深層曝気装置
【課題】曝気本体の内外の差圧や浮遊物の影響が全くなく、緊急排気管による緊急排気の確実性を常に保証することができる深層曝気装置を提供する。
【解決手段】通常時は、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気dを排気管30で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気dを緊急排気管31で外部に排気する深層曝気装置である。フロート弁33(A,B)は、水位L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管31の下端口31bを閉じるととともに、水位L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、緊急排気管31の下端口31bを開くようにした。
【解決手段】通常時は、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気dを排気管30で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気dを緊急排気管31で外部に排気する深層曝気装置である。フロート弁33(A,B)は、水位L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管31の下端口31bを閉じるととともに、水位L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、緊急排気管31の下端口31bを開くようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深層曝気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11(a)(b)に示すように、ダム湖等の湖底1に係留されて、湖底1付近の深層の水をエアレーションにより循環させる曝気本体2の上部に、排気管3と緊急排気管4とを設けて、通常時は、曝気本体3内の空気溜め室5に溜まった余剰空気を排気管3で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体3内の空気溜め室5に溜まった余剰空気を緊急排気管4で外部に排気する深層曝気装置Aがある(特許文献1参照)。
【0003】
この深層曝気装置Aでは、曝気本体2の排気管3と緊急排気管4とリターン管10とを、水面6に浮遊する浮上排気体7に、フレキシブルホース8,9,11を介してそれぞれ接続している。
【0004】
また、図12(a)(b)に示す深層曝気装置Bでは、曝気本体2の排気管3とリターン管10を、水面6に浮遊する浮上排気体7に、フレキシブルホース8,11を介してそれぞれ接続している構成は、深層曝気装置Aと同じである(特許文献2参照)。
【0005】
ただし、深層曝気装置Aと異なる構成として、曝気本体3の上部側に、曝気本体3の内外の差圧により流体を流出入可能な弁(緊急排気管に相当)12(A,B)を設けていることである。
【0006】
そして、曝気本体3の内部と外部間に圧力差がある場合には、弁12(A)を介して流体が曝気本体3の内部に流入し、あるいは曝気本体3の内部から流体が弁12(B)を介して外部に流出して、曝気本体3の内外の圧力差が解消されて平衡状態となるようにしている。
【0007】
具体的には、排気管3の詰まりやその排気能力を超えて、空気溜め室5に余剰空気量が溜まり、浮力の増大で曝気本体3が急浮上して水面6から飛び出したときに、弁12(A)を介して大気中の空気が曝気本体3内に流入することで、曝気本体3が変形や破損しないようにするものである。
【0008】
ところで、前者の深層曝気装置Aの排気管3と緊急排気管4は、水面6の浮上排気体7に,平行に結束されたフレキシブルホース8,9を介して接続されているから、曝気本体3が例えば水深10〜30mに設置されている場合、長さが10〜30mのフレキシブルホース8,9の捻れや折れによって同時に閉塞するおそれがあるので、緊急排気管4による緊急排気の確実性に欠けるという問題がある。
【0009】
また、緊急排気管4のフレキシブルホース9は、ダム湖等の水面6の低下で、水面6上に浮き上がることがあり、流木等の浮遊物による損傷等のトラブルが多いので、緊急排気管4による緊急排気の確実性に欠けるという問題がある。
【0010】
さらに、緊急排気管4の下端口4aは、常時水中にあることから、深層曝気の稼働時には、下からの上昇流に晒されるため、下層部から吸い込まれたゴミ等により詰まるおそれがあるので、緊急排気管4による緊急排気の確実性に欠けるという問題がある。
【0011】
すなわち、緊急排気弁4は、排気弁3に故障がある非常時に、曝気本体3の破損等を防止するための緊急排気のために開くものであり、かかる非常時は、現実には滅多にあるものではない。しかし、緊急排気の確実性は、どのような状況であっても保証されなければ、緊急排気の意味が無くなる。
【0012】
そして、後者の深層曝気装置Bのように、曝気本体3の内外の差圧により流体を流出入可能な弁(緊急排気管に相当)12を設ければ、フレキシブルホース9等に起因する前者の深層曝気装置Aのような問題の一応の解決は可能である。
【0013】
後者の深層曝気装置Bでは、図12(b)のように、内外の差圧により、流体を流入するヒンジ式弁12(A)と、流体を流出するヒンジ式弁12(B)とを曝気本体3の上側部に設けている。また、図12(c)のように、内外の差圧により、流体を流入するボール式弁12(C)と、流体を流出するボール式弁12(D)とを曝気本体3の上端部に設けたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−314172号公報
【特許文献2】特開平9−314175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、深層曝気装置Bの曝気本体3は、例えば水深10〜30mに設置するものである。したがって、その水深や大気中における内外の差圧により弁12(A〜D)を開閉させる必要があるから、その開閉圧の調整が難しく、弁12(A〜D)による緊急排気の確実性に欠けるという問題は解決されていない。
【0016】
また、弁12(A〜D)は、曝気本体3の外部、つまりダム湖内に直接臨む箇所があることから、ゴミや砂等の浮遊物が作動部分に詰まって作動しなくなるおそれがあり、あるいは落ち葉やビニール袋等の浮遊物が弁12(A〜D)の開口部分を塞ぐおそれがあるので、弁12(A〜D)による緊急排気の確実性に欠けるという問題は解決されていない。
【0017】
さらに、ヒンジ式弁12(A,B)では、ヒンジ部分の錆つきで感度が変わったり、鈍くなるという欠点があり、ボール式弁12(C,D)では、ばねの錆つきや経年変化、繰り返し作動等で感度が変わったり、鈍くなるという欠点がある。このような機械式の開閉機構は、水中で用いることから故障しやすいという問題がある。
