説明

液状化防止工法

【課題】硬化材の使用量を節約し、産業廃棄物として処理されるスライムの発生量を減少させることが出来る様な液状化防止工法の提供。
【解決手段】硬化材噴射装置を備えたロッド(10)をボーリング孔(B)内に挿入し、水平方向へ硬化材を噴射しつつロッドを回転して引き上げて地中固結体(CB)を造成する液状化防止工法において、ボーリング孔(B)から浮上したスライム(S)を収集し、収集したスライム(S)を地盤中へ注入(或いは充填)可能に処理し、該処理された硬化材(再利用硬化材)をロッド(10)底面中央に設けた噴射手段(N2)より噴射することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等において砂地盤等の軟弱地盤が液状化してしまうのを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液状化防止のための技術は、従来から、種々提案されている。
係る液状化防止技術において、液状化を防止するべき土壌に地中固結体を造成し、以って、地盤の液状化を防止する技術が知られている。
【0003】
その様な地中固結体を造成するに当たって、例えば、液状化を防止するべき土壌にボーリング孔を削孔し、ボーリング孔内に、硬化材噴射装置(いわゆる「モニタ」)を備えたロッドを挿入し、水平方向へ硬化材を噴射しつつ、ロッドを回転して引き上げる工法が知られている。
係る工法によれば、硬化材により土壌を細断しつつ、硬化材と土壌とを混合し、以って、円柱状の地中固結体が造成される。
【0004】
しかし、係る工法を実施するに際して、硬化材噴射装置から噴射された硬化材が、細断された土壌と混合したスライムとして、大量に地上側に溢れ出してしまう。そして、地上に溢れ出したスライムは、産業廃棄物として廃棄処理しなければならない。
そのため、大量の硬化材が、地中固結体を構成することなく、廃棄されてしまうので、硬化材の浪費されてしまうという問題が存在する。
また、硬化材を包含するスライムは産業廃棄物であり、専門の処理施設で処分する必要があるので、廃棄処分するコストが掛かってしまうという問題も有している。それに加えて、施工現場から専門処理施設までスライムを運搬しなければならず、その様な運搬費用も処理コストとして必要となる。
【0005】
その他の従来技術として、例えば、薬液注入による地盤を改良して液状化を防止する方法であって、薬液が注入されて浸透した領域の中央部に、薬液浸透部を押し広げるための拡張用液体を注入して、薬液浸透部の体積を増加させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る技術は、硬化材噴射装置を備えたロッドを挿入し、水平方向へ硬化材を噴射しつつ、ロッドを回転して引き上げる工法には、適用することが出来ない。
【特許文献1】特開2006−291452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、硬化材噴射装置を備えたロッドを挿入し、水平方向へ硬化材を噴射しつつ、ロッドを回転して引き上げる工法に適用可能であって、硬化材の使用量を節約し、産業廃棄物として処理されるスライムの発生量を減少させることが出来る様な液状化防止工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液状化防止工法は、硬化材噴射装置を備えたロッド(三重管ロッド10)をボーリング孔(B)内に挿入し、水平方向へ硬化材(フレッシュ硬化材)を噴射しつつロッドを回転して引き上げて地中固結体(CB)を造成する液状化防止工法において、ボーリング孔(B)から浮上したスライム(S)を収集し、収集したスライム(S)を(調整槽16で)地盤中へ注入(或いは充填)可能に処理し、該処理された硬化材(再利用硬化材)をロッド(10)底面中央に設けた噴射手段(ノズルN2)より噴射することを特徴としている(請求項1:図1〜図3)。
【0008】
ここで、明細書において、「フレッシュ硬化材」なる文言は、土壌切削のために噴射される硬化材であって、噴射される以前の段階において土壌中に噴射されたことがない硬化材、換言すれば、初めて土壌中に噴射された硬化材を意味している。
