説明

液状媒質をばっ気する方法と設備

気体と液体とを混合するための設備と方法であって、前記設備が円蓋と、下部ハウジングと、ばっ気装置と、浮動装置とを含んでいる。この場合、相互に間挿されて回転する複数組のディスクが、可変速度の駆動装置により駆動される平行の軸上で作業し、ディスクに半径方向に取り付けた条材が液体を混合区域内へ掬い上げ、かつ空気と液体とを混合区域内へ送入し、その結果、せん断力が生じて、空気が酸素の乏しい液体内へ送入される。円蓋と下部ハウジングとで気密の空間が形成されており、しかも送風機によって気圧が高められることで気泡がはじけ、酸素の乏しい液体内への空気の最適混入が可能になる。下部ハウジングの取入れ口と排出口とが水線下に位置し、そのため、局所環境内への気泡、騒音、臭気の漏出が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、例えば空気を液体と混合するための設備と方法に関わり、より具体的には、廃水、汚水、何らかの水塊又は液塊を含む工業廃棄物のばっ気に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市の汚水処理システム及び工業廃棄物排出システムから出される廃水は、通常、廃水溜めと呼ばれる大きな貯留池、排水溝、溜め池に集められる。この種の廃水溜めは、1メートル前後(数フィート)の深さでよく、2万平方メートル程度(数エーカー)の表面積があればよい。廃水は、通常、多量の有機、無機の廃棄物を含んでおり、これらは、処理されなければ、著しい悪臭を発生し、かつ有毒物を発生させる。
廃水処理の最も普通の方法としては、活性スラッジ法が用いられる。この処理法は3つの大きな段階を含んでいる。第1処理段階は、焼却炉又は埋め立て処理に送られる高濃度のスラッジと、残りの、2次処理を受ける廃液とを単に分離する処理から成る。第2の処理段階では、有機物質の生化学的な消費が行われる。液状スラッジ内に存在する微生物が、廃水溜め内の生物量をご馳走される。細菌が有機廃棄物を食尽するには、広範囲のばっ気が必要である。
【0003】
第3の処理段階は、汚染の程度と水質浄化の要求とに応じて簡単となったり広範囲となったりする。この段階の目的は、第1、第2段階で除去されなかった無機汚染物質や有機物の除去である。最後に、処理された水は環境へ再び排出される。この排水は、河川に廃水を排出する前に、連邦、州、郡、都市の各政府の排水基準、例えば、海洋生物を順応させるのに必要と思われる最小溶存酸素レベルに合致せねばならない。
活性スラッジ処理は、廃水内の有機汚染物質を好気性菌に消費させる生化学的処理法である。これらの細菌は好気性であるから、その消費効率は、液状スラッジ内の利用可能な溶存酸素量に大幅に依存する。この廃水処理法の場合、ばっ気により液体内へ空気を導入し、微生物による有機物質の分解のための好気性環境が用意される。ばっ気の目的は2つある。すなわち、微生物の代謝に必要な酸素の供給と、微生物が、分解された浮遊有機物と密に接触するように混合することである。
【0004】
これまでに、種々のばっ気の手法が使用されてきた。最も普通の2つのばっ気システムは、表面下システムと機械式システムである。表面下ばっ気システムの場合、空気又は酸素が、ポンプによって表面下へ、それも廃水中に沈められたディフューザーその他の装置へ供給される。細かな穴からの空気の拡散が表面下のばっ気形式であり、それにより、空気が、極めて小さい気泡形態で廃水溜め内へ導入される。廃水処理用の酸素ディフーザーの1つの型は、廃水溜め内でディフューザーが、常時、異なる深さ及び位置へ移動する必要があり、廃水と微生物との混合は極めて少ない。加えて、無反応の空気又は酸素の気泡が残り、それらが表面へ浮上する。酸素が使用されている場合、廃水の表面へ出てくる酸素は、溜めの上方に存在する空気中へ発散するので、空費されることになる。
【0005】
機械式のばっ気・混合システムは、種々の形式のものがあり、例えば、下向き給気ポンプは小噴水を作り出し、水かき車は廃水の表面積を増大させる。加えて、この種のすべての装置は、多量の重い廃水を運動させたり、空気中へ飛び出させることで、廃水を混合する結果、多量のエネルギーが消費される。これらの装置の或るものは、多量の悪臭や泡を発生させる一方、廃水を攪拌し、多量の電力を消費する結果、作業に高額の電力費がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、廃水、汚水、工業廃棄液をばっ気する経済的な装置と方法が必要であり、より具体的にいえば、溶存酸素を効果的に廃水、汚水、工業廃棄液内へ添加する一方、悪臭、泡、エネルギー消費を最小化する処理法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単に説明すると、好適実施例の場合、本発明は、前記欠点を克服し、気体、例えば空気を液体、例えば廃水溜め内の廃水、汚水、工業廃液と混合する方法と装置を得ることで、前記装置が必要と認められていることに応えるものである。
