説明

混合弁装置とそのガイド体取り出し方法

【課題】保守点検に際して、弁棒のガイド体をボディから容易に取り出すことのできる混合弁装置とそのガイド体取り出し方法を提供する。
【解決手段】蒸気Hと冷水Cを混合室4内で混合して温水Mを生成する混合弁装置Aであって、混合室4への蒸気導入量および冷水導入量を調節する蒸気弁14および冷水弁18と、両弁14,18を開閉移動させる弁棒8と、混合室4の圧力と冷水Cの圧力とに基づいて弁棒8を作動させる弁駆動部材21と、弁棒8を案内するガイド体31とを備える。ガイド体31は、ケース20のボディ1の開口部1aの内面に嵌合されてボディ1の棚部1bにガイド体31の底部31aが載置されており、底部31aに、棚部1bに向かって進出するジャッキ用ねじ体25と螺合可能な複数のねじ孔37が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気と冷水を混合室内に導入して混合することにより温水を作る混合弁装置とそのガイド体取り出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の一般的な混合弁装置Aは図9に示すような構成になっている(特許文献1参照)。すなわち、装置のケース20はボディ1の上端の開口部1aを蓋体23で施蓋して構成されており、ボディ1の相対向する位置に蒸気入口2と冷水入口3がそれぞれ開口されている。冷水入口3には冷水配管(図示せず)を通じて矢印Cのように冷水が導入され、この冷水Cは、冷水通路11を通じて混合室4内に流入する一方、図示しない内部通路とパイロット弁隙間を通じて蓋体23とその内側のダイヤフラム21との間の空間に流入する。ボディ1と蓋体23とは、これらの間にダイヤフラム21の周縁部を挟持した状態で重ね合わされて固定ボルト25で固定されている。蒸気入口2には、蒸気配管(図示せず)を通じて矢印Hのように蒸気(又は高温水)が流入し、混合室4への蒸気導入量を調節する蒸気弁14が図示のように開かれることで混合室4内に導入されて、この蒸気Hと冷水Cが混合されて温水Mが作られる。
【0003】
ボディ1の開口部1aの内面には、弁棒8を案内するガイド体31が嵌合されており、このガイド体31とダイヤフラム21との間に復帰用スプリング22が配置されている。また、蒸気入口2と冷水入口3の近傍にはそれぞれ、混合弁装置Aへ流入する方向には流体を通すが、その逆方向には通さない逆止弁CV1,CV2が接続されている。この混合弁装置Aの下流側に、すなわち、混合弁装置Aの温水流出口24に連結された温水配管28に、温水弁(カラン)29が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−49583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この混合弁装置Aでは、保守点検やメンテナンスなどを行う場合、蓋体23、ダイヤフラム21、ガイド体31および復帰用スプリング22により構成されたダイヤフラムユニット30がボディ1から取り外される。このダイヤフラムユニット30の取り外しは、固定ボルト25を取り外すことによって蓋体23のボディ1への固定を解除したのちに、ガイド体31がボディ1から取り出される。しかしながら、ガイド体31は、ボディ1内でのがたつきを防止するために、ボディ1の開口部1aに緊密に嵌合されているために、ボディ1からの取り出しが容易でない。
【0006】
本発明は、保守点検に際してガイド体をボディから容易に取り出すことのできる構成を備えた混合弁装置およびそのガイド体取り出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)
上記目的を達成するために、本発明に係る混合弁装置は、蒸気と冷水を混合室内で混合して温水を生成する混合弁装置であって、前記混合室を形成するボディとその開口部を閉止する蓋体とを有するケースと、前記混合室への蒸気導入量を調節する蒸気弁と、前記混合室への冷水導入量を調節する冷水弁と、前記蒸気弁および冷水弁を開閉移動させる弁棒と、前記混合室の圧力と冷水の圧力とに基づいて前記弁棒を作動させる弁駆動部材と、前記弁棒を案内するガイド体とを備え、前記ガイド体は、前記ボディの開口部の内面に嵌合されて前記ボディの棚部に前記ガイド体の底部が載置されており、前記底部に、前記棚部に向かって進出するジャッキ用ねじ体と螺合可能な複数のねじ孔が形成されている。