【0018】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、曝気本体の内外の差圧や浮遊物の影響が全くなく、緊急排気管による緊急排気の確実性を常に保証することができる深層曝気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、本発明は、ダム湖等の湖底に係留されて、湖底付近の深層の水をエアレーションにより循環させる曝気本体の上部に、排気管と緊急排気管とを設けて、通常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を排気管で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を緊急排気管で外部に排気する深層曝気装置であって、前記緊急排気管は、上端口が曝気本体外の近傍に臨まされ、下端口が前記排気管の下端口よりも下方で、かつ曝気本体内の空気溜め室の通常時の水位よりも下方に臨まされ、前記緊急排気管の下端口に、曝気本体内の水位の変動に応じて上下動するフロート弁が臨まされ、このフロート弁は、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管の下端口を閉じるととともに、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも低い非常時は、緊急排気管の下端口を開くようにしたことを特徴とする深層曝気装置を提供するものである。
【0020】
請求項2のように、前記フロート弁は、曝気本体内の邪魔板に取付けたガイド部材、または緊急排気管自体で上下動がガイドされる構成とすることができる。
【0021】
請求項3のように、前記緊急排気管の上端口は、下向き逆U字型に湾曲されている構成とすることができる。
【0022】
請求項4のように、前記排気管は、空気溜め室に溜まった余剰空気を水中に散気する散気管を兼ねている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、緊急排気管は、上端口を曝気本体外の近傍に臨ませ、下端口を曝気本体内の空気溜め室の通常時の水位よりも下方に臨ませる一方、緊急排気管の下端口に、曝気本体内の水位の変動に応じて上下動するフロート弁を臨ませたものである。
【0024】
そして、曝気本体内のフロート弁は、水位が緊急排気管の下端口の高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管の下端口を閉じることで、曝気本体内の空気溜め室に溜まった空気が排気管の上端口からのみ水中に排出されるようになる。また、水位が緊急排気管の下端口の高さよりも低い非常時は、水位に応じてフロート弁も下がって、緊急排気管の下端口を開くことで、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気が上端口から水中に緊急排出されるようになる。
【0025】
したがって、排気弁に故障がある非常時に、曝気本体内の余剰空気を緊急的に外部に排出することで、曝気本体の急浮上、あるいは変形や破損しないようにすることができる。
【0026】
そして、背景技術の前者の深層曝気装置Aのようなフレキシブルホースが不要であるから、捻れや折れによる閉塞のおそれ、流木等の浮遊物による損傷等のトラブル、下層部から吸い込まれたゴミ等により詰まるおそれがなくなる。
【0027】
また、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、内外の差圧により弁を開閉させる構造ではなく、曝気本体内のフロート弁を水位の昇降により開閉させる構造であるので、開閉圧の調整が不要であり、緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0028】
このフロート弁は、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、曝気本体の外部、つまりダム湖内に直接臨む箇所がなく、曝気本体内に配置されていることから、泥砂の浮遊物が作動部分に詰まるおそれ、落ち葉やプラスチック袋等の浮遊物が弁の開口部分を塞ぐおそれがなくなるので、この点でも緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0029】
このように、曝気本体の内外の差圧や浮遊物の影響が全くなく、緊急排気の確実性を常に保証することができる。
【0030】
また、フロート弁は、水位に応じて浮力で上下動して、緊急排気管の下端口を開閉する簡単な構成であることから、水中で長期に亘って用いても故障しにくい。
【0031】
請求項2によれば、フロート弁の上下動をガイドすることで、フロート弁が緊急排気管の下端口を正確に開閉するようになる。
【0032】
請求項3によれば、緊急排気管の上端口を下向き逆U字型に湾曲させているから、水中に浮遊するゴミや砂等が曝気本体内に浸入して溜まるおそれがなくなる。
【0033】
請求項4によれば、排気管が散気管を兼ねることで、空気溜め室に溜まった余剰空気を水中に散気すれば、表層の水が効果的に攪拌されるので、水温の均一化や藻類の発生を抑制ができるようになり、複合型深層曝気装置として機能するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の複合型深層曝気装置の側面断面図である。
【図2】図1の曝気装置であり、第1実施形態のフロート弁の閉弁時の要部拡大側面断面図である。
【図3】図1の曝気装置であり、第1実施形態のフロート弁の開弁時の要部拡大側面断面図である。
【図4】第1実施形態のフロート弁とガイド部材の平面図である。
【図5】第1実施形態のフロート弁であり、(a)は平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は変形例の平面図、(d)は(c)の側面図である。
【図6】図1の曝気装置であり、変形例のガイド部材を示す要部拡大側面断面図である。
【図7】図1の曝気装置であり、(a)は変形例のフロート弁を示す要部拡大側面断面図、(b)は(a)のフロート弁とガイド部材の平面図である。
【図8】図1の曝気装置であり、第2実施形態のフロート弁の閉弁時の要部拡大側面断面図である。
【図9】図1の曝気装置であり、第2実施形態のフロート弁の開弁時の要部拡大側面断面図である。
【図10】(a)は第2実施形態のフロート弁の平面図、(b)はフロートの側面図、(c)は変形例のフロートの側面図である。
【図11】特許文献1の深層曝気装置であり、(a)は側面断面図、(b)は要部拡大側面図である。
【図12】特許文献2の深層曝気装置であり、(a)は側面断面図、(b)は要部拡大側面図、(c)は弁の変形例の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態である複合型深層曝気装置15の側面断面図である。
【0036】
曝気装置15は、ダム湖等の湖底16に係留されて、湖底付近の深層の水をエアレーションにより循環(矢印a参照)させるものである。
【0037】