その主な態様によれば、大まかに言って、好適形式の本発明は、廃水、汚水、工業廃液内への溶存酸素添加用の浮動加圧ドーム形ばっ気装置と方法である。
より詳しく言えば、本発明による好適ばっ気装置は、2つ以上の部分浸漬された複数組の互いに挟入されたディスクを有し、該ディスクが、可変速度の駆動装置によって駆動される平行の軸に沿って一斉回転することで作業する。端キャップを有する1つ以上の条材が、ディスクに半径方向に取り付けられ、ハブからディスク縁部まで延びている。一方のディスクの条材が、液体を廃水面へ汲み上げると、他方のディスクの条材が、空気を廃水面へ掻き下げ、ちょうど水線下の混合区域で空気と廃水とが互いに密に接触する。双方のディスクによるせん断力により、酸素の減少した廃水中へ空気中の酸素が混入され、それによって廃水の溶存酸素含有量が高められる。
【0008】
したがって、本発明の特徴及び利点は、混合区域内で対向する条材の前縁上の液体間にせん断力を作り出し、それにより空気と廃水とを効果的に混合する能力である。
加えて、条材は、その後面に放出穴を有している。端キャップは、液体側に廃水の渦巻きを、また気体側には吹雪状の気泡を、条材の後面の放出穴を通して混合区域内へ強制的に送入し、空気と廃水の効果的な混合を生じさせる。
したがって、本発明の特徴及び利点は、従来の方法より多数の好気性菌を養い得る能力にあり、その結果、廃水溜め内の有機物の生化学的な消費が高められる。
使用時、ばっ気装置は、浮動プラットフォーム上に配置され、水線に対する設定位置に維持される。浮動装置は、気密のカバー又は円蓋で覆われ、しかも、気圧がカバー下又は円蓋下で送風機によって高められることで、大気が円蓋下では高い気圧となる。
【0009】
本発明の別の特徴及び利点は、可変気圧によってカバー下又は円蓋下で大気の最適溶解が可能になる点である。
本発明の別の特徴及び利点は、気泡が浮動装置から逃れるため水線の下に戻り、その結果、更に液状スラッジのばっ気が進む点である。
本発明の別の特徴及び利点は、液体取入れ口が密閉環境を作る水線の下にあることである。
本発明の特徴及び利点は、液体排出が、密封環境を作る水線の下で行われることである。
本発明の別の特徴及び利点は、使用中に発生する気泡を最少化する能力であり、しかも、円蓋内で高められる気圧が、機械式ミキサーによって生じる気泡をはじけさせる機能を持つことである。
【0010】
本発明の別の特徴及び利点は、カバー又は円蓋が、局所環境へ臭気が漏出しないように封じ込めており、その結果、悪臭を放出しない作業が可能な点である。
本発明の別の特徴及び利点は、カバー又は円蓋が、機械的攪拌によって発生する騒音が局所環境へ漏出しないように防止し、その結果、事実上騒音なしの作業が可能な点である。
本発明の以上の特徴及び利点とその他の特徴及び利点とは、以下の説明及び特許請求の範囲を添付図面を参照して読むことにより、一層明らかになるだろう。
本発明は、好適実施例及び別の実施例の詳細な説明を添付図面を参照して読むことにより、よりよく理解されよう。類似の構成部材には、全図面を通じて等しい符号が付されている。
【0011】
法律により許容される全範囲まで、本PCT出願は、発明人ロバートJ.ガレッタに代って、譲渡出願番号11/131,113を有する2005年5月17日申請の「液状媒質をばっ気する方法と装置」と題する米国仮特許出願の優先権及び恩恵を請求するものである。
図1−図5に示した本発明の好適実施例及び別の実施例を説明するに当って、明快さを得るために具体的な用語を用いることにする、本発明は、しかし、選択された用語に限定されるものではなく、各特別の部材は、類似の形式で類似の機能を発揮するように動作するあらゆる技術上の等価部材を含むものと理解されたい。
【0012】
