説明

液面レベル検出装置

【課題】収容室の大きさにかかわらず互換性があり、正確に液面レベルを検出することができる液面レベル検出装置を提供する。
【解決手段】攪拌抵抗部材5を取り付けたディスク4をオイルパン1内に突出させ、ディスク4をモータ3で回転させる。ディスク4は攪拌抵抗部材5が最下位置5aに回ってきたときにオイル2の下限オイルレベルLOWより上に攪拌抵抗部材5の少なくとも一部が位置するように高さ位置を決定する。攪拌抵抗部材5がオイルレベルより上で移動(回動)している範囲では、オイルレベルより下方で移動している範囲よりモータ3の負荷電流が小さくなる。この負荷電流の変化のタイミングにより、オイルレベルより上で攪拌抵抗部材5が移動している時間が長いと判断されればオイル不足と判断して警告ランプ14を付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面レベル検出装置に関し、特に、液体を収容した室の容積等に影響されず高精度の検出ができる液面レベル検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの潤滑・冷却に使用されるエンジンオイル等、収容室内に収容された液体の量を検出する装置が種々知られている。オイル量は収容室内でのオイル液面位置で検出するのが一般的である。実用新案登録第2532891号公報に記載された液面センサは、フロートを上下に貫通する軸を設け、この軸の下端がクランクケース底面に当接した時にオイルの液面低下を示す警告ランプを点灯する。実公平8−5297号公報に記載されたレベルセンサは、クランクケース内に設けたフロート室内でガイドピンにフロートを嵌装させるとともに、フロートとガイドピンとの間にフロートの上下振動を抑えるダンピング室を設けて、フロートの揺れを抑制している。また、実公平6−23705号公報には、フロートの位置が下がった時にリードスイッチを作動させてエンジンオイルの低減を検出する装置において、エンジンオイルが低温時にはバイメタルの作用でフロートを所定高さ位置に維持するエンジンオイル量減少警告装置が記載されている。
【特許文献1】実用新案登録第2532891号公報
【特許文献2】実公平8−5297号公報
【特許文献3】実公平6−23705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1,2,3に記載されたようなフロート式の液面レベル検出装置は構造が比較的簡単であるが、エンジン運転による振動の影響を受けやすいため、特許文献2に記載された装置のように、フロート室を別途設けたり、ダンピング装置を設けたりする必要があった。また、エンジン排気量やオイル収容室の形状、取付位置環境の変更により、フロートの位置や検出のためのしきい値の設定を変更する必要があり、他機種へ転用するためには、その都度調整が必要であった。また、エンジンオイルの場合、その液面位置とともに、オイルの劣化を同時に検出したいという要望もあった。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体の動揺や、液体収容室の大きさ、形状に影響されずに液面高さ位置を検出でき、かつ粘性の変化の検出によってオイルなどの劣化を併せて検出できる液面レベル検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体収容室内に配置される液面レベル検出装置において、電動モータで回転される攪拌抵抗部材を、予定の低液面レベル時に該攪拌抵抗部材の少なくとも一部が液面上に露出するように前記液体収容室内に配置するとともに、前記電動モータの負荷電流値を検出する手段を備え、前記負荷電流値の変化状態に基づいて、前記液体収容室内の液面が前記予定の低液面レベル以上か以下かを判断するように構成した点に第1の特徴がある。
【0006】
また、本発明は、前記攪拌抵抗部材の回転中心軸がほぼ水平に配置されている点に第2の特徴があり、前記攪拌抵抗部材が、前記電動モータの出力軸に連結されて回転するディスク上の1カ所に偏在して形成されている点に第2の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記負荷電流値の最大値の低下に基づいて液体収容室に格納された液体の粘性低下を判断する手段を具備した点に第4の特徴がある。
【0008】
さらに、本発明は、前記液体収容室がエンジンのオイルパンであり、該オイルパン内のエンジンオイルの液面レベルを判断する点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