曝気装置15は、湖底16にシンカー17で係留された状態でフロート18の浮力により起立状態に保持される曝気本体19を備えている。そして、送気管20から送られた圧縮空気による第1散気管21からのエアレーションの上昇流bで内筒22内に吸水して、溶存酸素量を上げた水cを、内筒22の上端に複数本のステー23a(図2参照)で支持した邪魔板(バッフル)23で上方から下方に反転させる。その後、外筒24との間の出口25から外部(深層)に排水することで、深層の嫌気化を予防するものである。
【0038】
外筒24の頂部は半球状に形成され、内筒22の上端部の邪魔板23との間には、エアレーションの余剰空気d(図2の点々を参照)を溜める空気溜め室26が形成されて、外筒24の頂部には、空気溜め室26の余剰空気dを水中に散気するために内外に貫通する、第2散気管を兼ねる排気管30が設けられている。
【0039】
また、外筒24の頂部には、空気溜め室26内の空気圧が異常に上がった時に開いて、余剰空気dを水中に緊急排気するための緊急排気管31が設けられている。
【0040】
散気管30と緊急排気管31とは、図2のように、外筒24の頂部の台形状の支持板40で補強されている。また、外筒24の頂部の内面には、散気管30と緊急排気管31を取り囲むように円筒状の補強筒41が取付けられ、この補強筒41で散気管30と緊急排気管31を取付けた外筒24の頂部を補強している。なお、補強筒41の上端には貫通孔41aが形成されている。
【0041】
図1に戻って、曝気本体19の内筒22の下端部には、下向き円錐形状のスカート部27が形成されている。
【0042】
スカート部27の下方には、スカート部27の内面と一定の隙間を隔てて対向する外面の頂部付近に、気泡を噴出する複数個の散気孔21aが形成された上向き中空円錐形状(シャープドコーン)の第1散気管21が配置されている。
【0043】
第1散気管21の下部に送気管20が接続されて、送気管20から第1散気管21に送気された空気を気泡gとして、各散気孔21aから連続的に噴出するようになる。
【0044】
内筒22のスカート部27の内面と第1散気管部21の外面とが一定の隙間を隔てて対向するように、内筒22のスカート部27と第1散気管21とが円周上略等角度間隔(本例では120度)で、チェーンのような撓む連結具28で連結されている。さらに、第1散気管21は、水底16のシンカー17に、円周上略等角度間隔でチェーンのような撓む係留具29で係留されている。
【0045】
この場合、内筒22を含む曝気本体19は、フロート18で浮力が付与されている。したがって、チェーンのような連結具28と係留具29は、上方に引っ張られた状態となるから、特に連結具28によって、内筒22のスカート部27の内面と第1散気管21の外面とが一定の隙間が隔てられるようになる。
【0046】
空気溜め室26に溜まった余剰空気dは、第2散気管を兼ねる排気管30から水中に散気されるから、ダム湖等の表層に散気による水流eが生じるようになり(循環曝気攪拌)、余剰空気dを有効に利用することによって、水面L1付近の表層を攪拌して水温を均一化できるとともに、表層におけるアオコのような藻類の発生を抑制できるようになる。
【0047】
排気管30は、第2散気管を兼ねる必要は必ずしも無く、背景技術の深層曝気装置A,Bと同様に、水面に浮遊する浮上排気体にフレキシブルホースを介して接続することも可能である。
【0048】
図2に詳細に示したように、外筒24の頂部内面と邪魔板23の上面との間の空気溜め室26は、通常時は、その略半分の高さ位置の反転水面L2より上側に余剰空気dが溜まるように設定されている。また、非常時は、図3のように、余剰空気dの空圧で反転水面L2´が押し下げられることで、邪魔板23の上面付近まで余剰空気dが溜まるようになる。
【0049】
第2散気管を兼ねる排気管30の上端口30aは、外筒24の頂部より僅かに上方へ突出する長さに設定されるとともに、下端口30bは、外筒24の頂部より僅かに下方へ突出する長さに設定されて、通常時の反転水面L2より上側に位置するようになっている。なお、第2散気管を兼ねる排気管30は、外筒24の頂部に穿った穴であっても良い。
【0050】
そして、空気溜め室26に溜まった余剰空気dが第2散気管を兼ねる排気管30から水中に散気されている通常時は、この反転水面L2が維持されるようになっている。
【0051】
また、緊急排気管31の上端口31aは、外筒24の頂部より僅かに上方へ突出して、下向き逆U字型に湾曲する長さに設定されるとともに、下端口31bは、排気管30の下端口30bよりも下方で、かつ空気溜め室26の通常時の反転水面L2よりも下方に延在して、邪魔板23の手前まで突出する長さに設定されている。
【0052】
緊急排気管31の下端口31bには、曝気本体19内の反転水面(水位)L2,L2´の変動に応じて上下動するフロート弁33(A,B)が臨まされている。
【0053】
フロート弁33(A,B)は、反転水面(水位)L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、図2のように、浮力で緊急排気管31の下端口31bを閉じるととともに、反転水面(水位)L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、図3のように、反転水面L2´に応じて、かつフロート弁33(A,B)の自重も関与することで下がって緊急排気管31の下端口31bを開くようになる。
【0054】
フロート弁33(A,B)は、曝気本体19内の邪魔板23に取付けたガイド部材34、または緊急排気管31自体で上下動をガイドすることで、緊急排気管31の下端口31bを正確に開閉する必要がある。
【0055】
そこで、第1実施形態のフロート弁33(A)とガイド部材34の内、フロート弁33(A)は、図5(a)(b)に示すように、両端部を45度でカットした4個の中空円管を四角形状に接続するとともに、その上面にフラットな弁板33aを接続したものである。なお、中空円管の内部には、浮力のある空気または発泡材が充填されている。
【0056】
また、ガイド部材34は、図4のように、上面の複数箇所(本例では4箇所)にガイド棒34aを立設した四角形のベース板34bを邪魔板23の上面に固定したものである。
【0057】
そして、各ガイド棒34aの間にフロート弁33(A)を嵌め入れることで、各ガイド棒34aでフロート弁33(A)の上下動がガイドされるようになる。
【0058】
フロート弁33(A)は、4個の中空円管を四角形状に接続したものである必要はなく、図5(c)(d)のように、1個のリング状円管の下面を板33bで閉じるととともに、上面を弁板33aで閉じて、リング状円管の内部に、浮力のある空気または発泡材を充填したものでも良い。
【0059】
また、図7(a)(b)に示すように、浮力のある中空球状のフロート弁33(A)であっても良く、この場合には、ガイド部材34として、丸形のベース板34bの上面の複数箇所(本例では3箇所)にガイド棒34aを立設したもので良い。
【0060】
さらに、ガイド部材34は、邪魔板23の上面に固定するものに限られず、図6に示すように、緊急排気管31の外周の円周上略等角度間隔の複数箇所(例えば4箇所)に、側面がコ字状のガイド棒34cの上端を固定して、各ガイド棒34cの間にフロート弁33(A)を嵌め入れることで、各ガイド棒34cでフロート弁33(A)の上下動をガイドするようにしても良い。