図1−図5について言えば、本発明の好適実施例は、廃水、汚水、産業廃棄物内へ溶存酸素を添加するための浮動式加圧円蓋付ばっ気装置と方法である。重要なことは、本発明が、液状媒質内への溶存空気又は溶存気体の送入量を増すことが望まれるか有用であるどのような液状環境にも利用できる点を理解することである。したがって、本発明の設備及び方法は、廃水溜め内で好適利用するのが好都合なように説明されるが、他方、廃水溜め内での使用又は実施に限定されるものではない。更に、本発明は、ゴルフ場の池、水生植物を有する水、魚類及び/又は他の海洋生物を有する水等の水に利用できるが、それらに限定はされない。本発明の装置及び方法は、ゴルフ場の池、酸素の減少した湖、河川等を含む液状媒質内へ、空気その他の気体が溶解されねばならない多くの用途に適しており、同様に環境面及び/又は産業上の処理にも適している。
【0013】
次に図1を参照すると、完全に囲まれた円蓋付き浮動式ばっ気装置10の一好適実施例が示されている。ばっ気装置10は、制御された加圧環境内で作業する機械式の気体溶存装置である。円蓋12は、好ましくは廃水や汚水の溜め、産業廃棄物の溜め、その他選択された液体処理溜めの水線24近くの浮動装置14によって支持されている。円蓋12は、好ましくは溜めの液面上方に位置する上部13を含み、これにより、ばっ気装置10の機械式攪拌部を内包する空間又は画室の囲いが形成される。円蓋12は、好ましくは気密の耐食性材料、例えばガラス繊維又は金属で構成される。他の適当な材料も、本発明の所期の範囲を逸脱することなしに利用可能なことが認められよう。すなわち、円蓋12は、円蓋下に空間又は画室の囲い15により形成される好ましくは高い選択気圧の区域を維持可能などのような材料で構成してもよい。
【0014】
円蓋12によって形成される画室の囲いは、水線22の上方に空間を形成し、この空間内に、ばっ気装置10が発生させる泡や悪臭を捕集することができる。ばっ気装置10が発生させる泡は、したがって、ばっ気装置10のすぐ近くに保留され、逃げるには水線の下へ戻らざるを得ないから、更に液体への気体の混入が促進される。ばっ気装置10の機械式攪拌によって発生する臭気も、また円蓋12内に保留され、周囲の環境への漏出が防止される結果、事実上、悪臭なしの作業が行われる。加えて円蓋12は、防音壁として機能し、ばっ気装置10の機械式攪拌により発生する騒音を封じ込める結果、環境への騒音の漏出が防止され、その結果、事実上騒音のない作業が可能になる。
【0015】
送風機16は、好ましくは、何らかの工業用可変速度式回転送風機でよい。送風機16は、好ましくは水銀柱約88.8−101.6cm(35−40in)又は約703−2109kg/m(1−3psi)の範囲まで円蓋12の下の空気圧を高めうる空気流及び圧力定格を有するどのような標準設計でもよい。但し、混合される気体と液状媒質とに応じて、より高い気圧を使用することもできる。送風機16は、好ましくは回転式だが、どのようなファンでも、遠心式、回転式、その他のどの種類の送風機でも、送風源でもよい。送風機16は、上部13の近くに配置された単式ユニットであるのが好ましい。しかし、送風機16は、単式でも複式でもよく、円蓋12の内部空間15への空気の送入が可能な、ばっ気装置10のどの箇所に配置してもよい。送風機16は、好ましい作動をした場合、円蓋12内の気圧を上昇させ、円蓋下で気体が液体に混入されるのに理想的な環境を作り出し、しかも、同時に液体の表面積が、ばっ気装置10による液体の攪拌及び回転によって増大する。加えて、円蓋12の下での気圧上昇により気泡がはじけることで、ばっ気装置10が発生させる気泡の効果的な低減が助けられる。
【0016】
送風機16は、溜めの水位24に対するばっ気装置10の機械式攪拌機の位置調節を容易にするのに使用できるのが好ましい。言い換えると、円蓋12内の気圧は、送風機16が作動すると上昇するので、それによって円蓋12下の水位は溜めの静止水位よりも僅かに低くなる。
浮動装置14は、ポンツーンが好ましいが、どのような材料製でもよく、ばっ気装置10を浮遊状態に維持できるどのような形状でもよい。浮動装置14は、円蓋12の支持兼位置決め用の浸漬フレーム又は浮きフレーム46(図示せず)、下部ハウジング18、その他のばっ気装置10構成部材のいずれかに取り付けるのが好ましい。浮動装置14は、好ましくは、バラスト(図示せず)を含み、それによって、使用者又は制御装置により制御されるばっ気装置10の水線24に対する高さ調節が可能になる。このバラストによって、使用者又は制御装置は溜めの静止水位に対するばっ気装置10の位置、液体の比重力、円蓋12下の気圧を調節できる。浮動装置14は、浮動装置14の上面17に保守デッキ26を含むのが好ましい。この場合、保守デッキ26は、好ましくは円蓋12の周部に沿って外方へ延びるようにする。
【0017】