一方、明細書において「再利用硬化材」は、土壌に噴射されたことがある硬化材であって、スライムとして地上側に浮上した後、必要な処理(例えば、調整槽16における調整)を施した後に、土壌中に再充填するべく、地中側へ噴出或いは注入される硬化材を意味している。
【0009】
本発明の実施に際して、水平方向に噴出されるフレッシュ硬化材の噴流(フレッシュ硬化材ジェット)の周囲を、高圧エア噴流(高圧エアジェット)で包囲するのが好ましい。
そのために、前記ロッド(10)は三重管により構成され、その内部にフレッシュ硬化材用の流路(L101)と、高圧エア用の流路(L102)と、再利用硬化材用の流路(L103)とを有しているのが好ましい。
【0010】
また、本発明において、ボーリング孔(B)の地上側端部に配置された口元管(26)を介して、スライム(S)が処理施設(収集したスライムを地盤中へ注入可能に処理する施設:調整槽16)に供給されるのが好ましい(請求項2:図4)
【0011】
或いは、本発明において、前記ボーリング孔(B)の周辺領域に地下水吸引用孔(ウェルポイント40)を削孔し、当該地下水吸引用孔(40)からボーリング孔(B)周辺の地下水を汲み上げるのが好ましい(請求項3:図5〜図7)。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明によれば、水平方向へ噴出されるフレッシュ硬化材の噴流(望ましくは、高圧エア噴流で包囲されたフレッシュ硬化材の噴流)により、液状化を防止するべき地盤が掘削されると共に細かく切断されて、フレッシュ硬化材と混合し、細かく切断された地盤と混合した硬化材はスライム(S)として地上側に上昇する。
地上側に上昇したスライム(S)は、所定の処理を施された後に、再利用硬化材として、再びロッド10の下方へ注入される。
【0013】
地上側へ噴出したスライム中に含まれる硬化材を、再利用硬化材として、地盤中に再充填されるので、当該再利用硬化材の分だけ、フレッシュ硬化材の使用量を減少することが出来る。
そして、硬化材が混合したスライムは、調整された後に地盤中に再充填されるので、産業廃棄物として処理するべきスライムの量を減少する事ができる。そして、硬化材が除去された残存分のスライムは、硬化材を包含していなければ土壌と水との混合物に過ぎないので産業廃棄物ではない。従って、施工現場で廃棄したとしても、環境に悪影響を与えることが無い。
【0014】
ここで、液状化防止工法では、地中に造成された固結体の要求強度が、建物の基礎杭等に比較して、遥かに低い。液状化防止工法では、地震に際して、土壌の間隙水圧が上昇しなければ良い。そのため、地中固結体の強度は、硬化すれば良い、というレベルで足りる。
従って、地上に上昇したスライムを分級することなく、再利用硬化材として地中に再充填しても、造成された地中固結体(CB)は、液状化防止に必要な強度を有することができる。
【0015】
また本発明によれば、再利用硬化材が硬化しない段階であれば、再利用硬化材が注入(充填)された領域にロッド(10)を再挿入して、再充填或いは再撹拌を行うことができる。そして、係る再充填或いは再撹拌を行うことにより、造成される地中固結体(CB)の強度を、より向上することが可能である。
【0016】
さらに本発明によれば、硬化材の添加量を調整することにより、地中固結体(CB)の半径方向(R)内方の領域の強度を向上することが出来る。そのため、従来の地盤改良工法では脆弱であったボーリング孔(B)近傍の領域の強度を向上することが出来る。
また、硬化材の添加量を調節することにより、地中固結体(CB)の全体的な強度を均一化することも可能である。
それに加えて、本発明では地中固結体(CB)の半径方向(R)内方の領域に再利用硬化材を充填しているので、従来の工法で必要とされる半径方向(R)中央のボーリング孔削孔(箇所ロッドを挿入して引き上げる領域)部分の穴埋めが不要となる。
【0017】
本発明において、ボーリング孔(B)の地上側端部に配置された口元管(26)を介して、スライム(S)が処理施設(収集したスライムを地盤中へ注入可能に処理する施設:調整槽16)に供給されるように構成すれば(請求項2)、ボーリング孔(B)とロッド(10)との間の環状空間(28)からスライムが地上側に漏出することが防止され、スライムの漏出による作業現場の汚染が確実に防止される。
