説明

液状シリコーンゴムコーティング剤組成物および該組成物を用いたエアーバッグ

【課題】繊維に対する接着性、ゴム強度および耐ブロッキング性に優れた硬化物となる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、ならびに該硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグを提供する。
【解決手段】(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)付加反応触媒、
(D)BET比表面積が260〜500m2/gであり、かつ平均粒径が0.5〜20μmのゲル法シリカ、及び
(E)接着性向上剤
を含有してなる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、並びに該組成物の硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維に対する接着性、ゴム強度、耐ブロッキング性等に優れた硬化物となる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、および該組成物の硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維表面上にゴム被膜を形成することを目的としたシリコーンゴムコーティング布は、シリコーンゴム特有のベタツキ感が残るため、コーティング後のカッティング時や縫製時の作業性が著しく悪かった。その改善策として、付着性、滑り性等に富んだ、タルク等の粉体をゴム表面に打粉している。しかし、この方法は、コストが高い上に、粉塵により人体に悪影響を及ぼす危険性もある。また、粉体をゴムコーティング布の表面に付着させているだけであるので、粉体が取れやすく、安定して効力を発揮できない。
【0003】
これらの問題を解決するために、以下の組成物が提案されている。例えば、ゴムコーティング組成物に、平均粒径が0.5〜20μmの水酸化アルミニウム、マイカ、ジメチルシルセスキオキサン、カーボン、ポリアミドおよびポリフッ化エチレンからなる群から選ばれる無機系化合物または有機系化合物の粉体を添加してなるゴムコーティング布用コーティング組成物(特許文献1);ゴムコーティング組成物に、天然乾性油、変性天然乾性油、液体ジエン化合物または不飽和脂肪酸エステル類から選択した乾性油化合物を添加してなる低粘着性のゴムコーティング布用コーティング組成物(特許文献2);ゴムコーティング組成物に平均粒径が10〜300μmのアルミノシリケート中空粉体、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、プラスチックバルーン、シリコーンレジン中空粉体等の中空粉体、アルミナ粉体、ガラス粉体、プラスチック粉体等を添加してなるゴムコーティング膜表面の粘着性が少ないゴムコーティング布用コーティング組成物(特許文献3);ゴムコーティング組成物にBET比表面積が平均150〜250m/gであり、平均粒径が20μm以下である湿式シリカを添加してなる粘着性の低減されたゴムコーティング布用コーティング組成物(特許文献4)等が提案されている。
【0004】
しかし、いずれの組成物も硬化後の作業性は改善されたものの、繊維に対する接着性、ゴム強度等の諸特性を保持しながら、耐ブロッキング性をも満足する硬化物となるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特許第3379839号公報
【特許文献2】特開2000−191915号公報
【特許文献3】特開2000−303022号公報
【特許文献4】特開2001−59052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、繊維に対する接着性、ゴム強度および耐ブロッキング性に優れた硬化物となる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、ならびに該硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、本発明をなすに至った。
【0008】
即ち、本発明は第一に、
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、組成物中のケイ素原子に結合した水素原子が1〜7モルとなる量、
(C)付加反応触媒: 有効量、
(D)BET比表面積が260〜500m2/gであり、かつ平均粒径が0.5〜20μmのゲル法シリカ: 1〜50質量部、および
(E)接着性向上剤: 0.1〜10質量部
を含有してなる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物、
を提供する。
【0009】
また、本発明は第二に、前記組成物の硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグ、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を硬化してなる硬化物は、繊維に対する接着性、ゴム強度および耐ブロッキング性に優れるだけでなく、ゴム特有のべたつき感が軽減され手触り感が良好であり、かつ縫製時の作業性にも優れている。また、該組成物は、塗工性にも優れており、さらに溶剤に希釈しなくても使用することができるので環境にも優しい。この硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグは、該ゴムコーティング層が剥がれにくいために、インフレーターガスの漏れが生じ難く、膨張時間の持続性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
<液状シリコーンゴムコーティング剤組成物>
本発明の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、以下の(A)〜(E)成分を含有してなるものである。