【0061】
第2実施形態のフロート弁33(B)は、図10(a)(b)に示すように、緊急排気管31の外周面に僅かの隙間を開けて、浮力のある3個の円筒状フロート33eを円周上略等角度間隔(本例では120度)で配置している。なお、フロート33eは、図10(c)のように、上下端が球面状であっても良い。
【0062】
そして、各フロート33eの下端部付近を、平面視で略六角形状の弁板33fの円弧状の三辺33hにそれぞれ固定するとともに、各フロート33eの上端部付近を三枚の略四角形状の連結板31gでそれぞれ固定する。
【0063】
このフロート弁33(B)は、図8のように、反転水面(水位)L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管31の下端口31bを弁板33fで閉じるととともに、図9のように、反転水面(水位)L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、反転水面(水位)L2´に応じて、かつフロート弁33(A,B)の自重も関与することで下がって緊急排気管31の下端口31bを開くようになる。このとき、緊急排気管31の外周面から側方に突出する下動規制棒31f〔図10(b)参照〕に連結板31gが当て止められることで、フロート弁33(B)が緊急排気管31から下方に抜け落ちないように規制されるようになる。なお、邪魔板23が有るタイプでは、邪魔板23でフロート弁33(B)が緊急排気管31から下方に抜け落ちないように規制されるので、下動規制棒31fは不要である。
【0064】
この第2実施形態のフロート弁33(B)では、緊急排気管31を上下動のガイドに利用しているから。第1実施形態のフロート弁33(A)のようなガイド部材34が不要になる。
【0065】
前記のように構成した深層曝気装置15であれば、緊急排気管31は、上端口31aを曝気本体19外の近傍に臨ませ、下端口31bを曝気本体19内の空気溜め室26の通常時の反転水面L2よりも下方に臨ませる一方、緊急排気管31の下端口31bに、曝気本体19内の反転水面(水位)L2,L2´の変動に応じて上下動するフロート弁33(A,B)を臨ませている。
【0066】
そして、曝気本体19内のフロート弁33(A,B)は、反転水面(水位)L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管31の下端口31bを閉じることで、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気が排気管30の上端口30aからのみ水中に排出されるようになる。
【0067】
また、反転水面(水位)L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、反転水面(水位)L2´に応じてフロート弁33(A,B)も下がって、緊急排気管31の下端口31bを開くことで、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気が上端口31aから水中に緊急排出されるようになる。
【0068】
したがって、排気弁30に故障がある非常時に、曝気本体19内の余剰空気を緊急的に外部に排出することで、曝気本体19の急浮上、あるいは変形や破損しないようにすることができる。
【0069】
そして、背景技術の前者の深層曝気装置Aのようなフレキシブルホースが不要であるから、捻れや折れによる閉塞のおそれ、流木等の浮遊物による損傷等のトラブル、下層部から吸い込まれたゴミ等により詰まるおそれがなくなる。
【0070】
また、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、内外の差圧により弁を開閉させる構造ではなく、曝気本体19内のフロート弁33(A,B)を反転水面(水位)L2.L2´の昇降により開閉させる構造であるので、開閉圧の調整が不要であり、緊急排気管31による緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0071】
このフロート弁33(A,B)は、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、曝気本体の外部、つまりダム湖内に直接臨む箇所がなく、曝気本体19内に配置されていることから、ゴミや砂等の浮遊物が作動部分に詰まって作動しなくなるおそれ、あるいは落ち葉やビニール袋等の浮遊物が弁の開口部分を塞ぐおそれがなくなるので、この点でも緊急排気管31の緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0072】
このように、曝気本体19の内外の差圧や浮遊物の影響が全くなく、緊急排気管31による緊急排気の確実性を常に保証することができる。
【0073】
また、フロート弁33(A,B)は、水位に応じて浮力で上下動して、緊急排気管31の下端口31bを開閉する簡単な構成であることから、水中で長期に亘って用いても故障しにくい。
【0074】
また、緊急排気管31の上端口31aを下向き逆U字型に湾曲させているから、水中に浮遊するゴミや砂等が曝気本体19内に浸入して溜まるおそれがなくなる。なお、ゴミや砂の浸入が考えられないところでは、逆U字型に湾曲させる必要は特になく、真っ直ぐであっても良い。
【0075】
さらに、排気管30が第1散気管を兼ねるようにすることで、空気溜め室26に溜まった余剰空気dを水中に散気すれば、表層の水が効果的に攪拌されるので、水温の均一化や藻類の発生を抑制ができるようになり、複合型深層曝気装置として機能するようになる。
【符号の説明】
【0076】
15 複合型深層曝気装置
16 湖底等
19 曝気本体
22 内筒
23 邪魔板
24 外筒
26 空気溜め室
30 排気管(第2散気管を兼ねる)
31 緊急排気管
31a 上端口
31b 下端口
33(A,B) フロート弁
34 ガイド部材
d 余剰空気
L2,L2´ 反転水面(水位)
【技術分野】
【0001】
本発明は、深層曝気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11(a)(b)に示すように、ダム湖等の湖底1に係留されて、湖底1付近の深層の水をエアレーションにより循環させる曝気本体2の上部に、排気管3と緊急排気管4とを設けて、通常時は、曝気本体3内の空気溜め室5に溜まった余剰空気を排気管3で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体3内の空気溜め室5に溜まった余剰空気を緊急排気管4で外部に排気する深層曝気装置Aがある(特許文献1参照)。
【0003】
この深層曝気装置Aでは、曝気本体2の排気管3と緊急排気管4とリターン管10とを、水面6に浮遊する浮上排気体7に、フレキシブルホース8,9,11を介してそれぞれ接続している。
【0004】
また、図12(a)(b)に示す深層曝気装置Bでは、曝気本体2の排気管3とリターン管10を、水面6に浮遊する浮上排気体7に、フレキシブルホース8,11を介してそれぞれ接続している構成は、深層曝気装置Aと同じである(特許文献2参照)。