下部ハウジング18は、好ましくは、閉鎖側壁と底部(図示せず)とを有する部分浸漬された導管を形成し、これにより、開放頂部(図示せず)と、対向開放側面21,23とを備えた水中通路が形成される。下部ハウジング18は、フレーム・システム46(図示せず)に取り付けるのが好ましい。下部ハウジング18は、耐水性の耐食性材料で作るのが好ましいが、指定通路を通る液体に流入流出を方向付けることの可能などのような材料でも構成することができる。取入れ口21と名づけられた開放端21は、好ましくは、ばっ気装置10に入ってくる廃棄物の破片、海洋生物、大きな粒子を阻止するための取入れスクリーン20を有している。加えて、排出口と名づけられた開放端23は、好ましくは、ばっ気装置10に入ってくる廃棄物の破片、海洋生物、大きな粒子を阻止するための排出スクリーン22を有している。このスクリーンの配置によって、好ましくは水線下に浸漬される下部ハウジング18に取入れ口21及び排出口23を設けることが可能になり、それにより密閉環境が作り出され、ばっ気装置10から漏出する騒音、気泡、悪臭が最少化される。
【0018】
円蓋12は、好ましくは耐食性ヒンジ48及びラッチ50組立体(図2に見られるような)を介して下部ハウジング18に取り付けるのが好ましい。ヒンジ40及びラッチ50が好ましいが、標準的な機構を有する適当などのような取り付け具も使用できる。そのような取り付け具には、円蓋12を下部ハウジング18と接触保持可能な構成である限り、ボルト/ナット、ラッチ、ロック、キャッチ、留め金などが、含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0019】
駆動装置28は、好ましくは可変速度のAC又はDC駆動装置であり、該駆動装置は、何らかの減速ギヤ、ベルト、チェーン、被駆動軸を含むが、これらに限定されない。駆動装置28は、ばっ気装置10の機械式攪拌機を回転可能な馬力、可変回転速度、方向性の各定格を有するどのような標準的な設計でもよい。駆動装置28は、浮動装置14のフレーム46に固定するのが好ましい。ストラット部材又はブレース部材(図示せず)が、好ましくはフレーム46用の概して剛性の支持体を形成し、かつ駆動装置28用の取り付け板として機能している。駆動装置28及び/又はばっ気装置10を操作可能な動力源は、交流及び直流の電源、圧縮空気源、太陽電池を含むが、これらに限定はされない。
【0020】
制御装置30は、多チャネルデジタル・モータ制御装置とするのが好ましい。制御装置30は、駆動装置28に適合するどのような標準的な駆動制御装置でもよい。制御装置30は、他の特徴、例えば円蓋12下の圧力をモニタして、円蓋12内を指定圧力に維持するように送風機16を調整する送風制御装置の特徴を含んでいる。また、制御装置30は、ばっ気装置10に対して、時間、昼夜、日、週、月、季節、その他の操業時間割を予め設定するためのスケジュール装置を含んでいる。制御装置30は、また環境センサ(図示せず)からの入力を得ることができ、該入力には、廃水温度、廃水中の溶存酸素量、空気温度が含まれるが、これらに限定はされない。しかも、その場合、光センサが、測定値を夜間、昼間いずれに集めたかは問わず、検出し、記録するのに加えて、各センサの示度が、好ましくは、ばっ気装置10の内部及び/又は外部から集められ、利用可能である。
【0021】
制御装置30は、複数環境センサからの事実上リアルタイムのこれらの入力に基づいて、ばっ気装置10の作業を修正し、液体内への空気の混入速度の効率を最大化することができ、しかも、エネルギー消費は最小化される。制御装置30は、上部13の近くに配置するのが好ましいが、浮動装置14の上面17の保守デッキ26から操作員が接近可能な、ばっ気装置10上の何処に配置してもよい。制御装置30は、無線周波数、赤外線信号、その他適当な送受信源のいずれかによって遠隔操作可能であり、それにより、ばっ気装置10を遠隔プログラミング又は遠隔操作することができる。
【0022】
図1に示すように、ばっ気装置10は、好ましくは、浮動装置14のフレーム46に適宜に固定された吊上げ用目穴32を有している。吊上げ用目穴32を介して、浮動装置14のフレーム46と共に、ばっ気装置10は、ホイスト又はクレーンにより廃水溜め内・外への吊上げ吊下ろし可能である。吊上げ用目穴42は、単一目穴、複数目穴いずれの形式でもよく、また浮動装置14のフレーム46に取り付けるのに適当な、ばっ気装置10上の何処にでも配置できる。
