルター基板P上にカラーフィルター層(カラーフィルター)CFを形成する方法の説明図である。図3(a)は、インクの吐出対象物であるカラーフィルター基板Pの概略平面図である。図3(b)は、カラーフィルター基板Pの部分拡大平面図である。
【0038】
図3(a)において、ガラス、プラスチック等によって形成された大面積のカラーフィルター基板Pの表面には複数のパネル領域CAが設定されている。各パネル領域CAは、互いに分離(切断)されて個々のカラーフィルター基板として提供される。各パネル領域CAの内部には、図3(b)に示すように、ドット状に配列された複数の画素PX(所定領域)が設けられている。画素PXは各パネル領域CA内にマトリクス状に配列されており、それぞれの画素PX毎にカラーフィルター層(着色層)CFが形成される。
【0039】
図3(b)の図示上下方向(矢印A1及び矢印A2で示す方向)を主走査方向とし、主走査方向と直交する方向(図示左右方向)を副走査方向として、液滴吐出ヘッド5をカラーフィルター基板P上に配置する。そして、カラーフィルター基板Pを液滴吐出ヘッド5に対して主走査方向及び副走査方向に相対的に移動(走査)させながら、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNから着色材料を含むインク(カラーフィルター材料)を吐出させ、カラーフィルター基板P上の各画素PXにカラーフィルター層CFを形成する。
【0040】
液滴吐出ヘッド5の走査は、1つのパネル領域CAに関して複数回行う。例えば、主走査方向に液滴吐出ヘッド5を走査した後、副走査方向に液滴吐出ヘッド5を移動(走査)し、再度主走査方向に走査を行う。1つのパネル領域CAの左端から右端まで移動(副走査)したら、再びパネル領域CAの左端に戻り、既に吐出を行った位置とは若干異なる位置で主走査方向に走査を行う。そして、このような走査を複数回行うことによって、パネル領域CA内の全ての画素PXに所望の膜厚のカラーフィルター層CFを形成する。
【0041】
なお、図3(b)において液滴吐出ヘッド5が副走査方向に対して斜めに傾いているのは、液滴吐出ヘッド5のノズルNのピッチを画素PXのピッチに合わせるためである。ノズルNのピッチと画素PXのピッチとが所定の対応関係を満たして設定されていれば、液滴吐出ヘッド5を斜めに傾ける必要はない。
【0042】
カラーフィルター層CFは、R、G、Bの各色をいわゆるストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列等といった適宜の配列形態で配列することによって形成される。したがって、図3(b)に示すインクの吐出工程においては、R、G、Bのカラーフィルター材料を吐出する液滴吐出ヘッド5を、R、G、Bの3色分だけ予め用意する。そして、これらの液滴吐出ヘッド5を順次に用いて1つのカラーフィルター基板P上にR、G、Bの3色のカラーフィルター層CFの配列を形成する。
【0043】
ところで、一般的に液滴吐出ヘッドにおいては、ノズル間でインクの吐出特性(吐出量)に僅かながらばらつきが存在する(図7中の補正前の実線参照)。ノズル間でインクの吐出量にばらつきがあると、これに起因してカラーフィルター基板P上へのインクの配置量がばらついてしまい、カラーフィルターにスジムラを発生させる原因となってしまう。
【0044】
図7は、インク吐出量のばらつきの補正前後の液滴吐出ヘッドの吐出特性を示す図である。図7において、横軸はノズル列NAのノズル番号1〜180、縦軸は各ノズル番号に対応するノズルの吐出量を示している。図7に示すように、インク吐出量のばらつきの補正前の実線を見ると、両端部と中央部のノズルにおけるインク吐出量が相対的に多くなる傾向があることがわかる。
【0045】
そこで、本実施形態では、補正前(生産前)となるカラーフィルター基板P上への描画前に、液滴吐出ヘッド5の駆動素子PZに印加する電圧を調整し、複数のノズルNにおけるインクの吐出特性を調整する工程を設けている。以下、液滴吐出方法について一例を挙げて説明する。
【0046】
(液滴吐出方法)