第1の特徴を有する発明によれば、攪拌抵抗部材が液体収容室内で回転すると、電動モータは液体の抵抗が負荷となり該負荷に対応した負荷電流が流れる。攪拌抵抗部材が液面上に露出している回転範囲では負荷電流が小さくなる。この負荷電流の変化状態から液面レベルが予定の低液面以下か否かを判断することができる。特に、液体収容室の深さに関わらず、液体収容室内の底部近くで、少なくとも低レベル時に攪拌抵抗部材が液面上に現れるように配置してればよいので設定が容易である。
【0010】
第2の特徴によれば、攪拌抵抗部材は水平に延びた回転中心軸を中心に回転させ、液面に対する上下の動きに対応して攪拌抵抗量つまりモータ負荷が変化するようにしたので、液面の正確な位置が検出可能である。
【0011】
第3の特徴によれば、攪拌抵抗部材が回転中心軸から偏在して設けられているので、液面から攪拌抵抗部材が露出している状態と、液面下に攪拌抵抗部材がある状態が明確に区別され、それぞれの負荷電流の変化が生じる時期の間隔により、液面レベルが予定の低液面以下か否かを正確に判断することができる。
【0012】
第4の特徴によれば、例えば、エンジンオイル等は劣化にともなって粘性が低下し、それに伴って負荷電流値が低下する。そこで、負荷電流値の最大値が予定値以下に低下した場合に液体が劣化したと判断することができる。
【0013】
第5の特徴によれば、エンジンオイルの量の減少や質の低下を容易に判断できる。また、エンジンオイルの劣化を判断できるとともに、攪拌抵抗部材を、エンジンオイルを跳ね上げてエンジンの冷却・潤滑作用を行うスリンガとして兼用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1Aは、液体レベル検出装置の一実施形態に係るオイルレベル検出装置の検出部を示す構成図である。図1Bは図1AのA−A断面図である。例えばエンジンの底部に設けられる液体収容室としてのオイルパン1には、エンジンオイル2が収容されている。このオイルパン1の側壁外面には、出力軸3aをオイルパン1の内部に水平に突出させた状態で直流モータ3が装着されている。出力軸3aにはディスク4が固定されている。ディスク4の一方の面(この例ではモータ3と反対側の面)には、出力軸3aから偏心した位置、つまりディスク4の外周寄りに、羽根状の突出部5が攪拌抵抗部材として形成されている。この突出部5は、ディスク4を回転させてオイル2を攪拌したときに直流モータ3に負荷が加わるように設けている。突出部5の位置は、ディスク4を矢印Dの方向に回転させたときに最下部に位置する突出部5(図1Bの符号5a)の少なくとも一部が下限オイルレベルLOWより上方にあるように設定するのがよい。しかし、少なくとも出力軸3aより下方に下限オイルレベルLOWが位置するように設定してあればよい。ECU6は、直流モータ3を駆動し、かつ直流モータ3の負荷電流波形に基づいてオイルレベルを検出するとともに、図示しないエンジンの点火制御をする制御ユニットである。
【0015】
図2は、オイルレベル検出装置のシステム構成図である。図2において、ECU6は、電源回路7、CPU8、モータ駆動用ドライバ9、電流検出回路10、および点火回路11を含んでいる。電源回路7には、エンジンのフライホイルに組み込まれた制御電源巻線13から電力が供給される。ECU6の出力側には、前記直流モータ3、警告ランプ(LED)14、および点火コイル15が接続されている。CPU8はドライバ9を駆動して電源回路7から直流モータ3に電流を供給して該直流モータ3を回転させる。直流モータ3の負荷電流は電流検出回路10で検出されてCPU8に入力される。CPU8は、電流検出回路10で検出された電流の波形を分析してオイルレベルを検出し、オイルレベルが下限オイルレベルLOWまで低下していると判断したときに警告ランプ14を点灯する。オイルレベルの判断の詳細は後述する。
【0016】
CPU8は、制御電源巻線13からの出力電力波形により点火タイミングを検出して点火回路11に点火指令を出力する。点火回路11は点火指令に応答して電源回路7からの電力を点火コイル15に供給し、点火プラグ16を点火させる。なお、前記警告ランプ14を点灯させた後、予め設定した運転時間を経過した時点、あるいは下限オイルレベルよりもさらにオイルレベルが低下した時点で強制的に点火回路11に対する点火指令を停止してエンジンを停止させるようにしてもよい。
【0017】