それに加えて、地下水が存在する等の理由(地下水圧)により、再利用硬化材が充填或いは注入し難い場合であっても、再利用硬化材を充填圧力或いは注入圧力を高くして、液状化を防止するべき領域へ再利用硬化材を容易に充填することが出来る。ボーリング孔(B)の地上側端部に配置した口元管(26)により、再利用硬化材の充填圧力或いは注入圧力を高くしても、スライムの地上側への漏出が防止できるからである。
【0018】
本発明において、前記ボーリング孔(B)の周辺領域に地下水吸引用孔(ウェルポイント40)を削孔し、当該地下水吸引用孔(40)からボーリング孔(B)周辺の地下水を汲み上げる様に構成すれば(請求項3)、地下水吸引用孔(40)から地下水を汲み上げて地下水位(L−GW)を低下させることが出来るので、再利用硬化材を噴出するのを妨げる地下水圧が低減する。それと共に、地下水が除去された土壌粒子間に再利用硬化材が浸透(矢印SC)し易くなる。
【0019】
地下水圧が低下し、或いは、地下水が除去された土壌粒子間に再利用硬化材(スライム)が浸透する(矢印SC)ので、地下水が存在するため再利用硬化材を充填することが困難である地盤においても、再利用硬化材を確実に充填或いは注入することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1〜図4を参照して第1実施形態を説明する。
【0021】
図1において、液状化防止工法に用いる装置の概略構成として、三重管ロッド10と、スライム吸引装置(例えば、ベルマウス)14と、スライムタンク15と、調整槽16と、ポンプ(例えば、サンドポンプ)17と、フレッシュ硬化材造成プラント22と、高圧エア源(例えば、コンプレッサ)24とを有している。
【0022】
液状化防止工法を実施するべき地盤Gには、ボーリング孔Bが削孔され、ボーリング孔Bには、三重管ロッド10が挿入されている。
三重管ロッド10の外周面10Sでロッド先端の近傍には、フレッシュ硬化材とエアを高圧で噴出するノズルN1、N1(図示の例では2個示されているが、ノズルの個数は限定しない)が配置されている。そして、三重管ロッド10の底面10Bの半径方向(図1の矢印R方向)中央には、再利用硬化材を噴出するノズルN2が配置されている。
図1における符号28は、三重管ロッドの外周面10Sと、ボーリング孔Bとで形成される環状空間を示す。
【0023】
ここで、明確には図示されていないが、ノズルN1、N1は、フレッシュ硬化材を噴出するノズルの周囲を、高圧エアを噴出する複数のノズルが包囲する様な構造となっており、フレッシュ硬化材の噴流を高圧エアの噴流で包囲する様に噴出する構成となっている。
図1における符号Jは、フレッシュ硬化材の噴流を高圧エアの噴流で包囲した複合ジェットを示す。
【0024】
ボーリング孔Bの地上側端部には、ピット(或いは、釜場)2が形成されており、地中から浮上したスライムSは、ピット2で一時的に貯留される。
【0025】
ピット2で貯留されたスライムSは、スライム吸引装置(ベルマウス)14、スライム用ラインL1を介して、スライムタンク15に貯蔵される。
スライムタンク15において、公知の手法により、貯蔵されたスライム中に硬化材(例えばセメント)が混合しているか否かが測定される。
スライム中にセメントが混合していなければ、スライムを地中に再充填しても、再充填された地盤を強化することが出来ず、液状化防止に寄与しないからである。
換言すれば、セメントが混合しているか否かを測定するのは、再充填されたスライムが硬化するか否かを確認するためである。
【0026】
セメントが混合しているか否かの測定は、例えば、フェノール溶液を添加したり、リトマス試験紙を用いてpHを測定したり、或いは、スライムの比重を求めること等により行われる。さらに、図示しないブリージング袋にスライムを採取して、固化するか否かを確認することによって、セメントが混合しているか否かを測定することが出来る。
特に、比重を計測して、セメントが混合しているか否かを測定するのが好適である。
【0027】
スライムタンク15で、セメントが混合しているか否かが測定されたスライムは、スライム用ラインL2を介して調整槽16に送られる。調整槽16では、スライムタンク15における測定結果に基いて、再利用可能となる様に調整が行われる。
例えば、スライムタンク15で比重を計測された場合には、計測された比重に基づいて、水を混合し、或いは、硬化材(例えばセメント)を混合して、再利用可能に調整されるのである。