次に図2を参照すると、ばっ気装置10の内部機構が好適配置された円蓋付き浮動ばっ気装置10の正面断面図が示されている。ばっ気装置用の2基の好適駆動装置42,44、すなわち先導駆動装置42と従属駆動装置44とである。先導駆動装置42と従属駆動装置44とは、好ましくは等方向に等速で回転し作業するが、異なる速度で作動可能であることが好ましい。例えば従属駆動装置44は、先導駆動装置42の2倍の速度で作業できよう。
【0023】
先導駆動装置42と従属駆動装置44とは、双方ともフレーム46に取り付けるのが好ましい。フレーム・システム46は、好ましくは、軽量の耐食性材料で作られ、該材料には、管系、ケーブル類及び/又はアングル鉄又はアルミニウム、これらの組み合わせ、又は他の適当な材料が含まれるが、これらには限定されない。フレーム46は、先導駆動装置42、従属駆動装置44、円蓋12、下部ハウジング18、浮動装置14、ばっ気装置10のその他のシステム構成部品を支持し、かつ配置できるどのような材料で構成してもよい。吊上げ目穴32は、フレーム・システム46に固定取り付けされている。
羽根54は、下部ハウジング18の取入れ口21又は排出口23に取り付け可能な可変流量制御装置である。羽根54は、好ましくは耐食性材料製である。複数の羽根54により、下部ハウジング18に出入する液流を制御可能にするのが好ましい。それにより液体への空気の混入が最大化される。複数羽根54の位置決めは、操作員が設定するか、又は制御装置30により制御することができる。
【0024】
次に図4Aを参照すると、一好適ディスク60が正面図で示されている。ディスク60は、好ましくは、耐食性材料製の薄手の平らなディスクである。ディスク60は、廃水のスラッジの中で回転可能な何らかの材料、形状、寸法で構成することができる。可能な形状には、星形、方形、6角形、8角形、その他液状媒質内で混合区域及びせん断力発生区域を画成可能な何らかの形状が含まれるが、これらの形状に制限はない。ディスク60は、好ましくは、軸45(図4B)にディスク60を取り付けるための中心部にキー付きハブ62を有している。キー付きハブ62が好ましいが、他の適当な取り付け手段も、軸45へのディスク60の取付け手段を有する標準設計であれば利用できる。好適なキー付きハブ62により、軸45上でのディスクの間隔設定及び調節が可能になり、適正間隔が維持される。
【0025】
次に図3を参照すると、好適の条材70が斜視図で示されている。条材70は、好ましくは耐水性の耐食性材料で作られるが、液体及び/又は気体を運搬できるどのような材料で構成してもよい。条材70は、好ましくは4分円形、U字形、概して3角形いずれかの形状の端キャップ72と、開放前面74と、後面75と、取付け面76とを有しており、しかも、これらの面74,75,76は、好ましくは条材70に沿って長手方向に延び、液体及び/又は気体を運搬するための条材70の通路の周縁部を形成している。加えて、条材70は、好ましくは、後面75を貫通して形成された複数放出穴を有している。
【0026】
条材70は、寸法、角度、放出穴配置を変更することで、ばっ気装置10による、どのような液状媒質内への溶存気体混入率も最大化できる。例えば、固形物含有率の高い廃水上では、高速運動する小型の条材のほうが効率的だろうが、固形物の少ない廃水上では、低速の大型条材のほうが効率的であり、海洋生物への害も少なかろう。更に、条材70は、液体上での遠心力を考慮に入れて寸法、形状、角度、放出穴配置を変更できる。複数条材70は、好ましくはディスクの両側に、各開放面74を等方向に向けて半径方向に固定される。各条材70は、ディスク60の中心から半径方向外方へ、ディスク60の外周縁又は辺縁へ向って延び、しかもディスク60には、好ましくは条材70の平らな面76が、好ましくは耐食性のボルトとナット(図示せず)により取付けられる。取付け手段は、耐食性のボルトとナットが好ましいが、標準的な機構であれば、どのようなものでもよく、ディスク60及び条材70の材料に応じて選択できる。該取付け手段には溶接、接着、エポキシ樹脂が含まれるが、それらに限定されない。図3に示した実施例は、ディスクに取付ける条材70の数に対する仕様又は制限となるものではない。
【0027】
次に、図4Aを参照すると、1対の好適ディスク60の正面断面図が示され、好適な配置、重なる面積、回転方向が示されている。先導ディスク81と従属ディスク92とは、後述する通りに重なるように配置されるのが好ましい。ディスク組立体は双方とも、液状媒質内に好ましくは部分的に浸漬され、好ましくは直径の少なくとも40%の深さまで浸漬されるが、どのような深さまで液状媒質内へ浸漬されてもよい。その場合、ディスク組立体の少なくとも一部は円蓋12下の大気に曝露される。混合区域100は、図5にも示されているように、水面下の、先導ディスク81と従属ディスク92とが重なる部分の間に形成される。先導ディスク81の複数条材70は、廃水溜めから液体を掬い上げて、混合区域100内へ運ぶ。従属ディスク92の条材70は、好ましくは円蓋12下の空気を捉えて混合区域100内へ運び込む。