【0013】
−(A)オルガノポリシロキサン−
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、組成物の主剤となる成分であり、平均で、1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜20個のケイ素原子に結合したアルケニル基(以下、「ケイ素原子結合アルケニル基」という)を含有するものである。
【0014】
前記ケイ素原子結合アルケニル基は、炭素原子数が、通常、2〜8、好ましくは2〜4のものである。その具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
【0015】
このケイ素原子結合アルケニル基のオルガノポリシロキサン分子中における結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)であっても、あるいはこれらの両方であってもよい。
【0016】
本成分のオルガノポリシロキサン分子中において、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(以下、「ケイ素原子結合有機基」という)は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換または置換の、炭素原子数が、通常、1〜12、好ましくは1〜10の、一価炭化水素基等が挙げられる。この非置換または置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0017】
本成分中、前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、本成分中の全ケイ素原子結合有機基に対して、好ましくは0.001〜10モル%、特に好ましくは0.01〜5モル%である。
【0018】
本成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐した直鎖状、環状、分岐鎖状等が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状ジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0019】
本成分の25℃における粘度は、硬化物の繊維に対する接着性、ゴム強度、耐ブロッキング性等の物理的特性や作業性がより優れたものとなるので、好ましくは100〜500,000mPa・s、特に好ましくは300〜100,000mPa・sである。
【0020】
本成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、平均組成式(1):
SiO(4−a−b)/2 (1)
(式中、Rは、脂肪族不飽和結合を有しない非置換または置換の一価炭化水素基であり、Rは、アルケニル基であり、aは1.7〜2.1の数、bは0.00001〜0.1の数であり、但し、a+bは1.8〜2.2を満たす)
で表されるものが挙げられる。
【0021】
上記平均組成式(1)中、R1で表される脂肪族不飽和結合を有しない非置換または置換の一価炭化水素基は、炭素原子数が、通常、1〜12、好ましくは1〜10のものである。その具体例としては、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子結合有機基として例示したものが挙げられる。
【0022】
で表されるアルケニル基は、炭素原子数が、通常、2〜8、好ましくは2〜4のものである。その具体例としては、前記ケイ素原子結合アルケニル基として例示したものが挙げられる。
【0023】
aは1.9〜2.0の数であることが好ましく、bは0.0001〜0.05の数であることが好ましく、a+bは1.95〜2.05を満たすことが好ましい。
【0024】
本成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:RSiO1/2(式中、R1は上記のとおりであり、以下、同じ)で表されるシロキサン単位と式:RSiO1/2(式中、Rは上記のとおりであり、以下、同じ)表されるシロキサン単位と式:RSiOで表されるシロキサン単位と少量の式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:RSiOで表されるシロキサン単位と少量の式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RSiOで表されるシロキサン単位と少量の式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位もしくは少量の式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、これらのオルガノポリシロキサンの二種以上からなる混合物等が挙げられる。
【0025】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0026】
−(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン−
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分との付加硬化反応において、架橋剤として作用し、さらに硬化物に接着性を付与する成分である。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均で、1分子中に少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは上限が500個、さらに好ましくは上限が200個、特に好ましくは上限が100個のケイ素原子に結合した水素原子(以下、「ケイ素原子結合水素原子」(即ち、SiH基)という)を有するものであって、好ましくは分子中に脂肪族不飽和結合を有しないものである。