【0005】
ただし、深層曝気装置Aと異なる構成として、曝気本体3の上部側に、曝気本体3の内外の差圧により流体を流出入可能な弁(緊急排気管に相当)12(A,B)を設けていることである。
【0006】
そして、曝気本体3の内部と外部間に圧力差がある場合には、弁12(A)を介して流体が曝気本体3の内部に流入し、あるいは曝気本体3の内部から流体が弁12(B)を介して外部に流出して、曝気本体3の内外の圧力差が解消されて平衡状態となるようにしている。
【0007】
具体的には、排気管3の詰まりやその排気能力を超えて、空気溜め室5に余剰空気量が溜まり、浮力の増大で曝気本体3が急浮上して水面6から飛び出したときに、弁12(A)を介して大気中の空気が曝気本体3内に流入することで、曝気本体3が変形や破損しないようにするものである。
【0008】
ところで、前者の深層曝気装置Aの排気管3と緊急排気管4は、水面6の浮上排気体7に,平行に結束されたフレキシブルホース8,9を介して接続されているから、曝気本体3が例えば水深10〜30mに設置されている場合、長さが10〜30mのフレキシブルホース8,9の捻れや折れによって同時に閉塞するおそれがあるので、緊急排気管4による緊急排気の確実性に欠けるという問題がある。
【0009】
また、緊急排気管4のフレキシブルホース9は、ダム湖等の水面6の低下で、水面6上に浮き上がることがあり、流木等の浮遊物による損傷等のトラブルが多いので、緊急排気管4による緊急排気の確実性に欠けるという問題がある。
【0010】
さらに、緊急排気管4の下端口4aは、常時水中にあることから、深層曝気の稼働時には、下からの上昇流に晒されるため、下層部から吸い込まれたゴミ等により詰まるおそれがあるので、緊急排気管4による緊急排気の確実性に欠けるという問題がある。
【0011】
すなわち、緊急排気弁4は、排気弁3に故障がある非常時に、曝気本体3の破損等を防止するための緊急排気のために開くものであり、かかる非常時は、現実には滅多にあるものではない。しかし、緊急排気の確実性は、どのような状況であっても保証されなければ、緊急排気の意味が無くなる。
【0012】
そして、後者の深層曝気装置Bのように、曝気本体3の内外の差圧により流体を流出入可能な弁(緊急排気管に相当)12を設ければ、フレキシブルホース9等に起因する前者の深層曝気装置Aのような問題の一応の解決は可能である。
【0013】
後者の深層曝気装置Bでは、図12(b)のように、内外の差圧により、流体を流入するヒンジ式弁12(A)と、流体を流出するヒンジ式弁12(B)とを曝気本体3の上側部に設けている。また、図12(c)のように、内外の差圧により、流体を流入するボール式弁12(C)と、流体を流出するボール式弁12(D)とを曝気本体3の上端部に設けたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−314172号公報
【特許文献2】特開平9−314175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、深層曝気装置Bの曝気本体3は、例えば水深10〜30mに設置するものである。したがって、その水深や大気中における内外の差圧により弁12(A〜D)を開閉させる必要があるから、その開閉圧の調整が難しく、弁12(A〜D)による緊急排気の確実性に欠けるという問題は解決されていない。
【0016】
また、弁12(A〜D)は、曝気本体3の外部、つまりダム湖内に直接臨む箇所があることから、ゴミや砂等の浮遊物が作動部分に詰まって作動しなくなるおそれがあり、あるいは落ち葉やビニール袋等の浮遊物が弁12(A〜D)の開口部分を塞ぐおそれがあるので、弁12(A〜D)による緊急排気の確実性に欠けるという問題は解決されていない。
【0017】
さらに、ヒンジ式弁12(A,B)では、ヒンジ部分の錆つきで感度が変わったり、鈍くなるという欠点があり、ボール式弁12(C,D)では、ばねの錆つきや経年変化、繰り返し作動等で感度が変わったり、鈍くなるという欠点がある。このような機械式の開閉機構は、水中で用いることから故障しやすいという問題がある。
【0018】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、曝気本体の内外の差圧や浮遊物の影響が全くなく、緊急排気管による緊急排気の確実性を常に保証することができる深層曝気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、本発明は、ダム湖等の湖底に係留されて、湖底付近の深層の水をエアレーションにより循環させる曝気本体の上部に、排気管と緊急排気管とを設けて、通常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を排気管で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を緊急排気管で外部に排気する深層曝気装置であって、前記緊急排気管は、上端口が曝気本体外の近傍に臨まされ、下端口が前記排気管の下端口よりも下方で、かつ曝気本体内の空気溜め室の通常時の水位よりも下方に臨まされ、前記緊急排気管の下端口に、曝気本体内の水位の変動に応じて上下動するフロート弁が臨まされ、このフロート弁は、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管の下端口を閉じるととともに、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも低い非常時は、緊急排気管の下端口を開くようにしたことを特徴とする深層曝気装置を提供するものである。
【0020】
請求項2のように、前記フロート弁は、曝気本体内の邪魔板に取付けたガイド部材、または緊急排気管自体で上下動がガイドされる構成とすることができる。
【0021】
請求項3のように、前記緊急排気管の上端口は、下向き逆U字型に湾曲されている構成とすることができる。
【0022】
請求項4のように、前記排気管は、空気溜め室に溜まった余剰空気を水中に散気する散気管を兼ねている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、緊急排気管は、上端口を曝気本体外の近傍に臨ませ、下端口を曝気本体内の空気溜め室の通常時の水位よりも下方に臨ませる一方、緊急排気管の下端口に、曝気本体内の水位の変動に応じて上下動するフロート弁を臨ませたものである。
【0024】
そして、曝気本体内のフロート弁は、水位が緊急排気管の下端口の高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管の下端口を閉じることで、曝気本体内の空気溜め室に溜まった空気が排気管の上端口からのみ水中に排出されるようになる。また、水位が緊急排気管の下端口の高さよりも低い非常時は、水位に応じてフロート弁も下がって、緊急排気管の下端口を開くことで、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気が上端口から水中に緊急排出されるようになる。
【0025】
