説明

液状物噴出器

【課題】ポンプシリンダ内で作動部材に対応してポペット弁体が上下動する液状物噴出器において、作動部材付勢用のコイルがポペット弁体の一部に圧接して弁の働きを阻害することを回避する。
【解決手段】ポンプシリンダの内周面下部に付設した複数の係止突片Sと、作動部材と連係してポンプシリンダ内に設けたポペット弁体との間に、コイルスプリングCを介装し、ポペット弁体が有する当接突部Gの上面のうち、少なくともコイルスプリングCの基端部48から先端部側への螺旋方向Lと同じ周方向に臨む部分を、上記螺旋方向Lと直角な向きに対して傾斜する第1スライド斜面Aとしており、この第1スライド斜面Aは、上記基端部48の端面と斜めに向き合いかつ当該基端部と当接可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物噴出器、特に液状物噴出容器に適用できる液状物噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な液体噴出器は、ポンプシリンダ内を昇降する筒状ピストンからステムを介してノズルヘッドを起立した作動部材を設け、ポンプシリンダの下端に付設した吸込み弁から吸上げ管などを介して液体を吸込み可能に設けている。
【0003】
こうした液体噴出器の一種として、ポペット弁体を、ポンプシリンダの下部からステム内部へ嵌入して、作動部材及びポンプシリンダの双方に対して上下動可能に設けたものが知られている(特許文献1)。
【0004】
この液体噴出器は、上記ポンプシリンダの下部内周から係止突片を、また上記ポペット弁体の下部外周から当接突部をそれぞれ互い違いに突出し、係止突片と筒状ピストンとの間にコイルスプリングを介装している。
【0005】
さらにこの液体噴出器は、ポペット弁体の下端部とポンプシリンダとの間に吸込み弁を、またポペット弁体の上部とステムとの間に逆止弁をそれぞれ形成している。
【0006】
ポペット弁体付きの液体噴出器において、ノズルヘッドを下降してポンプシリンダの上方側に螺着可能としたタイプのものも知られている(特許文献2)。流通段階での省スペース化のためである。
【0007】
このタイプの液体噴出器において、ステムに代えて、ステムに連結した筒状ピストンの内面側へポペット弁体の先部を嵌入したものも知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−129708
【特許文献2】特開平09−012050
【特許文献3】特開2004−00860
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献2〜3の液体噴出器の構成では、作動部材のノズルヘッドを回転させながら上下動させるために、ポペット弁体の作動不良を起こす虞があった。
【0010】
この作動不良の原因は次のように考えられる。まず上記ノズルヘッドを回転させることで、筒状ピストンとの摩擦によりコイルスプリングも回動しようとする。
【0011】
そうすると、参考図である本願図8に示すように、コイルスプリングCの基端部(下端部)がポペット弁Pの当接突部Gの側部に突き当たる。なお、図8ではポペット弁体Pを想像線で描いている。
【0012】
コイルスプリングCは当接突部Gを圧接し、コイルスプリングCの基端部とポンプシリンダTの係止突片Sとの間にポペット弁体Pの当接突部Gが挟まる可能性がある。この現象は、ポペット弁体が上昇する過程で生ずる。詳しくは後述する。
【0013】
このようになるとポンプシリンダに対するポペット弁体の昇降が適切に行われず、吸込み弁及び逆止弁の適切な開閉が行われない。
【0014】
本発明の第1の目的は、ポンプシリンダ内で上方付勢された作動部材と連動する当接突部付きの昇降弁体(ポペット弁体など)を有する液状物噴出器において、コイルスプリングが当接突部に圧接して弁の働きを阻害することを回避することである。
【0015】
本発明の第2の目的は、上記構成の液状物噴出器において当接突部に対するコイルスプリングの圧接力を緩和するための形状を採用したことを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の手段は、第1弁座12を下端部に有するシリンダ筒2の内周面下部から相互に隙間を存して複数の係止突片Sを内方突設したポンプシリンダTと、