【0027】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中におけるケイ素原子結合水素原子の結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端であっても、あるいはこれらの両方であってもよい。
【0028】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中において、前記ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子結合有機基は、特に限定されないが、好ましくは脂肪族不飽和結合を有しないものであり、例えば、非置換または置換の、炭素原子数が、通常、1〜10、好ましくは1〜6の、一価炭化水素基等が挙げられる。その具体例としては、(A)成分の説明において、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子結合有機基として例示したもの、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0029】
本成分中、前記ケイ素原子結合水素原子の含有量は、本成分中の全ケイ素原子結合有機基と全ケイ素原子結合水素原子との合計に対して、好ましくは0.1〜60モル%、特に好ましくは1〜50モル%である。
【0030】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず従来製造されているものを用いることができ、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造(樹脂状)等が挙げられ、直鎖状または環状が好ましい。
【0031】
本成分の25℃における粘度は、硬化物の繊維に対する接着性、ゴム強度、耐ブロッキング性等の物理的特性や作業性がより優れたものとなるので、好ましくは0.1〜5,000mPa・s、より好ましくは0.5〜1,000mPa・s、特に好ましくは5〜500mPa・sの範囲を満たす、室温(25℃)で液状である範囲が望ましい。かかる粘度を満たす場合には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中のケイ素原子数(または重合度)は、通常、2〜1,000個、好ましくは3〜300個、より好ましくは4〜150個である。
【0032】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、平均組成式(2):
SiO(4−c−d)/2 (2)
(式中、Rは、非置換または置換の一価炭化水素基であり、cは0.7〜2.1の数であり、dは0.001〜1.0の数であり、但し、c+dは0.8〜3.0を満たす)
で表されるものが挙げられる。
【0033】
上記平均組成式(2)中、Rで表される非置換または置換の一価炭化水素基は、炭素原子数が、通常、1〜10、好ましくは1〜6のものである。この一価炭化水素基は、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有しないものであることが好ましい。この非置換または置換の一価炭化水素基の具体例としては、(A)成分の説明において、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子結合有機基として例示したもの、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0034】
cは、1.0〜2.0の数であることが好ましく、dは、0.01〜1.0の数であることが好ましく、c+dは1.5〜2.5の数であることが好ましい。
【0035】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:(CH)HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:(CH)SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位とからなる共重合体、式:(CH)HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位とからなる共重合体、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物等が挙げられる。
【0036】
中でも、(1)脂肪族不飽和結合を有しない、分子鎖両末端が、式:RSiO1/2(式中、Rは独立に、上記のとおりであり、以下、同じ)で表されるシロキサン単位で封鎖され、主鎖が式:RHSiO2/2で表されるシロキサン単位の繰り返しからなる、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(2)脂肪族不飽和結合を有しない、分子鎖両末端が独立に、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位、または式:RHSiO1/2で表されるシロキサン単位で封鎖され、主鎖が式:RSiO2/2で表されるシロキサン単位と式:RHSiO2/2で表されるシロキサン単位とのランダムな繰り返しからなる、ジオルガノシロキサン・オルガノハイドロジェンシロキサン共重合体とを併用したものが好ましい。具体的には、(1)分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンと、(2)分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基またはジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体とを併用したものが好ましい。
【0037】