したがって、排気弁に故障がある非常時に、曝気本体内の余剰空気を緊急的に外部に排出することで、曝気本体の急浮上、あるいは変形や破損しないようにすることができる。
【0026】
そして、背景技術の前者の深層曝気装置Aのようなフレキシブルホースが不要であるから、捻れや折れによる閉塞のおそれ、流木等の浮遊物による損傷等のトラブル、下層部から吸い込まれたゴミ等により詰まるおそれがなくなる。
【0027】
また、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、内外の差圧により弁を開閉させる構造ではなく、曝気本体内のフロート弁を水位の昇降により開閉させる構造であるので、開閉圧の調整が不要であり、緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0028】
このフロート弁は、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、曝気本体の外部、つまりダム湖内に直接臨む箇所がなく、曝気本体内に配置されていることから、泥砂の浮遊物が作動部分に詰まるおそれ、落ち葉やプラスチック袋等の浮遊物が弁の開口部分を塞ぐおそれがなくなるので、この点でも緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0029】
このように、曝気本体の内外の差圧や浮遊物の影響が全くなく、緊急排気の確実性を常に保証することができる。
【0030】
また、フロート弁は、水位に応じて浮力で上下動して、緊急排気管の下端口を開閉する簡単な構成であることから、水中で長期に亘って用いても故障しにくい。
【0031】
請求項2によれば、フロート弁の上下動をガイドすることで、フロート弁が緊急排気管の下端口を正確に開閉するようになる。
【0032】
請求項3によれば、緊急排気管の上端口を下向き逆U字型に湾曲させているから、水中に浮遊するゴミや砂等が曝気本体内に浸入して溜まるおそれがなくなる。
【0033】
請求項4によれば、排気管が散気管を兼ねることで、空気溜め室に溜まった余剰空気を水中に散気すれば、表層の水が効果的に攪拌されるので、水温の均一化や藻類の発生を抑制ができるようになり、複合型深層曝気装置として機能するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の複合型深層曝気装置の側面断面図である。
【図2】図1の曝気装置であり、第1実施形態のフロート弁の閉弁時の要部拡大側面断面図である。
【図3】図1の曝気装置であり、第1実施形態のフロート弁の開弁時の要部拡大側面断面図である。
【図4】第1実施形態のフロート弁とガイド部材の平面図である。
【図5】第1実施形態のフロート弁であり、(a)は平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は変形例の平面図、(d)は(c)の側面図である。
【図6】図1の曝気装置であり、変形例のガイド部材を示す要部拡大側面断面図である。
【図7】図1の曝気装置であり、(a)は変形例のフロート弁を示す要部拡大側面断面図、(b)は(a)のフロート弁とガイド部材の平面図である。
【図8】図1の曝気装置であり、第2実施形態のフロート弁の閉弁時の要部拡大側面断面図である。
【図9】図1の曝気装置であり、第2実施形態のフロート弁の開弁時の要部拡大側面断面図である。
【図10】(a)は第2実施形態のフロート弁の平面図、(b)はフロートの側面図、(c)は変形例のフロートの側面図である。
【図11】特許文献1の深層曝気装置であり、(a)は側面断面図、(b)は要部拡大側面図である。
【図12】特許文献2の深層曝気装置であり、(a)は側面断面図、(b)は要部拡大側面図、(c)は弁の変形例の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態である複合型深層曝気装置15の側面断面図である。
【0036】
曝気装置15は、ダム湖等の湖底16に係留されて、湖底付近の深層の水をエアレーションにより循環(矢印a参照)させるものである。
【0037】
曝気装置15は、湖底16にシンカー17で係留された状態でフロート18の浮力により起立状態に保持される曝気本体19を備えている。そして、送気管20から送られた圧縮空気による第1散気管21からのエアレーションの上昇流bで内筒22内に吸水して、溶存酸素量を上げた水cを、内筒22の上端に複数本のステー23a(図2参照)で支持した邪魔板(バッフル)23で上方から下方に反転させる。その後、外筒24との間の出口25から外部(深層)に排水することで、深層の嫌気化を予防するものである。
【0038】
外筒24の頂部は半球状に形成され、内筒22の上端部の邪魔板23との間には、エアレーションの余剰空気d(図2の点々を参照)を溜める空気溜め室26が形成されて、外筒24の頂部には、空気溜め室26の余剰空気dを水中に散気するために内外に貫通する、第2散気管を兼ねる排気管30が設けられている。
【0039】
また、外筒24の頂部には、空気溜め室26内の空気圧が異常に上がった時に開いて、余剰空気dを水中に緊急排気するための緊急排気管31が設けられている。
【0040】
散気管30と緊急排気管31とは、図2のように、外筒24の頂部の台形状の支持板40で補強されている。また、外筒24の頂部の内面には、散気管30と緊急排気管31を取り囲むように円筒状の補強筒41が取付けられ、この補強筒41で散気管30と緊急排気管31を取付けた外筒24の頂部を補強している。なお、補強筒41の上端には貫通孔41aが形成されている。
【0041】
図1に戻って、曝気本体19の内筒22の下端部には、下向き円錐形状のスカート部27が形成されている。
【0042】
スカート部27の下方には、スカート部27の内面と一定の隙間を隔てて対向する外面の頂部付近に、気泡を噴出する複数個の散気孔21aが形成された上向き中空円錐形状(シャープドコーン)の第1散気管21が配置されている。
【0043】
第1散気管21の下部に送気管20が接続されて、送気管20から第1散気管21に送気された空気を気泡gとして、各散気孔21aから連続的に噴出するようになる。
【0044】
内筒22のスカート部27の内面と第1散気管部21の外面とが一定の隙間を隔てて対向するように、内筒22のスカート部27と第1散気管21とが円周上略等角度間隔(本例では120度)で、チェーンのような撓む連結具28で連結されている。さらに、第1散気管21は、水底16のシンカー17に、円周上略等角度間隔でチェーンのような撓む係留具29で係留されている。
【0045】
この場合、内筒22を含む曝気本体19は、フロート18で浮力が付与されている。したがって、チェーンのような連結具28と係留具29は、上方に引っ張られた状態となるから、特に連結具28によって、内筒22のスカート部27の内面と第1散気管21の外面とが一定の隙間が隔てられるようになる。
【0046】
空気溜め室26に溜まった余剰空気dは、第2散気管を兼ねる排気管30から水中に散気されるから、ダム湖等の表層に散気による水流eが生じるようになり(循環曝気攪拌)、余剰空気dを有効に利用することによって、水面L1付近の表層を攪拌して水温を均一化できるとともに、表層におけるアオコのような藻類の発生を抑制できるようになる。