【0008】
この混合弁装置では、保守点検に際してガイド体をボディから取り外す場合、蓋体をボディから取り外したのちに、ガイド体の底部の各ねじ孔にジャッキ用ねじ体をねじ込み、ねじ体の先端がボディの棚部に当接したのちにねじ体をさらにねじ込むことにより、ねじ孔内を螺進するねじ体の先端部によってガイド体がボディから浮き上がるように強制的に持ち上げられる。持ち上げられたガイド体は手または工具で掴んでボディの外部に取り出される。これにより、ガイド体は、ボディに取り出し難い状態に嵌合されていても、ねじ体をねじ孔にねじ込むだけの単純な作業によって、そのジャッキ作用によりボディから容易に取り出すことができる。
【0009】
(請求項2)
本発明において、前記各ねじ孔に、前記ねじ体が、前記ガイド体を前記棚部から引き上げるジャッキ作用を抑制した状態で浅く螺合されていることが好ましい。これにより、ガイド体をボディから取り外す際に、蓋体をボディから取り外すと、ガイド体の各ねじ孔に浅く螺合されたねじ体が外部に露呈するので、このねじ体をそのままねじ孔に深くねじ込むことにより、ガイド体をジャッキ作用でボディから取り出すことができる。この場合、保守点検時毎に所要のねじ体を用意する必要がなく、ねじ孔に予め螺合されたねじ体をそのまま使用すればよいので、ガイド体のボディからの取り出しを迅速に行うことができる。また、ねじ孔は、ねじ体が常時螺合されていることによって内部にスケールが堆積するのを防止できる。
【0010】
(請求項3)
本発明において、前記棚部に前記ねじ体が予め取り付けられ、前記ガイド体に前記ねじ体にアクセスさせるアクセス孔が形成された構成とすることもできる。これにより、ねじ体をガイド体のねじ孔に予め取り付けておく構成ではねじ体をジャッキ作用を抑制した状態で浅くしか螺合できないのとは異なり、ねじ体をボディの棚部に取り付けるので、ねじ体を脱落のおそれのないように強固に固定することができる。また、ガイド体をボディから取り外す場合には、ボディの棚部に取り付けられたねじ体をガイド体のアクセス孔を介して取り外し、この取り外したねじ体をガイド体のねじ孔にねじ込むことにより、ガイド体をジャッキ作用でボディから取り出すことができる。この場合も、保守点検毎に所要のねじ体を用意する必要がなく、ボディの棚部に予め取り付けられているねじ体を使用するので、ガイド体のボディからの取り出し作業を一層容易に行うことができる。
【0011】
(請求項4)
棚部にねじ体が取り付けられる上記構成において、さらに、前記ねじ体によって前記棚部に支持されて前記ねじ孔を覆う保護部材を設けることができる。これにより、ガイド体をボディから取り外す際に、ねじ体をボディの棚部から取り外すことにより保護部材も同時に取り外され、この取り外したねじ体をガイド体のねじ孔にねじ込むことにより、ガイド体をジャッキ作用でボディから容易に取り出すことができる。また、ねじ孔は、装置作動時に保護部材により覆われて内部にスケールが堆積するのが防止されているから、ねじ体を螺合する際に螺合不良や取り付け不良が発生することがない。
【0012】
(請求項5)
本発明において、さらに、前記ガイド体と前記ボディとの間に配置されて両者間の隙間を封止するシール部材を備える構成とすることもできる。本発明の混合弁装置の下流側に配置された温水弁を急閉すると、ウォーターハンマーが発生して混合室内の圧力が上昇し、温水がガイド体とボディとの間を通過して、ボディと蓋体の間から外部へ漏出しようとする場合がある。ここで、シール部材により、温水がガイド体とボディ間を通過するのが阻止されるから、温水の外部漏れを確実に防止することができる。その反面、ガイド体は、ボディとの間に設けられたシール部材によって相対移動に対する摩擦抵抗が大きくなるために、ボディから一層取り出し難い状態になる。この場合にも、ねじ体をねじ孔にねじ込むだけの単純な作業によるジャッキ作用によって、ガイド体をボディから容易に取り出すことができる。
【0013】
(請求項6)
本発明に係る混合弁装置のガイド体取り出し方法は、混合弁装置における前記ガイド体を前記ボディから取り出す方法であって、前記各ねじ孔に前記ジャッキ用ねじ体をねじ込んで、前記ねじ体の先端部によって前記棚部を押圧することにより、前記ガイド体を前記ボディから離間させる。これにより、ガイド体がボディの開口部の内面に緊密に嵌合されてボディから取り出し難い状態になっている場合であっても、ねじ体のジャッキ作用により、ガイド体をボディから容易に取り出すことができる。