ポンプシリンダ内を昇降可能な筒状ピストン26から起立するステム28の上端部にノズルヘッド30を付設した作動部材Oと、
上記第1弁座12に下端面41を対峙させて、ポンプシリンダTの下部から作動部材O内へ嵌入され、かつ上記係止突片S同士の隙間内へ突入する複数の当接突部Gを有する昇降弁体Pと、
上記係止突片Sに係止された基端部48を有し、その係止突片Sと筒状ピストン26との間に介装されたコイルスプリングCと、
を具備し、
上記作動部材Oをポンプ操作の下限位置よりさらに押し下げ、ノズルヘッド30をポンプシリンダT側へ螺着させることが可能な液状物噴出器において、
上記当接突部Gの上面のうち、少なくともコイルスプリングCの基端部48から先端部50側への螺旋方向Lと同じ周方向に臨む部分を、上記螺旋方向Lと直角な向きに対して傾斜する第1スライド斜面Aとしており、
この第1スライド斜面Aは、上記基端部48の端面と斜めに向き合い、かつ当該基端部と当接可能としている。
【0017】
本手段では、図5に示すように、ポペット弁体などの昇降弁体Pの当接突部Gの上面に第1スライド斜面Aを設けることを提案する。第1スライド斜面の上をコイルスプリングCの基端部48が接し、摺動するので、図8のように基端部と係止突片Sとの間に当接突部が挟まれてしまうことがない。
【0018】
「作動部材」は、図1に示す通常のポンプ動作の下限位置(LL)より下方へ押し下げたときに昇降弁体と係合し、昇降弁体を引き上げる部分(42)を有することが好適である。「昇降弁体」は、作動部材内部に先部を嵌合させ、作動部材及びポンプシリンダの双方に対して昇降可能な弁体である。本明細書における「スライド斜面」は、基端部と当接突部との摺動を容易とするための傾斜面である。「基端部と当接可能」という言葉の意味は図5の説明で述べる。
【0019】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記第1スライド斜面Aとともに、上記コイルスプリングCの基端部48の端面を、上記螺旋方向Lと直角な向きに対して傾斜する補助斜面Bとしており、この補助斜面Bは、当接突部Gの上面側に向かい、かつ、水平方向に対する補助斜面Bの勾配を第1スライド斜面Aに対する勾配と同等以上としている。
【0020】
本手段では、図2に示すように、第1スライド斜面Aと併せて、コイルスプリングCの基端部48の端面を、補助斜面Bとすることを提案している。これにより当接突部Gに対するコイルスプリングの当接用角部54が鈍角となり、当接突部へのコイルスプリングの当りがより柔らかとなる。なお、本手段の補助斜面Bは、当該面上を物がスライドするという機能を有しない点で後述の第2スライド斜面と区別される。
【0021】
第3の手段は、第1の手段を有し、かつ上記第1スライド斜面Aに代えて、上記コイルスプリングCの基端部48の端面を、水平方向に対して傾斜しかつ当接突部Gの上面側に向かう第2スライド斜面Aとしている。
【0022】
本手段では、第1スライド斜面Aに代えて、図7に示す如くコイルスプリングCの基端部48の端面を、第2スライド斜面Aとしている。この第2スライド斜面に当接突部Gの端部が接し、相対的にスライドするので、基端部と係止突片との間に当接突部が挟まることがない。上記第2スライド斜面は、当接突部との圧接応力fの向きを当該斜面と垂直な方向に(図8の構造に比べて下向きに)変える作用を有する。
【発明の効果】
【0023】
第1の手段に係る発明によれば、昇降弁体Pの当接突部Gの上面に、基端部48の端面側に向かう第1スライド斜面Aを形成したから、ノズルヘッド30を螺合箇所へセットさせることによる昇降弁体の作動不良を減少できる。
【0024】
第2の手段に係る発明によれば、上記第1スライド斜面Aとともに、コイルスプリングCの基端部48の端面を、上記螺旋方向Lと直角な向きに対して傾斜する補助斜面Bとしたから、当接突部Gに対するコイルスプリングCの摩擦を低減できる。
【0025】
第3の手段に係る発明によれば、コイルスプリングCの基端部48の端面を当接突部Gの上面側に向かう第2スライド斜面Aとしたから、ノズルヘッド30を螺合箇所へセットさせることによる作動不良を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液状物噴出器の縦断面図である。