【0028】
図4Aに示されているように、条材70が液体から出る方向に回転すると、廃水溜めから液体が上方へ運ばれる。運ばれたこの液体は、放出穴78から逃げることで、空気と接触する付加的な液体表面積が得られ、その結果、液体内への空気の付加的混入が行われる。条材70が下方へ回転し、液体内へ没入すると、空気が廃水溜め内へ運び込まれる。空気が複数の放出穴78から逃げることで、液体と接触する付加的空気が液中に与えられ、その結果、液体への気体の付加的混入が達せられる。
【0029】
次に、図4Bを参照すると、互いに間挿された2組の複数ディスク60の正面断面図が示されている。先導駆動装置42は、先導軸43に結合され、1個以上のディスク60(先導ディスク組立体81,83,85,87として示されている)が、好ましくは先導軸43に取り付けられている。従属駆動装置44は従属軸45に結合され、1個以上のディスク60(従属ディスク組立体92,94,96,96,99として示されている)が、好ましくは従属軸45に取り付けられている。図4Bに示した実例は、ディスク配列のディスク数、軸の数、駆動装置の数に関する仕様や限定を示すものではない。
【0030】
これらの可変パラメータは、被処理液体の溶存気体に対する要求及び他の用途上の要求によって決められる。先導、従属のディスク組立体は、平行に配置され、組立体のディスクは適宜の間隔をおいて互いに間挿され重なるように配置されている。ディスク60の間隔設定は、好ましくはキー付きハブ62を使用して行うが、スペーサ(図示せず)を使用してもよい。好ましくは、先導、従属ディスク組立体の重なりは、ディスク60の直径の45%だが、双方の組のディスクの重なりの程度は、先導軸43と従属軸45との平行間隔を変更することにより調節できる。但し、その間隔をディスク70の半径未満とすることが条件である。
【0031】
次に図5を参照すると、ばっ気装置10の拡大部分断面図が示されており、これにより混合区域100の動態の説明が容易になる。先導ディスク81の条材70が廃水溜めから液体を捕捉し、それを混合区域100へ掬い上げる。従属ディスク92の条材70は、円蓋12の下から空気を捕捉し、混合区域100内へ液体を押し込むのに加えて空気を送り込む。ディスク81,92と、一緒に同時運動する2条材70とが、混合区域内で上下動する液体の間にせん断力Fを生じさせ、その結果、酸素の乏しい廃水内へ空気を進入させるせん断力Fが得られる。せん断力Fが酸素の豊富な混合区域に生じる結果、廃水内への酸素の混入が増大する。
【0032】
更に図5を参照すると、ばっ気装置10の拡大部分断面図により、混合区域100の動態の説明が一層容易になる。先導ディスク81の条材70は廃水溜めから液体を捕捉し、それを混合区域100へ掬い上げる。先導ディスク81の条材70の後面75に設られた複数放出穴78は、液体を流体の渦流として混合区域100内へ漏出させる。従属ディスク92の条材70は、円蓋12の下から空気を捕捉し、混合区域100内へ送り込む。従属ディスク90の条材の後面75に設けられた複数放出穴78は、気泡を吹雪状に混合区域100内へ漏出させることで、廃水内への酸素混入を増大させる。
双方のディスク組立体は同時に回転運動するように設定できるが、個別の駆動速度で回転させることもでき、それにより液体/空気、せん断力、液体渦流、吹雪状気泡の事実上無限の組み合わせが可能になり、それによって廃水内への酸素の最適混入が可能になる。
【0033】
考えられる別の実施例は、ばっ気装置10を、例えば排水管等の管内で使用するため、浮動装置14なしで使用するのに適した形式にしたものである。更に、考えられる別の実施例は、例えば排水管等の管内で使用するために、下部ハウジング18なしで使用できる形式のものである。その場合、ばっ気装置10は、好ましくは管内に機械式に取り付けられ、配置される。管内の液体流量は、双方のディスク組立体が、液状媒質内に好ましくは部分的に、好ましくはディスク直径の少なくとも40%の深さに浸漬される水位が維持されるように調節するのが好ましい。しかし、双方のディスク組立体は、液体媒質内にどのような深さまでも浸漬できるが、その場合、ディスク組立体の少なくとも一部は円蓋12下の大気に曝されるようにする。