図4は、本発明の液滴吐出方法の工程を示すフローチャートである。本発明の液滴吐出方法は、装置を所定の位置に配置して装置の位置合わせを行う「装置の位置合わせ工程」(ステップS1)と、駆動素子PZに印加する電圧を一定にしてインクをシート部材15に着弾する「第1着弾工程」(ステップS2)と、第1着弾工程の後にシート部材15にインクが着弾された第1着弾面積を測定する「第1着弾面積測定工程」(ステップS3)と、シート部材15を巻き取る「シート部材巻取工程」(ステップS4)と、第1着弾面積のばらつきを調整するように駆動素子PZに印加する電圧を調整してインクをシート部材15に着弾する「第2着弾工程」(ステップS5)と、を有する。
【0047】
先ず、装置を所定の位置に配置して装置の位置合わせを行う(図4のステップS1)。具体的には、シート部材搬送台11をワークステージ16に向かってX軸方向に移動させ、液滴吐出ヘッド5の直下に配置する。これにより、シート部材搬送台11上のシート部材15が液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNに対向するように配置される。
【0048】
次に、駆動素子PZに印加する電圧を一定にして、インクをシート部材15に着弾・塗布する(図4のステップS2、塗布工程)。インクは、カラーフィルター層CFにならって、ストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列等といった適宜の配列形態で着弾するのがよい。これにより、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNの補正前(シート部材15への吐出時)の吐出状態と、補正後(カラーフィルター基板Pへの吐出時)の吐出状態と、が確実に整合するようになる。
【0049】
また、インクLをシート部材15に着弾させる際は、複数回に分けて着弾させるのがよい。具体的には、先ず、第1のインクをシート部材15上の所定の領域に着弾させる。次に、第2のインクを第1のインクの着弾されていない領域に着弾させる。これにより、インクLをシート部材15へ複数回繰り返して着弾できるので、シート部材15を無駄なく有効に利用することができる。
【0050】
次に、シート部材15にインクが着弾された着弾面積を測定する(図4のステップS3)。具体的には、シート部材15の上面に対向する位置に配置された面積計測用カメラ14により、複数のノズルNからシート部材15に吐出されたインクLの着弾面積を撮像する(撮像工程)。このとき、面積計測用カメラ14のレンズの倍率は、測定精度と測定時間の点から、例えば4〜10倍に設定するのがよい。また、インクLの着弾面積を測定する際のN数は、測定精度の点から、例えばN=18〜30に設定するのがよい。
【0051】
面積計測用カメラ14によって撮像されたインクの着弾面積の画像データは、面積測定解析ユニット32に出力される。そして、面積測定解析ユニット32よって測定された(計測工程)複数のノズルNにおけるインクの着弾面積の測定データは制御ユニット31に出力される。
なお、ステップS3の第1着弾面積測定工程の詳細については後述する。
【0052】
本実施形態では、従来の複数のノズルから吐出されたインクの重量を測定する方法に対して、着弾面積に基づいて吐出量を測定する方法を用いている。これにより、測定が容易となり、吐出量の測定に膨大な工数がかからなくなる。これは、インク吐出量と着弾面積との間に一定の関係があることによる。
【0053】
図5は、インク吐出量と着弾面積の関係を示す図である。図5において、横軸はインク吐出量、縦軸は着弾面積を示している。また、図5中の○は、インク吐出量に対応する着弾面積のデータを複数プロットしたものである。そして、図5中の実線は、例えば複数のデータから最小二乗法による回帰分析により求めた線(検量線)である。この検量線からの複数のデータのばらつきを相関係数ρで表すと、ρ>0.9となる。図5から明かなように、データのプロットが略一直線に並んでいることが確認される。これにより、本願発明者は、信頼性の高い、インク吐出量と着弾面積との間の相関関係が存在することがわかる。
【0054】
次に、シート部材15を巻き取る(図4のステップS4)。具体的には、巻取リール13によってインクが着弾されたシート部材15が巻き取られる。つまり、供給リール12からインクが着弾されていない新たなシート部材15が供給される。
【0055】
次に、駆動素子PZに印加する電圧を調整して、インクをシート部材15に着弾させる(図4のステップS5)。具体的には、制御ユニット31によって複数のノズルN毎に備えられた駆動素子PZに印加する電圧が調整される。