(B)成分の配合量は、以下のとおりである。本発明の組成物は、(A)成分以外のケイ素原子結合アルケニル基を有する成分、および/または(B)成分以外のケイ素原子結合水素原子を有する成分を含有することができる。そこで、組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、組成物中のケイ素原子結合水素原子が1〜7モルとなる量であることが必要であり、好ましくは2〜6モルとなる量であるが、特には、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が1〜7モル、とりわけ2〜6モルとなる量である。これは、該ケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して該ケイ素原子結合水素原子が1モル未満である場合には、コーティング膜の強度が十分に得られず、7モルを超える場合には、コーティング膜の耐熱性、強度が著しく劣るためである。そして、組成物中の全ケイ素原子結合アルケニル基に占める(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の割合は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。また、組成物中の全ケイ素原子結合水素原子に占める(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の割合は、通常、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。
【0038】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0039】
−(C)付加反応触媒−
(C)成分の付加反応触媒は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と(B)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を、進行・促進させるための成分である。この付加反応触媒としては、特に限定されず、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンまたはアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等が挙げられ、好ましくは白金化合物である。
【0040】
(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよいが、通常、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、白金族金属の質量換算で、0.1〜1,000ppmであり、好ましくは1〜500ppmであり、より好ましくは10〜100ppmである。この配合量を適切なものとすると、付加反応をより効果的に促進させることができる。
【0041】
(C)成分の付加反応触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0042】
−(D)ゲル法シリカ−
(D)成分のゲル法シリカは、シリコーンゴム特有のべたつき感を軽減し、手触り感を改善し、縫製時の作業性、耐ブロッキング性等に優れたゴムコーティング布を作成するための成分である。このゲル法シリカは、BET比表面積が260〜500m/gであり、かつ平均粒径が0.5〜20μmのものであることが必須である。BET比表面積が260m/g未満である場合には、シリコーンゴムにべたつき感が残り、手触り感を改善することができないことがあり、500m/gを超える場合には、シリコーンゴムが耐ブロッキング性に劣るものとなる。また、平均粒径が0.5μm未満である場合には、シリコーンゴムが耐ブロッキング性に劣るものとなり、20μmを超える場合には、シリコーンゴムの手触り感を改善することができないことがある。中でも、BET比表面積は300〜500m/gであることが好ましく、400〜500m/gであることがより好ましい。また、平均粒径は、通常、1〜20μmであり、特に5〜18μmであることが好ましく、10〜16μmであることがより好ましい。ゲル法シリカの「平均粒径」とは、ゲル法によるシリカの、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積重量平均値D50(またはメジアン径)を意味する。
【0043】
本成分のゲル法シリカは、BET比表面積および平均粒径が上記必須範囲を満たすものであれば、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものでよく、例えば、沈殿シリカ等の微粉末シリカが挙げられる。この微粉末シリカは、そのまま用いてもよいが、その表面が有機ケイ素化合物等で疎水化処理されたものが好ましい。なお、ゲル法シリカの製造方法は特に限定されない。
【0044】
ゲル法シリカの表面疎水化処理に用いられる有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン等のトリアルキルモノアルコキシシラン;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシランおよびクロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0045】
また、二種以上の有機ケイ素化合物を併用する場合には、二種以上を混合してゲル法シリカの表面疎水化処理を行ってもよいし、二種以上を分割し、その一部ずつを用いて逐次的に表面疎水化処理を行ってもよい。
【0046】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1〜50質量部であることが必要であり、組成物の流動性を良好にし、さらに硬化物の作業性、耐ブロッキング性をより優れたものとすることができるので、好ましくは1〜10質量部である。この配合量が50質量部を超える場合には、組成物の流動性が低下し、硬化物の作業性が悪くなることがあり、この配合量が1質量部未満である場合には、シリコーンゴムの耐ブロッキング性の改善が見られない場合がある。