【0034】
以上、本発明の代表的な実施例を説明したが、当業者は、ここに開示した内容は単に説明目的のものであり、本発明の枠内で更に種々の別形式、適応形式、変更態様が可能であることに留意すべきである。したがって、本発明は、図示し説明した個々の特定実施例に限定されるものではなく、もっぱら特許請求の範囲の記載によって制限されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の好適実施例によるばっ気設備の断面図。
【図2】図1のばっ気設備の正面断面図。
【図3】本発明による放出穴を有する条材の斜視図。
【図4A】本発明による1対のディスクとその回転方向を示す正面断面図。
【図4B】本発明による互いに間挿され2組のディスクの配列を示す平面断面図。
【図5】液体/気体混合区域の動態を示す拡大部分断面図で、本発明の好適実施例による半径方向条材と放出穴とを示す図。
【符号の説明】
【0036】
10 ばっ気装置
12 円蓋、カバー
13 上部
14 浮動装置
15 画室、内部空間
16 送風機
17 浮動装置の上面
18 下部ハウジング
20 取水スクリーン
21 開放端、取水端
22 排水スクリーン
23 開放端、排水端
24 水線、水位
26 保守デッキ
32 吊上げ用目穴
42 先導駆動装置
43 駆動軸
44 従導駆動装置
45 駆動軸
46 フレーム・システム
48 ヒンジ
50 ラッチ
54 羽根
60 ディスク
62 キー付きハブ
70 条材
72 端キャップ
74 前面
75 後面
76 取付け面
78 放出穴
81,83,85,87、89 先導ディスク組立体
92,94,96,98,99 従属ディスク組立体
100 混合区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を気体に曝すことにより液体を処理する設備において、該設備が、
a)浮動装置により支持された円蓋と、
b)前記浮動装置により支持された下部ハウジングとを含み、前記下部ハウジングが前記円蓋に結合され、しかも、前記円蓋下と浮動装置上方とには密閉空間が画成されている、液体を気体に曝すことにより液体を処理する設備。
【請求項2】
更に、ばっ気装置を含む、請求項1に記載された設備。
【請求項3】
前記ばっ気装置が、平行な1対の軸と、前記軸の一方の軸に軸方向に配置された少なくとも1つの第1ディスクと、前記軸の他方の軸に軸方向に配置された少なくとも1つの第2ディスクとを含み、しかも、前記第2ディスクが前記第1ディスクに対し間挿されている、請求項2に記載された設備。
【請求項4】
更に、複数のディスクが含まれ、前記複数のディスクが、更に先導ディスクと従属ディスクとを含む、請求項3に記載された設備。
【請求項5】
前記軸を回転させるための少なくとも1駆動装置を含む、請求項3に記載された設備。
【請求項6】
更に、前記先導ディスクによって担持された少なくとも1条材を含み、各前記条材が端キャップを有する通路を画成し、かつまた少なくとも1条材が前記従属ディスクにより担持されている、請求項4に記載された設備。
【請求項7】
前記少なくとも1条材が半径方向に配置されている、請求項6に記載された設備。
【請求項8】
更に、複数の放出穴を含み、前記放出穴が各前記条材の後面に形成されている、請求項6に記載された装置。
【請求項9】
更に、少なくとも1送風機が含まれ、前記送風機が、前記密閉空間内の気圧に影響を与えうる位置に配置される、請求項1に記載された設備。
【請求項10】
前記送風機が、前記密閉空間内に可変気圧を発生させる、請求項9に記載された設備。
【請求項11】
前記下部ハウジングが、更に、浸漬された液体取入れ口を含む、請求項1に記載された設備。
【請求項12】
前記下部ハウジングが、更に、浸漬された液体排出口を含む、請求項1に記載された設備。
【請求項13】
前記下部ハウジングが、更に、浸漬された液体取入れ口と排出口とを含む、請求項1に記載された設備。
【請求項14】
前記円蓋が耐食性である、請求項1に記載された設備。
【請求項15】
前記下部ハウジングが耐食性である、請求項1に記載された設備。
【請求項16】
前記ばっ気装置が耐食性である、請求項3に記載された設備。
【請求項17】
前記条材が耐食性である、請求項6に記載された設備。
【請求項18】
前記浮動装置がポンツーンである、請求項1に記載された設備。
【請求項19】
更に、フレームが含まれ、前記フレームが前記円蓋と、前記下部ハウジングと、前記浮動装置とに結合されている、請求項5に記載された設備。