【0014】
(請求項7)
本発明の方法において、前記ジャッキ用ねじ体として、前記ねじ孔に予め螺合されたねじ体を使用することができる。これにより、蓋体をボディから取り外したときに、ねじ孔に螺合されたねじ体が外部に露呈するので、保守点検毎に所要のジャッキ用ねじ体を用意する必要がなく、ねじ孔に予め螺合されたねじ体をそのまま使用すればよいので、ガイド体のボディからの取り出しを迅速に行うことができる。また、ねじ孔は、ねじ体が常時螺合されていることによって内部にスケールが堆積するのを防止できる。
【0015】
(請求項8)
本発明の方法において、前記ジャッキ用ねじ体として、前記蓋体をボディに締結するボルトを使用することもできる。これにより、ダイヤフラムユニットをボディから取り外す際に、蓋体をボディに固定しているボルトを最初に取り外すので、この取り外したボルトをねじ孔にねじ込むことにより、ボルトのジャッキ作用によってガイド体をボディから取り出すことができ、保守点検毎に所要のジャッキ用ボルトを用意する必要がない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保守点検に際してガイド体をボディから取り外す場合、ガイド体の底部の各ねじ孔にジャッキ用ねじ体をねじ込み、ねじ体の先端がボディの棚部に当接したのちにねじ体をさらにねじ込むことにより、ガイド体がジャッキ作用によってボディから浮き上がるように強制的に持ち上げられる。したがって、ガイド体は、ボディに対し緊密に嵌合していても、ねじ体をねじ孔にねじ込むだけの単純な作業によって、そのジャッキ作用によりボディから容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る混合弁装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】同上の混合弁装置を一部切欠して示す斜視図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ同上の混合弁装置のガイド体をボディから取り出す作業の異なる例を示す要部の縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る混合弁装置を示す要部の縦断面図である。
【図6】同上の混合弁装置のガイド体をボディから取り出す作業過程を示す要部の縦断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る混合弁装置を示す要部の縦断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る混合弁装置を示す要部の縦断面図である。
【図9】従来の混合弁装置置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1ないし図3は本発明の第1実施形態に係る混合弁装置Aを示す。この混合弁装置Aは、図1に示すように、装置Aの外体をなすケース20がボディ1とその上部の開口部1aを閉止する蓋体23とにより構成されている。ボディ1には、蒸気配管(図示せず)から第一逆止弁CV1を通って矢印Hのように蒸気が供給される蒸気入口2と、冷水配管(図示せず)から第二逆止弁CV2を通って矢印Cのように冷水が供給される冷水入口3とが相対向する位置にそれぞれ開口している。ボディ1の内部には温水を作るための混合室4が形成され、図2に示すように、相対向する位置で混合室4にそれぞれ連通する二つの温水流出口50が形成されている。すなわち、混合室4で作られた温水は二つの温水流出口50を通じて互いに逆方向に、温水配管(図示せず)を介して取り出し可能になっている。
【0019】
図1に示すように、冷水入口3から導入された冷水Cは、冷水通路11(図2)および後述の冷水弁18を介して混合室4内に流入する一方、蓋体23とその下側(内側)のダイヤフラム21との間に形成された感圧室6内に流入して、蒸気弁14および冷水弁18を駆動するための駆動圧力として作用する。これの詳細については後述する。ボディ1の内部中央部には、円筒状の弁座部材10が取り付けられおり、この弁座部材10における蒸気入口2に連通する箇所には、蒸気Hを混合室4内に導く導入口10aが形成され、この導入口10aは、温水流出口50の下流に接続された温水弁29(図2)を開かない限り、弁体スプリング13のばね力により弁体12で閉じられている。混合室4への蒸気導入量を調整する蒸気弁14は、導入口10aを開口する弁座部材10、弁体12および弁体スプリング13により構成されている。図1は、蒸気弁14の全閉状態を示しており、この状態からダイヤフラム21により弁棒8を介し弁体12が押し下げられることにより、蒸気弁14が開かれる。弁棒8は上下に2分割されて互いに接続されている。