【0047】
(D)成分のゲル法シリカは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0048】
−(E)接着性向上剤−
本発明に用いられる(E)接着性向上剤は、エアーバッグ用の合成繊維織物基材、不織布基材、熱可塑性樹脂のシート状基材またはフィルム状基材等に対する、硬化物(ゴムコーティング層)の接着性を向上させるための成分である。この接着性向上剤は、硬化物の自己接着性を向上させることができるものであれば特に限定されない。その具体例としては、(A)成分および(B)成分以外の有機ケイ素化合物、非ケイ素系有機化合物、エポキシ開環触媒、有機チタン化合物等が挙げられ、中でも、1分子中に官能基を少なくとも1種有するものが好ましく、2種以上有するものがより好ましい。
【0049】
有機ケイ素化合物としては、例えば、ケイ素原子に結合したビニル基、アリル基等のアルケニル基;γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基;γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したアクリロキシ基やメタクリロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造を1〜2個有していてもよい、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基;イソシアネート基;および(ケイ素原子結合)水素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくは2種以上の官能基を有するオルガノシラン、ケイ素原子数3〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜20の、直鎖状または環状のシロキサンオリゴマー、トリアリルイソシアヌレートの(アルコキシ)シリル変性物、そのシロキサン誘導体等が挙げられ、中でも、官能基を1分子中に2種以上有するものが好ましい。但し、分子中に、上記例示の官能基のうち、ケイ素原子結合アルケニル基および/またはケイ素原子結合水素原子のみを有するものであって、少なくとも一方を平均2個以上有するシロキサンオリゴマー(即ち、(A)成分または(B)成分に該当するもの)を除く。
【0050】
このような有機ケイ素化合物の具体例としては、
【0051】
【化1】

【0052】
【化2】

【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

(式中、nは1〜98の整数である。)
【0062】
【化12】


等が挙げられる。
【0063】
非ケイ素系有機化合物としては、例えば、一分子中に1個のアルケニル基と少なくとも1個のエステル基とを有する有機酸アリルエステル等が挙げられる。有機酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸;安息香酸、フタル酸、ピロメリト酸等の芳香族カルボン酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸等の飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの有機酸を含む有機酸アリルエステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸等のアリルエステル;安息香酸アリルエステル、フタル酸ジアリルエステル、ピロメリト酸テトラアリルエステル等の芳香族カルボン酸アリルエステル;酢酸アリルエステル、プロピオン酸アリルエステル、酪酸アリルエステル、吉草酸アリルエステル、ラウリン酸アリルエステル等の飽和脂肪酸アリルエステル等が挙げられる。
【0064】
エポキシ開環触媒は、分子中にケイ素原子を有しないものであって、例えば、有機金属キレート、アミン系、アミド系、イミダゾール系、酸無水物系等のエポキシ開環触媒が挙げられる。
【0065】
有機チタン化合物は、分子中にケイ素原子を有しないものであって、例えば、テトラブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、チタニウムステアレート、テトラオクチルオキシチタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコレート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトネート、チタニウムラクトネート、これらの縮合反応生成物であるオリゴマー、ポリマー等が挙げられる。
【0066】
本成分の接着性向上剤が、前記官能基として分子中にエポキシ基を有する化合物である場合には、該化合物のエポキシ当量は、好ましくは100〜5,000g/mol、より好ましくは150〜3,000g/molである。エポキシ当量がかかる範囲を満たすと、組成物は粘度が良好なものとなり、硬化物はより優れた接着性を有するものとなる。
【0067】
本成分の接着性向上剤は、上記で例示した中でも、特に、エポキシ当量が100〜5,000g/molの非ケイ素系有機化合物、エポキシ当量が100〜5,000g/molの有機ケイ素化合物、エポキシ当量が100〜5,000g/molのエポキシ開環触媒、ケイ素原子結合アルケニル基および/またはケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルコキシ基を1分子中にそれぞれ1個以上有する有機ケイ素化合物、炭素原子数12以上の有機チタン化合物、窒素原子を1分子中に1個以上含有する有機ケイ素化合物、あるいはこれらの組み合わせが好ましい。