【図2】図1の液状物噴出器の要部拡大縦断面である。
【図3】図2の液状物噴出器のIII−III方向の横断面図である。
【図4】図1の液状物噴出器のノズルヘッドを螺合位置へ降下させた状態での縦断面図である。
【図5】図1の液状物噴出器の一の変形例の縦断面図である。
【図6】図1の液状物噴出器の作用説明図である。
【図7】図1の液状物噴出器の他の変形例の縦断面図である。
【図8】本発明との対比のための参考例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1から図6は、本発明の第1の実施形態に係る液状物噴出器を示している。この噴出器は、液体に適用できる。説明の都合上、本発明の基本構造(特徴部分以外の構造)を先に説明する。
【0028】
この液状物噴出器は、図1に示す如く、ポンプシリンダTと、装着部材Mと、作動部材Oと、ポペット弁体Pと、コイルスプリングCとで構成されている。これら各部材は、とくに断らない限り合成樹脂で形成することができる。
【0029】
ポンプシリンダTは、シリンダ筒2と、抜止め筒22とを有する。
【0030】
上記シリンダ筒2は、筒壁4の上端部に、容器体口頸部への係止用の外向きフランジ6を付設している。この外向きフランジ6の内周部から嵌合筒8を起立している。上記筒壁の下部は下端小径のテーパ状壁10に形成しており、その下端部内面には、環状の第1弁座12を形成している。またこの第1弁座下方から取付筒14を垂下している。この取付筒には吸上げ管20を嵌着できるように形成している。もっともこれら構造は適宜変更することができる。
【0031】
上記テーパ状壁10上方のシリンダ筒部分内周面には、筒軸方向内側へ突出する複数(図示例では6つ)の係止突片Sを等角的に形成している。各係止突片Sは垂直方向に長いリブである。係止突片Sの上下方向の一部には、図2に示す如く後述のコイルスプリングの下部を係止するための係止面18を設ける。
【0032】
上記抜止め筒22は、図1に示す上記嵌合筒8の外面に嵌着され、この外面から嵌合筒内方へ折り返す2重筒状であり、その内筒部の下端部に後述の筒状ピストンを係止可能に形成し、かつ当該内筒部の内面にねじ部を形成している。
【0033】
装着部材Mは、容器体口頸部への装着筒(螺合筒)の上端に付設した内方張出し板を、上記外向きフランジ6の上に載置して、当該外向きフランジに嵌着している。
【0034】
作動部材Oは、上記シリンダ筒2内を摺動自在な筒状ピストン26と、この筒状ピストンから起立するステム28と、このステムの上端部に付設したノズルヘッド30とで構成されている。ノズルヘッド30は、前方へ突出するノズル32を有する。
【0035】
上記筒状ピストン26からステム28を経てノズル32へ至る液体流路の上流側部分(好ましくは筒状ピストン及びステム下半部で形成される部分)には、後述の逆止弁を形成し、また下流側部分には吐出弁36を設けている。
【0036】
上記筒状ピストン26は、上記ステム28の下部内面に嵌合する縦筒部26aと、この筒壁外面に付設した鍔部26bと、鍔部の外端から上下各方向へスカート状に突出するシール筒部26cとで形成している。
【0037】
上記縦筒部26aの上端部は、逆止弁用の第2弁座38として、先端小径のテーパ状の弁座筒に形成している。この第2弁座38の内径は、後述のポペット弁体の先部の外径より小さくかつポペット弁体の中間部より大きい。
【0038】
また縦筒部26aの下端部は、鍔部26bより下方へ延びており、後述のポペット弁体との嵌合用脚部27に形成し、この嵌合用脚部を後述のポペット弁体Pの基部に嵌着させて、筒状ピストンの上昇に伴い、ポペット弁体Pを引き上げることができるように形成している。
【0039】
上記ステム28は、下端部を大内径部として、上記縦筒部の上部を嵌合している。また図示例では、ステム28の上部には吐出弁36を配置している。
【0040】
本実施形態では、筒状ピストン26とステム28とを別体にしているが、両者を一体に形成することもできる。例えばステム28の下端から下方へスカート状に拡開する筒状ピストンを連続形成すればよい。