【0020】
蓋体23は、ダイヤフラム21の周縁部21aをボディ1の開口部端面との間で挟持した状態で、ボルト25によりボディ1に固定されている。ダイヤフラム21はゴムのような弾性部材により形成されており、これによって、ダイヤフラム21の周縁部21aがボディ1と蓋体23との間を封止するガスケットの機能も兼ねている。蓋体23とダイヤフラム21との間には感圧室6が形成されており、この感圧室6には、冷水入口3からの冷水Cが以下に説明する経路で流入する。
【0021】
すなわち、図3に示すように、冷水入口3からの冷水Cは、スクリーン7を経てパイロット用第1通路R1から蒸気弁駆動用の冷水Cの駆動圧力を調整するパイロット弁PVに入る。パイロット弁PVのボールからなる弁体40は、混合室4から温水流出口50に向かう温水通路16内に臨んだバイメタル33の変形に連動して軸方向X−Yに移動する感温制御ロッド9により、ばね51のばね力に抗して軸方向X−Yに移動される。これにより、弁体40は、弁座38との間の隙間の大きさが調整されて、感圧室6に入る冷水の圧力、つまり駆動圧力が、温水通路16内の温水温度に応じて調節される。その結果、蒸気弁14の開度が調節されて、温水通路16内の温水が設定温度に保持される。調温ハンドル41は、前記弁座38の軸方向位置を調整することにより、設定温度を調節する。混合室4内で生成された温水Mは温水通路16を通って一方の温水流出口50から吐出され、他方の温水流出口50は、この例ではプラグ15により閉塞されて使用されない。
【0022】
平面視で四角形のダイヤフラム21には、これの中央部に弁棒8が吊り下げ状態で取り付けられている。弁棒8は、ボディ1に取り付けられたガイド体31のガイド孔45に挿通されて、ガイド体31により円滑に上下動するよう案内される。ガイド体31は、底部を形成する円盤状の底壁31aと周壁31bとを有する短い円筒状であり、図1に示すボディ1の開口部1aの内面に、ボディ1内でのガイド体31のがたつきがないように、ある程度緊密に嵌合され、ボディ1の棚部1bに自身の底部31aが載置された状態でボディ1に取り付けられている。ただし、図2に示すように、ボディ1における二つの温水流出口50が設けられる箇所には、ガイド体31の底部31aを載置するための棚部1bが設けられていない。このガイド体31の底部31aに、ダイヤフラム21の下側の作動室5を混合室4に連通させる連通孔46が形成されている。
【0023】
ガイド体31の周壁31bの外周面には環状の取付け溝42が形成され、この取付け溝42に、0リングからなる環状のシール部材43が取り付けられている。ガイド体31の上面とダイヤフラム21との間には、ダイヤフラム21および弁棒8を上方に付勢する復帰用スプリング22が設けられている。ダイヤフラム21、弁棒8、蒸気弁14および冷水弁18は、弁軸心C1上に同心状に配置されている。
【0024】
また、前記弁棒8の下部には円筒状の冷水弁18が弁座部材10の内周面に摺動する配置で放射状のステー34を介して取り付けられおり、この冷水弁18は、弁棒8により蒸気弁14と一体的に上下動されて、弁座部材10に設けられた複数の冷水流入孔10bを開閉する。したがって、ダイヤフラム21が弁棒8を押し下げたときには、弁棒8の先端面により蒸気弁14の弁体12が押し下げられて導入口10aから離間し、蒸気弁14が開いて混合室4内への蒸気流入量が増大する一方,冷水流入孔10bが冷水弁18により開口面積が減少するように絞られて、混合室4内への冷水導入量が減少する。
【0025】
つぎに、上記混合弁装置の作用について説明する。ダイヤフラム21は、上方の感圧室6から作用する冷水の駆動圧力と下方の混合室4から作用する温水の圧力および復帰用スプリング22のばね力との差が下向きの作動力である場合に、弁棒8を介して弁体12を二点鎖線で示すように押し下げ、逆に上向きの作動力である場合には、弁棒8を持ち上げるとともに弁体スプリング13が弁体12を上昇させる。また、冷水弁18は、弁棒8によって蒸気弁14と一体的に作動されて、冷水流入孔10bから混合室4への冷水導入量を調節する。