【0056】
例えば、初期状態(図7中の補正前の実線参照)におけるインク吐出量が相対的に少ない領域のノズルに対応する駆動素子PZに対して所定の電圧を印加する。一方、初期状態におけるインク吐出量が相対的に多い領域のノズルに対応する駆動素子PZに対しては電圧を印加しない。このようにして、駆動素子PZによって複数のノズルN間で生じている吐出量のばらつきが調整される。これにより、複数のノズルNにおけるインクの着弾面積のばらつきが補正される(補正工程)。これは、本願発明者が、印加電圧と着弾面積との間に一定の関係が存在することによる。
【0057】
図6は、印加電圧と着弾面積の関係を示す図である。図6において、横軸は印加電圧、縦軸は着弾面積を示している。図6に示すように、印加電圧と着弾面積との間には相関関係があることが確認される。この関係を利用して駆動素子PZに対して所定の電圧を印加することで、図7に示したように初期状態(補正前の実線)において複数のノズルN間で生じていたインク吐出量のばらつきを、補正後の実線に示すように略平均化することができる。
【0058】
続いて、ステップS3の第1着弾面積測定工程について、図8を参照して詳細に説明する。図8は、第1着弾面積測定工程の詳細工程を示すフローチャート図である。ここでは、各ノズルN毎に複数のインク滴(液滴)を吐出してシート部材15に塗布し、全インク滴の平均面積を当該ノズルNから吐出されるインク滴の面積とする場合について説明する。
【0059】
まず、ステップS2の第1着弾工程でシート部材15に塗布された全てのインク滴に対して、上述した面積計測用カメラ14で撮像し、面積測定解析ユニット32で解析することにより、それぞれインク滴毎に面積を全ノズルNに対して計測する(ステップS31)。
【0060】
次に、得られた面積データのうち、例えばシート部材15の表面特性に基づく第1閾値を超えるデータの割合を求める。この第1閾値としては、例えばシート部材15の表面に規格値を超えるキズ等が生じていて、シート部材15に塗布されたインク滴がキズに沿って濡れ拡がることで、異常値となって計測される面積データの割合を得るために設定されるものであり、本実施形態では、全インク滴の平均面積に対して5%を第1閾値とし、この第1閾値を超えるデータをカウントする。
【0061】
また、主としてシート部材15の表面特性に起因する面積異常ではなく、偶発的に生じた異常値(シート部材15に規格値内ではあるもののインク滴の濡れ拡がりに影響を及ぼすキズが存在する箇所に塗布した場合に生じる異常値や、インクの吐出特性で生じた異常値等)をカウントするために、第2閾値を設定してこの第2閾値を超えたデータをカウントする。具体的には、第1閾値を超えた面積データについては当該データを除外し、残りの面積データのうち、統計演算処理に基づく第2閾値を超えたデータを除外する。この第2閾値は、予めインク滴面積を複数回計測して統計演算処理した結果で求められたものであり、本実施形態では、標準偏差に基づく3σ相当を採用し、上記平均面積に対して2%を第2閾値とし、この第2閾値を超えるデータをカウントする。
【0062】
この後、各ノズルN毎に、全インク滴数に対する上記第1閾値及び第2閾値を超えない正常な面積データの数の割合を求める(ステップS32)。そして、この割合が所定値以下(ここでは50%以下)であるかどうかを判断し(ステップS33)、該当しない場合には、ステップS34で全ノズルNについて面積データの計測が完了したどうかを判断し、未完了の場合は引き続いて他のノズルNについても、上記第1閾値及び第2閾値を用いて異常な面積データの割合を求める。
【0063】
ステップS33において、計測したノズルNの面積データにおいて、正常な面積データの数の割合が所定値以下(50%以下)であった場合には、当該ノズルNのインク吐出特性に問題が生じた可能性があるものとして、制御ユニット31に保持されている管理情報(ノズルNのインク吐出特性データ)に反映させ(ステップS35)、実吐出時には用いないようにするとともに、当該ノズルNを異常ノズルとしてカウント(計数)する(ステップS36)。
【0064】
この後、ステップS34において、全ノズルNについて面積データの計測が完了したどうかを判断し、上述したように、未完了の場合は、ステップS31〜S33、S35〜S36の動作を繰り返す。
【0065】