【0047】
排気管30は、第2散気管を兼ねる必要は必ずしも無く、背景技術の深層曝気装置A,Bと同様に、水面に浮遊する浮上排気体にフレキシブルホースを介して接続することも可能である。
【0048】
図2に詳細に示したように、外筒24の頂部内面と邪魔板23の上面との間の空気溜め室26は、通常時は、その略半分の高さ位置の反転水面L2より上側に余剰空気dが溜まるように設定されている。また、非常時は、図3のように、余剰空気dの空圧で反転水面L2´が押し下げられることで、邪魔板23の上面付近まで余剰空気dが溜まるようになる。
【0049】
第2散気管を兼ねる排気管30の上端口30aは、外筒24の頂部より僅かに上方へ突出する長さに設定されるとともに、下端口30bは、外筒24の頂部より僅かに下方へ突出する長さに設定されて、通常時の反転水面L2より上側に位置するようになっている。なお、第2散気管を兼ねる排気管30は、外筒24の頂部に穿った穴であっても良い。
【0050】
そして、空気溜め室26に溜まった余剰空気dが第2散気管を兼ねる排気管30から水中に散気されている通常時は、この反転水面L2が維持されるようになっている。
【0051】
また、緊急排気管31の上端口31aは、外筒24の頂部より僅かに上方へ突出して、下向き逆U字型に湾曲する長さに設定されるとともに、下端口31bは、排気管30の下端口30bよりも下方で、かつ空気溜め室26の通常時の反転水面L2よりも下方に延在して、邪魔板23の手前まで突出する長さに設定されている。
【0052】
緊急排気管31の下端口31bには、曝気本体19内の反転水面(水位)L2,L2´の変動に応じて上下動するフロート弁33(A,B)が臨まされている。
【0053】
フロート弁33(A,B)は、反転水面(水位)L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、図2のように、浮力で緊急排気管31の下端口31bを閉じるととともに、反転水面(水位)L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、図3のように、反転水面L2´に応じて、かつフロート弁33(A,B)の自重も関与することで下がって緊急排気管31の下端口31bを開くようになる。
【0054】
フロート弁33(A,B)は、曝気本体19内の邪魔板23に取付けたガイド部材34、または緊急排気管31自体で上下動をガイドすることで、緊急排気管31の下端口31bを正確に開閉する必要がある。
【0055】
そこで、第1実施形態のフロート弁33(A)とガイド部材34の内、フロート弁33(A)は、図5(a)(b)に示すように、両端部を45度でカットした4個の中空円管を四角形状に接続するとともに、その上面にフラットな弁板33aを接続したものである。なお、中空円管の内部には、浮力のある空気または発泡材が充填されている。
【0056】
また、ガイド部材34は、図4のように、上面の複数箇所(本例では4箇所)にガイド棒34aを立設した四角形のベース板34bを邪魔板23の上面に固定したものである。
【0057】
そして、各ガイド棒34aの間にフロート弁33(A)を嵌め入れることで、各ガイド棒34aでフロート弁33(A)の上下動がガイドされるようになる。
【0058】
フロート弁33(A)は、4個の中空円管を四角形状に接続したものである必要はなく、図5(c)(d)のように、1個のリング状円管の下面を板33bで閉じるととともに、上面を弁板33aで閉じて、リング状円管の内部に、浮力のある空気または発泡材を充填したものでも良い。
【0059】
また、図7(a)(b)に示すように、浮力のある中空球状のフロート弁33(A)であっても良く、この場合には、ガイド部材34として、丸形のベース板34bの上面の複数箇所(本例では3箇所)にガイド棒34aを立設したもので良い。
【0060】
さらに、ガイド部材34は、邪魔板23の上面に固定するものに限られず、図6に示すように、緊急排気管31の外周の円周上略等角度間隔の複数箇所(例えば4箇所)に、側面がコ字状のガイド棒34cの上端を固定して、各ガイド棒34cの間にフロート弁33(A)を嵌め入れることで、各ガイド棒34cでフロート弁33(A)の上下動をガイドするようにしても良い。
【0061】
第2実施形態のフロート弁33(B)は、図10(a)(b)に示すように、緊急排気管31の外周面に僅かの隙間を開けて、浮力のある3個の円筒状フロート33eを円周上略等角度間隔(本例では120度)で配置している。なお、フロート33eは、図10(c)のように、上下端が球面状であっても良い。
【0062】
そして、各フロート33eの下端部付近を、平面視で略六角形状の弁板33fの円弧状の三辺33hにそれぞれ固定するとともに、各フロート33eの上端部付近を三枚の略四角形状の連結板31gでそれぞれ固定する。
【0063】
このフロート弁33(B)は、図8のように、反転水面(水位)L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管31の下端口31bを弁板33fで閉じるととともに、図9のように、反転水面(水位)L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、反転水面(水位)L2´に応じて、かつフロート弁33(A,B)の自重も関与することで下がって緊急排気管31の下端口31bを開くようになる。このとき、緊急排気管31の外周面から側方に突出する下動規制棒31f〔図10(b)参照〕に連結板31gが当て止められることで、フロート弁33(B)が緊急排気管31から下方に抜け落ちないように規制されるようになる。なお、邪魔板23が有るタイプでは、邪魔板23でフロート弁33(B)が緊急排気管31から下方に抜け落ちないように規制されるので、下動規制棒31fは不要である。
【0064】
この第2実施形態のフロート弁33(B)では、緊急排気管31を上下動のガイドに利用しているから。第1実施形態のフロート弁33(A)のようなガイド部材34が不要になる。
【0065】
前記のように構成した深層曝気装置15であれば、緊急排気管31は、上端口31aを曝気本体19外の近傍に臨ませ、下端口31bを曝気本体19内の空気溜め室26の通常時の反転水面L2よりも下方に臨ませる一方、緊急排気管31の下端口31bに、曝気本体19内の反転水面(水位)L2,L2´の変動に応じて上下動するフロート弁33(A,B)を臨ませている。
【0066】
そして、曝気本体19内のフロート弁33(A,B)は、反転水面(水位)L2が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管31の下端口31bを閉じることで、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気が排気管30の上端口30aからのみ水中に排出されるようになる。
【0067】