【請求項20】
前記駆動装置が前記フレームに結合されている、請求項19に記載された設備。
【請求項21】
更に、バラストが含まれている、請求項1に記載された設備。
【請求項22】
前記取入れ口が、更に、スクリーンを含む、請求項11に記載された設備。
【請求項23】
前記排出口が、更に、スクリーンを含む、請求項12に記載された設備。
【請求項24】
更に、制御装置が含まれ、前記制御装置が前記駆動速度を制御するようにされている、請求項5に記載された設備。
【請求項25】
前記制御装置が無線制御式である、請求項24に記載された設備。
【請求項26】
更に、少なくとも1センサが含まれている、請求項1に記載された設備。
【請求項27】
前記センサが、排出液体の溶存酸素レベルを測定する、請求項26に記載された設備。
【請求項28】
液体を混合する方法において、前記方法が、
a)円蓋と、先導ディスクと、従属ディスクと、少なくとも2条材とを含む設備を得る段階を含み、しかも前記第1条材が前記先導ディスクに担持され、前記第2前記が前記従属ディスクに担持されており、更に前記方法が、
b)前記ディスクの間の混合区域内で液体を捕捉する段階と、
c)前記第1条材により前記混合区域内へ液体を強制的に掬い上げる段階と、
d)前記第2条材により前記混合区域内へ液体を強制的に送入する段階とを含む、液体を混合する方法。
【請求項29】
前記円蓋が浮動式である、請求項28に記載された方法。
【請求項30】
更に、前記混合区域内にせん断手段を含み、前記せん断手段が、前記先導ディスクの前記第1条材からの液体の第1力と、前記従属ディスクの前記第2条材からの液体の第2力とを含む、請求項28に記載された方法。
【請求項31】
前記混合区域が、水線下の、前記ディスクとディスクとの間の区域と定義され、しかも、前記先導ディスクと前記従属ディスクとが重なっている、請求項28に記載された方法。
【請求項32】
密閉円蓋下で行われる、請求項28に記載された方法。
【請求項33】
加圧円蓋下で行われる、請求項30に記載された方法。
【請求項34】
前記密閉円蓋が臭気を閉じ込める、請求項32に記載された方法。
【請求項35】
前記密閉円蓋が騒音を封じ込める、請求項32に記載された方法。
【請求項36】
前記密閉円蓋が気泡を閉じ込める、請求項32に記載された方法。
【請求項37】
管内で行われる、請求項28に記載された方法。
【請求項38】
液体を混合する方法において、
a)円蓋と、先導ディスクと、従属ディスクと、少なくとも2条材とを含む設備を得る段階を含み、しかも前記第1条材が前記先導ディスクによって担持され、前記第2条材が前記従属ディスクによって担持されており、更に、
b)前記ディスク間の混合区域内に液体を捕捉する段階と、
c)液体を前記第1条材によって前記混合区域内へ強制的に掬い上げる段階と、
d)液体を前記第2条材によって前記混合区域内へ強制的に送入する段階とを含む、液体を混合する方法。
【請求項39】
前記円蓋が浮動式である、請求項38に記載された方法。
【請求項40】
前記条材が放出穴を含む、請求項38に記載された方法。
【請求項41】
更に、前記混合区域内に混合手段を含み、前記混合手段が、前記先導ディスクの前記条材に設けられた前記放出穴から出る少なくとも1渦流と、前記従属ディスクの前記条材に設けられた前記放出穴から出る少なくとも1気泡とを含む請求項40に記載された方法。
【請求項42】
前記混合区域が、水線下の、前記ディスクとディスクとの間の区域と定義され、しかも前記先導ディスクと前記従属ディスクとが重なっている、請求項38に記載された方法。
【請求項43】
密閉円蓋下で行われる、請求項38に記載された方法。
【請求項44】
加圧円蓋下で行われる、請求項38に記載された方法。
【請求項45】
管内で行われる、請求項38に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−540122(P2008−540122A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512472(P2008−512472)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/019089
【国際公開番号】WO2006/125002
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507380090)
【Fターム(参考)】