【0026】
一方、図3のパイロット弁PVは、混合室4で作られる温水Mの温度をバイメタル33で常時感知して、感知した温水温度が設定温度よりも高温になったときに、感圧室6への冷水の流入量を抑制する。それにより、ダイヤフラム21を上方に移動させ、弁棒8を介して冷水弁18を開弁方向(上方)に作動させるとともに、弁体スプリング13によって弁体12が閉弁方向(上方)に移動するのを許容する。逆に、設定温度よりも低温になったときには、感圧室6への冷水の流入量を増大させて、ダイヤフラム21を下方に移動させ、弁棒8を介して蒸気弁14を開弁方向(下方)に、かつ冷水弁18を閉弁方向(下方)にそれぞれ作動させる。すなわち、パイロット弁PVは、感圧室6に作用する冷水Cの駆動圧力を温水設定温度に応じて調整し、それにより、混合室4内で設定温度の温水が作られる。
【0027】
ここで、図2の温水弁29を全開状態にして温水を使用しているときに温水弁29を急激に全閉にすると、温水弁29の上流側の温水Mや、冷水入口3から流入する冷水Cの持つ運動エネルギ(慣性力)により、ウォーターハンマーが発生することがある。このウォーターハンマーによる衝撃圧力が高い場合、発明者らの精査の結果、混合室4内の温水Mはダイヤフラム21の下側の作動室5からボディ1と蓋体23との間を通るのではなく、ボディ1の開口部1aとガイド体31の周壁31bとの間の僅かな隙間を通り、ボディ1と蓋体23との間から外部に漏出しようとすることが判明した。
【0028】
そこで、この実施形態の混合弁装置では、ボディ1とガイド体31との間にシール部材43を配置して、ボディ1とガイド体31の間を封止している。これにより、ウォーターハンマーによる大きな衝撃圧力が発生したときに、温水Mがガイド体31とボディ1との間を通過するのが阻止される結果、ボディ1と蓋体23の間から温水Mが漏出するのを防止できる。
【0029】
この種の混合弁装置Aでは、保守点検やメンテナンスに際して、蓋体23、ダイヤフラム21、ガイド体31および復帰用スプリング22によって構成されるダイヤフラムユニット30がボディ1から取り外される。ところが、この混合弁装置Aは、ガイド体31が、ボディ1に対し緊密に嵌合されているとともに、ボディ1との間にシール部材43が配設されているため、ガイド体31とボディ1との間およびシール部材43とボディ1との間の相対移動に対する摩擦抵抗によって、ガイド体31をボディ1の内面から取り外すのが困難となる。また、ボディ1とガイド体31との隙間にスケールが付着するような場合には、この摩擦抵抗がさらに増大する。
【0030】
そこで、図1に示すように、この実施形態では、ガイド体31を容易な作業でボディ1から確実に取り出せるようにするために、ガイド体31におけるボディ1の棚部1bに載置される底部31aに、ボディ1の棚部1bに向かって進出する後述のジャッキ用ねじ体が螺合可能な二つのねじ孔37が上下方向に貫通して形成されている。二つのねじ孔37は、弁軸心C1の回りに180°離間した相対向する箇所に形成されている。具体的に説明すると、図2から明らかなように、ボディ1における二つの温水流出口50が形成された箇所には、ガイド体31の底部31aを載置するための図1の棚部1bが形成されていないので、この底部31aにおける棚部1bに対向しない箇所にはねじ孔37を形成することができない。そこで、二つのねじ孔37は、ガイド体31の底部31aにおける蒸気入口2および冷水入口3に対して上方からそれぞれ対向する2箇所に形成される。
【0031】
保守点検やメンテナンに際して、ダイヤフラムユニット30をボディ1から取り外す場合、図4(a)に示すように、ボルト25(図1)を緩めて蓋体23をボディ1から取り外したのち、二つのねじ孔37が上方から視認できる状態までダイヤフラム21の周縁部を上方へ折り曲げて、その二つのねじ孔37にそれぞれ、ジャッキ用ねじ体47をねじ込んで双方をほぼ同等に螺進させ、ねじ体47の先端がボディ1の棚部1bに当接したのちにねじ体47をさらにねじ込むことにより、ねじ孔37内を螺進するねじ体47の先端部により、ガイド体31がボディ1から浮き上がるように強制的に持ち上げられる。これにより、ねじ体47をねじ孔37にねじ込むだけの単純な作業によって、そのジャッキ作用によりボディ1から容易に取り出すことができる。上記ジャッキ作用を得るためのねじ孔37は、上述のように弁軸心C1の回りに180°離間した相対向する箇所に形成された二つを備えているだけで十分である。ただし、ねじ孔37は三つ以上設けてもよく、その場合、ねじ孔37は弁軸心C1回りに等間隔で配置されるのが好ましい。