【0028】
明確には図示されていないが、スライムの発生量が、再利用される量を遥かに上回ってしまう場合には、余剰分は、スライムタンク15或いは調整槽16から、図示しない排出系統を介して排出され、図示しない処理施設に運搬され、処理される。
【0029】
調整槽16で再充填或いは再利用可能に調整されたスライムは、スライム用ラインL3、ポンプ17(例えばサンドポンプ)、スライム用ラインL4、スイベルジョイント30を介して、三重管ロッド10の再利用硬化材用流路(図2の符号L103)に供給される。
【0030】
フレッシュ硬化材は、フレッシュ硬化材造成用のプラント22から、硬化材供給ラインL5、スイベルジョイント30を介して、三重管ロッド10のフレッシュ硬化材用流路(図2の符号L101)に供給される。
【0031】
図1において、符号24は高圧エア源(例えば、コンプレッサ等)であり、高圧エア源24で発生した高圧エアは、エア供給ラインL6、スイベルジョイント30を介して、三重管ロッド10の高圧エア用流路(図2の符号L102)に供給される。
【0032】
三重管ロッド10は、図2で示す様に、フレッシュ硬化材用流路L101が半径方向Rの最内方に位置している。エア用流路L102は、フレッシュ硬化材用流路L101よりも半径方向R外方に位置している環状の流路である。
再利用硬化材用流路L103は、三重管ロッド10の半径方向Rの最外方に位置している。再利用硬化材用流路L103が半径方向R最外方に位置しているのは、流路断面積を大きくして、地盤G中に再充填される再利用硬化材の流量を多くするためである。
【0033】
フレッシュ硬化材用流路L101及びエア用流路L102は、三重管ロッド10側面に設けたノズルN1、N1に連通している。
再利用硬化材用流路L103は、三重管ロッド10の底面10Bに設けたノズルN2に連通している。
【0034】
液状化防止工法の施工に際しては、三重管ロッド10側面に設けたノズルN1、N1から硬化材(フレッシュ硬化材)を高圧で噴射して、土壌を切削する。
ここで、ノズルN1、N1は、土壌を細かく切断出来る様な配置となっているのが好ましい。
【0035】
三重管ロッド10を回転することにより、フレッシュ硬化材の噴流はロッド10を中心に回転し、土壌をロッド10を中心とする円形に切削する。
そして、切削された土壌とフレッシュ硬化材とが混合する。その際に、スライムが発生する。
【0036】
発生したスライム(液状化防止工法で上がってきたスライム)は、上述した通り、ピット2を経て、スライムタンク15に貯蔵される。そして、調整槽16で再充填或いは再利用可能に調整された後に、三重管ロッド10の底面10Bに設けたノズルN2から、原位置土壌に再充填される(再利用)。
【0037】
ここで、再充填される硬化材(再利用硬化材:スライム)は、三重管ロッド10の側面に設けたノズルN1、N1からは注入されない。再利用硬化材を三重管ロッド10の側面に設けたノズルN1、N1から注入した場合には、注入された再利用硬化材が地上側へ上昇するスライムに連行されて(矢印S)、原位置土壌中に再充填されなくなってしまうからである。
換言すれば、スライムSに連行されて地上側へ噴き出してしまうことを防止するために、ロッド10の底部に設けられたノズルN2から、再利用硬化材を注入(再充填)する。
【0038】
そのまま三重管ロッド10を上昇させることにより、液状化防止のための地中固結体CBを造成することが出来る。そして、地上側へ噴出したスライムに含まれる硬化材を、再利用硬化材として再充填するので、その分だけ、フレッシュ硬化材の使用量を減少することが出来る。
また、スライムから再充填されるべき硬化材を除去することにより、産業廃棄物として処理するべきスライムの量を減少する事ができる。
【0039】
また、図1、図2で示す第1実施形態では、液状化防止のために地中固結体CBを造成するべき箇所へ、三重管ロッド10を再度挿入して、ノズルN1、N1からフレッシュ硬化材を噴出しつつ、ノズルN2から再利用硬化材を注入することが可能である。すなわち、いわゆる「再充填」あるいは「再撹拌」が可能となる。
係る再充填あるいは再撹拌を行えば、三重管ロッド10を引き上げた際に造成される地中固結体CBの強度を、より強くすることが可能である。
【0040】