図3は、直流モータ3の特性を示す図である。直流モータ3は出力軸3aにかかる負荷つまりトルクTが増大すると回転数Nは低減する。また、トルクTの増大と共に直流モータ3に流れる電流は増大する。逆に、トルクTが低減すると、直流モータ3は高回転になるとともに直流モータ3に流れる電流は減少する。
【0018】
次に、上記特性を有する直流モータ3を、ディスク4を負荷としてオイルパン1内で回転させときに直流モータ3に流れる負荷電流の波形について説明する。図4は、オイルパン1内のオイルレベルが高い場合、図5はオイルパン1内のオイルレベルが低下している場合の、それぞれの電流波形を示す模式図である。それぞれの図において、横軸は時間、縦軸は電流値に対応する。ディスク4が回転中、突出部5がオイル中に没しているときと、突出部5がオイル液面より上方にあるときとで、直流モータ3の出力軸3aにかかる負荷の大きさが異なる。液面上では、負荷が小さく液面下では負荷が大きい。したがって、図3に示した特性からわかるように、直流モータ3の回転数も電流も、ディスク4が液面下にあるときと、液面上にあるときとで異なることになる。
【0019】
図4では、時間TA1はディスク4の突出部5が液面下に没している時間であり、時間TA2はディスク4の突出部5が液面上に出ている時間である。同様に、図5において時間TB1はディスク4の突出部5が液面下に没している時間であり、時間TB2はディスク4の突出部5が液面上に出ている時間である。これらから、オイルレベルが高い場合の時間比率τ=TA1/TA2が、オイルレベルが低い場合の時間比率τ=TB1/TB2より大きくなっていることが分かる。このことから、予め下限オイルレベルに対応する時間比率を計測しておき、これを実際に検出された時間比率と比較すれば、検出時点でのオイルレベルが下限オイルレベルより上にあるか下にあるかを検出することができる。
【0020】
なお、下限オイルレベルより上方に下限予告オイルレベルを設定しておき、現実の時間比率τがこの下限予告オイルレベルに対応する時間比率τ1以下になったときに警告を発し、現実の時間比率τが下限オイルレベルに対応する時間比率τ2以下になったときに、点火コイルの通電を止めて強制的にエンジンを停止するようにするとよい。
【0021】
また、エンジンオイルは、劣化するとその粘性が変化することが一般に知られている。例えば、エンジンオイルの粘性が低下すると、突出部5にかかる負荷が小さくなり、直流モータ3に流れる電流が小さくなる。例えば、図4と図5とに示した電流波形の電流値IAとIBとでは、図5の電流波形の電流値IBの方が低く、オイルの粘性が低下しているのが分かる。
【0022】
そこで、粘性が低下した場合にエンジンオイルの劣化と判断する場合には、電流波形の最大電流Iを基準値Ipと比較し、電流Iが基準値Ipより所定のマージン以上小さいことが検出されたときに警告を発して、オイル交換を促すことができる。
【0023】
なお、エンジンオイルの粘性が低下している場合には上記時間比率τも小さくなる。しかし、この場合の時間比率τの変化は小さいので、最大電流値によりエンジンオイルの劣化を判断するのがよい。また、エンジンオイルの粘性低下により変化する時間比率τの変化を、前記最大電流値によって補正してもよい。例えば、最大電流値が低減するのに応じて、検出された時間比率τを大きくするように補正することができる。
【0024】
図6は、オイルレベル検出とオイル劣化検出のフローチャートである。図6において、ステップS1では、電流検出回路10で検出された負荷電流の変化に基づいて、高電流時間/低電流時間の時間比率τを算出する。ステップS2では、時間比率τが下限オイルレベルに対応する予定の時間比率τ2より小さいか否かを判断する。ステップS2が肯定ならば、ステップS3に進んで警告ランプ14を点滅させる。次いでステップS4に進んで点火指令を停止させる。
【0025】
ステップS2が否定ならば、ステップS5に進んで時間比率τが下限予告オイルレベルに対応する予定の時間比率τ1より小さいか否かを判断する。ステップS5が肯定ならば、ステップS6に進んで警告ランプ14を点灯させる。
【0026】
ステップS5が否定ならば、オイルパン1内のエンジンオイルの量は不足していないと判断され、ステップS7に進む。ステップS7では、電流検出回路10で検出された負荷電流の最大電流値Iが、オイル粘性の低下を判断するための基準値Ipより小さいか否かを判断する。ステップS7が肯定ならば、エンジンオイルの粘性が低下していると判断できるので、ステップS8に進んで、警告ランプ14を点滅させる。
【0027】