【0032】
また、図4(b)に示すように、ダイヤフラムユニット30をボディ1から取り外す際に、蓋体23をボディ1に固定している固定ボルト25(図1)を最初に取り外すので、ねじ孔37を固定ボルト25が螺合可能な内径に形成しておけば、取り外した固定ボルト25をねじ孔37にねじ込むことにより、ジャッキ作用によってガイド体31をボディ1から取り出すことができる。このように固定ボルト25をジャッキ用ボルトとして利用することにより、保守点検毎に所要のジャッキ用ボルトを用意する必要がなく、作業が一層容易になる。
【0033】
図5は本発明の第2実施形態に係る混合弁装置Aを示す要部の縦断面図である。この混合弁装置Aは、二つのねじ孔37に、このねじ孔37の長さとほぼ同じ長さを有する六角孔付きの専用のジャッキ用ねじ体47が、棚部1bからガイド体31を引き上げるジャッキ作用を抑制した状態で、予め浅く螺合されている。この場合のねじ体47は、ねじ孔37に常時螺合されていることから、作動室5内に突き出るものを用いるとダイヤフラム21に損傷を与える可能性があるので、図示のようにねじ孔37の長さとほぼ同じ長さまたはこれよりも短いものであって、ねじ頭がなく、頂面がガイド体31の底部31aの上面と面一またはこの上面よりも下方に若干凹入するものが好ましい。
【0034】
この混合弁装置Aでは、保守点検に際してダイヤフラムユニット30を取り外す場合、図6に示すように、ねじ孔37に予め螺合されているねじ体47をそのままねじ孔37内にねじ込んでいく。これにより、ねじ体47のシャッキ作用により、ガイド体31の底部31aがボディ1の棚部1bから離間されて、これらの間のスケール等による相互の固着が解除された状態となるので、この状態からガイド体31を手または工具で掴んで容易に取り出すことができる。この混合弁装置Aでは、保守点検毎に所要のねじ体を用意する必要がなく、ねじ孔37に予め螺合されているねじ体47をそのままねじ込むだけであるから、ガイド体31のボディ1からの取り出し作業を一層容易に行うことができる。また、ねじ孔37は、ねじ体47が常時螺合されていることによって、内部にスケールが堆積するのが防止される。
【0035】
図7は本発明の第3実施形態に係る混合弁装置Aを示す要部の縦断面図である。この混合弁装置では、ボディ1の棚部1bにおける、ねじ孔37の近傍で、弁軸心C1寄りの箇所、つまりボディ1の内径寄りの箇所に、取付けねじ孔52が形成されて、この取付けねじ孔52にジャッキ用ねじ体48が螺合されているとともに、ガイド体31における取付けねじ孔52に上方で対向する箇所に、ジャッキ用ねじ体48に工具などによりアクセスすることが可能なアクセス孔53が、ガイド体31を貫通して形成されている。この場合のねじ体48としては、ボディ1の棚部1bに取り付けられることから、ガイド体37をボディ1から完全に上方へ抜き出せる長さを有するものであっても、これよりも短いものであってもよい。また、ねじ体48は、ねじ頭の有るものを用いているが、ねじ頭はなくてもよい。
【0036】
この混合弁装置では、第2実施形態のようにねじ体47をねじ孔37にジャッキ作用を抑制した状態で浅くしか螺合できないのものとは異なり、ねじ体48を、ボディ1の棚部1bに取り付けることから、取付けねじ孔52に十分に締結して脱落のおそれのない状態に強固に固定することができる。ダイヤフラムユニット30をボディ1から取り外す場合には、ボディ1の棚部1bに取り付けられたねじ体48を、ガイド体31のアクセス孔53を介しドライバのような工具を差し入れて取り外し、この取り外したねじ体48をガイド体31のねじ孔37にねじ込むことにより、ガイド体31をジャッキ作用でボディ1から容易に取り出すことができる。このガイド体31の取り出しは、ボディ1の棚部1bに予め取り付けられているねじ体48を使用するから、保守点検毎に所要のねじ体を用意する必要がなくなるので、ガイド体31のボディ1からの取り出し作業を一層容易に行うことができる。
【0037】