全ノズルについて、面積計測及び異常ノズルの抽出が完了すると、当該液滴吐出ヘッド5において異常ノズルの数が所定数以下(ここでは1つ以下)であるか判断し(ステップS37)、所定数以下であれば、ノズルN毎に面積平均値から上述した手順により、インク吐出量を求め、当該インク滴を吐出したノズルNの平均吐出量とする(ステップS38)。そして、これらの手順を複数のノズルN毎に繰り返して行うことにより、各ノズルNの平均吐出量を求め、求めた平均吐出量に基づいてノズル毎に印加電圧を調整し、インク吐出量を補正し(ステップS39)、上述したシート部材巻取工程(ステップS4)に移行する。
【0066】
一方、ステップS37において、異常ノズル数が所定数を超えている場合(ここでは2つ以上の場合)には、当該ノズルNにおいて上記面積計測が一度目であるかどうか(すなわち上述したインク塗布工程、撮像工程、面積計測工程を順次再実行する再計測工程を実施した後の二度目であるかどうか)を判断し(ステップS40)、再計測を実施していない一度目の面積計測であれば、シート部材15を送って、先にインクを吐出・計測した箇所とは異なる箇所にインクを塗布し(ステップS41)、上述したステップS31〜S37の工程(すなわち再計測工程)を実施する。
【0067】
再計測工程を実施した後、当該ノズルNの正常な面積データの数の割合が所定値以下でなくなった場合には、一度目の計測で所定値以下であった原因がシート部材15の表面特性であったと推定でき、これにより異常ノズルの数が1以下になれば、当該液滴吐出ヘッド5については、上述したステップS38以降の工程を実行する(ただし、1つの異常ノズルについては管理情報にて、使用しない旨のデータが保持されている)とともに、管理情報においても当該ノズルNの異常が解消されて使用可能状態となった旨に反映させる。
【0068】
一方、ステップS40で、再計測工程実施後も異常ノズル数の数が2以上である状態が解消されない場合には、液滴吐出ヘッド5に異常面積データを生じさせる原因があると推定されるため、フラッシングやノズル面のクリーニング及びワイピング等のメンテナンス処理を実行する(ステップS42)。
このようにして、異常面積データの原因を解消することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、所定の面積範囲を超える液滴の割合が所定値を超えた異常ノズルの数を計数するとともに、計数された異常ノズルの数が所定数を超えたときには再計測工程を実施するため、異常な面積データを示すノズルNが存在する場合であっても、原因を容易に特定して不具合に応じた処置を採ることができる。そのため、本実施形態では、信頼性の高い面積データ、すなわちインク吐出量のデータを得ることが可能となり、このインク吐出量データに基づいて高精度の吐出量補正を実施できる。
従って、本実施形態では、ノズルN毎のインク吐出量を高精度に計測して補正することが可能となり、吐出量が均一化されることで、高品質のカラーフィルターを製造することができる。
【0070】
特に、本実施形態では、再計測工程を実施するにあたっては、先の塗布工程でシート部材15にインクを吐出した箇所とは異なる箇所にインクを塗布するため、異常面積データの発生がシート部材15の表面特性に起因するものであるかを容易に特定することが可能になる。また、本実施形態では、再計測工程を実施した後に、異常が解消されず液滴吐出ヘッド5に異常データの原因があると特定された場合には、当該ヘッド5のメンテナンス処理を実行するため、迅速に液滴吐出処理に復帰することが可能となり、生産性の低下を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、面積計測工程及び再計測工程の実行結果をインク吐出特性の管理情報に反映させるため、実吐出に使用可能なノズルNのデータを正確に保持することができるため、より高精度の吐出量でインク吐出を行うことができ、高品質のカラーフィルターを製造することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態で示した第1閾値、第2閾値は一例であり、吐出するインクの種類や要求精度に応じて適宜変更してもよい。