【0068】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが必要であり、好ましくは0.5〜5質量部である。この配合量が0.1質量部未満である場合には、硬化物は十分な接着性を有しないことがあり、この配合量が10質量部を超える場合には、コスト的に高いものとなり、不経済である。
【0069】
(E)成分の接着性向上剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0070】
−任意成分−
本発明の組成物には、上記(A)〜(E)成分以外にも、必要に応じて、以下の成分を配合してもよい。これらの任意成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0071】
・反応制御剤
反応制御剤は、上記(C)成分の付加反応触媒に対して硬化反応の反応速度を調節する作用を有する化合物であれば特に限定されず、従来公知のものを用いることもできる。その具体例としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素原子を含有する化合物;硫黄原子を含有する化合物;アセチレンアルコール類等のアセチレン系化合物;メチルビニルシロキサン環状体等のケイ素原子結合アルケニル基を分子中のケイ素原子に対して50〜100モル%含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が挙げられる。
【0072】
反応制御剤の配合量は、反応制御剤の有する硬化反応の反応速度を調節する作用の度合いがその化学構造により異なるため、使用する反応制御剤ごとの最適な量に調整することが好ましい。最適な量の反応制御剤を配合することにより、組成物は硬化性に優れたものとなる。
【0073】
・無機充填剤
無機充填剤としては、例えば、結晶性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機充填剤;これらをオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した無機充填剤;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。但し、上記無機充填剤は、前記(D)成分以外のものである。
【0074】
・その他の成分
その他の成分として、例えば、分子鎖の一方の末端にケイ素原子結合アルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有し、他方の末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンや、分子鎖両端末がトリアルキルシロキシ基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン等の、一分子中に1個のケイ素原子結合水素原子または1個のケイ素原子結合アルケニル基を有し、他の官能基を有しないオルガノポリシロキサン;珪素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を有しない非反応性のオルガノポリシロキサン;クリープハードニング防止剤、可塑剤、チクソ性付与剤、顔料、染料、防カビ剤等や、硬化物のゴム強度を向上させるために、例えば、式:RSiO1/2(式中、Rは前記と同じである)で表されるシロキサン単位および式:SiO4/2で表されるシロキサン単位を含有する、アルケニル基含有あるいは非含有の、三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン等を配合することができる。
【0075】
さらに、本発明の組成物は有機溶剤を配合することなく好適に用いることができるものであるが、該組成物を各種基材にコーティングする際、コーティング装置等の条件により、トルエン、キシレン等の有機溶剤で該組成物を任意の濃度に希釈してもよい。
【0076】
<コーティング剤>
本発明の組成物は、上記(A)〜(E)成分、および場合によっては任意成分を混合することにより調製することができる。こうして得られた組成物は、繊維用のコーティング剤として、中でもエアーバッグ用のコーティング剤として、特に袋織りタイプのエアーバッグ用のコーティング剤として有用である。
【0077】
エアーバッグ用のコーティング剤として用いる場合には、組成物は室温(25℃)で液状であり、かつ低粘度であることが好ましい。その粘度は、好ましくは1,000〜300,000mPa・s、より好ましくは20,000〜90,000mPa・s、特に好ましくは30,000〜80,000mPa・sである。この粘度がかかる範囲を満たすと、エアーバッグの膨張状態が十分な時間持続するだけでなく、組成物のコーティング後に良好なコーティング層表面が得られる。また、上記組成物の硬化は、従来公知の硬化方法・条件に従って行えばよく、通常、120〜180℃で0.1〜10分間加熱することにより行うことができる。
【0078】
<エアーバッグ>
本発明の組成物の硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグ、好ましくは袋織りタイプのエアーバッグとしては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。その具体例としては、ナイロン66、ナイロン6、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維;不織布基材;熱可塑性樹脂シート状またはフィルム状基材等の織生地を基布とするエアーバッグ等が挙げられる。
【0079】