図8は本発明の第4実施形態に係る混合弁装置Aを示す要部の縦断面図である。この混合弁装置Aでは、ボディ1の棚部1bに第3実施形態と同様の取付けねじ孔52が形成されているとともに、ガイド体31における取付けねじ孔52に上方で対向する箇所に、ねじ体48の挿通孔54と、ガイド体31の底部31aのねじ孔37の上面と面一となるように切欠かれた切欠部57とが形成されている。さらに、ねじ体48によって支持される保護部材58が設けられており、ねじ体48を取付けねじ孔52にねじ込んで取り付けることにより、ねじ体48の頭部によって保護部材58がガイド体31の上面に押し付けられて、ねじ孔37を覆う。
【0038】
この混合弁装置Aでは、ダイヤフラムユニット30をボディ1から取り外す際に、ねじ体48をボディ1の棚部1bから取り外すことによって保護部材58が同時に取り外され、この取り外したねじ体48をガイド体31のねじ孔37にねじ込むことにより、ガイド体31をジャッキ作用でボディ1から取り出すことができる。ねじ孔37は、混合弁装置Aの作動時に保護部材58により覆われて内部にスケールが堆積するのが防止されているから、ねじ体48を螺合する際にねじ込み不良や取り付け不良が発生するのを防止できる。
【0039】
本発明は上述した実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 ボディ
1b 棚部
4 混合室
8 弁棒
14 蒸気弁
18 冷水弁
20 ケース
21 ダイヤフラム(弁駆動部材)
23 蓋体
25 固定ボルト(ジャッキ用ねじ体)
31 ガイド体
31a 底壁(底部)
37 ねじ孔
43 シール部材
47,48 ジャッキ用ねじ体
53 アクセス孔
58 保護部材
A 混合弁装置
C 冷水
H 蒸気
M 温水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気と冷水を混合室内で混合して温水を生成する混合弁装置であって、
前記混合室を形成するボディとその開口部を閉止する蓋体とを有するケースと、
前記混合室への蒸気導入量を調節する蒸気弁と、
前記混合室への冷水導入量を調節する冷水弁と、
前記蒸気弁および冷水弁を開閉移動させる弁棒と、
前記混合室の圧力と冷水の圧力とに基づいて前記弁棒を作動させる弁駆動部材と、
前記弁棒を案内するガイド体とを備え、
前記ガイド体は、前記ボディの開口部の内面に嵌合されて前記ボディの棚部に前記ガイド体の底部が載置されており、
前記底部に、前記棚部に向かって進出するジャッキ用ねじ体と螺合可能な複数のねじ孔が形成されている混合弁装置。
【請求項2】
請求項1において、前記各ねじ孔に、前記ねじ体が、前記ガイド体を前記棚部から引き上げるジャッキ作用を抑制した状態で浅く螺合されている混合弁装置。
【請求項3】
請求項1において、さらに、前記棚部に前記ねじ体が予め取り付けられ、前記ガイド体に前記ねじ体にアクセスさせるアクセス孔が形成されている混合弁装置。
【請求項4】
請求項3において、さらに、前記ねじ体によって前記棚部に支持されて前記ねじ孔を覆う保護部材を備えた混合弁装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項において、さらに、前記ガイド体と前記ボディとの間に配置されて両者間の隙間を封止するシール部材を備えた混合弁装置。
【請求項6】
請求項1に記載の混合弁装置における前記ガイド体を前記ボディから取り出す方法であって、前記各ねじ孔に前記ジャッキ用ねじ体をねじ込んで、前記ねじ体の先端部によって前記棚部を押圧することにより、前記ガイド体を前記ボディから離間させる混合弁装置のガイド体取り出し方法。
【請求項7】
請求項6において、前記ジャッキ用ねじ体として、前記ねじ孔に予め螺合されたねじ体を使用する混合弁装置のガイド体取り出し方法。
【請求項8】
請求項6において、前記ジャッキ用ねじ体として、前記蓋体を前記ボディに締結するボルトを使用する混合弁装置のガイド体取り出し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−2591(P2013−2591A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136274(P2011−136274)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000137889)株式会社ミヤワキ (19)
【Fターム(参考)】