また、上記実施形態では、再計測工程を実施するにあたって、シート部材15を送る構成としたが、これに限定されるものではなく、シート部材15全体に亘って表面特性に問題が生じている可能性がある場合には、シート部材を交換した後に再計測工程を実施してもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、第2着弾工程の後に、シート部材15にインクが着弾された第2着弾面積を測定する第2着弾面積測定工程と、第2着弾面積のばらつきを調整するように駆動素子PZに印加する電圧を調整してインクをシート部材15に着弾する第3着弾工程と、を少なくとも1回有していてもよい。
この方法によれば、第2着弾工程の後に、着弾面積測定工程と着弾工程と、を複数回繰り返して行うことにより、複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが確実に調整される。このため、液滴吐出ヘッド5の全ノズルNから格段に均一な量のインクを吐出することが可能となる。したがって、スジムラをより目立たなくして画質の低下を格段に抑制することができる。
【0075】
また、本発明のカラーフィルターの製造方法によれば、上述したように液滴吐出ヘッドの全ノズルから均一な量のインクが吐出されるので、スジムラの無い高品質なカラーフィルターを製造することができる。
なお、上記実施形態では、ノズル間のインク吐出量のばらつきが調整された液滴吐出装置1を用いてカラーフィルターを製造する場合について説明したが、これに限らない。例えば、本発明の液滴吐出装置1はカラーフィルターの製造だけでなく、均一な膜厚を必要とされ、スジムラの形成が問題となる成膜工程においても適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…液滴吐出装置、 5…液滴吐出ヘッド、 15…シート部材、 L…液滴、 N…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドの複数のノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出方法であって、
前記ノズルから前記液滴を複数吐出して、シート部材に塗布する塗布工程と、
前記シート部材に塗布された前記液滴を撮像する撮像工程と、
撮像した前記複数の液滴の面積をそれぞれ計測する計測工程と、
計測した前記液滴の面積に基づいて前記ノズルから吐出する前記液滴の量を補正する補正工程とを有し、
前記計測工程で前記面積を計測した複数の前記液滴のうち、所定の面積範囲を超える液滴の割合が所定値を超えた異常ノズルの数を計数するとともに、計数された前記異常ノズルの数が所定数を超えたときに、前記補正工程前に前記塗布工程、前記撮像工程及び前記計測工程を順次再実行する再計測工程を有することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出方法において、
前記再計測工程では、先の塗布工程で前記シート部材に前記液滴を吐出した箇所とは異なる箇所に前記液滴を塗布することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項3】
請求項2記載の液滴吐出方法において、
前記再計測工程を実行した結果に基づいて、前記液滴吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス工程を有することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の液滴吐出方法において、
前記ノズルからの前記液滴の吐出特性に関する管理情報を保持しておき、
前記計測工程及び前記再計測工程を実行した結果を前記管理情報に反映させることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の液滴吐出方法を用いて、前記ノズルから吐出する前記液滴の量を補正する工程と、
基材上に設けられた所定領域に前記機能液を配置してカラーフィルターを形成する工程とを有することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−214349(P2010−214349A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67543(P2009−67543)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】