これらのエアーバッグに対して、本発明の組成物をコーティングする方法としては、特に限定されず、常法を採用することができる。ゴムコーティング層を形成するためにエアーバッグ(基布)表面に塗布する組成物の量は、乾燥状態で、通常10〜150g/m2であり、好ましくは15〜80g/m2であり、より好ましくは20〜60g/m2である。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を用いて本発明について具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、「部」とは「質量部」を表し、粘度は25℃における測定値である。また、実施例中で用いた接着性向上剤(i)〜(iii)は、下記化学式で表される構造を有するものである。
【0081】
・接着性向上剤(i)[エポキシ当量:238g/mol]
【0082】
【化13】

【0083】
・接着性向上剤(ii)
【0084】
【化14】

【0085】
・接着性向上剤(iii)
【0086】
【化15】

【0087】
[実施例1]
粘度が1,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40部、粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40部、主鎖のジオルガノシロキサン単位中にビニルメチルシロキサン単位を5モル%とジメチルシロキサン単位を95モル%とを含有し、粘度が700mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体20部、トリメチルシリル基で表面疎水化処理された比表面積120m2/gの疎水性シリカ17部、粘度が50mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.45質量%)1.0部、粘度が25mPa・sの分子鎖両末端および分子鎖非末端にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.54質量%)2.2部、1−エチニルシクロヘキサノール0.05部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属の質量換算で(A)成分と(B)成分との合計量に対して30ppm、接着性付与剤(i)1.5部、接着性付与剤(ii)0.5部、チタン酸オクチル0.5部、および比表面積450m/gであり、かつ平均粒径14μmのゲル法シリカ(東ソー・シリカ製、商品名:NIPGEL BY-001)10部を均一に混合することにより、組成物1を調製した。
【0088】
上記組成物1において、組成物中のケイ素原子結合ビニル基1モルに対する組成物中のケイ素原子結合水素原子(以下、「SiH/SiVi」という)は、3.9モルであった。
【0089】
この組成物1を150℃の温度で5分かけて硬化させ、JIS K6249に準じて、シート1を作製し、一般物性(硬度、引張強度、せん断時伸び、引裂強さ)を測定し、さらに以下の測定方法に従って、ピール接着力、インフレーション、耐ブロッキング性の試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0090】
<測定方法>
1.ピール接着力試験
エアーバッグ用のナイロン66(420デニール)織物2枚の間に、上記で調製した組成物を乾燥状態での厚さが0.5mmとなるように挟み、170℃で1分間、490kN/m2の圧力をかけることにより、該組成物を硬化させてゴムコーティング層を形成させた。このゴムコーティング層で接着された2枚のナイロン66織物を、幅2.5cm×長さ20cmに切断した後、該ナイロン66織物のそれぞれを他方とは180度の方向に50mm/分の速度で引っ張ることにより、ピール接着力試験を行った。
【0091】
2.インフレーション試験
調製した組成物を、塗工ムラなく均一に、かつ該組成物の使用量が最小となるように、コーターを用いて、袋織りタイプのエアーバッグの基体にコーティングした。その後、該エアーバッグをオーブンに入れ、170℃で1分間加熱することにより硬化させ、ゴムコーティング層を有する袋織りエアーバッグを作製した。このエアーバッグに、空気圧を690kN/m2として、空気を3秒間吹き込むことにより、該エアーバッグを瞬間的に膨らませ、その気密性を肉眼で観察した。ゴムコーティング層に剥がれが認められない場合を「良」と評価し「A」で示し、ゴムコーティング層に剥がれが認められた場合を「不良」と評価し「B」で示す。
【0092】
3.耐ブロッキング性試験
ゴムコーティング層の表面のべたつき感を評価するための試験として行った。一方の面に乾燥状態での厚さが0.2mmのゴムコーティング層が形成された布(被膜形成布)を幅100mm×長さ200mmに切断し、そのゴムコーティング面をガラス板に、空気が入らないように密着させた。この被膜形成布が密着したガラス板を垂直に立て、該被膜形成布がガラス板から自然落下するまでの経過時間を計測し、以下の評価基準に従って評価した。前記のとおりガラス板を垂直に立ててから、被膜形成布がガラス板から落下するまでの経過時間が、3秒未満であった場合を「良」と評価し「A」と示し、3秒以上10秒未満であった場合を「やや良」と評価し「B」と示し、10秒以上であった場合を「不良」と評価し「C」と示す。
【0093】
[実施例2]
粘度が1,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40部、粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40部、主鎖のジオルガノシロキサン単位中にビニルメチルシロキサン単位を10モル%とジメチルシロキサン単位を90モル%含有し、粘度が500mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体15部、(CH)SiO1/2単位39.5モル%、(CH)(CH=CH)SiO1/2単位6.5モル%、SiO単位54モル%からなるオルガノポリシロキサン樹脂5部、トリメチルシリル基で表面疎水化処理された比表面積170m/gの疎水性シリカ22部、粘度が45mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.14質量%)1.8部、粘度が12mPa・sの分子鎖両末端および分子鎖非末端にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.54質量%)5.3部、1−エチニルシクロヘキサノール0.03部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属の質量換算で(A)成分と(B)成分との合計量に対して15ppm、接着性付与剤(i)1部、接着性付与剤(iii)0.5部、チタン酸オクチル0.5部、および比表面積450m/gであり、かつ平均粒径14μmのゲル法シリカ(東ソー・シリカ製、商品名:NIPGEL BY-001)10部を混合することにより、組成物2を調製した。