図3を参照して、「再充填」あるいは「再撹拌」が可能である理由を説明する。
図3において、再利用硬化材は、範囲D(ハッチングを付して示す範囲:三重管ロッド10から半径方向Rについて所定の範囲内)に充填される。
そのため、再利用硬化材が硬化しない限り、範囲Dは柔軟であり、三重管ロッド10を再挿入して、再充填あるいは再撹拌を行うことができる。
【0041】
換言すれば、ノズルN2の位置は、再利用硬化材が充填される領域が、図3の半径方向R内側の範囲Dとなる様に、三重管ロッド10の底部10Bの半径方向中央に配置されているのである。
【0042】
ここで、再利用硬化材(再充填されるスライム)は、硬化材濃度(セメント濃度)が高い。その結果、図1において、地中固結体CBの半径方向R内方における領域の強度を向上することが出来る。
ここで、明確には図示されてはいないが、硬化材濃度(セメント濃度)を適宜調節することにより、地中固結体CBの強度が全体的に均一となる様にせしめることも可能である。
【0043】
従来の硬化材を注入する地盤改良工法では、造成された地中固結体において、半径方向R中央のボーリング孔削孔(三重管ロッドを挿入して引き上げる領域:或いは、図3の中心線C近傍の領域)は、スライムが上昇する経路となるため、脆弱となる。
それに対して、図3で示す様に、図示の実施形態では、半径方向R内方の領域D(中心線C近傍の領域)における硬化材濃度が高いので、従来の地盤改良工法では脆弱な領域(領域Dに相当する領域)の強度が高くなる。
【0044】
また、従来の硬化材を噴射する工法では、半径方向R中央のボーリング孔削孔(三重管ロッドを挿入して引き上げる領域)部分の穴埋めが必要であり、当該穴埋めの分だけ、フレッシュ硬化材の使用量が増加する。これに対して、地中固結体CBの半径方向R内方の領域Dに再利用硬化材を充填する図示の実施形態では、従来技術の様な「穴埋め」が不要である。
【0045】
図4は第1実施形態の変形例を示している。
図1〜図3の第1実施形態においては、ボーリング孔B或いはピット2からスライムSが漏出する恐れが存在する。
それに対して、図4で示す変形例においては、ボーリング孔Bの地上側に口元管26を配置して、ボーリング孔Bの内壁面と三重管ロッド10の外周面10Sとの間の環状空間28に圧入し、以って、スライムSが漏出することを防止している。
【0046】
図4の変形例において、地上側に浮上するスライムSは、口元管26に連通するスライム用ラインL1Aを介して、スライムタンク15に送られる。そして、ボーリング孔Bの地上側端部が口元管26により閉塞されているため、スライムが漏出することが防止される。
そのため、図4の変形例では、スライムの漏出による作業現場の汚染が確実に防止される。
【0047】
それに加えて、図4の変形例によれば、地下水が存在する等の理由(地下水圧)により再利用硬化材が充填できない場合においては、ノズルN2からの再利用硬化材の充填圧力或いは注入圧力を高くして、地中固結体CBを造成するべき領域へ再利用硬化材を確実に充填することが出来る。
ボーリング孔Bの地上側端部が口元管26により閉塞されているので、ノズルN2からの再利用硬化材の充填圧力或いは注入圧力を高くしても、スライムが地上側に溢れ出てしまう事が防止されるのである。
【0048】
図4の変形例のその他の構成及び作用効果については、図1〜図3で説明したのと同様である。
【0049】
次に、図5〜図7を参照して第2実施形態を説明する。
図1〜図4の第1実施形態において、地下水が存在する地盤では、再利用硬化材が注入或いは充填できなくなる可能性がある。
それに対して、図5〜図7の第2実施形態は、地下水の水位を、再利用硬化材を注入或いは充填するべき領域よりも低くして、地下水が存在する地盤においても再利用硬化材が注入出来る様に構成されている。
【0050】
図5において、複数のウェルポイント(地下水吸引用孔)40を設け、従来公知の手法により、地下水を地盤Gから汲み上げる(図5の符号Wg)。
複数のウェルポイント40から地下水を汲み上げる結果として、図5及び図6の符号L−GWで示す地下水のレベル(地下水位)が低下する。
【0051】
ウェルポイント40から水を汲み上げ、地下水のレベル(地下水位)が低下すれば、その分だけ、再利用硬化材を充填する余裕が出来る。