【0041】
筒状ピストンとステムと一体とする場合において、逆止弁用の弁座の構造は、従来公知のものを採用することができる。例えばステムの下端部内周から上内方へテーパ状に突出する環状突起部で形成することができる(特許文献2の図1参照)。またステムの下部内周面に適数の縦溝を縦設し、ポペット弁体の先部が縦溝穿設箇所内へ進退するようにしてもよい(特許文献1の図1参照)。
【0042】
上記ノズルヘッド30は、上記ステム28の上端部外面への嵌合用の連結筒34を裏面から垂下しており、この連結筒34の外面には、上記抜止め筒22の内側のねじ部と螺合可能な第2のねじ部を設けている。これにより、商品の流通過程では、図4に示すようにノズルヘッド30を押し下げ、上記連結筒34を抜止め筒22の内面に螺着し、固定できるようにしている。もっともそれらねじ部の形成箇所は適宜変更することができる。
【0043】
ポペット弁体Pは、図1に示す如く、上記シリンダ筒2の下部内から作動部材Oの下部内へ嵌入するほぼ棒状の部材であり、当該下部(本実施形態では筒状ピストンとの上部)との嵌め合いにより昇降自在に支持されている。
【0044】
図示のポペット弁体は、大外径の基部40と小外径の中間部43と中外径の先部44とを有する。なお、先部44がキノコ形(ポペット形)に膨らんでいることは、必ずしも発明の必須要件ではない。
【0045】
上記先部44は、逆円錐形の下面を有し、この下面を上記第2弁座38へフィットさせることで逆止弁45を形成するとともに、ポペット弁体P全体を支えることができるように構成している。
【0046】
上記基部40は、その下端面41の外周部を、図2の如く上記第1弁座12に対して一定の間隙gを存して対峙させている。この外周部は、第1弁座とフィットすることが可能なテーパ状面であり、このテーパ状面と第1弁座とで吸込み弁46が形成される。また基部40の外周面上部は、図4に示す如く上記筒状ピストンの嵌合用脚部27と嵌合させることが可能な嵌合面42としている。この嵌合面は、作動部材が通常のポンプ動作の下限位置(LL)より下方に降下したときに嵌合するように配置する。
【0047】
上記基部40の外周面下部からは、図3に示すように、複数の当接突部Gを突出する。これら当接突部Gは、ポペット弁体Pの上下動を案内し、ポペット弁体が第1弁座12から離脱して一定距離上昇した後にコイルスプリングの下面と突き当たることでポペット弁体を制止する。当接突部Gは、シリンダ筒2の係止突片S同士の隙間に挿入され、かつ好ましくはシリンダ筒2の内壁面付近まで延びている。当接突部の構造についてはさらに後述する。
【0048】
コイルスプリングCは、係止突片Sの係止面18に基端部48を、また筒状ピストンの鍔部26b下面に先端部50をそれぞれ当接させて、これら両面の間に介装している。
【0049】
上記コイルスプリングCは、合成樹脂の他に金属でも形成することができる。またコイルスプリングCの長さは、作動部材Oを図4のようにポンプシリンダとの固定位置へ下降させた状態でなお圧縮余地があるように設定することができる。
【0050】
本発明においては、図2に示す如く、当接突部Gの上面に第1スライド斜面Aを、またコイルスプリングCの基端部48の端面に補助斜面Bをそれぞれ形成する。もっとも図5に示す如く補助斜面を省略することもできる。
【0051】
第1スライド斜面Aは、図2に示す如く、当接突部Gの上面のうちコイルスプリングCの基端部48から先端部50への螺旋方向Lと同一の周方向に臨む側の縁部が下がるように設ける。
【0052】
図示例では、当接突部Gの上面のうちコイルスプリングCの基端部48とは反対側の部分を1/3程度を、コイルスプリング下端側との係合面47として残して、それ以外の部分を第1スライド斜面Aに形成している。もっとも当接突部Gの上面全部を第1スライド斜面Aとしても構わない。
【0053】
図5は、第1スライド斜面Aの作用の説明図であり、補助斜面Bの構造を省略して描いている。この第1スライド斜面Aは、コイルスプリングCの基端部48に接することで、コイルスプリングCとの圧接力fを下側へ向ける働きを有する。
【0054】