【0094】
上記組成物において、SiH/SiViは3.4モルであった。
【0095】
この組成物2の一般物性、ピール接着力、インフレーション、耐ブロッキング性の試験・測定を、実施例1と同様にして行った。得られた結果を表1に示す。
【0096】
[比較例1]
粘度が1,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40部、粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40部、主鎖のジオルガノシロキサン単位中にビニルメチルシロキサン単位を5モル%とジメチルシロキサン単位を95モル%含有し、粘度が700mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体20部、トリメチルシリル基で表面疎水化処理された比表面積120m2/gの疎水性シリカ17部、粘度が50mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.45質量%)1.0部、粘度が25mPa・sの分子鎖両末端および分子鎖非末端にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.54質量%)2.2部、1−エチニルシクロヘキサノール0.05部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属の質量換算で(A)成分と(B)成分との合計量に対して30ppm、接着性付与剤(i)1.5部、接着性付与剤(ii)0.5部、チタン酸オクチル0.5部、および比表面積200m/gであり、かつ平均粒径8μmの沈殿シリカ(東ソー・シリカ製、商品名:NIPSIL LP)10部を混合することにより、組成物C1を調製した。
【0097】
上記組成物において、SiH/SiViは3.9モルであった。
【0098】
この組成物C1の一般物性、ピール接着力、インフレーション、耐ブロッキング性の試験・測定を、実施例1と同様にして行った。得られた結果を表1に示す。
【0099】
[比較例2]
粘度が1,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100部、トリメチルシリル基で表面疎水化処理された比表面積170m2/gの疎水性シリカ33部、粘度が45mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.14質量%)2.7部、粘度が12mPa・sの分子鎖両末端および分子鎖非末端にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.54質量%)8.3部、1−エチニルシクロヘキサノール0.06部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属の質量換算で(A)成分と(B)成分の合計量に対して15ppm、接着性付与剤(i)1.5部、接着性付与剤(ii)0.5部、およびチタン酸オクチル0.5部を混合することにより、組成物C2を調製した。
【0100】
上記組成物において、SiH/SiViは3.3モルであった。
【0101】
この組成物C2の一般物性、ピール接着力、インフレーション、耐ブロッキング性の試験・測定を、実施例1と同様にして行った。得られた結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
<評価>
表1から明らかなように、請求項1の要件を満たす実施例1〜2では、得られた硬化物(ゴムコーティング層)およびエアーバッグは、測定した全ての特性が優れていた。一方、ゲル法シリカが、不添加であったり、請求項1の要件を満たさない比較例1〜2では、該硬化物およびエアーバッグは、引張り強度、剪断時伸び、引裂き強さ、ピール接着力、耐ブロッキング性の少なくとも一項目が劣っていたり、インフレーション試験の結果が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、組成物中のケイ素原子に結合した水素原子が1〜7モルとなる量、
(C)付加反応触媒: 有効量、
(D)BET比表面積が260〜500m2/gであり、かつ平均粒径が0.5〜20μmのゲル法シリカ: 1〜50質量部、および
(E)接着性向上剤: 0.1〜10質量部
を含有してなる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物。
【請求項2】
有機溶剤を含まない請求項1に係る組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物の硬化物からなるゴムコーティング層を有するエアーバッグ。
【請求項4】
織りにより袋部を形成した請求項3に係るエアーバッグ。

【公開番号】特開2006−225636(P2006−225636A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3201(P2006−3201)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】