なお、エンジンオイルの粘性変化を判断する基準値Ipを2段階にして、オイルレベル低下時の判断と同様、エンジンオイル交換の予告を行うようにしてもよい。
【0028】
また、警告ランプ14は、オイル交換もしくはオイル補給を促す場合は点滅させ、オイル交換もしくはオイル補給を予告するときは点灯させるようにしたが、警告ランプ14の駆動形態は任意に設定できる。
【0029】
上述のように、本実施形態では、羽根状の突出部5が移動する領域がエンジンオイル中か空気中かによって負荷が変化する点に着目し、突出部5がオイル液面下およびオイル液面上をそれぞれ移動する時間比率を検出してオイルレベルを判断するようにした。また、オイルの粘性によって直流モータ3にかかる負荷電流が変化することに着目してオイルの粘性低下を判断するようにした。
【0030】
しかし、本発明は、この実施形態に限らず種々変形し得る。例えば、突出部5の形状は、図1に示したもの限らず、液中と液外とで負荷の違いが大きくなるように大きさや形状を変形できる。また、突出部5が液中から液面上に現れるときにエンジンオイルをすくってエンジンのシリンダ方向へ跳ねかけるオイルスリンガとしての機能を併せ持つように形状を決定することができる。
【0031】
直流モータ3の選定にあたっては、発生トルクの小さい小型モータを選定するのがよい。このようにすれば、負荷の変化によって受ける影響が大きく、時間比率τや電流変化が顕著となるので検出精度が高められる。
【0032】
直流モータ3は、オイルスリンガとして作用させるときは、運転中常時回転させるのがよいが、そうでない用途では、例えば、エンジン始動前に駆動して電流検出によるオイルレベル判断を行ってエンジンオイルの入れ忘れを警報したり、エンジン始動後一定時間毎に駆動してオイルレベル判断を行ってもよい。
【0033】
また、本実施形態は、エンジンオイルのレベルや粘性を判断する例を挙げたが、本発明は、これに限定されず、容器に収容された種々の液体の量や粘性の判断に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】本発明の一実施形態に係るオイルレベル検出装置の構成図である。
【図1B】図1AのA−A断面図である。
【図2】オイルレベル検出装置のシステム構成図である。
【図3】直流モータの特性図である。
【図4】負荷電流波形の第1の例を示す模式図である。
【図5】負荷電流波形の第2の例を示す模式図である。
【図6】オイルレベル検出装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1…オイルパン(液体収容室)、 2…エンジンオイル(収容液体)、 3…特流モータ、 4…ディスク、 5…突出部(攪拌抵抗部材)、 6…ECU、 10…電流検出回路、 11…点火回路、 14…警告ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容室内に配置される液面レベル検出装置において、
電動モータで回転される攪拌抵抗部材を、予定の低液面レベル時に該攪拌抵抗部材の少なくとも一部が液面上に露出するように前記液体収容室内に配置するとともに、
前記電動モータの負荷電流値を検出する手段を備え、
前記負荷電流値の変化状態に基づいて、前記液体収容室内の液面が前記予定の低液面レベル以上か以下かを判断するように構成したことを特徴とする液面レベル検出装置。
【請求項2】
前記攪拌抵抗部材の回転中心軸がほぼ水平に配置されていることを特徴とする請求項1記載の液面レベル検出装置。
【請求項3】
前記攪拌抵抗部材が、前記電動モータの出力軸に連結されて回転するディスク上の1カ所に偏在して形成されていることを特徴とする請求項2記載の液面レベル検出装置。
【請求項4】
前記負荷電流値の最大値の低下に基づいて液体収容室に格納された液体の粘性低下を判断する手段を具備したことを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の液面レベル検出装置。
【請求項5】
前記液体収容室がエンジンのオイルパンであり、該オイルパン内のエンジンオイルの液面レベルを判断することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の液面レベル検出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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