また、反転水面(水位)L2´が緊急排気管31の下端口31bの高さよりも低い非常時は、反転水面(水位)L2´に応じてフロート弁33(A,B)も下がって、緊急排気管31の下端口31bを開くことで、曝気本体19内の空気溜め室26に溜まった余剰空気が上端口31aから水中に緊急排出されるようになる。
【0068】
したがって、排気弁30に故障がある非常時に、曝気本体19内の余剰空気を緊急的に外部に排出することで、曝気本体19の急浮上、あるいは変形や破損しないようにすることができる。
【0069】
そして、背景技術の前者の深層曝気装置Aのようなフレキシブルホースが不要であるから、捻れや折れによる閉塞のおそれ、流木等の浮遊物による損傷等のトラブル、下層部から吸い込まれたゴミ等により詰まるおそれがなくなる。
【0070】
また、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、内外の差圧により弁を開閉させる構造ではなく、曝気本体19内のフロート弁33(A,B)を反転水面(水位)L2.L2´の昇降により開閉させる構造であるので、開閉圧の調整が不要であり、緊急排気管31による緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0071】
このフロート弁33(A,B)は、背景技術の後者の深層曝気装置Bのように、曝気本体の外部、つまりダム湖内に直接臨む箇所がなく、曝気本体19内に配置されていることから、ゴミや砂等の浮遊物が作動部分に詰まって作動しなくなるおそれ、あるいは落ち葉やビニール袋等の浮遊物が弁の開口部分を塞ぐおそれがなくなるので、この点でも緊急排気管31の緊急排気の確実性に優れるようになる。
【0072】
このように、曝気本体19の内外の差圧や浮遊物の影響が全くなく、緊急排気管31による緊急排気の確実性を常に保証することができる。
【0073】
また、フロート弁33(A,B)は、水位に応じて浮力で上下動して、緊急排気管31の下端口31bを開閉する簡単な構成であることから、水中で長期に亘って用いても故障しにくい。
【0074】
また、緊急排気管31の上端口31aを下向き逆U字型に湾曲させているから、水中に浮遊するゴミや砂等が曝気本体19内に浸入して溜まるおそれがなくなる。なお、ゴミや砂の浸入が考えられないところでは、逆U字型に湾曲させる必要は特になく、真っ直ぐであっても良い。
【0075】
さらに、排気管30が第1散気管を兼ねるようにすることで、空気溜め室26に溜まった余剰空気dを水中に散気すれば、表層の水が効果的に攪拌されるので、水温の均一化や藻類の発生を抑制ができるようになり、複合型深層曝気装置として機能するようになる。
【符号の説明】
【0076】
15 複合型深層曝気装置
16 湖底等
19 曝気本体
22 内筒
23 邪魔板
24 外筒
26 空気溜め室
30 排気管(第2散気管を兼ねる)
31 緊急排気管
31a 上端口
31b 下端口
33(A,B) フロート弁
34 ガイド部材
d 余剰空気
L2,L2´ 反転水面(水位)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム湖等の湖底に係留されて、湖底付近の深層の水をエアレーションにより循環させる曝気本体の上部に、排気管と緊急排気管とを設けて、通常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を排気管で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を緊急排気管で外部に排気する深層曝気装置であって、
前記緊急排気管は、上端口が曝気本体外の近傍に臨まされ、下端口が前記排気管の下端口よりも下方で、かつ曝気本体内の空気溜め室の通常時の水位よりも下方に臨まされ、
前記緊急排気管の下端口に、曝気本体内の水位の変動に応じて上下動するフロート弁が臨まされ、
このフロート弁は、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管の下端口を閉じるととともに、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも低い非常時は、緊急排気管の下端口を開くようにしたことを特徴とする深層曝気装置。
【請求項2】
前記フロート弁は、曝気本体内の邪魔板に取付けたガイド部材、または緊急排気管自体で上下動がガイドされることを特徴とする請求項1に記載の深層曝気装置。
【請求項3】
前記緊急排気管の上端口は、下向き逆U字型に湾曲されていることを特徴とする請求項1または2に記載の深層曝気装置。
【請求項4】
前記排気管は、空気溜め室に溜まった余剰空気を水中に散気する散気管を兼ねていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の深層曝気装置。
【請求項1】
ダム湖等の湖底に係留されて、湖底付近の深層の水をエアレーションにより循環させる曝気本体の上部に、排気管と緊急排気管とを設けて、通常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を排気管で外部に排気するとともに、非常時は、曝気本体内の空気溜め室に溜まった余剰空気を緊急排気管で外部に排気する深層曝気装置であって、
前記緊急排気管は、上端口が曝気本体外の近傍に臨まされ、下端口が前記排気管の下端口よりも下方で、かつ曝気本体内の空気溜め室の通常時の水位よりも下方に臨まされ、
前記緊急排気管の下端口に、曝気本体内の水位の変動に応じて上下動するフロート弁が臨まされ、
このフロート弁は、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも高い通常時は、浮力で緊急排気管の下端口を閉じるととともに、前記水位が緊急排気管の下端口の高さよりも低い非常時は、緊急排気管の下端口を開くようにしたことを特徴とする深層曝気装置。
【請求項2】
前記フロート弁は、曝気本体内の邪魔板に取付けたガイド部材、または緊急排気管自体で上下動がガイドされることを特徴とする請求項1に記載の深層曝気装置。
【請求項3】
前記緊急排気管の上端口は、下向き逆U字型に湾曲されていることを特徴とする請求項1または2に記載の深層曝気装置。
【請求項4】
前記排気管は、空気溜め室に溜まった余剰空気を水中に散気する散気管を兼ねていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の深層曝気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−61423(P2012−61423A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207748(P2010−207748)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(591073337)株式会社丸島アクアシステム (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(591073337)株式会社丸島アクアシステム (58)
【Fターム(参考)】
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