図8の構成と対比させて説明すると、同図の状態ではコイルスプリングCの基端部が当接突部Gに圧接する応力fは、略水平方向に向かっている。この状態で当接突部Gはコイルスプリングの基端部48と係止突片Sとの間に挟持される。
【0055】
基端部48と接するという条件は、第1スライド斜面Aの下縁側が上縁側に対して下がる距離をh、隣りの係止突片Sの上面に対してコイルスプリングの基端部48が下降した距離をhとすると、h>hである。
【0056】
第1スライド斜面Aが基端部と接するという条件を満たす限り、第1スライド斜面が水平方向に対して傾斜する角度θが小さいほど(図5参照)、当接突部Gは緩やかに下降する。傾斜角度θは、適宜変更することができる。
【0057】
本実施形態では、さらに図2に示すように、コイルスプリングCの基端部48の端面を、コイルスプリングの螺旋方向Lに対して一定の角度θで傾斜する補助斜面Bに形成している。
【0058】
この補助斜面は、第1スライド斜面Aと斜めに向かい合っており、この補助斜面の下端に位置する当接突部への当接用角部54を鈍角としている。
【0059】
図1に示す例では、水平方向に対する補助斜面Bの勾配を、水平方向に対する第1スライド斜面Aの勾配に比べて大きくしている。
【0060】
上記構成において、図1の状態から通常のポンプ操作の下限位置(LL)までノズルヘッド30をそのまま押し下げると、筒状ピストンの縦筒部26aの下降に伴い、図6(A)の如くポペット弁体Pも下がって第1弁座12に着座する。さらにノズルヘッド30を螺下降させると、図4に示すようにノズルヘッドの連結筒34が抜止め筒22の内面側に螺着するとともに、筒状ピストンの嵌合用脚部27がポペット弁体の嵌合面42に嵌合する。
【0061】
この過程においてコイルスプリングCは圧縮されていき、コイルスプリングCの下面側が係止突片Sに圧接される。コイルスプリングCには筒状ピストンとの摩擦により回転力が作用するが、本実施形態では、ポペット弁体が第1弁座12との当接位置まで下がっているので、コイルスプリングの基端部48と係止突片Sとの間に当接突部Gが挟まることはない。
【0062】
次にノズルヘッドを螺上昇させると、コイルスプリングCの弾性力により筒状ピストンが上昇し、嵌合用脚部27とポペット弁体の嵌合面42との嵌合により、ポペット弁体Pが引き上げられる。これにより当接突部Gの上面は、係止突片Sの上面とほぼ同じ高さまで上昇する。
【0063】
この状態において、上記コイルスプリングCは、先端部50と筒状ピストン26との摩擦により回転している。故にコイルスプリングCの基端部は、図6(B)に示す状態で、弾性力によって、係止突片Sの係止面18から当接突部Gの上面に亘って圧接状態で摺接し、当接突部Gの上面から下方へ脱落するという動きを繰り返す。
【0064】
この当接突部Gから脱落したときに連結筒34が抜止め筒から外れると、従来のように当接突部Gの上面が平坦な構成(図8参照)では、当接突部GがコイルスプリングCの基端部48と係止突片Sとの間に挟まる。
【0065】
しかしながら、本実施形態の構成では、当接突部Gの上面のうち脱落を生ずる側の部分が第1スライド斜面Aになっている。従ってコイルスプリングの基端部48側から係止突片S側へ当接突部を挟み付ける力が作用しても、上記基端部48が第1スライド斜面Aの上を滑ることで、当接突部Gを下方へ逃がすことができる。従ってコイルスプリングCの基端部と係止突片Sとによる当接突部Gの挟み付けを生じず、ポペット弁体の作動不良を生じない。
【0066】
またコイルスプリングの基端部48の端面は、補助斜面Bに形成しているので、基端部48と当接突部Gとのスライドがより確実となる。
【0067】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ構成については同一の符号を付することで解説を省略する。
【0068】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る液体噴出器の要部を示している。
【0069】
本実施形態では、当接突部の上面に第1スライド斜面Aを形成する代わりに、コイルスプリングの基端部48の端面を、第2スライド斜面Aとしている。
【0070】