すなわち、地下水を汲み上げて地下水位L−GWを低下せしめれば、再利用硬化材を噴出するのを妨げる地下水圧が低減する。それと共に、図5において矢印SCで示す様に、地下水が除去された土壌粒子間に再利用硬化材(スライム)が浸透可能になる。
【0052】
このように、地下水により再利用硬化材を充填することが困難であった地盤に対しても、地下水圧が低下し、或いは、地下水が除去された土壌粒子間に再利用硬化材(スライム)が浸透する(矢印SC)ので、確実に再利用硬化材が充填或いは注入されるのである。
【0053】
ここで、ウェルポイント40を介して地上側に排出(Wg)されるのは、硬化材を含まない地下水であるため、産業廃棄物として処理する必要が無く、作業現場で排出しても、作業現場の環境に悪影響を及ぼすことは無い。
【0054】
なお、ノズルN1、N1から噴射されるフレッシュ固化材及び高圧エアの噴流Jは、地下水が存在する場合においても、確実に地盤G中に噴出することが、発明者により確認されている。
【0055】
図7で示す様に、複数(図示では4箇所のみ示している)のウェルポイント40は、地盤改良のために造成される地中固結体CBを等間隔に包囲するように配置されるのが好適である。
【0056】
ここで、図7では地中固結体CBが一つのみ造成されているが、広範囲に亘って地盤の液状化の防止策を講じたい場合等においては、地中固結体CBを複数造成する必要がある。その様な場合、ウェルポイント40は、地中固結体CBの造成に際して削孔されるボーリング孔Bとして利用出来るように配置されるのが好適である。ボーリング孔B削孔のコストが省略できるからである。
【0057】
図5〜図7の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
例えば、図示はされていないが、図4で示す口元管26を、図5〜図7の第2実施形態に設けることが可能である。
【0058】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、図示はされていないが、図4で示す口元管26を、図5〜図7の第2実施形態に設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態における構成を示すブロック図。
【図2】実施形態で用いられる三重管ロッドの横断面図。
【図3】第1実施形態において、再利用硬化材の再充填後の挙動を示す説明図。
【図4】第1実施形態の変形例の構成を示すブロック図。
【図5】第2実施形態における構成を示すブロック図。
【図6】図5における地下水位を説明する図。
【図7】第2実施形態の平面図。
【符号の説明】
【0060】
2・・・ピット
10・・・三重管ロッド
14・・・吸引装置/ベルマウス
15・・・スライムタンク
16・・・調整槽
17・・・ポンプ
22・・・フレッシュ硬化材造成プラント
24・・・高圧エア源
26・・・口元管
28・・・環状空間
30・・・スイベルジョイント
40・・・・ウェルポイント/地下水吸引用孔
B・・・ボーリング孔
CB・・・地中固結体
G・・・地盤
N1、N2・・・ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化材噴射装置を備えたロッドをボーリング孔内に挿入し、水平方向へ硬化材を噴射しつつロッドを回転して引き上げて地中固結体を造成する液状化防止工法において、ボーリング孔から浮上したスライムを収集し、収集したスライムを地盤中へ注入可能に処理し、該処理された硬化材をロッド底面中央に設けた噴射手段より噴射することを特徴とする液状化防止工法。
【請求項2】
ボーリング孔の地上側端部に配置された口元管を介して、スライムが処理施設に供給される請求項1の液状化防止工法。
【請求項3】
前記ボーリング孔の周辺領域に地下水吸引用孔を削孔し、当該地下水吸引用孔からボーリング孔周辺の地下水を汲み上げる請求項1、2の何れかの液状化防止工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−163714(P2008−163714A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307(P2007−307)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】