第2スライド斜面Aは、当接突部Gの上面側と向かい合うように、コイルスプリングCの螺旋方向Lに直角な方向に対して一定の角度θで傾斜している。この傾斜角度θが大きいほど当接突部Gは緩やかに下降する。図示例での傾斜角度θは45°程度であるが、適宜変更することができる。
【0071】
本実施形態においても、コイルスプリングCやポペット弁体Pは、前述の図6で説明したものとほぼ同様に動作する。
【0072】
そして図6(B)に対応する状態で、本実施形態では、コイルスプリングCの基端部と係止突片Sとの間に当接突部Gが挟まれそうになったときに、当接突部Gの上面側の角部が第2スライド斜面Aの上を当接突部の当接用角部60が第2スライド斜面Aの上をスライドする。これにより、当接突部を下方に逃がし、コイルスプリングの基端部48と係止突片とによる挟み付けを回避する。
【符号の説明】
【0073】
2…シリンダ筒 4…筒壁 6…外向きフランジ 8…嵌合筒 10…テーパ状壁
12…第1弁座 14…取付筒 18…係止面 20…吸上げ管
22…抜止め筒 26…筒状ピストン 26a…縦筒部 26b…鍔部
26c…シール筒部 27…嵌合用脚部 28…ステム 30…ノズルヘッド
32…ノズル 34…連結筒 36…吐出弁 38…第2弁座
40…(ポペット弁体の)基部 41…下端面 42…嵌合面
43…中間部 44…先部
45…逆止弁 46…吸込み弁 47…係合面
48…(コイルの)基端部 50…先端部 52…下縁 54…当接用角部
60…当接用角部
…第1スライド斜面 A…第2スライド斜面 B…補助斜面
C…コイルスプリング G…当接突部 L…螺旋方向 M…装着部材
O…作動部材 P…昇降弁体(ポペット弁体) S…係止突片
T…ポンプシリンダ
LL…(作動部材のストロークの)下限位置 LH…上限位置 g…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1弁座(12)を下端部に有するシリンダ筒(2)の内周面下部から相互に隙間を存して複数の係止突片(S)を内方突設したポンプシリンダ(T)と、
ポンプシリンダ内を昇降可能な筒状ピストン(26)から起立するステム(28)の上端部にノズルヘッド(30)を付設した作動部材(O)と、
上記第1弁座(12)に下端面(41)を対峙させて、ポンプシリンダ(T)の下部から作動部材(O)内へ嵌入され、かつ上記係止突片(S)同士の隙間内へ突入する複数の当接突部(G)を有する昇降弁体(P)と、
上記係止突片(S)にされた基端部(48)を有し、その係止突片(S)と筒状ピストン(26)との間に介装されたコイルスプリング(C)と、
を具備し、
上記作動部材(O)をポンプ操作の下限位置よりさらに押し下げ、ノズルヘッド(30)をポンプシリンダ(T)側へ螺着させることが可能な液状物噴出器において、
上記当接突部(G)の上面のうち、少なくともコイルスプリング(C)の基端部(48)から先端部(50)側への螺旋方向(L)と同じ周方向に臨む部分を、上記螺旋方向(L)と直角な向きに対して傾斜する第1スライド斜面(A)としており、
この第1スライド斜面(A)は、上記基端部(48)の端面と斜めに向き合い、かつ当該基端部と当接可能としたことを特徴とする、液状物噴出器。
【請求項2】
上記第1スライド斜面(A)とともに、上記コイルスプリング(C)の基端部(48)の端面を、上記螺旋方向(L)と直角な向きに対して傾斜する補助斜面(B)としており、
この補助斜面(B)は、当接突部(G)の上面側に向かい、かつ、水平方向に対する補助斜面(B)の勾配を第1スライド斜面(A)に対する勾配と同等以上としたことを特徴とする、請求項1に記載の液状物噴出器。
【請求項3】
上記第1スライド斜面(A)に代えて、上記コイルスプリング(C)の基端部(48)の端面を、水平方向に対して傾斜しかつ当接突部(G)の上面側に向かう第2スライド斜面(A)としたことを特徴とする、請求項1に記載の液状物噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−212619(P2011−212619A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84601(P2010−84601)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】